(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974323
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】前縁保護体
(51)【国際特許分類】
F01D 5/14 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
F01D5/14
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-532556(P2018-532556)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公表番号】特表2019-504241(P2019-504241A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】FR2016053605
(87)【国際公開番号】WO2017109406
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年12月16日
(31)【優先権主張番号】1563006
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ジャン−ベルナール プザドゥー
(72)【発明者】
【氏名】アラン ジャック ミシェル バソ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ギバルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジル ピエール−マリー ノタリアニ
(72)【発明者】
【氏名】ティボー リュフ
【審査官】
吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0229334(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0219808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F01D 5/28
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械翼(16)のための前縁保護体(32)であって、
該前縁保護体(32)は、下端(40)から上端(41)まで高さ方向に延び、かつ前縁(18)の上を覆う外側面(50)と、翼本体(30)に固定するための内側面(51)と、を有し、更に圧力側翼部(34)と、吸込側翼部(36)と、前記圧力側翼部(34)及び前記吸込側翼部(36)を共に接合する中央部分(38)とを具備する、前縁保護体(32)において、
前記中央部分(38)は、前記外側面(50)と前記内側面(51)との間の厚さ(e1)を有し、前記厚さ(e1)は、前記圧力側翼部(34)の対応する厚さ(e2)及び前記吸込側翼部(36)の対応する厚さ(e3)の両方よりも厚く、
前記中央部分(38)の前記厚さ(e1)は、第1に、第1の構成部分(S1)に亘って安定している又は増大する、高さ(H)の方向における勾配(de1/dZ)で増大し、その第1の構成部分(S1)は、前記前縁保護体(32)の前記下端から開始する前記前縁保護体(32)の高さ(H)の少なくとも60%に亘って延び、そして前記厚さ(e1)は、第2に、該第1の構成部分(S1)を超えると減少する、勾配を有する、ことを特徴とする前縁保護体(32)。
【請求項2】
前記中央部分(38)の前記厚さ(e1)は、前記第1の構成部分(S1)を越えて位置する、前記前縁保護体(32)の第2の構成部分(S2)に亘って減少する、ことを特徴とする請求項1に記載の前縁保護体(32)。
【請求項3】
金属材料により製作される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の前縁保護体(32)。
【請求項4】
翼根元から翼先端まで高さ方向に延びる、翼(16)であって、
翼本体(30)と、前記翼本体(30)に組み付けられた請求項1〜3のいずれか一項に記載の前縁保護体(32)と、を具備する翼(16)において、
前記翼本体(30)は、繊維により補強された有機マトリックス複合材料により製作され、
前記前縁保護体(32)は、前記翼本体(30)の前記有機マトリックス複合材料よりも耐点衝撃性のより良い材料で製作される、ことを特徴とする翼(16)。
【請求項5】
前記前縁保護体(32)の前記下端(40)は、前記前縁保護体(32)の前記上端よりも前記翼根元により近い、ことを特徴とする請求項4に記載の翼(16)。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の翼(16)を複数具備するターボ機械。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の翼(16)を複数具備するファン(14)。
【請求項8】
請求項7に記載のファン(14)を具備するターボファン(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械翼のための前縁保護体に関する。「ターボ機械」という用語は、本明細書において、流体流と少なくとも1式の翼との間でエネルギーを伝達可能な、任意の機械、例えば、圧縮機、ポンプ、タービン、プロペラ、又は実際には上記の少なくとも2つの組み合わせ等、を意味するように使用される。
【背景技術】
【0002】
その様な前縁保護体は一般的に、回転翼又は案内羽根の前縁を衝撃から保護するためのものである。「翼」という用語は、本明細書において、航空機プロペラのファン翼及び翼の両方のために使用される。それらの重量を制限するために、その様な翼は一般的に、主として、繊維で強化された、例えばポリマー等の、有機マトリックス複合材料により製作された翼本体の形態である。その様な材料は、特にはそれらの重量に関して一般に非常に有利な機械的品質を示すが、その様な材料は、それにもかかわらず、点衝撃に対して幾分敏感である。従って、チタン合金等のような非常に強い金属材料で一般的に作られた保護体は、その様な翼の前縁に通常取り付けられて、その様な衝撃から前縁を保護する。翼根元に隣接する下端から翼先端に隣接する上端まで延びている保護体であって、且つ前縁の上を覆う外側面と翼本体に固定するための内側面とを有する、その様な保護体は、通常、薄い圧力側翼部と薄い吸込側翼部とが前縁の上のより厚い中央部分により共に接合される形態であるので、従って保護体は全体として、その前縁とその隣接する圧力側及び吸込側部分とにおける翼の形状に密接に適合する。翼の回転により、衝撃速度は通常、翼先端に向かって増大するので、従って保護体の中央部分の内側面と外側面との間の厚さは一般的に、保護体の下端から上端へ進む方向において増大する関係で変化する。それにもかかわらず、そのことは、保護体の重量、及び中でも、高さ方向に延びる軸線の周りのその慣性を、増加させる欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、減少された重量及び慣性を有する翼に適切な保護を提供することを可能にする、ターボ機械翼のための前縁保護体を提案することによりこれらの欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
少なくとも1つの実施の形態において、この目的は、金属材料により製作されてもよい、該前縁保護体において、前縁保護体は、下端から上端まで高さ方向に延び、前縁の上を覆う外側面と、翼本体に固定するための内側面と、を有し、更に前縁保護体は、圧力側翼部と、吸込側翼部と、圧力側翼部及び吸込側翼部を共に接合する中央部分と、を具備し、中央部分は、外側面と内側面との間の厚さを有し、その厚さは、圧力側翼部の対応する厚さ及びやはり内側面と外側面との間の吸込側翼部の対応する厚さの両方よりも厚く、中央部分の厚さは、第1に、第1の構成部分に亘って安定している勾配又は増大する勾配で増大し、その第1の構成部分は、前縁保護体の下端からの前縁保護体の高さの少なくとも60%又は実際には80%に亘って延び、そして中央部分の厚さは、第2に、該第1の構成部分を超えると減少する勾配を有する。中央部分の厚さは、第1の構成部分を越えて位置する、前縁保護体の第2の構成部分に亘って減少さえしてもよい、前縁保護体により達成される。
【0005】
これらの構成により、翼が該第1の構成部分を越えると衝撃に殆ど晒されない場合に、保護体により翼に追加される重量及び慣性を軽減することが可能である。
【0006】
本開示はまた、翼根元から翼先端まで高さ方向に延びていて且つ翼本体に組み付けられたその様な前縁保護体を有する、翼本体を具備する、翼を提供し、翼本体は、例えばポリマーマトリックス等の有機マトリックスを有する、繊維により強化された複合材料により製作され、前縁保護体は、翼本体の複合材料よりも耐点衝撃性のより優れた材料により製作され、更に保護体の下端は、上端に比べて翼根元により近い。
【0007】
本開示はまた、複数のその様な翼を具備するターボ機械と、複数のその様な翼を具備するファンと、その様なファンを具備するターボファンと、を提供する。
【0008】
本発明は、非限定的な例として示される実施の形態の以下の詳細な説明を読むことにより、良好に理解可能であり、そしてその利点は、より良好に明らかになる。説明は、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ターボファンの図式的立体図である。
【
図2A】
図2Aは、翼の一実施の形態における
図1のターボファンの回転翼の圧力側の図式的立体図である。
【
図2B】
図2Bは、翼の一実施の形態における
図1のターボファンの回転翼の圧力側と吸込側のそれぞれ図式的立体図である。
【
図3】
図3は、
図2A及び2Bの翼の平面III−IIIにおける部分断面図である。
【
図4】
図4は、従来技術の前縁保護体に関する関係と比較した、2つの実施の形態における前縁保護体の中央部分の厚さの変化に関する関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ガス発生器ユニット(装置)12とファン14とを具備する、ターボファン10を示す。ファン14は、中心軸線Xの周りに半径方向に配置された複数の回転翼16を具備し、翼は、回転する場合に、空気力学的に輪郭形成されて、空気を排出し、更にファンケーシング50により囲まれる。従って、
図2A、2B及び3において示されるように、各翼16は、前縁18と、後縁20と、圧力側22と、吸込側24と、翼先端26と、翼根元28と、を有する。
【0011】
通常の動作において、相対的な空気流は、各翼16の前縁18に向かって実質的に向けられる。従って前縁18は、特に衝撃に曝される。特に、翼16が、複合材料、特に繊維により強化されたポリマーマトリックスを有する材料により製作される翼本体30を具備する場合に、各翼において一体化された前縁保護体32により前縁18を保護することが、適切である。言い換えれば、前縁保護体32は、翼本体30に組み付けられる。
【0012】
前縁保護体32は、翼本体30の複合材料よりも耐点衝撃性のより優れた材料により製作される。例えば、前縁保護体32は、金属により、更により具体的には、チタン系合金、TA6V(Ti−6Al−4V)等により主に製作される。前縁保護体32は、登録された商標Inconel(商標登録)と一般的に呼ばれる鋼又は金属合金により、同様に良好に製作可能である。「インコネル」という用語は、本明細書において、ニッケル及びクロムにより合金化された鉄に基づく合金を参照するように使用される。
【0013】
前縁保護体32は、下端40から上端41まで、軸線Zに沿って高さHに亘って延び、前縁保護体32は、前縁18の上を覆う外側面50と、翼本体30に固定されるべき内側面51と、を有し、更に前縁保護体32は、圧力側翼部34と、吸込側翼部36と、保護体32の高さHに亘って圧力側翼部34及び吸込側翼部36を共に接続する、中央部分38と、を具備する。圧力側翼部34及び吸込側翼部36は、翼本体30において保護体32を位置決めするように機能する。保護体32の高さHの軸線Zに対して横に延びる、平面III−IIIにおける断面である、
図3に示すように、保護体32の外側面50と内側面51との間の中央部分38の厚さe1は、中央部分38に集中する衝撃に耐えるために、外側面50と内側面51との間の圧力側翼部34及び吸込側翼部36の厚さe2及びe3それぞれに比べて実質的により厚い。
【0014】
各翼16は、それが動作時にターボファン1の中心軸線Xの周りで回転するので、前縁18の接線方向速度は、翼の根元26から先端28へ進むにつれて増大する。公知の保護体において、翼に対する衝撃速度におけるこの増大する速度の影響を考慮するために、保護体の中央部分の厚さe1は、垂直軸線が保護体の高さHの軸線Zに対応していて且つ水平軸線が厚さe1に対応する、
図4の曲線100により示されるように、 安定している勾配又は増加さえする勾配を有する、増加関係の適用において、保護体の下端から上端へ進むにつれて増加する。
【0015】
それにもかかわらず、翼先端26は、入口がファン14よりも狭くてもよい、ケーシング50により部分的に保護される。従来技術の保護体と比較して、安全性に悪影響を与えることなく、翼先端26の近傍において、保護体32の中央部分の厚さe1を減少させることを想定することが可能である。従って、保護体32の中央部分38の厚さe1は、保護体32の下端40から始まる第1の構成部分S1に亘って、安定している即ち一定である勾配又は増大する勾配de1/dZで増加してもよいが、一方でこの第1の構成部分S1を超えると減少する、勾配を有する。例えば、
図4において曲線101で示される第1の実施の形態において、厚さe1は、第1の構成部分S1を超えて、上端41まで増加し続けるが、しかし減少する勾配de1/dZを有する。
図4において曲線102により示す第2の実施の形態において、厚さe1は、第1の構成部分S1と保護体32の上端41との間に位置する、第2の構成部分S2に亘って減少するように、勾配de1/dZが負になることを想定することさえも可能である。従って、曲線100により示される比較例に比べて、保護体32により翼16に追加される重さ及びとりわけ慣性を低減することが可能である。
【0016】
本発明は、特定の実施の形態を参照して説明されているが、特許請求の範囲により規定される本発明の一般的な範囲を逸脱することなく、これらの実施の形態に対して様々な修正及び変更を実施可能であることは明らかである。また、上述された様々な実施の形態の個々の特徴は、追加の実施の形態において組み合わされてもよい。その結果、説明及び図面は、限定的よりむしろ、例示的な意味で考慮されるべきである。