(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン系樹脂と液状可塑剤とを溶融混練後に成形して得られたシートに対して縦延伸と横延伸とを行うことにより多孔性フィルム状にした原反フィルムから前記液状可塑剤を抽出する抽出装置と、
前記原反フィルムを把持するクリップを複数備えるクリップチェーンを有し、前記クリップチェーンを走行させることにより前記原反フィルムを縦方向に搬送し、オーブンにより前記原反フィルムに対して加熱しつつ前記原反フィルムを横方向に延伸させると共に、間隔調整範囲で前記クリップの間隔を調整することにより前記原反フィルムを縦方向に収縮可能な縦収縮型熱処理装置と、
前記縦収縮型熱処理装置によって前記原反フィルムを縦方向に収縮させた後のフィルムである製品フィルムを巻き取る巻取機と、
を備え、
前記間隔調整範囲は、前記原反フィルムの搬送方向において前記原反フィルムの収縮を開始させる位置から、前記クリップでの前記原反フィルムの把持を解除する位置である把持解除点までの範囲に少なくとも設定され、
前記オーブンは、前記原反フィルムの搬送方向において前記把持解除点よりも上流側に配置され、
前記縦収縮型熱処理装置は、前記間隔調整範囲で前記原反フィルムを縦方向に搬送しながら縦方向に収縮させ、前記原反フィルムの搬送方向における前記オーブンの下流側に位置する前記把持解除点に到達した、前記原反フィルムを縦方向へ収縮させることにより残留応力が除去された前記製品フィルムを前記巻取機に送り出すことを特徴とするセパレータフィルム製造装置。
前記縦収縮型熱処理装置は、前記原反フィルムを横方向に延伸させた後、横方向における前記クリップの間隔を小さくすることにより前記原反フィルムを横方向に収縮させる請求項1〜3のいずれか1項に記載のセパレータフィルム製造装置。
ポリオレフィン系樹脂と液状可塑剤とを溶融混練後に成形して得られたシートに対して縦延伸と横延伸とを行うことにより多孔性フィルム状にした原反フィルムから前記液状可塑剤を抽出する工程と、
前記液状可塑剤を抽出した前記原反フィルムを縦方向に搬送しながら前記原反フィルムに対して加熱し、前記原反フィルムを横方向に延伸させた後、前記原反フィルムを縦方向に収縮させる工程と、
前記原反フィルムを縦方向に収縮させた後のフィルムである製品フィルムを巻き取る工程と、
を含み、
前記原反フィルムに対する加熱は、前記原反フィルムの搬送方向における前記原反フィルムの縦方向への収縮を終了させる位置よりも上流側で終了させ、
前記製品フィルムは、前記原反フィルムに対する加熱を終了させる位置より前記原反フィルムの搬送方向における下流側に位置する、前記原反フィルムの縦方向への収縮を終了させる位置に到達した、前記原反フィルムを縦方向へ収縮させることにより残留応力が除去された前記製品フィルムを、前記製品フィルムを巻き取る工程で巻き取るセパレータフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係るセパレータフィルム製造装置及びセパレータフィルムの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100の装置構成を示すブロック図である。実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100は、主に、リチウムイオン電池に用いられるセパレータフィルムの製造に使用される。セパレータフィルム製造装置100は、原料供給装置101と、押出機102と、Tダイ103と、キャスト機104と、縦延伸機105と、第1横延伸機106と、抽出乾燥装置107と、縦収縮型第2横延伸機110と、巻取機111とを有している。
【0014】
なお、以下の説明では、セパレータフィルム製造装置100によってセパレータフィルムを製造する際における製造途中の部材の搬送方向を縦方向とも説明し、搬送方向に対して直交する方向であり、後述するシート或いはフィルムの幅方向を横方向としても説明する。
【0015】
原料供給装置101は、セパレータフィルム製造装置100によって製造するセパレータフィルムの原料が投入され、投入された原料を押出機102に対して供給する装置になっている。セパレータフィルムの原料には、ポリオレフィン系樹脂と液状可塑剤とが用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンが用いられ、例えば、高密度ポリエチレンに超高分子量ポリエチレンが添加されたもの等のポリエチレン系の高分子材料が用いられる。また、液状可塑剤としては、例えば、オイルや流動パラフィン等が用いられる。原料供給装置101は、セパレータフィルムの原料であるポリオレフィン系樹脂と液状可塑剤とを、別々に押出機102に供給する。
【0016】
押出機102は、原料供給装置101から供給されたポリオレフィン系樹脂と液状可塑剤とを溶融混練する。押出機102は、例えば、2つのスクリューを有する二軸混練押出機が用いられ、ポリオレフィン系樹脂と液状可塑剤とを2つのスクリューで攪拌することによりスラリー状にしてから、溶融混練する。これにより、均質、且つ、均一な溶融混練を行う。押出機102によって溶融混練した原料は、ギヤポンプ(図示省略)等を用いて圧力変動を抑えながらTダイ103に送る。
【0017】
Tダイ103は、スリット状のシートに吐出する。キャスト機104は、複数のロールを有するロール装置になっており、Tダイ103から吐出されたシート状の原料を冷却固化する。
【0018】
縦延伸機105と第1横延伸機106は、キャスト機104で成形して冷却固化されたシートを延伸することにより、シートの厚さを薄くして多孔性フィルム状の原反フィルムにする。このうち、縦延伸機105は、キャスト機104で冷却固化することにより得られたシートを搬送するロールを複数有しており、搬送方向における上流側よりも下流側の方が、搬送速度が速くなっている。縦延伸機105は、シートを加熱しながら、搬送速度に差がある複数のロールでシートを搬送することにより、シートを搬送方向、即ち、縦方向に延伸してフィルム状にする。
【0019】
第1横延伸機106は、縦延伸機105によって延伸した原反フィルムの搬送方向に直交する方向の両端、即ち、原反フィルムの横方向における両端を把持し、原反フィルムを縦方向に搬送しながら横方向に延伸する。これにより、縦延伸機105で厚さを薄くした原反フィルムの厚さを、さらに薄くする。ここで、縦延伸機105と第1横延伸機106とで、キャスト機104から搬送されたシートを延伸することにより形成された原反フィルムは、延伸によってポリオレフィン系樹脂が延伸されることにより、ポリオレフィン系樹脂に多数の微細孔が開孔して微細孔に液状可塑剤が入り込んだ状態になる。第1横延伸機106で横方向に延伸した多孔性フィルム状の原反フィルムは、抽出乾燥装置107に搬送する。
【0020】
抽出乾燥装置107は、抽出装置108と乾燥装置109とを有している。抽出装置108は、第1横延伸機106から搬送された原反フィルムに含浸されている液状可塑剤を抽出する。液状可塑剤の抽出は、例えば、塩化メチレンを用いて行う。即ち、抽出装置108は、原反フィルムを搬送しながら塩化メチレンの溶液に原反フィルムを浸けることにより液状可塑剤を抽出し、原反フィルムから液状可塑剤を除去する。乾燥装置109は、液状可塑剤が除去された原反フィルムを加熱しながら乾燥させる。これにより、乾燥装置109は、液状可塑剤が除去された原反フィルムに付着している塩化メチレンを除去して乾かす。原反フィルムは、抽出乾燥装置107で液状可塑剤が除去されることにより、ポリオレフィン系樹脂に開孔した多数の微細孔から液状可塑剤が抜け、多数の微細孔が開孔した原反フィルムになる。
【0021】
抽出乾燥装置107で液状可塑剤を抽出した原反フィルムは、縦収縮型第2横延伸機110に搬送される。縦収縮型第2横延伸機110では、原反フィルムを縦方向に搬送しながら横方向に延伸すると共に、或いは横方向に延伸後に、縦方向に収縮させる。縦収縮型第2横延伸機110は、このように原反フィルムを縦方向に搬送しながら横方向に延伸させると共に、搬送する原反フィルムを縦方向に収縮させることができる縦収縮型熱処理装置として設けられている。縦収縮型第2横延伸機110については、詳細な構成を後述する。
【0022】
巻取機111は、縦収縮型第2横延伸機110によって原反フィルムを縦方向に収縮させた後のフィルムである製品フィルムを巻き取る。これにより、巻取機111は、製品フィルムをロール状にする。セパレータフィルム製造装置100構成するこれらの装置のうち、原料供給装置101、押出機102、Tダイ103、キャスト機104、縦延伸機105、第1横延伸機106、抽出乾燥装置107、巻取機111は、公知の装置と同等のものを適用することが可能であるため、詳しい説明は省略する。
【0023】
図2は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100で用いられる縦収縮型第2横延伸機110の平面模式図である。以下の説明では、第1方向X及び第2方向Yは、水平面上において互いに直交する方向であり、第1方向X及び第2方向Yと直交する方向を第3方向Zと定義する。第1方向Xは、縦収縮型第2横延伸機110によって原反フィルム5aを搬送する際における横方向であり、第2方向Yは、縦収縮型第2横延伸機110による原反フィルム5aの搬送方向である縦方向に沿った方向である。これらの第1方向Xと第2方向Yは、縦収縮型第2横延伸機110を任意の設置場所に設置して通常の使用形態で使用する際における水平方向である。第3方向Zは、縦収縮型第2横延伸機110を任意の設置場所に設置して通常の使用形態で使用する際における上下方向、或いは重力方向である。また、以下の説明では、縦収縮型第2横延伸機110を通常の使用形態で使用する際における重力方向における上側を縦収縮型第2横延伸機110の上側として説明し、重力方向における下側を縦収縮型第2横延伸機110の下側として説明する。
【0024】
<縦収縮型第2横延伸機110の概要>
縦収縮型第2横延伸機110は、第1方向Xに離間した一対の移動経路である、左移動経路1Lと、右移動経路1Rとを有する。左移動経路1Lは、往路2と復路3とを交差させることなく無端状に接続させた、一連の左レール構造体4Lを有する。右移動経路1Rは、往路2と復路3とを交差させることなく無端状に接続させた、一連の右レール構造体4Rを有する。
【0025】
左移動経路1Lは、往路2と復路3とが概ね第2方向Yに延在する向きで配設されている。右移動経路1Rは、左移動経路1Lと同様に往路2と復路3とが概ね第2方向Yに延在する向きで配設されている。また、右移動経路1Rは、往路2が左移動経路1Lの往路2と対向し、復路3が、左移動経路1Lの復路3と対向する。左移動経路1Lの往路2と右移動経路1Rの往路2との間の範囲は、縦収縮型第2横延伸機110によって原反フィルム5aを搬送する際における搬送エリア1Aになっている。
【0026】
第1方向Xにおいて搬送エリア1Aの中心が位置する側を内側とし、第1方向Xにおける搬送エリア1Aの中心が位置する側の反対側を外側とする場合、左移動経路1Lの往路2と右移動経路1Rの往路2とは、搬送エリア1Aの両外側に配置され、第2方向Yにおいて搬送エリア1Aに沿っている。また、左移動経路1Lの復路3は、第1方向Xにおける左移動経路1Lの往路2の外側に沿って構成されており、右移動経路1Rの復路3は、第1方向Xにおける右移動経路1Rの往路2の外側に沿って構成されている。
【0027】
縦収縮型第2横延伸機110は、原反フィルム5aの長手方向が第2方向Yに沿った向きで搬送する。つまり、左移動経路1Lを構成する左レール構造体4Lと、右移動経路1Rを構成する右レール構造体4Rとは、第1方向Xにおける原反フィルム5aの両側に、互いに対向させて配置されている。左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとが対向する領域では、左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとは、双方の往路2が互いに対向するように配置されている。
【0028】
左移動経路1Lと右移動経路1Rとは、第1方向Xにおいて対称な構造を有している。つまり、左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとは、第1方向Xにおいて対称な構造を有している。以下の説明では、左移動経路1L、左レール構造体4Lを中心として説明するが、右移動経路1R、右レール構造体4Rについても同様の構造を有しており、左移動経路1L、左レール構造体4Lを用いて説明する構造は、右移動経路1R、右レール構造体4Rについても適用される。
【0029】
左移動経路1Lの往路2と復路3は、原反フィルム5aを搬送する際における原反フィルム5aの入口側に位置する入口側スプロケット6と、原反フィルム5aの出口側に位置する出口側スプロケット7を経由して、互いに無端状に連続されている。なお、入口側スプロケット6と出口側スプロケット7とは、左移動経路1L側と右移動経路1R側とにそれぞれ配設されている。左移動経路1Lの往路2と復路3、及び右移動経路1Rの往路2と復路3は、それぞれの移動経路1L,1R側に配設される入口側スプロケット6と出口側スプロケット7とを経由して、それぞれ無端状に連続されている。例えば、左移動経路1Lにおいて往路2は、入口側スプロケット6から出口側スプロケット7に至るまでの領域に構成されており、復路3は、出口側スプロケット7から入口側スプロケット6に至るまでの領域に構成されている。
【0030】
入口側スプロケット6と出口側スプロケット7とのうち、出口側スプロケット7は、駆動部として用いられるモータ(図示省略)によって回転駆動される駆動側スプロケットになっており、入口側スプロケット6は、回転フリーに構成される従動側スプロケットになっている。即ち、モータは、出口側スプロケット7に対して駆動力を付与する。なお、左移動経路1L側と右移動経路1R側とにそれぞれ配設される一対の出口側スプロケット7は、1つのモータで回転駆動のシャフトを介して回転させてもよく、それぞれ個別にモータを備えて、それぞれのモータによって回転させてもよい。また、入口側スプロケット6も、出口側スプロケット7と同様に、駆動部として用いられるモータ(図示省略)によって回転駆動させてもよい。
【0031】
左移動経路1Lには、左移動経路1Lに沿って無端状に連続して形成され、左レール構造体4Lに沿って移動可能なクリップチェーン8が設けられている。クリップチェーン8は、原反フィルム5aの縁部を把持可能に構成されている。左移動経路1Lに設けられるクリップチェーン8は、左移動経路1L側に配設される入口側スプロケット6及び出口側スプロケット7と噛み合っている。これにより、左移動経路1Lに設けられるクリップチェーン8は、モータによって出口側スプロケット7を回転させることにより、左移動経路1Lを循環させることができる。
【0032】
右移動経路1Rにも同様に、右移動経路1Rに沿って無端状に連続して形成され、右レール構造体4Rに沿って移動可能なクリップチェーン9が設けられており、クリップチェーン9は、原反フィルム5aの縁部を把持可能に構成されている。左レール構造体4Lと、クリップチェーン8と、モータ(図示省略)によって回転駆動されてクリップチェーン8を移動させる出口側スプロケット7は、左把持装置40Lを構成している。右レール構造体4Rと、クリップチェーン9と、モータ(図示省略)によって回転駆動されてクリップチェーン9を移動させる出口側スプロケット7は、右把持装置40Rを構成している。このため、縦収縮型第2横延伸機110は、一対の把持装置40L,40Rを備えている。
【0033】
また、左移動経路1Lの往路2と右移動経路1Rの往路2とが対向する領域には、原反フィルム5aの搬送時に原反フィルム5aが通るエリアである一連の搬送エリア1Aが構成されている。搬送エリア1Aは、縦収縮型第2横延伸機110によって原反フィルム5aを搬送する際における搬送方向Yの上流側から下流側に亘って搬送方向Yに沿って連続して構成されている。
【0034】
モータから付与される駆動力によって回転する出口側スプロケット7は、クリップチェーン8,9が往路2に沿って、入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かって移動し、復路3に沿って出口側スプロケット7側から入口側スプロケット6側に向かって移動する方向に回転する。
【0035】
出口側スプロケット7の直径は、出口側スプロケット7が配設されている部分以外の部分の往路2と復路3との間隔よりも大きくなっているため、復路3には、往路2と復路3との間隔を、出口側スプロケット7から離れるに従って漸減させることができる出口側傾斜部7pが設けられている。
【0036】
クリップチェーン8,9の移動に伴って回転する入口側スプロケット6は、復路3に沿って出口側スプロケット7側から入口側スプロケット6側に向かって移動したクリップチェーン8,9を、往路2に向かわせることができる。入口側スプロケット6の直径は、入口側スプロケット6が配設されている部分以外の部分の往路2と復路3との間隔よりも大きくなっているため、復路3には、往路2と復路3との間隔を、入口側スプロケット6から離れるに従って漸減させることができる入口側傾斜部6pが設けられている。
【0037】
さらに、搬送エリア1Aには、加熱装置が設けられている。加熱装置は、オーブン30と、オーブン30の温度を制御する温度制御部(図示省略)と、を備えている。左移動経路1L及び右移動経路1Rの搬送方向Yにおける、原反フィルム5aに対して加熱または保温を行う領域は、往路2と復路3との双方が、原反フィルム5aに対して加熱または保温を行うオーブン30によって覆われている。
【0038】
オーブン30は、複数の加熱保温室T1〜T10を有している。なお、
図2では、加熱保温室T1〜T10は、第2方向Yの大きさがほぼ同じ大きさになっているが、加熱保温室T1〜T10は、原反フィルム5aの種類や延伸仕様等に応じて、第2方向Yの大きさが互いに異なっていてもよい。
【0039】
温度制御部は、加熱保温室T1〜T10毎に温度制御を行い、加熱保温室T1〜T10の内部を、予め設定された温度まで加熱したり、或いは、一定の温度に保持したりする。
【0040】
<左レール構造体4L、右レール構造体4R>
左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとは、それぞれ往路レールユニット10と復路レールユニット11と、を有している。左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとの双方の往路レールユニット10は、第1方向Xにおける搬送エリア1Aの両外側に沿って配置されている。左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとの双方の復路レールユニット11は、第1方向Xにおける往路レールユニット10の両外側に沿って配置されている。これらの往路レールユニット10と復路レールユニット11とは、搬送方向Yにおける入口側傾斜部6pから上流側の範囲と、搬送方向Yにおける出口側傾斜部7pから下流側の範囲とを除いた領域に設けられている。
【0041】
さらに、往路レールユニット10と復路レールユニット11とは、それぞれ複数のブロック構造を連結することにより構成されている。
図3は、
図2に示すクリップチェーン8,9の構成を示す平面図である。
図4は、
図2のf3線に沿う断面図であり、固定ブロック16が配置された位置での断面図である。具体的には、往路レールユニット10は、一方のブロック構造である往路ブロック13(
図4)を連結することにより構成されている。復路レールユニット11は、他方のブロック構造である復路ブロック14(
図4)を連結することにより構成されている。これらの往路ブロック13と復路ブロック14とは、入口側スプロケット6が配設される位置と出口側スプロケット7が配設される位置との間に亘って、それぞれ複数が搬送方向Yに沿って並べて配置される。
【0042】
また、縦収縮型第2横延伸機110では、搬送する原反フィルム5aが収縮する範囲である間隔調整範囲27b−Zに、レール移動機構27が適用されている。レール移動機構27は、一方のブロック構造である往路ブロック13に対する、他方のブロック構造である復路ブロック14の位置関係を調整することが可能になっている。
【0043】
<往路レールユニット10>
往路レールユニット10は、左移動経路1L及び右移動経路1Rごとに設けられており、左移動経路1L及び右移動経路1Rの往路2に沿って、連続的に構成されている。往路レールユニット10は、上側基準レール10aと、下側基準レール10bと、を備えており(
図4参照)、上側基準レール10aは、重力方向Zにおいて下側基準レール10bの上側に位置している。上側基準レール10aと下側基準レール10bとは、重力方向Zに沿って上下に一定の距離だけ離間させた状態において、互いに平行に対向させて配置されている。
【0044】
上側基準レール10aは、往路2に沿って連続的に敷設されている。上側基準レール10aは、複数の上側レールエレメント10Eaから構成されている。複数の上側レールエレメント10Eaは、搬送方向Yに沿って並べられる複数の往路ブロック13に1つずつ固定されており、往路2に沿って一列に並べられる。
【0045】
下側基準レール10bも同様に、往路2に沿って連続的に敷設されている。下側基準レール10bは、複数の下側レールエレメント10Ebから構成されている。複数の下側レールエレメント10Ebは、搬送方向Yに沿って並べられる複数の往路ブロック13に1つずつ固定されており、往路2に沿って一列に並べられる。
【0046】
往路レールユニット10は、クリップチェーン8,9が有する移動機構20(
図3参照)が移動可能に構成されている。移動機構20は、走行ユニット25と転動ユニット26とを有している。走行ユニット25は、上側走行ベアリング25aと下側走行ベアリング25bとを有し、転動ユニット26は、上側転動ベアリング26aと下側転動ベアリング26bとを有している。これらの移動機構20の詳細については、後述する。
【0047】
上側基準レール10aと下側基準レール10bとは、幅方向X、即ち、横方向Xにおける位置が同じ位置となって、重力方向Zに並んで配置されている。上側走行ベアリング25aは、重力方向Zにおける上側基準レール10aの下方側から上側基準レール10aに接触し、下側走行ベアリング25bは、重力方向Zにおける下側基準レール10bの上方側から下側基準レール10bに接触する。
【0048】
<復路レールユニット11>
復路レールユニット11は、左移動経路1L及び右移動経路1Rごとに設けられており、左移動経路1L及び右移動経路1Rの復路3に沿って、連続的に構成されている。復路レールユニット11は、上側基準レール11aと、下側基準レール11bと、を備えており(
図4参照)、上側基準レール11aは、重力方向Zにおいて下側基準レール11bの上側に位置している。上側基準レール11aと下側基準レール11bとは、重力方向Zに沿って上下に一定の距離だけ離間させた状態において、互いに平行に対向させて配置されている。
【0049】
上側基準レール11aは、復路3に沿って、連続的に敷設されている。上側基準レール11aは、複数の上側レールエレメント11Eaから構成されている。複数の上側レールエレメント11Eaは、搬送方向Yに沿って並べられる複数の復路ブロック14に1つずつ固定されており、復路3に沿って一列に並べられる。
【0050】
下側基準レール11bも同様に、復路3に沿って連続的に敷設されている。下側基準レール11bは、複数の下側レールエレメント11Ebから構成されている。複数の下側レールエレメント11Ebは、搬送方向Yに沿って並べられる複数の復路ブロック14に1つずつ固定されており、復路3に沿って一列に並べられる。
【0051】
復路レールユニット11は、クリップチェーン8,9が有する移動機構20(
図3参照)が移動可能に構成されている。上側基準レール11aと下側基準レール11bとは、横方向Xにおける位置が同じ位置となって、重力方向Zに並んで配置されている。上側走行ベアリング25aは、重力方向Zにおける上側基準レール11aの下方側から上側基準レール11aに接触し、下側走行ベアリング25bは、重力方向Zにおける下側基準レール11bの上方側から下側基準レール11bに接触する。
【0052】
<レールブロック12、往路ブロック13、復路ブロック14>
縦収縮型第2横延伸機110は、複数のレールブロック12を有している。1つのレールブロック12には、往路ブロック13と復路ブロック14とからなる1組のブロック構造が設けられている(
図4参照)。左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとは、複数のレールブロック12を左移動経路1Lや右移動経路1Rに沿って並べることで、往路2と復路3を無端状に接続させた一連の左レール構造体4L及び右レール構造体4Rが構成されている。
【0053】
レールブロック12の内側には、往路ブロック13と復路ブロック14とが、横方向Xにおいて互いに対向して配置されている(
図4参照)。レールブロック12は、左移動経路1Lや右移動経路1Rの延在方向に見た場合における断面形状が、往路ブロック13及び復路ブロック14を囲むように構成されて往路ブロック13が位置する側が開口側となるコ字状、或いは、U字状となる枠体構造を有している。
【0054】
レールブロック12の内側には、レールブロック12に対して横方向Xに移動可能なスライダ15が配置されており、復路ブロック14は、スライダ15に固定されている。これにより、復路ブロック14は、レールブロック12に対して横方向Xに移動することが可能になっており、往路ブロック13との横方向Xにおける位置関係を調整することが可能になっている。
【0055】
往路ブロック13と復路ブロック14とは、左移動経路1Lや右移動経路1Rの延在方向に見た場合における断面形状が、いずれもコ字状に形成されている。このうち、往路ブロック13は、コ字状の開口側がレールブロック12のコ字状の開口側を向き、復路ブロック14は、コ字状の開口側がレールブロック12のコ字状の閉塞部分である側壁部12c側を向く向きで配置されている。このため、往路ブロック13と復路ブロック14とは、それぞれのコ字状の閉塞側が、互いに対向して配置されている。
【0056】
往路ブロック13に固定される上側レールエレメント10Eaは、往路ブロック13の断面形状であるコ字状の上側部分に配置され、下側レールエレメント10Ebは、往路ブロック13の断面形状であるコ字状の下側部分に配置されている。同様に、復路ブロック14に固定される上側レールエレメント11Eaは、復路ブロック14の断面形状であるコ字状の上側部分に配置され、下側レールエレメント11Ebは、復路ブロック14の断面形状であるコ字状の下側部分に配置されている。
【0057】
レール移動機構27が適用されないレールブロック12の一例であるレールブロック12−P1では、
図4に示すように、往路ブロック13と復路ブロック14との間に、固定ブロック16が配置されて固定されている。これにより、レールブロック12−P1では、往路ブロック13と復路ブロック14とが予め設定された間隔で配設されている。固定ブロック16は、1つのレールブロック12−P1に、予め設定された個数が配置されており、例えば、左移動経路1Lや右移動経路1Rに沿った方向におけるレールブロック12−P1の両端付近の2箇所に配置されている。固定ブロック16は、複数のボルト17によって、往路ブロック13及び復路ブロック14に固定されている。
【0058】
図5は、
図2のf5線に沿う断面図であり、レール移動機構27が配置された位置での断面図である。なお、
図5は、
図2において符号12−P2で示された1つのレールブロック12の断面図になっている。間隔調整範囲27b−Z(
図2参照)では、往路ブロック13と復路ブロック14とは、双方の間の間隔を、レール移動機構27によって調整可能になっている。
【0059】
レール移動機構27が適用されるレールブロック12の一例であるレールブロック12−P2では、
図5に示すように、往路ブロック13と復路ブロック14との間に、レール移動機構27を構成する調整ブロック27aが配置されている。調整ブロック27aは、1つのレールブロック12−P2に、予め設定された個数が配置されており、例えば、左移動経路1Lや右移動経路1Rに沿った方向におけるレールブロック12−P2の両端付近の2箇所に配置されている。調整ブロック27aは、複数のボルト28によって、復路ブロック14に固定されている。
【0060】
また、往路ブロック13における調整ブロック27aに対向する位置には、レール移動機構27を構成する調整通路27dが形成されている。調整通路27dは、往路ブロック13を横方向Xに貫通する孔として形成されており、調整ブロック27aを挿通可能になっている。復路ブロック14に固定される調整ブロック27aは、往路ブロック13に形成される調整通路27dに入り込んでいる。
【0061】
レールブロック12−P2における側壁部12cが位置する側には、レール移動機構27を構成する調整ネジ27eが配設されている。側壁部12cには、調整ネジ27eに形成されたネジ部と螺合するネジ孔が形成されており、調整ネジ27eは、ネジ部がネジ孔に螺合することにより、側壁部12cを横方向Xに貫通して側壁部12cに支持されている。調整ネジ27eは、スライダ15に取り付けられる軸受29に先端側が連結されることにより、スライダ15に対して回動自在に連結されている。一方、調整ネジ27eにおける反対側の端部、即ち、調整ネジ27eの基端側は、オーブン30の外側に位置している(
図2参照)。これにより、調整ネジ27eは、オーブン30の外側から操作可能になっている。
【0062】
<クリップチェーン8,9>
縦収縮型第2横延伸機110は、左移動経路1Lや右移動経路1Rに沿って移動可能な無端状のクリップチェーン8,9を有している。左移動経路1L側のクリップチェーン8と、右移動経路1R側のクリップチェーン9とは、互いに同一の構成を有している。クリップチェーン8,9は、原反フィルム5aの横方向X両端に配置され、原反フィルム5aを把持して延伸することが可能になっており、それぞれ入口側スプロケット6と出口側スプロケット7とに巻き掛けられている。
【0063】
クリップチェーン8,9は、原反フィルム5aを把持する複数のクリップ18と、複数の間隔調整機構19と、複数の移動機構20と、を備えている(
図3参照)。クリップチェーン8,9は、クリップ18と間隔調整機構19とを1つずつ交互に無端状に連結させて構成されている。さらに、移動機構20は、クリップ18に1つずつ搭載されている。移動機構20は、クリップ18を往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って移動させることが可能に構成されている。
【0064】
左移動経路1Lの往路2及び右移動経路1Rの往路2(
図2参照)は、クリップ18で把持する原反フィルム5aを搬送する際の搬送方向Yにおける上流側から下流側に、クリップ18を移動させる経路になっている。左移動経路1Lの復路3及び右移動経路1Rの復路3は、搬送方向Yにおける下流側から上流側に、クリップ18を移動させる経路になっている(
図2参照)。
【0065】
<クリップ18>
クリップ18は、クリップ本体部18aと、把持部材18pと、を備えている(
図3参照)。クリップ本体部18aは、原反フィルム5aの横方向Xにおける両縁部を、把持部材18pとによって把持する部分である支持面18Sa(
図4参照)を備えている。
【0066】
把持部材18pは、クリップ本体部18aに対して回動可能に支持されている(
図4参照)。クリップ本体部18aにおける把持部材18pを支持している部分は、支持面18Saの上方に位置しており、把持部材18pは、支持面18Sa側に位置する回動先端に、把持面18Spを有している。把持部材18pは、把持面18Spと支持面18Saとの間に原反フィルム5aを挟持することにより、原反フィルム5aの両縁部を把持することが可能になっている。
【0067】
<間隔調整機構19>
間隔調整機構19は、搬送方向Y、或いは、クリップチェーン8,9の移動方向に沿って隣り合う2つのクリップ18同士の間に配置されている(
図3参照)。即ち、複数のクリップ18と複数の間隔調整機構19とは、1つずつ交互に無端状に連結されており、間隔調整機構19は、複数のクリップ18のうち互いに隣り合うクリップ18同士を接続している。間隔調整機構19は、隣り合うクリップ18同士の間隔を調整する機能を有している。ここで、説明の都合上、搬送方向Yに沿って隣り合う2つのクリップ18のうち、一方のクリップ18を第1クリップ18−1とし、他方のクリップ18を第2クリップ18−2として説明する。
【0068】
間隔調整機構19は、第1継手部材19−1と、第2継手部材19−2と、を備えている。クリップ本体部18aは、クリップ18の移動方向にクリップ本体部18aを見た場合における断面形状が、支持面18Saが位置する側が閉塞側となるコ字状の形状で形成されており、第1継手部材19−1と第2継手部材19−2とは、コ字状の内側部分に配置されている。第1継手部材19−1は、長さ方向における一端が、重力方向Zに延びる第1枢軸部21を介して、第1クリップ18−1のクリップ本体部18aに回動自在に連結されている。第1継手部材19−1の長さ方向における他端は、中継軸部22を介して第2継手部材19−2に回動自在に連結されている。
【0069】
第2継手部材19−2は、略くの字型をしており、一端が中継軸部22に回転自在に連結され、他端に調整ベアリング19−3が回転自在に取り付けられている。詳しくは、第2継手部材19−2は、略くの字型における屈曲している部分である屈曲部19−2cから、第1継手部材19−1が位置する側に延びる第2継手本体部19−2aと、屈曲部19−2cから、横方向Xにおいて把持部材18pが位置する側の反対側に延びる突出部19−2bとを有している。第2継手部材19−2は、重力方向Zに延びる第2枢軸部24によって、屈曲部19−2cの位置で第2クリップ18−2のクリップ本体部18aに回動自在に連結されている。また、第2継手部材19−2は、第2継手本体部19−2aの端部が中継軸部22に回転自在に連結されることにより、第2継手部材19−2自体が、中継軸部22を介して第1継手部材19−1に回動自在に連結されている。
【0070】
第2継手部材19−2の突出部19−2bは、屈曲部19−2cから、横方向Xにおいて把持部材18pが位置する側の反対側に突出し、さらに、第1クリップ18−1が位置する方向に湾曲して形成されている。調整ベアリング19−3は、第2継手部材19−2が有する突出部19−2bの先端に、回転軸が重力方向Zに沿った方向になる向きで回転自在に取り付けられている。
【0071】
間隔調整機構19は、これらのように構成されるため、第1クリップ18−1と第2クリップ18−2とは、間隔調整機構19の第1継手部材19−1と第2継手部材19−2とが第1クリップ18−1や第2クリップ18−2に対して回動し、第1継手部材19−1と第2継手部材19−2とが相対的に回動することにより、第1クリップ18−1と第2クリップ18−2の間隔が変化することができるようになっている。これにより、間隔調整機構19は、搬送方向Yに隣り合う2つのクリップ18同士の間隔を変化させることができるように、隣り合う2つのクリップ18を連結している。本実施形態1では、間隔調整機構19は、隣り合う2つのクリップ18同士の間隔を、2つのクリップ18同士の最大の間隔に対して20%程度縮めることが可能になっている。
【0072】
<移動機構20>
移動機構20は、重力方向Zにおけるクリップ18の上側と下側との双方に配置される走行ユニット25及び転動ユニット26を有している(
図4参照)。移動機構20は、クリップ18に1つずつ搭載されており、クリップ18を、左移動経路1Lや右移動経路1Rに沿って移動させることが可能になっている。
【0073】
走行ユニット25が有する上側走行ベアリング25aは、断面形状がコ字状の形状で形成されるクリップ本体部18aの上側の壁部に配置されており、下側走行ベアリング25bは、クリップ本体部18aの下側の壁部に配置されている。これらの上側走行ベアリング25aと下側走行ベアリング25bとは、いずれも回転軸が、クリップ18の移動方向と重力方向Zとの双方に直交する方向に延びる向きで配置されている。
【0074】
上側走行ベアリング25aは、往路レールユニット10の上側基準レール10aや復路レールユニット11の上側基準レール11aに対して下側から接触する。下側走行ベアリング25bは、往路レールユニット10の下側基準レール10bや復路レールユニット11の下側基準レール11bに対して上側から接触する。これにより、走行ユニット25は、上側走行ベアリング25aや下側走行ベアリング25bが転がりながら、往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って移動することが可能になっている。
【0075】
転動ユニット26が有する上側転動ベアリング26aは、クリップ本体部18aの上面側に配置され、下側転動ベアリング26bは、クリップ本体部18aの下面側に配置されている。これらの上側転動ベアリング26aと下側転動ベアリング26bとは、いずれも回転軸が重力方向Zに延びる向きで配置されている。上側転動ベアリング26aは、往路レールユニット10の上側基準レール10aや復路レールユニット11の上側基準レール11aに対して、水平方向における側方から接触する。下側転動ベアリング26bは、往路レールユニット10の下側基準レール10bや復路レールユニット11の下側基準レール11bに対して、水平方向における側方から接触する。
【0076】
具体的には、上側転動ベアリング26aは、1つのクリップ本体部18aに4つが配置されており、4つの上側転動ベアリング26aは、上側基準レール10a,11aの厚さ方向における両側に2つずつが配置されている。下側転動ベアリング26bも同様に、1つのクリップ本体部18aに4つが配置されており、4つの下側転動ベアリング26bは、下側基準レール10b,11bの厚さ方向における両側に2つずつが配置されている。これにより、転動ユニット26は、上側転動ベアリング26aや下側転動ベアリング26bが転がりながら、往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って移動することが可能になっている。
【0077】
<レール移動機構27>
レール移動機構27は、間隔調整範囲27b−Z(
図2参照)に亘って設けられており、間隔調整範囲27b−Zは、原反フィルム5aの搬送方向Yにおいて、原反フィルム5aの収縮を開始させる位置から、少なくとも把持解除点18p−OFFまでの範囲に設定される。把持解除点18p−OFFは、クリップ18によって原反フィルム5aを把持しながら搬送方向Yに搬送する際におけるクリップ18での把持を解除する位置になっている。
【0078】
縦収縮型第2横延伸機110での原反フィルム5aの搬送時には、間隔調整範囲27b−Zでは、横方向Xに沿った原反フィルム5aの収縮に追従させる横方向弛緩処理と、搬送方向Yに沿った原反フィルム5aの収縮に追従させる縦方向弛緩処理とが行われる。レール移動機構27は、レール移動機構27を構成する調整レール27bを移動させることにより、往路2において搬送方向Yに隣り合うクリップ18同士の間隔を調整することが可能になっており、これにより、レール移動機構27は、縦方向弛緩処理を行うことが可能になっている。つまり、縦収縮型第2横延伸機110は、クリップ18の間隔を調整することにより、原反フィルム5aを、搬送方向Yである縦方向Yに収縮可能になっている。
【0079】
レール移動機構27は、調整ブロック27aと、調整レール27bと、調整通路27dと、調整ネジ27eと、を有している(
図5参照)。調整ブロック27aは、上述したように、予め設定された個数の調整ブロック27aが、複数のボルト28によって復路ブロック14に固定されている。
【0080】
調整レール27bは、クリップ18の間隔を調整するために配置されたレールになっており、位置決めブロック31に設けられている。位置決めブロック31は、調整ブロック27aにおける、横方向Xにおいて復路ブロック14に固定される側の反対側に支持されている。調整レール27bは、調整ブロック27aに支持される位置決めブロック31に対して、間隔調整機構19(
図3参照)の第2継手部材19−2に取り付けられる調整ベアリング19−3に対向させるように配置されており、調整ベアリング19−3に接触することができるように配置されている。これにより、調整レール27bは、間隔調整機構19の第2継手部材19−2に取り付けられる調整ベアリング19−3に対して、横方向Xにおいてクリップ18の支持面18Saや把持部材18pが位置する方向への押圧力を作用させることが可能になっている。即ち、間隔調整機構19は、調整レール27bに調整ベアリング19−3が当接し、調整レール27bからの押圧力が作用することにより、クリップ18の間隔を調整することが可能になっている。
【0081】
調整通路27dは、往路ブロック13における、復路ブロック14に固定される調整ブロック27aや位置決めブロック31に対向する位置に、往路ブロック13を横方向Xに貫通する孔として形成されている。調整通路27dは、調整ブロック27aのみでなく、位置決めブロック31も挿通可能に構成されており、調整ブロック27aや位置決めブロック31は調整通路27dに入り込んでいる。
【0082】
調整ネジ27eは、上述したように、レールブロック12の側壁部12cに形成されたネジ孔にネジ部が螺合することにより側壁部12cに支持されており、先端側が、スライダ15に取り付けられた軸受29を介してスライダ15に連結されている。また、調整ネジ27eにおけるスライダ15に連結されている側の端部の反対側の端部は、オーブン30の外側に位置している。
【0083】
<縦収縮型第2横延伸機110の動作>
本実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100が有する縦収縮型第2横延伸機110は、以上のような構成を含み、以下、その動作について説明する。セパレータフィルム製造装置100でのセパレータフィルムの製造時には、抽出乾燥装置107で液状可塑剤を抽出し、多数の微細孔が開孔した原反フィルム5aが抽出乾燥装置107(
図1参照)から縦収縮型第2横延伸機110に搬送される。縦収縮型第2横延伸機110は、抽出乾燥装置107から搬送された原反フィルム5aを、入口側スプロケット6が位置する側から搬送エリア1Aに位置させる(
図2参照)。その際に、原反フィルム5aは、原反フィルム5aの長手方向、即ち、縦方向が縦収縮型第2横延伸機110の第2方向Yになり、原反フィルム5aの長手方向と厚さ方向との双方に直交する幅方向、即ち、横方向が縦収縮型第2横延伸機110の第1方向Xになる向きで、搬送エリア1Aに位置させる。
【0084】
縦収縮型第2横延伸機110の前工程で用いる抽出乾燥装置107等の装置から、搬送エリア1Aにおける入口側スプロケット6側から搬送エリア1Aに送り込まれた原反フィルム5aは、往路2における把持開始点18p−ONで、横方向Xにおける両縁部が順次、クリップ18で把持される。ここでいう把持開始点18p−ONは、クリップチェーン8,9を構成するクリップ18によって原反フィルム5aを把持しながら、原反フィルム5aを入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向けて搬送する際に、クリップ18による原反フィルム5aの把持を開始する位置になっている。
【0085】
クリップ18によって原反フィルム5aの両縁部を把持する際には、クリップ本体部18aに回動可能に支持されている把持部材18pを回動させる(
図4参照)。これにより、原反フィルム5aの横方向Xにおける両縁部付近を、把持部材18pの把持面18Spとクリップ本体部18aの支持面18Saとで挟持し、原反フィルム5aの両縁部付近をクリップ18によって把持する。
【0086】
原反フィルム5aの搬送は、クリップチェーン8,9を構成するクリップ18によって原反フィルム5aを把持している状態で、出口側スプロケット7に対して駆動力を付与するモータを駆動させる(
図2参照)。これにより、左移動経路1Lに設けられるクリップチェーン8は、出口側スプロケット7から伝達される駆動力によって左移動経路1Lを循環し、右移動経路1Rに設けられるクリップチェーン9は、出口側スプロケット7から伝達される駆動力によって右移動経路1Rを循環する。
【0087】
クリップチェーン8,9の循環方向は、左移動経路1Lや右移動経路1Rの往路2では、クリップチェーン8,9が入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かって移動し、左移動経路1Lや右移動経路1Rの復路3では、クリップチェーン8,9が出口側スプロケット7側から入口側スプロケット6側に向かって移動する方向になっている。原反フィルム5aは、左移動経路1Lや右移動経路1Rの往路2の位置で、横方向Xにおける両縁部がクリップ18に把持されるため、クリップチェーン8,9が循環することにより、原反フィルム5aは、往路2に位置するクリップチェーン8,9によって、往路2におけるクリップチェーン8,9の移動方向に移動する。このため、原反フィルム5aは、搬送エリア1Aを搬送方向Yにおける入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かって移動する。
【0088】
搬送エリア1Aで搬送される原反フィルム5aは、搬送される間に、加熱されながら横方向Xに延伸され、例えば、横方向Xに1.1倍〜1.7倍程度、延伸される。これにより、原反フィルム5aは、出口側スプロケット7が位置する側から送り出される際には、延伸済みのフィルムである製品フィルム5bが送り出される。
【0089】
具体的には、搬送エリア1Aには、それぞれで温度制御が可能な複数の加熱保温室T1〜T10が設けられており、加熱保温室T1〜T10は、搬送方向Yにおける位置ごとに、その位置に応じた温度で原反フィルム5aを加熱することが可能になっている。つまり、加熱保温室T1〜T10では、それぞれの加熱保温室T1〜T10で、搬送方向Yにおける位置に適したオーブン30の温度制御を行う。
【0090】
また、左移動経路1Lと右移動経路1Rとの往路2同士の横方向Xにおける間隔は、搬送方向Yにおける位置ごとに異なっており、搬送方向Yにおける所定の範囲で、入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かうに従って双方の往路2の間隔が大きくなっている。即ち、搬送方向Yにおける所定の範囲では、原反フィルム5aの横方向Xにおける両端を把持するクリップ18の横方向Xの間隔が、入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かうに従って大きくなるようになっている。これにより、縦収縮型第2横延伸機110は、搬送エリア1Aで原反フィルム5aを搬送する際に、オーブン30によって原反フィルム5aを加熱しつつ、原反フィルム5aに対して横方向Xの張力を付与し、横方向Xに延伸させる。つまり、左移動経路1Lと右移動経路1Rとの往路2同士の間隔が入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かうに従って大きくなる領域では、クリップチェーン8,9を走行させることにより原反フィルム5aを搬送方向Yに搬送しながら、原反フィルム5aを横方向Xに延伸させる。これにより、原反フィルム5aに開孔している微細孔の大きさを調整する。
【0091】
また、縦収縮型第2横延伸機110は、搬送方向Yにおける、原反フィルム5aを横方向Xに延伸させる範囲よりも出口側スプロケット7側の所定の範囲では、横方向Xにおける原反フィルム5aの両側に位置する往路2同士の間隔が、入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かうに従って小さくなっている。即ち、原反フィルム5aを横方向Xに延伸させる範囲よりも出口側スプロケット7側に位置する所定の範囲では、原反フィルム5aの横方向Xにおける両端を把持するクリップ18の横方向Xの間隔が、入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かうに従って小さくなるようになっている。このため、この範囲では、原反フィルム5aは入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に搬送されるに従って、横方向Xに収縮する。原反フィルム5aを横方向Xに収縮させる範囲では、例えば、10%〜30%程度、横方向Xに収縮させる。
【0092】
ここで、原反フィルム5aが収縮する際には、搬送方向Y、即ち、縦方向Yにおいても収縮するため、縦方向Yにおける原反フィルム5aが収縮する範囲では、隣り合うクリップ18同士の間隔を、間隔調整範囲27b−Zに配設されるレール移動機構27で調整レール27bを移動させることを介して小さくする。換言すると、間隔調整範囲27b−Zは、往路2において原反フィルム5aが収縮する範囲を含む範囲になっている。隣り合うクリップ18同士の間隔をレール移動機構27(
図5参照)によって調節する際には、レール移動機構27を構成する調整ネジ27eを回転させることにより行う。
【0093】
調整ネジ27eは、レールブロック12の側壁部12cに螺合しているため、調整ネジ27eを回転させると、調整ネジ27eは横方向Xに移動し、調整ネジ27eと共にスライダ15が横方向Xに移動する。これにより、復路ブロック14もスライダ15と共に横方向Xに移動し、復路ブロック14に固定されている調整ブロック27aも復路ブロック14と一体となって移動する。調整ネジ27eを回転させることにより、復路ブロック14と共に調整ブロック27aを予め設定された距離だけ移動させたら、調整ネジ27eの回転を停止させる。
【0094】
調整ブロック27aが横方向Xに移動すると、調整ブロック27aに支持される位置決めブロック31、及び位置決めブロック31に設けられる調整レール27bも調整ブロック27aと共に移動する。例えば、調整ネジ27eを回転させることにより、横方向Xにおいて往路ブロック13が位置する側に向かって復路ブロック14が移動した場合、位置決めブロック31と共に同じ方向に移動する調整レール27bは、調整ベアリング19−3に接触する。
【0095】
図6は、
図5に示すクリップチェーン8,9の平面図であり、調整ベアリング19−3に調整レール27bが接触している状態を示す説明図である。調整レール27bが調整ベアリング19−3に接触すると、調整レール27bから調整ベアリング19−3に押圧力が作用する。調整レール27bから調整ベアリング19−3に作用する押圧力は、調整ベアリング19−3に対して、調整ベアリング19−3を横方向Xにおいてクリップ18の把持部材18pが位置する側に移動させる力として作用する。間隔調整機構19は、調整レール27bから調整ベアリング19−3に作用する押圧力により、調整ベアリング19−3が取り付けられる第2継手部材19−2が、第2枢軸部24を中心として回動する。これにより、第2継手部材19−2は、第2継手本体部19−2aの中継軸部22が位置する側の端部が、横方向Xにおいて把持部材18pが位置する側に移動する方向に、第2継手部材19−2全体が第2枢軸部24を中心として回動する。
【0096】
第2継手部材19−2の回動により中継軸部22が横方向Xに移動すると、中継軸部22を介して第2継手部材19−2に連結される第1継手部材19−1も、第1継手部材19−1全体が第1枢軸部21を中心として回動する。このため、間隔調整機構19は、第1継手部材19−1と、第2継手部材19−2の第2継手本体部19−2aとが、中継軸部22が横方向Xにおいて把持部材18pが位置する側に移動する方向に、中継軸部22を中心として折れ曲がる。
【0097】
第1継手部材19−1と第2継手部材19−2とが折れ曲がると、第1継手部材19−1を第1クリップ18−1に連結する第1枢軸部21と、第2継手部材19−2を第2クリップ18−2に連結する第2枢軸部24とが互いに接近して距離が小さくなる。これにより、第1枢軸部21と第2枢軸部24とを介して間隔調整機構19に連結される第1クリップ18−1と第2クリップ18−2との距離も小さくなり、隣り合う2つのクリップ18同士の間隔が小さくなる。
【0098】
これとは反対に、調整ネジ27eを回転させることにより、横方向Xにおいて往路ブロック13が位置する側から離れる方向に復路ブロック14が移動した場合、調整レール27bも往路ブロック13が位置する側から離れる方向に移動する。調整レール27bが、横方向Xにおいて往路ブロック13から離れる方向に移動すると、調整レール27bは、調整ベアリング19−3に対して、接触しない非接触状態、または押込量が小さい弱接触状態になる。調整レール27bが、調整ベアリング19−3に対して非接触状態になると、調整ベアリング19−3には、調整レール27bからの押圧力が作用しなくなる。
【0099】
調整ベアリング19−3に対して押圧力が作用しない場合は、間隔調整機構19の第1継手部材19−1と第2継手部材19−2は、出口側スプロケット7からクリップチェーン8,9に対して作用する張力により、第1枢軸部21と第2枢軸部24との縦方向Yの距離が大きくなる。これにより、間隔調整機構19は、第1枢軸部21と第2枢軸部24と中継軸部22とが直線上に位置し、第1継手部材19−1と、第2継手部材19−2の第2継手本体部19−2aとが、展開した状態になる(
図3参照)。従って、第1枢軸部21と第2枢軸部24とを介して間隔調整機構19に連結される第1クリップ18−1と第2クリップ18−2との距離も大きくなる。クリップチェーン8,9には、隣り合うクリップ18同士の間隔が大きくなる方向の張力が出口側スプロケット7から付与されるため、調整ベアリング19−3に対して調整レール27bからの押圧力が作用しない状態では、隣り合うクリップ18同士の間隔が最大になる。
【0100】
一方、調整ベアリング19−3に対する調整レール27bの接触状態が、弱接触状態である場合は、調整レール27bから調整ベアリング19−3に作用する押入量が小さくなる。この状態では、間隔調整機構19の第1継手部材19−1と、第2継手部材19−2の第2継手本体部19−2aとの折れ曲がり量は、調整レール27bから調整ベアリング19−3に作用する押入量が大きい状態における折れ曲がり量よりも小さくなる。これにより、隣り合うクリップ18同士の間隔も、調整レール27bから調整ベアリング19−3に作用する押入量が大きい状態における間隔と、調整レール27bが調整ベアリング19−3に接触しない状態における間隔との間の大きさになる。
【0101】
間隔調整範囲27b−Zに適用されるレール移動機構27による、隣り合うクリップ18同士の間隔の調節は、このように調整ネジ27eを回転させることにより、隣り合う2つのクリップ18同士の間隔を、大きくしたり小さくしたりする。また、往路2における、間隔調整範囲27b−Z以外の部分では、レール移動機構27による、隣り合うクリップ18同士の間隔を調節が行われないため、隣り合うクリップ18同士は、間隔が最大の状態が維持される。
【0102】
なお、調整ネジ27eを回転させることによる、隣り合うクリップ18同士の間隔の調整は、手動調整によって行ってもよく、自動調整によって行ってもよい。手動調整では、作業者が目視確認できるような目盛を調整ネジ27eに設けることが好ましい。一方、自動調整では、調整ネジ27eに連結可能なモータと、モータの回転角度等の回転状態を検出可能な検出装置と、を設けることが好ましい。
【0103】
縦方向Yにおける、原反フィルム5aが収縮する範囲では、このようにレール移動機構27によってクリップ18同士の間隔を小さくすることにより、原反フィルム5aを横方向Xのみでなく、縦方向Yにも収縮させる。つまり、原反フィルム5aが収縮する範囲では、往路2同士の間隔を小さくすることにより、原反フィルム5aの横方向Xにおける拘束を低減し、クリップ18同士の間隔を小さくすることにより、原反フィルム5aの縦方向Yにおける拘束を低減する。これにより、横方向Xにおけるクリップ18同士の間隔と、縦方向Yにおけるクリップ18同士の間隔とを、原反フィルム5aの収縮に追従させ、原反フィルム5aに一定の張力を維持しながら適切に収縮させる。本実施形態1に係る縦収縮型第2横延伸機110は、縦方向Yにおけるクリップ18同士の間隔を、最大の間隔から20%小さくする間隔までの範囲内で小さくすることができ、これにより、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させることができる。
【0104】
本実施形態1に係るセパレータフィルムの製造方法では、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる範囲では、クリップ18同士の間隔を小さくすることにより、原反フィルム5aを縦方向Yに搬送しながら、縦方向Yの収縮率を6%以上20%以下の範囲内で縦方向Yに収縮させる。つまり、原反フィルム5aの縦方向Yの収縮は、クリップ18同士の間隔を小さくすることにより行うため、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる範囲では、原反フィルム5aを縦方向Yに搬送しながら、クリップ18同士の間隔である、クリップ18の縦方向Yの収縮率を6%以上20%以下の範囲内で縦方向Yに収縮させる。詳しくは、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる範囲では、原反フィルム5aの搬送方向における当該範囲の開始位置でのクリップ18同士の間隔に対する、当該範囲の終了位置でのクリップ18同士の間隔の収縮率が、6%以上20%以下となる範囲内で、クリップ18同士の間隔を縦方向Yに収縮させる。
【0105】
原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる範囲では、縦収縮型第2横延伸機110は、このようにクリップ18同士の間隔を小さくすることによって、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる範囲を通過する前の原反フィルム5aの縦方向Yの長さに対する、この範囲を通過した後の原反フィルム5の縦方向Yの長さの収縮率が、6%以上20%以下となる範囲内で、原反フィルム5aを収縮させる。これにより、縦収縮型第2横延伸機110は、原反フィルム5aを把持開始点18p−ONで把持した後、縦方向Yに搬送して把持解除点18p−OFFで原反フィルム5aの把持を解除するまでの間に、原反フィルム5aを縦方向Yに搬送しながら、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる。縦収縮型第2横延伸機110では、このように横方向Xと縦方向Yのクリップ18同士の間隔を小さくして原反フィルム5aを横方向Xと縦方向Yとの双方に収縮させることにより、原反フィルム5aの延伸時に発生する残留応力を除去する。
【0106】
熱処理が完了することにより原反フィルム5aの延伸時に発生する残留応力を除去したフィルムである製品フィルム5bは、出口側スプロケット7側に搬送され、把持解除点18p−OFFで、両縁部がクリップ18から解放される。即ち、製品フィルム5bを把持しながら移動する各クリップ18は、把持解除点18p−OFFに到達した際に、製品フィルム5bの把持を解除する。これにより、縦収縮型第2横延伸機110によって延伸され、さらに収縮することにより残留応力が除去された製品フィルム5bは、巻取機111に送り出される。
【0107】
一方、把持解除点18p−OFFで製品フィルム5bの把持を解除したクリップチェーン8,9のクリップ18は、出口側スプロケット7の回転によって出口側スプロケット7まで到達した後、出口側スプロケット7から復路3側に送り出される。復路3に送り出されたクリップ18は、復路3を通って出口側スプロケット7側から入口側スプロケット6側に移動し、入口側スプロケット6を経由して再び往路2に移動し、把持開始点18p−ONで原反フィルム5aを把持する。クリップ18は、原反フィルム5aを把持した状態で往路2を入口側スプロケット6側から出口側スプロケット7側に向かって移動することにより、原反フィルム5aの搬送を行う。
【0108】
<実施形態1の効果>
上述したように、本実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100や、本実施形態1に係るセパレータフィルムの製造方法では、抽出乾燥装置107で液状可塑剤を抽出して多数の微細孔が開孔した原反フィルム5aを、抽出乾燥装置107の後工程側に配置される縦収縮型熱処理装置である縦収縮型第2横延伸機110で横方向Xに延伸させ、さらに、原反フィルム5aを把持するクリップ18の間隔を調整することにより、横方向Xと縦方向Yに収縮させている。これにより、横方向Xへの延伸によって微細孔の大きさの調整が行われるとともに、原反フィルム5aに発生した横方向Xの残留応力と縦方向Yの残留応力とのいずれも、原反フィルム5aの収縮によって除去することができる。即ち、原反フィルム5aを横方向Xに収縮させることにより横方向Xの残留応力を除去することができ、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させることにより縦方向Yの残留応力を除去することができる。このため、縦方向Yの残留応力に起因する、製品フィルム5bの縦方向Yの熱収縮を抑制することができる。
【0109】
従って、縦収縮型第2横延伸機110で原反フィルム5aを横方向Xへ延伸収縮した後に、高温での曝露時間を長くしたり、ロールアニールやエージングを行ったりすることなく、製品フィルム5bの縦熱収縮率を低下させることができる。これにより、ロールアニールやエージングの設備を設けたり、縦収縮型第2横延伸機110での高温での曝露時間が長時間化したりすることを抑制しつつ、リチウムイオン電池で使用されるセパレータフィルムに用いられる製品フィルム5bの縦熱収縮率を低下させることができる。この結果、製造時間の長時間化や装置構成の煩雑化を抑えつつ、セパレータフィルムの縦熱収縮率を低下させることができる。
【0110】
また、ロールアニールは、複数本の加熱ロールにフィルムを通すことによりフィルムの内部応力を除去する処理であるが、幅寸法を規制できないため、フィルムは、縦方向Yのみでなく、横方向Xにも収縮する虞がある。このため、フィルムの横方向Xにおける大きさが、所望の大きさより小さくなる虞がある。これに対し、縦収縮型第2横延伸機110で、原反フィルム5aを横方向Xに延伸させた後、縦方向Yに収縮させることにより縦方向Yの残留応力を除去する場合は、両端を挟持しフィルム張力を維持した緊張状態で熱処理できるため、縦収縮型第2横延伸機110から製品フィルム5bを送り出した後の熱収縮を抑制するとともに、収縮に伴うムラの発生を防止することができる。この結果、製品フィルム5bの製造精度を高めることができる。
【0111】
また、エージングは、液状可塑剤を抽出して乾燥させ、横方向Xに延伸させた後の製品フィルム5bを、比較的高い温度で長時間放置することにより、残留応力を軽減する処理であるため、処理に要する時間が長くなる。例えば、エージングは、横方向Xに延伸させた後の製品フィルム5bを、60℃の温度領域で1日放置する必要があるため、製品フィルム5bに対して作業を行うことのできない時間が長くなり、セパレータフィルムの製造に必要な時間が実質的に長くなる。また、巻いた製品フィルム5bが収縮するため、シワが発生することもあった。これに対し、縦収縮型第2横延伸機110で、原反フィルム5aを横方向Xに延伸させた後、縦方向Yに収縮させることにより縦方向Yの残留応力を除去する場合は、縦収縮型第2横延伸機110から送り出した製品フィルム5bを、巻取機111ですぐに巻き取ったり、製品フィルム5bに対してその他の作業を施したりすることができる。この結果、製造時間の長時間化をより確実に抑制するとともに、シワの発生を防止することができる。
【0112】
また、製品フィルム5bの縦熱収縮率が大きい場合、エージングを行わずに巻取機111で巻き取ると、製品フィルム5bの縦方向の熱収縮に起因する巻締まりによって皺や折れが発生する虞がある。このため、巻締まりを抑制するために、低張力で巻き取る必要があり、低張力での巻き取りによる巻ズレが発生したり、低張力での巻き取りを実現するためにソフトスポンジを巻き付けた特殊な巻き芯を用いたりする必要がある。これに対し、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させることによって製品フィルム5bの縦熱収縮率を低下させた場合は、エージングを行わずに巻取機111で巻き取っても巻締まりが発生することを抑制でき、巻締まりによる皺や折れの発生を抑制することができる。この結果、製品フィルム5bの製造のし易さや品質を向上させることができる。
【0113】
また、縦収縮型第2横延伸機110は、クリップ18の間隔を調整するために設けられた調整レール27bと、隣り合うクリップ18同士を接続すると共に調整レール27bに当接してクリップ18の間隔を調整する間隔調整機構19とを有するため、調整レール27bの位置を調整することにより、隣り合うクリップ18同士の間隔を容易に調整することができる。これにより、クリップ18によって把持する原反フィルム5aを容易に縦方向Yに収縮させることができ、原反フィルム5aの縦方向Yの残留応力を除去することにより、製品フィルム5bの縦方向Yの熱収縮を容易に抑制することができる。この結果、より容易に製造時間の長時間化や装置構成の煩雑化を抑えつつ、セパレータフィルムの縦熱収縮率を低下させることができる。
【0114】
また、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させる範囲では、クリップ18同士の間隔を縦方向Yに収縮させることによって、縦方向Yの収縮率が6%以上20%以下の範囲内で原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させるため、製品フィルム5bの縦方向Yの熱収縮を、より確実に抑制することができる。つまり、原反フィルム5aの縦方向Yの収縮率が6%未満である場合は、縦方向Yの収縮率が小さ過ぎるため、製品フィルム5bの縦方向Yの残留応力を効果的に除去するのが困難になり、縦方向Yの熱収縮を抑制し難くなる虞がある。また、原反フィルム5aの縦方向Yの収縮率が20%より大きい場合は、縦方向Yの収縮率が大き過ぎるため、搬送する原反フィルム5aに弛みが発生し易くなる虞がある。
【0115】
これに対し、原反フィルム5aの搬送時における縦方向Yの収縮率を6%以上20%以下の範囲内で縦方向Yに収縮させた場合は、原反フィルム5aの弛みを抑制しつつ、製品フィルム5bの縦方向Yの残留応力を効果的に除去することができる。これにより、原反フィルム5aの弛みの発生を抑制して製品フィルム5bの品質を向上させることができると共に、製品フィルム5bの縦方向Yの熱収縮を、より確実に抑制することができる。この結果、セパレータフィルムの縦熱収縮率をより確実に低下させることができる。
【0116】
[実施形態2]
実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100と略同様の構成であるが、第2横延伸機115を備え、また、縦収縮型第2横延伸機110が縦収縮型第3横延伸機120として用いられる点に特徴がある。前段の第2横延伸機115で横延伸を行っているため、縦収縮型第3横延伸機120では横延伸は行わずに縦横に収縮させながら処理を行うという相違点はあるが、他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0117】
<セパレータフィルム製造装置100の構成>
図7は、実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100の装置構成を示すブロック図である。実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100と同様に、主に、リチウムイオン電池に用いられるセパレータフィルムの製造に使用される。実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100と同様に、原料供給装置101と、押出機102と、Tダイ103と、キャスト機104と、縦延伸機105と、第1横延伸機106と、抽出乾燥装置107と、巻取機111とを有している。
【0118】
さらに、実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100は、抽出乾燥装置107で液状可塑剤を抽出した原反フィルム5aを縦方向に搬送しながら、原反フィルム5aを横方向に延伸する第2横延伸機115と、縦収縮型第3横延伸機120とを備えている。このうち、縦収縮型第3横延伸機120は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100が有する縦収縮型第2横延伸機110と同様の構成になっており、巻取機111の上流側に配置されている。また、第2横延伸機115は、抽出乾燥装置107から原反フィルム5aを受け、第2横延伸機115で横方向に延伸した原反フィルム5aを縦収縮型第3横延伸機120に搬送することができる位置に配置されている。即ち、第2横延伸機115は、原反フィルム5aの搬送経路における抽出乾燥装置107と縦収縮型第3横延伸機120との間に配置されている。
【0119】
このように配置される第2横延伸機115は、第1横延伸機106と同様に構成されており、抽出乾燥装置107から搬送された原反フィルム5aの横方向における両端を把持し、原反フィルム5aを縦方向に搬送しながら横方向に延伸する。これにより、第2横延伸機115は、原反フィルム5aに開孔している微細孔の大きさを調整する。第2横延伸機115で横方向に延伸した原反フィルム5aは、第2横延伸機115から縦収縮型第3横延伸機120に搬送する。
【0120】
実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100が有する縦収縮型第3横延伸機120は、実施形態1に係るセパレータフィルム製造装置100が有する縦収縮型第2横延伸機110と同様の構成になっている。このため、縦収縮型第3横延伸機120は、第2横延伸機115によって横方向に延伸した原反フィルム5aを、クリップ18の横方向Xにおける間隔と縦方向Yにおける間隔を小さくすることにより、原反フィルム5aを横方向Xと縦方向Yとに収縮させることが可能になっている。つまり、縦収縮型第3横延伸機120は、実施形態1の縦収縮型第2横延伸機110と同様に、原反フィルム5aを縦方向Yに搬送しながら横方向Xに延伸させると共に、搬送する原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させることができる縦収縮型熱処理装置として設けられている。
【0121】
縦収縮型第3横延伸機120で原反フィルム5aを横方向Xと縦方向Yに収縮させたフィルムである製品フィルム5bは、縦収縮型第3横延伸機120から送り出して巻取機111に搬送し、巻取機111でロール状に巻き取る。
【0122】
<実施形態2の効果>
実施形態2に係るセパレータフィルム製造装置100においても、縦収縮型熱処理装置である縦収縮型第3横延伸機120は、第2横延伸機115によって横方向Xに延伸することによって残留応力が発生した原反フィルム5aの縦方向Yの残留応力を、原反フィルム5aの縦方向Yの収縮によって除去することができる。これにより、製品フィルム5bの縦方向Yの熱収縮を抑制することができ、第2横延伸機115で原反フィルム5aを横方向Xへ延伸にした後に、高温での原反フィルム5aの曝露時間を長くしたり、ロールアニールやエージングを行ったりすることなく、製品フィルム5bの縦熱収縮率を低下させることができる。従って、第2横延伸機115を備える既存のセパレータフィルム製造装置100においても、縦収縮型第3横延伸機120を追加するのみで、製品フィルム5bの縦熱収縮率を低下させることができる。この結果、既存のセパレータフィルム製造装置100においても、容易に製造時間の長時間化や装置構成の煩雑化を抑えつつ、セパレータフィルムの縦熱収縮率を低下させることができる。
【0123】
[変形例]
なお、上述した実施形態1、2に係るセパレータフィルム製造装置100では、キャスト機104で冷却固化されたシートを、キャスト機104と抽出乾燥装置107との間で延伸する工程では、縦延伸機105と第1横延伸機106とを用いて行っているが、シートを延伸してフィルム状にする工程は、1つの装置で行ってもよい。即ち、実施形態1、2に係るセパレータフィルム製造装置100では、キャスト機104と抽出乾燥装置107との間でシートを延伸する工程では、縦方向の延伸と横方向の延伸とを逐次行う、逐次2軸延伸を行っているが、縦方向の延伸と横方向の延伸とを同時に行う、同時2軸延伸により行ってもよい。この場合、キャスト機104と抽出乾燥装置107との間には、縦延伸機105と第1横延伸機106との代わりに、シートの縦方向の延伸と横方向の延伸とを同時に行うことのできる、同時2軸延伸機が配置される。原反フィルム5aから液状可塑剤を抽出して原反フィルム5aを乾燥させた後に、原反フィルム5aを縦方向Yに収縮させることができれば、その前の工程でシートを延伸する手法は、縦方向の延伸と横方向の延伸とを逐次行っても同時に行っても、どちらでもよい。
【0124】
また、上述した実施形態に係る実施形態1、2に係るセパレータフィルム製造装置100では、縦収縮型第2横延伸機110、縦収縮型第3横延伸機120の加熱保温室としてT1〜T10が設定されているが、加熱保温室は、原反フィルム5aの仕様等に応じて、適宜設定するのが好ましい。
【0125】
また、上述した実施形態に係る実施形態1、2に係るセパレータフィルム製造装置100では、縦収縮型第2横延伸機110や縦収縮型第3横延伸機120は、復路レールユニット11がオーブン30内に設置される、いわゆるインサイドリターン型で構成されているが、縦収縮型第2横延伸機110、縦収縮型第3横延伸機120は、復路レールユニット11がオーブン30の外側に設置される、いわゆるアウトサイドリターン型で構成されていてもよい。
【0126】
<セパレータフィルムの製造方法の試験>
発明者らは、セパレータフィルムの縦熱収縮率を低下させることのできる、原反フィルム5aの搬送時における収縮率についての試験を行った。次に、原反フィルム5aの搬送時の縦方向収縮率と、搬送後の製品フィルム5bの熱収縮率との関連性についての評価試験について説明する。なお、ここでいう縦方向収縮率は、縦収縮型第2横延伸機110や縦収縮型第3横延伸機120での搬送直前の原反フィルム5a、或いは搬送開始時の原反フィルム5aに対する縦方向Yの収縮率になっており、実質的には、原反フィルム5aを把持するクリップ18同士の間隔の収縮率になっている。
【0127】
図8は、原反フィルム5aの搬送時における収縮率と、搬送後の製品フィルム5bの熱収縮率との関係を示す説明図である。
図9は、
図8に示す試験結果のグラフである。原反フィルム5aの搬送時の縦方向収縮率と搬送後の製品フィルム5bの熱収縮率との関係についての試験は、オーブン30がT1〜T7の7つの加熱保温室を有する縦収縮型第2横延伸機110を用いて行った。加熱保温室は、T1が最も入口側スプロケット6側に位置し、T7が最も出口側スプロケット7に位置する向きで、T1〜T7まで順に並んで配置されている。この試験では、各加熱保温室の温度を126℃にして50m/minの搬送速度で原反フィルム5aを搬送し、搬送後の製品フィルム5bを120℃の雰囲気中で1時間放置した後の収縮率を熱収縮率として測定した。この場合における熱収縮率は、搬送直後の製品フィルム5bに対する収縮率になっており、縦方向Yの熱収縮率と横方向Xの熱収縮率を測定した。
【0128】
原反フィルム5aの搬送時の縦方向収縮率と搬送後の製品フィルム5bの熱収縮率との関係についての試験では、
図8に示すように、試験ごとに原反フィルム5aの縦方向収縮率を異ならせ、5種類の縦方向収縮率で試験を行った。即ち、試験No.1では、加熱保温室T1〜T7の全範囲で、縦方向収縮率を0%としている。また、試験No.2では、加熱保温室T1〜T3における縦方向収縮率を0%とし、加熱保温室T4における縦方向収縮率を2.5%とし、加熱保温室T5〜T7における縦方向収縮率を5%としている。また、試験No.3では、加熱保温室T1〜T3における縦方向収縮率を0%とし、加熱保温室T4における縦方向収縮率を3.8%とし、加熱保温室T5〜T7における縦方向収縮率を7.5%としている。また、試験No.4では、加熱保温室T1〜T3における縦方向収縮率を0%とし、加熱保温室T4における縦方向収縮率を5%とし、加熱保温室T5〜T7における縦方向収縮率を10%としている。また、試験No.5では、加熱保温室T1〜T3における縦方向収縮率を0%とし、加熱保温室T4における縦方向収縮率を6%とし、加熱保温室T5〜T7における縦方向収縮率を12%としている。
【0129】
このようにして、原反フィルム5aの搬送時における縦方向収縮率と搬送後の製品フィルム5bの熱収縮率との関係についての試験を行った結果、
図8、
図9に示すように、原反フィルム5aの最終的な縦方向収縮率が5%を超える場合には、製品フィルム5bの搬送後の縦方向Yと横方向Xとの熱収縮率が効果的に小さくなることが確認された。つまり、この試験では、原反フィルム5aを縦方向Yに搬送しながら6%以上20%以下の範囲内で縦方向Yに収縮させることにより、製品フィルム5bの熱収縮率を適切に低下させることができることが確認された。