【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において「部」は「質量部」を意味する。
【0039】
<実施例1>
まず、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液の複数の試作品(I〜VIII)を用意した。これら複数の試作品は、シリコーン生ゴムに対するMQレジンの配合比率を適宜変更することによって、後述する方法で測定される硬化後の貯蔵弾性率G’、tanδ及びtanδのピーク温度が様々な値を示すように調整した粘着剤の試作品である。なお、これらの試作品はいずれも同じ種類のシリコーン生ゴムとMQレジンを用いている。
【0040】
実施例1においては、これら複数の試作品のうち、tanδピーク温度、300℃における貯蔵弾性率、300℃におけるtanδが、後述する特定の値になる過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)を選択した。
【0041】
そして、この固形分濃度50質量%の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)100部、希釈溶剤としてトルエン67部、有機過酸化物として日油株式会社製の有機過酸化物型硬化剤(ナイパー(登録商標)BMT−K40、有機過酸化物の濃度:40%、有機過酸化物中の理論活性酸素量:6.05%)5.0部を均一に混合し、粘着剤液(1)を得た。この粘着剤液(1)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.242部である。
【0042】
この粘着剤液(1)に対して、後述する動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は28℃、300℃における貯蔵弾性率G’は51358Pa、300℃におけるtanδは0.07であった。
【0043】
次に、プライマー処理した厚さ25μmのポリイミド(PI)フィルムの片面に、粘着剤液(1)を乾燥後の粘着剤層の厚さが38μmになるように塗布し、乾燥炉内にて60℃で1分間乾燥して溶剤を除去し、200℃で2分間加熱硬化して粘着剤層を形成した。そして剥離ライナーとしてフッ素置換アルキル変性シリコーン樹脂で離型処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを粘着剤層に貼り合わせ、粘着テープを得た。
【0044】
[粘着剤組成物の動的粘弾性測定]
粘着剤液(1)を剥離ライナー上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布する。続いて乾燥炉内にて60℃で1分間乾燥して溶剤を除去する。そして、200℃で2分間加熱することによりシリコーン成分を硬化して、硬化後のシリコーン系粘着剤組成物からなる粘着剤層を形成する。この操作を複数繰り返すことにより積層して厚さ2mmの粘着剤層の積層体を形成し、これを測定用サンプルとする。
【0045】
測定用サンプルを平行円盤(φ8mm)の間に挟み、動的粘弾性測定装置(Rheometric Scientific社製、装置名RDAIII)を用いて、周波数10Hzのせん断ひずみを加えながら、昇温速度10℃/分で、−60℃〜300℃の範囲において貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を測定する。また、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)より、以下の計算式により損失正接tanδを算出する。
tanδ=損失弾性率(G’’)/貯蔵弾性率(G’)
【0046】
さらに、算出した損失正接(tanδ)を温度に対してプロットすることによって損失正接曲線を作成し、−60℃〜150℃の範囲で損失正接(tanδ)がピークとなるときの温度を記録する。
【0047】
<実施例2>
有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(2)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(2)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(2)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は29℃、300℃における貯蔵弾性率G’は41968Pa、300℃におけるtanδは0.11であった。
【0048】
<実施例3>
有機過酸化物の量を3部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(3)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(3)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.157部である。粘着剤液(3)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのーク温度は24℃、300℃における貯蔵弾性率G’は32229Pa、300℃におけるtanδは0.16であった。
【0049】
<実施例4>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(II)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(4)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(4)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(4)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδピーク温度は9℃、300℃における貯蔵弾性率G’は31491Pa、300℃におけるtanδは0.06であった。
【0050】
<実施例5>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(III)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(5)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(5)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(5)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は57℃、300℃における貯蔵弾性率G’は33843Pa、300℃におけるtanδは0.14であった。
【0051】
<実施例6>
固形分濃度50質量%の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)100部、希釈溶剤としてトルエン67部、有機過酸化物として日油株式会社製の有機過酸化物型硬化剤(ナイパー(登録商標)BMT−K40、有機過酸化物の濃度:40%、有機過酸化物中の理論活性酸素量:6.05%)5.0部、白金化合物としてCAT−PL−50T(信越化学工業株式会社製)0.5部を均一に混合し、粘着剤液(6)を得た。この粘着剤液(6)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着テープを作製した。粘着剤液(6)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.242部である。粘着剤液(6)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は30℃、300℃における貯蔵弾性率G’は71797Pa、300℃におけるtanδは0.07であった。
【0052】
<比較例1>
有機過酸化物の量を7.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C1)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C1)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.363部である。粘着剤液(C1)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は28℃、300℃における貯蔵弾性率G’は65375Pa、300℃におけるtanδは0.03であった。
【0053】
<比較例2>
有機過酸化物の量を2.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C2)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C2)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.121部である。粘着剤液(C2)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は32℃、300℃における貯蔵弾性率G’は23081Pa、300℃におけるtanδは0.22であった。
【0054】
<比較例3>
有機過酸化物の量を1.25部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C3)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C3)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.061部である。粘着剤液(C3)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は32℃、300℃における貯蔵弾性率G’は6910Pa、300℃におけるtanδは0.54であった。
【0055】
<比較例4>
有機過酸化物の量を0.625部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C4)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C4)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.030部である。粘着剤液(C4)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は32℃、300℃における貯蔵弾性率G’は616Pa、300℃におけるtanδは1.39であった。
【0056】
<比較例5>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(IV)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C5)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C5)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(C5)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は−17℃、300℃における貯蔵弾性率G’は82461Pa、300℃におけるtanδは0.05であった。
【0057】
<比較例6>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(V)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C6)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C6)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(C6)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は87℃、300℃における貯蔵弾性率G’は15214Pa、300℃におけるtanδは0.18であった。
【0058】
<比較例7>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(VI)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C7)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C7)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(C7)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は32℃、300℃における貯蔵弾性率G’は10545Pa、300℃におけるtanδは0.24であった。
【0059】
<比較例8>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(VII)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C8)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C8)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(C8)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は51℃、300℃における貯蔵弾性率G’は6294Pa、300℃におけるtanδが0.28であった。
【0060】
<比較例9>
過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(I)の代わりに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤原液(VIII)(固形分濃度50質量%)を使用し、有機過酸化物の量を3.75部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤液(C8)を調製し、粘着テープを作製した。粘着剤液(C8)において、有機過酸化物の量Pと有機過酸化物の理論活性酸素量Aの積PAは0.182部である。粘着剤液(C8)に対して動的粘弾性測定を行ったところ、tanδのピーク温度は51℃、300℃における貯蔵弾性率G’は9806Pa、300℃におけるtanδは0.20であった。
【0061】
以上の実施例及び比較例の粘着テープに対し、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[常温(23℃)の対SUS粘着力・糊残り性]
20mm幅に裁断した粘着テープを研磨したSUS板に貼り付け、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーで1往復させて圧着し、23℃環境で20〜40分放置した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の速度で180°の角度でテープを剥離するのに要する力を測定した。また、剥離後のSUS板への糊残りの有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:糊残り無し。
△:貼り付け端部にのみ、僅かに糊残り有り。
×:糊残り有り。
【0063】
[280℃乾燥加熱後の対SUS粘着力・糊残り性]
20mm幅に裁断した粘着テープを耐熱研磨したSUS板に貼り付け、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーで1往復させて圧着し、室温(23℃)で20分放置、及び280℃の乾燥機中で1時間加熱した。これを取り出して室温(23℃)で放冷した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の速度で180°の角度でテープを剥離するのに要する力(粘着力)を測定した。また、剥離後のSUS板への糊残りの有無を目視で確認し、上記の基準で評価した。
【0064】
[300℃リフロー後の対SUS粘着力・糊残り性]
20mm幅に裁断した粘着テープを耐熱研磨したSUS板に貼り付け、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーで1往復させて圧着し、300℃のリフロー炉で10分加熱した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の速度で180°の角度でテープを剥離するのに要する力(粘着力)を測定した。また、剥離後のSUS板への糊残りの有無を目視で確認し、上記の基準で評価した。
【0065】
[耐反発性試験]
図1(A)に示すように、研磨したSUS板1の下面に両面テープ2(株式会社寺岡製作所製、No.760H#25)を貼り付けた。さらに、その両面テープ2の下面に、幅25mm、長さ90mm、厚さ0.125mmのポリイミドフィルム3(カプトン500H)を、長さ40mmの端部がはみ出すようにして貼り付けた。次いで
図1(B)に示すように、ポリイミドフィルム3のはみ出し部分をSUS板1の端から10mmの位置に折り曲げ、これを20mm幅の粘着テープ4で固定して、これをサンプルとした。そして室温(23℃)、280℃の乾燥機で1時間、又は300℃のリフロー炉で10分間各サンプルを放置した。各サンプルを取り出し、
図1(C)に示す粘着テープ4が剥がれた距離aを計測し、以下の基準で評価した
○:剥がれた距離aが5mm以内
△:剥がれた距離aが5mm超10mm以内
×:剥がれた距離aが10mm超
【0066】
[総合評価]
以上の各測定の結果について、以下の基準で総合評価した。
○:全ての測定で○だったもの
△:×はなかったが△があったもの
×:×が一つでもあったもの
【0067】
【表1】
【0068】
<評価結果>
表1に示すように、実施例1〜6の粘着テープは、280〜300℃で加熱した後に剥離しても糊残りせず、また加熱中は部材の反発に耐え、剥がれを抑制できる接着性を示した。
【0069】
比較例1では300℃における貯蔵弾性率G’は十分に高く、tanδのピーク温度も適切な範囲内に収まっている。しかし、300℃におけるtanδが低過ぎるので、部材に対する接着性が低く、また高温環境下での耐反発性試験において著しい剥がれが発生した。また、PA部が適切な範囲よりも多過ぎるので、高温加熱後に剥離した際に貼り付け端部に僅かな糊残りが発生した。
【0070】
比較例2では300℃における貯蔵弾性率G’は十分に高く、tanδのピーク温度も適切な範囲内に収まっている。しかし、300℃におけるtanδが高過ぎるので、300℃加熱後に剥離した際に糊残りが発生した。
【0071】
比較例3及び4ではtanδのピーク温度は適切な範囲内に収まっている。しかし、300℃における貯蔵弾性率G’が低過ぎ、さらに300℃におけるtanδが高過ぎるので、高温環境下での耐反発性試験において凝集破壊による剥がれが発生した。また、高温加熱後の剥離においても糊残りが発生した。
【0072】
比較例5及び6では貯蔵弾性率G’は十分に高く、300℃におけるtanδも適切な範囲に収まっている。しかし、比較例5ではtanδのピーク温度が低過ぎ、比較例6ではtanδのピーク温度が高過ぎるので、貼り付け端部に僅かな糊残りが発生した。
【0073】
比較例7及び8ではtanδのピーク温度は適切な範囲内に収まっている。しかし、300℃における貯蔵弾性率G’が低過ぎ、さらにtanδが高過ぎるので高温加熱後に糊残りが発生した。
【0074】
比較例9ではtanδのピーク温度も適切な範囲内に収まっており、300℃におけるtanδも適切な範囲に収まっている。しかし、300℃における貯蔵弾性率G’が低過ぎるので、高温加熱後に糊残りが発生した。