(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のエチレン系ポリマー組成物は、結晶化溶出分別(CEF)によって測定されたコモノマー分布において、可溶性画分を除いて少なくとも2つの局所ピークを示す、請求項1に記載のフィルム。
前記A層は、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸エチル、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載のフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
相反する記載がなく、文脈から暗示されておらず、または当該技術分野において慣例的でない限り、全ての部および百分率は、重量を基準にするものであり、全ての温度は℃であり、全ての試験方法は、本開示の出願日の時点において最新のものである。
【0009】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0010】
「ポリマー」は、同じ種類かまたは異なる種類かにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および本明細書において以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれていることがある。ポリマーは、単一ポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマー混合物であってもよい。
【0011】
本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、このインターポリマーという総称は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」という用語は、過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレンまたはプロピレン(ポリマーの重量を基準にして)を重合された形態で含むポリマーを指し、任意に1つ以上のコモノマーを含んでもよい。例えば、「エチレン系ポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、重合形態で、ポリマーの重量を基準として、過半量のエチレンモノマーを含み、かつ任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0013】
「ポリプロピレン」は、プロピレンモノマーから誘導された50重量%よりも大きい単位を有するポリマーを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態において、過半量のエチレンモノマー(インターポリマーの重量を基準にして)、およびα−オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α−オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態において、2種類のみのモノマーとして、過半量のエチレンモノマー(コポリマーの重量を基準にして)、およびα−オレフィンを含むコポリマーを指す。
【0016】
用語「〜を含む(comprising)」、「〜を含む(including)」、「〜を有する(having)」、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑いも避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を介して特許請求される全ての組成物は、矛盾する記述がない限り、ポリマー性か、または別のものであるかにかかわらず、いかなる追加の添加剤、アジュバント、または組成物をも含んでよい。対照的に、「本質的に〜から成る」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の記載の範囲から、任意の他の構成要素、ステップ、または手順を除外する。「から成る」という用語は、具体的に規定または列挙されていない任意の構成要素、ステップ、または手順を除外する。
【0017】
「ポリエチレン」は、エチレンモノマーから誘導された、50重量%を超える単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、概して当該技術分野において既知であるが、以下の説明は、これらの異なるポリエチレン樹脂の違いを理解するのに役立ち得る。
【0018】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブもしくは管状反応器中で、部分的もしくは完全に、ホモ重合または共重合することを意味するように定義される。典型的には、LDPE樹脂は、0.916〜0.940g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0019】
用語「LLDPE」は、従来型のチーグラーナッタ触媒系、ならびにビス−メタロセン(「m−LLDPE」と称されることもある)、ポストメタロセン触媒、および拘束幾何触媒などの、シングルサイト触媒を用いて製造された樹脂を含み、線状、実質的に線状、または不均一なポリエチレンコポリマー、またはホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEほど長くない鎖分枝を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー;米国特許第3,645,992号などの均質分枝鎖状直鎖状エチレンポリマー組成物;米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたものなどの不均質分枝鎖状エチレンポリマー;ならびに/またはそれらのブレンド(US3,914,342もしくはUS5,854,045に開示されるものなど)を含む。LLDPEは、当業者に既知の任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、ガス相、液相またはスラリー重合、またはそれらの組み合わせを介して作成され得るが、その中でもガスおよびスラリー相反応器が最も好ましい。
【0020】
「MDPE」という用語は、0.926〜0.940g/cm
3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、クロムまたはチーグラーナッタ触媒を使用して、またはメタロセン、拘束幾何形状、もしくはシングルサイト触媒を用いて典型的に作成され、2.5を超える分子量分布(「MWD」)を典型的に有する。
【0021】
「HDPE」という用語は、約0.940g/cm
3超の密度を有するポリエチレンを指し、概して、チーグラーナッタ触媒、クロム触媒、ポストメタロセン触媒、または拘束幾何触媒で調製される。
【0022】
「ULDPE」という用語は、一般に、チーグラーナッタ触媒、クロム触媒、またはビス−メタロセン触媒および拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒で調製される、0.880〜0.912g/cm
3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0023】
特定のポリマーは、「シングルサイト触媒」の存在下で調製されるか、または「シングルサイト触媒」として調製されることを特徴としている。高効率シングルサイト触媒(SSC)の3つの主要なファミリーが、ポリエチレンコポリマーの調製に商業的に使用されてきた。これらは、ビス−シクロペンタジエニルシングルサイトメタロセン触媒(Kaminsky触媒としても既知)、ハーフサンドイッチ、拘束幾何モノ−シクロペンタジエニルシングルサイト触媒(The Dow Chemical CompanyによるINSITE(商標)技術の商標で拘束幾何型触媒(CGC)としても既知)およびポストメタロセン触媒である。シングルサイト触媒の存在下で調製されるかまたはシングルサイト触媒として調製されることを特徴とするポリマーは、1つ以上のそのような触媒の存在下で調製されると理解すべきである。
【0024】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で知られている任意の他の方法から決定される、1つ以上のドメイン構成を含んでも、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層がブレンドを含んでもよい。
【0025】
「接着状態」という用語、および同類の用語は、1つの層の1つの表面と別の層の1つの表面とが接触し相互に結合しており、それによって双方の層に接着接触している表面を損傷せずに1つの層を他の層から取り除くことができないことを意味する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、上部表面および下部表面を有し、かつ第1のエチレン系ポリマー組成物を含むシーラント層であるA層であって、第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.900g/cm
3の密度、20〜60kg/molのI
HDF>95、および130kg/molよりも大きいMW
HDF>95を有し、A層は、A層の重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの第1のエチレン系ポリマー組成物を含む、A層と、上部表面および下部表面を有するB層であって、B層は、1つ以上の追加のポリエチレンを含み、B層の上部表面は、A層の下部表面に接着接触しており、第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、B層の密度よりも少なくとも0.002g/cm
3小さい、B層と、を含む、二軸配向多層ポリエチレンフィルムを提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、A層は、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸エチル、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、A層は、少なくとも1ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、A層は、少なくとも3ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、A層は、少なくとも5ミクロンの厚さを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、B層は、0.925g/cm
3よりも大きい密度および2g/10分よりも小さいI
2を有する、20〜50重量%の第1の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーと、0.925g/cm
3よりも小さい密度および2g/10分よりも大きいI
2を有する、80〜50重量%の第2の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーと、を含む、第2のエチレン系ポリマー組成物を含み、第2のエチレン系ポリマー組成物は、0.5〜10g/10分のI
2および0.910〜0.940g/cm
3の密度を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、フィルムは、上部表面を有する第3の層(C層)をさらに含み、C層は、ポリエチレンを含み、C層の上部表面は、B層の下部表面に接着接触しており、第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、C層の平均密度よりも少なくとも0.002g/cm
3小さい。
【0031】
いくつかの実施形態では、フィルムは、125℃以下のヒートシール開始温度を有する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態は、物品に関し、ここで物品は、本明細書にて開示された二軸配向多層ポリエチレンフィルムのいずれかを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、積層体に関する。いくつかの実施形態では、積層体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、またはポリアミドを含む第1のフィルムと、本明細書にて開示された実施形態のいずれかによる二軸配向多層ポリエチレンフィルムとを含み、第1のフィルムは、多層ポリエチレンフィルムに積層されている。いくつかの実施形態では、第1のフィルムは、ドライラミネーション、無溶媒型ラミネーション、または押出しラミネーションによって多層ポリエチレンフィルムへと積層することができる。本発明のいくつかの実施形態は、本明細書にて開示された積層体のいずれかから形成される物品に関する。
【0034】
シーラント層
本発明の二軸配向多層フィルムは、シーラント層である第1の層(A層)を含む。
【0035】
一実施形態では、A層は、第1のエチレン系ポリマー組成物を含み、第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.900g/cm
3の密度、20〜60kg/molのI
HDF>95、および130kg/molよりも大きいMW
HDF>95を有し、A層は、A層の重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの第1のエチレン系ポリマー組成物を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、試験方法のセクションに記載のCEF測定方法を用いて決定されるように、結晶化溶出分別(CEF)によって測定されたコモノマー分布において、可溶性画分を除いて少なくとも2つの局所ピークを示す。局所ピークは、本明細書では極大値として定義される。極大値は、極小値で区切られる。Cは、(CEF測定方法において定義されるように)CEF分析における溶出温度Tでのポリマー画分の重量分率である。極大値において、ポリマー画分の重量分率(C)は、それを直接取り囲むデータポイントに対して最も高い値である。極大値におけるポリマー画分の重量分率(C)は、最も近い極小値における値よりも少なくとも10%高い。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.900g/cm
3の密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.905g/cm
3の密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.908g/cm
3の密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.910g/cm
3の密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、0.900〜0.925g/cm
3の密度を有する。0.900g/cm
3〜0.925g/cm
3の全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、0.900、0.903、0.905、0.908、0.910、0.912、0.915、0.918、または0.920g/cm
3の下限〜0.920、0.922、または0.925g/cm
3の上限であり得る。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、0.905〜0.920g/cm
3の密度を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物のメルトインデックス(I
2)は、0.1g/10分〜10g/10分である。0.1g/10分〜10g/10分の全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書にて開示される。例えば、第1のエチレン系ポリマー組成物は、0.1、0.5、または1.0g/10分の下限〜5、7、または10g/10分の上限までのメルトインデックスを有し得る。
【0039】
第1のエチレン系ポリマー組成物は、高密度画分指数(I
HDF>95)および高密度画分の分子量(MW
HDF>95)によって特徴付けることができ、これらはそれぞれ以下に記載されるように測定することができる。以下により詳細に記載されるように、第1のエチレン系ポリマー組成物の高密度画分は、結晶化溶出分別(CEF)において95.0℃より高い溶出温度を有する画分である。特定の理論に拘束されることを望まないが、少なくともB層の平均密度より低い密度を有する第1のエチレン系ポリマー組成物と組み合わされたこれらの特性は、二軸配向後のフィルムのシール特性を改善すると考えられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、20〜60kg/molのI
HDF>95有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、25〜55kg/molのI
HDFを有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、30〜50kg/molのI
HDFを有する。
【0041】
第1のエチレン系ポリマー組成物の高密度画分の分子量に関して、いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、130kg/molよりも大きいMW
HDF>95を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、最大400kg/molのMW
HDF>95を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、130kg/mol〜400kg/molのMW
HDF>95を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、20〜60kg/molのI
HDF>95および130kg/molよりも大きいMW
HDF>95を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、25〜55kg/molのI
HDF>95および130〜400kg/molのMW
HDF>95を有する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、30〜50kg/molのI
HDF>95および130〜400kg/molのMW
HDF>95を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、A層の重量を基準にして、A層の少なくとも50重量パーセントを構成する。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、少なくとも60重量パーセントの第1のエチレン系ポリマー組成物を含む。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、A層の重量を基準にして、A層の少なくとも70重量パーセントを構成する。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、A層の重量を基準にして、A層の少なくとも80重量パーセントを構成する。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、少なくとも90重量パーセントの第1のエチレン系ポリマー組成物を含む。いくつかの実施形態では、第1のエチレン系ポリマー組成物は、A層の重量を基準にして、A層の少なくとも95重量パーセントを構成する。
【0044】
第1のエチレン系ポリマー組成物に加えて、いくつかの実施形態では、シーラント層(A層)は、少なくとも1つの追加のポリマーをさらに含むことができ、少なくとも1つの追加のポリマーは、シーラント層(A層)の50重量パーセント未満の量の超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸エチル、およびそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、40重量パーセント未満の任意の追加のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、重量パーセント未満の任意の追加のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、20重量パーセント未満の任意の追加のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、10重量パーセント未満の任意の追加のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、A層は、A層の重量を基準にして、5重量パーセント未満の任意の追加のポリマーを含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、A層は、少なくとも1ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、A層は、少なくとも3ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、A層は、少なくとも5ミクロンの厚さを有する。
【0046】
B層
本発明の二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、上部表面および下部表面を有する第2の層(B層)を含み、B層の上部表面は、シーラント層(A層)の下部表面に接着接触している。
【0047】
一般に、B層は、当業者に既知の任意のポリエチレンまたはポリエチレンブレンドから形成され得る。ポリエチレンは、それがB層とシーラント層との共押出を可能にし得るので、特に望ましくあり得る。このような実施形態では、B層は、本明細書の教示に基づいて多層フィルムにおける層としての使用に好適な当業者に既知の任意のポリエチレンを含み得る。例えば、B層において使用され得るポリエチレンは、いくつかの実施形態では、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高融解強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、強化ポリエチレン、およびそれらのブレンドを含むその他のものであり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、B層は、0.925g/cm
3よりも大きい密度および2g/10分よりも小さいI
2を有する、20〜50重量%の第1の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーと、0.925g/cm
3よりも小さい密度および2g/10分よりも大きいI
2を有する、80〜50重量%の第2の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーと、を含む、第2のエチレン系ポリマー組成物を含み、第2のポリエチレン組成物は、0.5〜10g/10分のI
2および0.910〜0.940g/cm
3の密度を有する。そのようなエチレン系ポリマー組成物の例は、PCT国際公開特許第WO2015/154253号に見出すことができる。
【0049】
B層は、シーラント層中に使用される第1のエチレン系ポリマー組成物(上記のA層に関して記載された第1のエチレン系ポリマー組成物)の密度よりも大きい密度を有する。特定の理論に拘束されることを望まないが、I
HDF>95およびMW
HDF>95値と組み合わされた低密度の第1のエチレン系ポリマー組成物は、二軸配向後のフィルムのシール性能を改善すると考えられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物は、B層の密度よりも少なくとも0.002g/cm
3小さい密度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、B層の密度よりも少なくとも0.005g/cm
3小さい。いくつかの実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、B層の密度よりも少なくとも0.010g/cm
3小さい。密度は、本明細書に記載のように測定される。
【0051】
他の層
本発明の二軸配向多層フィルムのいくつかの実施形態は、上記の層以外の層を含むことができる。3つ以上の層を含むこのような実施形態では、A層の上部表面は、依然としてフィルムの上部表面であるだろう。言い換えると、いずれの追加の層も、B層の下部表面、または別の中間層に接着接触しているであろう。
【0052】
いくつかの実施形態では、シーラント層(A層)中の第1のエチレン系ポリマー組成物は、50%超のフィルムの総厚を含む層(A層以外)の密度よりも少なくとも0.002g/cm
3小さい密度を有する。すなわち、フィルムがA層に加えて1層または5層を含むかどうかにかかわらず、このような実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物は、50%超のフィルムの総厚を作成する層の密度よりも少なくとも0.002g/cm
3小さい密度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント層(A層)中の第1のエチレン系ポリマー組成物は、50%超のフィルムの総厚を含む層(A層以外)の密度よりも少なくとも0.005g/cm
3小さい密度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント層(A層)中の第1のエチレン系ポリマー組成物は、50%超のフィルムの総厚を含む層(A層以外)の密度よりも少なくとも0.010g/cm
3小さい密度を、有する。
【0053】
例えば、いくつかの実施形態では、多層ポリエチレンフィルムは、上部表面および下部表面を有するC層をさらに含み、C層は、ポリエチレンを含み、C層の上部表面は、B層の下部表面に接着接触している。
【0054】
一般に、C層は、当業者に既知の任意のポリエチレンまたはポリエチレンブレンドから形成され得る。ポリエチレンは、それがC層とB層およびA層(シーラント層)との共押出を可能にし得るので、特に望ましくあり得る。例えば、C層において使用され得るポリエチレンは、いくつかの実施形態では、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高融解強度高密度ポリエチレン(HMS−HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、強化ポリエチレン、およびその他のものであり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、C層は、シーラント層に使用される第1のエチレン系ポリマー組成物(上記のA層に関して特徴付けられた第1のエチレン系ポリマー組成物)の密度よりも大きい密度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物は、C層の密度よりも少なくとも0.002g/cm
3小さい密度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、C層の密度よりも少なくとも0.005g/cm
3小さい。いくつかの実施形態では、シーラント層中の第1のエチレン系ポリマー組成物の密度は、C層の密度よりも少なくとも0.010g/cm
3小さい。密度は、本明細書に記載のように測定される。
【0056】
いくつかの実施形態では、C層および/または任意の追加の層は、B層と同じ組成物を有することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、多層フィルムは、さらに多くの層を含むことができる。いくつかの実施形態では、各層は、実質的にエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、二軸配向多層ポリエチレンフィルムの各層は、層の重量を基準にして、少なくとも95重量%のエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、二軸配向多層ポリエチレンフィルムの各層は、層の重量を基準にして、少なくとも98重量%のエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、二軸配向多層ポリエチレンフィルムの各層は、層の重量を基準にして、少なくとも99重量%のエチレン系ポリマーを含む。
【0058】
添加剤
前述の層のいずれかはさらに、当業者に既知の1つ以上の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、帯電防止剤、顔料または着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤および発泡剤などを含むことができると理解すべきである。
【0059】
本明細書にて開示された層の組み合わせを備える二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、例えば、層の数、フィルムの使用目的、および他の因子に応じて種々の厚さを有することができる。本発明の多層フィルムは、いくつかの実施形態では、15〜200ミクロン(典型的には、30〜100ミクロン)の厚さを有する。
【0060】
二軸配向多層フィルムの調製方法
多層フィルムは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して形成することができる。例えば、共押出され得る層の場合、このような層は、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して、吹込フィルムまたはキャストフィルムとして共押出され得る。特に、本明細書にて開示された異なるフィルム層の組成物に基づいて、吹込フィルム製造ラインおよびキャストフィルム製造ラインは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して、単一の押出ステップで本発明の多層フィルムを共押出するように構成することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、テンタフレーム逐次二軸配向プロセスを使用して二軸配向される。そのような技術は、一般に当業者に既知である。他の実施形態では、ポリエチレンフィルムは、二重気泡配向プロセスなどの、本明細書の教示に基づいて当業者に既知の他の技術を使用して二軸配向することができる。一般に、テンタフレーム逐次二軸配向プロセスでは、テンタフレームは、多層共押出ラインの一部として組み込まれる。フラットダイから押出された後、フィルムを冷却ロール上で冷却し、室温の水で満たした水浴に浸漬させる。次いで、キャストフィルムを異なる回転速度を有する一連のローラーに通して、機械方向に延伸する。製造ラインのMD延伸セグメントには数対のローラーがあり、それらは全て油加熱されている。一対のローラーは、予熱ローラー、延伸ローラー、および弛緩およびアニーリングのためのローラーとして順次動作する。各ローラー対の温度は、別々に制御される。機械方向に延伸後、フィルムウェブを加熱ゾーンを有するテンタフレーム熱風炉に通して、横断方向に延伸する。最初のいくつかのゾーンは予熱用で、続いて延伸用のゾーン、そして最後は、アニーリング用のゾーンである。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、2:1〜6:1の延伸比で、または別の方法では3:1〜5:1の延伸比で機械方向に配向され得る。いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、2:1〜9:1の延伸比で、または別の方法では3:1〜8:1の延伸比で横断方向に配向され得る。いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、2:1〜6:1の延伸比で、および別の方法では2:1〜9:1の延伸比で機械方向に配向される。
【0063】
いくつかの実施形態では、例えば、最終用途に応じて、二軸配向ポリエチレンフィルムは、当業者に既知の技術を使用してコロナ処理または印刷することができる。
【0064】
二軸配向後、本発明の多層ポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、ヒートシール強度およびヒートシール開始温度などの望ましいシール特性を有利に提供することができる。いくつかの実施形態では、本発明の二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、125℃以下のヒートシール開始温度を示す。いくつかの実施形態では、本発明の二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、110℃以下のヒートシール開始温度を示す。いくつかの実施形態では、本発明の二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、105℃以下のヒートシール開始温度を示す。いくつかの実施形態では、本発明の二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、100℃以下のヒートシール開始温度を示す。
【0065】
いくつかの実施形態では、望ましいシール特性に加えて、本発明の二軸配向多層ポリエチレンフィルムは、引張り強度、弾性率、および/または伸びなどの望ましい物理特性も示すことができる。
【0066】
積層体
本発明のいくつかの実施形態はまた、積層体に関する。いくつかのそのような実施形態では、積層体は、本明細書にて開示された実施形態のいずれかによる二軸配向多層ポリエチレンフィルムに積層された第1のフィルムを含む。第1のフィルムは、様々な実施形態では、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、またはポリアミドであり得る。
【0067】
そのような実施形態では、第1のフィルムの上部表面(例えば、非ポリエチレンフィルム)は、二軸配向多層ポリエチレンフィルムの非シーラント層の下部表面(例えば、多層フィルムが、A層がシーラント層であるA/B/C構成の3層を含む場合、C層の下部表面)へと積層される。
【0068】
第1のフィルムは、例えば、ドライラミネーション、無溶媒型ラミネーション、押出しラミネーション、および他の技術などの当業者に既知の技術を用いて二軸配向多層ポリエチレンフィルムへと積層することができる。
【0069】
物品
本発明の実施形態は、本明細書において記載されるようなフィルムを組み込んだ二軸配向多層ポリエチレンフィルムまたは積層体のいずれかから形成される物品も提供する。そのような物品の例としては、包装、可撓性包装、およびパウチが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本発明の包装は、液体、粉末、食品、または他の品目を含み得る。本発明の物品および包装は、本明細書中の教示を考慮して当業者に既知の技術を使用して、本明細書にて開示された多層フィルムまたは積層体から形成することができる。
【0070】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0071】
第1および第2のエチレン系ポリマー組成物
以下の実施例は、第1のエチレン系ポリマー組成物(第1のPE組成物)および以下のように調製された第2のエチレン系ポリマー組成物(第2のPE)を利用する。
【0072】
全ての原材料(モノマー、コモノマー、水素、溶媒、および触媒成分)は、高純度の乾燥(水および他の極性純度を除去)成分として供給されるか、あるいは反応環境への導入前にモレキュラーシーブを使用して精製および乾燥される。プロセス溶媒は、反応系において単一の溶液相を維持するのに好適な、狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン系溶媒であるIsopar−Eである。全ての反応器供給ストリームは、反応圧力以上に加圧され、そして反応器供給流を表1に特定された比率に維持するために必要に応じて流量計、制御弁、およびポンプのシステムを使用して流量制御される。反応器への供給ストリーム(溶媒、モノマー、コモノマー、および水素)は、単一の用液相を維持するために、供給ストリームを熱交換器に通過させることによって温度制御される。
【0073】
連続溶液重合反応器は、直列に構成され、第1の反応器の流出物は、第2の反応器に加えられる。各溶液重合反応器は、熱除去を伴う連続撹拌槽反応器(CSTR)と同様の液体充填非断熱式等温循環ループ反応器からなる。各重合反応器への新鮮な供給物は、各注入位置の間にほぼ等しい反応器容量で2つの位置で各反応器に注入される。触媒成分は、特別に設計された注入ストリンガーを通して各重合反応器に注入される。各反応器への一次触媒成分供給流は、反応器モノマー転化率を特定の目標に維持するように制御される。助触媒成分(単数または複数)は、計算された特定のモル比に基づいて、主触媒成分に供給される。
【0074】
第1の反応器触媒(触媒A)は、[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3a、8a−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−s−インダセン−1−イル]シランアミナト(2−)−κN][(1,2,3,4η)−1,3−ペンタジエン]−チタンである。第1の反応器助触媒1(触媒B)は、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。第1の反応器助触媒2(触媒C)は、変性メチルアルミノキサン(MMAO)である。第2の反応器触媒(触媒D)は、典型的な担持されたチーグラーナッタ型触媒であり、これは溶液法の高い重合温度で特に有用である。そのような組成物の例は、有機マグネシウム化合物、ハロゲン化アルキルもしくはハロゲン化アルミニウムもしくは塩化水素、および遷移金属化合物から誘導されるものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,612,300号、同第4,314,912号、および同第4,547,475号に記載されており、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。第2の反応器助触媒(触媒E)は、トリエチルアルミニウム(TEA)である。
【0075】
各反応器に任意の新しいストリームを導入した直後に、新しい供給ストリームを、静的混合エレメントを用いて循環重合反応器内容物と混合する。各反応器の内容物を反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に通して、および特定温度で等温反応環境を維持する役割を果たす冷却剤側の温度で連続的に循環させる。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって行われる。各反応器の具体的な条件は、表1に明記されている。
【0076】
第2の反応器の流出液は、活性触媒の添加および好適な試薬(典型的には水)との反応により反応が停止する域に入る。この同一の位置で、他の添加剤が添加されてもよい。触媒の不活性化および添加剤の添加に続いて、反応器流出液は、ポリマーが非ポリマーストリームから除去される蒸発液化システムに入る。単離されたポリマー溶融物は、追加のポリマー溶融物ストリームと混合することによってそれに添加された追加の添加剤を有することができ、その後最終の混ぜ合わされたポリマー溶融物は、ペレット化されそして集められる。非ポリマーストリームは、再使用のためにストリームを精製および調製する装置の種々の部分を通過する。大部分のリサイクルされた非ポリマーストリームは、精製システムを通過した後に反応器システムに戻される。少量の非ポリマーストリームは、プロセスからパージされる。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例で使用した他の樹脂、ならびに下記のLLDPEおよび第1のPE組成物の他の特性を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
LDPEは、The Dow Chemical Companyから市販されている低密度ポリエチレンであるDOW(商標)LDPE621Iである。強化PE1は、The Dow Chemical Companyから市販されている強化ポリエチレンであるELITE(商標)5220Gである。強化PE2は、The Dow Chemical Companyから市販されている強化ポリエチレンであるELITE(商標)5400Gである。強化PE3は、The Dow Chemical Companyから市販されている強化ポリエチレンであるELITE(商標)AT6401である。MW
HDF>95およびI
HDF>95値は、以下の試験方法のセクションに記載されるように決定される。
【0081】
実施例1
表3に示す構造を有する2層フィルム(A/B)をキャストフィルムラインを用いて製造する。キャストフィルムラインは3つの押出機を備えているが、スキン層押出機の1つ(L/D=25)およびコア層押出機(L/D=30)は、単一のB層を効果的に提供するために同じ材料を使用する。他のスキン層押出機(L/D=25)は、シーラント層成分を使用してA層を提供する。フィルムは、呼称厚さ1000ミクロンを有し、12インチ幅のフラットダイを備えたDr.Collinキャストフィルムラインで製造される。ダイギャップは、45ミル、出力速度は、約8kg/時である。溶融温度は、244℃であり、ダイ温度は、260℃に設定されている。
【0082】
【表3】
【0083】
層の呼称厚さは、A層が150ミクロン、B層が850ミクロンである。
【0084】
キャストフィルムは、Accupullストレッチャーで二軸配向されている。同時二軸配向は、118℃および200%/秒の延伸速度で行われる。延伸比は、機械方向に4倍、横断方向に8倍である。
【0085】
3つのフィルムのヒートシール強度は、上記試験方法の欄に記載された方法に従って測定される。結果(N/25mmにて)をフィルム層の密度と共に表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
表4に示すように、本発明のフィルム1は、120℃以下の温度で比較フィルムよりも著しく高いシール強度を示す。本発明のフィルム1は、100℃未満のヒートシール開始温度を示す。
【0088】
実施例2
表5に示す構造を有する2層フィルム(A/B)をキャストフィルムラインを用いて製造する。キャストフィルムラインは3つの押出機を備えているが、スキン層押出機の1つ(L/D=25)およびコア層押出機(L/D=30)は、単一のB層を効果的に提供するために同じ材料を使用する。他のスキン層押出機(L/D=25)は、シーラント層成分を使用してA層を提供する。フィルムは、呼称厚さ1000ミクロンを有し、12インチ幅のフラットダイを備えたDr.Collinキャストフィルムラインで製造される。ダイギャップは、45ミル、出力速度は、約8kg/時である。溶融温度は、244℃であり、ダイ温度は、260℃に設定されている。
【0089】
【表5】
【0090】
層の呼称厚さは、A層が200ミクロン、B層が800ミクロンである。
【0091】
キャストフィルムは、Accupullストレッチャーで二軸配向されている。同時二軸配向は、118℃および200%/秒の延伸速度で行われる。延伸比は、機械方向に4倍、横断方向に8倍である。二軸配向後、フィルムは、約25ミクロンの厚さを有する。
【0092】
3つのフィルムのヒートシール強度は、上記試験方法の欄に記載された方法に従って測定される。結果(N/25mmにて)をフィルム層の密度と共に表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
表6に示すように、本発明のフィルム2は、110℃以下の温度で比較フィルムよりも著しく高いシール強度を示す。本発明のフィルム2は、約90℃のヒートシール開始温度を示し、比較フィルムCおよびDは、100℃を超えるヒートシール開始温度を示す。
【0095】
シーラントフィルムのある種の物理的特性もまた、ASTM D882に従って測定され、表7に報告されている。
【0096】
【表7】
【0097】
表7に示すように、本発明のフィルム2は、比較フィルムCおよびDと同等の機械的特性を有する。
【0098】
試験方法
本明細書に他に指示がない限り、以下の分析方法は、本発明の態様を記載する際に使用される。
【0099】
密度
密度について測定される試料を、ASTM D4703に従って調製する。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、1時間以内の試料加圧で行われる。
【0100】
メルトインデックス
メルトインデックス(I
2)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分毎に溶出されるグラムで報告される。メルトフローレート(I
10)は、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分毎に溶出されるグラムで報告される。
【0101】
ヒートシール強度とヒートシール開始温度
ホットタックテスター(モデル4000、J&B Corp.)を引っ張らずに「シールのみ」モードで使用する。ヒートシール強度測定を行うために、二軸配向フィルムをフィルムの機械方向に沿って25mm幅のストリップに切断した。各試験片は、100mmの長さを有していた。シールパラメータは、試料片の幅=25mm、シール時間=0.5秒、シール圧=0.275MPaである。2つの試験片上のシーラント層は、結合面を提供するために互いに対向している。次に、シールされた試料片を制御された環境(23±2℃、55±5相対湿度)下で24時間エージングする。その後、引っ張り速度500mm/分で引っ張り機(タイプ5943、INSTRON Corp.)でシール強度を試験する。最大荷重は、シール強度として記録される。各データポイントは、5つの平行な試料片の平均結果である。ヒートシール開始温度は、フィルムが10N/25mmのヒートシール強度を示す最低温度である。
【0102】
引張り強度
引張り強度は、ASTM D882に従って測定する。
【0103】
破断点伸び
破断点伸びは、ASTM D882に従って測定する。
【0104】
2%割線モジュラス
2%割線モジュラスは、ASTM D882に従って測定する。
【0105】
結晶化溶出分別
コモノマー分布分析は、IR−4検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を備えた、結晶化溶出分画(CEF)(PolymerChar、スペイン)(Monrabal et al,Macromol.Symp.257,71−79(2007))を用いて実施する。IR−4またはIR−5検出器が使用される。IR−4検出器またはIR−5検出器を検出器オーブン内に入れる直前に、50×4.6mmの10または20ミクロンガードカラム(PolymerLab、現在のAgilent Technologies)を取り付ける。Sigma−Aldrichから、オルト−ジクロロベンゼン(ODCB、99%無水グレード)および2,5−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」、カタログ番号B1378−500G、バッチ番号098K0686)が得られる。EMD Chemicalsから、シリカゲル40(粒径0.2〜0.5mm、カタログ番号10181−3)も得られる。使用前に、シリカゲルを160℃の真空オーブンで約2時間乾燥する。800mgのBHTおよび5gのシリカゲルを、2リットルのODCBに加える。ODCBは、シリカゲルを充填した1つまたは複数のカラムを通過させることによっても、乾燥させることができる。乾燥ODCBは、「ODCB」と称される。このODBCは、使用前に乾燥窒素(N2)を1時間散布される。乾燥窒素は、窒素をCaCO
3および5Åモレキュラーシーブに<90psigで通過させることによって得られるものである。得られる窒素は、約−73℃の露点を有するはずである。試料調製は、160℃で2時間振とうさせながら、オートサンプラを4mg/mLで用いて(特記しない限り)行う。注入量は300μLである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃〜30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡(2分間に設定された可溶性画分溶出時間を含む)、3℃/分で30℃〜140℃での溶出、である。結晶化中の流速は、0.052mL/分である。冷却工程中の流速は、0.052mL/分である。溶出中の流速は、0.50mL/分である。データは、1データポイント/秒で収集される。CEFカラムは、米国特許第8,372,931号に従って、1/8インチのステンレス管を用いて、125μm±6%(MO−SCI専門品)のガラスビーズで充填される。カラム外径(OD)は、1/8インチである。この方法を再現するのに必要な重要なパラメータには、カラム内径(ID)およびカラム長(L)が含まれる。IDとLの選択は、直径125μmのガラスビーズを充填する場合、液体内部容積が2.1〜2.3mLになるようにする必要がある。Lが152cmの場合、IDは0.206cmである必要があり、壁の厚さは0.056cmである必要がある。ガラスビーズの直径が125μmであり、かつ液体内部容積が2.1〜2.3mLである限り、LとIDについて異なる値を使用することができる。カラム温度較正は、ODCB中のNIST標準参照物質、線状ポリエチレン1475a(1.0mg/mL)およびエイコサン(2mg/mL)の混合物を用いて行う。CEF温度較正は、(1)測定されたエイコサンのピーク溶出温度から30.00℃を差し引いた値の間の温度オフセットとして定義される、遅延容積を計算することと、(2)溶出温度の温度オフセットをCEF生温度データから差し引くこと。この温度オフセットは、溶出温度、溶出流速等の実験条件の関数であることに注意する、(3)NIST直鎖ポリエチレン1475aが101.0℃でピーク温度を有し、Eicosaneが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃〜140.00℃の範囲にわたる溶出温度を変換する直線較正線を作成することと、(4)30℃で等温的に測定した可溶性画分について、溶出温度は、3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿されることと、の4つの工程からなる。報告された溶出ピーク温度を、観察されたコモノマー含有量較正曲線が、以前に米国特許第8,372,931号で報告されたものと合致するように得る。
【0106】
高密度画分の分子量(MW
HDF>95)および高密度画分指数(I
HDF>95)
ポリマー分子量は、Rayleigh−Gans−Debys近似(A.M.Striegel and W.W.Yau,Modern Size−Exclusion Liquid Chromatography,2
nd Edition,Page 242 and Page 263,2009)に従って、形状因子を1および全てのビリアル係数がゼロに等しいと仮定することにより、LS(90度角度での光散乱、Precision Detectors)および濃度検出器(IR−4またはIR−5 Polymer Char)から直接決定することができる。ベースラインは、LS(90度)とIR−4(測定チャンネル)またはIR−5(測定チャンネル)クロマトグラムから差し引かれる。光散乱検出器は、IR−4またはIR−5検出器の直後に接続される。樹脂全体に対して、25.5〜118℃の範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で全てのクロマトグラムを積分するように積分ウィンドウが設定される。高密度画分は、CEFにおいて95.0℃より高い溶出温度を有する画分として定義される。MW
HDF>95およびI
HDF>95の測定には、以下の手順が含まれる。
【0107】
(1)検出器間オフセットを測定する。オフセットは、IR−4検出器に対するLS検出器間の幾何学的体積オフセットとして定義される。IR−4とLSクロマトグラムとの間のポリマーピークの溶出量(mL)の差として計算される。溶出熱速度および溶出流速を使用して、温度オフセットに変換される。高密度ポリエチレン(コモノマーを含まず、1.0のメルトインデックスI
2、約2.6の従来のゲル浸透クロマトグラフィーによる多分散度または分子量分布M
w/M
n)を使用する。以下のパラメータを除いて、上記のCEF法と同じ実験条件を使用する:10℃/分で140℃〜137℃での結晶化、137℃で可溶性画分溶出時間として1分間の熱平衡、および1℃/分で137℃〜142℃での溶出。結晶化中の流速は、0.10mL/分である。溶出中の流速は、0.80mL/分である。サンプル濃度は、1.0mg/mLである。
【0108】
(2)LSクロマトグラムの各データポイントをシフトして、積分前に検出器間オフセットを補正する。
【0109】
(3)各保持温度での分子量は、ベースラインを差し引いたLSシグナル/ベースラインを差し引いたIR4(またはIR−5)シグナル/MW定数(K)として計算される。
【0110】
(4)ベースラインを差し引いたLSおよびIR−4クロマトグラムは、95.0〜118.0℃の溶出温度範囲で積分される。
【0111】
(5)高密度画分の分子量(MW
HDF>95)は、以下に従って計算される。
【0112】
【数1】
【0113】
式中、Mwは、溶出温度Tにおけるポリマー画分の分子量であり、Cは、CEF中の溶出温度Tにおけるポリマー画分の重量分率である。
【0114】
【数2】
【0115】
(6)高密度画分指数(I
HDF>95)は、以下のように計算される。
【0116】
【数3】
【0117】
式中、Mwは、溶出温度Tにおけるポリマー画分の分子量であり、Cは、CEF中の溶出温度Tにおけるポリマー画分の重量分率である。
【0118】
CEFのMW定数(K)は、検出器間オフセットの測定と同じ条件で分析したNISTポリエチレン1484aを使用して計算される。MW定数(K)は、「NIST PE1484aの(LSの全積分面積)/NIST PE 1484aのIR−4測定チャンネルの(全積分面積)/122,000」として計算される。
【0119】
LS検出器の白色雑音レベル(90度)は、ポリマーが溶出する前にLSクロマトグラムから計算される。LSクロマトグラムを最初にベースライン補正について補正して、ベースライン減算シグナルを得る。LSの白色雑音は、ポリマー溶出の前に少なくとも100のデータポイントを用いることによって、ベースラインを差し引いたLS信号の標準偏差として計算される。LSに対する典型的な白色雑音は、0.20〜0.35mVであるが、ポリマー全体は、検出器間オフセットの測定で使用される、コモノマーを含まず、1.0のI
2、約2.6の多分散度M
w/M
nの高密度ポリエチレンに対して典型的には約170mVのベースラインを差し引いたピーク高さを有する。
【0120】
分子量分布用のHT GPC
PolymerChar Inc(スペイン、バレンシア)からの赤外線濃度検出器(IR−5)からなる高温ゲル浸透クロマトグラフィーシステム(GPC IR)が、分子量(MW)および分子量分布(MWD)の決定に使用された。担体溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)であった。オートサンプラーコンパートメントは、160℃で稼働され、カラムコンパートメントは、150℃で稼働された。使用したカラムは、4つのPolymer Laboratories Mixed A LS、20ミクロンカラムであった。クロマトグラフィー溶媒(TCB)および試料調製溶媒は、250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および窒素を散布した同じ溶媒源からであった。試料は、TCB中で2mg/mLの濃度で調製された。ポリエチレン試料は、160℃で2時間穏やかに振とうされた。注入量が200μLであり、流速が1.0mL/分であった。
【0121】
GPCカラムセットの較正は、21の狭い分子量分布のポリスチレン標準物を用いて実施された。標準物の分子量は、580〜8,400,000g/molの範囲であり、個々の分子量の間に少なくとも一桁の間隔を置いて6つの「カクテル」混合物中に配置した。
【0122】
ポリスチレン標準物ピーク分子量は、以下の方程式を使用してポリエチレン分子量に変換された(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)):
M
ポリエチレン=A(M
ポリスチレン)
B
ここで、Bは、1.0の値を有し、実験的に決定されたAの値は、約0.431519である。ポリスチレン標準物。
【0123】
数、重量、およびz平均分子量は、以下の方程式に従って計算された:
【0124】
【数4】
【0125】
式中、Wf
iが、i番目の構成成分の重量分率であり、M
iが、i番目の構成成分の分子量である。
【0126】
MWDは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比として表される。
本出願は、例えば以下の発明を提供する。
[1] 上部表面および下部表面を有し、かつ第1のエチレン系ポリマー組成物を含むシーラント層であるA層であって、前記第1のエチレン系ポリマー組成物は、少なくとも0.900g/cm3の密度、20〜60kg/molのIHDF>95、および130kg/molよりも大きいMWHDF>95を有し、A層は、A層の重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの前記第1のエチレン系ポリマー組成物を含む、A層と、
上部表面および下部表面を有するB層であって、1つ以上の追加のポリエチレンを含む、B層と、を備え、
前記B層の上部表面は、前記A層の下部表面に接着接触しており、前記第1のエチレン系ポリマー組成物の前記密度は、前記B層の密度よりも少なくとも0.002g/cm3小さい、二軸配向多層ポリエチレンフィルム。
[2] 前記第1のエチレン系ポリマー組成物は、結晶化溶出分別(CEF)によって測定されたコモノマー分布において、可溶性画分を除いて少なくとも2つの局所ピークを示す、[1]に記載のフィルム。
[3] 前記A層は、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸エチル、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つをさらに含む、[1]または[2]に記載のフィルム。
[4] 前記A層は、少なくとも1ミクロンの厚さを有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
[5] 前記B層は、
0.925g/cm3よりも大きい密度および2g/10分よりも小さいI2を有する、20〜50重量%の第1の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーと、
0.925g/cm3よりも小さい密度および2g/10分よりも大きいI2を有する、80〜50重量%の第2の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーと、を含む、第2のエチレン系ポリマー組成物を含み、
前記第1のポリエチレン組成物は、0.5〜10g/10分のI2および0.910〜0.940g/cm3の密度を有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
[6] 前記フィルムは、125℃以下のヒートシール開始温度を有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のフィルム。
[7] 前記フィルムは、105℃以下のヒートシール開始温度を有する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のフィルム。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルムを含む物品。
[9] ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、またはポリアミドを含む第1のフィルムと、
[1]〜[7]のいずれか一項に記載の二軸配向多層ポリエチレンフィルムと、を含み、前記第1のフィルムは、前記多層ポリエチレンフィルムに積層されている、積層体。
[10] [9]に記載の積層体を含む物品。