特許第6974346号(P6974346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974346改善された損傷耐性のためのポリオレフィン分散液及びエポキシ分散液ブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974346
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】改善された損傷耐性のためのポリオレフィン分散液及びエポキシ分散液ブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20211118BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20211118BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20211118BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C08L23/26
   C08L63/00
   C08K5/36
   C08G59/42
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-552181(P2018-552181)
(86)(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公表番号】特表2019-515062(P2019-515062A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017030341
(87)【国際公開番号】WO2017192419
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2020年4月24日
(31)【優先権主張番号】62/330,430
(32)【優先日】2016年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・アール・ビルズ
(72)【発明者】
【氏名】リアン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・エル・マロトキー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・ディー・ロミック
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−003657(JP,A)
【文献】 特開平07−304913(JP,A)
【文献】 特開平11−269206(JP,A)
【文献】 特開2006−241623(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/038574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08G59,C09D,C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散粒子がエポキシマトリックス中に分散しているエポキシフィルムを形成するための水性組成物であって、(i)前記組成物中の固体の総重量に基づいて、2〜30重量%の、(i)酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物であって、前記官能化ポリオレフィン分散液が、0.2〜5ミクロンの平均粒度を有する、酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物と、(ii)1つ以上のエポキシ樹脂の分散液であって、選択されたエポキシ樹脂が、150〜4,000のエポキシ当量を有し、かつ0.2〜1.0ミクロンの平均粒度を有する、1つ以上のエポキシ樹脂の分散液と、のブレンドを含み、前記官能化ポリオレフィン分散液が、前記組成物中の固体の総重量に基づいて、2〜8重量%の1つ以上のアニオン性界面活性剤で安定化され、さらに、前記組成物が、3〜8のpHを有し、及び前記(i)官能化ポリオレフィン分散液対前記(ii)エポキシ分散液の粒度比が、10:1〜1:1の範囲である、水性組成物。
【請求項2】
前記(i)官能化ポリオレフィン分散液対前記(ii)エポキシ分散液の粒度比が、7:1〜1:の範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記(i)酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物が、前記官能化ポリオレフィン分散液の総固体重量に基づいて、0.1〜2.0重量%の酸または無水物基を含有する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記(i)酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液が、酸官能化ポリオレフィン、無水物官能化ポリオレフィン、酸官能化ポリオレフィンのエポキシ付加物、無水物官能化ポリオレフィンのエポキシ付加物、及び上記のうちのいずれかと、酸または無水物官能化されていない1つ以上のポリオレフィンとの混合物から選択され、さらに、前記酸または無水物官能化ポリオレフィン中のポリオレフィンが、ポリオレフィンエラストマー、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリプロピレン、オレフィンブロックコポリマー、ポリオレフィンプラストマー、直鎖状低密度ポリエチレン、及びエチレン−C〜C12オレフィンコポリマーから選択される、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記(i)官能化ポリオレフィン分散液中の前記酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物が、重合形態で無水マレイン酸基を含有する、請求項3に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記(ii)エポキシ樹脂分散液が、ポリオールの直鎖状または二官能性グリシジルエーテルである少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂のための硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項8】
前記(i)酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液が、前記アニオン性界面活性剤として、ラウリル硫酸アルカリ金属塩またはエトキシル化ラウリル硫酸アルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項9】
前記水性組成物が実質的に溶媒を含まない、請求項1〜8のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載される水性組成物を作製する方法であって、1つ以上の界面活性剤、好ましくはエポキシ官能性非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤とのその混合物とともにエポキシ樹脂を水中に押し出しまたは混練して、(ii)水性エポキシ樹脂分散液を形成し、別に、アニオン性界面活性剤とともに酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物を水中に押し出しまたは混練して、(i)官能化ポリオレフィン分散液を形成することと、前記(i)官能化ポリオレフィン分散液と前記(ii)エポキシ分散液とをブレンドすることと、を含む、方法。
【請求項11】
水性組成物であって、(i)前記組成物中の固体の総重量に基づいて、2〜30重量%の、(i)酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物であって、前記官能化ポリオレフィン分散液が、0.2〜5ミクロンの平均粒度を有する、酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物と、(ii)1つ以上のエポキシ樹脂の分散液であって、選択されたエポキシ樹脂が、150〜4,000のエポキシ当量を有し、かつ0.2〜1.0ミクロンの平均粒度を有する、1つ以上のエポキシ樹脂の分散液と、のブレンドを含み、前記官能化ポリオレフィン分散液が、前記組成物中の固体の総重量に基づいて、2〜8重量%の1つ以上のアニオン性界面活性剤で安定化され、さらに、前記組成物が、3〜8のpHを有し、及び前記(i)酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液が、前記アニオン性界面活性剤として、ラウリル硫酸アルカリ金属塩またはエトキシル化ラウリル硫酸アルカリ金属塩を含む、水性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載される水性組成物を作製する方法であって、1つ以上の界面活性剤、好ましくはエポキシ官能性非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤とのその混合物とともにエポキシ樹脂を水中に押し出しまたは混練して、(ii)水性エポキシ樹脂分散液を形成し、別に、アニオン性界面活性剤とともに酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物を水中に押し出しまたは混練して、(i)官能化ポリオレフィン分散液を形成することと、前記(i)官能化ポリオレフィン分散液と前記(ii)エポキシ分散液とをブレンドすることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング中に使用するための水性ポリオレフィン分散液及びエポキシ分散液ブレンドであって、エポキシ樹脂水性分散液とブレンドされた2〜30重量%の1つ以上の酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液(POD)を含む、水性ポリオレフィン分散液及びエポキシ分散液ブレンドに関する。
【0002】
エポキシ樹脂は、コーティング、成形品、及び接着剤を含む様々な用途での使用が見出されている。従来、エポキシ樹脂は、それらが硬化して亀裂を生じ、耐衝撃性及び柔軟性に乏しい脆い製品を与えることから容易に損傷されることが判明している。エポキシコーティングの損傷耐性の改善は、ゴム、乾燥ラテックス、またはブロックポリマーの添加、エポキシの変性、及びエポキシとポリオレフィンとの溶融ブレンドを含む様々なアプローチによって達成されている。しかしながら、これらのアプローチの各々は、樹脂と添加剤との間の相溶性の欠如、化学変性の困難性または不一致、及び取り扱いを容易にする溶媒の必要性などの問題の選択に悩まされている。
【0003】
Malotkyらに対する米国特許第8,680,198号は、とりわけコーティングを作製するための第1の内相及び第2の内相を有する高固形分水性ポリマー複合分散液を開示している。Malotkyらの組成物は、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、及びポリオレフィンを含む、水性媒体中で従来重合されていない多くの樹脂及びポリマーを含む。しかしながら、Malotkyらの組成物は、耐損傷性エポキシ樹脂コーティングを形成する水性組成物を提供することができない。
【0004】
本発明者らは、他の性能特性(すなわち、耐腐食性、光沢、硬度、耐薬品性)に悪影響を及ぼすことなく、コーティングまたはフィルムが改善された損傷耐性を有することを可能にする水性組成物を提供する問題を解決するために努力した。
【発明の概要】
【0005】
1.本発明によれば、水性組成物は、(i)酸官能化ポリオレフィン、無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物、好ましくは無水物官能化ポリオレフィン分散物を含有する、組成物中の固体の総重量に基づいて、2重量%以上、または最大30重量%、または好ましくは3.5〜25重量%、またはより好ましくは5重量%以上、または20重量%以下、またはより好ましくは10〜18重量%の官能化ポリオレフィン分散液であって、0.2〜5ミクロン、または好ましくは0.3〜0.9ミクロン、またはより好ましくは0.55〜0.8ミクロンの平均粒度を有する、官能化ポリオレフィン分散液と、(ii)150〜4000、例えば150〜2000、または好ましくは150〜1000のエポキシ当量(EEW)を有し、かつ0.2〜1.0ミクロン、好ましくは0.3〜0.6ミクロンの平均粒度を有するエポキシ樹脂から選択される1つ以上のエポキシ樹脂、好ましくはポリオールの直鎖状または二官能性のグリシジルエーテルの分散液と、のブレンドを含み、官能化ポリオレフィン分散液は、硫酸基含有界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸アルカリ金属塩またはエトキシル化ラウリル硫酸アルカリ金属塩などの、組成物中の固体の総重量に基づいて、2〜8重量%、または好ましくは3〜6重量%の1つ以上のアニオン性界面活性剤で安定化され、さらに、組成物は、3〜8、または好ましくは3〜7.4、または最大7のpHを有する。
【0006】
2.(i)官能化ポリオレフィン分散液対(ii)エポキシ分散液の粒度比が、10:1〜1:2、または好ましくは5:1〜1:1、より好ましくは3:1〜1:0.85の範囲である、上記1に記載の水性組成物。
【0007】
3.(i)酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物が、ポリオレフィン分散液の総固体重量に基づいて、0.1〜2.0重量%、または好ましくは0.14〜1.5重量%の酸もしくは無水物基、例えば、重合形態の無水マレイン酸基を含有する、上記1または2に記載の組成物。
【0008】
4.(i)酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液が、酸官能化ポリオレフィン、無水物官能化ポリオレフィン、酸官能化ポリオレフィンのエポキシ付加物、無水物官能化ポリオレフィンのエポキシ付加物、及び上記のうちのいずれかと、酸または無水物官能化されていない1つ以上のポリオレフィンとの混合物から選択される、上記1、2、または3のいずれかに記載の水性組成物。
【0009】
4A.さらに、酸または無水物官能化ポリオレフィン中のポリオレフィンが、ポリオレフィンエラストマー、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリプロピレン、オレフィンブロックコポリマー、ポリオレフィンプラストマー、直鎖状低密度ポリエチレン、及びエチレン−C〜C12オレフィンコポリマーから選択される、上記の項目4に記載の水性組成物。
【0010】
5.(i)官能化ポリオレフィン分散液が、酸官能変性ポリオレフィン、好ましくは無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーまたは無水マレイン酸変性ポリオレフィンワックスをさらに含む、上記1、2、3、4、または4Aに記載の水性組成物。
【0011】
6.エポキシ硬化剤、例えば、ポリアミン、ジアミン、アミンエポキシ付加物、ジカルボン酸またはカルボン酸基含有ポリマー、例えば、ポリアクリル酸をさらに含む、上記1、2、3、4、4A、または5のいずれかに記載の水性組成物。
【0012】
6A.エポキシ硬化剤中のアミン水素モル当量及び/またはカルボン酸のモルの総数対(ii)エポキシ樹脂分散液中の1つ以上のエポキシ樹脂中のエポキシ当量の総モル数の比が、0.7:1〜2.4:1、または好ましくは0.8:1〜2.3:1、またはより好ましくは1.4:1〜2.25:1の範囲である、上記6に記載の水性組成物。
【0013】
7.溶媒を含まないか、または実質的に溶媒を含まない、上記1、2、3、4、4A、5、6、または6Aのいずれかに記載の水性組成物。
【0014】
8.酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液が、アンモニア、揮発性アミン、または苛性などの塩基で少なくとも部分的に中和される、上記1、2、3、4、4A、5、6、6A、または7のいずれかに記載の水性組成物。
【0015】
9.1つ以上の顔料、例えば、TiO、充填剤、及び/または増量剤、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、もしくはシリカをさらに含む、上記1、2、3、4、4A、5、6、6A、7、または8のいずれかに記載の水性組成物。
【0016】
10.別の態様では、本発明は、上記1〜9のいずれかの組成物から作製された基材またはフィルム上のコーティングを含む。
【0017】
11.上記1〜10のいずれかに記載の水性組成物を作製する方法であって、(i)分散液中の1つ以上の水性酸官能化もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ付加物と、(ii)1つ以上の界面活性剤、例えば、エポキシ官能性非イオン性界面活性剤を含む1つ以上の水性エポキシ樹脂分散液とを組み合わせることを含む、方法。
【0018】
12.水性酸官能化または無水物官能化ポリオレフィンのエポキシ付加物が、ローターステーターミキサー中で、酸または無水物官能化ポリオレフィンを、トルエンなどの好適な溶媒中に1つ以上のエポキシ樹脂とともに溶解させ、その後、得られた混合物を水中に分散させ、溶媒を除去して、(i)官能化ポリオレフィン分散液を形成し、次いで、それを(ii)水性エポキシ分散液とブレンドすることによって形成される、本発明の項目11に記載の方法。
【0019】
13.本発明の項目11に記載の方法であって、1つ以上の界面活性剤、好ましくはエポキシ官能性非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤とのその混合物とともにエポキシ樹脂を水中に押し出しまたは混練して、(ii)150〜4,000、例えば150〜2000、または好ましくは150〜1000のエポキシ当量(EEW)を有し、かつ0.2〜1.0ミクロンの平均粒度を有する水性エポキシ樹脂分散液を形成し、別に、水性組成物中の固体の総重量に基づいて、2〜8重量%のアニオン性界面活性剤とともに酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物を、水中に押し出しまたは混練して、(i)0.2〜5ミクロンの平均粒度を有する官能化ポリオレフィン分散液を形成することと、(i)官能化ポリオレフィン分散液と(ii)エポキシ分散液とをブレンドすることとを含む、方法。
【0020】
特に明記しない限り、すべての温度及び圧力の単位は、室温及び標準圧力(STP)である。
【0021】
括弧を含むすべての語句は、含まれる括弧内の事項及びその欠如のいずれかまたは両方を示す。例えば、「(メタ)アクリレート」という語句は、代わりに、アクリレート及びメタクリレートを含む。
【0022】
列挙されたすべての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、0.2〜1.0ミクロン、好ましくは0.3〜0.6ミクロンの平均粒度の開示は、0.2〜1.0ミクロン、0.2〜0.3ミクロン、0.2〜0.6ミクロン、0.6〜1.0ミクロン、0.3〜1.0ミクロン、または好ましくは0.3〜0.6ミクロンの平均粒度を含む。
【0023】
本明細書中で使用される場合、特に明記しない限り、「アミン水素当量」またはAHEWという用語は、ASTM D 2074−07(2007)を使用する滴定によって測定する場合、反応において1モル当量の水素を生じるアミンのグラム量を意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、特に明記しない限り、「平均粒度」という用語は、コールターLS13230粒度分析器(Beckman Coulter,Fullerton,CA)をレーザー散乱による製造業者の推奨手順に従って決定したときの体積平均粒度を意味する)。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ASTM」という用語は、ASTM International,West Conshohocken,PAの刊行物を指す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「EEW」または「エポキシ当量」という用語は、試薬(Metrohm USA,Tampa,FL)用Metrohm 801 Robotic USB試料プロセッサXL及び2つの800 Dosino(商標)投薬デバイスを使用して決定される量を意味する。使用される試薬は、酢酸0.10N及び臭化テトラエチルアンモニウム中の過塩素酸である。分析のための電極は、854lconnect(商標)電極(Metrohm)である。各試料について、1gの分散液をプラスチック試料カップに秤量する。次いで、30mLのTHF(テトラヒドロフラン)を最初に添加し、1分(min)間混合して、分散液上のシェルを破壊する。次に、32mLの氷酢酸を添加し、さらに1分間混合して、試料を完全に溶解させる。次いで、試料をオートサンプラー上に置き、関連するすべてのデータ(例えば、試料ID、試料重量)をソフトウェアに追加する。ここからスタートボタンをクリックして滴定を開始する。その後、15mLの臭化テトラエチルアンモニウムを添加し、次いで、過塩素酸を電位差終点に達するまでゆっくりと添加する。電位差終点に達すると、ソフトウェアは、使用される試料及び過塩素酸の量に基づいてEEW値を計算する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「ガラス転移温度」または「測定されたTg」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)によって−150℃〜150℃まで走査することによって決定されるポリマーの中間点ガラス転移温度を指し、2.00℃/分〜150.00℃のランプ速度で従来の線形加熱ランプでオーバーレイされた正弦波変調(振動)パターンで温度を上昇させ、Tg値としての熱流対温度遷移の中間点を取る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「メルトインデックス」という用語は、ASTM D−1238(2013)に従って決定される値を意味する。メルトインデックス値は、ポリエチレンポリマーについて190℃及び2.16kg荷重及びポリプロピレンポリマーについて230℃及び2.16kg荷重でのプランジャー負荷を有する加熱シリンジをdg/分(またはg/10分)で通過するポリマー溶融物の量として定義される。オレフィンコポリマーの場合、コポリマーの50重量%超が重合形態でプロピレンを含む場合、ポリプロピレンメルトインデックス試験が使用される。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「融点」という用語は、10℃/分のランプ速度を使用するDSC法によって決定された値を意味する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「phr」という用語は、100重量部の樹脂固体に基づく材料の量を意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「固形分」という用語は、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、分散剤、及び安定化剤、ならびに存在する場合、顔料、充填剤、または増量剤、及び本発明の組成物のための使用条件下で揮発性でない任意の添加剤の固体の組成物における重量%を指す。例えば、水、合体剤などの添加剤、及び本発明の組成物の使用条件下で揮発するアンモニアまたは低級アルキルアミンのような溶媒または塩基は、固体とはみなされない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「実質的に溶媒を含まない」という用語は、組成物の総固体に基づいて、そのような材料の総固体量が1200ppm以下、または好ましくは500ppm以下であることを意味する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「揮発性塩基」という用語は、室温〜200℃の温度において標準圧力で揮発する塩基を意味する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「wt.%」という用語は、重量パーセントを指す。
【0035】
本発明の水性組成物は、改善された損傷耐性特性を有する複合フィルムまたはコーティングを提供する。マレイン酸もしくは無水物(MAH)官能基、またはそのような官能基のエポキシ付加物を含有するポリオレフィン分散液(POD)及びエポキシ樹脂水性分散液は、硬度、耐腐食性、及び耐薬品性を保持または改善させながら、エポキシフィルム単独よりも耐衝撃性の良いフィルムを作製するために使用される。官能化ポリオレフィン分散液(POD)をエポキシ分散液と組み合わせて、本発明の水性組成物を形成することによって、PODをエポキシ樹脂中に十分に分散させる。これらのPOD粒子は、POD粒子がエポキシマトリックス内に分散しているエポキシフィルム中の強化剤として作用する。官能性がない場合、PODは、エポキシ中に十分に分散されず、性能特性は、エポキシ単独よりも悪い。本発明によれば、一般的により大きい粒度を有するポリオレフィンは、エポキシ樹脂連続相中に分散され、それによってエポキシ樹脂の特性を保持しつつ、損傷耐性コーティングを提供する。
【0036】
本発明の(i)官能化ポリオレフィン分散液は、1つ以上の酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物の水性ポリオレフィン分散液を含み、官能化ポリオレフィン分散液を作製するために使用されるポリオレフィンは、少なくとも50℃、または最大180℃、または好ましくは少なくとも60℃、または好ましくは少なくとも65℃、または好ましくは最大140℃の融点を有する。
【0037】
本発明の酸または無水物官能基化ポリオレフィン分散液を作製する際に使用するのに好適なポリオレフィンは、必要な0.2〜5ミクロンの平均粒度を有する任意のこのような官能化ポリオレフィンを含んでもよい。例えば、好適なポリオレフィンは、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、及びそれらの組み合わせであってもよい。好適な第1のポリオレフィン分散ポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、ならびにエチレン−ブチレン及びエチレンオクテンコポリマーなどのオレフィンブロックコポリマーを含んでもよい。
【0038】
本発明のポリオレフィンを変性することができる基の具体例としては、不飽和環状無水物及びそれらの脂肪族ジエステル、ならびに二酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、マレイン無水物及び化合物は、C−C10直鎖状及び分岐状ジアルキルマレエート、C−C10直鎖状及び分岐状ジアルキルフマレート、無水イタコン酸、C−C10直鎖状及び分岐状イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ならびにそれらの組み合わせから選択された。
【0039】
本発明の酸または無水物官能化ポリオレフィンは、5〜60、50未満、または7超の酸価を有することができる。酸価は、ASTM D−1386(2010)によって決定することができる。酸価は、滴定によって測定したときに酸官能性を中和するのに必要なmgKOH/gポリマーでKOHの量を指すことができる。あるいは、パーセント官能価は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって決定することができる。
【0040】
官能化ポリオレフィンの特定の例としては、例えば、無水マレイン酸官能化ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレンとオクテンとのコポリマー、それらのエポキシ樹脂付加物、及びそれらの組み合わせが挙げられ得る。例としては、高密度ポリエチレンなどの無水マレイン酸官能化ポリエチレンが挙げられるが、これらに限定されず、無水マレイン酸官能化ポリエチレンコポリマー、ターポリマー、及びブレンドも使用され得る。無水マレイン酸官能性は、グラフト化または他の反応方法によってポリマーに組み込むことができる。グラフト化する場合、無水マレイン酸の組み込みレベルは、典型的に、ポリマーの重量に基づいて3重量パーセント未満である。
【0041】
酸または酸無水物変性に好適なエチレンポリマーは、ポリエチレン、エチレンコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。例示的なエチレンポリマーとしては、例えば、米国特許第3,645,992号に記載されているような均質なポリマー、例えば、米国特許第4,076,698号に記載されているような高密度ポリエチレン(HDPE)、均質に分岐した直鎖状エチレン/プロピレンコポリマー、例えば、米国特許第5,272,236号及び第5,278,272号に開示されているプロセスによって調製することができる、均質に分岐した実質的に直鎖状のエチレン/プロピレンポリマー、ならびにエチレンオクテンポリマーも挙げることができる。エチレンポリマーは、60〜180℃の融点を有するべきである。
【0042】
酸または無水物変性のための入手可能なエチレンポリマー、プロピレン/エチレン、エチレン/オクテンコポリマーとしては、Affinity(商標)GA1000R、AMPLIFY(商標)GR−204、VERSIFY(商標)DP−4000.01として入手可能なポリマー、VERSIFY(商標)4200、VERSIFY(商標)4000、VERSIFY(商標)3200、VERSIFY(商標)3000、及びVERSIFY(商標)3300ポリマー(The Dow Chemical Company,Midland,MI)、ENGAGE(商標)8407ポリマー(Dow)、INFUSE(商標)9807ポリマー(Dow)、Vistamaxx(商標)プロピレン含有エラストマー(ExxonMobil Chemical,Houston,TX)、市販の高密度ポリエチレン、例えば、限定されないが、すべてDow Chemical Company製のDMDA−8007 NT 7(メルトインデックス8.3、密度0.965)、DMDC−8910 NT 7(メルトインデックス10、密度0.943)、DMDA−1210 NT 7(メルトインデックス10、密度0.952)、HDPE 17450N(メルトインデックス17、密度0.950)、DMDA−8920 NT 7(メルトインデックス20、密度0.954)、DMDA−8940 NT 7(メルトインデックス44、密度0.951)、DMDA−8950 NT 7(メルトインデックス50、密度0.942)、DMDA−8965−NT 7(メルトインデックス66、密度0.952)、DMDA−8940 HDPE(約40〜48g/10分のメルトインデックス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
酸もしくは無水物変性、またはエポキシ樹脂に対する変性及びその後の付加のための好適なプロピレンポリマーとしては、6D43ポリプロピレン(Braskem,Philadelphia,PA)が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、プロピレンポリマーは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有する。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」は、配列が0.85超、または0.90超、または0.92超、または0.93超の13C NMRによって測定されるアイソタクチックトライアド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアドは、当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,504,172号及び国際公開第WO00/01745号に記載されており、これらは、13C NMRスペクトルによって決定されるコポリマー分子鎖中のトライアド単位に関するアイソタクチック配列に言及する。
【0044】
本発明の(i)官能化ポリオレフィン分散液は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホネート基含有界面活性剤、またはスルホキシル酸含有界面活性剤などの硫酸基含有界面活性剤であり得る1つ以上のアニオン性界面活性剤を含む。
【0045】
本発明の(i)官能化ポリオレフィン分散液は、0.2〜5ミクロン、好ましくは400〜800nmの平均粒度を有する。本発明の(ii)水性エポキシ分散液の平均粒度は、官能化ポリオレフィン水性分散液組成物の平均粒度よりも一般的に小さいが、官能化ポリオレフィン分散液の平均粒度以上であってもよい。
【0046】
水性分散組成物の安定性のために、本発明において有用なエポキシ樹脂は、一般に直鎖状エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂、例えば、ジオール、ポリエーテルポリオール、またはビスフェノールのビス−グリシジルエーテルである。このようなエポキシ樹脂は、酸または無水物官能化ポリオレフィンを含有する本発明の水性分散組成物中に分散したままである。好適なエポキシ樹脂は、150〜4,000、例えば150〜2000、または好ましくは150〜1000のエポキシ当量(EEW)を有するものなどの任意の固体エポキシ樹脂であることができる。さらに、エポキシ樹脂は、過剰エポキシ樹脂と硬化剤との縮合生成物を含みエポキシ樹脂を生成する、プレアドバンストまたはbステージ樹脂であることができる。
【0047】
I型エポキシ樹脂または500???以下のEEWを有するエポキシ樹脂の水性分散組成物は、フィルム形成性であってもよい。より高いEEWを有するエポキシ樹脂については、1つ以上の合体剤または共溶媒を、フィルム形成を可能にするために必要な量で組成物中に含めてもよい。
【0048】
場合によっては、水性媒体中での分散を促進するために、塩基、例えば、モノエタノールアミン、ジメチルアミン(DMEA)、または2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)などのアミンを本発明の組成物を不安定化させることなく、かつpHが本発明の所望のレベル内にとどまる限り、水性組成物中に含めることができる。
【0049】
本発明の組成物の水相は、例えば、水であってもよく、または代替的に、水相は、水と1つ以上の有機溶媒、例えば、1つ以上の水混和性溶媒、もしくは1つ以上の水非混和性溶媒、またはそれらの組み合わせとの混合物であってもよい。本発明の酸または無水物官能化ポリオレフィン分散組成物、及びエポキシ樹脂分散組成物は、組成物の総重量に基づいて、15〜90重量%の水相を独立して含む。例えば、水相含有量は、組成物の総重量に基づいて、30〜80、または35〜75、または40〜70重量%の範囲であってもよい。
【0050】
本発明の組成物はまた、加工中または加工後に、1つ以上の添加剤または補助ポリマー、例えば、アクリルエマルジョンポリマー、ビニルアクリルエマルジョンポリマー、スチレンアクリルエマルジョンポリマー、酢酸ビニルエチレンエマルジョンポリマー、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上、1つ以上の充填剤、1つ以上の添加剤、例えば、触媒、湿潤剤、消泡剤、流動性向上剤、剥離剤、滑剤、アンチブロッキング剤、硫黄染色を隠すための添加剤、顔料湿潤剤/分散剤、沈降防止剤、UV安定剤、接着促進剤など、1つ以上の潤滑剤、例えば、脂肪酸エステルワックス、ケイ素含有ワックス、フッ素含有ワックス、ポリエチレンまたは任意の他の同様のポリオレフィンワックス、カルナウバワックス、ラノリンワックスなど、アルミニウム及び亜鉛などの1つ以上の金属充填剤、1つ以上の顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、雲母、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、ミルドグラス、アルミナ三水和物、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュ、及びクレーなど、1つ以上の共溶媒または合体剤、例えば、グリコール、グリコールエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、アルコール、ミネラルスピリット、芳香族溶媒、及び安息香酸エステルなど、1つ以上の分散剤、例えば、アミノアルコール及びポリカルボキシレート、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の腐食防止剤、例えば、ポリホスフェート及びメタホスフェート、ならびにそれらの塩など、1つ以上の防腐剤、例えば、殺生物剤、殺カビ剤、殺菌剤、殺藻剤、及びそれらの組み合わせ、1つ以上の増粘剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、疎水変性アルカリ可溶性エマルジョン(UCAR POLYPHOBE TR−116などのHASE増粘剤)、及び疎水変性エトキシル化ウレタン増粘剤(HEUR)などのセルロース系増粘剤、または1つ以上の追加の中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニア、及び炭酸塩、任意選択の1つ以上の溶媒または融合助剤と任意選択でブレンドされてもよい。
【0051】
さらに、本発明の組成物は、1つ以上の分散液、エマルジョン、懸濁液、コロイド懸濁液などとブレンドされてもよい。
【0052】
好ましくは、十分な耐衝撃性及び後方衝撃耐性を保証するために、本発明の水性組成物は、過剰の、例えば、1.4:1〜2.25:1の1つ以上の硬化剤のアミン水素当量またはカルボン酸基対(ii)エポキシ樹脂分散液中の1つ以上のエポキシ樹脂のエポキシ当量樹脂のモルのモル比を含む。
【0053】
本発明の酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン分散液、またはそのエポキシ樹脂付加物、及びエポキシ樹脂分散液は、当業者に認識される多くの方法によって形成することができる。一般に、官能化ポリオレフィン分散液及びエポキシ樹脂分散液は、別々に形成され、次いでブレンドされる。
【0054】
任意のポリオレフィン分散液またはエポキシ樹脂分散液を作製するために、分散装置は、バッチ、セミバッチ、または連続モードで操作することができる。分散液に使用されるミキサーの例としては、ローターステーター、マイクロフルイダイザー、高圧ホモジナイザー、超音波、衝突ジェット、コールズブレード、プラネタリーミキサー、及び押出機などの溶融混練装置が挙げられる。
【0055】
例えば、上に開示したような任意の酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、そのエポキシ付加物、または官能化ポリオレフィンとエポキシ樹脂との混合物、及び1つ以上のアニオン性界面活性剤は、水相(例えば、水)と一緒に押出機中で溶融混練することができる。または、水相なしで同じ材料を最初に配合し、次いで、水相(例えば水)及びアニオン性界面活性剤の存在下で押出機中で溶融混練して、それにより分散液を形成することができる。
【0056】
分散液は、最初に1〜20重量%、例えば、1〜5重量%、または1〜3重量%の水相を含有するように希釈され、その後、さらに、25重量%超の水相を含むように希釈されてもよい。
【0057】
さらなる希釈は、本明細書で提供される水及び/または溶媒を介して達成されてもよい。
【0058】
当該技術分野において既知の溶融混練装置を使用してもよい。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、一軸スクリュー押出機、または多軸スクリュー押出機、例えば、二軸スクリュー押出機が使用される。好適な押出機システムの一例は、「Extruder Screw」と題するPCT公開第WO2011/068525号に提供されている。
【0059】
本発明の官能化ポリオレフィン分散液またはエポキシ樹脂分散液を製造するための方法は、特に限定されない。例えば、押出機、ある特定の実施形態では、例えば、二軸スクリュー押出機は、背圧調整器、溶融ポンプ、またはギヤポンプに連結される。例示的な実施形態はまた、各々がポンプを含む初期水相リザーバを提供する。所望の量の初期水相が、ベースリザーバ及び初期水相リザーバからそれぞれ提供される。任意の好適なポンプが使用されてもよく、例えば、240バールの圧力で毎分150立方センチメートル(cc/分)の流量を提供するポンプを使用して押出機に塩基及び初期水相を提供することができる。または、液体注入ポンプは、200バールで300cc/分、または133バールで600cc/分の流量を提供する。
【0060】
ペレット、粉末またはフレークの形態の任意の酸もしくは無水物官能化ポリオレフィン、またはそのエポキシ付加物は、水性相流に追加的にもしくは排他的に添加されてもよく、またはフィーダーから、ベースポリマーが溶融されるもしくは配合される押出機の入口に供給されてもよい。同じことがエポキシ樹脂にも当てはまる。任意の分散剤または界面活性剤は、フィーダーを介してポリオレフィンまたはエポキシ樹脂と同時に押出機に供給することもできる。代替的に、分散剤は、ポリオレフィンまたはエポキシ樹脂を含む溶融化合物中に乳化ゾーンの前に入口を介して計量供給することができる。界面活性剤は、ポリオレフィンもしくはエポキシ樹脂とともに押出機に添加することができ、または界面活性剤は、押出機に別々に提供される。次いで、ポリマー溶融物は、混合物及び搬送ゾーンから押出機の乳化ゾーンに送達され、そこでは初期量の水相ならびに水相及び塩基リザーバからの任意の塩基が入口を通して添加される。
【0061】
さらなる流体媒体は、押出機の希釈ゾーン及び冷却ゾーンにおいて、水相リザーバから水相入口を介して添加されてもよい。典型的には、分散液は、冷却ゾーンにおいて少なくとも30重量%の水相に希釈される。さらに、希釈混合物は、所望の希釈レベルに達するまで、何回、希釈されてもよい。
【0062】
任意の分散液は、好適な熱交換器の使用によって押出機を出た後にさらに冷却されてもよい。
【0063】
押出機内の蒸気圧(例えば、スチーム圧)の蓄積を低減し、ローターステーターミキサーなどの二次混合装置においてポリオレフィン分散液を形成するために、水相は、二軸スクリュー押出機に添加されるのではなく、溶融物が押出機から出て二次混合装置に入った後、溶融物を含有する流れに添加される。
【0064】
本発明の組成物は、溶融混練押出機を使用せずに連続高剪断ミキサー中で形成することができる。したがって、1つ以上の液体または溶融ポリマーを含む第1の流れは、好適な液体ポンプ、例えば、シリンジポンプ、ギヤポンプ、または累進キャビティポンプから連続高剪断ミキサーに送られる。第1の流れは、第1の導管を通って流れ、第2の導管を通って流れる水相を含有する第2の流れと連続的に合流される。第1及び第2の流れは、分散剤、揮発性塩基または中和剤を有する変性ポリオレフィンのいずれかまたはすべての存在下で分散機に合流される。これらの剤は、第1もしくは第2の流れのいずれか、または別の流れとして添加されることができる。水相(例えば、水)を含む第3の流れを分散機の下流に添加することができる。流れの流速は、所望の量のポリマー相及び固体パーセントを有する分散液を達成するように調節される。分散機は、多数の連続インラインミキサー、例えば、IKA高剪断ミキサー、Oakesローターステーターミキサー、Rossミキサー、Silversonミキサー、または遠心ポンプのうちのいずれか1つであり得る。分散機の回転/分(rpm)設定を使用して、分散液中の分散した疎水性相の粒度を制御するのを助けることができる。システムは、ポンピングに好適な粘度でポリマー及び中和剤成分を提供するために加熱することができる。背圧調整器、ギヤポンプ、計量ポンプ、またはプロセスの出口付近の他の好適な装置を使用して圧力を制御することにより、蒸気形成が低減される。分散液は、好適な熱交換器の使用によって分散機を出た後、さらに冷却されてもよい。
【0065】
本発明の水性組成物を作製する方法の別の変形において、水性(i)官能化ポリオレフィン分散液は、酸または無水物官能化ポリオレフィンをエポキシと反応させることによって形成され、15〜30重量%、例えば、19〜28重量%のエポキシの付加物が形成され、続いて付加物をポリオレフィンと水中に分散させて官能化ポリオレフィン分散液を形成し、次いでこれを水性エポキシ分散組成物と混合する。
【0066】
ローターステーターにおけるさらに別のプロセスでは、本発明の水性組成物中の酸または無水物官能化ポリオレフィンは、エポキシ樹脂及びポリオレフィンのための好適な溶媒(すなわちトルエン)のポリオレフィン及びエポキシ樹脂固体の総重量に基づいて、100〜400重量部で、酸または無水物官能化ポリオレフィンを溶解し、これを水中に分散させ、溶媒を除去し、続いてこれをエポキシ分散液とブレンドすることによって作製されてもよい。
【0067】
さらに別のプロセスは、エポキシ樹脂及び酸または無水物官能化ポリオレフィンを好適な溶媒に溶解し、その溶液を水中に分散させ、溶媒を蒸発またはフラッシュして、例えば回転蒸発によって除去し、続いてオレフィン/エポキシ分散液をエポキシ分散液とブレンドすることを含む。
【0068】
本発明の酸または無水物官能化ポリオレフィン分散液及びエポキシ分散液から組成物を調製する間に、1つ以上の充填剤、増量剤、または顔料、1つ以上の添加剤または補助ポリマーのうちのいずれかをポリオレフィン及び分散処方プロセス後の第2の分散液に添加してもよい。
【0069】
本発明の組成物は、様々な方法、例えば、ローラーコーティング、スプレーコーティング、粉末コーティング、浸漬コーティング、電着コーティング、印刷、ウォッシュコーティング、フローコーティング、カーテンコーティングによって基材に適用されてもよい。
【0070】
得られるコーティング層の厚さは、1マイクロメートル(μm)〜250μm、例えば、2μmもしくは3μm〜150μm、200μm、または250μmの上限までの範囲であり得る。例えば、ポリオレフィン分散組成物は、1μm〜150μm、または1μm〜200μm、または1μm〜250μm、または2μm〜150μm、または2μm〜200μm、または2μm〜250μm、または3μm〜150μm、または3μm〜200μm、または3μm〜250μmを含んでもよい。1つ以上のコーティング層を基材に適用してもよい。
【0071】
本発明の組成物は、基材の少なくとも1つの表面に適用することができ、コーティング層を形成するために従来の乾燥方法によって乾燥させてもよい。そのような従来の乾燥方法としては、空気乾燥、対流オーブン乾燥、熱風乾燥、及び/または赤外線オーブン乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。基材の少なくとも1つの表面に適用された組成物は、例えば、室温もしくは周囲温度、または80〜200℃などの10〜250℃の温度で乾燥されてもよい。任意の基材に適用された組成物の温度は、ポリオレフィンポリマーの融点温度以上の範囲の温度に40分未満の期間、上昇させてもよい。例えば、基材の少なくとも1つの表面に適用された組成物の温度は、ポリオレフィン分散液中のポリオレフィンの融点温度以上の温度に20分未満、または10分未満、または0.5〜300秒の範囲の期間、上昇させてもよい。
【0072】
いったん基材に適用されると、本発明の組成物は、室温〜180℃の範囲の温度で、40分未満、例えば、20分未満、または10分未満、または5分未満、または2分未満、または1分未満、または20秒未満で乾燥されてもよい。例えば、基材の少なくとも1つの表面に適用された組成物は、60〜100℃の範囲の温度で、40分未満、例えば、20分未満、または10分未満、または5分未満、または2分未満、または1分未満で乾燥されてもよい、または代替的に、基材の少なくとも1つの表面に適用された組成物は、100〜180℃の範囲の温度で、40分未満、例えば、20分未満、または10分未満、または5分未満、または2分未満、または1分未満の期間、乾燥されてもよい。
【0073】
好適な基材は、スチール、アルミニウム、木材、木材複合材、例えば、延伸ストランドボード、石膏ボード、石、セメント、セメントボード、及び他の建設基材、例えば、石膏ボードガラスマットフェイサーである。
【0074】
実施例:以下の実施例により本発明を説明する。特に明記しない限り、以下の実施例のすべてにおいて、温度は室温であり、圧力は大気圧である。
【0075】
合成例:分散液の調製:分散液A〜J
以下の表2に開示されている組成を有する水性分散液A〜Jは、以下の表2に記載の条件を使用し、以下の一般手順を使用して、以下の表1に開示される原料から調製された:
以下の表2に列挙された成分1〜3は、制御された速度のフィーダーを使用して直径25mmの二軸スクリュー押出機に供給され、以下の表2に示すように、グラム/分(g/分)単位の供給速度を使用した。成分1〜3を押出機に通し、溶融させて液体溶融材料を形成した。
【0076】
押出機温度プロファイルを、以下の表2の「ポリマー溶融ゾーン」欄に列挙された温度まで上昇させた。水ならびに揮発性塩基及び/または中和剤を一緒に混合し、最初の水導入部位での中和のために表1に示す速度で押出機に供給した。次いで、希釈水を表2に示す速度で2つの別個のポンプを介して、1つまたは2つの場所(第1及び第2の場所)で押出機に供給した。押出機の温度プロファイルを、押出機の端部近くで100℃未満の温度に戻して冷却した。押出機の速度は、表2に記録されているように、大抵の場合、約470rpmであった。押出機出口で、背圧調整器を使用して、押出機バレル内の圧力を蒸気形成を減少させるのに好適な圧力に調節した(一般に、圧力は2MPa〜4MPaであった)。
【0077】
各水性分散液を押出機から出し、200マイクロメートル(μm)のフィルターで濾過した。得られた濾過された水性分散液は、重量パーセント(重量%)で測定した固形分を有しており、分散液の固体粒子は、ミクロン単位で測定した体積平均粒度を有し、下記の表2に記録した。ある場合には、粒度モードも記録される。水性分散液の固形分は、赤外線固体分析器を使用して測定し、COULTER(商標)LS−230粒度分析器(Beckman Coulter Corporation,Fullerton,CA)を使用して水性分散液の固体粒子の粒度を測定した。示された分散液の固体粒子の固形分及び平均粒度(PS)を表2に示す。
【0078】
【表1-1】
【0079】
【表1-2】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
エポキシ分散液1:上記の表1中のエポキシ分散液1、上記の表2中のポリオレフィン分散液と別々に、I型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)と二官能性エポキシ基含有非イオン性界面活性剤とを95℃でジャケット付き反応器中に89.52:9.17の比でプレブレンドすることによって形成した。均一になったら、材料を80℃に冷却した。冷却されたプレブレンド材料を、Witteギヤポンプ(Witte Pumps and Technology GmbH、Lawrenceville,GA)を使用して、加熱フィードライン(80℃)を通して60g/分の流速で125mm(4インチ)ローター/ステーターミキサーにポンプで送った。アニオン性スルホコハク酸塩界面活性剤の流れをローター/ステーターミキサーに1.31g/分でポンプで送った。水も10g/分でミキサーに添加した。ローター/ステーターミキサーを750rpmで運転し、安定した水性エポキシ分散液を得た。次いで、得られた高内相エマルジョンを、追加の水で第2のローターステーターで希釈して、47重量%の固体分散液及び〜0.5ミクロンの平均粒度を達成した。
【0083】
水性エポキシ分散組成物K及びL:上記の表3において、それぞれ5重量%及び15重量%のエポキシ樹脂1を含有する実施例K及びLの水性分散組成物をローター/ステーター装置を使用して調製した。この調製では、組成物の総重量に基づいて、指示された量の溶媒(実施例K中の75重量%トルエン)とともに20リットルの溝付きRotavapor(商標)フラスコ(Model Buchi R−220、Buchi Corporation,New Castle,DE)に、指示されたエポキシ樹脂及びポリオレフィン樹脂を別々に入れ、タンブルした材料が均一なポリマーブレンドになるまで90℃で加熱した。次いで、ブレンドを、第1の125mm(4インチ)のステンレス鋼ローター/ステーターミキサー及び第2の125mm(4インチ)のステンレススチールローター/ステーターミキサーを有する分散装置の樹脂供給タンクに移し、第1のローターステーターミキサーには、両側に1つおきに歯が除去されたローターが取り付けられ、第2のローター/ステーターは、すべての列/すべての歯のローター設計で取り付けた。樹脂供給タンク及び第1のローター/ステーターミキサーに通じるポリマーラインをそれぞれ70℃の温度に設定した。供給ポンプに到達するブレンドを助けるために、200mPA(30psig)の窒素ヘッド圧力を供給タンクに置いた。次いで、ポリマーブレンドを、標準的なゼニスギヤポンプ(BPBシリーズ、容量=1.752cc/rev,Colfax Corp.,Monroe,NC)を使用して分散装置にポンプで注入した。ギヤポンプを45Hzに設定して、60g/分の供給速度を得た。ギヤポンプをヒートトレースしながら70℃に加熱し、ポリマーブレンドを加熱した。加熱したポリマーブレンドを第1のローター−ステーターミキサーに導入した。Iscoシリンジポンプ(Teledyne Isco,Lincoln,NE)を使用して、界面活性剤2(上記の表1)を初期水性(IA)添加及び第1のローター−ステーターへの入口のすぐ上流のポリマーラインに供給した。IA、脱イオン水をポリマーと同軸で添加し、Altech(商標)301 HPLCポンプ(Alltech Supply,Inc.,Woodridge,IL)を使用してポンプで送った。ローター/ステーターの周波数を700rpmに設定した。ヘッドジャケットを20℃に設定したNeslab(商標)RTE20浴(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)で冷却した。IAは、固体として考慮されるポリマーもしくは樹脂固体と界面活性剤との合計の比の約1:1の供給比、または「油対IA」で開始された。次いで、IAの量をゆっくりと下げて、高内相エマルジョン(HIPE)固体レベルを高めた。固体レベルが増加するにつれて、平均粒度はより小さくなり、油対IA比は、系が水中油型エマルジョンから油中水型エマルジョンに移行する反転点に近づいた。IAのこの徐々の減少は、粒度を所望のサイズに系統的に低下させた。この場合、93重量%のHIPE固体で最小、最も狭い粒度分布を達成した。次いで、HIPEを第2のローター/ステーターにポンプで送り、所望の50重量%の固体(トルエンを固体として含む)までDI水で希釈した。分散液をロータリーエバポレーターフラスコ(Buchi R220)に注ぎ、揮散させた。水を3回戻して取り除き、分散液中のトルエンのレベルが最小であることを確認した。最終ストリップ後、固体を50重量%に調節した。溶媒除去中の変化を評価するために、粒度を再測定した。
【0084】
以下の表4及び5に示す割合で、一緒に簡単に混合することによって、上記の表2及び3、及びエポキシ分散液1に示すように官能化ポリオレフィン分散液からいくつかの水性分散液を配合した。以下の表4及び6Aでは、硬化剤中の総アミン水素当量対エポキシ樹脂の総エポキシ当量の比は、2:1であり、以下の表5及び表6Bでは、硬化剤中の総アミン水素当量対エポキシ樹脂の総エポキシ当量の比は、1:1である。試験結果は、以下の表6A、6B、7、及び9に報告し、実施例は、実施例の第1の文字が上記の表2または表3のうちの1つからのポリオレフィン分散液であり、実施例の第2の文字が以下の表4及び5のうちの1つに示される割合である慣例を使用して番号を付ける。例えば、実施例「F−1」は、以下の表5の実施例の割合1に示すように、70重量%のエポキシ固体の割合で、上記表2からのポリオレフィン分散液Fを有する。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
コーティングの調製:各実施例のフィルムは、リン酸処理されたスチールパネル上の152.4ミクロン(6ミル)のドローダウンバーを使用して作製し、室温で7日間硬化させた。
【0088】
試験方法:以下の試験方法を実施例で使用した:
粒度測定:粒度は、COULTER(商標)LS−230またはCOULTER LS−13−320粒度分析器(Beckman Coulter Corporation)を使用して測定した。ポリオレフィン分散液の体積平均粒度を決定した。
【0089】
固体パーセント:マイクロ波固体分析器または赤外線固体分析器を使用して固体パーセントを測定した。使用された1つの分析器は、OHAUS(商標)MB45赤外線水分計(Ohaus Corporation,Parsippany,NJ)であった。
【0090】
接着:コーティングパネル上の示されたコーティング層の「クロスハッチ接着」を、ASTM−D 3359−08(2008)に従って測定した。この方法は、コーティング層上の隣接する切れ目の間に1ミリメートル(mm)の距離を置いて、各方向に10個の切れ目を有する正方形の格子パターンを作製することを含む。切断領域にわたって感圧テープが適用され、次いでテープが基材表面に平行に引っ張られる。接着性は、目視観察によって評価し、下の表5−1に記載されているように、「5B」が基材への完全な接着を示し、「0B」が基材からコーティングが完全に除去されたことを示す「0B」〜「5B」までのスケールを使用して結果を評価する。
【0091】
【表5-1】
【0092】
耐溶剤性(MEK二重摩擦):コーティングパネル上の示されたコーティング層の耐溶剤性を、メチルエチルケトン(MEK)を使用してASTM D4752(2015)に従って試験した。この方法では、0.68kgのハンマーに銅線を取り付けた綿のチーズクロス片を使用して試料を試験する。チーズクロスをMEKで飽和させ、次いでコーティング上に置いた。ハンマーを前進させ、その後サイクル当たり約1秒の速度で戻した。コーティング層は、20回の二重摩擦サイクルごとに、損傷または剥離の兆候がないかどうかを視覚的に検査した。この手順は、裸のパネルが現れるまで(この観測点では、試料についてのMEK二重摩擦(DR)結果として二重摩擦数を記録する)、または合計200回の二重摩擦に達するまで繰り返した。あるいは、DJH Designsから入手可能な自動試験機を使用して、二重摩擦数を測定してもよい。自動試験機は、約0.15kg/cmの圧力を加える加重ブロックに取り付けられた綿パッドを、コーティングされたパネルを横切って前後に動かすことによって、半自動的に動作する。各前後が、1回の二重摩擦と呼ばれる。
【0093】
耐衝撃性:ASTM D−2794(2010)に従い、GARDNER(商標)落錘衝撃試験機(Byk Gardner Inc.,Columbia,MD)を使用して、コーティング層の耐衝撃性を測定した。この方法では、直接モードと間接モードの両方で圧子を測定し、測定単位は、kg−cm(inch−lbs)である。
【0094】
振り子硬度:BYK振り子硬度試験機を使用して行った以下のASTM D4366−95(1995)。
【0095】
耐腐食性:耐腐食性は、ある特定の回数の曝露時間後にスクライブに沿った現場の錆及び腐食を比較し、試料をエポキシ分散液のみからなる対照と比較することによって測定した。塩霧のキャビネットの設定は、ASTM B117−11:塩水噴霧(霧)装置(2011)の操作に関する標準実践と一致した。試験結果を以下の表6A、6B、及び7に示す。
【0096】
【表6A】
【0097】
上記の表6Aに示すように、本発明例C−1〜C−4は、光沢、硬度、及びMEK二重摩擦を著しく損なうことなく、エポキシ対照より改善された耐衝撃性を有するが、比較例A、B、D、及びEは、対照及び本発明例C−1〜C−4に比べて、耐衝撃性、特に後方衝撃耐性が劣っている。さらに、硬化剤のアミン水素当量を過剰に使用することにより、全体的なMEK二重摩擦ならびに前方及び後方衝撃が改善された。
【0098】
【表6B】
【0099】
上記表6Bに示すよう、発明例F−3及びF−4の耐衝撃性は、適切な比較例G−3、G−4、及びH−3よりも良好な前方衝撃耐性を有する。しかしながら、F−3及びF−4のMEK耐性は改善されておらず、それにより、F−3及びF−4のポリオレフィン粒子及びエポキシ樹脂粒子の平均粒度が同じである場合、2つの分散液は、互いに十分良好に容易に混合されないことが示唆される。H−1、H−2、及びH−3組成物では、ポリオレフィンは、組成物のエポキシ連続相中に分散せず、その代わりに表面にポリオレフィンを有し、したがってより低い光沢を示すが劇的に改善されたMEK耐性を与える。
【0100】
【表7】
【0101】
比較例I−1及びI−2、ならびにK1及びK2は、耐衝撃性またはMEK耐性の向上をもたらさないが、発明例I−3(15重量%のPOD固体)は、上記の表6Bのエポキシ分散液1対照に対して改善されたMEK及び耐衝撃性を提供する。このデータは、比較例K−1〜K−3における官能化ポリオレフィン分散液Kの平均粒度が大きすぎることを示唆している。このデータはまた、分散液Iのようなエポキシ付加物である官能化ポリオレフィン分散液が、ポリマー及び樹脂固体の10〜18重量%の好ましいより多量で使用されるべきであることを示唆している。
【0102】
【表8】
【0103】
上記配合物を作製した後、既知の量のPODを添加して、以下の表9の括弧内に列挙した重量%のポリオレフィン固体を得た。
【0104】
【表9】
【0105】
表9に示すように、上記の発明例C−1〜C−3の配合物は、エポキシ分散液1に対して改善された耐衝撃性、硬度、及び接着性をもたらし、発明例F−1〜F−3の配合物は、エポキシ分散液1と同様の耐衝撃性を有する改善されたMEK耐性を有する。これは、顔料、充填剤、及び増量剤を有する配合組成物が、配合されていない組成物と明確に機能することを示す。発明例H−3の配合物は、対照エポキシに対して改善されたMEK、耐衝撃性、硬度、及び接着性を示すが、発明例H−1の配合物は、改善された耐衝撃性及び大幅に改善されたMEK耐性をもたらし、発明例H−2の配合物は、より良好な接着性及び適度なMEK耐性をもたらす。