【実施例】
【0502】
なお、本実施例及び本比較例の実施に当たり、アセトニトリルは、キシダ化学(株)製のリチウムバッテリーグレードを使用した。
【0503】
まず、第1実施形態から第10実施形態の実施例について以下説明する。
【0504】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が12.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0505】
(1−2) 負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が5.3mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0506】
(1−3)コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からポリエチレン微多孔膜を直径19mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を100μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0507】
[コイン型非水系二次電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、実施例および比較例に記載されているそれぞれの手順に従って初回充電処理
を行った。次に(2−1)、(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0508】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0509】
(2−1)コイン型非水系二次電池の85℃満充電保存試験
初回充放電処理(初回放電のエージング処理については各実施例や比較例の欄に記載)を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。次に、この非水系二次電池を85℃の恒温槽に4時間保存した。その後、電池の周囲温度を25℃に戻した。
【0510】
(2−2)コイン型非水系二次電池の出力試験
上記(2−1)に記載の方法で85℃満充電保存試験を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、1Cに相当する3mAの電流値で3.0Vまで放電した。次に、定電流放電時の電流値を5Cに相当する15mAに変更した以外は、上記と同様の充放電を行い、下記の容量維持率を算出した。
容量維持率=(5C放電時の容量/1C放電時の容量)×100[%]
【0511】
[実施例1]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:35:16:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(環状酸無水物)を電解液として最終的に0.15質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.3molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加し、実施例1の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して2.8Vまで充電した後、2.8Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を55℃に設定し、6時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)、(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0512】
[実施例2]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:35:16:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(環状酸無水物)を電解液として最終的に0.3質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例2の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して2.8Vまで充電した後、2.8Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を45℃に設定し、72時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0513】
[実施例3]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が35:40:21:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水マレイン酸(環状酸無水物)を電解液として最終的に0.15質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり1.2molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例3の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して3.0Vまで充電した後、3.0Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を55℃に設定し、6時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0514】
[実施例4]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が57:14:22:7となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水フタル酸(環状酸無水物)を電解液として最終的に0.5質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり0.6molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.6molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を添加し、実施例4の電解液を得た。 得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して3.0Vまで充電した後、3.0Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を60℃に設定し、6時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0515】
[比較例1]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:42:11となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加して、比較例1の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。比較例1では、初回充電のエージング処理を行っていない。
【0516】
[比較例2]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:49:4となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.0molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加して、比較例2の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して2.8Vまで充電した後、2.8Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を25℃のままとし、72時間保存した後、電池の周囲温度をそのまま25℃に設定し、3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0517】
[比較例3]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:49:4となるよう混合し混合溶媒を得た。その後、混合溶媒1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.0molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を添加し、比較例3の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を85℃とし、24時間保存した後、電池の周囲温度をそのまま25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0518】
以下の表1に実施例1から実施例4、及び比較例1から比較例3の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0519】
【表1】
【0520】
また、以下の表2では、実施例1から実施例4、及び比較例1から比較例3のエージング条件を示す。
【0521】
【表2】
【0522】
また、以下の表3には、実施例1から実施例4、及び比較例1から比較例3における、85℃4時間保存後の容量維持率を示す。容量維持率は、5C放電容量を1C放電容量で除して算出してなる。
【0523】
【表3】
【0524】
上記の表3に示すように、実施例1から実施例4では、いずれも容量維持率が70%以上であることがわかった。また、実施例1から実施例4では、74%以上の容量維持率を得ることができる。
【0525】
以上により、実施例1から実施例4の非水系電解液のように、アセトニトリルと、リチウム塩と、環状酸無水物とを含有することが好ましいことがわかった。また、表2に示すように、実施例1から実施例4では、いずれもエージング電圧を3.0V以下に設定した熱処理を行った。一方、比較例1では、エージング処理を行っておらず、比較例2では熱処理を行っていない。また、比較例3では、エージング電圧が3Vを上回った。
【0526】
また、実施例1から実施例4及び比較例に基づいて、環状酸無水物の含有量が、非水系電解液に対し、0.01質量%以上1質量%以下であるように調節することが好ましいとした。また、実施例1から実施例4に基づいて、環状酸無水物の含有量を、非水系電解液に対し、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましいとした。
【0527】
また、実施例1から実施例4に基づいて、熱処理温度(エージング温度)を、35℃以上60℃以下に調節することが好ましいとした。
【0528】
また、実施例1から実施例4より、リチウム塩が、PF
6アニオンを含有することが好ましいとした。
【0529】
ここで、PF
6アニオンは、LiPF
6が解離したものである。
【0530】
また、実施例に基づいて、環状酸無水物が、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸のうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。
【0531】
また、実施例に基づいて、環状酸無水物の含有量が、非水系電解液に対し、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましいとした。
【0532】
また、本実施例に基づいて、更に、鎖状カーボネートを含有することが好ましいとした。
【0533】
また、本実施例に基づいて、鎖状カーボネートが、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましいとした。
【0534】
また、本実施例に基づいて、アセトニトリルに対する前記鎖状カーボネートの混合モル比が、0.15以上2以下であることが好ましいとした。
【0535】
また、本実施例に基づいて、アセトニトリルに対する前記鎖状カーボネートの混合モル比が、0.25以上2以下であることが好ましいとした。
【0536】
また、本実施例2から実施例4に基づいて、アセトニトリルに対する前記鎖状カーボネートの混合モル比が、0.4以上2以下であることが好ましいとした。
【0537】
第11実施形態から第12実施形態の実施例について以下説明する。
【0538】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、86:8:6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、正極集電体となるアルミニウム箔両面に、片面あたりの目付量が11.5mg/cm
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで合材層の密度が2.8mg/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0539】
次に、この正極を、塗工部の面積が150mm×150mmとなるように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0540】
(1−2) 負極の作製
負極活物質であるグラファイトと、導電助剤であるアセチレンブラックと、バインダーであるPVDFとを86:7:7の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、銅箔の両面に、片面あたりの目付量が6.9mg/cm
2になるように調節しながら塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで合材層の密度が1.3mg/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0541】
次に、この負極を、塗工部の面積が152mm×152mmとなるように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0542】
(1−3)積層ラミネート電池の組み立て
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製樹脂フィルムを介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体をアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5h真空乾燥を行った。続いて、電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、積層ラミネート型非水系二次電池(パウチ型セル電池。以下、単に「積層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。
【0543】
この積層ラミネート電池は、設計容量値が約10Ah、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0544】
[積層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた積層ラミネート電池について、以下の手順に従って初回充放電処理を行った。次に容量を測定し、続いて2C過充電試験を実施して、60℃になるまでの時間(分)を測定した。
【0545】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を、定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。下記においては、4.2Vの満充電状態から定電流で2.7Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0546】
(2−1) 積層ラミネート電池の初回充放電処理
積層ラミネート電池の周囲温度を25℃に設定し、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した。その後、露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて、電池の封止部を開口しガス抜きを行った。ガス抜き後、同じ環境下において真空シールを行った。
【0547】
(2−2) 容量測定
上記初回充放電処理後の積層ラミネート電池について、25℃において、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行い、その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した。これらの操作を計3回行い、その後0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った充電後の積層ラミネート電池を、25℃で24時間保存した。
【0548】
24時間保存後0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した後、25℃において、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行い、その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電し、容量を測定した。
【0549】
(2−3) 2C過充電試験
上記容量測定後の積層ラミネート電池について、25℃において0.2Cの電流値で4.2Vになるまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。この充電後の積層ラミネート電池を、電極端子には電流負荷線と電圧計測線を取り付け、電池表面に熱電対を取り付けた状態で約350mm角の金属製試験容器に設置した。容器内はアルゴンガス雰囲気に置換して試験を行った。
【0550】
試験は、充電後の積層ラミネート電池を2Cの電流値で定電流充電を行い、徐々に温度が上昇していく過程で60℃に到達するまでの時間(分)を測定した。
【0551】
[実施例5]
下記の表4に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、エチレンカーボネート(EC)と、ビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:38:11:4となるように加えて混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.1molのLiN(SO
2F)
2(LiFSI)を添加した。また、水を50ppm及び、環状酸無水物として無水コハク酸(SAH)を0.2質量%添加して、実施例5の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0552】
[実施例6]
下記の表4に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、エチレンカーボネート(EC)と、ビニレンカーボネート(VC)の体積比が39:35:21:5となるように加えて混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加した。また、水を100ppm及び、環状酸無水物として無水マレイン酸(MAH)を0.15質量%添加して、実施例6の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0553】
[実施例7]
下記の表4に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチレンカーボネート(EC)と、ビニレンカーボネート(VC)の体積比が65:8:22:5となるように加えて混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.6molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.05molのリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C
2O
4)
2)(LiBOB)と0.6molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)(LiFSI)を添加した。また、水を75ppm及び、環状酸無水物として無水フタル酸(PAH)を、0.5質量%添加して、実施例7の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0554】
[比較例4]
下記の表4に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンサルファイト(ES)の体積比が47:38:11:4となるように加えて混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.05molのリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C
2O
4)
2)(LiBOB)を添加した。また、環状酸無水物として無水コハク酸(SAH)を、0.05質量%添加して、比較例4の電解液を得た。なお、比較例4では、水を加えていない。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0555】
[比較例5]
下記の表4に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:42:11となるように加えて混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加すると共に、水を200ppm添加して、比較例5の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0556】
以下に実施例5から実施例7、及び比較例4から比較例5の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0557】
【表4】
【0558】
また、以下の表5に、実施例5から実施例7、及び比較例4から比較例5の非水系電解液を用いた電池の、2C過充電試験による60℃への到達時間を示す。
【0559】
【表5】
【0560】
上記表5に示すように、実施例5から実施例7では、いずれも60℃到達時間が20分以上であることがわかった。また、実施例5及び実施例7では、60℃到達時間を22分以上とすることができるとわかった。このように、実施例は、比較例よりも60℃到達時間が長い。これは、実施例の方が比較例に比べて過充電時の電解液分解反応を抑制できているためであり、ひいては60℃以降で急激に起こるパウチ型セル電池における過充電時の膨れを抑制することが可能になる。
【0561】
以上により、実施例5から実施例7の非水系電解液のように、アセトニトリルと、リチウム塩と、含有し、更に、1ppm以上200ppm以下の水と、環状酸無水物を含むことが好ましいとわかった。一方、比較例4及び比較例5では、水及び、環状酸無水物のどちらか一方を含んでいない。
【0562】
また、環状酸無水物の含有量は、実施例5から実施例7を含み、比較例5を含まないように、非水系電解液に対し、0.01質量%以上1質量%以下が好ましいとした。
【0563】
また、実施例5から実施例7に示すように、非水系電解液は、PF
6アニオンを含有することが好ましいとした。
【0564】
また、実施例5、及び実施例7に示すように、アセトニトリルに対するPF
6アニオンの混合モル比は、0.01以上0.08未満であることが好ましいとした。
【0565】
また、実施例及び比較例の実験結果に基づいて、PF
6アニオンとアセトニトリルと環状酸無水物と水分を含む電解液であり、水分が1〜200ppm存在することにより、強固な負極SEIを形成できることがわかった。
【0566】
また、実施例6、及び実施例7の実験結果により、上記電解液と、0.4V vs. Li/Li
+より卑な電位でリチウムイオンを挿入・脱離する負極からなる非水系二次電池であることが好ましいとわかった。負極電位が0.4V vs. Li/Li
+より卑な電位であることにより、1.0〜0.4Vで分解する環状酸無水物の反応を促進することができる。
【0567】
また実施例に基づいて、環状酸無水物成分として、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸のうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。
【0568】
第13実施形態から第14実施形態の実施例について以下説明する。
[電解液の調製]
不活性雰囲気下、1Lのアセトニトリルに対して、各種イミド塩を、表6に示す含有量(モル量)で溶解させた。次に、得られた混合液のアセトニトリル、及び、その他の溶媒を、表6に示す組成で混合した。さらに得られた混合液に、表6に示す含有量でヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、水(H
2O)、及び各種環状酸無水物を添加、溶解させ、実施例8から実施例11及び比較例6から比較例8の電解液を得た。なお、表6おいて「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【0569】
LiPF
6の含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。水の含有量は、非水系電解液を構成する全ての成分の合計重量に対する質量ppmにて算出される。環状酸無水物の含有量は、非水系電解液を構成する全ての成分の和を100質量%としたときの、質量比率で示される。
【0570】
得られた電解液について、以下のようにして、アセトニトリルに対するPF
6アニオンの混合モル比(PF
6/AcN(モル比))を、次のように求めた。
PF
6/AcN(モル比)=LiPF
6のモル量/AcNのモル量
【0571】
【表6】
【0572】
[評価]
実施例8から実施例11、比較例6から比較例8の電解液について、以下に記載の方法で電池作製した後、以下に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。結果を表7、表8に示す。
【0573】
(1)電池作製
(1−1)正極の作製
(A)正極活物質として、数平均粒子径11μmのリチウムと、ニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として、(B)数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び(C)数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、(D)バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)と、を、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。
【0574】
得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入してさらに混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が24.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.90g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0575】
(1−2)負極の作製
(a)負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び(b)数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、(c)バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、(d)ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。
【0576】
得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入してさらに混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が10.6mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.50g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0577】
(1−3)コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からガラス繊維濾紙(アドバンテック社製ガラス繊維濾紙 GA−100)を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を150μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0578】
(2)コイン型非水系二次電池の評価
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(2−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0579】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0580】
(2−1)コイン型非水系二次電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する1.8mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。この結果を、表7に示す。
【0581】
(2−2)コイン型非水系二次電池の出力試験
上記(2−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、1Cに相当する6mAの電流値で3.0Vまで放電した。次に、定電流放電時の電流値を5Cに相当する30mAに変更した以外は同様の充放電を行った。出力試験後、5Cに相当する30mAの電流値の放電曲線について確認を行った。放電曲線は、横軸に時間、
縦軸に電池電圧をプロットした。
【0582】
放電曲線の縦軸にプロットされた電池電圧の推移に異常が見られなかった場合を「○(Al箔腐食無)」、電池電圧の推移に上下に乱れるような異常が見られた場合を「×(Al箔腐食有)」と判定した。この結果を、表7に示す。
【0583】
【表7】
【0584】
(2−3)60℃保存試験
上述のようにして得られた評価用電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、60℃で100時間保存し、電解液中へのアルミニウム(Al)溶出量(単位:ppm)を測定した。
【0585】
アルミニウム溶出量は、ICP/MS測定によって算出した。この結果を、表8に示す。
【0586】
【表8】
【0587】
表7に示すように、比較の出力試験は、「×(Al箔腐食有)」の評価結果となった。
【0588】
これに対して、実施例では、いずれも、出力試験では、「○(Al箔腐食なし)」の評価結果となった。
【0589】
また、表8に示すように、比較例では、いずれも60℃保存後のアルミニウム溶出量が、10ppmをはるかに超えた。
【0590】
これに対して、実施例では、いずれも、60℃保存後のアルミニウム溶出量が、10ppm以下となった。
【0591】
これらの結果から、イミド塩を添加していても、アセトニトリルと、リチウム塩と、水と、PF
6アニオンと、を含有していることにより、アルミニウム箔の腐食を防止し、アルミニウム溶出を10ppm以下に抑制できることがわかった。すなわち、アセトニトリルのα位置から水素が抜けることで、PF
6からのHF発生を促進し、イミド塩を用いた場合でもアルミニウム不働態の形成を促進することができる。
【0592】
また実施例及び比較例の実験結果に基づいて、アセトニトリルのα位置から水素が抜けることで、PF
6からのHF発生を促進し、適量の水分がアルミニウム不働態の形成に寄与することがわかった。
【0593】
また、実施例の実験結果に基づいて、充放電してもアルミニウムが溶出しない構成とすることが可能である。
【0594】
次に、第15実施形態から第16実施形態の実施例について以下説明する。
[電解液の調製]
各種溶媒及び電解質を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表9に示した。なお、表9において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「PC」は、プロピレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸をそれぞれ示す。
【0595】
電解質を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0596】
【表9】
【0597】
[電解液の加熱NMR測定]
アルゴンボックス内で、実施例及び比較例の電解液をNMRチューブ内管(直径3mm)に採取し、蓋をした後、パラフィルムを用いて封をした。アルゴンボックスからNMRチューブ内管を取り出し、C
6H
2F
4を添加したDMSO−d6溶液の入った外管に挿し込み、二重管法によるNMR測定を行った。NMR測定装置は、JEOL RESONANCE社製ECS400を用いた。測定条件は、パルス幅45℃、積算回数256回、昇温時の待ち時間は25℃が5秒、60℃が7秒、85℃が10秒で行った。試験結果を表9に示す。
【0598】
表9に示すように、比較例ではいずれもHFの発生量が、25℃と比較して、60℃及び85℃において著しく増加した。
【0599】
これに対して、実施例では、HFの発生量が、25℃と比較して、60℃及び85℃においてそれほど変化せず、比較例に比べて少ないことがわかった。
【0600】
60℃でフッ化水素の発生量の、25℃でのフッ化水素の発生量に対する増加率(以下、HF発生量増加率と記載する)を求めたところ、実施例12が150%、実施例13が140%であった。これに対し、比較例9が771%、比較例10が979%、比較例11が728%であった。
【0601】
これらの結果から、飽和第二級炭素を有するプロピレンカーボネートを含まない実施例12から実施例13の電解液において、50℃〜60℃でのHFの発生量を減らせることが確認された。
【0602】
また、実施例12の電解液は、実施例13の電解液に比べ、60℃及び85℃でのHFの発生量を低減できた。この結果から、飽和第二級炭素を有さない環状カーボネートが、アセトニトリル以上の体積比率で含有されている場合、50℃〜60℃でのHFの発生抑制効果が高いことが確認された。
【0603】
また、実施例及び比較例の実験結果に基づいて、LiPF
6系アセトニトリル電解液が、飽和第三級炭素を持たない非水系溶媒で希釈されていることが好ましい。飽和第二級炭素を持つカーボネート(例えば、プロピレンカーボネート)はプロトンが抜けやすいため、50〜60℃でのHF発生を促進する傾向にあるが、飽和第三級炭素を持たない非水系溶媒で希釈するとHF発生を効果的に抑制することができる。
【0604】
次に、第17実施形態の実施例について以下に説明する。
【0605】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表10に示した。なお、表10において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸をそれぞれ示す。
【0606】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0607】
【表10】
【0608】
〔電池作製〕
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:3.5:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約95.0g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.74g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0609】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×50mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0610】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、バインダーであるカルボキシメチルセルロースと、同じくバインダーであるスチレンブタジエンラテックスとを、100:1.1:1.5の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約61.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.20g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0611】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が32mm×52mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0612】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が23mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0613】
[単層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(1−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(1−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0614】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で2.5Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0615】
(1−1)単層ラミネート電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する2.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する6.9mAの定電流で2.5Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【0616】
(1−2)単層ラミネート電池の-10℃充放電サイクル試験
上記(1−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、サイクル試験を実施した。なお、サイクル試験は電池の周囲温度を−10℃に設定した3時間後に開始した。まず、0.2Cに相当する4.6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、4.6mAの定電流で2.5Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、20サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの20サイクル目の放電容量を容量維持率とした。
【0617】
[交流インピーダンス測定]
上記(1−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、交流インピーダンス測定を実施した。交流インピーダンス測定は、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1400(商品名)とソーラトロン社製ポテンショ−ガルバノスタット1470E(商品名)を用いた。1000kHz〜0.01Hzに周波数を変えつつ交流信号を付与し、電圧・電流の応答信号からインピーダンスを測定し、複素インピーダンス平面プロット(cole−coleプロット)の横軸と交差した値をバルク抵抗、高周波数側の円弧の横幅を界面抵抗として求めた。また、抵抗値はいずれも実数部(横軸)の値を使用した。印可する交流電圧の振幅は±5mVとした。また、交流インピーダンスを測定する際の電池の周囲温度は25℃で実施し、測定は各温度設定の1時間30分後に開始した。また、これらの結果から下記の値を算出した。
【0618】
実験では、25℃の交流インピーダンス測定を行った。その実験結果が以下の表11に示されている。また、以下の表11では、実施例14から実施例16及び比較例12から比較例14の、−10℃での充放電サイクル試験(20サイクル後)における容量維持率を示す。
【0619】
【表11】
【0620】
上記表11に示すように、実施例14から実施例16では、いずれも容量維持率が90%以上であることがわかった。一方、比較例12から比較例14ではいずれも容量維持率が80%以下となっていることが分かった。
【0621】
以上により、実施例14から実施例16の非水系電解液のように、ビニレンカーボネート(VC)は0.5体積%以上4体積%以下の量を含むことが好ましいとわかった。
【0622】
次に、第18実施形態の実施例について以下説明する。
【0623】
[電池作製]
(1−1)正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が12.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0624】
(1−2)負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が5.3mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0625】
(1−3)コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からガラス繊維濾紙(アドバンテック社製ガラス繊維濾紙 GA−100)を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を150μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0626】
[コイン型非水系二次電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(2−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0627】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0628】
(2−1)コイン型非水系二次電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【0629】
(2−2)コイン型非水系二次電池の50℃充放電サイクル試験
上記(2−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、電池の周囲温度を50℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、3mAの定電流で3Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量を容量維持率とした。
【0630】
[実施例17]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が60:25:11:4となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.35molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.8molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させると共に、下記の式(4)に示す有機塩素化合物を5ppmと、環状酸無水物として無水コハク酸を0.2質量%加え混合し、実施例17の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、塩化物および環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0631】
【化9】
【0632】
[実施例18]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が38:18:18:20:6となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり1.2molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.3molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させると共に、下記の式(5)に示す有機塩素化合物を0.5ppmと、環状酸無水物として無水マレイン酸を0.15質量%加え混合し、実施例18の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、塩化物および環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0633】
【化10】
【0634】
[実施例19]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が38:18:18:20:6となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり1.2molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を溶解させると共に、下記の式(5)に示す有機塩素化合物を25ppmと、環状酸無水物として無水コハク酸を0.15質量%加え混合し、実施例19の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、塩化物および環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0635】
【化11】
【0636】
[実施例20]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が30:11:52:7となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.6molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.6molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を溶解させると共に、下記の式(6)に示す有機塩素化合物を300ppmと、環状酸無水物として無水マレイン酸を0.5質量%加え混合し、実施例20の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、塩化物および環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0637】
【化12】
【0638】
[実施例21]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が65:4:20:11となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.5molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.0molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させると共に、下記の式(7)に示す有機塩素化合物を4ppmと、環状酸無水物として無水フタル酸を0.8質量%加え混合し、実施例21の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、塩化物および環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0639】
【化13】
【0640】
[比較例15]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:49:4となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.2molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.0molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させると共に、環状酸無水物として無水コハク酸を0.05質量%加え混合し、比較例15の電解液を得た。なお、比較例15では、有機塩素化合物を添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩、環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0641】
[比較例16]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が60:25:11:4となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.35molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.8molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させると共に、下記の式(5)に示す有機塩素化合物を5ppm加え混合し、比較例16の電解液を得た。なお、比較例16では、環状酸無水物を添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩、塩化物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で測定を行った。
【0642】
【化14】
【0643】
以下に実施例17から実施例21、及び比較例15から比較例16の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0644】
【表12】
【0645】
また、以下の表13では、実施例17から実施例21、及び比較例15から比較例16の、50℃での充放電サイクル試験における容量維持率を示す。
【0646】
【表13】
【0647】
上記表13に示すように、比較例15及び比較例16では、いずれも容量維持率が60%未満であることがわかった。一方、実施例17から実施例21では、70%以上の容量維持率を得ることが可能であり、更に、実施例17及び実施例18では、80%以上の容量維持率が得られることがわかった。
【0648】
以上により、実施例17から実施例21の非水系電解液のように、アセトニトリルと、リチウム塩と、含有し、更に、有機塩素化合物と、環状酸無水物を含むことが好ましいとわかった。一方、比較例15及び比較例16では、有機塩素化合物及び、環状酸無水物のどちらか一方を含んでいない。有機塩素化合物は、VC原料由来の塩化物であることが好ましい。
【0649】
また、本実施例17から実施例21では、いずれも有機塩素化合物が、環状カーボネートの塩素付加体であり、また、環状カーボネートの塩素付加体は、下記の式(4)〜(7)で表される化合物からなる群より選ばれることが好ましいとわかった。
【0650】
【化15】
【0651】
【化16】
【0652】
【化17】
【0653】
【化18】
【0654】
また、有機塩素化合物の含有量は、比較例15を含まないように、非水系電解液に対し0.1ppm以上500ppm以下とした。また、環状酸無水物の含有量は、比較例16を含まないように、非水系電解液に対し0.01質量%以上1質量%以下とした。
【0655】
また、実施例17から実施例18に基づいて、有機塩素化合物の含有量が、非水系電解液に対し0.5ppm以上10ppm以下、環状酸無水物の含有量が、非水系電解液に対し0.1質量%以上0.5質量%以下である範囲を好ましい範囲に設定した。これにより、80%以上の容量維持率が得られることがわかった。
【0656】
また実施例に基づいて、環状酸無水物成分として、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタルのうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。
【0657】
次に、第19実施形態の実施例について以下説明する。
[電解液の調整]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調整した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表14に示した。なお、表14において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「DMC」は、ジメチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「VC」は、ビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiBOB」はリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C
2O
4)
2)、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【0658】
リチウム塩を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調整した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0659】
【表14】
【0660】
[交流インピーダンス測定]
上記の調製した電解液を東陽テクニカ製の密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線した。
【0661】
更に、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0662】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。恒温槽の温度は−30℃に設定し、測定は温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0663】
[イオン伝導度]
得られたデータは、インピーダンスの実数成分(Z´)と虚数成分(Z´´)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z´´=0におけるZ´値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは、電極間距離(0.35cm)、Sは、電極面積(4.522cm
2)である。
【0664】
表14に示した組成で電解液を25℃で調製し、上記の方法でセルを組み立てて交流インピーダンス測定を実施した。得られたデータからナイキスト線図を作成してZ´値を読み取り、上記の式から、実施例22から実施例25、及び比較例17から比較例20のイオン伝導度を計算した。結果を以下の表15に示す。
【0665】
【表15】
【0666】
表15に示すように、比較例ではいずれも−30℃でのイオン伝導度が3.0mS/cmを大きく下回ることがわかった。また、比較例17では恒温槽に入れる前の段階で白色沈殿物が析出してしまったため、イオン伝導度測定を中止せざるを得なかった。
【0667】
これに対して、実施例では、いずれも、−30℃でのイオン伝導度が3.0mS/cm以上であることがわかった。
【0668】
実施例22から実施例25では、非水系溶媒1Lに対して、LiPF
6含有量が、1.5mol以下であった。また、LiPF
6/AcNの混合モル比が、0.08以上0.4以下であることがわかった。
【0669】
また、比較例17から比較例20の結果を含まない範囲として、鎖状カーボネート/AcNの混合モル比が、0.25以上4.0以下の範囲を規定した。
【0670】
また、実施例22から実施例25では、鎖状カーボネート/AcNの混合モル比が、0.3以上2.0以下であることがわかった。
【0671】
本実施例の実験結果に基づいて、LiPF
6と非水系溶媒を含有し、LiPF
6含有量が非水系溶媒1lに対して1.5mol以下であり、非水系溶媒がアセトニトリルと鎖状カーボネートを含有し、アセトニトリルに対するLiPF
6の混合モル比が、0.08以上0.4以下であり、かつ、アセトニトリルに対する鎖状カーボネートの混合モル比が0.3以上2以下であることが好ましい。
【0672】
第20実施形態の実施例について以下説明する。
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表16に示した。なお、表16において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「(LiN(SO
2F)
2)」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【0673】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0674】
【表16】
【0675】
(イオン伝導度測定)
電解液を東陽テクニカ製の密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線した。更に、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0676】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。恒温槽の温度は−10℃に設定し、測定は温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0677】
得られたデータは、インピーダンスの実数成分(Z´)と虚数成分(Z´´)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z´´=0におけるZ´値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは、電極間距離(0.35cm)、Sは、電極面積(4.522cm
2)である。
【0678】
その実験結果が以下の表17に示されている。
【0679】
【表17】
【0680】
実施例では、−10℃でのイオン伝導度が10mS/cmであることが分かった。また、比較例ではいずれも−10℃でのイオン伝導度が10mS/cmを大きく下回ることがわかった。
次に、第21実施形態の実施例について以下説明する。
【0681】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表18に示した。なお、表18において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸をそれぞれ示す。
【0682】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0683】
【表18】
【0684】
〔電池作製〕
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:3.5:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約95.0g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.74g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0685】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×50mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0686】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、バインダーであるカルボキシメチルセルロースと、同じくバインダーであるスチレンブタジエンラテックスとを、100:1.1:1.5の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約61.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.20g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0687】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が32mm×52mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0688】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が23mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0689】
[単層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(1−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(1−2)および(1−3)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0690】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で2.5Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0691】
(1−1)単層ラミネート電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する2.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する6.9mAの定電流で2.5Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【0692】
(1−2)単層ラミネート電池の交流インピーダンス測定
上記(1−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、交流インピーダンス測定を実施した。交流インピーダンス測定は、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1400(商品名)とソーラトロン社製ポテンショ−ガルバノスタット1470E(商品名)を用いた。1000kHz〜0.01Hzに周波数を変えつつ交流信号を付与し、電圧・電流の応答信号からインピーダンスを測定し、複素インピーダンス平面プロット(cole−coleプロット)の横軸と交差した値をバルク抵抗、横軸と交差する円弧の直線長さ高周波数側の円弧の横幅にバルク抵抗値を足した値を界面抵抗として求めた。また、抵抗値はいずれも実数部(横軸)の値を使用した。印可する交流電圧の振幅は±5mVとした。また、交流インピーダンスを測定する際の電池の周囲温度は25℃とした。また、これらの結果から下記の表19に示す値を算出した。
【0693】
(1−3)単層ラミネート電池の-10℃での充放電サイクル試験
上記(1−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、サイクル試験を実施した。まず、電池の周囲温度を−10℃に設定し、0.2Cに相当する4.6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、4.6mAの定電流で2.5Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、20サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの20サイクル目の放電容量を容量維持率とした。
【0694】
実験では、−10℃での充放電サイクル試験前の電池について、交流インピーダンス測定を行った。その実験結果が以下の表19に示されている。また、以下の表19では、実施例27から実施例29及び比較例23から比較例24の、−10℃での充放電サイクル試験(20サイクル後)における容量維持率を示す。
【0695】
【表19】
【0696】
(イオン伝導度測定)
電解液を東陽テクニカ製の密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線した。更に、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0697】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。恒温槽の温度は20℃に設定し、測定は温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0698】
得られたデータは、インピーダンスの実数成分(Z´)と虚数成分(Z´´)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z´´=0におけるZ´値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは、電極間距離(0.35cm)、Sは、電極面積(4.522cm
2)である。
【0699】
その実験結果が以下の表20に示されている。
【0700】
【表20】
【0701】
表19に示すように、実施例では、界面(被膜)抵抗を低く抑えることができることがわかった。これにより、低温時のサイクル劣化及び低温時のイオン伝導度の低下を抑制することができることがわかった。
【0702】
表20に示すように、実施例では、20℃におけるイオン伝導度が、15mS/cm以上であることがわかった。好ましくは、20℃におけるイオン伝導度を、20mS/cm以上にすることができる。
【0703】
第22実施形態の実施例について以下説明する。
【0704】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表21に示した。なお、表21において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiBOB」はリチウムビスオキサレートボレート、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【0705】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0706】
【表21】
【0707】
〔電池作製〕
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:3.5:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約95.0g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.50g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0708】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×50mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0709】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、バインダーであるカルボキシメチルセルロースと、同じくバインダーであるスチレンブタジエンラテックスとを、100:1.1:1.5の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約61.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.35g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0710】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が32mm×52mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0711】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が23mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0712】
〔単層ラミネート電池の評価〕
上述のようにして得られた単層ラミネート電池について、以下の手順に従って初回充放電処理を行った。続いて60℃における4.2V貯蔵特性を評価した。充放電は、アスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−73S(商品名)を用いて行った。
【0713】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を、定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。下記においては、4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0714】
〔単層ラミネート電池の初回充放電処理〕
単層ラミネート電池の周囲温度を25℃に設定し、0.05Cに相当する1.15mAの定電流で充電して電池電圧が4.2Vに到達するまで充電を行った後、4.2Vの定電圧で充電を継続し、3時間の充電を行った。その後、0.3Cに相当する6.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。
【0715】
〔60℃における貯蔵特性〕
上記初回充放電処理後の単層ラミネート電池について、25℃において、0.3Cの電流値で4.2Vになるまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。そして、この充電後の単層ラミネート電池を60℃の恒温槽内で貯蔵した。200時間経過後、単層ラミネート電池を恒温槽から取り出して室温に戻した後に、各ラミネートセルのガス発生量と電圧を測定する手法により、単層ラミネート電池の4.2V貯蔵特性を評価した。ガス発生量は、超純水の入った容器に単層ラミネート電池を投入し、その前後での重量変化から単層ラミネート電池の体積を測定するというアルキメデス法を用いた。重量変化から体積を測定する装置としてはアルファーミラージュ社製の比重計MDS−300を用いた。
【0716】
〔実施例、比較例〕
実施例、比較例とも表21に示した組成で電解液を作製し、上記の方法で正極及び負極を作製し、単層ラミネート電池を組み立ててその評価を行った。結果を表22に示す。
【0717】
【表22】
【0718】
60℃で200時間貯蔵した後のラミネートセルにおけるガス発生量は、比較例25においては1mAhあたり0.0165mlであった。比較例26では24時間後にガス発生量が1.56mlとなり、ガス発生量が極めて多かったため評価停止とした。実施例30から実施例32においては、1mAhあたり0.008ml以下であった。このように、比較例25,26と比較して、実施例30から実施例32においては、ガス発生量が少なかった。実施例30から実施例32においては、非水系電解液に、アセトニトリルが含有され、さらに酢酸と環状酸無水物とが含有されていることがわかった。一方、比較例では、酢酸及び環状酸無水物のいずれかを含んでいなかった。
【0719】
これらの結果から、アセトニトリルを含む非水系電解液において、酢酸及び環状酸無水物が耐還元性に作用していることがわかった。すなわち、酢酸及び環状酸無水物により負極の表面にSEIが形成されていることがわかる。このため、高温においてアセトニトリルの還元が促進されることが抑制され、アセトニトリルが還元分解してガスが発生することを抑制している。
【0720】
したがって、酢酸の下限値としては、実施例30に基づいて0.1ppm以上とし、また上限値としては、実施例32に基づいて10ppm以下に設定した。また、環状酸無水物の下限値としては、実施例31及び比較例25に基づいて0.01質量%以上とし、上限値は、実施例32に基づいて1質量%以下とした。酢酸と環状酸無水物の含有量を調節することで、SEIがより強化されている。
【0721】
また、実施例に基づいて、酢酸の含有量を、非水系電解液に対し0.1ppm以上5ppm以下に規定した。また、環状酸無水物の下限値としては、比較例25が外れるように0.11質量%以上とし、環状酸無水物の含有量を、非水系電解液に対し0.11質量%以上0.5質量%以下に規定した。酢酸と環状酸無水物の含有量を更に調節することで、SEIが更に強化される。
【0722】
また実施例に基づいて、環状酸無水物成分として、無水コハク酸(SAH)、無水マレイン酸(MAH)、及び無水フタル酸(PAH)のうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。これにより、SEIが適切に形成されている。
【0723】
次に、第23実施形態の実施例について以下説明する。
[非水系電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、86:8:6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、正極集電体となるアルミニウム箔両面に、片面あたりの目付量が11.5mg/cm
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで合材層の密度が2.8mg/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0724】
次に、この正極を、塗工部の面積が150mm×150mmとなるように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0725】
(1−2) 負極の作製
負極活物質であるグラファイトと、導電助剤であるアセチレンブラックと、バインダーであるPVDFとを86:7:7の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、銅箔の両面に、片面あたりの目付量が6.9mg/cm
2になるように調節しながら塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで合材層の密度が1.3mg/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0726】
次に、この負極を、塗工部の面積が152mm×152mmとなるように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0727】
(1−3) 積層ラミネート電池の組み立て
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製樹脂フィルムを介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体をアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5h真空乾燥を行った。続いて、電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、積層ラミネート型非水系二次電池(パウチ型セル電池。以下、単に「積層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。正極端子と負極端子の無い融着辺に、安全弁機構となる穴を形成した。穴の周囲を同心円形状にて熱融着した。
【0728】
この積層ラミネート電池は、設計容量値が約10Ah、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0729】
[積層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた積層ラミネート電池について、以下の手順に従って初回充放電処理を行った。続いて2C過充電試験を実施した。ここで、1Cとは満充電状態の電池を、定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。下記においては、4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0730】
(2−1) 積層ラミネート電池の初回充放電処理
充電装置は菊水電子工業製バッテリテスタPFX2011を使用した。積層ラミネート電池の周囲温度を25℃に設定し、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した。その後、露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて、電池の封止部を開口しガス抜きを行った。ガス抜き後、同じ環境下において真空シールを行った。
【0731】
(2−2) 過充電試験
上記の初回充放電処理後の積層ラミネート電池を、25℃において、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで1時間、定電圧充電した。満充電状態にまで充電した電池に対して、下記の如く過充電試験を行った。電源は菊水電子工業製直流電源PAT60−133Tを使用し、室温(25±5℃)、2C相当の定電流、60Vの定電圧とした。試験中の電流、電圧、各部位及び雰囲気の温度は日置電機製メモリハイロガーLR8400によって100ms毎に記録した。同時に、電池外観もビデオによって観察・記録した。
【0732】
過充電によって電池が発火し、放出されるHFガス量を測定するため、過充電試験は金属製の試験容器内(縦横高さ約350mm)に電池を設置して、Ar雰囲気下で行った。電池が発火したら、通電を停止し、容器内に容器体積量の3倍のArガスを注入し、発生したガスをガスバッグに回収した。回収したガスに対して、液体捕集IC法によって、発生したHFを定量分析した。具体的には、NaHCO
3(1.7mM)+Na
2CO
3(1.8mM)吸収液に回収ガスを導入してHF成分を溶解し、溶解液のF
−濃度をイオンクロマトグラフィーによって定量し、HF発生量へ換算した。
【0733】
[実施例33]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を0.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を1.0mol添加した。また、非水系電解液に、無水コハク酸(SAH)を1質量%、プロピオニトリル(PrN)を11ppm(質量比)、酢酸(AA)を0.2ppm(質量比)添加して、実施例33の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0734】
[実施例34]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を0.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を1.0mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を1質量%、プロピオニトリル(PrN)を125ppm(質量比)、酢酸(AA)を1.0ppm(質量比)添加して、実施例34の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0735】
[実施例35]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を1質量%、プロピオニトリル(PrN)を10ppm(質量比)、酢酸(AA)を0.4ppm(質量比)添加して、実施例35の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0736】
[実施例36]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を1質量%、プロピオニトリル(PrN)を90ppm(質量比)、酢酸(AA)を2.5ppm(質量比)添加して、実施例36の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0737】
[比較例27]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を1質量%添加して、比較例27の電解液を得た。なお、比較例27には、酢酸及びプロピオニトリルを添加していない。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0738】
[比較例28]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を0.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を1.0mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を1質量%、プロピオニトリルを105ppm添加して、比較例28の電解液を得た。なお、比較例28には、酢酸を添加していない。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0739】
[比較例29]
下記の表23に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を1質量%、プロピオニトリル(PrN)を500ppm(質量比)、酢酸(AA)を100ppm(質量比)添加して、比較例29の電解液を得た。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0740】
【表23】
【0741】
実験では実施例33から実施例36、及び比較例27から比較例29に対し、ガス発生によって発火前に安全弁が作動したかどうかについて調べ、更に、HF発生量を測定した。その実験結果については上記の表23に示される。
【0742】
表23に示すように、ガス発生によって発火前に安全弁が作動した場合は、〇、安全弁が作動しなかった場合は×とした。
【0743】
すなわち、発火に至るまでの電池外観を観察したところ、実施例33から実施例36の電池は、発火直前にセル膨張が急激に生じ、安全弁が作動して、内部のガスがリリースされた。発火はガスのリリース後に生じた。これに対し、比較例27から比較例29の電池では、安全弁からガスがリリースされる前に発火が生じた。
【0744】
比較例29では、プロピオニトリルと酢酸を過剰量添加した結果、満充電状態に充電した段階で大きく膨れ、過充電試験前に安全弁が作動してしまった。通常電圧範囲において正常状態でなくなってしまったため、以後の過充電試験は中止した。
【0745】
以上により、実施例33から実施例36の非水系電解液のように、電解液中に、アセトニトリルと、リチウム塩と、含有し、更に、プロピオニトリルと酢酸を存在することが好ましいとわかった。これにより、電池セルが燃焼する前にガスが発生して安全弁を作動させ、燃焼によるHFガスの生成量を減少させる機能を適切に作動させることが可能になる。一方、比較例のように、プロピオニトリルと酢酸の両成分が揃わない場合には、ガス発生量が少ないため、安全弁が作動せず、セル中にHF源となるフッ素化合物が残存し、その結果、発火によってHFが高濃度に発生してしまう。
【0746】
また、実施例33から実施例36及び比較例27から比較例29の実験結果に基づいて、酢酸の含有量を、非水系電解液に対し、0.1ppm以上10ppm以下とし、プロピオニトリルの含有量を、非水系電解液に対し、1ppm以上300ppm以下とすることが好ましいとした。
【0747】
更に、実施例33から実施例36の実験結果に基づいて、酢酸の含有量を、非水系電解液に対し、0.1ppm以上5ppm以下とし、プロピオニトリルの含有量を、非水系電解液に対し、1ppm以上200ppm以下とすることがより好ましいとした。
【0748】
また、実施例33から実施例36に基づいて、過充電試験によるHFガスの発生量は、1Ahあたり0.5mg以下であることが好ましいとした。好ましくは、0.1mg以下であり、より好ましくは、0.05mg以下である。なお、この実験での積層ラミネート電池の設計容量値は約10Ahであるので、表23に示すHFガスの発生量を10で割った値が、1AhあたりのHFガスの発生量となる。
【0749】
次に、第24実施形態の実施例について以下説明する。
【0750】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、86:8:6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、正極集電体となるアルミニウム箔両面に、片面あたりの目付量が11.5mg/cm
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで合材層の密度が2.8mg/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0751】
次に、この正極を、塗工部の面積が150mm×150mmとなるように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0752】
(1−2) 負極の作製
負極活物質であるグラファイトと、導電助剤であるアセチレンブラックと、バインダーであるPVDFとを86:7:7の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、銅箔の両面に、片面あたりの目付量が6.9mg/cm
2になるように調節しながら塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで合材層の密度が1.3mg/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0753】
次に、この負極を、塗工部の面積が152mm×152mmとなるように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0754】
(1−3) 積層ラミネート電池の組み立て
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製樹脂フィルムを介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体をアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5h真空乾燥を行った。続いて、電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、積層ラミネート型非水系二次電池(パウチ型セル電池。以下、単に「積層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。正極端子と負極端子の無い融着辺に、安全弁機構となる穴を形成した。穴の周囲を同心円形状にて熱融着した。
【0755】
この積層ラミネート電池は、設計容量値が約10Ah、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0756】
[積層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた積層ラミネート電池について、以下の手順に従って初回充放電処理を行った。続いて2C過充電試験を実施した。ここで、1Cとは満充電状態の電池を、定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。下記においては、4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0757】
(2−1) 積層ラミネート電池の初回充放電処理
充電装置は菊水電子工業製バッテリテスタPFX2011を使用した。積層ラミネート電池の周囲温度を25℃に設定し、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した。その後、露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて、電池の封止部を開口しガス抜きを行った。ガス抜き後、同じ環境下において真空シールを行った。
【0758】
(2−2) 過充電試験
上記の初回充放電処理後の積層ラミネート電池を、25℃において、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで1時間、定電圧充電した。満充電状態にまで充電した電池に対して、下記の如く過充電試験を行った。電源は菊水電子工業製直流電源PAT60−133Tを使用し、室温(25±5℃)、2C相当の定電流、60Vの定電圧とした。試験中の電流、電圧、各部位及び雰囲気の温度は日置電機製メモリハイロガーLR8400によって100ms毎に記録した。同時に、電池外観もビデオによって観察・記録した。
【0759】
過充電によって発生するCO量を測定するため、過充電試験は金属製の試験容器内(縦横高さ約350mm)に電池を設置して、Ar雰囲気下で行った。発火後、容器内に容器体積量の3倍のArガスを注入し、発生したガスをガスバッグに回収した。回収したガスに対して、GC−TCD法によってCOを定量分析した。
【0760】
[実施例37]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を0.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を、1.0mol添加した。また、非水系電解液に、無水コハク酸(SAH)を、0.7質量%、アセトアルデヒド(AcA)を52ppm、及び遷移金属ニトリル錯体(MC)を、4008ppm添加した。このように、添加剤としてのアセトアルデヒドと、遷移金属のニトリル錯体の添加量は、電解質を溶解した電解液に対する重量割合(ppm)で示した。
【0761】
添加する遷移金属ニトリル錯体は次のようにして作製した。すなわち、アルミラミネート袋を2.7cm×6cmに加工し、前述の手法で作製した正極を23mm×17mmに打ち抜き、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)1.3mol/Lのアセトニトリル溶液を注入して、電極を浸漬した。注液後シールし、アルミラミネート袋を縦に立て掛けた状態で60℃に保ち、10日間保存した。保存後アルミラミネート袋を開封し、内部に生成したゲル状の遷移金属ニトリル錯体を回収し、乾燥した。乾燥固体中には、Niが5.6質量%、Coが5.5質量%、Mnが0.48質量%含有されており、金属含有割合は11.6質量%であった。それ以外の成分はアセトニトリル、水分およびPF
6アニオンである。なお、この遷移金属ニトリル錯体を、実施例38から実施例40、及び比較例34においても用いた。
【0762】
このようにして得た実施例37の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0763】
[実施例38]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を0.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を、1.0mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を0.7質量%、アセトアルデヒド(AcA)を1595ppm、及び遷移金属ニトリル錯体(MC)を、2190ppm添加した。このようにして得た実施例38の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0764】
[実施例39]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を0.7質量%、アセトアルデヒド(AcA)を93ppm、及び遷移金属ニトリル錯体(MC)を、2922ppm添加した。このようにして得た実施例39の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0765】
[実施例40]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に対し、無水コハク酸(SAH)を0.7質量%、アセトアルデヒド(AcA)を1610ppm、及び遷移金属ニトリル錯体(MC)を、1822ppm添加した。このようにして得た実施例40の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0766】
[比較例30]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を0.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を、1.0mol添加した。比較例30では、無水コハク酸(SAH)、アセトアルデヒド(AcA)及び、遷移金属ニトリル錯体(MC)を添加していない。このようにして得た比較例30の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0767】
[比較例31]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を、1.0mol添加した。また、非水系電解液に、無水コハク酸(SAH)を、0.7質量%添加した。比較例31では、アセトアルデヒド(AcA)及び、遷移金属ニトリル錯体(MC)を添加していない。このようにして得た比較例31の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0768】
[比較例32]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を、1.0mol添加した。また、非水系電解液に、無水コハク酸(SAH)を、0.7質量%添加した。比較例32では、アセトアルデヒド(AcA)を添加していない。このようにして得た比較例32の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0769】
[比較例33]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に、無水コハク酸(SAH)を、0.7質量%、アセトアルデヒド(AcA)を75ppm添加した。比較例33では、遷移金属ニトリル錯体(MC)を添加していない。このようにして得た比較例33の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0770】
[比較例34]
下記の表24に示す各種溶媒及び添加剤を所定量混ぜることで電解液を調製した。すなわち、アセトニトリル(AcN)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)と、エチレンカーボネート(EC)と、の体積比が47:28:4:21となるように加えて混合した。さらにこの混合液における非水系溶媒1Lあたりヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.3mol添加した。また、非水系電解液に、アセトアルデヒド(AcA)を82ppm、及び遷移金属ニトリル錯体(MC)を、3003ppm添加した。比較例34では、無水コハク酸(SAH)を添加していない。このようにして得た比較例34の電解液を備えた積層ラミネート電池について、上記(2−1)〜(2−2)に記載の手順で、積層ラミネート電池の評価を行った。
【0771】
【表24】
【0772】
表24に示すように、各実施例及び比較例において、ガス発生によって、発火前に安全弁が作動したかどうかを調べ、発火前に作動したら〇、作動しなかったら×を付した。また、過充電によるCO発生量を表24に示す。
【0773】
実施例37から実施例40に示す非水系二次電池は、発火前にガス発生によって電池セルが膨張し、安全弁が作動して、内部のガスが放出された。発火は、ガスの放出後に生じた。これに対し、比較例31から比較例33に示す非水系二次電池では、安全弁からガスが放出される前に発火が生じた。
【0774】
この事実から、電解液中に、アセトアルデヒド、環状酸無水物及び、遷移金属ニトリル錯体の各成分を存在させることにより、電池セルが燃焼する前に、ガスを発生させて安全弁を作動させ、燃焼によるCO生成量を減少させることができるとわかった。
【0775】
一方、比較例のように、アセトアルデヒド、環状酸無水物及び、遷移金属ニトリル錯体の各成分の全てが揃わない場合には、発火前のガス発生量が少ないため、安全弁が作動しない。このため、電池セル中にCO源となる化合物が残存し、その結果、発火によってCOガスが高濃度に発生することがわかった。なお、比較例30及び比較例34の電池は、初回充放電処理の段階で激しく劣化が進行し膨れてしまったため、過充電試験を実施することができなかった。
【0776】
また、実施例37から実施例40、及び比較例30から比較例34に基づいて、アセトアルデヒドの含有量が、非水系電解液に対し、1ppm以上3000ppm以下であることが好ましいとした。また、アセトアルデヒドの含有量は、非水系電解液に対し、10ppm以上2500ppm以下であることがより好ましく、30ppm以上2000ppm以下であることが更に好ましいとした。
【0777】
また、実施例37から実施例40、及び比較例30から比較例34に基づいて、環状酸無水物の含有量が、非水系電解液に対し、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましいとした。また、
環状酸無水物の含有量は、非水系電解液に対し、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましいとした。
【0778】
また、電解液中のニトリル錯体は、非水系電解液と、Ni、Mn、及びCoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する正極活物質との接触によって得られるニトリル錯体であることがわかった。
【0779】
また、実施例37から実施例40、及び比較例30から比較例34に基づいて、ニトリル錯体の含有量が、非水系電解液に対し、遷移金属として0.01ppm以上500ppm以下であることが好ましいとした。また、実施例37から実施例40に基づいて、ニトリル錯体の含有量が、非水系電解液に対し、遷移金属として100ppm以上500ppm以下であることがより好ましく、200ppm以上500ppm以下であることが更に好ましいとした。
【0780】
また、実施例37から実施例40に基づいて、過充電試験によるCOガスの発生量は、1Ahあたり1g以下であることが好ましいとした。COガスの発生量は、0.7g以下であることがより好ましい。なお、この実験での積層ラミネート電池の設計容量値は約10Ahであるので、表24に示すCOガスの発生量を10で割った値が、1AhあたりのCOガスの発生量となる。
【0781】
次に、第25実施形態の実施例について以下説明する。
【0782】
[電池作製]
(1−1)正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が12.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0783】
(1−2)負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が5.3mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0784】
(1−3)コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からガラス繊維濾紙(アドバンテック社製ガラス繊維濾紙 GA−100)を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を150μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0785】
[コイン型非水系二次電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(2−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0786】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0787】
(2−1)コイン型非水系二次電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計15時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【0788】
(2−2)コイン型非水系二次電池の充放電サイクル試験
上記(2−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、サイクル試験を実施した。まず、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、3mAの定電流で3Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量を容量維持率とした。
【0789】
(2−3)交流インピーダンス測定
交流インピーダンス測定は、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1400(商品名)とソーラトロン社製ポテンショ−ガルバノスタット1470E(商品名)を用いた。1000kHz〜0.01Hzに周波数を変えつつ交流信号を付与し、電圧・電流の応答信号からインピーダンスを測定し、1kHzにおける交流インピーダンス値を求めた。印可する交流電圧の振幅は±5mVとした。また、交流インピーダンスを測定する際の電池の周囲温度は25℃とした。また、これらの結果から下記の値を算出した。
【0790】
測定する非水系二次電池としては、上記(2−2)に記載の方法によって充放電サイクル測定を行った際の、1サイクル目、50サイクル目、及び100サイクル目の充電まで行った時点のコイン型非水系二次電池を用いた。各所定回目のサイクルにおける充電後に測定を行った後、充放電サイクル測定を継続し、次回の測定に供した。
【0791】
[実施例41]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)と、エチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が44:25:26:5となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.25molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.25molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させ、さらに2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を4ppm、環状酸無水物としての無水コハク酸を0.2質量%加えて混合し、実施例41の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、BHTおよび環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で測定を行った。
【0792】
[実施例42]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)と、エチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が35:40:21:4となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.6molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.6molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させ、さらに2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を1ppm、環状酸無水物としての無水マレイン酸を0.15質量%加えて混合し、実施例42の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、BHTおよび環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で測定を行った。
【0793】
[実施例43]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)と、エチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:13:25:17となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり0.5molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.5molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を溶解させ、さらに2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を15ppm、環状酸無水物としての無水フタル酸を0.5質量%加えて混合し、実施例43の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩、BHTおよび環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で測定を行った。
【0794】
[比較例35]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とプロピレンカーボネート(PC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が60:32:8となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり1.0molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.1molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させ、さらに環状酸無水物としての無水マレイン酸を0.07質量%加えて混合し、比較例35の電解液を得た。この電解液にはBHTを添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩及び環状酸無水物が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で測定を行った。
【0795】
[比較例36]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が85:11:4となるよう混合した。更に、この混合液1Lあたり1.1molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を溶解させ、さらに2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を5ppm加えて混合し、比較例36の電解液を得た。なお、この電解液には環状酸無水物を添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩及びBHTが全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で測定を行った。
【0796】
以下に実施例41から実施例43、及び比較例35から比較例36の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0797】
【表25】
【0798】
また、以下の表26では、実施例41から実施例43、及び比較例35から比較例36の、25℃サイクル試験を100サイクル行ったときの容量維持率、及び交流インピーダンスの値を示す。
【0799】
【表26】
【0800】
上記表26に示すように、実施例41から実施例43では、いずれも25℃におけるサイクル試験を100サイクル行ったときの容量維持率が80%以上であることがわかった。また、実施例41及び実施例42では、85%よりも大きい容量維持率が得られることがわかった。
【0801】
以上により、実施例41から実施例43の非水系電解液のように、アセトニトリルを含有し、更に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールと、環状酸無水物を含むことが好ましいとわかった。一方、比較例35及び比較例36では、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及び、環状酸無水物のどちらか一方を含んでいない。
【0802】
また、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの含有量は、実施例41から実施例43を含み且つ、比較例35を含まないように、非水系電解液に対し0.1ppm以上100ppm以下とした。また、環状酸無水物の含有量は、実施例41から実施例43を含み且つ、比較例36を含まないように、非水系電解液に対し0.01質量%以上1質量%以下とした。
【0803】
また、実施例41から実施例42に基づいて、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの含有量が、非水系電解液に対し0.5ppm以上10ppm以下、環状酸無水物の含有量が、非水系電解液に対し0.1質量%以上0.5質量%以下である範囲を好ましい範囲に設定した。これにより、25℃におけるサイクル試験を100サイクル行ったときの容量維持率を85%よりも大きく、且つ交流インピーダンス試験において、50サイクル時の交流インピーダンスを3.4Ωより小さく、100サイクル時の交流インピーダンスを3.8Ω以下に抑制できることがわかった。
【0804】
また実施例に基づいて、環状酸無水物成分として、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタルのうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。
【0805】
次に、第26実施形態から第27実施形態の実施例について以下説明する。
【0806】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表27に示した。なお、表27において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「MBTA」は、1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、「SAH」は無水コハク酸をそれぞれ示す。
【0807】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0808】
【表27】
【0809】
〔電池作製〕
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:3.5:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約95.0g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.50g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0810】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×50mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0811】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、バインダーであるカルボキシメチルセルロースと、同じくバインダーであるスチレンブタジエンラテックスとを、100:1.1:1.5の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約61.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.35g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0812】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が32mm×52mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0813】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が23mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0814】
[単層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(1−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(1−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0815】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0816】
(1−1)単層ラミネート電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する2.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する6.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【0817】
(1−2)単層ラミネート電池の50℃充放電サイクル試験
上記(1−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、サイクル試験を実施した。なお、サイクル試験は電池の周囲温度を50℃に設定た3時間後に開始した。まず、2Cに相当する46mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、46mAの定電流で3.0Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量を容量維持率とした。
【0818】
(2)遷移金属溶出量の測定
遷移金属溶出量を測定するためXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析を行った。XPS分析装置はアルバックファイ Versa probeIIを用いた。分析条件に関して、励起源はmono.AlKα 15kV×3.3mAとし、分析サイズは約200μmφとし、光電子取出角は45°とした。また、測定試料は試験前の電池を解体して、取り出した負極をアセトニトリルに約1分間浸漬して試料に付着している電解液を洗浄した。その後、12時間風乾した。乾燥した試料はそれぞれ3mm四方の小片に切り出し、XPS分析用試料とした。なお、試料作製に関する一連の作業は露点−60℃以下に制御されたアルゴングローブボックス内で実施した。試料のXPS装置への搬送は専用治具を用いて大気非暴露で行った。得られた各ピーク(C1S、O1s、F1s、P2p、N1s、S2p、Li1s、Mn3p、Ni3p、Co3p)の面積強度と装置付属の相対感度係数を用いて各元素の相対元素濃度を求めた。ここでは約40〜80eVに観測された、Ni3p、Co3p、Mn3pスペクトルについてピーク分割を行って面積強度を導出して、Ni濃度、Co濃度、Mn濃度を求めた。
【0819】
【表28】
【0820】
実施例44から実施例45に示すように、75%以上の容量維持率を得ることができた。また、実施例では、Mn、Ni及びCoの遷移金属溶出量を比較例よりも低く抑えることができた。
【0821】
次に、第28実施形態から第31実施形態の実施例について以下説明する。
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。
【0822】
得られた正極合剤に溶剤として、N−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。
【0823】
正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が24.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.90g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0824】
(1−2) 負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。
【0825】
得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。
【0826】
負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が10.6mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.50g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0827】
(1−3) コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からガラス繊維濾紙(アドバンテック社製ガラス繊維濾紙 GA−100)を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を150μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0828】
[コイン型非水系二次電池の高温特性評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(2−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0829】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0830】
(2−1)コイン型非水系二次電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計15時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する1.8mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【0831】
(2−2)コイン型非水系二次電池の60℃満充電保存試験
上記(2−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する6mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。次に、この非水系二次電池を60℃の恒温槽に720時間保存した。その後、電池の周囲温度を25℃に戻した。
【0832】
(2−3)交流インピーダンス測定
交流インピーダンス測定は、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1400(商品名)とソーラトロン社製ポテンショ−ガルバノスタット1470E(商品名)を用いた。1000kHz〜0.01Hzに周波数を変えつつ交流信号を付与し、電圧・電流の応答信号からインピーダンスを測定し、1kHzにおける交流インピーダンス値を求めた。印可する交流電圧の振幅は±5mVとした。また、交流インピーダンスを測定する際の電池の周囲温度は25℃とした。
【0833】
測定する非水系二次電池としては、上記(2−2)に記載の方法によって60℃満充電保存試験を行う前、60℃満充電保存試験を行った後のコイン型非水系二次電池を用いた。
【0834】
また、これらの結果から下記の抵抗増加率の値を算出した。
抵抗増加率=(60℃満充電保存試験後の抵抗値/60℃満充電保存試験前の抵抗値)×100[%]
【0835】
[非水系電解液の低温特性評価]
(3−1)セル組み立て、及び交流インピーダンス測定
上記の調製した電解液を東陽テクニカ製密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0836】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。温度は−30℃、−10℃、0℃、20℃の4点で実施し、測定は各温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0837】
(3−2)イオン伝導度
得られたデータはインピーダンスの実数成分(Z’)と虚数成分(Z’’)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z’’=0におけるZ’値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは電極間距離(0.35cm)、Sは電極面積(4.522cm
2)である。
【0838】
[実施例46]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネ―ト(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:35:16:4となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.3molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加するとともに、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)を0.1質量%(1000ppm)、無水コハク酸(SAH)を0.5質量%溶解させ、実施例46の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0839】
[実施例47]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が50:35:10:5となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と2.7molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加するとともに、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)を0.8質量%(8000ppm)、無水マレイン酸(MAH)を0.2質量%溶解させ、実施例47の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0840】
[実施例48]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が65:6:22:7となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.6molとなるようヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.6molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を添加するとともに、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)を0.005質量%(50ppm)、無水フタル酸(PAH)を0.5質量%溶解させ、実施例48の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0841】
[比較例39]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:42:11となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.3molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加するとともに、無水マレイン酸(MAH)を0.05質量%溶解させ、比較例39の電解液を得た。比較例39では、LiPO
2F
2を添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0842】
[比較例40]
不活性雰囲気下、1アセトニトリル(AcN)とジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が20:42:21:17となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり0.5molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.5molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加するとともに、LiPO
2F
2を5ppm溶解させ、比較例40の電解液を得た。比較例40では、環状酸無水物を添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0843】
[比較例41]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が42:30:15:13となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.2molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加するとともに、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO
2F
2)を0.5質量%(5000ppm)、無水マレイン酸(MAH)を0.4質量%溶解させ、比較例41の電解液を得た。比較例41では、イミド塩を添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0844】
[比較例42]
不活性雰囲気下、1Lのアセトニトリル(AcN)に対して4.2molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を溶解させて、比較例42の電解液を得た。比較例42では、LiPF
6、LiPO
2F
2、及び環状酸無水物をいずれも添加していない。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行い、(3−1)(3−2)に記載の手順で各温度のイオン伝導度を算出した。
【0845】
以下に実施例46から実施例48、及び比較例39から比較例42の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0846】
【表29】
【0847】
また、以下の表30では、実施例46から実施例48、及び比較例39から比較例42の、60℃での満充電保存試験における抵抗増加率を示す。
【0848】
【表30】
【0849】
また、以下の表31には、実施例46から実施例48、及び比較例39から比較例42の、イオン伝導度を示す。
【0850】
【表31】
【0851】
上記の表30に示すように、実施例46から実施例48、及び比較例41では、いずれも抵抗増加率が400%を下回っていることがわかった。また、実施例46から実施例48、及び比較例41では、いずれも抵抗増加率が300%を下回っていることがわかった。更に、実施例46から実施例48、及び比較例41では、いずれも抵抗増加率が250%を下回っていることがわかった。
【0852】
また、上記の表31に示すように、実施例46から実施例48、及び比較例40では、−10℃でのイオン伝導度が10mS/cm以上であることがわかった。また、実施例46から実施例48では、−10℃でのイオン伝導度が、12mS/cm以上であることがわかった。また、実施例46及び実施例47では、−10℃でのイオン伝導度が、12.5mS/cm以上であることがわかった。
【0853】
また、上記の表31に示すように、実施例46から実施例48、及び比較例40では、−30℃でのイオン伝導度が、5mS/cm以上であることがわかった。また、実施例46から実施例48では、−30℃でのイオン伝導度が、6mS/cm以上であることがわかった。また、実施例46及び実施例47では、−30℃でのイオン伝導度が、6.5mS/cm以上であることがわかった。
【0854】
以上により、実施例46から実施例48の非水系電解液のように、アセトニトリルと、LiPF
6と、LiPO
2F
2と、環状酸無水物と、イミド塩と、を有することが好ましいとわかった。一方、比較例では、LiPF
6、LiPO
2F
2、環状酸無水物、及びイミド塩のいずれかを含んでいない。
【0855】
また、LiPO
2F
2は高温加熱時の抵抗増加率の低減に寄与するものである。したがって、LiPO
2F
2の下限値としては、比較例40を含まないように、0.001質量%以上とし、また上限値としては実施例47に基づいて1質量%以下に設定した。
【0856】
また、環状酸無水物は、高温加熱時の抵抗増加率の低減に寄与するものである。したがって、環状酸無水物の下限値としては、比較例39を含まないように、0.01質量%以上とし、上限値は、実施例46及び実施例48に基づいて1質量%以下とした。
【0857】
実施例46から実施例48の電解液においては、電解液に含まれるリチウム塩の総モル量に対するイミド塩のモル量の百分率が50%以上となることがわかった。すなわち、実施例46から実施例48の電解液のリチウム塩おける主成分はイミド塩であることがわかった。
【0858】
また、実施例46から実施例48では、いずれもLiPF
6≦イミド塩となるモル濃度でイミド塩を含有することがわかった。
【0859】
また、実施例に基づいて、イミド塩の含有量は、非水系溶媒1Lに対して、0.5mol以上3.0mol以下であることが好ましいとした。
【0860】
また、実施例に基づいて、アセトニトリルに対するPF
6アニオンの混合モル比が、0.01以上0.08未満であることが好ましいとした。
【0861】
また、実施例に基づいて、LiPO
2F
2の含有量を、非水系電解液に対し0.05質量%以上1.0質量%以下に規定した。
【0862】
また、実施例に基づいて、環状酸無水物の含有量を、非水系電解液に対し0.1質量%以上0.5質量%以下に規定した。
【0863】
また、実施例に基づいて、イミド塩成分として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)、及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)のうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。
【0864】
また実施例に基づいて、環状酸無水物成分として、無水コハク酸、無水マレイン酸、及び無水フタル酸のうち少なくとも1種を含むことが好ましいとした。
【0865】
第32実施形態から第34実施形態の実施例について以下説明する。
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表32に示した。なお、表32において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「LiPO
2F
2」はジフルオロリン酸リチウム、「SAH」は無水コハク酸をそれぞれ示す。
【0866】
リチウム塩を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0867】
【表32】
【0868】
[交流インピーダンス測定]
【0869】
上記の調製した電解液を東陽テクニカ製の密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線した。更に、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0870】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。恒温槽の温度は−20℃、−10℃、0℃、10℃、20℃の5点に設定し、測定は各温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0871】
[イオン伝導度]
得られたデータは、インピーダンスの実数成分(Z´)と虚数成分(Z´´)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z´´=0におけるZ´値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは、電極間距離(0.35cm)、Sは、電極面積(4.522cm
2)である。
【0872】
<イオン伝導度のアレニウスプロット>
上記の式より得られた各温度におけるLiイオン伝導度を用い、アレニウスの式:σ=Aexp(−Ea/kT)(σ:イオン伝導度、A:頻度因子、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)より、−20〜0℃と0〜20℃のアレニウスプロットの傾きを求めた。
【0873】
表32に示した組成で電解液を25℃で調製し、上記の方法でセルを組み立てて交流インピーダンス測定を実施した。得られたデータからナイキスト線図を作成してZ´値を読み取り、上記の式から、実施例49から実施例50、及び比較例43のイオン伝導度を計算した。計算したイオン伝導度を用いて−20〜0℃と0〜20℃のアレニウスプロットの傾きを求め、アレニウスプロットの傾きから活性化エネルギー(Ea)を求めた。結果を以下の表33に示す。
【0874】
【表33】
【0875】
表33に示すように、比較例では−20〜0℃、0〜20℃での活性化エネルギーEa
1、Ea
2が15kJ/molを大きく上回ることがわかった。これに対して、実施例ではいずれも、−20〜0℃での活性化エネルギーEa
1が15kJ/mol以下であることがわかった。また、実施例では0〜20℃での活性化エネルギーEa
2も15kJ/mol以下であることがわかった。また、−20〜0℃での活性化エネルギーEa
1に対する0〜20℃での活性化エネルギーEa
2の値(Ea
2/Ea
1)において、比較例は実施例に比べて、1を大きく下回っていた。すなわち、比較例は、Ea
1とEa
2が大きく異なっていた。これにより、比較例は実施例に比べて、エネルギー的に安定しておらず、イオン伝導度に不連続変化が生じていることがわかった。これに対し、実施例は、Ea
2/Ea
1が1に近くエネルギー的に安定しており、0℃以下の低温領域においてもイオン伝導度が安定していることがわかった。
【0876】
実施例49では、電解液にアセトニトリル並びに、リチウム塩としてLiPO
2F
2及びLiFSI(イミド塩)が含まれていた。また、実施例50では、電解液にアセトニトリル並びに、リチウム塩としてLiPO
2F
2及びLiTFSI(イミド塩)が含まれていた。
【0877】
実施例49から実施例50のLiPO
2F
2の含有量は、電解液に対して0.01質量%以上1質量%以下であった。また、実施例49〜50の電解液においては、電解液に含まれるリチウム塩の総モル量に対するイミド塩のモル量の百分率が50%以上となることがわかった。すなわち、実施例49から実施例50の電解液のリチウム塩おける主成分はイミド塩であることがわかった。
【0878】
第35実施形態の実施例について以下説明する。
【0879】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が12.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0880】
(1−2) 負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が5.3mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0881】
(1−3)コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からポリエチレン微多孔膜を直径19mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を100μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0882】
[コイン型非水系二次電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、実施例および比較例に記載されているそれぞれの手順に従って初回充電処理
を行った。次に(2−1)、(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0883】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0884】
(2−1)コイン型非水系二次電池の85℃満充電保存試験
初回充放電処理(初回放電のエージング処理については各実施例や比較例の欄に記載)を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。次に、この非水系二次電池を85℃の恒温槽に4時間保存した。その後、電池の周囲温度を25℃に戻した。
【0885】
(2−2)コイン型非水系二次電池の出力試験
上記(2−1)に記載の方法で85℃満充電保存試験を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、1Cに相当する3mAの電流値で3.0Vまで放電した。次に、定電流放電時の電流値を5Cに相当する15mAに変更した以外は、上記と同様の充放電を行い、下記の容量維持率を算出した。
容量維持率=(5C放電時の容量/1C放電時の容量)×100[%]
【0886】
[実施例100]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:35:16:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.15質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.3molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加し、実施例100の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して2.8Vまで充電した後、2.8Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を55℃に設定し、6時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)、(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0887】
[実施例101]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:35:16:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.3質量%となるよう溶解させた。更に、この混合溶媒に1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を電解液として最終的に0.2質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例101の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して2.8Vまで充電した後、2.8Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を45℃に設定し、72時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0888】
[実施例102]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が35:40:21:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水マレイン酸(MAH)を電解液として最終的に0.15質量%となるよう溶解させた。更に、この混合溶媒に1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を電解液として最終的に0.1質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり1.2molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例102の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して3.0Vまで充電した後、3.0Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を55℃に設定し、6時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0889】
[実施例103]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が65:6:22:7となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.2質量%となるよう溶解させた。さらに、この混合溶媒にメチルスクシノニトリルを電解液として最終的に0.2質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり0.6molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.6molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を添加し、実施例103の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して3.0Vまで充電した後、3.0Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を60℃に設定し、6時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0890】
[実施例104]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:30:23:2となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.2質量%となるよう溶解させた。更に、この混合溶媒に1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を電解液として最終的に0.3質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり1.0molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例104の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して3.3Vまで充電した後、3.3Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を55℃に設定し、24時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0891】
[実施例105]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が50:30:18:2となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.2質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.0molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加し、実施例105の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して3.2Vまで充電した後、3.2Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を50℃に設定し、48時間保存した後、再び電池の周囲温度を25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0892】
[比較例100]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:42:11となるよう混合した。この混合溶媒に無水マレイン酸(環状酸無水物)を電解液として最終的に0.14質量%となるよう溶解させた。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.01molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を添加して、比較例100の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。比較例100では、初回充電のエージング処理を行っていない。
【0893】
[比較例101]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:49:4となるよう混合した。さらにこの混合液1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.05molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を添加するとともに、無水コハク酸(SAH)を0.05質量%溶解させ、比較例101の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して2.8Vまで充電した後、2.8Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、周囲温度を25℃のままとし、72時間保存した後、電池の周囲温度をそのまま25℃に設定し、3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0894】
[比較例102]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が47:49:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらにこの混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.05質量%となるよう溶解させた。更に、この混合溶媒に1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を電解液として最終的に2.5質量%となるよう溶解させた。その後、混合溶媒1Lあたり0.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を添加し、比較例102の電解液を得た。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液を用いて上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、初回充放電処理を行った。電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、周囲温度を85℃とし、24時間保存した後、電池の周囲温度をそのまま25℃に設定し、冷却のため3時間静置した。その後、0.1Cに相当する0.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で1時間半充電を行った。その後、0.3Cに相当する0.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。その後、上記(2−1)(2−2)に記載の手順でコイン型非水系二次電池の評価を行った。
【0895】
以下の表34に実施例100から実施例105、及び比較例100から比較例102の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0896】
【表34】
【0897】
また、以下の表35では、実施例100から実施例105、及び比較例100から比較例102のエージング条件を示す。
【0898】
【表35】
【0899】
また、以下の表36には、実施例100から実施例105、及び比較例100から比較例102における、85℃4時間保存後の容量維持率を示す。容量維持率は、5C放電容量を1C放電容量で除して算出してなる。
【0900】
【表36】
【0901】
上記の表36に示すように、実施例100から実施105では、いずれも容量維持率が70%以上であることがわかった。また、実施例100から実施例105では、74%以上の容量維持率を得ることができる。
【0902】
なお、本実施例では、電池内の正極表面部のXPS分析を行った。XPS分析の装置としてアルバックファイ Versa probe IIを用いた。分析条件に関して、励起源はmono.AlKα 15kV×3.3mAとし、分析サイズは約200μmφとし、光電子取出角は45°±20°とした。また、測定試料は試験前の電池を解体して、取り出した電極をアセトニトリルで3回浸漬して試料に付着している電解液を洗浄した。その後、12時間風乾した。乾燥した試料はそれぞれ3mm四方の小片に切り出し、XPS分析用試料とした。なお、試料作製に関する一連の作業はアルゴングローブボックス(露点−60℃以下)内で実施した。ここではXPS分析の結果に従って、窒素元素に基づく394eV〜408eVの範囲において、光電子スペクトルのピーク分割を行った場合の窒素濃度が0.5〜20atomic%含むことが好ましい。これは、実施例100から実施例105及び比較例100から比較例102の85℃4h保存試験後出力試験の結果に基づく。また、前記ピーク範囲において、399eV〜400eVに観測されるピークは−NH
4、及び−NH−NH−、(NO
3)−結合を有し、402eV付近に観測されるピークは−N=O結合を有する。表36に示す「atomic%」は、光電子スペクトルのピーク分割を行った場合の窒素濃度を原子%で示したものである。
【0903】
以上により、実施例100から実施例105の非水系電解液のように、−N=、−NH
4、−N=O、−NH−NH−、及び(NO
3)−からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物が含まれることが好ましいとわかった。そして、非水系二次電池は、85℃での4時間保存試験後にて、5C放電容量を1C放電容量で除して算出してなる容量維持率は、70%以上である初期特性評価を有することができる。
【0904】
また、実施例及び比較例より、N含有化合物を含有し、初回充電時、3.5V以下でエージングすることが好ましいとした。これにより、正極活物質由来である遷移金属のイオン化が発生する前に、−N=、−NH
4、−N=O、及び−NH−NH−、(NO
3)−からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物が正極表面を保護する。これにより、熱履歴による経時的な内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0905】
また、実施例101から実施例105により、上記エージング温度が、35℃以上60℃以下であることが好ましいとした。このように、60℃以下の熱履歴を与えることで、保護被膜が正極表面の活性点を初期に不活性化し、高温条件下での内部抵抗の上昇を抑えることができる。
【0906】
第36実施形態の実施例について以下説明する。
【0907】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表37に示した。なお、表37において「AcN」はアセトニ
トリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「DM
C」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「MBTA」は、1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【0908】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0909】
【表37】
【0910】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の片面に、この正極合剤含有スラリーを目付量が12.0mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0911】
(1−2) 負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の片面に、この負極合剤含有スラリーを目付量が5.3mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0912】
(1−3)コイン型非水系二次電池の作製
CR2032タイプの電池ケース(SUS304/Alクラッド)にポリプロピレン製ガスケットをセットし、その中央に上述のようにして得られた正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、正極活物質層を上向きにしてセットした。その上からポリエチレン微多孔膜を直径19mmの円盤状に打ち抜いたものをセットして、電解液を100μL注入した後、上述のようにして得られた負極を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものを、負極活物質層を下向きにしてセットした。さらにスペーサーとスプリングをセットした後に電池キャップをはめ込み、カシメ機でかしめた。あふれた電解液はウエスできれいにふきとった。25℃で24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませてコイン型非水系二次電池を得た。
【0913】
[コイン型非水系二次電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、実施例および比較例に記載されているそれぞれの手順に従って初回充電処理
を行った。次に(2−1)、(2−2)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【0914】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0915】
(2−1)コイン型非水系二次電池の85℃満充電保存試験
初回充放電処理(初回放電のエージング処理については各実施例や比較例の欄に記載)を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。次に、この非水系二次電池を85℃の恒温槽に4時間保存した。その後、電池の周囲温度を25℃に戻した。
【0916】
(2−2)コイン型非水系二次電池の出力試験
上記(2−1)に記載の方法で85℃満充電保存試験を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。その後、1Cに相当する3mAの電流値で3.0Vまで放電した。次に、定電流放電時の電流値を5Cに相当する15mAに変更した以外は、上記と同様の充放電を行い、下記の容量維持率を算出した。
容量維持率=(5C放電時の容量/1C放電時の容量)×100[%]
【0917】
また、以下の表38では、実施例106から実施例111、及び比較例103から比較例105のエージング条件を示す。
【0918】
【表38】
【0919】
また、以下の表39には、実施例106から実施例111、及び比較例103から比較例105における、85℃4時間保存後の容量維持率を示す。容量維持率は、5C放電容量を1C放電容量で除して算出してなる。
【0920】
【表39】
【0921】
実験結果により、非水系二次電池に有機酸およびその塩、無水酸、並びにLi
2Oからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が含まれ、有機酸は、酢酸、シュウ酸またはギ酸のうち少なくとも1種を含み、非水系二次電池は、85℃での4時間保存試験後にて、5C放電容量を1C放電容量で除して算出してなる容量維持率は、70%以上である初期特性評価を有することが可能である。
【0922】
なお、本実施例では、電池内の負極表面部のXPS分析を行った。XPS分析の装置としてアルバックファイ Versa probeIIを用いた。分析条件に関して、励起源はmono.AlKα 15kV×3.3mAとし、分析サイズは約200μmφとし、光電子取出角は45°±20°とした。また、測定試料は試験前の電池を解体して、取り出した電極をアセトニトリルで3回浸漬して試料に付着している電解液を洗浄した。その後、12時間風乾した。乾燥した試料はそれぞれ3mm四方の小片に切り出し、XPS分析用試料とした。試料作製に関する一連の作業はアルゴングローブボックス(露点-60℃以下)内で実施した。ここではXPS分析の結果に従って、酸素元素に基づく524eV〜540eVの範囲において、光電子スペクトルのピーク分割を行った場合の酸素濃度が10〜30atomic%含むことが好ましい。これは実施例106から実施例111及び比較例103から比較例105の85℃4h保存試験後出力試験の結果に基づく。また、前記ピーク範囲において、527eV付近に観測されるピークはLi
2Oを有し、530eV〜535eVに観測されるピークは有機物またはその塩を有する。表39に示す「atomic%」は、光電子スペクトルのピーク分割を行った場合の酸素濃度を原子%で示したものである。
【0923】
また、実施例及び比較例に基づいて、環状酸無水物を含有し、初回充電時、3.5V以下でエージングすることが好ましいとした。負極SEIに有機酸(酢酸、シュウ酸、ギ酸)およびその塩、無水酸、およびLi
2Oから選択される少なくとも一種の化合物が含まれることにより、熱履歴による経時的な内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0924】
また、実施例106から実施例111に基づいて、上記エージング温度が、35℃以上60℃以下であることが好ましいとした。60℃以上で生じるLiPF
6の熱分解を抑えることができる。
【0925】
第37実施形態の実施例について以下説明する。
【0926】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の両面に、片面あたりの目付量が11.5mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0927】
次に、この正極を、塗工部の面積が150mm×150mmとなるように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0928】
(1−2) 負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の両面に、片面あたりの目付量が6.9mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0929】
次に、この負極を、塗工部の面積が152mm×152mmとなるように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0930】
(1−3) 積層ラミネート型非水系二次電池の作製
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製樹脂フィルムを介して重ね合わせて積層電極体とした。
【0931】
この積層電極体をアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5h真空乾燥を行った。続いて、電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、積層ラミネート型非水系二次電池(パウチ型セル電池。以下、単に「積層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。
【0932】
この積層ラミネート電池は、設計容量値が約10Ah、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0933】
[積層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた積層ラミネート電池について、(2−1)の手順に従って初回充放電処理を行った。続いて(2−2)及び(2−3)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。また、(2−4)の手順に従って電解液を評価した。
【0934】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。下記においては、4.2Vの満充電状態から定電流で2.7Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0935】
(2−1)積層ラミネート電池の初回充放電処理
充電装置は菊水電子工業製バッテリテスタPFX2011を使用した。積層ラミネート電池の周囲温度を25℃に設定し、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した。その後、露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて、電池の封止部を開口しガス抜きを行った。ガス抜き後、同じ環境下において真空シールを行った。
【0936】
(2−2)積層ラミネート電池の85℃満充電保存試験
上記(2−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。次に、この非水系二次電池を85℃の恒温槽に4時間保存した。その後、電池の周囲温度を25℃に戻した。
【0937】
(2−3)イオン伝導度測定
電解液を東陽テクニカ製の密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線した。更に、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0938】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。恒温槽の温度は20℃と0℃にそれぞれ設定し、測定は温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0939】
得られたデータは、インピーダンスの実数成分(Z´)と虚数成分(Z´´)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z´´=0におけるZ´値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは、電極間距離(0.35cm)、Sは、電極面積(4.522cm
2)である。
【0940】
イオン伝導度は、電解液の初期イオン伝導度と、85℃保存試験後に露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて採取した電解液のイオン伝導度の双方を、夫々、20℃と0℃とで求めた。
【0941】
[実施例112]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:36:16:3となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.18質量%となるよう溶解させた。更に、この混合溶媒に1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を電解液として最終的に0.1質量%となるよう溶解させた。このとき、混合液の温度は30℃であった。その後、混合溶媒1Lあたり0.5molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と1.0molのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO
2F)
2)を順番に添加し、実施例112の電解液を得た。このとき、電解液の温度は40℃であり、50℃以下の熱履歴のみを受けて生成された。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で評価を行い、最終的に、各温度のイオン伝導度を算出した。
【0942】
[実施例113]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が55:25:16:4となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水コハク酸(SAH)を電解液として最終的に0.12質量%となるよう溶解させた。更に、この混合溶媒に1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を電解液として最終的に0.25質量%となるよう溶解させた。このとき、混合液の温度は30℃であった。その後、混合溶媒1Lあたり1.1molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例113の電解液を得た。このとき、電解液の温度は43℃であり、50℃以下の熱履歴のみを受けて生成された。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で評価を行い、最終的に、各温度のイオン伝導度を算出した。
【0943】
[実施例114]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が31:45:21:3となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水マレイン酸(MAH)を電解液として最終的に0.1質量%となるよう溶解させた。さらに、この混合溶媒にアジポニトリルを電解液として最終的に0.1質量%となるよう溶解させた。このとき、混合液の温度は31℃であった。その後、混合溶媒1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を添加し、実施例114の電解液を得た。このとき、電解液の温度は42℃であり、50℃以下の熱履歴のみを受けて生成された。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で評価を行い、最終的に、各温度のイオン伝導度を算出した。
【0944】
[実施例115]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が65:10:22:3となるよう混合し混合溶媒を得た。さらに、この混合溶媒に無水フタル酸(PAH)を電解液として最終的に0.45質量%となるよう溶解させた。さらに、この混合溶媒にアジポニトリルを電解液として最終的に0.4質量%となるよう溶解させた。このとき、混合液の温度は29℃であった。その後、混合溶媒1Lあたり0.6molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)と0.6molのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO
2CF
3)
2)を順番に添加し、実施例115の電解液を得た。このとき、電解液の温度は41℃であり、50℃以下の熱履歴のみを受けて生成された。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で評価を行い、最終的に、各温度のイオン伝導度を算出した。
【0945】
[比較例106]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とエチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が45:35:17:3となるよう混合し混合溶媒を得た。このとき、混合溶媒の温度は30℃であった。次に、この混合溶媒1Lあたり1.3molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を容器に入れ、その上から混合溶媒を流し込むとともに、無水コハク酸(SAH)を0.02質量%、1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(MBTA)を0.02質量%溶解させ、比較例106の電解液を得た。このとき、電解液の温度は63℃であり、50℃以上の熱履歴を受けて生成された。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で評価を行い、最終的に、各温度のイオン伝導度を算出した。
【0946】
[比較例107]
不活性雰囲気下、アセトニトリル(AcN)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の体積比が41:48:11となるよう混合し混合溶媒を得た。更に、この混合溶媒にアジポニトリルを電解液として最終的に2質量%となるよう溶解させた。このとき、混合溶媒の温度は30℃であった。次に、この混合溶媒1Lあたり2.0molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を容器に入れ、その上から混合溶媒を流し込み、比較例107の電解液を得た。このとき、電解液の温度は68℃であり、50℃以上の熱履歴を受けて生成された。得られた電解液について、目視でリチウム塩が全て溶解していることを確認した。なお、比較例107では、環状酸無水物を添加していない。この電解液について上記(1−3)に記載の方法で電池作製した後、上記(2−1)〜(2−3)に記載の手順で評価を行い、最終的に、各温度のイオン伝導度を算出した。
【0947】
以下に実施例112から実施例115、及び比較例106から比較例107の各非水系電解液の構成成分を示す。
【0948】
【表40】
【0949】
また、以下の表41では、実施例112から実施例115、及び比較例106から比較例107の、イオン伝導度を示す。
【0950】
【表41】
【0951】
上記の表41に示すように、実施例112から実施例115、及び比較例106、比較例107の初期イオン伝導度は、20℃から0℃に温度変化しても、変化量は大差なく、実施例及び比較例ともに、0℃でのイオン伝導度が約15mS/cm以上であることがわかった。
【0952】
一方、85℃での4時間保存試験後におけるイオン伝導度では、実施例112から実施例115と、比較例106及び比較例107との間に、大きな差が見られた。すなわち、実施例では、85℃での4時間保存試験後における0℃のイオン伝導度は、10mS/cm以上であった。一方、比較例では、85℃での4時間保存試験後における0℃のイオン伝導度は、10mS/cmを下回った。実施例では、85℃での4時間保存試験後における0℃のイオン伝導度を、好ましくは、12mS/cm以上、より好ましくは、13mS/cm以上、更に好ましくは、13.5mS/cm以上とすることができる。
【0953】
表40に示すように、実施例112から実施例115に示す非水系電解液は、アセトニトリルと、リチウム塩と、環状酸無水物とを含有し、かつ、50℃以下の熱履歴で生成されている。
【0954】
また、実施例及び比較例の実験結果に基づいて、アセトニトリルとN含有化合物を入れた電解液を用いることが好ましいとした。正極保護被膜を形成することができ、内部抵抗の増加要因となるHFの発生を抑制することができる。
【0955】
また、実施例112から実施例115に基づいて、N含有化合物投入時の温度上昇を50℃以下に抑えることが好ましいとした。これにより、60℃以上で生じるLiPF
6の熱分解を抑えることができる。
【0956】
第38実施形態の実施例について以下説明する。
【0957】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表42に示した。なお、表42において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「MBTA」は、1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【0958】
実施例では、アセトニトリルと環状酸無水物を入れてからLiPF
6を投入した。
【0959】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0962】
【表42】
【0963】
[非水系二次電池の作製]
(1−1) 正極の作製
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムとニッケル、マンガン及びコバルトとの複合酸化物(Ni/Mn/Co=1/1/1(元素比);密度4.70g/cm
3)と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.26g/cm
3)及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末(密度1.95g/cm
3)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF;密度1.75g/cm
3)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、正極集電体となる厚さ20μm、幅200mmのアルミニウム箔の両面に、片面あたりの目付量が11.5mg/cm
2になるように調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで実電極密度が2.80g/cm
3になるよう圧延して、正極活物質層と正極集電体からなる正極を得た。
【0964】
次に、この正極を、塗工部の面積が150mm×150mmとなるように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0965】
(1−2) 負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(密度2.23g/cm
3)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(密度2.27g/cm
3)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(密度1.60g/cm
3)溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、密度1.00g/cm
3、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、87.2:9.7:1.4:1.7の固形分質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤として水を固形分45質量%となるように投入して更に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、負極集電体となる厚さ10μm、幅200mmの銅箔の両面に、片面あたりの目付量が6.9mg/cm
2になるよう調節しながらドクターブレード法で塗布し、溶剤を乾燥除去した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで実電極密度が1.30g/cm
3になるよう圧延して、負極活物質層と負極集電体からなる負極を得た。
【0966】
次に、この負極を、塗工部の面積が152mm×152mmとなるように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12h真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0967】
(1−3) 積層ラミネート型非水系二次電池の作製
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製樹脂フィルムを介して重ね合わせて積層電極体とした。
【0968】
この積層電極体をアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5h真空乾燥を行った。続いて、電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、積層ラミネート型非水系二次電池(パウチ型セル電池。以下、単に「積層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。
【0969】
この積層ラミネート電池は、設計容量値が約10Ah、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0970】
[積層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた積層ラミネート電池について、(2−1)の手順に従って初回充放電処理を行った。続いて(2−2)及び(2−3)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。また、(2−4)の手順に従って電解液を評価した。
【0971】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。下記においては、4.2Vの満充電状態から定電流で2.7Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0972】
(2−1)積層ラミネート電池の初回充放電処理
充電装置は菊水電子工業製バッテリテスタPFX2011を使用した。積層ラミネート電池の周囲温度を25℃に設定し、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vで1時間の定電圧充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で2.7Vになるまで放電した。その後、露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて、電池の封止部を開口しガス抜きを行った。ガス抜き後、同じ環境下において真空シールを行った。
【0973】
(2−2)積層ラミネート電池の85℃満充電保存試験
上記(2−1)に記載の方法で初回充放電処理を行った電池について、電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電を行った。次に、この非水系二次電池を85℃の恒温槽に4時間保存した。その後、電池の周囲温度を25℃に戻した。
【0974】
(2−3)イオン伝導度測定
電解液を東陽テクニカ製の密閉セル(セルサイズ:24mmφ×0.35mmt)に入れて封入し、ホルダー(SH1−Z)にはめ込んで結線した。更に、恒温槽に入れて交流インピーダンス測定を行った。電極には金を使用した。電解液の採取から密閉セルへの充填、封入まではArグローブBOX内で行った。
【0975】
交流インピーダンス測定にはSolartron社製のFRA1255を使用した。振幅電圧5mV、周波数を10kHzから1MHzまで振って測定した。恒温槽の温度は20℃と0℃にそれぞれ設定し、測定は温度設定の1時間30分後に開始した。測定データは、5分ごとに繰り返し測定したデータの変動が0.1%未満になった時点のデータを採用した。
【0976】
得られたデータは、インピーダンスの実数成分(Z´)と虚数成分(Z´´)からなるナイキスト線図で表した。そして、Z´´=0におけるZ´値(R)を読み取って、以下の式によりLiイオン伝導度を求めた。
Liイオン伝導度(mS/cm)=d/(R・S)
ここで、dは、電極間距離(0.35cm)、Sは、電極面積(4.522cm
2)である。
【0977】
イオン伝導度は、電解液の初期イオン伝導度と、85℃保存試験後に露点−60℃以下に制御されたグローブボックス内にて採取した電解液のイオン伝導度の双方を、夫々、20℃と0℃とで求めた。
【0978】
また、以下の表43では、実施例116から実施例119、及び比較例108及び比較例109の、イオン伝導度を示す。
【0979】
【表43】
【0980】
上記の表43に示すように、実施例116から実施例119、及び比較例108及び比較例109の初期イオン伝導度は、20℃から0℃に温度変化しても、変化量は大差なく、実施例及び比較例ともに、0℃でのイオン伝導度が約14mS/cm以上であることがわかった。
【0981】
一方、85℃での4時間保存試験後におけるイオン伝導度では、実施例116から実施例119と、比較例108及び比較例109との間に、大きな差が見られた。すなわち、実施例では、85℃での4時間保存試験後における0℃のイオン伝導度は、10mS/cm以上であった。一方、比較例では、85℃での4時間保存試験後における0℃のイオン伝導度は、10mS/cmを下回った。実施例では、85℃での4時間保存試験後における0℃のイオン伝導度を、好ましくは、12mS/cm以上、より好ましくは、13mS/cm以上、更に好ましくは、13.5mS/cm以上とすることができる。
【0982】
表42に示すように、実施例116から実施例119に示す非水系電解液は、アセトニトリルと、リチウム塩と、環状酸無水物とを含有し、かつ、50℃以下の熱履歴で生成されている。
【0983】
また、実施例及び比較例の実験結果に基づいて、アセトニトリルと環状酸無水物を入れてからLiPF
6を投入して得られる電解液を用いることが好ましいとした。LiPF
6投入時の急激な温度上昇を抑えられると共に、環状酸無水物が犠牲的に反応することで、内部抵抗の増加要因となるHFの発生を抑制することができる。
【0984】
また、実施例116から実施例119の実験結果に基づいて、LiPF
6投入時の温度上昇を、50℃以下に抑えることが好ましいとした。これにより、60℃以上で生じるLiPF
6の熱分解を抑えることができる。
【0985】
次に、第39実施形態の実施例について以下説明する。
【0986】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表44に示した。なお、表44において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「MBTA」は、1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、「SAH」は無水コハク酸をそれぞれ示す。
【0987】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【0988】
表44に示す正極活物質、負極活物質及び、電解液を用いた非水系二次電池を作製した。
【0989】
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:4.3:4.3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約180g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.80g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【0990】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が14mm×20mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【0991】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:2.2:5.4の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約110.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.5g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【0992】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が15mm×21mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【0993】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が7.5mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【0994】
【表44】
【0995】
[単層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、下記の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。
【0996】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で2.5Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【0997】
[単層ラミネート電池の4.2Vサイクル試験]
電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する7.5mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、7.5mAの定電流で2.7Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量を容量維持率とした。
【0998】
[単層ラミネート電池の4.3Vサイクル試験]
電池の周囲温度を25℃に設定し、1Cに相当する7.5mAの定電流で充電して4.3Vに到達した後、7.5mAの定電流で2.7Vまで放電した。充電と放電とを各々1回ずつ行うこの工程を1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量を容量維持率とした。その実験結果が、表45に示されている。
【0999】
【表45】
【1000】
実施例では、100サイクル目の容量維持率が70%以上であり、高い容量維持率を維持することがわかった。
【1001】
本実施例及び比較例の実験結果に基づいて、上記正極活物質のNiの元素含有比は50%より多いことが好ましい。4.3V充電を伴うサイクル試験において、100サイクル後の容量維持率を効果的に75%以上とすることができる。
【1002】
また、実施例120から実施例122により、正極活物質にハイニッケル正極を用いた非水系二次電池において、充電電圧が4.3V以上とすることによって単位体積あたりの設計容量を、150Ah/L以上とすることができる。
【1003】
次に、第40実施形態の実施例について以下説明する。
【1004】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表46に示した。なお、表46において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸をそれぞれ示す。
【1005】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。表46に示す正極活物質、負極活物質、セパレータ及び、電解液を用いた非水系二次電池を作製した。
【1006】
【表46】
【1007】
実験では、注液してから1時間後の電池電圧を測定した。その実験結果が、以下の表47に示されている。
【1008】
【表47】
【1009】
表47に示されるように、実施例では、いずれも、非水系電解液の注液前後における負極電位差が、0.3V以上であった。
【1010】
また、実験により、負極電極において、標準電極電位が0V以上の金属を少なくとも1種以上含有していることが好ましいとした。既存のカーボネート電解液を用いた非水系二次電池の負極は、注液後に3.1V vs.Li/Li
+近い電位を持っているため、長時間保存することで標準電極電位が高い金属元素の溶出が徐々に進行する。一方で、アセトニトリルを用いた電解液は、注液後に長時間保存しても溶出が起きないため、含侵時間を含めた製造管理の期限を長くとることができる。
【1011】
また、実施例123から実施例126の実験結果に基づいて、負極集電体が銅であることが好ましいとした。充放電の履歴を与えずに銅の溶出を抑制できる。
【1012】
次に、第41実施形態の実施例について以下説明する。
【1013】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表48に示した。なお、表48において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiBOB」はリチウムビスオキサレートボレート、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【1014】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【1015】
【表48】
【1016】
〔電池作製〕
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:3.5:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約95.0g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.74g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【1017】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×50mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【1018】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、バインダーであるカルボキシメチルセルロースと、同じくバインダーであるスチレンブタジエンラテックスとを、100:1.1:1.5の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約61.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.20g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【1019】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が32mm×52mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【1020】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が23mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【1021】
実験では、単層ラミネート電池について、25℃において、0.05Cの電流値で4.2Vになるまで定電流充電を行った後、4.2Vで1.5時間の定電圧充電を行った。そして、この充電後の単層ラミネート電池を60℃の恒温槽内で貯蔵した。200時間経過後、単層ラミネート電池を恒温槽から取り出して室温に戻した後に、各ラミネートセルのガス発生量と電圧を測定する手法により、単層ラミネート電池の4.2V貯蔵特性を評価した。ガス発生量は、超純水の入った容器に単層ラミネート電池を投入し、その前後での重量変化から単層ラミネート電池の体積を測定するというアルキメデス法を用いた。重量変化から体積を測定する装置としてはアルファーミラージュ社製の比重計MDS−300を用いた。
【1022】
【表49】
【1023】
表49に示すように、実施例では、60℃での200時間貯蔵試験におけるガス発生量が、1mAhあたり0.008ml以下であることがわかった。好ましくは、ガス発生量が、1mAhあたり0.007ml以下である。
【1024】
本実施例では、アセトニトリルと酢酸および環状酸無水物を含有する。また、LiPF
6配合時は、50℃以下になるように設定することが好ましい。酢酸及び環状酸無水物が耐還元性に作用して、アセトニトリルが還元分解してガスが発生することを抑制することができる。
【1025】
また、本実施例では、アセトニトリルと酢酸および環状酸無水物を含有するパウチ型の非水系二次電池に適用することができる。酢酸及び環状酸無水物により負極の表面にSEIが形成されて、高温においてアセトニトリルの還元が促進されることが抑制することができる。
【1026】
また、実施例127から実施例129の実験結果に基づいて、酢酸の含有量を、非水系電解液に対し0.1ppm以上5ppm以下とすることが好ましい。60℃での200時間貯蔵試験におけるガス発生量を、より効果的に、1mAhあたり0.008ml以下とすることができる。
【1027】
次に、第42実施形態の実施例について以下説明する。
【1028】
[電解液の調製]
各種溶媒及び添加剤を所定の体積比になるように混ぜることで電解液を調製した。実施例及び比較例で用いた各電解液の組成は表50に示した。なお、表50において「AcN」はアセトニトリル、「DEC」はジエチルカーボネート、「EMC」はエチルメチルカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EC」はエチレンカーボネート、「VC」はビニレンカーボネート、「LiPF
6」はヘキサフルオロリン酸リチウム、「LiN(SO
2F)
2」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、「LiN(SO
2CF
3)
2」はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、「SAH」は無水コハク酸、「MAH」は無水マレイン酸、「PAH」は無水フタル酸をそれぞれ示す。
【1029】
リチウム塩及び添加剤を除く各成分は非水系溶媒であり、各非水系溶媒を合わせて1Lとなるように調製した。リチウム塩含有量は、非水系溶媒1Lに対するモル量である。
【1030】
【表50】
【1031】
〔電池作製〕
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの複合酸化物(LiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2)と、導電助剤としてアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、100:3.5:3の質量比で混合し、正極合剤を得た。得られた正極合剤に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを投入して更に混合して、正極合剤含有スラリーを調製した。正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔片面に、この正極合剤含有スラリーを、目付量が約95.0g/m
2になるように調節しながら塗布した。正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで正極活物質層の密度が2.74g/cm
3になるように圧延することにより、正極活物質層と正極集電体とからなる正極を得た。
【1032】
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×50mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように切断した。そして、アルミニウム箔の露出部に電流を取り出すためのアルミニウム製のリード片を溶接し、120℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き正極を得た。
【1033】
〔負極の作製〕
負極活物質である黒鉛と、バインダーであるカルボキシメチルセルロースと、同じくバインダーであるスチレンブタジエンラテックスとを、100:1.1:1.5の質量比で混合し、負極合剤を得た。得られた負極合剤に適量の水を添加した後に十分に混合して、負極合剤含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚みが10μmの銅箔の片面に、目付量が約61.0g/m
2になるように調節しながら一定厚みで塗布した。負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布領域を形成した。その後、ロールプレスで負極活物質層の密度が1.20g/cm
3になるように圧延することにより、負極活物質層と負極集電体とからなる負極を得た。
【1034】
次に、この負極を、負極合剤層の面積が32mm×52mmで、且つ銅箔の露出部を含むように切断した。そして、銅箔の露出部に電流を取り出すためのニッケル製のリード片を溶接し、80℃で12時間真空乾燥を行うことにより、リード付き負極を得た。
【1035】
〔単層ラミネート電池の組み立て〕
リード付き正極とリード付き負極とを、各極の合剤塗布面が対向するようにポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚み21μm)を介して重ね合わせて積層電極体とした。この積層電極体を、90mm×80mmのアルミニウムラミネートシート外装体内に収容し、水分を除去するために80℃で5時間真空乾燥を行った。続いて、上記した各電解液を外装体内に注入した後、外装体を封止することにより、単層ラミネート型(パウチ型)非水系二次電池(以下、単に「単層ラミネート電池」ともいう。)を作製した。この単層ラミネート電池は、設計容量値が23mAh、定格電圧値が4.2Vのものである。
【1036】
[単層ラミネート電池の評価]
上述のようにして得られた評価用電池について、まず、下記(1−1)の手順に従って初回充電処理を行った。次に(1−2)(1−3)の手順に従ってそれぞれの電池を評価した。なお、充放電はアスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製の恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
【1037】
ここで、1Cとは満充電状態の電池を定電流で放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。4.2Vの満充電状態から定電流で3.0Vまで放電して1時間で放電終了となることが期待される電流値を意味する。
【1038】
(1−1)単層ラミネート電池の初回充放電処理
電池の周囲温度を25℃に設定し、0.1Cに相当する2.3mAの定電流で充電して4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計1.5時間充電を行った。その後、0.3Cに相当する6.9mAの定電流で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を充電容量で割ることによって、初回効率を算出した。
【1039】
(1−2)単層ラミネート電池の60℃満充電保存試験
実験では、単層ラミネート電池について、25℃において、0.05Cの電流値で4.2Vになるまで定電流充電を行った後、4.2Vで1.5時間の定電圧充電を行った。そして、この充電後の単層ラミネート電池を60℃の恒温槽内で貯蔵した。720時間経過後、単層ラミネート電池を恒温槽から取り出して室温に戻した。
【1040】
(1−3)交流インピーダンス測定
交流インピーダンス測定は、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1400(商品名)とソーラトロン社製ポテンショ−ガルバノスタット1470E(商品名)を用いた。1000kHz〜0.01Hzに周波数を変えつつ交流信号を付与し、電圧・電流の応答信号からインピーダンスを測定し、1kHzにおける交流インピーダンス値を求め抵抗値とした。印可する交流電圧の振幅は±5mVとした。また、交流インピーダンスを測定する際の電池の周囲温度は25℃とした。また、これらの結果から下記の値を算出した。
抵抗増加率=(60℃満充電保存試験後の抵抗値/60℃満充電保存試験前の抵抗値)×100[%]
【1041】
測定する非水系二次電池としては、上記(1−2)に記載の方法によって60℃満充電保存試験を行う前、60℃満充電保存試験を行った後の積層ラミネート電池を用いた。
【1042】
実験では、60℃で720時間、貯蔵した前後の交流インピーダンス測定を行った。その実験結果が以下の表51に示されている。
【1043】
【表51】
【1044】
表51に示すように、実施例では、60℃での720時間満充電保存試験における抵抗増加率が400%以下であることがわかった。好ましくは、抵抗増加率が350%以下、より好ましくは、抵抗増加率が300%以下、更に好ましくは、抵抗増加率が250%以下である。
【1045】
また、実施例及び比較例の実験結果に基づいて、LiPF
6≦イミド塩となるモル濃度でイミド塩を含有することで、低温でのイオン伝導率の減少を抑制でき、優れた低温特性が得られることがわかった。
【1046】
また、実施例130から実施例132の実験結果に基づいて、アセトニトリルと無水コハク酸、無水マレイン酸、及び無水フタル酸のうち少なくとも1種を含有する電解液を用いることが好ましいとした。これにより、高温加熱時における内部抵抗の増大の抑制と、良好な低温特性とを両立することができる。したがって、アセトニトリルを含有する非水系二次電池を用いた寒冷地対応蓄電池に適している。
【1047】
第43実施形態の具体的構成の一例について以下説明する。
図3は、第43実施形態のセルパックの概要説明図である。
【1048】
図3(a)の本実施例に係るセルパック(並列無し)の符号1は、非水系二次電池(LIB)、符号2は、電圧監視回路(BMS)、符号3aは、セルパック(並列無し)である。このセルパック3aは、充放電の繰り返しが可能なものであり、複数個のセルパック3aが並列接続されていてもよい。
【1049】
詳しくは、
図3(a)に示すように、このセルパック3aは、4セル直列接続された非水系二次電池(LIB)1と、これら複数の非水系二次電池1毎の端子電圧を個別に監視する電圧監視回路(BMS)2とを有している。
【1050】
図3(b)の本実施例に係るセルパック(並列有り)の符号1は、非水系二次電池(LIB)、符号2は、電圧監視回路(BMS)、符号3bは、セルパック(並列有り)である。このセルパック3bは、充放電の繰り返しが可能なものであり、複数個のセルパック3bが並列接続されていてもよい。
【1051】
詳しくは、
図3(b)に示すように、このセルパック3bは、複数セル並列接続された非水系二次電池(LIB)1が4直列と、これら複数の非水系二次電池1毎の端子電圧を個別に監視する電圧監視回路(BMS)2とを有している。
【1052】
ここで、
図3(a)及び
図3(b)において、集電体の片面又は両面に、正極活物質層を有する正極と、集電体の片面又は両面に、負極活物質層を有する負極と非水系電解液と、を具備することを特徴とする非水系二次電池(LIB)1において、正極活物質層にFeが含まれるリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を含有し、前記負極活物質層に黒鉛、またはTi、V、Sn、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、Bからなる群からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有すると、1セルあたりの作動電圧範囲が1.8V−3.7Vの範囲内となり、且つ平均作動電圧が2.5V−3.5Vとなり、12V級セルパックが構成される。これにより、既存12V鉛蓄電池の代用が可能となる。電装系の仕様は鉛蓄電池の作動電圧範囲を基準に定められているため、1セルあたりの作動電圧範囲を定めることは極めて重要である。そのため、電圧を適正に管理するためのBMS2を搭載している。
【1053】
アセトニトリルを主溶媒とした電解液をリチウムイオン電池として用いる場合、黒鉛負極電位では還元分解が進行するため、0.4V(vs.Li/Li
+)以上で吸蔵可能な負極が用いられてきたが、エチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートを含む電解液と、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4:LFP)正極/黒鉛負極を用いることによって、高温時のサイクル寿命を向上させた12V級セルパックを得ることができる。この12V級セルパックは幅広い温度領域で高入出力特性を有する。
【1054】
第44実施形態の具体的構成の一例について以下説明する。
図4は、本発明に係るハイブリッドシステムの概要説明図である。ここで、符号1は、非水系二次電池(LIB)、符号2は、電圧監視回路(BMS)、符号4aは、キャパシタ(LIB以外の二次電池)、符号5は、小型ハイブリッドシステムである。この小型ハイブリッドシステム5は、充放電の繰り返しが可能なものである。
【1055】
詳しくは、
図4に示すように、この小型ハイブリッドシステム5は、4セル直列接続された非水系二次電池(LIB)1と、これら複数の非水系二次電池1毎の端子電圧を個別に監視する電圧監視回路(BMS)2とを有している。そして、これに並列接続されたキャパシタ4a(LIB以外の二次電池)とから構成されている。キャパシタは電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタが好適である。
【1056】
ここで、集電体の片面又は両面に、正極活物質層を有する正極と、集電体の片面又は両面に、負極活物質層を有する負極と非水系電解液と、を具備することを特徴とする非水系二次電池(LIB)1において、正極活物質層にFeが含まれるリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を含有し、前記負極活物質層に黒鉛、またはTi、V、Sn、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、Bからなる群からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有すると、1セルあたりの作動電圧範囲が1.8V−3.7Vの範囲内となり、且つ平均作動電圧が2.5V−3.5Vとなり、12V級ハイブリッドシステムが構成される。これにより、既存12V鉛蓄電池の代用が可能となる。電装系の仕様は鉛蓄電池の作動電圧範囲を基準に定められているため、1セルあたりの作動電圧範囲を定めることは極めて重要である。そのため、電圧を適正に管理するためのBMSを搭載している。
【1057】
アセトニトリルを主溶媒とした電解液をリチウムイオン電池として用いる場合、黒鉛負極電位では還元分解が進行するため、0.4V(vs.Li/Li
+)以上で吸蔵可能な負極が用いられてきたが、エチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートを含む電解液と、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4:LFP)正極/黒鉛負極を用いることによって、高温時のサイクル寿命を向上させた12V級ハイブリッドシステムを得ることができる。この12V級ハイブリッドシステムは幅広い温度領域で高入出力特性を有する。
【1058】
第44実施形態では、第43実施形態に記載のLIBモジュールと、鉛蓄電池以外の二次電池とを併用で組み合わせたハイブリッドシステムであることが特に好ましい。ここで、モジュールとはセルを複数個接続したものであり、セルパックはモジュールを複数個接続したものであるが、セルパックはモジュールを包含する用語である。従来のLIBは電解液に有機溶媒を使っていることにより、低温では電解液の粘度が増加し、内部抵抗が大きく上昇する。その結果、LIBは、鉛蓄電池に比べて低温での出力が低下する。一方で、鉛蓄電池は、25℃での出力は低く、−10℃での出力は優れる。
【1059】
そこで、第44実施形態では、第43実施形態に記載のLIBモジュールを鉛蓄電池以外の二次電池と並列接続して12Vの車輌用電源システムを構成し、車輌減速等の制動による充電時に、大電流を受入可能な第43実施形態に記載のLIBモジュールで補う。これにより、自動車等の走行車輌の制動時におけるエネルギーを、回生エネルギーとして効率よく利用することができる。
【1060】
また、第44実施形態では、LIBは正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、負極活物質は黒鉛を用い、電解液は20℃におけるイオン伝導度が18mS/cm以上であることが好ましい。リン酸鉄リチウムは、NCMやLCOと比較して電子伝導性が低いため、充放電に課題が見られる。そのため、LIB以外の二次電池と併用した際のメリットが低下しやすい。そこで、イオン伝導度の高い電解液を用いることで、大電流の充放電を低温から常温まで幅広くカバーすることができ、寿命を長くすることが可能になる。
【1061】
第45実施形態の具体的構成の一例について以下説明する。
図5は、第45実施形態に係るセルパックの概要説明図である。ここで、符号1は、非水系二次電池(LIB)、符号2は、電圧監視回路(BMS)、符号6は、モジュール、符号7は、セルパックである。このセルパック7は、充放電の繰り返しが可能なものであり、複数個のセルパック7が並列接続されていてもよい。
【1062】
また、このセルパック7は、以下の式(2)に基づいて、前記非水系二次電池(LIB)1のセル数を規定したセルパックを1個、或いは2個以上並列接続して構成されたモジュール6が、式(3)に基づいて直列接続されて構成している。なお、非水系二次電池1は各々2セル以上並列接続されていてもよい。
式(2)
1モジュールあたりのセル直列接続数X:X=2,4,8、16
式(3)
セルパックあたりのモジュール直列接続数Y:Y=16/X
【1063】
そして、接続された非水系二次電池(LIB)1と、これら複数の非水系二次電池1毎の端子電圧を個別に監視する電圧監視回路(BMS)2とを有している。
【1064】
ここで、集電体の片面又は両面に、正極活物質層を有する正極と、集電体の片面又は両面に、負極活物質層を有する負極と非水系電解液と、を具備することを特徴とする非水系二次電池(LIB)1において、正極活物質層にFeが含まれるリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を含有し、前記負極活物質層に黒鉛、またはTi、V、Sn、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、Bからなる群からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有すると、1セルあたりの作動電圧範囲が1.8V−3.7Vの範囲内となり、且つ平均作動電圧が2.5V−3.5Vとなり、48V級セルパックが構成される。
【1065】
アセトニトリルを主溶媒とした電解液をリチウムイオン電池として用いる場合、黒鉛負極電位では還元分解が進行するため、0.4V(vs.Li/Li
+)以上で吸蔵可能な負極が用いられてきたが、エチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートを含む電解液と、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4:LFP)正極/黒鉛負極を用いることによって、高温時のサイクル寿命を向上させた48V級セルパックを得ることができる。この48V級セルパックは幅広い温度領域で高入出力特性を有する。
【1066】
第46実施形態の具体的構成の一例について以下説明する。
図6は、第46実施形態に係るハイブリッドシステムの概要説明図である。ここで、符号1は、非水系二次電池(LIB)、符号2は、電圧監視回路(BMS)、符号4bは、鉛蓄電池(LIB以外の二次電池)、符号6は、モジュール、符号7は、セルパック、符号8は、大型ハイブリッドシステムである。この大型ハイブリッドシステム8は、充放電の繰り返しが可能なものである。また、このセルパック7は、複数個のセルパック7が並列接続されていてもよい。
また、このセルパック7は、以下の式(2)に基づいて、前記非水系二次電池(LIB)1のセル数を規定したセルパックを1個、或いは2個以上並列接続して構成されたモジュール6が、式(3)に基づいて直列接続されて構成している。なお、非水系二次電池1は各々2セル以上並列接続されていてもよい。
式(2)
1モジュールあたりのセル直列接続数X:X=2,4,8、16
式(3)
セルパックあたりのモジュール直列接続数Y:Y=16/X
【1067】
そして、接続された非水系二次電池(LIB)1と、これら複数の非水系二次電池1毎の端子電圧を個別に監視する電圧監視回路(BMS)2とを有している。
【1068】
この大型ハイブリッドシステム8は、セルパック7にDC/DCコンバーターを介して接続された鉛蓄電池4b(LIB以外の二次電池)とから構成されている。
【1069】
また、第46実施形態では、LIBは、正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、負極活物質は、黒鉛を用い、電解液は、20℃におけるイオン伝導度が15mS/cm以上であることが好ましい。リン酸鉄リチウムは、NCMやLCOと比較して電子伝導性が低いため、充放電に課題が見られ、鉛蓄電池と併用した際のメリットが低下する。そこで、イオン伝導度の高い電解液を用いることで、鉛蓄電池の常温付近での大電流の充放電をカバーでき、電池交換までの寿命を長くすることができる。
【1070】
ここで、集電体の片面又は両面に、正極活物質層を有する正極と、集電体の片面又は両面に、負極活物質層を有する負極と非水系電解液と、を具備することを特徴とする非水系二次電池(LIB)1において、正極活物質層にFeが含まれるリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を含有し、前記負極活物質層に黒鉛、またはTi、V、Sn、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、Bからなる群からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有すると、1セルあたりの作動電圧範囲が1.8V−3.7Vとなり、且つ平均作動電圧が2.5V−3.5Vとなり、48V級ハイブリッドシステムが構成される。これにより、既存12V鉛蓄電池との併用が容易になる。電装系の仕様は鉛蓄電池の作動電圧範囲を基準に定められているため、1セルあたりの作動電圧範囲を定めることは極めて重要である。そのため、電圧を適正に管理するためのBMS2を搭載している。
【1071】
アセトニトリルを主溶媒とした電解液をリチウムイオン電池として用いる場合、黒鉛負極電位では還元分解が進行するため、0.4V(vs.Li/Li
+)以上で吸蔵可能な負極が用いられてきたが、エチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートを含む電解液と、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4:LFP)正極/黒鉛負極を用いることによって、高温時のサイクル寿命を向上させた48V級ハイブリッドシステムを得ることができる。この48V級ハイブリッドシステムは幅広い温度領域で高入出力特性を有する。
【1072】
本発明の非水系二次電池は、特に限定するものではないが、例えば、携帯電話機、携帯オーディオ機器、パーソナルコンピュータ、IC(Integrated Circuit)タグ等の携帯機器;ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等の自動車用充電池;住宅用蓄電システム、IT機器等 に適用することができる。例えば、パウチ型セル構造の非水系二次電池に好ましく適用できる。また、車載用充電池に適用した際、従来よりも安全性を向上させることが可能である。
【1073】
また、本発明の非水系二次電池は、寒冷地用の用途や、夏場の屋外用途等にも適用することができる。
【1074】
本出願は、2017年3月17日出願の特願2017−052257、特願2017−052086、特願2017−052398、特願2017−052256、特願2017−052254、特願2017−052396、特願2017−052258、特願2017−052085、特願2017−052088、特願2017−052397、特願2017−052399、特願2017−052259、特願2017−052260、特願2017−052400、特願2017−052255に基づく。この内容は全てここに含めておく。