特許第6974481号(P6974481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パンチ フライブリッド リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000002
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000003
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000004
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000005
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000006
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000007
  • 特許6974481-エネルギー貯蔵および回生システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974481
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵および回生システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/10 20060101AFI20211118BHJP
   F16H 33/02 20060101ALI20211118BHJP
   F02B 61/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B60K6/10
   F16H33/02 A
   F02B61/00 F
【請求項の数】28
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-541801(P2019-541801)
(86)(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公表番号】特表2020-507506(P2020-507506A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】GB2018050288
(87)【国際公開番号】WO2018142135
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2021年1月28日
(31)【優先権主張番号】1701610.6
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519074675
【氏名又は名称】パンチ フライブリッド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ディーキン アンドリュー
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭57−501072(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0115672(US,A1)
【文献】 特表2015−507725(JP,A)
【文献】 特開平02−216321(JP,A)
【文献】 特表2010−533620(JP,A)
【文献】 特開2009−287784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/10
F02B 61/00
F16H 33/02
F15B 21/14
B60K 6/08
F16H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機およびエネルギー貯蔵フライホイールに結合可能なエネルギー貯蔵および回生システム(ERS)であって、前記ERSは、
第1のポンピング要素および第2のポンピング要素を有する静水圧配置であって、各ポンピング要素が、前記第1および第2のポンピング要素の間で流体動力を伝達するためのそれぞれの流体変位および流体結合配置を有し、前記第1および第2のポンピング要素のそれぞれの前記流体結合配置の少なくとも1つが、前記第1および第2のポンピング要素の間の流体動力のトランスミッションのために1つまたは複数の油圧サービスに選択的に結合できるものと、
少なくとも3つの入力を備える差動装置であって、前記第1のポンピング要素の第1のドライブシャフトが、使用時に原動機に結合され、前記差動装置の第1の入力が、使用時に前記原動機に結合され、前記差動装置の第2の入力が、前記第2のポンピング要素の第2のドライブシャフトに結合され、前記差動装置の第3の入力が、使用時にフライホイールに結合されるものとを備える、
ERS。
【請求項2】
前記差動装置が、遊星歯車ギアセットである、
請求項1に記載のERS。
【請求項3】
前記ポンピング要素の少なくとも1つが、その流体変位を変化させるための機構を有する、
請求項1または2に記載のERS。
【請求項4】
前記ポンピング要素の少なくとも1つが、そのドライブシャフトの速度の所与の向きのために流れを変化させて逆転させるための機構を有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のERS。
【請求項5】
前記第1および第2のポンピング要素が、それらのそれぞれの流体変位を変化させるための機構を有する、
請求項3に記載のERS。
【請求項6】
第1および第2のポンピング要素の両方が、前記それぞれのドライブシャフトの速度の所与の向きのために流れを変化させて逆転させるための機構を有する、
請求項5に記載のERS。
【請求項7】
前記第1および第2のポンピング要素が、前記第1および第2のポンピング要素の間の流体動力のトランスミッションのために、それらのそれぞれの流体結合配置を介して結合できる、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のERS。
【請求項8】
前記原動機への結合と前記フライホイールへの結合との間を通過する前記動力の一部のみが前記第1および第2のポンピング要素の間を通過する動力分割配置をさらに備える、
請求項7に記載のERS。
【請求項9】
前記第1のドライブシャフトが、遊星歯車のキャリアに結合され、前記第2のドライブシャフトが、前記遊星歯車の円環に結合され、前記フライホイールが、前記遊星歯車の太陽に結合される、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のERS。
【請求項10】
前記遊星歯車が、単純な遊星歯車である、
請求項9に記載のERS。
【請求項11】
前記キャリアが静止した状態で前記太陽と前記円環との間に負の速度比が存在する、
請求項9または10に記載のERS。
【請求項12】
前記第1および第2のポンピング要素の前記それぞれの流体結合配置が、前記第1および第2のポンピング要素の間の流体動力のトランスミッションが不可能になるように分離できる、
請求項1〜11のいずれか一項に記載のERS。
【請求項13】
車両運動エネルギーを前記フライホイールに、または前記フライホイールから伝達するように適合される、
請求項1〜12のいずれか一項に記載のERS。
【請求項14】
前記差動装置の前記第3の入力に結合されたエネルギー貯蔵フライホイールをさらに備える、
請求項1〜13のいずれか一項に記載のERS。
【請求項15】
前記第1のポンピング要素の前記第1のドライブシャフトおよび差動装置の第1の入力に結合された原動機をさらに備える、
請求項1〜14のいずれか一項に記載のERS。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを備える機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.前記機械または車両のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力を示す信号を決定するステップと、
b.原動機の動力出力を、前記車両または機械のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力出力を超えるように設定するステップと、
c.前記原動機からフライホイールへの動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む、
方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを備える機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.前記機械または車両のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力を示す信号を決定するステップと、
b.原動機の動力出力を、前記車両または機械のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求されるレベルよりも低いレベルに設定するステップと、
c.フライホイールから前記原動機への動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む、
方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを備える機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.前記機械または車両のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力を示す信号を決定するステップと、
c.フライホイールと原動機との間で動力を伝達する方向を決定するステップと、
b.前記原動機の動力出力を、前記決定された動力伝達の方向に応じて、前記車両または機械のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求されるレベルよりも低いまたは高いレベルに設定するステップと、
d.前記決定された動力伝達の方向に応じて、前記フライホイールからまたは前記フライホイールに前記原動機への動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む、
方法。
【請求項19】
地面係合駆動配置、および請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを備える機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.地面係合駆動配置のトルク要求を示す信号を決定するステップと、
b.前記トルク要求の一部が満たされるようにフライホイールから前記地面係合駆動配置への動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと、
c.前記トルク要求の実質的に残りの部分がエンジン出力によって満たされるように、前記エンジン出力を設定するステップと
を含む、
方法。
【請求項20】
地面係合駆動配置、および請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを備える機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.車両車輪のトルク要求を示す信号を決定するステップと、
b.前記地面係合駆動配置のトルク要求がエンジン出力によって超えられるように、前記エンジン出力を設定するステップと、
c.前記トルク要求の実質的に残りの部分がフライホイールに提供されるように前記地面係合駆動配置から前記フライホイールへの動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む、
方法。
【請求項21】
地面係合駆動配置、および請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを備える機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.前記地面係合駆動配置のトルク要求を示す信号を決定するステップと、
b.フライホイールと前記係合駆動配置の地面との間で動力を伝達する方向を決定するステップと、
c.前記決定された方向に応じて、出力が前記トルク要求を超えるように、またはその逆になるようにエンジン出力を設定するステップと、
d.余分なエンジン出力が前記フライホイールに提供されるか、または前記フライホイールからのトルクが、前記エンジン出力が前記トルク要求を満たさない前記地面係合駆動配置に提供されるかを制御するために、前記決定された方向に従って第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む、
方法。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の機械または車両を制御する方法であって、前記方法は、
a.前記1つまたは複数の油圧サービスの流体動力要件を示す信号を決定するステップと、
b.前記1つまたは複数の油圧サービスと前記第1および第2のポンピング要素のそれぞれの前記流体結合配置の少なくとも1つとの間で流体動力を伝達する方向を決定するステップと、
c.少なくとも1つの油圧サービスに動力を供給するか、または少なくとも1つの油圧サービスから動力を回収するかを制御するために、前記決定された方向に従って前記第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップとを含む、
方法。
【請求項23】
請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法に従って動作する、
車両または機械。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のERSを含んで動作する、
車両または機械。
【請求項25】
前記車両または機械が、都市旅客車両である、
請求項23または24に記載の車両または機械。
【請求項26】
前記車両または機械が、建設、産業または農業車両の1つである、
請求項23または24に記載の車両または機械。
【請求項27】
前記車両または機械が、繰り返される周期的な動作に適合される、
請求項23〜26のいずれか一項に記載の車両または機械。
【請求項28】
前記車両が、積載車両、材料移動車両、掘削機および車輪式ローダの1つである、
請求項23〜27のいずれか一項に記載の車両または機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー回生システム(ERS)に関し、特に、フライホイールにエネルギーが回転運動エネルギーとして貯蔵されるKERSに関する。本発明は、限定はしないが、建設、産業、農業および他のオフハイウェイ車両に特に適用されるが、他の車両および機械にも適用される。「ERS」という略語は、エネルギー回生システムを指すために使用される。
【背景技術】
【0002】
ERSを車両のドライブトレインの一部に取り付けることが知られている。ERSは、典型的には、フライホイールシステムと、動力シンク/ソースとの間で動力を伝送するためのエネルギー伝達トランスミッションを備え、このシンク/ソースは、典型的には、車両の車輪である。しかしながら、本発明は、車両または機械内の1つまたは複数のソースからのエネルギーを利用し、このエネルギーを貯蔵し、次いで1つまたは複数の目的のためにエネルギーを再利用することに関する。シンク/ソースの重要性は、フライホイールとの間で伝送される動力の流れがどちらの方向にもなる可能性があることである。ソース/シンクが車両の車輪または内燃エンジンなどのロータリー装置の場合、エネルギー伝達トランスミッションは、少なくともフライホイールの速度と、場合によってはフライホイールと動力ソース/シンクの両方の速度がそれらの間で動力が交換されるときに連続的に変化するため、フライホイールと動力ソース/シンクとの間の連続的に変化する速度比に対応するために必要である。この例では、フライホイールへの動力の流れによりフライホイールが加速することでその速度が増加し、(この場合)シンク/ソースは、ソースとして作用して減速する。したがって、フライホイールへの動力の流れによりソース/シンクが減速し、この事象の例は、車両の回生制動を含む。逆に、フライホイールからの動力の流れによりフライホイールが減速することでその速度が減少し、この場合、シンク/ソースは、シンクとして作用して加速し、したがって、フライホイールからの動力の流れによりソース/シンクが加速し、この事象の例は、フライホイールのエネルギーを使用してこれらが行われる車両の加速を含む。この例では、回生されるエネルギーは、車両の運動エネルギーである。
【0003】
ソース/シンクの別の例は、掘削機などの建設機械のブームおよび/または旋回であり、この場合、エネルギーは、所与の圧力で油圧サービスに出入りするように伝達される流体の体積の形を取り得る(流体エネルギーは、流体体積と圧力の積として定義される)。
【0004】
ソース/シンクの別の例は、内燃エンジンなどのエンジンまたはモータであり、この場合、エネルギーは、所与のトルクでのシャフトの回転角度の形を取り得る(そのような回転エネルギーは、回転角度とトルクの積として定義される)。
【0005】
ERSには2つの主要な要素、すなわちエネルギー貯蔵装置、およびエネルギー伝達トランスミッションが存在する。本発明で主に考慮されるエネルギー貯蔵装置は、ロータリー機械貯蔵装置、またはフライホイールである。典型的には、これは、最大速度20,000rpm以上で動作するように適合される高速フライホイールである。高速フライホイールにより、高レベルのエネルギーをフライホイールに貯蔵することが可能になる。エネルギートランスミッションには、連続的に可変の比を有さなければならないという要件があり、好ましくは高い効率および適切な比の広がりをも有する。低コストで信頼性があり、コンパクトで実績のあるソリューションで許容可能なトランスミッション特性を達成することには、課題が存在し得る。特に車両用途では、異なる車両のタイプおよびサイズの範囲に装置を取り付けるとき、パッケージングの柔軟性を提供するソリューションを達成することが大きな利点となる可能性がある。
【0006】
ほとんどの車両または機械には、内燃エンジンまたは電気モータなどの原動機も存在する。頻繁に繰り返される周期的な動作を行う必要がある特定の用途では、エンジンは、繰り返しサイクルの特定の点で動作することができるが、サイクルの他の点では非常に低い動力で(またはエンジン制動であっても)動作し得る。エンジンの平均出力は、実際には必要な最大動力の一部にすぎない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、建設、産業、農業または他のオフハイウェイ車両または機械などの車両または機械用のERSにおけるエネルギー伝達トランスミッションの効率を改善することである。本発明のさらなる目的は、建設、産業、農業または他のオフハイウェイ車両または機械などの車両または機械において効率的なおよび/または小型の原動機を可能にすることができるERSを提供することである。本発明のさらなる目的は、システムコストおよび/または燃料消費量および/または排気ガスを削減する目的で、建設、産業、農業または他のオフハイウェイ車両または機械などの車両または機械において複数のモードのERS動作を提供することである。本発明のさらなる目的は、建設、産業、農業または他のオフハイウェイ車両または機械などの車両または機械で使用するための技術リスクが低くかつ低コストであり、またコンパクトなERSを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明によれば、原動機およびエネルギー貯蔵フライホイールに結合可能なエネルギー貯蔵および回生システム(ERS)が提供され、ERSは、
第1のポンピング要素および第2のポンピング要素を有する静水圧配置であって、各ポンピング要素は、第1および第2のポンピング要素の間で流体動力を伝達するためのそれぞれの流体変位および流体結合配置を有する静水圧配置と、
少なくとも3つの入力を備える差動装置であって、第1のポンピング要素の第1のドライブシャフトは、使用時に原動機に結合され、差動装置の第1の入力は、使用時に前記原動機に結合され、差動装置の第2の入力は、第2のポンピング要素の第2のドライブシャフトに結合され、差動装置の第3の入力は、使用時にフライホイールに結合される差動装置と
を備える。
【0009】
典型的には、本発明は、建設、農業または産業機械に適用することができる。そのような機械または車両には、典型的には、ブーム、キャブの回転もしくは旋回、または他の油圧作動サービスまたは機器など、搭載または車載油圧サービスに対する要件がある。油圧ポンプは、多くの場合に内燃エンジンなどの原動機によって駆動され、流体は、そのようなエンジン搭載ポンプからの圧力で油圧サービスに供給される。本発明は、この従来のポンプ配置を利用し、差動装置および第2のポンピング要素で増強して車両または機械でのエネルギー回収および再利用の可能性を広げる。これにより、車両の効率を向上させることができる。
【0010】
ERS差動装置は、遊星歯車ギアセットである場合がある。そのようなギアセットは、典型的には、太陽ギア、キャリアおよび円環ギアを備え得るが、知られている遊星歯車の多くのバリエーションが存在する。前述の単純な遊星歯車では、キャリアが静止しているときに太陽と円環との間に負の速度比が存在し、この比は、遊星歯車構成を特徴づけ、R13_epiと呼ばれるものとする。キャリアは、典型的には、それら自体のそれぞれの軸の周りを自由に回転するが、また太陽ギアを周回する惑星ギアのリングを備え得る。必要に応じて、他の形態の遊星歯車を用いることができ、そのような変形は、車両の最終ドライブに見られるベベルギア遊星歯車、相互に係合した惑星の対が太陽および円環と係合するアイドラ遊星歯車を含む。
【0011】
ポンピング要素の少なくとも1つは、その流体変位を変化させるための機構を有してもよい。
【0012】
ポンピング要素の少なくとも1つは、(そのドライブシャフトの速度の所与の向きのために)流れを変化させて逆転させるための機構を有してもよい。
【0013】
第1および第2のポンピング要素は、それらのそれぞれの流体変位を変化させるための機構を有してもよい。
【0014】
第1および第2のポンピング要素の両方は、(それぞれのドライブシャフトの速度の所与の向きのために)流れを変化させて逆転させるための機構を有してもよい。
【0015】
第1および第2のポンピング要素は、第1および第2のポンピング要素の間の流体動力のトランスミッションのために、それぞれの流体結合配置を介して結合されてもよい。
【0016】
知られているように、それらの流体結合配置を介して第1および第2のポンピング要素を結合すると、静水圧CVTが形成される。ポンプの流体変位設定の比は、静水圧CVTの速度比、したがってまたトルク比を実質的に定義する。
【0017】
ERSは、エンジンとフライホイールとの間を通過する動力の一部のみが第1および第2のポンピング要素の間を通過する動力分割配置を備えてもよい。
【0018】
静水圧CVT、特に低コストの静水圧CVTの効率は多くの他のタイプのCVTの効率よりも低いため、ERS駆動配置全体の効率を高め、それによりエンジンおよび/またはフライホイールとの間の動力を改善することができることが有益である。したがって、本発明のERSでは、動力分割配置が提案されている。
【0019】
動力分割配置は、CVTなどの可変比経路(すなわち比が連続的に可変である動力トランスミッション経路)および固定比経路を含むためにそのように呼ばれ、後者は、典型的には、前者よりも効率が高くなる。動力経路は、互いに並列になるように配置される。このレイアウトは、「シャント」と呼ばれる。シャントの1つの形態では、可変および固定比経路からの速度は、差動速度装置の一方の端(すなわち入力端または出力端)で合計され、トルクは、「結合点」または「トルク加算接合点」と呼ばれるノードにおいてもう一方の端(すなわち入力端および出力端の他方)で合計される。結合点がシャントの出力側にある場合、これは出力結合と呼ばれる。同様に、結合点が遊星歯車の入力側にある場合、これは入力結合と呼ばれる。
【0020】
総動力の一部のみが動力分割シャントの効率の低い可変比経路を通過するため、可変比経路のみを含んだ配置と比較して、装置の効率全体が向上する。これは、各経路の推定損失を加えてKERSトランスミッションの合計効率を形成する単純化された式から説明することができる:
KERSトランスミッション効率≒PCVT×(1−ECVT)+(1−PCVT)×(1−EFRP
CVT=可変比経路(CVT)を通過する総動力の割合
CVT=CVTの効率
FRP=固定比経路の効率
【0021】
総動力の25%が特定の動作点でCVTを通過し、固定比経路の効率が96%であり、CVT経路の効率が84%である場合、KERS効率は、次のように推定され得る:
KERSトランスミッション効率≒1−{[0.25×(1−0.84)]+[(1−0.25)×(1−0.96)]}=93%
【0022】
これは、CVT経路のみの84%よりも大幅に高くなっている。上記の推定値は、最終ドライブなどの他の駆動比からの効率効果を除外しているが、説明のためには十分である。
【0023】
動力分割配置は、少なくとも3つの入力を有する差動または速度混合装置を備えてもよい。差動または速度混合配置は、好ましくは正確に3つの入力を備える。典型的には、差動または速度混合配置は、遊星歯車ギアセットを備える。このギアセットの3つの入力は太陽、キャリアおよび円環であるが、ベベルギアタイプ(最終ドライブトランスミッションに見られる)、またはアイドラ遊星歯車(惑星の対が相互に係合し、キャリア内に搭載され、太陽および円環と噛み合う)などの他の形態の遊星歯車も知られている。遊星歯車は、適切には、単純な太陽、キャリアおよび円環を備えてもよく、あるいは、2つの太陽ギアと、ベベルギアを備えるキャリアとを備えてもよく、別の例では、遊星歯車は、太陽ギアと、アイドラ惑星キャリア配置と、円環とを備える。
【0024】
静水圧CVTは、2つのポンピング要素(これらは各々、油圧ポンプおよび/またはモータのいずれかとして構成され得る)を備えることができ、一方または両方のユニットの流体変位を調整することによって変更される比を有することができる。そのような調整は、必要に応じて、アキシャルピストンポンプの斜板角度を調整することによって行われてもよく、または斜軸式ピストンポンプ配置の角度を調整することによって行われてもよい。ポンピング要素の相対変位設定により、静水圧CVTの速度比(およびトルク比)が設定される。ポンピングユニットの一方または両方は、実質的にゼロの流体変位に設定することができる場合がある。
【0025】
静水圧CVTは、2つのポンピングユニット(これらは各々、油圧ポンプおよび/またはモータのいずれかとして構成され得る)を備えることができ、一方または両方のユニットの流体変位を調整することによって変更される比を有することができる。そのような調整は、必要に応じて、アキシャルピストンポンプの斜板角度を調整することによって行われてもよく、または斜軸式ピストンポンプ配置の角度を調整することによって行われてもよい。ポンピング要素の相対変位設定により、静水圧CVTの速度比(およびトルク比)が設定される。ポンピングユニットの一方または両方は、実質的にゼロの変位に設定することができる場合がある。
【0026】
出力結合シャント配置に戻ると、CVT入力側のポンピングユニットの変位が実質的にゼロに設定される場合、KERSは、車両が静止していても係合することができる(すなわちフライホイールは、係合したKERSを介して車輪に接続される)。静水圧CVT比が効果的にロックされることで、KERS出力に接続されるその出力は、ゼロ速度になる。したがって、車両が静止状態に近い場合でも、KERSによって車両の車輪にトルクを加えることができ、よってエネルギー伝達の可能性を最大限に高める。さらに、KERSと車両の車輪との間に切断、クラッチ、または起動装置を含める必要がないため、重量、コストおよび複雑さが軽減される。入力結合配置でこの「係合KERSニュートラル」機能を達成するために、遊星歯車ユニットは、フライホイールおよび静水圧CVTの出力から非ゼロ速度を混合してその第3の要素をゼロ出力速度状態にし、したがって車両の車輪をゼロ速度状態にする必要があることに留意されたい。そのような入力結合配置で車輪にトルクが加えられると、KERSトランスミッション内で動力の再循環が発生する必要があり、これにより望ましくない高レベルの動力損失が発生する可能性がある。したがって、出力結合シャントは、起動状態の下でより高い効率を提供するために好ましい。頻繁な車両の停止および起動に対応することができること。これは、シティカー、ごみ収集車、配達用トラックなどの都市サイクル車両、特にバスで重要である。比が静止車両(「KERS係合ニュートラル」)状態からシフトするとすべての動力がCVTを通過し、これは前述のように比較的効率が悪い場合があるが、車両速度がゼロに近いため、この動力レベルは比較的低く、静水圧CVT内で循環する流体がないため、抗力損失は低くなる。この出力結合動力分割シャントは、バスが駅または停留所で待機しているときなど、車両が静止しているときに多くのエネルギーが失われる入力結合シャントの再循環動力状態よりも好ましい配置である。
【0027】
この配置のさらなる利点について説明する。
【0028】
静水圧CVT配置では、速度およびトルクの向きは、ERS動作エンベロープの大部分またはすべてにわたる固定および可変比経路を介して、動力が同じ向きに(すなわちエンジンからフライホイールに、またはその逆に)流れるように配置することができる。これは、より多くのエネルギーが失われる再循環動力が存在する(すなわち並列経路の1つにおいて、動力が他の経路の動力とは反対の向きに流れる)配置よりも好ましい。好ましい純粋な動力分割構成は、前述の単純な遊星歯車を使用して達成することができ、好ましくは、太陽ギアは、フライホイールに結合可能であり、キャリアは、エンジンおよび第1のポンピング要素に結合可能であり、円環は、第2のポンピング要素に結合可能であり、一般にキャリアとは反対の方向に回転するように構成される。これは、第1および第2のポンピング要素、ならびにそれらのそれぞれの流体変位機構を適切に配置することによって容易に達成することができ、実際、柔軟な静水圧CVT配置を使用する利点の1つである。機械式CVTを使用すると、適切なギアリングが必要になり、重量およびパッケージを含み得る他の機械的制約が生じる。
【0029】
さらに、静水圧CVTの第1のポンピング要素(エンジン側によって駆動される)が実質的にゼロ変位状態を採用することができるとき、第2のポンピング要素のドライブシャフトは、実質的にゼロ速度を有するように拘束される。この状態では、KERSトランスミッションは、オーバードライブ比(つまり、フライホイール速度に比べて高いエンジン速度)にある場合があるが、トランスミッションを通過する総動力はCVTを通過しない。したがって、この状態は非常に効率的であり、すべての動力がKERSトランスミッションの機械駆動経路を通過するため、高い車両速度からのエネルギー回生に関連する高い動力を非常に効率的に回生することができる。
【0030】
したがって、第1および第2のポンピング要素の一方または両方は、実質的にゼロである流体変位設定を採用することが可能であってもよい。
【0031】
第1のポンピング要素は、好ましくはドライブシャフトを含む。第2のポンピング要素もまた、好ましくはドライブシャフトを含む。好ましい構成では、第1のポンピング要素のドライブシャフトは、遊星歯車キャリアに結合され、第2のポンピング要素のドライブシャフトは、円環に結合され、フライホイールは、遊星歯車太陽に結合される。任意選択で、遊星歯車は、単純な遊星歯車であり、(キャリアが静止した状態で)太陽と円環との間に負の速度比が存在する。
【0032】
第1および第2のポンピング要素のそれぞれの流体結合配置は、第1および第2のポンピング要素の間の流体動力のトランスミッションが不可能になるように分離されてもよい。
【0033】
第1および第2のポンピング要素のそれぞれの流体結合配置の少なくとも1つは、第1および第2のポンピング要素の間の流体動力のトランスミッションのために1つまたは複数の油圧サービスに選択的に結合されてもよい。例えば、エンジンに結合される第1のポンピング要素を使用し、ブーム、積載アーム、キャブの旋回、または同様の油圧駆動機器などの1つまたは複数の油圧サービスにエネルギーを提供し、および/または1つまたは複数の油圧サービスからエネルギーを回収することができる。このようにして、フライホイールが不要または充電されていない場合、エンジンは、そのような油圧サービスに動力を供給し、またはそのような油圧サービスからの動力によってサポートされることが可能になる。代替的または追加的に、少なくとも1つの油圧サービスに動力を供給し、または少なくとも1つの油圧サービスから動力を回収するために第2のポンプのみを使用することによって燃料を節約することができる。このようにして、フライホイールが部分的または完全に充電されると、フライホイールに貯蔵された以前に取得されたエネルギーを使用して1つまたは複数の油圧サービスに動力を供給し、それによって内燃エンジンなどの原動機に動力を供給するために使用される燃料またはエネルギーを節約することができる。
【0034】
ERSは、車輪とフライホイールとの間の車両運動エネルギーの伝達にさらに適合され得る。
【0035】
有利なことに、これは、それ自体で、または油圧エネルギーの回収に加えて、車両または機械にさらなるエネルギーおよび燃料の節約を提供し得る。
【0036】
油圧または車両/機械サービスからのエネルギーを再使用するだけでなく、ERSは、原動機の小型化も可能にするため、エネルギー(小型のエンジンまたはモータは、全負荷に近づくために効率が向上する傾向がある)、コストおよび重量を節約することができる。さらに、より広い範囲の製品にわたって原動機の1つの設計を使用することにはいくつかの利点があり、したがって製造業者に商業的利点を提供することができる。
【0037】
本発明はまた、上述のようなERSを備える機械または車両を制御する方法を提供し、方法は、
a.機械または車両のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力を示す信号を決定するステップと、
b.原動機の動力出力を、車両または機械のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力出力を超えるように設定するステップと、
c.原動機からフライホイールへの動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む。
【0038】
本発明は、上述のようなERSを備える機械または車両を制御する方法をさらに提供することができ、方法は、
a.機械または車両のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求される動力を示す信号を決定するステップと、
b.原動機の動力出力を、車両または機械のデューティサイクルの現在の動作状態によって要求されるレベルよりも低いレベルに設定するステップと、
c.フライホイールから原動機への動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと
を含む。
【0039】
本発明は、ERSを備える機械または車両を制御する方法をさらに提供することができ、方法は、上記の方法の両方のステップを選択的に行う。
【0040】
したがって、繰り返される周期的な動作中、ERSは、平均動力要件がピーク要件よりも低いという事実を利用することができる。したがって、原動機は、ピーク動力要件に対応するように特大にされることなく、そのような平均要件に合わせてサイズ設定をすることができる。低動力要件の期間中、原動機を使用し、フライホイールに必要とさない余分なエネルギーを貯蔵することができる。逆に、高動力が必要なサイクルの期間中、ERSに以前に貯蔵されたフライホイールエネルギーを使用し、原動機の限られた動力容量を補うことができる。したがって、原動機を小型化することができる。
【0041】
また、フライホイールは、そのような周期的な動作、または短期間のエネルギー貯蔵を必要とするサイクルの貯蔵装置として特に適していることにも留意されたい。これは、サイクルが中程度のエネルギーであるが、高動力になる傾向があるためである。さらに、フライホイールは、コーストダウンの損失のため、(例えば)バッテリーよりも多くのエネルギーを失う傾向がある。しかしながら、周期的な動作、またはバスなどのストップスタート都市車両で使用する場合、そのような制限は欠点を示さず、フライホイールシステムのコストおよび高動力容量の利点を有効に使用することができる。
【0042】
ERSを使用し、車両の車輪、軌道または他の地面係合配置からエネルギーをリサイクルすることができる。典型的には、そのようなエネルギー回生は、車両運動エネルギーの取得および再使用を伴うが、例えば、マイニングトラックまたは定期的に丘を登ったり走ったりする他の車両など、重力ポテンシャルエネルギーの回収および再使用にも同様に使用することができる。
【0043】
本発明のさらなる態様では、上述のようなERS、および地面係合配置(車輪または軌道など)、および遅延(または制動)装置を備える機械または車両を制御する方法が提供され、方法は、
a.車両車輪のトルク要求を示す信号を決定するステップと、
b.車両車輪のトルク要求の一部が満たされるようにフライホイールから地面係合配置への動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと、
c.車両車輪のトルク要求の実質的に残りの部分がそのようなエンジン出力によって満たされるように、エンジンおよび/または遅延(または制動)装置出力(トルクまたは動力など)を設定するステップと
を含む。
【0044】
本発明のまたさらなる態様では、上述のようなERS、および地面係合配置(車輪または軌道など)を備える機械または車両を制御する方法が提供され、方法は、
a.車両車輪のトルク要求を示す信号を決定するステップと、
b.車両車輪のトルク要求の一部が満たされるように地面係合配置からフライホイールへの動力伝達を行うために、第1および第2のポンピング要素の一方または両方の流体変位設定を変更するステップと、
c.車両車輪のトルク要求の実質的に残りの部分がそのようなエンジン出力によって満たされるように、エンジン出力(トルクまたは動力など)を設定するステップと
を含む。
【0045】
そのような方法では、原動機の使用よりも、および/または動力または制動力または遅延力を供給するための他の車両または機械システムの使用よりもフライホイールの使用を優先することが有利となり得る。したがって、車両または機械でリターダまたは制動装置を使用するよりも優先して、地面係合配置からフライホイールにエネルギーを伝送することがでる。同様に、エネルギーは、車両または機械で原動機を使用するよりも優先して、フライホイールから地面係合配置に伝送されてもよい。したがって、エネルギーおよび/または燃料が節約され、フライホイールのエネルギーができるだけ早く貯蔵および/または使用されるため、フライホイールでのコーストダウンのエネルギーの影響が最小限に抑えられる。
【0046】
本発明は、機械および/または車両に適用可能である。
【0047】
本発明は、上述の方法の1つまたは複数、および/または上述のERSを使用して動作する車両または機械を提供する。
【0048】
車両または機械は、都市旅客車両であってもよく、例えば車両は、バスまたは長距離バスである。
【0049】
車両は、建設、産業または農業車両であり得る。
【0050】
車両または機械は、繰り返される周期的な作業動作に適合および/または配置されてもよい。
【0051】
車両または機械は、掘削機または車輪式ローダなどの積載または材料移動車両または機械であり得る。
【0052】
ERSは、エネルギー節約装置として、および/または前述の車両および機械の原動機の小型化イネーブラとして有利であり得、これは、繰り返されるもしくは周期的な動作、バスもしくは長距離バスもしくはシティカーなどの都市車両の場合の頻繁なストップスタート特性、またはオフハイウェイ車両もしくは機械の前進−後進(シャトル)要件を含んでもよい。
【0053】
以下の説明では、エンジンを参照する。これは原動機であり、電気モータまたは他の動力源であってもよいことを理解されたい。
【0054】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、ERSは、エンジンが余剰動力を有するときはフライホイールを充電している。
図2図2は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、ERSは、エンジンの動力が不足しているときにフライホイールを放電している。
図3図3は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、エンジンポンプは、油圧サービスに動力を供給するためにのみ使用される。
図4図4は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、エンジンポンプは、油圧サービスから動力を回収または受け取るためにのみ使用される。
図5図5は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、第1および第2のポンピング要素の一方または両方は、油圧サービスからエネルギーを受け取りまたは回収し、そのようなエネルギーをエンジンおよび/またはフライホイールに送達するために使用される。
図6図6は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、油圧サービスは、第1および第2のポンピング要素の一方または両方、ならびにエンジンおよび/またはフライホイールを使用して動力を供給される。
図7図7は、本発明によるパワートレインのエンジンに結合されたERSを示す図であり、ERSは、車両の車両運動エネルギーの回生に適合される。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1図6を参照すると、エンジン(または他の原動機)11は、単純な遊星歯車ギアセット5のキャリア7に結合された関連するドライブシャフト10を有する第1のポンピング要素4に結合される。関連するドライブシャフト9を有する第2のポンピング要素3は、ギアを介して遊星歯車5の円環8に結合される。太陽6は、フライホイール2に結合される。
【0057】
図1は、第1のポンピング要素4が第2のポンピング要素3に結合される場合を示し、それらのそれぞれの流体結合配置は、それらの間の圧力、したがって静水圧動力での流体の伝達のために配置される。一方または両方のポンピング要素の変位を変化させることによって、CVT比を調整してフライホイールへの動力を駆動することができる。この例では、キャリア7に加えられるトルクは、円環8に加えられるトルクとは反対になる。したがって、動力分割配置で必要とされるように、動力を並列に伝達するために、円環は、キャリア7とは反対の向きに駆動される必要がある。
【0058】
これは、知られているように、ポンピング要素の間の流体接続を適切に構成することによって第2のポンピング要素3のドライブシャフト9を第1のポンピング要素4のドライブシャフト10に対して任意の所望の方向に回転させることができるため、静水圧CVTにより容易に達成される。この例では、ポンピング要素4は、キャリア7を駆動するように構成され、第2のポンピング要素3は、円環8を駆動するように構成される。これは、第1のポンピング要素3に対する第1のポンピング要素4の流体変位を漸進的に減少させることによって達成され得る。これは、フライホイール2の速度を増加させる傾向があり、したがってエンジンから、またはKERSの場合、機械または車両の車輪または軌道などの地面係合部材からエネルギーを伝達する。第1のポンピング要素4の変位がゼロに達すると、実質的に動力はCVTを通過せず、動力分割配置がその最高の効率を達成する。
【0059】
図2は、エネルギーが反対の向き、すなわちフライホイール2からエンジン11側に戻るように伝達される場合を示す。これは、この例では、第2のポンピング要素3に対する第1のポンピング要素4の流体変位を増加させ、これによりフライホイール2を減速させ、そこからエネルギーを抽出することによって達成され得る。
【0060】
図3および図4は、フライホイール2の充電状態が不十分であり、エンジンまたは車両もしくは機械にエネルギーを供給することができない場合を示す。この場合、ポンピング要素3および4は、エンジン11のみが油圧サービス(ラベル付き)に動力を供給するように、または油圧サービスからのエネルギーを使用して原動機11をサポートすることができるように分離することができる。
【0061】
図5および図6は、油圧サービスから動力を受け取る(図5)または油圧サービスに動力を供給する(図6)場合を示す。遊星歯車5のトルクは、キャリアが静止しているときの太陽と円環との間の速度比に関連するゲインに関連するため、第2のポンピング要素3のドライブシャフト9の速度の向きは、油圧サービスから動力が取り入れられるように、このポンピング要素の流体変位機構を適切に調整することによって設定することができる。代替的または追加的に、油圧サービスおよび第2の(または第1の)ポンピング要素との間に介在するバルブ配置(図示せず)により、遊星歯車(この場合、円環8)での速度およびトルクの正しい符号を達成するために、速度およびトルクを適切に逆転させることができる。この構成では、動力の一部がフライホイール2に向かって、またはフライホイール2から離れるように各ポンピング要素3、4を通過する。
【0062】
図7は、車両のERSを示す。エンジン11は、ERS1に結合され、ERS1は、任意選択でトランスミッション12に結合される。トランスミッション12の出力は、最終ドライブ17を駆動するプロペラシャフト14に結合される。最終ドライブ17は、車両車輪15に結合される。したがって、エンジン11上またはその近くに搭載されたERS1は、車両の運動エネルギー回生システムとしても機能し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7