特許第6974410号(P6974410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974410水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物及び当該組成物から形成される硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974410
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物及び当該組成物から形成される硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/18 20060101AFI20211118BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20211118BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20211118BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20211118BHJP
   C08K 5/353 20060101ALI20211118BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20211118BHJP
   H01M 4/36 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   C08L25/18
   C08F212/14
   C08F220/06
   C08L79/02
   C08K5/353
   C09K3/16 108C
   !H01M4/36 C
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-184706(P2019-184706)
(22)【出願日】2019年10月7日
(65)【公開番号】特開2021-59666(P2021-59666A)
(43)【公開日】2021年4月15日
【審査請求日】2020年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】重田 優輔
(72)【発明者】
【氏名】尾添 真治
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122065(JP,A)
【文献】 特開平08−230091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08F
C09K3/16
H01M4/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含む水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物。
(A)下記一般式(1)で表される構造単位(a)及び一般式(2)で表される構造単位(b)を含み、構造単位(a)及び構造単位(b)の合計に対する構造単位(b)のモル比が2モル%〜60モル%であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで求めた重量平均分子量が160000ダルトン(Da)〜4000000ダルトン(Da)であるポリスチレンスルホン酸
構造単位(a);
一般式(1)
【化1】
(式(1)中、Mはプロトン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを示す。)で表されるスチレンスルホン酸構造単位、及び
構造単位(b);
一般式(2)
【化2】
(式(2)中、Qはカルボキシル基を有するラジカル重合性モノマー残基を表す。)で表されるカルボキシル基含有モノマー構造単位、
(B)複数のオキサゾリン基を含むポリマー、
(C)グリコールエーテル及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の組合せとなる親水性溶剤、及び
(D)水
(但し、上記(A)成分と(B)成分の配合割合は、カルボキシル基とオキサゾリン基の当量比で10:2〜2:10であり、(A)〜(D)成分の合計量に対する(A)成分及び(B)成分の配合割合は0.5wt%〜30wt%であり、(C)成分及び(D)成分の合計量に対する(C)成分の配合割合は10wt%〜70wt%)である。)
【請求項2】
下記下記(A’)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物。
(A’)下記一般式(3)で表される構造単位(a)、一般式(4)で表される構造単位(b)及び一般式(5)で表される構造単位(c)を含み、構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)の合計に対する構造単位(b)のモル比が2モル%〜60モル%であり、構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)の合計に対する構造単位(c)のモル比が1モル%〜30モル%であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで求めた重量平均分子量が160000ダルトン(Da)〜4000000ダルトン(Da)であるポリスチレンスルホン酸
構造単位(a);
一般式(3)
【化3】
(式(3)中、Mはプロトン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを示す。)で表されるスチレンスルホン酸構造単位、
構造単位(b);
一般式(4)
【化4】
(式(4)中、Qはカルボキシル基を有するラジカル重合性モノマー残基を表す。)で表されるカルボキシル基含有モノマー構造単位、及び
構造単位(c);
一般式(5)
【化5】
(式(5)中、Qはカルボキシル基を含まないラジカル重合性モノマー残基を表す。)で表されるカルボキシル基を含まないモノマーの構造単位
(B)複数のオキサゾリン基を含むポリマー、
(C)グリコールエーテル及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の組合せとなる親水性溶剤、及び
(D)水
(但し、上記(A’)成分と(B)成分の配合割合は、カルボキシル基とオキサゾリン基の当量比で10:2〜2:10であり、(A’)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量に対する(A’)成分及び(B)成分の配合割合は0.5wt%〜30wt%であり、(C)成分及び(D)成分の合計量に対する(C)成分の配合割合は10wt%〜70wt%)である。)
【請求項3】
がメタクリル酸(塩)残基、アクリル酸(塩)残基、マレイン酸(塩)残基、シトラコン酸(塩)残基、イタコン酸(塩)残基からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の組合せとなるラジカル重合性モノマー残基である請求項1又は請求項2に記載した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物。
【請求項4】
がスチレン残基、メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル残基、メタクリルアミド残基及びN−フェニルマレイミド残基からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の組合せとなるラジカル重合性モノマー残基である請求項2に記載した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物。
【請求項5】
グリコールエーテルが、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシプロパン、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、酢酸2−メトキシメチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1(又は2)−[2−メトキシ(メチル)エトキシ]プロパノール、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシプロピル)エーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1又は請求項2に記載の水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物から形成され、下記一般式(6)で表される水に不溶なポリスチレンスルホン酸硬化物。
一般式(6)
【化6】
(式(6)中、Mは上記式(1)と同じであり、Qは上記式(4)と同じであり、Qは上記成分(B)である複数のオキサゾリン基を有するポリマーの主鎖を表す。n、m及びkは1以上の整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止塗膜や繊維処理剤として有用な水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物及び当該組成物から形成される硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンスルホン酸(又はその塩)は芳香族系の水溶性ポリマーであり、優れた耐熱性、化学的安定性、吸着性を有することから、炭素材料の分散、各種洗浄剤、帯電防止剤、繊維処理剤、合成糊剤など幅広い産業分野で利用されている。
【0003】
ポリスチレンスルホン酸(又はその塩)に対する改良ニーズはいくつかあるが、例えば、繊維処理剤、炭素材料の分散、帯電防止剤において、架橋可能なポリスチレンスルホン酸(及びその塩)が強く求められている。例えば、ポリマー中にカチオン性基を有するビスコースレーヨンをポリスチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液に浸漬することによって、ビスコースレーヨン表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが保持されてなる抗アレルゲン繊維が製造できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは静電相互作用のみでビスコースレーヨン表面に保持されているため、洗濯等によって水溶性のポリスチレンスルホン酸ナトリウムが脱落する課題があった。
【0005】
また、例えば、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムで表面を被覆した黒鉛質粒子が、非水系二次電池負極用の炭素材として使用できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの被膜が未架橋であり、電解液溶媒による膨潤が避けられないため、黒鉛質粒子表面と電解液との間の副反応を十分抑制できない課題があった。
【0007】
また、例えば、特定の反応性基を導入したポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いて帯電防止薄膜を作製する際に、架橋剤として水溶性エポキシ樹脂を添加し、130℃で加熱乾燥することにより、耐溶剤性や耐水性に優れたポリスチレンスルホン酸(又はその塩)の帯電防止薄膜を形成できることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムに反応性基を導入するためには4−ビニル安息香酸、4−アミノスチレン及び4−ヒドロキシスチレンなど、汎用性が極めて低い特殊モノマーの共重合と架橋剤として多量のエポキシ樹脂の添加が必要であり、また、高温で長時間の加熱を必要とするなどの課題があった。上記用途等における課題を解決するため、簡便且つ効率良く架橋できるポリスチレンスルホン酸(又はその塩)が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許5385692号公報
【特許文献2】特開2014−186955号公報
【特許文献3】特開2016−204646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
簡便に効率良く架橋できる水溶性のポリスチレンスルホン酸(又はその塩)は殆ど知られておらず、簡便で架橋効率が高く、且つ塗工性(流動性)に優れた水性のポリスチレンスルホン酸(又はその塩)硬化性組成物が強く求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、(メタ)アクリル酸などの汎用性モノマーで変性したポリスチレンスルホン酸(又はその塩)、複数個のオキサゾリン基を含有するポリマー、及び特定構造の親水性溶剤を含む水性組成物が、塗工性(流動性)に優れ、簡便に効率良く架橋できるポリスチレンスルホン酸硬化性組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、
下記(A)〜(D)成分を含む水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
(A)下記一般式(1)で表される構造単位(a)及び一般式(2)で表される構造単位(b)を含み、構造単位(a)及び構造単位(b)の合計に対する構造単位(b)のモル比が2モル%〜60モル%であるポリスチレンスルホン酸
構造単位(a);
一般式(1)
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)中、Mはプロトン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを示す。)で表されるスチレンスルホン酸構造単位、及び
構造単位(b);
一般式(2)
【0015】
【化2】
【0016】
(式(2)中、Qはカルボキシル基を有するラジカル重合性モノマー残基を表す。)で表されるカルボキシル基含有モノマー構造単位、
(B)複数のオキサゾリン基を含むポリマー、
(C)グリコールエーテル及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の組合せとなる親水性溶剤、及び
(D)水
(但し、上記(A)成分と(B)成分の配合割合は、カルボキシル基とオキサゾリン基の当量比で10:2〜2:10であり、(A)〜(D)成分の合計量に対する(A)成分及び(B)成分の配合割合は0.5wt%〜30wt%であり、(C)成分及び(D)成分の合計量に対する(C)成分の配合割合は10wt%〜70wt%)である。)
【0017】
また本発明は、下記(A’)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
(A’)下記一般式(3)で表される構造単位(a)、一般式(4)で表される構造単位(b)及び一般式(5)で表される構造単位(c)を含み、構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)の合計に対する構造単位(b)のモル比が2モル%〜60モル%であり、構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)の合計に対する構造単位(c)のモル比が1モル%〜30モル%であるポリスチレンスルホン酸
構造単位(a);
一般式(3)
【0018】
【化3】
【0019】
(式(3)中、Mはプロトン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを示す。)で表されるスチレンスルホン酸構造単位、
構造単位(b);
一般式(4)
【0020】
【化4】
【0021】
(式(4)中、Qはカルボキシル基を有するラジカル重合性モノマー残基を表す。)で表されるカルボキシル基含有モノマー構造単位、及び
構造単位(c);
一般式(5)
【0022】
【化5】
【0023】
(式(5)中、Qはカルボキシル基を含まないラジカル重合性モノマー残基を表す。)で表されるカルボキシル基を含まないモノマーの構造単位、
(B)複数個のオキサゾリン基を含むポリマー、
(C)グリコールエーテル及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の組合せとなる親水性溶剤、及び
(D)水
(但し、上記(A’)成分と(B)成分の配合割合は、カルボキシル基とオキサゾリン基の当量比で10:2〜2:10であり、(A’)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量に対する(A’)成分及び(B)成分の配合割合は0.5wt%〜30wt%であり、(C)成分及び(D)成分の合計量に対する(C)成分の配合割合は10wt%〜70wt%)である。)
【0024】
また本発明は、Qがメタクリル酸(塩)残基、アクリル酸(塩)残基、マレイン酸(塩)残基、シトラコン酸(塩)残基及びイタコン酸(塩)残基からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の組合せとなるラジカル重合性モノマー残基である上記した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
【0025】
また、本発明は、Qがスチレン残基、メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル残基、メタクリルアミド残基、N−フェニルマレイミド残基からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の組合せとなるラジカル重合性モノマー残基である上記した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
【0026】
また本発明は、ポリスチレンスルホン酸のゲル浸透クロマトグラフィーで求めた重量平均分子量が5000ダルトン(Da)〜4000000ダルトン(Da)である上記した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
【0027】
また本発明は、グリコールエーテルが、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシプロパン、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、酢酸2−メトキシメチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1(又は2)−[2−メトキシ(メチル)エトキシ]プロパノール、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシプロピル)エーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
【0028】
また本発明は、アルコールがメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びブタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に係る。
【0029】
また本発明は、上記した水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物から形成され、下記一般式(6)で表される水に不溶なポリスチレンスルホン酸硬化物に関する。
一般式(6)
【0030】
【化6】
【0031】
(式(6)中、Mは上記式(1)と同じであり、Qは上記式(4)と同じであり、Qは上記(B)成分である複数のオキサゾリン基を有するポリマーの主鎖を表す。n、m及びkは1以上の整数を表す。)
【発明の効果】
【0032】
本発明の水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸などの汎用性モノマーで変性したポリスチレンスルホン酸(又はその塩)、複数個のオキサゾリン基を含有するポリマー及び特定構造の親水性溶剤を含む水性の硬化性組成物であり、塗工性(流動性)と硬化性が優れるため、繊維処理、帯電防止剤、炭素材料の被覆など幅広い産業分野で極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0034】
本発明で用いるポリスチレンスルホン酸(又はその塩)は、架橋サイトとして複数個のカルボキシル基を有するポリスチレンスルホン酸(以下、カルボキシル変性PSSという)である。カルボキシル変性PSSを含む水溶液に複数もしくは複数個のオキサゾリン基を含有するポリマー(以下、ポリオキサゾリンという)を配合し、当該混合溶液をシャーレなどの容器に広げ、加熱乾燥すると、水に不溶なカルボキシル変性PSSの硬化物が形成される。カルボキシル基で変性されたポリマーがポリオキサゾリンで架橋できることは公知である(例えば、特許3191978号公報、特許3259147号公報参照)。
【0035】
しかしながら、本発明者らがカルボキシル変性PSSなど、スチレンスルホン酸構造単位を主成分とするポリマーの水溶液にポリオキサゾリンを配合したところ、激しく増粘して流動性が損なわれ、基材への塗工が困難であることが判明した。
【0036】
本発明者らは、上記混合溶液に特定構造の親水性溶剤を配合することにより、増粘が抑制されて流動性が回復し、良好な塗工性が発現することを見出し、本発明に至った。
【0037】
まず本発明のカルボキシル変性PSSについて説明する。
【0038】
カルボキシル変性PSSとは、ポリマーに含まれるスチレンスルホン酸構造単位とカルボン酸モノマー構造単位の合計に対して、カルボン酸モノマー構造単位を2モル%〜60モル%含有するポリスチレンスルホン酸(又はその塩)である。ポリスチレンスルホン酸本来の特性維持と架橋性の観点から、カルボン酸変性PSS中のカルボン酸モノマー構造単位は5モル%〜50モル%であるのがより好ましい。
【0039】
カルボン酸変性PSSの製造法は二つに大別できる。
【0040】
<第一の製法>
第一の製法は、スチレンスルホン酸とカルボン酸モノマーをラジカル共重合する方法である。
【0041】
用いられるスチレンスルホン酸としては、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸エステル等が挙げられ、カルボン酸モノマーとしてはメタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、(無水)マレイン酸、(無水)シトラコン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの内でも、入手性の観点から、スチレンスルホン酸ナトリウム又はスチレンスルホン酸リチウムが好ましく、汎用性のあるスチレンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0042】
用いられるカルボン酸モノマーとしては、共重合性と入手性の観点から、メタクリル酸、アクリル酸又はマレイン酸がより好ましい。これらのカルボン酸モノマーは、アンモニア、アミン、金属酸化物などの塩基で中和されていても良いが、ポリオキサゾリンとの反応性を考慮すると、未中和もしくはアンモニアなど低沸点の塩基で中和又は部分中和されているのが好ましい。中和又は部分中和は、スチレンスルホン酸とカルボン酸モノマーの重合時、又は重合後に実施すれば良い。
【0043】
第二の製造法は、スチレンと上記したカルボン酸モノマーを共重合した後、ハロゲン化溶媒など、スルホン化反応に対して不活性な溶媒中、三酸化イオウや発煙硫酸などのスルホン化剤を用いてスチレン単位をスルホン化する方法である。
【0044】
以下、カルボン酸変性PSSの製造法を説明するが、まず、第一の方法について詳しく説明する。
【0045】
カルボン酸変性PSSの製造法について、第一の製造法は、スチレンスルホン酸とカルボン酸モノマーをラジカル共重合する方法である。このスチレンスルホン酸とカルボン酸モノマーをラジカル共重合する方法は特に限定されない。
【0046】
例えば、反応に用いられるモノマー、重合開始剤、重合溶媒及び、必要に応じて分子量調節剤あるいは連鎖移動剤を重合容器に一括で仕込んで重合する一括添加重合法、モノマーあるいはモノマーと分子量調節剤との混合溶液と重合開始剤を重合容器へ逐次添加しながら重合する逐次添加重合法などが挙げられる。これらの内でも、重合熱の除去が容易な逐次添加重合法が好ましく用いられる。但し、リビングラジカル重合法を利用する場合、逐次添加重合法よりも全一括添加重合の方が、重合転化率や分子量制御性の面で好ましい場合もある。
【0047】
本発明で用いられるポリスチレンスルホン酸は、基本的に上記したスチレンスルホン酸構造単位を主成分とし、カルボン酸モノマー構造単位を架橋サイトとして有する共重合体であるが、ポリスチレンスルホン酸の特性を損なわず且つカルボキシル基とオキサゾリン基の架橋反応を損なわない範囲であれば、上記以外のモノマー、すなわち前記一般式(5)において示されるQを形成するモノマーに相当するモノマーを共重合しても良い。
【0048】
本発明において、共重合に用いるコモノマーとしては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N―(クロロフェニル)マレイミド、N―(メチルフェニル)マレイミド、N―(イソプロピルフェニル)マレイミド、N―(スルフォフェニル)マレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ブロモフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−(ニトロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−アセトキシ−1−ナフチル)マレイミド、N−(4−オキシ−1−ナフチル)マレイミド、N−(3−フルオランチル)マレイミド、N−(5−フルオレセイニル)マレイミド、N −(1−ピレニル)マレイミド、N−(2 ,3−キシリル)マレイミド、N−(2 ,4−キシリル)マレイミド、N−(2 ,6−キシリル)マレイミド、N−(アミノフェニル)マレイミド、N−(トリブロモフェニル)マレイミド、N−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N−(3 ,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(9−アクリジニル)マレイミド等のマレイミド類、フマル酸ジブチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジエステル類、フマル酸ブチル、フマル酸プロピル、フマル酸エチルなどのフマル酸モノエステル類、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジエステル類、マレイン酸ブチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸エチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸モノエステル類、フマル酸、メサコン酸などの二塩基酸、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、フロロスチレン、トリフロロスチレン、ニトロスチレン、シアノスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、メチルp−スチレンスルホニル、プロピルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、3−イソプロペニル−α ,α ’−ジメチルベンジルイソシアネートなどのスチレン類、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2− フェニルビニルアルキルエーテル、ニトロフェニルビニルエーテル、シアノフェニルビニルエーテル、クロロフェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2―ブトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル) プロピル、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリル酸グリシジル、2−(アクリロイルオキシ)エチルフォスフェート、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸s e c−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、2−(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸2−(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのメタクリル酸エステル類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシメチル−1,3−ブタジエン、2−(N ,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、2−メチレン−3−ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1 ,3−ブタジエン類、その他、アクリルアミド、メタクリルアミド、スルフォフェニルアクリルアミド、スルフォフェニルイタコンイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、塩化ビニル、α−シアノエチルアクリレート、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサミック酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルピロリドン、デヒドロアラニン、二酸化イオウ、イソブテン、N−ビニルカルバゾール、ビニリデンジシアニド、パラキノジメタン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ノルボルネン、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの中で、スチレンスルホン酸塩との共重合性、入手性などを考慮すると、スチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N−置換マレイミド類が好ましい。
【0049】
本発明において用いられる重合溶媒としては、上記モノマー混合物を均一に溶解できるものであれば特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロパノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシプロパン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1(又は2)−[2−メトキシ(メチル)エトキシ]プロパノール、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどの他、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0050】
本発明において用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などのパーオキサイド系化合物、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルメタン)、4,4’−ジアゼンジイルビス(4−シアノペンタン酸)・α−ヒドロ−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)重縮合物などのアゾ化合物等があげられる。これらの中で、リビングラジカル重合法を利用する場合には、制御性の観点から、パーオキサイド系開始剤よりもアゾ系開始剤が好ましい。経済性の観点から上記したパーオキサイド系重合開始剤を使用する場合、必要に応じて、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アニリン、三級アミン、ロンガリット、ハイドロサルファイト、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤を併用することができる。
【0051】
ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマーに対し、通常、0.01〜10モル%であり、目的物の純度を考慮すると、0.01〜5モル%がより好ましい。
【0052】
本発明において用いられる分子量調節剤(連鎖移動剤)は、特に限定されるものではないが、例えば、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5−メルカプトテトラゾール酢酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、メルカプトエタノール、1 ,2−ジメチルメルカプトエタン、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩、6−メルカプト−1−ヘキサノール、2−メルカプト−1−イミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、システイン、N−アシルシステイン、グルタチオン、N−ブチルアミノエタンチオール、N,N−ジエチルアミノエタンチオールなどのメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’−ジチオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、4,4’−ジチオジブタン酸、2,2’−ジチオビス安息香酸などのジスルフィド類、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンジルジチオベンゾエート、2−シアノプロプ−2−イルジチオベンゾエート、4−シアノ−4−(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸、4−シアノ−4−(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸、S,S−ジベンジルトリチオカーボネート、3−((((1−カルボキシエチル)チオ)カーボノチオイル)チオ)プロパン酸、シアノメチル(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール)カルボジチオエートなどのチオカルボニルチオ化合物、α−ヨードベンジルシアニド、1−ヨードエチルベンゼン、エチル2−ヨード−2−フェニルアセテート、2−ヨード−2−フェニル酢酸、2−ヨードプロパン酸、2−ヨード酢酸などの沃化アルキル化合物、ジフェニルエチレン、p−クロロジフェニルエチレン、p−シアノジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、有機テルル化合物、イオウなどが挙げられる。これらの中で、リビングラジカル重合によって分子量分布を狭くしたい場合には、制御性の観点から、連鎖移動剤としてチオカルボニルチオ化合物や沃化アルキル化合物が好ましい。
【0053】
本発明において、重合温度は通常のラジカル重合と同様、10℃〜100℃であり、より好ましくは40℃〜90℃で、重合転化率の観点から、さらに好ましくは60℃〜90℃である。
【0054】
重合時間は、2時間〜30時間が好ましく、さらに好ましくは2時間〜10時間である。逐次添加法にて重合する場合、分子量調節剤を含むモノマー混合物と重合開始剤の連続添加を行う時間は、通常1時間〜4時間である。
【0055】
上記したリビングラジカル重合法の場合、ドーマント種から可逆的にラジカルを生成しながら重合が進行し、暴走反応が起こり難いため、逐次添加重合法よりも全一括添加重合の方が、重合転化率や分子量制御性の面で好ましい場合もある。
【0056】
<第二の製法>
次にポリスチレンスルホン酸(又はその塩)の第二の製法について詳しく説明する。
【0057】
第二の製法では、例えば、スチレンと上記したカルボン酸モノマーをトルエン、ベンゼン、キシレン、メチルシクロヘキサン、アセトン、ジオキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの非ハロゲン系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン系溶媒など、モノマー混合物を溶解できる溶媒に溶解し、上記したラジカル重合法によりカルボン酸変性ポリスチレンを製造する方法である。
【0058】
第二の製法では重合溶媒として有機溶媒を用いるため、水性溶媒では加水分解により使用が難しい無水マレイン酸や無水シトラコン酸など、カルボン酸無水物モノマーも使用できる。
【0059】
重合溶媒として非ハロゲン系溶媒を用いた場合、重合溶液の強制乾燥や貧溶媒の添加によりポリマーを単離し、上記したハロゲン系溶媒に再溶解した後、無水硫酸や発煙硫酸などのスルホン化剤でポリマー中のスチレン部位をスルホン化することにより、カルボン酸変性ポリスチレンスルホン酸を含むハロゲン化溶媒の溶液が得られる。ここへ水を注入し、水溶性のカルボキシル変性ポリスチレンを水相へ抽出することにより、カルボキシル変性ポリスチレンの水溶液を製造できる。
【0060】
<本発明のポリスチレンスルホン酸(又はその塩)>
本発明のポリスチレンスルホン酸(又はその塩)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量として5000ダルトン(Da)〜4000000ダルトン(Da)であることが好ましい。さらに硬化性と塗布性のバランスを考慮すると、20000ダルトン(Da)〜1000000ダルトン(Da)がより好ましい。
【0061】
次に本発明の架橋剤であるポリオキサゾリンについて説明する。
【0062】
本発明において用いられるポリオキサゾリン化合物は、ポリマー中に複数もしくは複数個のオキサゾリン基を含有するポリマーであり、本発明の水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に溶解又は分散するものであれば特に制限はない。
【0063】
例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどのラジカル重合性オキサゾリンと(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ナトリウムなどの(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体(例えば、特開平6−32844号公報参照)、オキサゾリン基含有ポリマー(例えば株式会社日本触媒製;商品名エポクロス(登録商標)参照)が挙げられる。
【0064】
次にカルボキシル変性PSSとポリオキサゾリンを含む組成物の増粘を抑制し、流動性を回復させるための親水性溶媒について説明する。
【0065】
上記したように、スチレンスルホン酸構造単位を主成分とするポリマーとポリオキサゾリン化合物を水溶液として混合すると、著しく増粘して流動性を失い、塗工が困難になる。理由は定かではないが、ポリスチレンスルホン酸のベンゼンスルホン酸(又はその塩)構造単位とオキサゾリン構造単位の間の強い相互作用によって増粘すると推測される。本発明で用いられる親水性溶媒はその相互作用を弱め、流動性を回復させるものと推測される。
【0066】
本発明において用いられる親水性溶剤としては、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシプロパン、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、酢酸2−メトキシメチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1(又は2)−[2−メトキシ(メチル)エトキシ]プロパノール、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどのアルコール類、テトラヒドロフランやアセトンなどの親水性溶媒が挙げられる。これらの中でも、流動性と組成物の透明性の観点からエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ジメトキシプロパンがより好ましい。
【0067】
本発明において、ポリスチレンスルホン酸硬化性組成物中の親水性溶媒の濃度は、全溶媒に対して10wt%〜70wt%である。10wt%より少ないと増粘抑制効果が十分得られないことがあり、70wt%より多いとポリスチレンスルホン酸(又はその塩)の溶解度が低下し、組成物が白濁するなどの不具合が生じることがある。さらに増粘抑制効果と組成物の透明性の観点から、20wt%〜50wt%がより好ましい。
【0068】
また、ポリオキサゾリンによるカルボキシル変性PSSの架橋反応を促進させるため、本発明のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物に、燐酸二アンモニウム、塩化アンモニウム、パラトルエンスルホン酸アンモニウムなど、酸性化合物のアミン塩などを触媒として添加しても良い。触媒の添加量はカルボキシル変性PSSに対して通常0.1wt%〜5wt%とするとよい。
【0069】
本発明のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物は、種々の基材表面に塗布したり、あるいは繊維表面にコーティングした後、風乾、減圧乾燥又は加熱乾燥により溶媒を飛ばした後、60℃〜150℃で加熱することにより、基材や繊維表面にポリスチレンスルホン酸の硬化膜を形成できる。高温下では水分が架橋反応を阻害するため、組成物中のポリマー分が低い場合には、低温である程度水分を飛ばした後、加熱するのが好ましい。
【実施例】
【0070】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
【0071】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリマーの分析>
東ソー株式会社製 HLC−8320を用いて原料モノマーと重合物の定量(面積%)を行った。試料を水またはアセトニトリルまたはその混合溶媒に溶解し、0.1wt%溶液を調製し、以下の条件でGPC測定を行った。モノマー由来のピーク面積(a)と重合物由来のピーク面積(b)から、下式により重合物の転化率を算出した。
重合物の転化率(面積%)=100×[1−{a/(a+b)}]
カラム=TSK ガードカラムAW−H+TSK AW6000+TSK AW3000
溶離液=硫酸ナトリウム水溶液(0.05mol/L)/アセトニトリル=90/10(Vol比)溶液
流速・注入量・カラム温度=0.6ml/min、注入量=10μl、カラム温度=40℃
検出器=UV検出器(波長230nm)
検量線=標準ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(創和科学製)を用いて、ピークトップ分子量と溶出時間から作成した。
【0072】
<ポリスチレンスルホン酸硬化性組成物の粘度測定>
ブルックフィールド粘度計LVDV2T(英弘精機株式会社製)を用い常温で測定した。
【0073】
<ポリスチレンスルホン酸の硬化性の評価>
赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製FD−720)のアルミ皿(直径13cm)にポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を4〜5g採取して薄く広げ、120℃で30分加熱乾燥することによりポリスチレンスルホン酸組成物の乾燥物を得た。
100mlガラス規格瓶に上記乾燥物を0.4〜0.5g精秤し(=重量A)、純水を約90ml加えて密閉後、振とう器を用いて常温で3日間振とうした。
3日間振とうした上記溶液を予め重量を測定した100メッシュのSUS製金網(=重量B)で濾別した後、金網上のゲルに100mlの純水を注いで洗浄した。余分な水分を産業用紙ワイパで拭きとり、水膨潤ゲルが入った金網の重量(=重量C)を測定した。
上記水膨潤ゲルが入った金網を3日間風乾した後、真空乾燥機を用いて110℃で5時間真空乾燥して重量(=重量D)を測定した。
下式よりポリスチレンスルホン酸のゲル分と水膨潤度を算出した。
ゲル分(wt%) =100×(D−B)/A
水膨潤度(wt%)=100×(C−B)/(D−B)
【0074】
<使用試薬>
実施例に記載の化合物は下記を使用したが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
パラスチレンスルホン酸ナトリウム;東ソー・ファインケム株式会社製(純度89.1%)
パラスチレンスルホン酸リチウム;東ソー・ファインケム株式会社製
パラスチレンスルホン酸アンモニウム;東ソー・ファインケム株式会社製
メタクリル酸;富士フイルム和光純薬株式会社製、特級
アクリル酸;富士フイルム和光純薬株式会社製、特級
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル;富士フイルム和光純薬株式会社製、一級
2,2‘−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩;富士フイルム和光純薬株式会社製(商品名V−50)
3−メルカプト−1,2−プロパンジオール;富士フイルム和光純薬株式会社製
エポクロス(登録商標)WS−700(株式会社日本触媒製 水溶性ポリオキサゾリン、不揮発分24.9wt%、官能基濃度4.5mmol/g−樹脂分)
エポクロス(登録商標)WS−500(株式会社日本触媒製 水溶性ポリオキサゾリン、不揮発分38.9wt%、官能基濃度4.5mmol/g−樹脂分)
エポクロス(登録商標)WS−300(株式会社日本触媒製 水溶性ポリオキサゾリン、不揮発分10.2wt%、官能基濃度7.7mmol/g−樹脂分)
【0075】
合成例1 ポリスチレンスルホン酸(PSS−1)の製造
還流冷却管、窒素導入管、パドル型撹拌機を取り付けた1Lガラス製四つ口フラスコに、純水52.00gを仕込み、窒素雰囲気下、85℃のオイルバスで加熱した。ここに、別途調製したパラスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液〔パラスチレンスルホン酸ナトリウム100.00g、メタクリル酸4.15gを純水451.66gに溶解し、アスピレーターによる減圧と窒素導入を繰返して脱酸素処理したもの〕を180分、開始剤水溶液〔2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.19gを純水30.20gに溶解したもの〕を200分かけて滴下しながら重合を行った。開始剤滴下終了後、バス温を90℃に昇温し、そのまま2時間熟成することにより、カルボキシル基を含むポリスチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液(PSS−1)を得た。各モノマーの重合転化率は100%であった。
【0076】
仕込みから計算した水溶液中のポリマー濃度は14.61wt%、ポリマー中のスルホン酸モノマー構造単位とカルボン酸モノマー構造単位の合計に対するカルボン酸モノマー構造単位の含量は10.1モル%、GPCで求めたポリマーの数平均分子量は242500(Da)、重量平均分子量は586200(Da)、pH(常温)は5.4、B型粘度計で測定した溶液粘度は460mPa・sだった。
【0077】
合成例2 ポリスチレンスルホン酸(PSS−2)の製造
還流冷却管、窒素導入管、パドル型撹拌機を取り付けた2Lガラス製四つ口フラスコに、純水61.00gを仕込み、窒素雰囲気下、85℃のオイルバスで加熱した。ここに、別途調製したパラスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液〔パラスチレンスルホン酸ナトリウム270.00g、メタクリル酸102.50gを純水1101.70gに溶解し、アスピレーターによる減圧と窒素導入を繰返して脱酸素処理したもの〕を180分、開始剤水溶液〔2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩5.64gを純水39.77gに溶解したもの〕を200分かけて滴下しながら重合を行った。開始剤滴下終了後、バス温を90℃に昇温し、そのまま2時間熟成することにより、カルボキシル基を含むポリスチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液(PSS−2)を得た。各モノマーの重合転化率は100%だった。
【0078】
仕込みから計算した水溶液中のポリマー濃度は21.70wt%、ポリマー中のスルホン酸モノマー構造単位とカルボン酸モノマー構造単位の合計に対するカルボン酸モノマー構造単位の含量は50.62モル%、GPCで求めたポリマーの数平均分子量は75100(Da)、重量平均分子量は164200(Da)、pH(常温)は4.3、B型粘度計で測定した溶液粘度は78mPa・sだった。
【0079】
合成例3 ポリスチレンスルホン酸(PSS−3)の製造
還流冷却管、窒素導入管、パドル型撹拌機を取り付けた1Lガラス製四つ口フラスコに、純水52.00gを仕込み、窒素雰囲気下、85℃のオイルバスで加熱した。ここに、別途調製したパラスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液〔パラスチレンスルホン酸ナトリウム100.00g、アクリル酸5.60gを純水451.66gに溶解し、アスピレーターによる減圧と窒素導入を繰返して脱酸素処理したもの〕を180分、開始剤水溶液〔2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.19gを純水30.50gに溶解したもの〕を200分かけて滴下しながら重合を行った。開始剤滴下終了後、バス温を90℃に昇温し、そのまま2時間熟成することにより、カルボキシル基を含むポリスチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液(PSS−3)を得た。各モノマーの重合転化率は100%であった。
【0080】
仕込みから計算した水溶液中のポリマー濃度は16.08wt%、ポリマー中のスルホン酸モノマー構造単位とカルボン酸モノマー構造単位の合計に対するカルボン酸モノマー構造単位の含量は15.11モル%、GPCで求めたポリマーの数平均分子量は261200(Da)、重量平均分子量は605600(Da)、pH(常温)は4.6、B型粘度計で測定した溶液年度は650mPa・sだった。
【0081】
合成例4 ポリスチレンスルホン酸(PSS−4)の製造
還流冷却管、窒素導入管、パドル型撹拌機を取り付けた1Lガラス製四つ口フラスコに、純水52.00gを仕込み、窒素雰囲気下、85℃のオイルバスで加熱した。ここに、別途調製したパラスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液〔パラスチレンスルホン酸ナトリウム100.00g、メタクリル酸4.15g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.15gを純水465.00gに溶解し、アスピレーターによる減圧と窒素導入を繰返して脱酸素処理したもの〕を180分、開始剤水溶液〔2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.12gを純水30.21gに溶解したもの〕を200分かけて滴下しながら重合を行った。開始剤滴下終了後、バス温を90℃に昇温し、そのまま2時間熟成することにより、カルボキシル基を含むポリスチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液(PSS−4)を得た。各モノマーの重合転化率は100%であった。
【0082】
仕込みから計算した水溶液中のポリマー濃度は14.73wt%、ポリマー中のスルホ基含有モノマー構造単位、カルボキシル基含有モノマー構造単位及びカルボキシル基を含まないモノマー構造単位の合計に対するカルボキシル基含有モノマー構造単位の含量は9.56モル%であり、ポリマー中のスルホ基含有モノマー構造単位、カルボキシル基含有モノマー構造単位及びカルボキシル基を含まないモノマー構造単位の合計に対するカルボキシル基を含まないモノマー構造単位の含量は4.80モル%であった。
【0083】
また、GPCで求めたポリマーの数平均分子量は324000(Da)、重量平均分子量は759000(Da)、pH(常温)は5.3、B型粘度計で測定した溶液粘度は690mPa・sだった。
【0084】
比較例1 PSS−1硬化性組成物の調製と評価
合成例1で得たPSS−1(溶液粘度460mPa・s)51.12g(カルボキシル基含量3.87mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)3.63g(オキサゾリン基含量3.28mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかった(溶液粘度74,300mPa・s)。
【0085】
当該組成物に純水を加えて希釈(樹脂分は低下)したが、顕著な粘度低下は見られず、流動性は回復しなかった(表1参照)。加熱乾燥後の組成物はゲル化(硬化)していたが、種々の基材に対する塗布が困難であり、本発明の硬化性組成物として不適なことが明らかである。
尚、PPS−1のみを同様の条件で乾燥し、ゲル分を測定した結果は0%だった。
【0086】
実施例1 PSS−1硬化性組成物の調製と評価
合成例1で得たPSS−1(水溶液)51.12g(カルボキシル基含量3.87mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)3.63g(オキサゾリン基含量3.28mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかったが、水の代わりに親水性溶媒の一種である1−プロパノールを加えて行くと(樹脂分は低下し、全溶媒中の親水性溶媒の比率が増加)、粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
【0087】
1−プロパノールを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0088】
実施例2 PSS−1硬化性組成物の調製と評価
実施例1において、1−プロパノールの代わりに1−メトキシ−2−プロパノールを加えても同様に粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
1−メトキシ−2−プロパノールを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0089】
実施例3 PSS−1硬化性組成物の調製と評価
実施例1において、1−プロパノールの代わりに1,2−ジメトキシプロパンを加えても同様に粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
1,2−ジメトキシプロパンを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0090】
比較例2 PSS−2硬化性組成物の調製と評価
合成例2で得たPSS−2(溶液粘度78mPa・s)51.12g(カルボキシル基含量38.55mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)10.00g(オキサゾリン基含量24.90mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかった(溶液粘度23,100mPa・s)。
【0091】
当該組成物に純水を加えて希釈したが、顕著な粘度低下は見られず、流動性は回復しなかった(表1参照)。加熱乾燥後の組成物はゲル化(硬化)していたが、種々の基材に対する塗布が困難であり、本発明の硬化性組成物として不適なことが明らかである。
尚、PPS−2のみを同様の条件で乾燥し、ゲル分を測定した結果は0%だった。
【0092】
実施例4 PSS−2硬化性組成物の調製と評価
合成例2で得たPSS−2(水溶液)51.12g(カルボキシル基含量38.55mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)10.00g(オキサゾリン基含量24.90mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかったが、水の代わりに親水性溶媒の一種である1−メトキシ−2−プロパノールを加えて行くと、粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
【0093】
1−メトキシ−2−プロパノールを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0094】
比較例3 PSS−3硬化性組成物の調製と評価
合成例3で得たPSS−3(溶液粘度650mPa・s)51.12g(カルボキシル基含量6.75mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)4.50g(オキサゾリン基含量74.76mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかった(溶液粘度88,700mPa・s)。
【0095】
当該組成物に純水を加えて希釈したが、顕著な粘度低下は見られず、流動性は回復しなかった(表1参照)。加熱乾燥後の組成物はゲル化(硬化)していたが、種々の基材に対する塗布が困難であり、本発明の硬化性組成物として不適なことが明らかである。
尚、PPS−3のみを同様の条件で乾燥し、ゲル分を測定した結果は0%だった。
【0096】
実施例5 PSS−3硬化性組成物の調製と評価
合成例3で得たPSS−3(水溶液)51.12g(カルボキシル基含量6.75mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)4.50g(オキサゾリン基含量74.76mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかったが、水の代わりに親水性溶媒の一種である1,2−ジメトキシプロパンを加えて行くと、粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
【0097】
1,2−ジメトキシプロパンを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0098】
実施例6
実施例4において、1,2−ジメトキシプロパンの代わりにエトキシエタノールを加えても同様に粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
エトキシエタノールを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0099】
比較例4 PSS−4硬化性組成物の調製と評価
合成例4で得たPSS−4(溶液粘度690mPa・s)51.12g(カルボキシル基含量3.77mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)3.15g(オキサゾリン基含量3.53mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかった(溶液粘度101,300mPa・s)。
【0100】
当該組成物に純水を加えて希釈したが、顕著な粘度低下は見られず、流動性は回復しなかった(表1参照)。加熱乾燥後の組成物はゲル化(硬化)していたが、種々の基材に対する塗布が困難であり、本発明の硬化性組成物として不適なことが明らかである。
尚、PPS−4のみを同様の条件で乾燥し、ゲル分を測定した結果は0%だった。
【0101】
実施例7 PSS−4硬化性組成物の調製と評価
合成例4で得たPSS−4(水溶液)51.12g(カルボキシル基含量3.77mmol)及び水性ポリオキサゾリン(株式会社日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−700)3.15g(オキサゾリン基含量3.53mmol)を100及び200mlガラス規格瓶に採取し、スパチュラで激しくかき混ぜ、水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物を調製した。この組成物はスパチュラに巻き付く(ワイゼンベルク効果)ほど増粘が激しく、流動性が乏しかったが、水の代わりに親水性溶媒の一種であるエタノールを加えて行くと、粘度が低下し、流動性が大きく回復した。
【0102】
エタノールを含むポリスチレンスルホン酸組成物の硬化性を評価した結果、水に不溶なゲルが高収率で得られた。また組成物を調製後、少なくとも7時間経過しても硬化性は変わらないことを確認した。当該組成物は、種々の基材に対する塗布性と硬化性が良好なポリスチレンスルホン酸組成物であることが明らかである(表1参照)。
【0103】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の水性のポリスチレンスルホン酸硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸などの汎用性モノマーで変性したポリスチレンスルホン酸(又はその塩)、複数個のオキサゾリン基を含有するポリマー及び特定構造の親水性溶剤を含む水性の硬化性組成物であり、塗工性(流動性)と硬化性が優れる。形成されたポリスチレンスルホン酸硬化膜はアニオン性の電解質膜であり、各種機材表面の改質、炭素材料の被覆など幅広い産業分野で極めて有用である。