【文献】
SUGIARTO, Maya et al.,Milk protein-iron complexes: Inhibition of lipidoxidation in an emulsion,Dairy Sci. Technol.,2010年,vol. 90,pp. 87-98,http://dx.doi.org/10.1051/dst/2009053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳児又は児童の、神経システム及び/又は網膜の発達促進、メンタルパフォーマンス、行動機能及び視機能の増進及び/又は改善における使用、腸内細菌叢の発達を含む免疫増強、並びに/又は、過体重、肥満及びインスリン抵抗性の発症リスク低減のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
食品製品及び飲料は、多種多様な栄養素を含み、これらの栄養素は互いに負の相互作用をもたらし得る。これは、典型的には、鉄が酸化感受性化合物と共に組成物中に存在する場合のことであり、鉄が当該化合物を酸化する傾向があり、当該化合物の官能特性及び/又は栄養特性の望ましくない改変をもたらすためである。
【0003】
鉄は、特に重要な微量栄養素である。世界中で、鉄欠乏症は、最も一般的な栄養欠乏症の1つである。ヒトでは、鉄は、酸素結合及び輸送、遺伝子調節、神経機能、免疫機能、並びに細胞増殖及び分化の調節などの多数の生物学的プロセスの機能に不可欠である。鉄欠乏症は、貧血、並びに甲状腺機能、免疫機能及び精神機能の障害、身体能力、認知発達、インスリン及び疲労に対する感受性の増加などの様々な健康問題をもたらし得る。鉄欠乏症は、妊婦及び授乳中の女性、並びに乳児及び児童において特に広まっている。
【0004】
鉄による食品の強化は、鉄欠乏症に対処するための1つのアプローチである。したがって、食事組成物又は補助食品、特に乳児用、小児用、妊娠前、妊娠中及び/又は授乳中の女性用の食事組成物又は補助食品において添加鉄源を含有することが非常に望ましい。多様な鉄化合物が、食品製品及び栄養補助食品に鉄強化剤として使用されてきた。例えば、硫酸第一鉄は、比較的安価であり、かつ生物学的利用能が高いために、広く使用されている。
【0005】
しかしながら、本発明者らは、組成物を強化するために使用される場合、多くの鉄化合物が、LC−PUFA、ビタミン及びポリフェノールなどの酸化感受性化合物に対して有害な作用を及ぼすことを見出した。
【0006】
LC−PUFAは、我々の食事の必須成分であり、科学的証拠によって、特定のLC−PUFAが、脳及び網膜の発達、心臓の健康、及び多くの他の健康上の利益にとって重要であることが裏付けられている。ビタミンもまた必須栄養素であり、多くの疾患及び障害の予防に必要である。ポリフェノールもまた健康上の利益に関連付けられ、例えば、変性疾患、心血管疾患、及び癌の予防と関連付けられている。
【0007】
しかしながら、LC−PUFA、ビタミン及びポリフェノールなどの化合物は、酸素の存在下、特に鉄の存在下で酸化する。脂質酸化は香味及び風味の劣化、並びに栄養価の減少により食品製品の品質に影響を及ぼす。酸敗臭、魚臭、金属様、揚げ脂肪などの異臭及び異味の形成は、主に、容易に異性化及び劣化して揮発性化合物を生成し得る、ペルオキシドなどといった、LC−PUFAの主要な酸化生成物の劣化により生じる。知覚特性の低下は、主に食品工業において消費者から寄せられる苦情の原因となる。更に、貯蔵寿命は感受性化合物の酸化により著しく損なわれ得る。ビタミン及びポリフェノールの酸化はまた、これらの栄養素の栄養価を著しく低下させ得る。例えば、ポリフェノールの酸化により、著しい変色もまた観察される。
【0008】
LC−PUFA、ビタミン、ポリフェノール、及び更なる酸化感受性化合物による食品の栄養強化により、著しい栄養効果がもたらされることへの関心の高まりの結果として、このような化合物の劣化を軽減することができる技術開発において多くの研究が報告されている。
【0009】
食品マトリックスの脂質酸化によって生成される魚のような悪臭を回避するためのマスキング剤及び香味料が注目されてきた。しかしながら、香味料及びマスキング剤はLC−PUFAなどの脂質を安定化せず、結果として、酸化により栄養価の低下がもたらされる。
【0010】
適切な加工及び封入によってもまた、食品マトリックス中の感受性化合物の酸化速度は低下する(例えば、感受性化合物又は鉄を食品マトリックスの残りの部分から分離することによる)。しかしながら、この解決法は非常に費用がかさみ、全ての種類の製品に適するものではない。
【0011】
解決法のいくつかは、カプセル化技術又は特異的な抗酸化剤など、感受性化合物を安定化することのできる成分をベースとするものである。しかしながら、これらの解決法は、好ましくは選択された食品マトリックスの種類に特異的なものであり、1つの特異的なカプセル化成分のみに合わせて調整される。
【0012】
特定の鉄源は、LC−PUFAに対する酸化的影響が軽減されていることが見出されている。これは、例えば、第二鉄サッカラートの場合である(国際公開第2015/097113号)。しかしながら、第二鉄サッカラートは、例えば、硫酸第一鉄よりも生物学的利用能が低い。国際公開第00/51446号はまた、良好な安定性を有し、感受性化合物の酸化をほとんど生じず、良好な生物学的利用能を有した、第二鉄イオン及びカゼイネートから形成される錯体についても記載している。しかしながら、このような錯体は、高レベルの鉄添加において沈殿物を形成し、透明な飲料及び溶液に使用される場合にもやを形成するという大きな欠点を有する。先行技術によって提供される溶液の別の欠点は、酸化可能性が軽減される一方で、良好な生物学的利用能を有し、かつ可溶であり、かつこのような錯体が組み込まれる製品に良好な官能的特質を提供する、鉄源を見つけることが困難であることを示す。
【0013】
したがって、本発明の目的は、多量の添加鉄源と、LC−PUFA、ビタミン及びポリフェノールから選択される多量の少なくとも1つの酸化感受性化合物と、を含む組成物を提供することであって、かかる組成物において、鉄による感受性化合物の酸化が最小限に抑えられる一方で、非常に生物学的利用能が高い鉄源を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で使用する場合、用語「鉄−カゼイン錯体」は、カゼインでキレートされた鉄カチオンから形成される錯体を意味する。
【0024】
用語「鉄」は、本明細書では、特に明記しない限り、使用される鉄源に応じて、Fe
2+又はFe
3+のいずれかを意味することを意図する。
【0025】
「添加鉄源」は、鉄補給効果だけのために組成物に添加される第一鉄化合物又は第二鉄化合物として本発明の目的のためのものであることが意図される。その性質に応じて、組成物は、他の成分、例えば、乳、果物、野菜、穀物又は繊維成分由来の鉄を含んでもよい。このような成分中に存在する鉄は、その鉄含有量を得るためではなく、その全体的な栄養価を得るために主として添加されている成分中に元来存在しているため、本明細書では「添加鉄源」として意図していない。
【0026】
鉄源は、他の添加鉄源が、LC−PUFA、ビタミン及び/又はポリフェノールの統計的に有意な酸化を引き起こさないよう十分に少量で使用されるという条件の下、組成物中の「実質的に唯一の添加鉄源」であることが、本発明の目的のために意図されている。当業者は、本出願の実施例に記載の方法を適用し、結果分析のために一般的に既知の統計的手法を適用することによって、LC−PUFA、ビタミン及び/又はポリフェノールの統計的に有意な減少が引き起こされるかどうかを評価することができる。
【0027】
用語「外因性」は、錯体中の鉄又はリンについて言及する場合、錯体の製造プロセス中に添加された鉄及び/又はリンを指し、したがって、カゼインと自然にキレート化したものではない鉄又はリンを指す。
【0028】
用語「栄養組成物」は、完全栄養又は補助栄養を個体に提供することを意図した製品(すなわち、そのような個体の必須の栄養ニーズを満たすため)を意味し、その重要な目的は栄養を提供することである。栄養組成物は、乳児、幼児、妊娠又は授乳中の女性、高齢者、又は特別な食事を必要とする医学的状態の悪い人などの、特別な栄養ニーズを有する個人に対して、特定の栄養素を提供することを目的とする(例えば、経管栄養組成物又は小児対象用組成物)。嗜好性が顕著であり、栄養価がさほど重要ではない製品は、「栄養製品」から除外される。栄養組成物は、好ましくはタンパク質、脂肪、炭水化物、及び多様な微量栄養素を含む。
【0029】
本発明において、用語「乳児」は、出生〜12ヶ月齢の児童を意味する。用語「幼児」は、12ヶ月齢〜5歳齢、好ましくは12ヶ月齢〜3歳齢の児童を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「乳児用調製乳」という表現は、乳児による特定の栄養利用が意図され、それ自体によってこのカテゴリーの人の栄養要件(乳児用調製乳及びフォローオン調製乳に関する2006年12月22日の欧州委員会指令91/321/EEC 2006/141/ECの第2条(c))が満たされる食品を指す。乳児用調製乳はまた、乳児用であり、コーデックス・アリメンタリウス(Codex STAN 72−1981)及び乳児用特別品(Infant Specialities)(特別医療目的用食品を含む)に定義されているような栄養組成物を指す。乳児用調製乳は、スターター乳児用調製乳及びフォローアップ調製乳又はフォローオン調製乳を包含し得る。一般的に、スターター調製乳は、母乳代用品として出生後の乳児のためのものである。フォローアップ調製乳又はフォローオン調製乳は、6ヶ月目以降から与えられる。これは、このカテゴリーに該当する乳児の、次第に多様化していく食事において主要な液体成分を構成する。乳児には乳児用調製乳のみを与えることができること、又はこの乳児用調製乳が、人乳を補助又は補完するものとして使用され得ることを理解されたい。
【0031】
「グローイングアップミルク(又はGUM)」は、1年目以降から与えられる。一般に、幼児の特定の栄養ニーズに適合した乳ベースの飲料である。
【0032】
「乳児用食品」という表現は、乳児、又は生後1年の間の幼児などの児童による特定の栄養利用が意図された食品を意味する。
【0033】
「乳児用穀物組成物」という表現は、乳児、又は生後1年の間の幼児などの児童による特定の栄養利用が意図された穀物ベースの食品を意味する。
【0034】
用語「強化剤」は、母乳又は乳児用調製乳と混合するのに適した栄養組成物を指す。「母乳」は、母親の乳又は母親の初乳又はドナーの乳又はドナーの乳の初乳として理解されるべきである。
【0035】
用語「補助食品」は、個体の栄養を補助又は補完するために使用され得る組成物を指す。
【0036】
用語「プレバイオティック」は、ヒトの結腸における健康な細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することにより宿主に有益な影響を与える難消化性炭水化物を意味する(Gibson GR,Roberfroid MB.Dietary modulation of the human colonic microbiota:introducing the concept of prebiotics.J Nutr.1995;125:1401〜12)。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「プロバイオティック細菌」は、宿主の健康又は幸福に対して有益な効果を有する細菌細胞調製物を指す[Salminen S,et al.,「Probiotics:how they should be defined」,Trends Food Sci.Technol,(1999),10,107〜10]。
【0038】
組成物
本発明の組成物は、LC−PUFA、ビタミン、ポリフェノール及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化感受性化合物及び鉄源を含み、当該鉄源は、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体である。
【0039】
カゼインは、乳、ナトリウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、アンモニウムカゼイネート、レンネットカゼイネート、乳酸カゼインなどの酸カゼイン、無脂肪乳固形分、カゼイン誘導体、カゼイン画分、又はこれらの混合物のような多様な供給源から得ることができる。好ましくは、当該カゼインは、ナトリウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、アンモニウム、乳酸カゼインカゼイン誘導体、カゼイン画分、又はこれらの混合物である。
【0040】
一実施形態では、当該カゼインは、少なくとも45:1のタンパク質対カルシウム比を有する乳原料に由来する。好ましくは、乳原料中のタンパク質/カルシウムw/w比は少なくとも58:1であり、より好ましくは58:1〜640:1であり、最も好ましくは70:1〜95:1である。牛乳が通常26:1のタンパク質/カルシウムw/w比を有するため、上記比は、乳原料中のカルシウム量が著しく減少していることを表す。別の好ましい実施形態では、乳タンパク質は、少なくとも70% w/vのカルシウムが乳原料から除去されている乳原料に由来する。このような乳原料は、好ましくは、全乳、脱脂乳、低乳糖乳、限外濾過保持液、濃縮乳、及びこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、乳はウシの乳である。乳原料からのカルシウム除去は、より多量の鉄をカゼインに結合するのに役立つと言う点で有利である。すなわち、キレート化カルシウムの除去によって、当該カルシウムが鉄によって置き換わることができる。
【0041】
別の好ましい実施形態では、タンパク質対オルトリンw/w比は、64:1〜6.25:1、好ましくは32:1〜6.25:1未満、好ましくは32:1〜8:1未満、より好ましくは28:1〜8:1、更により好ましくは25:1〜8:1、最も好ましくは20:1〜8:1である。外因性オルトリンの存在は、鉄がカゼインに有効に結合するのに役立ち、錯体中の鉄の結合、又は錯体中の多量の鉄をもたらすという点で有利である。
【0042】
別の好ましい実施形態では、錯体は、生理的pHで、好ましくはpH6.6〜6.9の溶液に可溶である。このような溶解度は、このようなpHでの液体溶液中での不溶性沈殿物の形成を回避するのに有益であり、錯体の良好な生物学的利用能にも寄与する。
【0043】
好ましくは、錯体は、1%w/w超の結合鉄、より好ましくは1〜20%w/wの結合鉄、更により好ましくは1〜8%w/w、最も好ましくは4〜8%w/wの結合鉄を含む。より好ましくは、カゼイン対鉄のw/w比は、92:1〜19.5:1、好ましくは90:1〜19.5:1、より好ましくは80:1〜19.5:1、最も好ましくは50:1〜19.5:1である。錯体中の鉄負荷が高くなると、組成物を強化するために必要とされる錯体の量が少なくなるため、錯体においてカゼインに結合したこのような多量の鉄を有することができることは特に有利である。
【0044】
好ましい実施形態では、錯体中の鉄はFe
3+の形態である。
【0045】
特に好ましい錯体は、米国特許出願公開第2015/0164123号に記載されているものであり、参照により本明細書に組み込まれる。このような文書は、上記のような錯体、及び本発明の目的のために有利に使用することができる錯体の特定の実施形態を作製するために使用することができるプロセスの詳細な説明を提供する。
【0046】
上記錯体は、錯体中でカゼインに多量の鉄が結合している場合であっても、水性液体食品製品又は飲料に可溶であるという点で特に有利である。したがって、錯体は、有利には、透明な飲料及び溶液に添加された場合にヘイズを生成し得る、かつ食品製品及び飲料に望ましくないざらつき感をもたらし得る不溶性沈殿物を形成しない。上記錯体の更なる利点は、引用文献である米国特許出願公開第2015/0164123号に見出すことができる。
【0047】
ここで、本発明者らは、例えば、広く使用されている噴霧乾燥形態の硫酸第一鉄七水和物及び溶解した硫酸第一鉄などの大部分の鉄源が、LC−PUFA、ビタミン、及びミネラルなどの感受性化合物の著しい酸化を引き起こし、一方で、本明細書に記載されるような鉄−カゼイン錯体により酸化が著しく軽減されることを見出した。
【0048】
この正の効果は、鉄−カゼイン錯体がそのように使用される場合、及びそのような錯体が非晶質マトリックス中に分散される場合に、その錯体構造が維持される限り、観察される。マトリックス中に分散した錯体を有するそのような成分は、錯体をキャリア溶液と混合し、当該キャリア溶液を噴霧乾燥することによって得ることができる。好適なキャリアは、例えばマルトデキストリンを含む。当業者は、SDS−PAGEなどのタンパク質同定評価、ICP原子発光分光法を用いるミネラル分析を組み合わせることによって、並びにFe
2+及びFe
3+の存在下での変色を伴うヘキサシアノ鉄酸カリウムなどの化合物による「遊離鉄」試験を実施することによって、製品又は成分が、鉄−カゼイン錯体を含むかどうかを定法を用いて評価することができる。
【0049】
上記の鉄−カゼイン錯体の使用は、良好な生物学的利用能及び低酸化電位によって同時に特徴付けられるという点で特に有利である。上記に定義したような外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、ヒトにおける生物学的利用能に関してゴールドスタンダードである硫酸第一鉄と同様の生物学的利用能を特徴とすることが示されている。例えば、米国特許出願公開第2015/0164123号を参照されたい。
【0050】
好ましい実施形態では、添加鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%は、上記に定義したような外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体の形態である。更により好ましくは、上記に定義したような鉄−カゼイン錯体は、組成物中の実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、上記に定義したような鉄−カゼイン錯体は、組成物中の唯一の添加鉄源である。
【0051】
添加鉄源は、組成物の総乾燥重量に基づいて、組成物100g当たり、6〜50mg、好ましくは6〜20mg、より好ましくは6〜18mg、より好ましくは6〜15mg又は8〜20mg、好ましくは8〜18mg、より好ましくは8〜15mgの鉄を提供するような量で好ましくは存在する。
【0052】
好ましいLC−PUFAは、ドコサヘキサエン酸(DHA、脂肪酸22:6n−3)及びエイコサペンタエン酸(EPA、脂肪酸22:5n−3)を含む。最も好ましいLC−PUFAはDHAである。LC−PUFAの好適な供給源としては、魚油、及び微生物油、例えば微細藻類油が挙げられる。LC−PUFAは、組成物の総乾燥重量に基づいて、組成物100g当たり、10〜500mg、好ましくは50〜500mg、より好ましくは100〜500mg、更により好ましくは200〜500mg、又は10〜450mg、好ましくは50〜450mg、より好ましくは100〜450mg、最も好ましくは200〜450mgのLC−PUFAの量で組成物中に存在する。
【0053】
好ましい実施形態では、鉄は、LC−PUFA100g当たり、好ましくはDHA100g当たり、0.1〜10g、好ましくは0.5〜10g、より好ましくは1〜10g、更により好ましくは2〜10g、最も好ましくは0.1〜8g又は0.1〜6g、好ましくは0.1〜5g、又は1〜8g、好ましくは1〜6g、最も好ましくは1〜5gの鉄の量で組成物中に存在する。LC−PUFA100g当たり、好ましくはDHA100g当たりの鉄をこのように多量にすることが真の難題であり、本明細書に記載の鉄カゼイン錯体の酸化可能性が特に低いこと、及びかかる錯体が、各錯体に結合した多量の鉄を有する能力によって可能になる。
【0054】
本発明の目的のため、ビタミンは、酸化に特に感受性のある、ビタミンA、C、D、E及びこれらの混合物から好ましくは選択される。最も好ましくは、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンC、及びこれらの混合物から選択される。好ましい実施形態では、ビタミンAは、200〜1000IU/100Kcalの量で組成物中に存在する。別の好ましい実施形態では、ビタミンCは、10〜100mg/100Kcalの量で存在する。
【0055】
好ましいポリフェノールは、フラボノールである。フラボノールは、好ましくは、組成物100g当たり500〜5000mgの量で存在する。
【0056】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの酸化感受性化合物がカプセル化される。好ましくは、これはマイクロカプセル化される。LC−PUFAが組成物中に存在する場合、そのようなLC−PUFAは、好ましくは、乳タンパク質及びグルコースのガラス状マトリックス中に全体的に又は部分的にカプセル化される。このような乳タンパク質及びグルコースのガラス状マトリックスは、入手可能であるかつこの目的に適している任意の乳タンパク質、例えば、ホエイタンパク質、カゼイン、カゼイネート、乳タンパク質、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン等から調製することができる。カプセル化は、当該技術分野において既知の手法を用いて実施することができる。好ましくは、LC−PUFAは、Friesland Brands B.V.,NLの国際公開第2011/008097(A1)号に記載されているように乳タンパク質及びグルコースのガラス状マトリックスにカプセル化されるか、又はFrieslandCampina KievitからNIF粉末の商品名で入手することができる。
【0057】
組成物は、液体又は粉末形態であってもよい。好ましくは、それは粉末形態である。組成物が粉末形態である場合、その組成物は、遊離粉末の形態であってもよく、又は錠剤の形態などの圧縮粉末の形態であってもよい。好ましくは、粉末形態の組成物は、粉末形態での使用が意図されるのではなく、使用前に、液体中、好ましくは水性液体中、最も好ましくは水中で再構成されることが意図される。
【0058】
本発明の好ましい組成物としては、食品製品又は飲料製品、動物用飼料製品、ヒト又は動物用栄養補助食品、医薬組成物又は化粧品組成物が挙げられる。
【0059】
別の実施形態では、組成物は食用組成物である。
【0060】
食品製品及び飲料製品としては、栄養及び/又は満足感を提供する目的で、ヒトによって経口摂取されることを意図した全ての製品が挙げられる。好ましい実施形態では、製品は栄養組成物である。より好ましくは、その製品は乳児用調製乳、グローイングアップミルク、乳児用食品、乳児用穀物組成物、強化剤、補助食品、及び妊娠又は授乳中の女性用栄養組成物から選択される栄養組成物である。より好ましくは、乳児用調製乳、グローイングアップミルク、乳児用穀物組成物、及び妊娠又は授乳中の女性用栄養組成物から選択される。
【0061】
その製品はまた、動物用飼料製品又は動物用栄養補助食品の形態であってもよい。好ましくは動物は哺乳動物である。動物の例としては、霊長類、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥などが挙げられる。
【0062】
栄養補助食品は、そのようなものとして摂取されるか、又は食品若しくは飲料に添加されることが意図される。このような補助食品は、それを摂取する対象に追加の栄養素及び/又は健康上の利益、並びにLC−PUFA、ビタミン及び/又はポリフェノール及び鉄を含む他の有益な成分を提供することが意図される。本発明による補助食品は、上記で定義したように、ヒト及び動物に栄養素及び/又は健康上の利益を提供するために使用することができる。栄養補助食品としては、例えば早産児又は低出生体重児用の、例えば母乳に添加される栄養補助食品が挙げられる。栄養補助食品としてはまた、妊娠前、妊娠中及び/又は授乳中の女性用の補助食品も挙げられる。
【0063】
医薬組成物は、有害な医学的状態を治療又は予防する必要がある対象において、かかる状態を治療又は予防することを意図した組成物である。
【0064】
化粧品組成物は、典型的には、身体への審美的効果を意図しており、好ましくは経口経路によって投与され得る。
【0065】
組成物、好ましくは栄養組成物は、好ましくはタンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン及び/又は他のミネラルを含む。好ましくは、組成物は、これらの種類の栄養素の全てを含む。
【0066】
タンパク質は、インタクトであるか、又は加水分解(広範囲又は部分的な加水分解)されてもよい。
【0067】
本発明による栄養組成物は、一般に、その組成物が含み得るLC−PUFAに加えて、脂質源を含有する。これは、本発明の栄養組成物が乳児用調製乳である場合、特に関連する。この場合、脂質源は、乳児用調製乳、小児用製品、並びに/又は妊娠中、授乳中、及び妊娠前の女性用の製品での使用に適した任意の脂質又は脂肪であり得る。いくつかの好適な脂肪源としては、パーム油、高オレイン酸ヒマワリ油、及び高オレイン酸ベニバナ油が挙げられる。必須脂肪酸リノール酸及びα−リノレン酸を添加してもよい。
【0068】
本発明による組成物は、乳糖、マルトデキストリン、デンプン、及びこれらの混合物などの炭水化物源を含有してもよい。本発明による組成物はまた、特定の種類の炭水化物:プレバイオティクスを含有してもよい。本発明に従って使用され得るプレバイオティクスは、特に限定されず、腸内のプロバイオティクス又は健康上有益な微生物の増殖を促進する全ての食品物質を含む。好ましくは、当該プレバイオティクスは、フルクトース、ガラクトース及びマンノースを任意に含有するオリゴ糖;食物繊維、特に可溶性繊維、大豆繊維;イヌリン;又はこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。プレバイオティクスのいくつかの例は、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イソマルトオリゴ糖(IMO)、キシロオリゴ糖(XOS)、アラビノキシロオリゴ糖(AXOS)、マンナンオリゴ糖(MOS)、イヌリン、ポリデキストロース、グリコシルスクロース(GS)、ラクトスクロース(LS)、ラクツロース(LA)、パラチノースオリゴ糖(PAO)、マルトオリゴ糖、ガム及び/又はこれらの加水分解物、ペクチン及び/又はこれらの加水分解物である。特定の実施形態では、プレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖及び/又はイヌリンであり得る。使用することができる好適な市販製品としては、BENEOによりOraftiの商標にて販売されている製品のようなFOSとイヌリンの組み合わせ、又はTate & LyleによりSTA−LITE(登録商標)の商標にて販売されているポリデキストロースが挙げられる。
【0069】
プレバイオティクスはまた、N−アセチル化オリゴ糖、シアリル化オリゴ糖、フコシル化オリゴ糖、及びこれらの任意の混合物などのBMO(ウシ乳オリゴ糖)及び/又はHMO(人乳オリゴ糖)であってもよい。
【0070】
プレバイオティクスの特定の例は、ガラクトオリゴ糖、N−アセチル化オリゴ糖、及びシアリル化オリゴ糖の混合物であり、その混合物において、N−アセチル化オリゴ糖がオリゴ糖混合物の0.5〜4.0重量%に相当し、ガラクトオリゴ糖がオリゴ糖混合物の92.0〜98.5重量%に相当し、シアリル化オリゴ糖がオリゴ糖混合物の1.0〜4.0重量%に相当する。例えば、本発明に従って使用する組成物は、当該組成物が、少なくとも0.02重量%のN−アセチル化オリゴ糖と、少なくとも2.0重量%のガラクトオリゴ糖と、少なくとも0.04重量%のシアリル化オリゴ糖とを含むという条件で、乾燥物質ベースで2.5〜15.0重量%のCMOS−GOSを含有することができる。国際公開第2006087391号及び同第2012160080号は、そのようなオリゴ糖混合物の製造のいくつかの例を提供する。
【0071】
組成物はまた、プロバイオティクス微生物、好ましくはプロバイオティック細菌を含んでもよい。任意のプロバイオティック細菌を本発明の組成物に使用することができ、好ましくは生きているプロバイオティック細菌である。本発明の組成物は、有利には、少なくとも1つの酸化感受性化合物に加えて、生きているプロバイオティック細菌を含む。なぜなら、本明細書に記載の鉄−カゼイン錯体が、噴霧乾燥形態の一般的に使用されている硫酸第一鉄七水和物及び溶解した硫酸第一鉄などの多くの鉄源とは対照的に、プロバイオティック細菌の生存性に有害ではないことが示されたためである。プロバイオティック細菌が酸化感受性化合物と共に存在する実施形態では、本発明の組成物は、好ましくは粉末形態であり、より好ましくは水などの液体によって再構成される粉末形態の組成物である。
【0072】
本発明の組成物中に存在し得るプロバイオティック細菌の例としては、ビフィドバクテリウム属(bifidobacteria)、ラクトバチルス属(lactobacilli)、ラクトコッカス属(lactococci)、エンテロコッカス属(enterococci)、ストレプトコッカス属(streptococci)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、エシェリキア属(Escherichia)、プロピオニバクテリウム属(propionibacteria)、又はこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、ラクトバチルス属又はビフィドバクテリウム属の細菌である。
【0073】
好ましくは、プロバイオティック細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコッカス・ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトバチルス・デルブリッキィ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブリッキィ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)並びに任意のこれらの亜種及び/又はこれらの混合物の種の中から選択される。
【0074】
より好ましくは、プロバイオティック細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・デルブリッキィ亜種ブルガリクス、ラクトバチルス・デルブリッキィ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・サケイ、及びこれらの混合物の種から選択される。
【0075】
組成物中に有利に存在し得る細菌株の例としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA−999として寄託)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(CNCM I−2618として寄託)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(CNCM I−3865として寄託)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(CNCM I−3446として寄託)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(CNCM I−1225として寄託)、ラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I−2116として寄託)、ラクトバチルス・ラムノーサス(CGMCC 1.3724として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I−1422として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I−4153として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I−1985として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I−3915として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(CNCM I−1518として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(ACA−DC 6002として寄託)、エシェリキア・コリNissle(DSM 6601として寄託)、ラクトバチルス・ブルガリカス(CNCM I−1198として寄託)、ラクトコッカス・ラクティス(CNCM I−4154として寄託)又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
より好ましい細菌株としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA−999として寄託)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(CNCM I−2618として寄託)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(CNCM I−3865として寄託)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(CNCM I−3446として寄託)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(CNCM I−1225として寄託)、ラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I−2116として寄託)、ラクトバチルス・ラムノーサス(CGMCC 1.3724として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(CNCM I−1518として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(ACA−DC 6002として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I−3915として寄託)、及びラクトバチルス・ブルガリカス(CNCM I−1198として寄託)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
更なる好ましい実施形態では、プロバイオティック細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA−999として寄託)、ラクトバチルス・ラムノーサス(CGMCC 1.3724として寄託)、及びラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I−2116として寄託)、及びこれらの混合物から選択される。
【0078】
プロバイオティック細菌は、好ましくは、乾燥重量に基づいて、組成物1グラム当たり、少なくとも5E+06CFU、好ましくは組成物1グラム当たり5E+06〜1E+12CFU、より好ましくは組成物1グラム当たり5E+06〜5E+11CFU、最も好ましくは組成物1グラム当たり5E+06〜5E+10CFUの量で組成物中に存在する。
【0079】
選択されたプロバイオティック細菌は、任意の好適な方法に従って培養され得、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥などの既知の技術によって組成物に添加するために調製され得る。あるいは、細菌調製物は、DSM、Dupont Danisco、Morinaga、Institut Rosell、Christian Hansen及びValioなどの専門供給業者から購入することができ、粉末形態の組成物への添加に好適な形態で既に調製されている。
【0080】
本発明の組成物はまた、毎日の食事及び栄養的に有効な量において必須であると理解されるミネラル及び他の微量栄養素を含有してもよい。特定のミネラルに対する最低要件は確立されている。本発明の組成物中に任意に存在するミネラル及び他の栄養素の例としては、葉酸、イノシトール、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、コリン、カルシウム、リン、ヨウ素、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、塩素、カリウム、ナトリウム、セレン、クロム、モリブデン、タウリン、及びL−カルニチンが挙げられる。ミネラル類は、通常、塩形態で添加される。特定のミネラル及び他のビタミンの存在及び量は、意図される標的群に応じて変化する。
【0081】
組成物の製造プロセス
更なる実施形態によれば、本発明の根底にある目的は、結果として、好ましくは、本明細書に定義される組成物を調製するためのプロセスによってもまた解決される。この点に関して、前述のプロセスは、本発明の組成物に関して定義される任意の量及び成分を含有、又は含んでもよい。
【0082】
特に好ましい実施形態によれば、本発明は、組成物を得るために上述の本明細書で定義される成分を混合又は乾燥ブレンドする工程を含む、本明細書に記載の組成物の調製プロセスに関する。
【0083】
このプロセスは、好ましくは、
a)成分を混合又は乾燥ブレンド後に得られる混合物に少なくとも1つの加熱処理工程を実施する工程と、
b)加熱処理工程の前又は後に混合物を任意に均質化する工程と、
を更に含む。
【0084】
有利なことに、前述のプロセスには、製品の安全性及び品質を向上させる熱処理及び均質化などの工程を含む。本発明の組成物では、酸化感受性化合物は、上述したように、比較的激しい熱処理及び均質化のプロセス工程が実施される場合であっても、酸化が防止又は軽減される方法で、有利に安定化される。したがって、本発明の組成物は、熱処理及び均質化中のLC−PUFA、ビタミン、及び/又はポリフェノールの酸化が制限される結果として、良好な官能特性及び栄養特性を保持する。
【0085】
本発明のプロセスにより、好ましくは固体、液体、又は半液体/半固体組成物が生じる。本発明の組成物が粉末などの固体形態である場合、プロセスは、好ましくは噴霧乾燥、凍結乾燥又は流動層凝集工程などの乾燥工程を含むべきである。好ましい実施形態では、組成物は粉末形態である。
【0086】
組成物の強化のための外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体の使用
【0087】
外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、有利には、LC−PUFA、ビタミン、ポリフェノール及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化感受性化合物を含む組成物の強化に使用することができる。このような鉄源は、有利には、生物学的に利用可能な鉄を提供する一方で、感受性化合物の酸化はほとんど生じない。
【0088】
上記のように、硫酸第一鉄のものと同様の生物学的利用能を有する外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、食品製品を強化するのに特に有用である。
【0089】
別の実施形態では、本発明は、LC−PUFA、ビタミン、ポリフェノール及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化感受性化合物を含む組成物を強化するための方法に関し、この方法は、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体を組成物に添加することを含む。
【0090】
組成物は、「組成物」の段落の任意の実施形態で定義されるとおりである。
【0091】
好ましい実施形態では、組成物中の添加鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%は、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体の形態である。更により好ましくは、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、組成物中の実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、組成物中の唯一の添加鉄源である。
【0092】
鉄欠乏症を予防、軽減、及び/又は治療する方法において使用するための組成物
本発明の組成物は、上記のように、非常に生物学的利用能が高い、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体によって強化される。本発明はまた、個体における鉄欠乏症を予防、軽減及び/又は治療する方法において使用するための組成物にも関する。
【0093】
栄養を提供する方法
個体に本発明の食用組成物を供給することを含む、個体に栄養を提供する方法もまた企図される。本方法において使用される組成物は、食品組成物又は飲料組成物である。好ましくは、上記に定義される栄養組成物である。このような食用組成物は、生物学的に利用可能な鉄源を含む、かつ、栄養価を低下し得る酸化LC−PUFA、ビタミン及び/又はポリフェノールを低レベルしか含まないため、栄養を提供するのに特に有利である。
【0094】
組成物が粉末形態である一実施形態では、本方法は、
a)本発明の任意の実施形態に従って粉末形態の食用組成物を再構成する工程と、
b)当該再構成組成物を個体に供給する工程と、
を含む。
【0095】
一実施形態では、個体は、鉄欠乏である個体、又は鉄欠乏を発症するリスクのある個体である。別の実施形態では、個体は、乳児、幼児、妊娠中、授乳中若しくは妊娠前の女性、又は高齢者である。より好ましくは、個体は、乳児、幼児、又は妊娠中、授乳中若しくは妊娠前の女性である。
【0096】
酸化感受性化合物の酸化を防止又は軽減する方法
本発明は、添加鉄源を含む組成物中の、LC−PUFA、ビタミン、ポリフェノール及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化感受性化合物の酸化を軽減及び/又は予防するための方法に関し、外因性鉄、カゼイン及び外因性オルトリンを含む非ミセルの鉄−カゼイン錯体が当該添加鉄源として使用されることを特徴とする。
【0097】
酸化感受性化合物、添加された鉄源及び組成物は、「組成物」の段落の任意の実施形態に記載のとおりである。
【0098】
好ましい実施形態では、非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、組成物中の添加鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%に相当する。より好ましくは、非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、組成物に使用される実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、非ミセルの鉄−カゼイン錯体は、組成物中の唯一の添加鉄源である。換言すれば、組成物は、組成物中の鉄源として添加される他の第一鉄化合物又は第二鉄化合物を含まない。
【0099】
本発明者らは、噴霧乾燥形態の硫酸第一鉄七水和物又は溶解した硫酸第一鉄などの他の一般的な添加鉄源の代わりに、このような錯体を使用することにより、LC−PUFA、ビタミン及び/又はポリフェノールなどの感受性化合物の酸化を防止するか、又は少なくとも著しく軽減することができることを示した。
【0100】
添加鉄源は、感受性化合物の酸化に重要な影響を及ぼす一方で、鉄補給を主な目的として意図されていない成分の一部として存在する鉄源の影響はより小さく、後者の鉄源は、多くの場合、反応性が低く、後者の鉄源により供給される鉄は、通常、添加鉄源によって提供される量よりもはるかに少ない量で提供される。
【0101】
感受性化合物の酸化レベルは、酸化マーカーの分析を含む周知の技術を用いて評価することができる。LC−PUFAの場合、酸化レベルはまた、官能試験を用いて評価することができる。LC−PUFAの酸化の防止又は軽減は、同じ成分を含むが、鉄源は別の種類を含む組成物と比較した場合に、組成物中の酸敗臭、魚臭、金属様、ペンキ様、揚げ脂肪などの異味の低減によって確認される。このような異臭は、承認されている選好試験などの標準的な感覚試験に従い当業者により試験及び検証され得る。ココア組成物などのポリフェノールを含む組成物の場合、酸化のレベルは、視覚的又は分析的比色評価を使用して評価することができる。
【0102】
更なる第2の医療用途
好ましくはLC−PUFAを含む本発明の組成物は、本明細書に定義される疾患又は障害の予防、改善又は治療のために使用され得る。本明細書で使用するとき、用語「障害」又は「疾患」は、機能の撹乱又は異常;身体的又は精神的に病的な状態のいずれかを指す。Dorland’s Illustrated Medical Dictionary,(W.B.Saunders Co.27th ed.1988)を参照されたい。このような疾患又は障害は、栄養不良、代謝性疾患、神経変性疾患、アルツハイマー病/認知障害、パーキンソン病、神経疾患、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、低酸素性/虚血性脳損傷、自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)、抑うつ、頭痛、片頭痛、ナルコレプシー、GLUT−1欠損症、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)欠損症、ホスホフルクトキナーゼ(PFK)欠損症、糖原病V型(マッカードル病)、心虚血、レット症候群、結節性硬化症、糖尿病及び癌(星状細胞腫、前立腺癌、胃癌、腎臓癌、頭頸部癌)から選択することができ、好ましくは栄養不良、代謝性疾患、神経変性疾患の予防、改善又は治療において、好ましくは栄養補助食品として使用される。組成物は、好ましくは栄養組成物又は栄養補助食品として使用される。
【0103】
好ましくはLC−PUFAを含む本発明の組成物は、乳児又は児童の、神経システム及び/又は網膜の発達促進、並びに/又はメンタルパフォーマンス、行動機能及び視機能の増進及び/又は改善のために使用することもできる。
【0104】
本発明の目的のため、メンタルパフォーマンスは、例えば、乳児又は児童の認識及び知的能力、記憶力、並びに言語能力として意図される。神経システムの発達は、例えば脳及び神経の発達を含むことを意図する。
【0105】
好ましくはLC−PUFを含む本発明の組成物は、腸内細菌叢の発達を含む、免疫増強のために更に使用してもよい。
【0106】
好ましくはLC−PUFAを含む本発明の組成物は、更に、過体重、肥満及びインスリン抵抗性の発症リスク低減のために使用することができる。
【0107】
好ましくはLC−PUFAを含む上記のような本発明の組成物の有利な効果は、好ましくは、有効量の本発明による組成物を、それを必要とする対象に投与することによって達成される。好ましくは、このような組成物は、1日1回、好ましくは1日2回、より好ましくは1日3回投与され、投与中、好ましくは、本明細書に定義されるような、投与のための少なくとも1単位又は1用量が提供される。投与において、1日当たりに投与されるエネルギーの総量は、上記で定義されたとおりであるのが好ましい。本明細書で使用するとき、用語「対象」は動物を指す。好ましくは動物は哺乳動物である。対象は、例えば霊長類(例えば、ヒト)、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、及び鳥など指す。好ましい実施形態では、対象はヒトであり、より好ましくは乳児、児童又は成人から選択される。本発明の組成物の「有効量」という用語は、対象の生物学的若しくは医学的応答を引き出すか、対象の器官若しくは機能の発達を促進するか、又は症状を改善するか、疾患の進行を緩徐化若しくは遅延させるか、又は疾患を予防するなどの本発明の化合物の量を指す。好ましくは、このような「有効量」は、本明細書に記載のように得られるように包装された用量又は単位である。
【0108】
以下の実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。
【0109】
実施例1:魚油由来のDHAの酸化に対する鉄源の効果
2つの粉末組成物(試料A及びB)を調製した。各々が以下の表1に要約される量のDHA及び鉄源を含む。
【0111】
試料を以下のように作製した。乳脂肪、油混合物(菜種油、ヒマワリ油及びコーン油の組み合わせ)及びLC−PUFA源(DHAに富んだ魚油)を含有する脱脂粉乳ベースを、エマルション調製、続いて噴霧乾燥によって作製した。続いて、乾燥ブレンドプロセスによって、ベース粉末を鉄源と混合した。得られた粉末を、上部空間内に約5%の初期残存酸素濃度を与えるよう変更したガス発生条件によって密封包装材(ブリキ缶)に封入した。
【0112】
貯蔵寿命試験を30℃で実施し、専門的に訓練された官能パネル(最低14名)によって異なる時点で官能評価を実施した。官能評価の前に、粉末製品を、Vittelミネラルウォーターによって40℃で180mL中30g粉末で再構成した。
【0113】
結果を
図1にまとめる。このグラフから、噴霧乾燥形態の硫酸第一鉄が使用された試料Bと比較して、鉄−カゼイン錯体を鉄源として使用した場合(試料A)、魚のような悪臭が著しく低下したことが明らかであり、魚油に含まれるDHAの酸化が著しく低減されたことが示される。魚油も鉄も含まない対照は、魚のような悪臭が完全に無い。
【0114】
実施例2:微細藻類油由来のDHAの酸化に対する鉄源の効果
2つの粉末組成物(試料C及びD)を調製し、各々が以下の表2に要約される量のDHA及び鉄源を含む。
【0116】
試料を以下のように作製した。乳脂肪、油混合物(菜種油、ヒマワリ油及びコーン油の組み合わせ)及びLC−PUFA源(DHAに富んだ微細藻類油)を含有する脱脂粉乳ベースを、エマルション調製、続いて噴霧乾燥によって作製した。続いて、乾燥ブレンドプロセスによって、ベース粉末を鉄源と混合した。得られた粉末を、上部空間内に約5%の初期残存酸素濃度を与えるよう変更したガス発生条件によって密封包装材(ブリキ缶)に封入した。
【0117】
貯蔵寿命試験を30℃で実施し、専門的に訓練された官能パネル(最低14名)によって異なる時点で官能評価を実施した。官能評価の前に、粉末製品を、Vittelミネラルウォーターによって40℃で180mL中30g粉末で再構成した。
【0118】
結果を
図2にまとめる。このグラフから、ピロリン酸第二鉄が使用された試料Dと比較して、鉄−カゼイン錯体を鉄源として使用した場合(試料C)、魚のような悪臭が著しく低下したことが明らかであり、魚油に含まれるDHAの酸化が著しく低減されたことが示される。魚油も鉄も含まない対照は、魚のような悪臭が完全に無い。
【0119】
実施例3:チョコレート飲料中のポリフェノールの酸化に対する鉄源の効果
3つの試料(試料E〜G)を調製し、各々が以下の表3に要約される量の魚油及び鉄源を含む。
【0121】
試料を以下のように作製した。市販のNesquik RTD低脂肪チョコレート飲料を、スイスのスーパーマーケットから購入した。4.2mgの量の鉄を100mLのNesquik飲料に添加し、次いで、この飲料を75〜80℃で10分間熱処理した。試料を室温まで冷却し、その上4℃で24時間保管した後に、飲料の色を評価した。
【0122】
色性能による評価は、硫酸第一鉄(試料E)を使用した場合、飲料の鉄誘発性の暗色化を示した(第一鉄イオンとココアポリフェノールとの反応による)。鉄−カゼイン錯体を使用した試料Fは、不溶性のピロリン酸第二鉄を含む対照(試料G)と同様の色性能を示し、このことにより、ポリフェノールの酸化がほとんど生じないことが分かる。