(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段定義されない限り、本願で使用されるあらゆる技術用語及び科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0012】
中皮腫は、標準治療に対して治療抵抗性のがんであり、世界的に致死的症例の数が増大し続けている。胸部の肺、ならびに腹部臓器、例えば胃、腸、肝臓及び心臓は、それぞれ胸膜、腹膜、及び心膜などの膜で包まれている。このような膜の表面を被覆する一部は、中皮と呼ばれる。このような中皮から生じる腫瘍は、中皮腫と呼ばれる。悪性中皮腫には、類上皮型、肉腫型及び二相型の3つの主な組織学的サブタイプがある。本明細書で使用される「悪性中皮腫」(MM)は、胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜に影響を及ぼす中皮腫を指す。現在まで、MMに対する最も有効な標準治療は、ペメトレキセド及びシスプラチンの組合せであり、これは41%の奏効率(RR)をもたらしている。シスプラチン及びペメトレキセドの組合せは、単剤による化学療法と比較して、中皮腫の患者の生存を改善している。しかし、MMはまだ、PFS/OS中央値の予後が治療の開始から12カ月までという致死的疾患であり、したがって新しい治療様式が必要である。
【0013】
本明細書で使用される「抗ウイルス応答」という用語は、ウイルス感染に対する細胞の応答を指し、それには、例えば、インターフェロンの産生、サイトカイン放出、ケモカインの産生、リンホカインの産生又はそれらの任意の組合せが含まれる。
本明細書で使用される「正常宿主細胞」及び「正常組織」という表現は、抗ウイルス応答が変化しない、非がん性の非感染細胞又は組織を指す。
本明細書で使用される「腫瘍溶解性作用物質」という用語は、腫瘍細胞の成長を阻害し、かつ/又は腫瘍細胞を死滅させることができる作用物質を指す。
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト及び動物、ヒト及び動物の組織、ならびにヒト及び動物の細胞を含めた、任意の生存生物を指す。
本明細書で使用される「患者」という用語は、本明細書に記載される併用治療を用いる治療から利益を受ける可能性が高い、MMなどの疾患に罹患している任意の対象(好ましくはヒト)を指す。
アデノウイルスは、正二十面体カプシドを有する、エンベロープのない直径70〜90nmのウイルスである。それらのゲノムは、25〜45キロベースの間で変わるサイズの直鎖状二重鎖DNAであり、両端に逆位末端配列(ITR)を有し、5’末端に末端タンパク質が結合している。
【0014】
正二十面体カプシドは、3種の主なタンパク質によって形成され、その中でもヘキソン三量体が最も豊富に存在する。カプシドの12個の頂点のそれぞれは、共有結合によって線維に結合しているペントン基部である五量体タンパク質も含有する。この線維は、ペントン基部から突出し、ノブを有する棒状構造の三量体タンパク質である。他のウイルスタンパク質IIIa、IVa2、VI、VIII及びIXも、ウイルスカプシドと会合している。タンパク質VII、小ペプチドミュー及び末端タンパク質(TP)は、DNAと会合している。タンパク質Vは、タンパク質VIを介してカプシドとの構造的連結を提供する。
本明細書で使用される「カプシド」という用語は、ヘキソン、線維及びペントン基部タンパク質を含む、ウイルスのタンパク質シェルを指す。
【0015】
すべてのヒトアデノウイルスは、それらの線維構造が類似している。ヒトアデノウイルスのそれぞれは、N末端尾部、繰り返し配列を有する軸、及び球状構造を有するC末端ノブドメインを有する。ノブドメインは、主に標的細胞受容体との結合に関与しており、その球状構造は、側方及び頂点の結合のために表面が大きくなっている。異なるサブグループのアデノウイルスの線維タンパク質は、長さ及び曲がる能力が最も明確に異なっている。
【0016】
線維は、標的細胞へのウイルスの結合に関与する。最初に、線維タンパク質のノブドメインが、標的細胞の受容体に結合し、第2に、ウイルスがインテグリン分子と相互作用し、第3に、ウイルスが標的細胞にエンドサイトーシスにより取り込まれる。次に、ウイルスゲノムは、エンドソームから核に輸送され、ウイルスゲノムの複製が始まり得る。
本明細書で使用される、カプシドの「Ad5/3キメラ現象」は、線維のノブ部分がAd血清型3に由来し、線維の残りがAd血清型5に由来する、キメラ現象を指す。
アデノウイルスは、ウイルスゲノムを複製する細胞機構に依存する。アデノウイルスは、静止状態の細胞に感染し、それらを細胞周期のS期のような状態に誘導して、ウイルスのDNA複製を可能にし得る。アデノウイルスゲノムは、前初期(E1A)、初期(E1B、E2、E3、E4)、中期(IX、Iva)、及び後期(L1〜L5)遺伝子に分けることができる。
E3遺伝子産物は、in vitroでのウイルス複製にとって必須ではないが、様々な宿主免疫応答の調節に割り当てられる。E3−gp19Kは、小胞体(ER)から原形質膜へのクラス1の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の輸送を阻害し、それによって、MHCによるTリンパ球へのペプチドの提示を防止する。
【0017】
アデノウイルスE1Aタンパク質は、元々、静止状態の正常細胞においてDNAの複製を誘導することができるpRb結合タンパク質として説明された。E1Aタンパク質の非常に重要な機能の1つは、pRbとE2Fの相互反応を撹乱し、それによってE2F転写因子を放出して、E2F応答性プロモーターを活性化し、それらが調節するアデノウイルスE2Aなどの遺伝子の転写を活性化することである。E1Aタンパク質の保存領域2(CR2)は、pRbのポケット結合ドメインとの強力な相互作用を形成し、CR1は、pRbのE2F結合の実際の撹乱を媒介する。CR2における24塩基対の欠失を特色とする、条件的に複製するウイルスが作成され、神経膠腫及び乳がん異種移植の治療において強力かつ選択的であることが示された。それらのウイルスのがん特異性は、機能障害E1AがE2F1転写因子を放出できなくなり、それによって遊離E2F1が必要になることから生じる。
【0018】
ONCOS−102アデノウイルスは、国際公開第2010/072900号に既に開示されている。ONCOS−102は、Ad5ゲノムとは異なる以下の改変を示す、血清型5アデノウイルス(Ad5)である。
1.E1A遺伝子定常領域2(CR2)における24塩基対(bp)の欠失。機能障害E1Aタンパク質は、E2F1転写因子に結合できず、そのE2F1転写因子を網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)から放出できなくなり、アデノウイルス遺伝子転写のために遊離E2F1が必要になる。遊離E2F1は、pRb経路がほとんどの場合に撹乱されているがん細胞において、豊富に存在する。それによって、E1Aに24bpの欠失を有するウイルスは、がん細胞において効率的に複製することができる。mRNAへのE1A遺伝子転写は、内因性E1Aプロモーターによって調節される。
2.965bpの欠失が、6.7Kタンパク質及びgp19Kタンパク質をコードする初期3(E3)領域に導入されている。これらのタンパク質は、アデノウイルスが宿主免疫調節機構から逃れる能力と関連しており、それらの機能は、アデノウイルス複製のために消費される。
3.ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)タンパク質をコードする導入遺伝子が、E3領域に挿入されており、6.7K及びgp19Kを置き換えている。mRNAへのGM−CSF遺伝子の転写は、内因性E3プロモーターによって調節される。換言すれば、ウイルス遺伝子をコードするONCOS−102アデノウイルスの965塩基対において、E3領域からgp19K及び6.7Kが欠失しており、それらを置き換えるために、導入遺伝子GM−CSFが導入されている。
4.血清型5線維ノブが、血清型3線維によって置き換えられており、それによって、血清型5受容体CARの代わりに血清型3受容体を介してウイルスを細胞内に侵入させる。
【0019】
ONCOS−102アデノウイルスでは、未変性E1Aプロモーターが存在し、すなわちこのプロモーターは、別のプロモーターによって置き換えられていない。
【0020】
つまり、ONCOS−102アデノウイルスでは、GM−CSFは、内因性ウイルスE3調節エレメント下にあり、それによって、感染の約8時間後に複製関連の導入遺伝子発現が開始する。ウイルスは、腫瘍選択的に複製し、したがって、腫瘍に限定されたGM−CSFの産生が生じる。腫瘍特異性は、24bpの欠失によって達成され、それによって、E1AのRb結合部位が廃止され、過去の報告において実証されている通り、ウイルスは、ヒトのほぼすべてのがんを含めたp16−Rb経路欠損を有する細胞において、選択的に複製する。ONCOS−102アデノウイルスの腫瘍溶解的効力は、野生型対照ウイルスよりも有効であることが示された。
【0021】
GM−CSFを発現する腫瘍溶解性アデノウイルスは、腫瘍溶解によってがん細胞に直接的に作用しながら、抗がん免疫を誘導する。GM−CSFは、抗原提示細胞(APC)、主に樹状細胞の動員及び成熟、ならびに先天免疫アームの細胞の動員と関連する、全身性抗腫瘍免疫の強力なインデューサーである。しかし、全身的に上昇したサイトカインレベルは、毒性副作用の危険性がある。GM−CSFの高血清濃度によって媒介された副作用の直接的な危険性に加えて、骨髄性抑制性細胞(MDSC)の動員により、間接的な危険性が生じる。MDSCの免疫抑制効果は、一般にがん患者にとって潜在的に有害であると同時に、がん免疫療法の状況では、特に逆効果になるおそれがある。したがって、GM−CSFの発現を腫瘍部位に限定することは、極めて重要である。
【0022】
ONCOS−102アデノウイルスは、良好な潜在的腫瘍溶解可能性があり、in vitroで機能的に活性なヒトGM−CSFを産生することが示されている(Koski et al. 2010)。免疫能を有するハムスターにおいて、ウイルスは、侵襲性の同系膵臓腫瘍の成長を阻止するのに有効であることが示された。腫瘍におけるウイルス複製の証拠は、ウイルスコピー数を測定することによって示された。複製の選択性は、直接的に注射された肝組織において、ウイルスコピー数が増大しなかったことにより実証された。腫瘍において複製と関連するGM−CSFの限局的産生が実証されたが、血清又は肝臓へのGM−CSFの漏出は、極めて少なかった。低用量のシクロホスファミドとONCOS−102アデノウイルスを組み合わせると、抗腫瘍効果が増強され得るが、シクロホスファミド単独治療では、腫瘍成長は著しく低減されなかったことも示された。
【0023】
全体的に、ONCOS−102アデノウイルスを用いる進行がん患者の治療は、安全であると思われ、有効性の可能性を示す有望な徴候が観測された。ウイルスは、単回投与後でも長期間にわたって血清中に存在するが、複数回の注射によって、腫瘍の形質導入が改善され、抗腫瘍性免疫が増強される可能性が高い。
本明細書で使用される「化学療法」は、疾患の治療に化合物又は薬物を使用することを指すが、化学療法という用語は、ほとんどの場合、がんの治療と関連する。がん化学療法用の化合物は、ほぼ100種の個々の薬物を包含する。
化学療法剤の最も一般的な副作用は、悪心及び嘔吐である。また、個体の大部分は、骨髄機能抑制、すなわち赤血球、白血球細胞及び血小板を産生する骨髄の抑制に苦しむ。これら及び他の副作用は、白血球細胞の破壊及び産生欠如を伴う免疫系の抑制、ならびに関連する日和見感染の危険性によっても悪化する。
幅広い化学療法剤に共通する他の副作用には、抜け毛(脱毛症)、食欲低下、体重減少、味覚変化、口内炎及び食道炎(炎症及び痛み)、便秘、下痢、疲労、心臓損傷、神経系の変化、肺損傷、生殖組織損傷、肝臓損傷、腎臓損傷、ならびに泌尿器系損傷が含まれる。
【0024】
がん細胞死は、免疫原性又は非免疫原性であり得ることが示されている。免疫原性細胞死(ICD)は、細胞表面の構造の変化を含み、免疫原性促進因子を放出させる。その後、ICDは、APCが腫瘍抗原を取り込むように引き付け、それらを処理し、最後に抗腫瘍性免疫応答(特異的な抗腫瘍T細胞)を誘発する。がん治療の成功は、化学療法、腫瘍溶解性ウイルス又はそれら2つの組合せのいずれを使用しようと、免疫原性の腫瘍細胞死の誘導及び抗腫瘍免疫応答の誘導に依存する。一部の化学療法剤及び腫瘍溶解性アデノウイルスは、ICDの強力なインデューサーとして作用し、したがって、抗がん活性に寄与する抗がん免疫応答に対して有益な影響を及ぼすことが知られている。ICDは、外側原形質膜におけるカルレティキュリン(CRT)などのICDバイオマーカーの存在、その後の高移動度群ボックス1タンパク質(HMGB1)及びアデノシン三リン酸(ATP)の細胞外放出によって評価され得る。
過去に開示されている通り、ONCOS−102アデノウイルスを用いるがん治療、ならびに化学療法剤を用いる治療は、単独で使用される場合、いくらかの有効性があることが示されている。本発明者らは、アデノウイルス遺伝子治療と、従来の治療などの他の治療の組合せが、いずれか1つの単独よりも、MMの治療において有効になり得るかどうかの研究に努めた。
【0025】
本明細書で使用される「併用治療」は、ONCOS−102及び化学療法剤、好ましくはペメトレキセド及びシスプラチンか、又はペメトレキセド及びカルボプラチンかのいずれかを、それを必要とする患者に投与することを指す。併用治療では、ウイルス及び化学療法剤は、数日間にわたって複数用量で投与され得る。化学療法剤の投与は、ウイルス投与の開始前に開始することができ、複数用量の化学療法剤は、複数用量のウイルスが投与される期間中にも、さらに投与され得る。治療プロトコールは、ウイルスで初回のプライミングを行い、その後、化学療法剤を投与し、次にウイルス及び化学療法剤の両方の投与を継続することも含み得る。別の実施形態では、併用治療は、まず、化学療法剤のペメトレキセド及びシスプラチンを含むが、併用治療中、シスプラチンはカルボプラチンで置き換えられる。このことは、例えば治療にシスプラチンが使用されると過度の副作用が現れるので、必要になる場合がある。他の医薬品も、併用治療と同時に投与され得る。
本明細書で使用される「同時的」は、本明細書に記載される併用治療の前、後又はそれと同時に投与された、医薬品又は治療を指す。同時治療の期間は、数分間から数週間で変わり得る。典型的に、本明細書に記載される併用治療と同時的な治療は、数日間又は数週間継続する。
【0026】
本明細書で使用される「プライミング」という用語は、従来の細胞傷害性の化学療法の能力を用いるアポトーシスを誘導する前治療を使用することを指す。腫瘍溶解性ウイルスを用いて行われた腫瘍プライミングによって、免疫原性がん細胞死が生じるが、このことは、細胞表面上にカルレティキュリンが提示され、天然アジュバント、具体的には高移動度群タンパク質B1(HMGB1)及び瀕死細胞内から出てくるATPが放出され、最終的にDCが刺激され、その後、適応免疫応答が活性化されることと関連する。腫瘍環境におけるこのウイルス誘導性変化は、有意義な抗腫瘍性免疫応答のプライミングには必須である。抗原提示細胞は、瀕死の腫瘍細胞から腫瘍抗原を捕捉し、それらをMHCクラスI及びIIの提示のために処理し、流入領域リンパ節に遊走し、抗原特異的B細胞及びT細胞を刺激する。例えば、ONCOS−102アデノウイルスは、細胞傷害性の腫瘍特異的CD8+T細胞を誘導し得る。本明細書で使用される「プライミング」という用語は、ウイルスの投与前に投与される場合、この種の免疫原性がん細胞死を引き起こす化学療法剤の能力も指す。他方では、化学療法剤を用いる腫瘍プライミングは、アポトーシスを誘導する前治療を使用する、間質腔の拡大も意味する。
【0027】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、所期の結果を果たすことができる、化合物、治療剤、ウイルス又は薬物の量を指す。例えば、化学療法剤及び/又はアデノウイルスの有効量は、臨床結果を含めた、有益な又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回又は複数回の投与で投与され得る。本明細書に記載される通り、有効量は、悪性中皮腫を寛解させ、安定化し、逆転させ、その進行を緩徐させ、かつ/もしくは遅延させ、又は悪性中皮腫を治癒させるのに十分な量である。本発明では、化学療法剤及びONCOS−102アデノウイルスの効果は、例えば、前記治療に対する腫瘍反応をモニタリングすることによってモニタリングされ得る。腫瘍反応のモニタリングは、当技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて実施され得る。例えば、腫瘍反応のモニタリングは、Ranki et al. (2014)に列挙されているものなどの細胞の免疫学的状態を測定する方法を用いて実施され得る。例えば、モニタリングは、腫瘍における腫瘍浸潤性リンパ球の存在を測定することによって行うことができ、TH1型の応答は、マイクロアレイを用いてモニタリングすることができ、IFNγ酵素結合immunospotアッセイ(ELISPOT)をモニタリングに利用することもできる。
したがって、有効量は、腫瘍において所望の効果又は反応を引き起こすことができるか、又は引き起こすために必要な量である。当技術分野で理解されている通り、有効量は、中でも、患者の病歴、ならびに使用される化学療法剤のタイプ及び/又は投与量などの他の因子に応じて変わり得る。
【0028】
本明細書で使用される「毒性」という用語は、化学療法剤の投与と関連する毒性事象を指す。このような事象には、好中球減少症、血小板減少、中毒死、疲労、食欲不振、悪心、皮膚発疹、感染症、下痢、粘膜炎、及び貧血が含まれるが、それらに限定されない。毒性作用は、当分野で公知の任意の従来の方法を用いてモニタリングされ得る。
本明細書で使用される「治療期間」という用語は、併用治療が実施される期間を指す。治療期間は、ONCOS−102及び化学療法剤の複数回の投与からなり得、投与は複数周期で実施され得る。治療期間は、数週間又は数カ月間継続し得る。治療期間は、最長1年間継続し得る。
【0029】
本明細書で使用される「投与期間」という用語は、アデノウイルス、化学療法剤、又は他の医薬品が患者に投与される期間を指す。投与期間中、単回用量又は複数回用量の当該薬剤が投与され得る。投与期間は、数分間、数時間、数日間、数週間、又は数カ月間であり得る。投与期間は、複数周期からなり得る。例えば、3週間(21日間)周期が、化学療法剤の投与に使用され得る。
白金系抗悪性腫瘍薬(非公式にはプラチンと呼ばれる)は、がんを治療するための化学療法剤である。これらは、白金の配位錯体である。カルボプラチン及びシスプラチンは、白金系抗悪性腫瘍薬である。
ペメトレキセドは、葉酸に化学的に類似しており、葉酸代謝拮抗剤と呼ばれるクラスの化学療法薬物に含まれる。ペメトレキセドは、プリン及びピリミジン合成に使用される3種の酵素であるチミジル酸シンターゼ(TS)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)を阻害することによって働く。ペメトレキセドは、前駆体であるプリンヌクレオチド及びピリミジンヌクレオチドの形成を阻害することによって、分裂正常細胞及び分裂がん細胞の両方の成長及び生存に必要なDNA及びRNAの形成を防止する。
【0030】
ペメトレキセドは、切除不能なMPMを治療するために、シスプラチンと組み合わせて使用されることがFDAによって承認されている(それぞれ500mg/m
2及び75mg/m
2)。大規模I第III相(Large I phase III)EMPHACIS治験では、シスプラチン単独と比較して、シスプラチン及びペメトレキセドの両方で治療した患者において、アウトカムが改善されたことが示された。シスプラチン単独では生存期間中央値が9カ月であったのと比較して(p=0.02)、併用群における患者の生存期間中央値は、12カ月であったことも示された。多くのMM患者においてシスプラチンの毒性が高いことに起因して、カルボプラチンが代替として試験されている。しかし、これらの第一選択の化学療法剤は、すべて、MMに対する有効性が低いことが示されている。
【0031】
治療組成物は、一般に特定の投与経路に対して製剤化される。本明細書に記載される併用治療では、ペメトレキセドは、その有効濃度で使用される。一例として、MMの治療では、ペメトレキセドは、500mg/m
2までの1日当たりの総用量で投与され得る。ペメトレキセドは、21日周期が使用される場合、例えば静脈内(i.v.)注入として、各21日周期の1日目に10分間かけて投与され得る。例えば、副作用が生じる場合、その用量は、200mg/m
2〜450mg/m
2、より好ましくは250mg/m
2〜375mg/m
2などに低減され得る。ペメトレキセドは、適切な場合には、腹腔内投与することもできる。
【0032】
本明細書に記載される併用治療では、シスプラチンは、その有効濃度で使用される。MMの治療では、シスプラチンの典型的な用量は、ペメトレキセド注入終了のおよそ30分後に開始して、2時間にわたるi.v.注入で75mg/m
2である。投与されるシスプラチンの量は、30mg/m
2〜75mg/m
2で変わり得る。例えば、副作用が生じる場合、その用量は、30mg/m
2〜70mg/m
2、より好ましくは35mg/m
2〜60mg/m
2、最も好ましくは37.5mg/m
2〜56.25mg/m
2などに低減され得る。シスプラチンは、適切な場合、腹腔内投与することもできる。
ONCOS−102アデノウイルスとの併用治療では、シスプラチン及びペメトレキセドは、0.75:10〜3:10の間のモル比で投与され得る。最も好ましくは、その比は、1.5:10である。
【0033】
本明細書に記載される併用治療では、カルボプラチンは、その有効濃度で使用される。MMの併用治療治療では、カルボプラチンの典型的な用量は、正常な腎機能の患者に対して400mg/m
2である。カルボプラチンは、ペメトレキセドが約10分間かけて注入され、注入が終了しておよそ30分後に開始して、30分間〜60分間にわたってi.v.注入され得る。しかし、カルボプラチンの用量は、一般に、患者の糸球体濾過率(GFR)及び濃度対時間曲線下標的面積(AUC、mg/ml×分による)を考慮するCalvert式(mg/m
2ではなくmgで算出される)に従って、総用量(mg)=(標的AUC)×(GFR+25)により算出される。したがって、カルボプラチン用量は、例えば副作用に起因して、特に腎機能低下に起因して調整され、低減され得る。
【0034】
ONCOS−102アデノウイルスとの併用治療では、投与用量は、典型的に、約500mg/m
2のペメトレキセド及び約AUC5のカルボプラチンである。好ましい一実施形態では、正常な腎機能を有する患者の場合、約500mg/m
2のペメトレキセド及び約400mg/m
2のカルボプラチンが投与され得る。しかし、投与量は、ペメトレキセド250mg/m
2〜500mg/m
2の間、及びカルボプラチン200mg/m
2〜400mg/m
2の間で変わり得る。ある特定の場合、特に化学療法剤が毒性作用を示す場合には、約375mg/m
2のペメトレキセド及び約300mg/m
2のカルボプラチンが投与され得る。したがって、ペメトレキセド及びカルボプラチンは、5:4のモル比で投与され得る。しかし、この比は、5:8〜5:2の間で変わり得る。
本発明の一目的は、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスであって、2種の化学療法剤と組み合わせてそれを必要とする患者に投与される、ONCOS−102アデノウイルスである。
本明細書に記載される併用治療では、ONCOS−102アデノウイルスは、複数回用量で、やはり複数回用量で投与され得る化学療法剤とは異なる回数で投与され得る。
本発明の別の目的は、2種の化学療法剤と組み合わせて患者に投与され、2種の化学療法剤が、ペメトレキセド及びシスプラチンであるか、又はペメトレキセド及びカルボプラチンであるかのいずれかである、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明のさらに別の目的は、ペメトレキセド及びシスプラチンと組み合わせて、それを必要とする患者に投与され、ペメトレキセド及びシスプラチンのモル比が10:0.75〜10:3である、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明のさらに別の目的は、ペメトレキセド及びシスプラチンと組み合わせて、それを必要とする患者に投与され、ペメトレキセド及びシスプラチンのモル比が10:1.5である、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明のさらなる目的は、ペメトレキセド及びカルボプラチンと組み合わせて患者に投与され、ペメトレキセド及びカルボプラチンのモル比が5:8〜5:2である、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明のさらに別の目的は、ペメトレキセド及びカルボプラチンと組み合わせて、それを必要とする患者に投与され、ペメトレキセド及びカルボプラチンのモル比が5:4である、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、ONCOS−102と、ペメトレキセド及びシスプラチン又はペメトレキセド及びカルボプラチンに加えて、シクロヘキサミド、シアノコバラミン、葉(Folatic)酸及びデキサメタゾンの様々な組合せも使用され得る。より具体的には、シクロヘキサミド、シアノコバラミン、葉酸及びデキサメタゾンからなる薬剤の一覧から、1種、2種、3種又は4種及びそれらの任意の組合せが、ONCOS−102とペメトレキセド及びシスプラチン、又はONCOS−102とペメトレキセド及びカルボプラチンを含む併用治療と同時に使用され得る。一例として、対象は、記載される併用治療の化学療法剤の投与前、投与中及び投与後に、過敏反応を低減又は排除する1種又は複数の補助剤を用いて、例えば化学療法剤の投与前、投与中及び投与後にデキサメタゾン、葉酸、及びビタミンB12の1つ又は複数を用いて治療され得る。ある特定の実施形態では、対象は、化学療法剤の投与前日、投与当日及び投与翌日に、デキサメタゾン2〜25mgを経口により治療され、化学療法剤の投与の7日前に開始される期間中、少なくとも1つの治療期間中ずっと、及び化学療法剤の最終投与後21日間、葉酸400〜1000μgを経口により毎日治療され、ある治療期間の化学療法剤の初回投与の1週間前に1000μgのビタミンB12を筋肉内により治療される。
【0036】
ONCOS−102を、それを必要とする患者に投与するために、任意の従来の方法が使用され得る。投与経路は、製剤又は組成物の形態、疾患、腫瘍の位置、患者、併存症及び他の因子に応じて変わる。本発明の好ましい一実施形態では、投与は、腫瘍内、筋肉内、動脈内、胸膜内、小胞内、腔内もしくは腹膜の注射、又は経口投与によって実施される。好ましくは、投与は、腫瘍内注射又は腹腔内注射として実施される。
注射は、腫瘍の位置及びサイズに従って、患者ごとに個別化され得る。例えば、ウイルスは、0.5ml〜10mlの体積で注射(i.t.)され得る。注射は、複数の、好ましくは5つの異なる腫瘍部位に行われ得る。腹腔内投与量の体積は、200ml〜800mlで変わり得る。好ましくは、投与体積は、500mlである。
【0037】
ベクターの有効用量は、少なくとも、治療を必要とする対象、腫瘍のタイプ、腫瘍の位置及び腫瘍の段階に応じて変わる。用量は、例えば約10
8ウイルス粒子(VP)〜約10
14VP、好ましくは約5×10
9VP〜約10
13VP、より好ましくは約8×10
9VP〜約10
12VPで変わり得る。本発明の特定の一実施形態では、用量は、約5×10
10〜5×10
11VPの範囲である。したがって、投与されるONCOS−102アデノウイルスの量は、5×10
10〜5×10
11VPの範囲であり得る。好ましくは、ONCOS−102は、3×10
11VP/5mlで投与される。他方では、プラーク形成単位で表すと、ONCOS−102は、前記患者の悪性中皮腫の腫瘍への直接注射によって、又は腹腔内により、約10
8〜10
12個のプラーク形成単位の用量で投与され得る。
本発明の一目的は、2種の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与され、ウイルスの量が5×10
10〜5×10
11VPである、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明の別の目的は、2種の化学療法剤と組み合わせて患者に投与され、3×10
11VP/5mlの量で投与される、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明のさらなる態様は、2種の化学療法剤と組み合わせて患者に投与され、化学療法剤及びウイルスが有効量で投与される、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
【0038】
本発明のさらに別の目的は、2種の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与され、腹腔内により、又は腫瘍への直接注射によって投与され、2種の化学療法剤が静脈内又は腹腔内される、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのONCOS−102アデノウイルスである。
本発明の一態様によれば、ONCOS−102アデノウイルスは、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのウイルスであって、2種の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与され、2種の化学療法剤の投与前に投与され、前記化学療法剤の投与期間中にも投与される、ウイルスである。
本発明の別の態様によれば、ONCOS−102アデノウイルスは、ヒト悪性中皮腫の治療において使用するためのウイルスであって、2種の化学療法剤が、ウイルスが投与される前に投与され、前記ウイルスの投与期間中にも投与される、ウイルスである。
【0039】
好ましい一実施形態によれば、併用治療の薬剤は、1カ月〜10カ月の間の期間中にウイルスを1回〜10回投与して初回プライミングを与え、次にウイルス投与開始の例えば1週間〜4週間後に化学療法剤を投与することによって投与され得る。投与は、例えば以下の逐次的順序であり得る。ウイルスを、それを必要とする対象に4カ月の期間中6回投与することによって、ウイルスによるプライミングを行う。典型的に、治療期間の初めにおいて、投与間の時間は、治療が進行したときよりも短い。化学療法剤、好ましくはペメトレキセド及びシスプラチン、又はペメトレキセド及びカルボプラチンの投与は、ウイルス投与を開始して3週間後に開始され得る。化学療法剤の投与は、投与が、例えば約3週間の周期で合計6回行われるように継続され得る。投与回数は、1回〜6回で変わり得る。
【0040】
本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、腫瘍細胞のビリオン媒介性腫瘍溶解を誘導し、腫瘍細胞に対するヒト免疫応答を活性化する。本発明の好ましい一実施形態では、この方法又は使用は、対象における制御性T細胞を下方制御することができる物質の投与をさらに含む。「制御性T細胞を下方制御することができる物質」は、T抑制因子又は制御性T細胞と識別される細胞の量を低減する作用物質を指す。これらの細胞は、以下の免疫表現型マーカー、CD4+、CD25+、FoxP3+、CD127−及びGITR+の1つ又は複数からなるとして識別されている。T抑制因子又は制御性T細胞を低減するこのような作用物質は、抗CD25抗体又は化学療法剤からなる群から選択され得る。
導入遺伝子GM−CSFの免疫調節機能は、武装した腫瘍溶解性アデノウイルスの中心的作用機序であり、さらに、アデノウイルス自体は、免疫系の強力な活性化因子であり、このことは、ウイルスの全体的な抗腫瘍有効性に著しく寄与する。
【0041】
本明細書で使用される「ウイルス感作物質」は、腫瘍溶解性ウイルスの有効性を改善し得る作用物質を指す。このような併用治療に適しているか、又はウイルス感作物質として使用され得る作用物質には、オール−トランスレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エルロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンが含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、使用されるウイルス感作物質は、シクロホスファミドである。
また、チェックポイント阻害剤、例えば抗PD−1/PD−L1又は抗CTLA4抗体(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ又はイピリムマブ)は、併用治療との併用に適している。
【0042】
本発明の一態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含む、方法である。ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤は、有効量で投与される。
本発明の別の態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、悪性中皮腫細胞を死滅させるか、又は悪性中皮腫細胞の成長を防止するのに十分な量及び時間で、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含む、方法である。
本発明の好ましい一態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、化学療法剤が、ペメトレキセド及びシスプラチン、又はペメトレキセド及びカルボプラチンのいずれかである、方法である。
【0043】
本発明の別の好ましい態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、前記化学療法剤が、ウイルスの投与期間の開始前に最初に投与され、ウイルスの投与期間中も投与される、方法である。
本発明の別の好ましい態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、前記ウイルスが、化学療法剤の投与期間の開始前に最初に投与され、前記化学療法剤の投与期間中も投与される、方法である。
本発明のさらに別の好ましい態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、ONCOS−102アデノウイルスが前記患者に1回〜10回投与され、化学療法剤が前記患者に1回〜6回投与される、方法である。
【0044】
本発明のさらに別の好ましい態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、ONCOS−102の前記投与が、前記患者の悪性中皮腫腫瘍への直接注射によって、又は腹腔内注射として、10
8〜10
12個のプラーク形成単位の用量で行われる、方法である。
本発明のさらに別の好ましい態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、投与されるONCOS−102アデノウイルスの量が5×10
10〜5×10
11VPの範囲である、方法である。
【0045】
本発明のさらに別の好ましい態様は、患者の悪性中皮腫を治療するための方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、前記化学療法剤が、250mg/m
2〜500mg/m
2の用量のペメトレキセド及び30mg/m
2〜75mg/m
2の用量のシスプラチン又は250mg/m
2〜500mg/m
2の用量のペメトレキセド及び200mg/m
2〜400mg/m
2の用量のカルボプラチンで投与される、方法である。
本発明のさらなる態様は、ヒト悪性中皮腫の治療におけるONCOS−102アデノウイルスの使用であって、ウイルスが2種の化学療法剤と組み合わせて患者に投与される、使用である。
【0046】
患者へのシクロホスファミド(CPO)の同時的投与は、併用治療期間中に行われ得る。シクロホスファミドは、いくつかの自己免疫障害でも使用されている一般的な化学療法剤である。シクロホスファミドは、いくつかの機構を介して腫瘍溶解性ウイルス有効性を改善することが示されている。シクロホスファミドは、先天的抗ウイルス応答を減弱し、抗腫瘍溶解性ウイルス中和抗体の作製を緩徐し、Tレグを標的化することができ、腫瘍の脈管構造に影響を及ぼして、腫瘍溶解性ウイルスの血管外漏出を増強することができる。いくつかの前臨床研究では、シクロホスファミドは、腫瘍溶解性ウイルスの免疫クリアランスを遅延させ、ウイルス感染の持続性を増強し、治療有効性を延長し得ることが示されている。本発明では、シクロホスファミドは、腫瘍に対する免疫応答を増強するために、ウイルス複製、ならびにNK及び細胞傷害性T細胞のGM−CSF誘導性刺激の効果を増強するためのウイルス感作物質として使用され得る。シクロホスファミドは、静脈内ボーラス用量又は低用量の経口メトロノミック投与として使用され得る。本発明の実施形態において使用され得る他の適切なウイルス感作物質には、テモゾロミド及びエルロチニブが含まれる。
制御性T細胞を低減するために、患者は、ONCOS−102の各注射の1〜3日前に、低用量のCPOを受ける。CPOは、例えば300mg/m
2のi.v.ボーラスとして投与される。ボーラスは、100〜600mg/m
2で変わり得る。CPOの投与経路は、例えば経口投与であってもよい。メトロノミック化学療法も使用され得る。
【0047】
また葉酸は、併用治療の開始前及び併用治療中にも患者に投与され得る。葉酸の投与は、併用治療の初回用量の化学療法剤の投与の少なくとも5日前に開始され得る。例えば、投与は、併用治療の化学療法剤の投与開始の1〜2週間前に開始され得る。葉酸は、毎日(経口投与;PO)投与することができ、投与は、併用治療中も継続され得る。投与は、化学療法剤の最終投与の約3週間後まで継続され得る。葉酸の典型的な用量は、4mg(PO)である。本発明の好ましい一態様は、それを必要とする患者の中皮腫を治療するための方法であって、(a)ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程と、葉酸を患者に投与する工程とを含む、方法である。
【0048】
シアノコバラミン(ビタミンB12)は、併用治療の開始前及び併用治療中も、患者に投与され得る。シアノコバラミンの投与は、典型的に、併用治療の化学療法剤の投与開始の1〜2週間前に開始される。シアノコバラミンは、例えば筋肉内注射(i.m.)として、9週間の間隔で、併用治療中も投与され得る。投与は、化学療法剤の最終投与の約3週間後まで継続され得る。シアノコバラミンの典型的な量は、1000mcg(μg)である。本発明の好ましい一態様は、それを必要とする患者の中皮腫を治療するための方法であって、(a)ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程と、シアノコバラミンを患者に投与する工程とを含む、方法である。
葉酸及びシアノコバラミンは、一般に、治療に関係する血液学的毒性及び胃腸管毒性を低減するために使用される。これらの副作用は、例えばペメトレキセドの投与と関連し得る。
【0049】
デキサメタゾンも、併用治療に付された患者に投与され得る。典型的に、デキサメタゾンは、併用治療の化学療法剤の投与前日、投与当日及び投与翌日に投与される。デキサメタゾンは、4mgでBD(すなわち1日2回)により5日間、6周期まで週3回の頻度で投与され得る。本発明の一目的は、それを必要とする患者の中皮腫を治療するための方法であって、(a)ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程と、(b)デキサメタゾンを患者に投与する工程とを含む、方法である。
【0050】
本明細書に記載される併用治療は、シクロホスファミドを患者に投与する工程をさらに含み得る。本発明の一目的は、それを必要とする患者の中皮腫を治療するための方法であって、(a)ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含み、工程(a)の前にシクロホスファミドを患者に投与する工程をさらに含む、方法である。
本発明のさらなる態様は、患者における腫瘍成長を低減するための方法であって、前記患者における腫瘍成長が低減される条件下で、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を前記患者に投与する工程を含む、方法である。
この方法は、併用治療の投与前に、患者が腫瘍を有すると同定する工程を含み得る。腫瘍診断は、任意の従来の方法で行われ得る。患者は、例えば画像診断技術を使用して、腫瘍を有すると同定され得る。この方法は、併用治療を患者に投与した後、腫瘍成長の低減を測定する工程をさらに含み得る。腫瘍の低減は、任意の従来の方法によって研究され得る。腫瘍成長の低減は、例えば画像診断技術を使用して測定され得る。
本発明の別の態様は、腫瘍の成長を阻害するための併用治療の使用である。腫瘍成長の阻害の目標は、例えば腫瘍質量の低減及び腫瘍体積の低減であり得る。さらに、併用治療は、腫瘍の拡大を阻害するために使用され得る。
【0051】
治療に関係する病変サイズの増大に相当する腫瘍の偽性進行は、腫瘍サイズに対する現在の併用治療の効果を明らかにすることを企図された画像化経過観察の結果に影響を及ぼし得ることにも留意されたい。この種の効果は、化学療法及び放射線療法を組み合わせた後、患者の約30%において観測された。したがって、偽性進行は、本明細書に記載される併用治療が使用される場合、患者のある特定の一部に存在し得る。これらの患者については、腫瘍サイズの低減は、治療の有効性の適切な指標ではない。
また、がん細胞の成長を低減する方法であって、有効量のONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を、治療を必要とする対象に投与する工程を含む、方法が開示される。
【0052】
また、ヒト患者における腫瘍又はがん細胞を阻害又は死滅させる方法であって、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤を用いて患者を治療することからなり、化学療法剤が、ペメトレキセド及びシスプラチン、又はペメトレキセド及びカルボプラチンのいずれかである、方法が開示される。
さらに、腫瘍又はがん細胞を死滅させる方法であって、腫瘍又はがん細胞を、ONCOS−102アデノウイルス及び2種の化学療法剤と接触させる工程を含み、化学療法剤が、ペメトレキセド及びシスプラチン、又はペメトレキセド及びカルボプラチンのいずれかである、方法が開示される。
またさらに、悪性中皮腫を治療するための方法であって、単独で投与されるONCOS−102アデノウイルス又は前記ウイルスなしに一緒に投与される2種の化学療法剤の効果と比較して、増強された治療効果を有する併用治療を提供するために、有効量のONCOS−102アデノウイルス及び有効量の2種の化学療法剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法が開示される。
【0053】
本発明の一実施形態では、ONCOS−102は、in situがんワクチンとして作用する。本明細書で使用される「in situがんワクチン」は、腫瘍細胞を死滅させ、かつ腫瘍細胞に対する免疫応答を増大するがんワクチンを指す。ウイルス複製は、免疫系に対する強力な危険信号であり(=TH1タイプの応答に必要とされる)、したがって、APCのGM−CSF媒介性の成熟及び活性化、ならびにNK細胞の動員に対する強力な同時刺激現象として作用する。腫瘍細胞溶解は、APCに腫瘍フラグメント及びエピトープを提示する一助にもなり、さらに、同時刺激は炎症によって生じる。したがって、エピトープ非依存性(すなわちHLA拘束性ではない)応答は、各腫瘍の状況で生じ、したがってin situで起こる。腫瘍特異的免疫応答は、腫瘍細胞溶解時に瀕死細胞から特異的腫瘍抗原が放出されると、腫瘍環境で活性化される。
本発明の好ましい一実施形態では、この方法又は使用は、同時的な放射線療法を対象に行う工程をさらに含む。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態では、この方法又は使用は、自己貪食を誘導する作用物質を対象に投与する工程をさらに含む。自己貪食とは、リソソーム機構を介して細胞自体の構成要素が分解することを含む異化プロセスを指す。「自己貪食を誘導する作用物質」は、自己貪食を誘導することができる作用物質を指し、それに限定されるものではないが、mTOR阻害剤、PI3K阻害剤、リチウム、タモキシフェン、クロロキン、バフィロマイシン、テムシロリムス、シロリムス及びテモゾロミドからなる群から選択され得る。本発明の特定の一実施形態では、この方法は、テモゾロミドを対象に投与する工程をさらに含む。テモゾロミドは、経口又は静脈内テモゾロミドのいずれかであり得る。
本発明の一目的は、ウイルス治療単独又は化学療法だけの使用と比較して、安全特性が改善しており、がんに対する効果が改善された、ONCOS−102腫瘍溶解性アデノウイルス及び化学療法剤の治療上有効な新規な使用を開発することであった。
【0055】
現在の実験結果では、単剤治療としてのONCOS−102が、in vitroでヒト中皮腫細胞株を死滅させ、治療に対して難治性のH226悪性胸膜中皮腫の異種移植モデルにおいていくらかの抗腫瘍活性を示したことが示された。それとは対照的に、悪性中皮腫のための現在の標準ケア(SoC)化学療法レジメン(ペメトレキセド+シスプラチン又はペメトレキセド+カルボプラチン)では、この中皮腫の異種移植モデルにおいて抗腫瘍有効性は示されなかった。しかし驚くべきことに、ONCOS−102をSoC化学療法レジメンと組み合わせると、相乗的な抗腫瘍効果が見られた。このデータは、悪性中皮腫の治療に対して、ONCOS−102をSoC化学療法と組み合わせる強力な理論的根拠を示している。
【0056】
化学療法は、ONCOS−102と共に行うと、現在の異種移植モデルにおいてICDマーカーの発現を増大した。過去には、ONCOS−102が、ハムスターにおいて機能的ヒトGM−CSFを産生し、腫瘍特異的免疫を誘導することが示されており、このことは、GMC−SFが、現在の異種移植モデルにおいても樹状細胞(DC)の動員及び活性化に関与し、T細胞を刺激し、最後に抗腫瘍免疫を発生させ得ることを示している。例に詳細に記載されるヒト中皮腫がんモデルでは、GM−CSFの機能は、免疫不全マウスの免疫系によって喪失した。しかし、中皮腫に対する免疫系調節に関するGM−CSFの実用性は、既に臨床研究において示されている(Ranki et al. 2014)。
【0057】
過去の臨床データによって、ONCOS−102は、腫瘍特異的免疫応答をプライミングすることができることが実証されており、このことは、化学療法に対して難治性の悪性胸膜中皮腫の患者において細胞傷害性の腫瘍特異的CD8+T細胞を誘導することを意味する(Ranki et al. 2014)。しかし、この現在の免疫不全動物モデルでは、化学療法の開始前のONCOS−102によるプライミングは、いかなるさらなる利益も示さなかった。このことは、免疫不全マウスモデルでは免疫系が非常に最小限の役割を果たすので、驚くべきことではない。
【0058】
現在のデータは、第一選択の化学療法と組み合わせたONCOS−102が、MMに対する効率的な治療として使用され得ることを強力に示唆している。ONCOS−102は、その安全性プロファイルに起因して、腫瘍だけで限局的に複製し、中皮腫細胞に対する高い指向性を呈した。動物研究中、主な副作用は記録されなかった。併用治療は相乗効果を示し、中皮腫に対して最も有効な治療であり、したがって、第一選択の標準化学療法より有効でもあった。さらに、ONCOS−102と化学療法の組合せは、免疫原性の腫瘍細胞死の誘導、及び最後に抗がん免疫応答の誘導の増強に起因して、腫瘍微小環境における免疫抑制性微小環境の主な障壁を克服するための強力なツールである。本発明者らは、併用治療がICDを増大することを示しており、このことは、腫瘍の免疫原性細胞死の活性が増強されたことを示唆している。さらに、本発明による併用治療は、中皮腫細胞におけるONCOS−102の感染力を改善した。この動物モデルにおけるGM−CSF機能は喪失したが、過去の研究では、このサイトカインは、APC及びナチュラルキラー細胞を直接的に動員することによって、ならびに腫瘍部位においてAPCを活性化し、成熟させることによって、重要な機能を果たすことが知られている。
本発明のアデノウイルスベクターは、目的の部位にベクターを輸送できることに加えて、導入遺伝子の発現及び持続性も保証する。さらに、ベクターならびに導入遺伝子に対する免疫応答は、最小限に抑えられる。
本発明は、従来の治療に対する治療抵抗性に関する問題を解決する。さらに本発明は、健康な組織への毒性又は損傷が少ない、選択的治療のためのツール及び方法を提供する。本発明の利点には、他の治療剤と比較して、副作用が異なり、少ないことも含まれる。重要なことに、この手法は、放射線治療を含めた他の多くの治療形態と相乗効果があり、したがって、併用レジメンにおいて使用するのに適している。
【0059】
本発明は、腫瘍細胞が、ビリオンによって引き起こされた腫瘍溶解によって破壊される、がん治療を達成する。さらに、ナチュラルキラー細胞(NK)及び樹状細胞(DC)の活性化を含めた、ヒト免疫応答を活性化する様々な異なる機構が、本発明の治療上の使用のために動員される。
したがって本願は、悪性細胞に対して宿主の免疫系を有効に動員すると同時に、優れた安全記録を維持しながら、悪性細胞において直接的な腫瘍溶解活性及び化学療法活性を提供するための戦略を記載し、その方法及び手段を提供する。
本発明の態様は、効率的で正確な遺伝子導入、ならびにがん治療における特異的で十分な腫瘍死滅能の増大を達成するための新規な方法及び手段を対象とする。
【0060】
化学療法剤の使用と組み合わせた腫瘍溶解性アデノウイルスを用いる本発明の治療の予期しない有効性により、in vivo研究で実証される通り、悪性中皮腫のための現在の標準ケア(SoC)化学療法レジメン(ペメトレキセド+シスプラチン、又はペメトレキセド+カルボプラチン)と比較して、治療有効性の著しい改善が提供される。
つまり、提示されたデータは、悪性中皮腫の治療に対して、ONCOS−102を第一選択の化学療法と組み合わせる強力な理論的根拠を示している。
【実施例】
【0061】
以下の例は、本発明の様々な実施形態を単に例示する目的で提示されており、本発明を制限することを意味しない。当業者は、本発明が目的を達成し、前述の目標及び利点、ならびに本明細書に固有の目的、目標及び利点を得るために、十分に適合されることを容易に理解されよう。特許請求の範囲によって定義される本発明の精神に包含される、本明細書における変更及び他の使用を、当業者は思い付くであろう。
【0062】
ONCOS−102の構築
ヒトGM−CSFをコードするキメラ腫瘍溶解性アデノウイルス(ONCOS−102)の構築及び特徴付けは、既に説明されている(国際公開第2010/072900号及びKoski et al.)。それから間もなく、アデノウイルスの標準調製技術を使用して、Ad5/3−D24−GMCSFが作製され、増幅された。キメラ5/3線維であるpAdEasy5/3を含有するpAdEasy−1由来のプラスミドを、大腸菌において、Ad5/3luc1ウイルスゲノム及びpAdEasy−1のBstXI消化8.9kbフラグメントの相同組換えによって作成した。次に、E1Aに24bp欠失を含有するシャトルベクター(pShuttleD24)を、PmeIで線状化し、pAdEasy5/3を用いて組み換えてpAd5/3−D24を得た。ヒトGMCSF遺伝子をE3領域に挿入するために、Ad5ゲノム由来のSpeIからNdeIのフラグメントをpGEM5Zf
+(Promega、ウィスコンシン州、マディソン)のマルチクローニング部位に挿入することによって、E3−クローニングベクターpTHSNを作成した。さらに、pTHSNを、SunI/MunIで消化し、E3領域に965bp欠失(6.7K及びgp19Kが欠失)を作成した。ヒトGM−CSFをコードする432bp相補的DNA(Invitrogen、カリフォルニア州、カールスバッド)を、遺伝子にフランキングする特異的制限部位SunI/MunIを特色とするプライマーで増幅し、次にSunI/MunI消化pTHSNに挿入した。pAd5/3−D24−GMCSFを、大腸菌において、FspI線状化pTHSN−GMCSFとSrfI線状化pAd5/3−D24を相同的に組み換えることによって作製した。Ad5/3−D24−GMCSFウイルスゲノムを、PacIで消化し、増幅及びレスキューのためにA549細胞にトランスフェクトすることによって放出させた。すべてのクローニング相を、PCR及び多重階制限消化により確認した。シャトルプラスミドpTHSN−GM−CSFを、配列決定した。野生型E1が存在しないことを、PCRを用いて確認した。E1領域、導入遺伝子、及び線維を、最終ウイルスにおいて、配列決定及びPCRを用いてチェックした。A549細胞に対して、Oncos Therapeutics(フィンランド、ヘルシンキ)によるcGMPの原理に従ってウイルス産生を行って、野生型組換えの危険性を回避した。ウイルス原液の緩衝液製剤は、10mmol/lのTrizma塩基、75mmol/lのNaCl、5%(質量/体積)スクロース、1mmol/lのMgCl、10mmol/lのL(+)ヒスチジン、0.5%(体積/体積)EtOH、0.02%Tween、100μmol/lのEDTAであり、0.9%(質量/体積)NaCl溶液(B.Braun、ドイツ、メルズンゲン)を希釈剤として使用した。ONCOS−102は、GLPのBiovian(Turku、フィンランド)によって産生されたものであり、使用まで−80℃で保存した。ONCOS−102を、使用するために適用直前に解凍し、使用まで氷上で保存した。ONCOS−102を、解凍した後に層流ボックス内で希釈して、必要な濃度を得、注射シリンジを調製し、使用まで氷上で保存した。
【0063】
細胞株
ヒト類上皮中皮腫細胞株JL−1(ACC596、DSMZから購入した)を、20%熱不活化ウシ胎児血清(FBS、16000−044、Gibco)、2mMのL−グルタミン、1%ペニシリン&ストレプトマイシン(15140−122、Gibco)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、10567−014、Gibco)中で培養した。ヒト悪性二相型中皮腫MSTO−211H(ACC390、DSMZから購入した)及びヒト上皮中皮腫NCI−H226(H226、CRL−5826、ATCCから購入した)を、10%熱不活化FBS(16000−044、Gibco)、2mMのL−グルタミン、1%ペニシリン&ストレプトマイシン(15140−122、Gibco)を補充したRPMI1640(A10491−01、Gibco)中で培養した。すべての細胞株を、5%CO
2を用いて37℃でインキュベートした。
【0064】
化学療法剤
ペメトレキセド二ナトリウム(sc−219564)、シスプラチン(sc−200896)及びカルボプラチン(sc−202093)は、すべてSanta Cruz Biotechnologyから購入し、使用前に滅菌水で再構成した。
ペメトレキセド(pem)10mgを、滅菌水1mlに懸濁させて、10mg/mlの溶液を得た。この溶液を原液として使用し、室温で保存した。物質を、溶液の添加時に1〜5分間振とうして、均質な溶液を得た。原液を、0.9%NaClでさらに希釈し、100μl中10mg/kg/マウスを使用した。
シスプラチン(cis)150mgを、滅菌水150mlに懸濁させて、1mg/mlの溶液を得た。この溶液を原液として使用し、室温で保存した。物質を、溶液の添加時に1〜5分間振とうして、均質な溶液を得た。原液を、0.9%NaClでさらに希釈し、100μl中1.5mg/kg/マウスを使用した。
カルボプラチン(car)25mgを、0.9%NaCl10mlに懸濁させて、2.5mg/mlの溶液を得た。この溶液を原液として使用し、室温で保存した。物質を、溶液の添加時に1〜5分間振とうして、均質な溶液を得た。原液をさらに希釈し、100μl中8mg/kg/マウスを使用した。
【0065】
細胞生存率−in vitro腫瘍細胞死アッセイ
中皮腫細胞を、96ウェルプレート上に1ウェル当たり1.0×10
4個の細胞で播種した。終夜インキュベーションした後、細胞に、ウイルス粒子/細胞比10(VP/細胞)のONCOS−102を感染させた。ウイルス及び化学療法剤を、5%FBSを含有する培地で希釈した。ペメトレキセド、シスプラチン及びカルボプラチンを、それぞれ以下の予め選択された準最適濃度、0.625mg/ml、0.0026mg/ml、0.0625mg/ml(H226細胞)、0.625mg/ml、0.0006mg/ml、0.00196mg/ml(Jl−1細胞)、0.083mg/ml、0.0026mg/ml、0.0625mg/ml(MSTO−211H細胞)で試験した。以下の8つの異なる治療の組合せを評価した。ONCOS−102単独、ペメトレキセド+シスプラチン、ペメトレキセド+カルボプラチン、ONCOS−102+ペメトレキセド+シスプラチン、ONCOS−102+ペメトレキセド+カルボプラチン、ONCOS−102+ペメトレキセド+シスプラチン(プライミング:最初にウイルスを投与し、感染の24時間後に化学療法を添加した)、ONCOS−102+ペメトレキセド+カルボプラチン(プライミング:最初にウイルスを投与し、感染の24時間後に化学療法を添加した)及びmock(増殖培地だけ)。細胞生存率を、製造者の使用説明書(G3582、Promega)に従って、MTSによって3日後に決定した。
【0066】
アポトーシス細胞及び壊死細胞のin vitro分析
中皮腫細胞を、6ウェルプレート上に5×10
5個の細胞/ウェルで播種した。細胞に、10VP/細胞のONCOS−102を感染させ、前述の治療スキームに従って化学療法剤を補充した。アポトーシス細胞及び壊死細胞の量を、TACSアネキシンV−FITCキットを用いて、フローサイトメーター(4830−01−K、Trevigen Inc.)によって、製造者の使用説明書に従って48時間後に測定した。
【0067】
in vitroでの腫瘍細胞死の免疫原性
CRT曝露。細胞株を、6ウェルプレート上に5×10
5個の細胞/ウェルにより2組で播種した。細胞に、10VP/細胞のONCOS−102を感染させ、かつ/又は先に提示の治療の組合せによる化学療法剤を加えた。24時間後(H226、Jl−1)及び48時間後(MSTO−211H)、細胞を回収し、4℃において40分間にわたって、1:1000希釈したウサギポリクローナル抗カルレティキュリン抗体(ab2907、Abcam)で染色し、その後、1:100希釈したAlexa−Fluor 488二次抗体(A21206、Invitrogen)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0068】
HMGB−1放出。細胞株を、細胞培養プレート上に3組で播種し、10VP/細胞のONCOS−102を感染させ、かつ/又は先に提示の治療の組合せによる化学療法剤を加えた。72時間後、上清を収集し、Elisaキットを用いて製造者の使用説明書(ST51011、IBL International)に従ってHMGB−1を測定した。
ATP放出。細胞株を、細胞培養プレート上に3組で播種し、前述の通り治療した。上清を、48時間後(Jl−1、MSTO−211H)及び72時間後(H226)に収集し、発光分析のために、ATP決定キットを用いて製造者のプロトコール(A22066、Invitrogen)に従って分析した。
【0069】
in vitroでのウイルス感染力−免疫細胞化学アッセイ(ICC)
中皮腫細胞株を、24ウェルプレート上に6×10
5個の細胞/ウェルにおいて5組で播種し、前述の8つの異なる治療の組合せを用いて治療した。24時間後、上清を吸引し、細胞を、氷冷メタノール(322415−100ML、Sigma−Aldrich)を用いて15分間インキュベーションすることによって固定した。ONCOS−102の感染力の決定は、感染細胞内のウイルスヘキソンタンパク質を視覚的に定量することに基づいて行った。簡潔には、細胞を、1:2000希釈したマウス抗ヘキソン抗体(NB600−413、Novus Biologicals)で、暗室中でRTにおいて1時間にわたって染色し、その後、1:500希釈したビオチン−SP−コンジュゲート二次抗体(115−065−062、Jackson Immuno Research)で、暗室中でRTにおいて1時間にわたって染色した。その後、Extravidin−ペルオキシダーゼ(E2886−1ML、Sigma−Aldrich)を1:200で添加し、暗室中でRTにおいて30分間にわたってインキュベートした。最後に、感染細胞を、最長5分間、染料:DAB(D3939−1SET、Sigma−Aldrich)を添加することによって可視化した。5つの複製(ウェル)ごとに、非オーバーラップフィールドの5つの画像を、AMG EVO XL顕微鏡を使用して得た。感染力データを、5つのウェルのスポットの平均数として提示する。
【0070】
中皮腫細胞株におけるCAR、CD46、及びDSG2の発現
ヒトアデノウイルスは、コクサッキーウイルスB及びAd受容体(CAR)、CD46又はデスモグレイン2(DSG−2)に結合すると細胞に感染する。中皮腫細胞を、4℃で40分間にわたってマウスモノクローナル抗CAR抗体(1μg/1×10
6個の細胞)(sc−56892 FITC、Santa Cruz Biotech)で、又は4℃で40分間にわたってマウスモノクローナル抗CD46抗体(1μg/1×10
6個の細胞)(ab789、Abcam)もしくはマウスモノクローナル抗DSG2抗体(1μg/1×10
6個の細胞)(ab14415、Abcam)で標識し、その後、フローサイトメトリー測定のために、1:2000希釈したAlexa−Fluor 488二次抗体(a21206、Abcam)で標識した。
【0071】
用量レベル及び経路の正当化
導入遺伝子GM−CSFの免疫調節機能は、ONCOS−102の中心的作用機序である。さらに、アデノウイルス自体は、先天的免疫系の強力な活性化因子である。BALB/cヌードマウスは免疫不全であり、したがって、ウイルスの複製依存性腫瘍溶解機能だけを研究することができ、それによって、主な作用機序(免疫媒介効果)は喪失されている。2E+8/マウス及び1E+8/マウスの用量を試験した2つのパイロット研究の結果に基づいて(
図5及び6)、5E+7VP/腫瘍i.t.(1E+8VP/マウス)の用量を選択した。ONCOS−102及び化学療法の潜在的に相加的/相乗的な組合せの効果を評価できるように、準最適ウイルス用量(=根治的ではない)を選択した。注射経路は、臨床治験で使用される経路、すなわち腫瘍内に基づいて選択した。
化学療法剤の用量及び投与経路は、技術的な実現可能性に基づいて選択した。
【0072】
動物の選択、無作為化、群割当て、飼育、食餌及び水、ならびに順応
動物を、複数群に無作為に分類した。動物群を、別々のケージに飼い、それらのケージに研究カードを取り付けた。カードには、研究番号、治療群、個々の動物のID、ならびにそれらの起源及び到着日を記した。各ケージの個々の動物には、識別のために耳介穿孔で目印を付した。ケージ間で動物が混合することを回避するために、1度に1つのケージだけを取り扱った。
動物を、バイオセーフティーレベル2(BSL2)の施設において湿度及び温度モニタリング環境で飼育した。動物を、フィルタの蓋を備えた、個々に換気されたプラスチックケージ(GreenLine、Scanbur)で飼育した。
動物は、提供された標準ペレット食を自由に摂取した。水は、順応及び研究期間中、自由に供給された。
動物を7日間順応させた後、実験パートを開始した。すべての動物が、順応期間中ずっと良好な健康を維持した。
【0073】
臨床的観測
すべての動物を、順応及び投与期間中、さらに各治療の60分後に、臨床徴候、罹患率及び死亡率について毎日観察した。実験過程では、腫瘍寸法が許容される最大値に達したことにより(任意直径で1.5cm)、マウスを死亡させた。動物の健康について毎日追跡し、腫瘍に起因する異常感を示していないことを調べた。63日目に二酸化炭素を用いてマウスを死亡させ、それを実験のエンドポイントにした。さらに、頸椎脱臼を行った。
【0074】
動物の体重を、実験中ずっと追跡し、以下の群でわずかな体重減少が観測された。pem+cis(48日目で10%減少、60日目で11%減少)、ONCOS−102プライミング+pem+cis(48日目で9%減少、60日目で12%減少)(
図5B)、pem+car(60日目で6%減少)(
図6B)。ONCOS−102単独、又はペメトレキセド及びシスプラチン(単剤の場合)と組み合わせて治療した群では、健康問題(>30%の体重減少及び皮膚問題(=発疹)に起因して、数匹の動物を屠殺した。これらの有害事象は、2匹のmock治療動物も皮膚問題(発疹)に罹患していたので、治療に関係する可能性は低かった。獣医には、さらなる調査のためにこれらの問題が通知されたが、これらの事象の原因は不明のままであった。さらに、剖検では、数匹の動物において(pem+cis、pem+car)、腸(空腸及び回腸)及び胃のいくらかの形態変化が示された。
腫瘍サイズ進行の分析
腫瘍サイズを、細胞注射の8日後に開始して測定し、記録した。治療の初日及び腫瘍サイズ測定の初日を、
図4Aでは0日目と示している。腫瘍を、3日ごとに測定した。
最大直径及び最小直径を記録し、腫瘍体積を、0.52×長さ×(幅)
2の式を使用して算出した。腫瘍サイズ進行を、100%と任意に設定した0日目の最初の測定点の百分率として示した。
データ編集及び統計分析
体重を、全実験を通して3日ごとに測定した。ベースラインからの体重変化百分率を、動物ごとに算出した。
【0075】
腫瘍体積(表2):絶対的腫瘍体積を、腫瘍体積分析のエンドポイントにした。腫瘍体積を、21日目及び48日目に別個に評価した。マウスごとに2個の腫瘍を測定したので、腫瘍体積の分析方法として、反復測定の分散分析を適用した。モデルは、固定効果としての共変数として、群効果及びベースライン値を含有していた。群間のペアワイズ比較を、テューキー法で調整した。相乗作用の算出を、FTV(腫瘍体積分率)法を使用することによって行った。
時点選択の理論的根拠:21日目は、すべての動物がまだ生存していた最終日であり、48日目には、1群当たり動物1匹以下が死亡していた。
【0076】
ヒト中皮腫異種移植モデル
動物実験は、ヘルシンキ大学の実験動物学会及び南フィンランド州の州政府によって承認された。6〜8週齢のマウスを、Scanbur(Karlslunde、デンマーク)から得、実験開始前に1週間隔離した。マウスを、イソフルランForane(Baxter)で麻酔し、50μl中NCI−H226細胞を両方の側腹部に注射した(6E+06/側腹部)。腫瘍を8日間成長させた後、治療した。ウイルスを、6日ごとに投与した。1つの群には、ONCOS−102だけを投与し、2つの群には、ONCOS−102及び化学療法(ペメトレキセド+シスプラチン、又はペメトレキセド+カルボプラチン)を6日ごとに投与したが、他の2つの群には、ONCOS−102プライミングを投与した後、化学療法(ペメトレキセド+シスプラチン、又はペメトレキセド+カルボプラチン)及びONCOS−102の併用治療を、3日間周期で交代に投与した。mock動物は、0.9%生理食塩水で治療した。ONCOS−102を、0.9%生理食塩水で希釈し、腫瘍1個当たり5×10
7VPの用量で腫瘍内注射した(動物1匹当たり2個の腫瘍)。注射は、腫瘍中に均一に分布するように、扇型パターンで行った。ペメトレキセド、シスプラチン、及びカルボプラチンを、0.9%NaClで希釈し、それぞれ10mg/kg、1.5mg/kg、及び8mg/kgの用量で腹腔内投与した。注射体積は、化学療法剤1種当たり100μlであった。
【0077】
腫瘍サイズを、治療の初日に開始して、3日ごとに2つの寸法をノギスで測定した。最大直径及び最小直径を記録し、腫瘍体積を、0.52×長さ×(幅)
2の式を使用して算出した。腫瘍サイズ進行を、100%と任意に設定した0日目の最初の測定点の百分率として示した(
図4A)。すべての動物を、順応及び投与期間中、さらに各治療の30分後に、臨床徴候、罹患率又は死亡率について毎日観察した。実験過程中、腫瘍寸法が許容される最大(1.5cm)直径に達したら、マウスを死亡させた。
【0078】
ヒトGM−CSFのELISA
収集したBALB/cヌード組織試料(腫瘍及び肝臓)から、製造者の使用説明書に従って、プロテアーゼ阻害剤カクテル(P−2714、Sigma−Aldrich)を補充した組織抽出試薬I(FNN0071、Invitrogen)を使用して、全タンパク質を抽出した。タンパク質抽出物及び予め収集した血清を、製造者の使用説明書に従って、ELISA(ab100529、Abcam)を使用してヒトGM−CSF濃度について分析した。
【0079】
定量的リアルタイムPCR
アデノウイルスE4コピー数のためのqPCRを、既に記載されているプロトコールに従って行った(FWプライマー:5’−GGA GTG CGC CGA GAC AAC−3’、RVプライマー:5’−ACT ACG TCC GGC GTT CCA T−3’、プローブE4:5’−(6FAM)−TGG CAT GAC ACT ACG ACC AAC ACG ATC T−(TAMRA)−3’)(Koski et al. 2010)。全DNAを、BALB/cヌードマウス試料(腫瘍、肝臓、血液)から、QIAamp DNA Blood Miniキット(51106、Qiagen)を使用して、製造者のプロトコールに従って抽出した。その後、単離したDNAを、アデノウイルスE4コピー数について分析し、それをそれぞれマウスベータ−アクチン(肝臓、血液)及びヒトベータ−アクチン(腫瘍)に対して正規化した(FWプライマー:5’−CGA GCG GTT CCG ATG C−3’、RVプライマー:5’−TGG ATG CCA CAG GAT TCC AT−3’、プローブマウスベータ−アクチン:5’−(6FAM)−AGG CTC TTT TCC AGC CTT CCT TCT TGG−(TAMRA)−3’;(FWプライマー:5’−CAG CAG ATG TGG ATC AGC AAG−3’、RVプライマー:5’−CTA GAA GCA TTT GCG GTG GAC−3’、プローブヒトベータ−アクチン:5’−(6FAM)− AGG AGT ATG ACG CCG GCC CCT C−(TAMRA)−3’)。試料を、LighCycler qPCR機器(LighCycler 480、Roche)を使用して分析した。
統計分析
統計的有意性を、一元配置ANOVAを使用し、テューキーの多重比較試験及びノンパラメトリックマン−ホイットニー試験を用いて分析した。生存曲線及び統計分析を、カプラン−マイヤー試験を使用して実施した。すべての統計分析、算出及び試験を、GraphPad Prism 5(GraphPad Software、米国、サンディエゴ)を使用して実施した。結果を、平均±SEMとして表す。すべてのp値は、両側又は片側であり、≦0.05の場合に統計的に有意とみなした。
【0080】
(例1)
中皮腫に対する第一選択の化学療法と組み合わせたONCOS−102のin vitro抗悪性腫瘍活性の改善
ONCOS−102の腫瘍溶解的効力を、3種の中皮腫細胞株においてin vitroで試験した(
図1A)。JL−1(類上皮中皮腫)、MSTO−211H(悪性二相型)及びH226(上皮形態)細胞は、10VP/細胞(準最適用量)によって3日間でそれぞれ細胞の18%、24%及び11%が死滅したので、腫瘍溶解に対して相対的に抵抗性を示すように見えた。JL−1及びH226細胞株は、MSTO−211H細胞(ペメトレキセド+シスプラチン又はペメトレキセド+カルボプラチン)と比較して、化学療法媒介性の細胞傷害性に対する抵抗性が高かった。化学療法剤を用いるインキュベーションにより、JL−1の10%及びH226細胞の11〜12%だけが3日間で死滅した。それとは対照的に、MSTO−211H細胞の63%及び73%が、それぞれペメトレキセド+シスプラチン及びペメトレキセド+カルボプラチンとの共培養により3日目までに死滅した。単剤治療(ウイルス又は化学療法)で観測された結果と比較して、ONCOS−102と化学療法剤の組合せは、H226及びJL−1細胞において細胞傷害性を著しく増大した。しかし、化学療法をONCOS−102と組み合わせると、MSTO−211H細胞では細胞傷害性の増大は見られなかった。一般に、H226及びJL−1細胞は、特に化学療法に対して感受性があるMSTO−211H細胞よりも、腫瘍溶解(ONCOS−102単独)、及び化学療法剤の細胞傷害効果の両方に対して抵抗性が高かった。
【0081】
細胞生存率の結果と一致して、アポトーシスH226及びJL−1細胞の数は、あらゆる治療群において一般に少なかったが、併用治療では、単剤療法と比較してアポトーシス細胞の数がわずかに増大した。H226及びJL−1細胞とは対照的に、アポトーシスMSTO−211H細胞の数は、化学療法単独及び化学療法+ONCOS−102で治療された細胞において著しく高かった(
図1B)。
【0082】
(例2)
ONCOS−102及び化学療法の組合せは、中皮腫細胞株において免疫原性細胞死及びウイルス複製を増強する
免疫原性細胞死マーカー、例えば細胞表面へのカルレティキュリンAの曝露、ならびにATP及びHMGB1の細胞外放出を、ONCOS−102、化学療法剤、又はその両方の組合せに曝露した後に、中皮腫(mesotheolima)細胞培養物から測定した(
図2)。ONCOS−102+化学療法の群において最も多いCRT曝露量、ならびにATP及びHMGB1の細胞外放出量が測定されたので、ONCOS−102+化学療法を用いる治療によって、Jl−1及びH226中皮腫において最も免疫原性の高い腫瘍細胞死が誘導された。次に、ONCOS−102及び化学療法の同時適用は、MSTO−211H細胞における化学療法単独と同等の免疫原性があったが、このことは、細胞生存率アッセイによる観測と一致しており、化学療法に対するこれらの細胞の高い感受性が確認される。
【0083】
in vitroでのONCOS−102複製に対する化学療法の影響も評価した。ONCOS−102を感染させ、化学療法剤(ペメトレキセド+シスプラチン又はペメトレキセド+カルボプラチン)で予め治療(プライミング)したH226及びJl−1細胞は、感染細胞の数が対照細胞よりも著しく増大することを示した(p<0.001対ONCOS−102)(
図3C)。他方では、MSTO−211H細胞を化学療法で予め治療しても、感染細胞の数は増大しなかった。それとは対照的に、化学療法をONCOS−102と同時に3種の中皮腫細胞株に行うと、in vitroでのウイルス複製が阻害又は制限される。
【0084】
(例3)
ONCOS−102は、中皮腫細胞に対する高い指向性を示す
ONCOS−102は、線維ノブ5が、血清型ノブ3ドメインによって置き換えられている、キメラ腫瘍溶解性アデノウイルスである。CD46、DSG2(Ad3)、及びCAR(Ad5)受容体に対する陽性細胞をスクリーニングした(
図3B)。MSTO−211H、H226及びJL−1は、それらの表面上に、高レベルのCD46(それぞれ98%、96%及び98%)、DSG2(それぞれ95%、7%及び64%)を発現した。CAR受容体は、3種の中皮腫のうちH226(88%)及びJl−1(15%)の2種によって発現された。
【0085】
(例4)
ペメトレキセド及びシスプラチン、又はペメトレキセド及びカルボプラチンと組み合わせたONCOS−102は、ヒト異種移植中皮腫モデルのMMに対して改善された抗悪性腫瘍有効性を示した
次に、in vitroでONCOS−102及びペメトレキセド及びシスプラチン、又はペメトレキセド及びカルボプラチンの相乗作用が観測されたことを考慮して、in vivo動物モデルでも抗腫瘍活性が増強されるかどうかを評価した。したがって、ヒト中皮腫H226細胞株を、BALB/cヌードマウスに皮下移植し、腫瘍を、表1に提示した治療レジメンに従って治療した。
【0086】
腫瘍成長(体積)を、示された時点で算出し、時間関数として記録した(
図4A)。H226中皮腫異種移植腫瘍は、治療のいずれもが腫瘍成長を著しく低減しなかったので、標準化学療法剤(ペメトレキセド+シスプラチン、ペメトレキセド+カルボプラチン)に対して難治性であるように見えた。化学療法単独は、使用した準最適用量に部分的に起因して、中皮腫に対して最も非効率的な治療様式であった。ONCOS−102+ペメトレキセド+シスプラチンで治療した動物1匹は、21日目までには完全な腫瘍退行(両方の腫瘍)を示した。さらに、ONCOS−102プライミング+ペメトレキセド+シスプラチンで治療した動物1匹は、45日目までには両方の腫瘍の完全な退行を示した。ONCOS−102単独は、腫瘍成長をある程度調節することができた(48日目でp=0.074のmock対ONCOS−102)。胸膜中皮腫に対して最も有効な治療様式は、ONCOS−102でプライミングしたペメトレキセド及びシスプラチンを用いたものであった(この治療は、60日目で初期腫瘍サイズの97%を示したのに対して、473%(mock)、563%(ペメトレキセド+シスプラチン)及び672%(ペメトレキセド及びカルボプラチン)であった。さらに、すべての併用レジメン(regiments)(ONCOS−102+化学療法)において、本発明者らは、特に化学療法単独、ウイルス単独及びmockと比較して、最も著しい抗悪性腫瘍活性を観測した(60日目で初期腫瘍サイズの97%(ウイルスプライミング+ペメトレキセド+シスプラチン)、138%(ウイルス+ペメトレキセド+シスプラチン)、151%(ウイルスプライミング+ペメトレキセド+カルボプラチン)及び163%(ウイルス+ペメトレキセド+カルボプラチン)に対して、206%(ウイルス単独)、473%(mock)、563%(ペメトレキセド+シスプラチン)及び672%(ペメトレキセド+シスプラチン))。ONCOS−102及び化学療法剤は、試験したすべての組合せにおいて、48日目で強力な相乗的抗腫瘍効果を示した(R=2.19のONCOS−102+ペメトレキセド+シスプラチン;R=1.7のONCOS−102+ペメトレキセド+カルボプラチン;R=2.5のONCOS−102プライミング+ペメトレキセド+シスプラチン;R=1.41のONCOS−102プライミング+ペメトレキセド+カルボプラチン)。21日目で、ペメトレキセド+シスプラチンと組み合わせたONCOS−102は、両方のレジメンに対して相乗効果を示し(R=1.8のONCOS−102+ペメトレキセド+シスプラチン;R=1.32のONCOS−102プライミング+ペメトレキセド+シスプラチン)、一方でペメトレキセド+カルボプラチンの組合せは、相加効果を示した(併用群についてR=1.0及び0.93)。
【0087】
【表1】
【0088】
表2は、BALB/cヌードマウスにおける中皮腫の、ONCOS−102及びペメトレキセド+シスプラチン、又はペメトレキセド+カルボプラチンによる併用治療を開示している。
【0089】
【表2】
【0090】
(例5)
ONCOS−102は、腫瘍組織において限局的に複製し、ヒトGM−CSFを産生する
マウス臓器(腫瘍、肝臓)及び血清におけるアデノウイルスE4コピー及びGM−CSFレベルの定量を、qPCR及びELISAによって行った。ONCOS−102は、腫瘍だけに存在し(限局的に)、ウイルス粒子は、あらゆる試験群で血清又は肝臓において検出されなかった(
図4D)。ONCOS−102は、GM−CSFタンパク質を産生し、そのタンパク質は、5つの試験群で腫瘍において最高濃度で検出された(
図4C参照)。
【0091】
参考文献