(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のエレベーター運行管理システムにおいて、前記乗場における乗りかごの乗車率が設定される乗車率設定部を備え、前記配車台数設定部が前記需要および前記乗車率に基づいて、前記需要を処理できるエレベーターの割り当て台数を判断することを特徴とするエレベーター運行管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態であるエレベーターシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【0018】
本実施形態のエレベーターシステムにおいて、エレベーター運行管理システム10は、エレベーターが設置される建物内におけるビル利用者の流れ(人流)を予測する人流予測手段によって、各階床における乗り込み予定人数(待ち人数)すなわちエレベーター需要の時間変化を予測する。エレベーター運行管理システム10は、乗場エレベーターサービス要求装置30(例えば、上下方向乗場呼び釦)によって乗場呼びが登録されると、人流の予測結果に基づいて、複数台のエレベーター号機から、各エレベーター号機について演算される所定の評価値に基づいて最適なエレベーター号機を選択し、選択されたエレベーター号機のエレベーター号機制御システム20に、登録された乗場呼びへの応答を指令する。
【0019】
エレベーター運行管理システム10は、予測された人流と、乗場呼びが登録された階床における乗車率の設定値とに基づいて、乗場からの乗り込み人数を予測し、予測された乗り込み人数を輸送するに足りる台数のエレベーター号機に呼びを割り当てる。従って、予測乗込み人数および乗車率によっては、同じ乗場呼びが、2台以上のエレベーター号機に割り当てられる。ここで、乗車率は、乗りかご内の混雑状態を避ける傾向など、乗りかごへの乗り込み時におけるエレベーター利用者の感覚に影響され得る。従って、本実施形態によれば、このようなエレベーター利用者の感覚によって乗車率が影響を受けても、予測乗り込み人数を確実に処理できる台数のエレベーター号機に呼びが割り当てられる。
【0020】
次に、エレベーター運行管理システム10およびその各機能部(101〜110)について説明する。なお、本実施形態においては、コンピュータシステムが、所定のプログラムを実行することにより、各機能部として動作する。
【0021】
まず、エレベーター運行管理システム10は、乗場エレベーターサービス要求装置30によって乗場呼びが登録されると、公知の各種運行管理手段のように、各エレベーター号機について所定の評価値を演算し、最適な評価値を示す一台のエレベーター号機を選択して、乗場呼びを割り当てる。本実施形態における運行管理手段では、予め各エレベーター号機について目標とする運行ルートを設定し、乗場呼びに応答する場合の予測ルートが最も目標ルートに近いエレベーター号機が乗場呼びに割り当てられる(例えば、前述の特許文献1参照)。なお、本実施形態では、後述する総合評価部107がこのような運行管理手段を備えている。
【0022】
目標ルートは、複数の乗りかごが時間的に等間隔で運転されるような運行ルート(時間−位置(階床)平面上の軌跡)が設定される。予測ルートは、現時点における運転状態(乗車人数、乗りかごの位置(階床)、走行方向(UP(上)、DN(下))、走行状態(走行中、停止))を初期状態として、エレベーター号機の仕様(定格速度、定員数など)、既に割り当てられている乗場呼びおよびかご呼び(行先階呼び)、交通需要状態(カメラ画像に基づく実測値、学習部109による学習値、人流予測手段による予測値のいずれでも良い)に基づいて、登録された乗場呼びを割当てた場合の乗りかごの到着予測時間を演算することにより、求められる。設定された目標ルートと演算された予想ルートの近さを数値化し、数値化された近さを評価値とする。なお、目標ルートと演算された予想ルートの近さに加えて、演算された到着予測時間(待ち時間に対応)や、予想ルートに応じて演算される乗りかご内の予測乗車人数(負荷荷重に相当し、消費エネルギーに対応)を評価し、各評価値から求められる総合評価値(例えば、各評価値に重みを付けて加算した値)が最適値を示すエレベーター号機を選択しても良い。
【0023】
評価方法については、本実施例に限らない。例えば、単純に到着時間を予測し、その到着予測時間の短いエレベーター号機を選定する方式でも良い。
【0024】
階床別人数予測部101は、図示されない人流予測手段を備え、人流予測手段によって予測される建物内の人流に基づいて、各階の乗場におけるエレベーター利用者の人数(乗場人数)およびその時間変化を予測する。
【0025】
人流予測手段は、エレベーター設備が設置される建物に関する情報、エレベーター設備に関する情報、エレベーターの運行状態に関する情報、建物利用者に関する情報、建物外部の状況に関する情報などに基づいて、建物内における人流を予測する。エレベーターが設置される建物に関する情報は、階床数や、各階のフロアレイアウトなどである。エレベーター設備に関する情報は、号機台数や、仕様(定員数、可能積載量など)、運転方式(例えば、乗継の有無)などである。エレベーターの運行状態に関する情報は、乗場呼びやかご呼びの登録状況、エレベーター需要状況などである。建物利用者に関する情報は、出退勤情報、入退室情報、会議室予約情報、建物に設置される監視カメラや人感センサの検出情報などである。建物外部の状況に関する情報は、鉄道などの交通状況(遅延など)や道路状況(渋滞など)などである。
【0026】
人流予測手段は、上記の情報のいずれかあるいは複数に基づいて、所定の演算式あるいはモデルを用いて人流を予測する(例えば、前述の特許文献3参照)。本実施形態において、エレベーターが設置される建物に関する情報およびエレベーター設備に関する情報は、予め人流予測手段に設定される。また、エレベーターの運行状態に関する情報は、エレベーター号機制御システムもしくは乗場エレベーターサービス要求装置30によって取得され、建物利用者に関する情報は、監視カメラ40およびビル管理システム50によって取得され、建物外部の状況に関する情報は、公共機関管理システム60によって取得される。取得される各情報は、通信ネットワーク70を介して、人流予測手段に送られる。また、エレベーターの運行状態に関する情報の内、エレベーター需要状況は、エレベーター運行管理システム10における学習部109によって、カメラ画像などによって検出されるエレベーター利用者人数に基づいて、学習される。
【0027】
人流予測手段は、本実施形態のように階床別人数予測部101に備えられたり、エレベーター運行管理システム10の外部において、エレベーター運行管理システム10とは独立に備えられたりする。後者の場合、階床別人数予測部101は、人流予測手段から、各階の乗場における人流に関するデータを取得して、取得されるデータに基づいて、各階床に乗場人数およびその時間変化を予測する。なお、人流予測手段が、エレベーター運行管理システム10とは独立に設けられる場合、人流予測手段は、エレベーターシステム、空調システム、照明システムなどで共用できる。
【0028】
精度検証部102は、階床別人数予測部101の予測精度を判定し、判定結果に応じて、階床別人数予測部101の予測結果に対する補正量を設定する。本実施形態において、精度検証部102は、乗場呼びが登録された時点で、乗場呼びが登録された階床における監視カメラ40の画像から検出される乗場待ち人数と階床別人数予測部101によって予測される乗場人数を比較し、両者の差が予め設定される閾値を超えていたら、所定の補正量を階床別人数予測部101による予測結果に与える。
【0029】
要求情報出力部103は、階床別人数予測部101によって予測され、精度検証部102を介して得られる、乗場人数およびその時間変化に関する情報(以下、「予測乗場人数情報」と記す)の内、出力情報設定部104によって設定される階床に関する情報を出力する。
【0030】
出力情報設定部104は、階床別人数予測部101に対して、予測乗込み人数情報の出力対象とする階床を、乗場呼びの登録階に設定する。
【0031】
受信部105は、エレベーター号機制御システム20、乗場エレベーターサービス要求装置30、監視カメラ40、ビル管理システム50、公共機関管理システム60からの情報を受信して、エレベーター運行管理システム10の各機能部に対して、各機能部が用いる情報を配信する。
【0032】
配車台数設定部106は、学習部109が備える乗車率設定部110において設定されている乗車率の値と、乗りかごの定員数によって、各乗りかごにおける最大乗車可能人数を算出する。予測階床別人数予測部101によって得られた予測人数、あるいは外部機器から得られた現在の乗場の人数に対して、全人数をかごに乗車させるための適切な台数を算出する。時々刻々と変化するビル内の交通状況や、ビル内の利用者の特性から、かごに乗車する人数を常に学習し、乗車率を算出している。当該乗車率を利用することにより、人間の感覚にそったエレベーターの配車を実現することが可能となり、一時的な混雑を避けるため長待ちとなってしまう利用者に対して、できる限りの待ち時間軽減が可能となる。
【0033】
また、配車台数を算出する方式は上記のように日々の学習状況から、求められる乗車率が得られた際にかごの定員数から一意に決定される方式に限らず、かごの予測乗車人数を考慮し、配車台数を設定する方式でも良い。以下実施例においては、当該方式において後述する。本方式は前述した各かごの最大乗車可能人数から、現在の予測乗車人数を引いて、各階における乗車可能人数を算出する。このとき、予測乗車人数は、現在かごに乗車している人数に対して各階に乗降車する人数を予測し、ある任意の乗場階に到着した時点のかご内に乗車している人数である予測乗車人数を予測する。当該予測乗車人数から最大乗車可能人数に対して引くことで、当該階における当該かごの適切な乗車可能人数が算出される。 本方式は都度、エレベーターの運行状況によって乗車可能人数が変化するため、エレベーターの配車台数を決める際には、様々な総合評価のうち、選択された評価方法によって適切なかごが選ばれた際に、フィードバックをかけ、乗り場の人数を全て配車可能か、判定し、不可であった場合、再度様々な総合評価のうち、選択された評価方法によって、適切なかごを選定することで、適切な配車台数を選定する。
【0034】
総合評価部107は、配車台数設定部106によって1台目の配車が設定されると、上述のような運行管理手段を用いて、当該階床の乗場人数を呼びが登録された時点における乗場人数(監視カメラ40の画像による実測値、もしくは人流予測手段による予測値)として、最適な評価値を示す一台のエレベーター号機(以下、「第1割当てエレベーター号機」と記す)を選択する。また、総合評価部107は、全てのエレベーター号機の乗りかごの到着予測時間、予測乗車人数、並びに乗場から乗りかごへの予測乗込み人数を演算する。ここで、総合評価部107は、配車台数設定部106によって演算された最大乗車可能人数を条件として、いわば乗りかごの定員を最大乗車可能人数として、第1割当てエレベーター号機を選択する。そして、総合評価部107は、全てのエレベーター号機の中から選択した第1割当てエレベーター号機への乗場呼びの割り当てを割当て指令部108に指令する。
【0035】
割当て指令部108は、総合評価部107からの指令を受けると、総合評価部107によって選択されたエレベーター号機のエレベーター号機制御システム20に対して、登録された乗場呼びへの応答を指令する。
【0036】
配車台数設定部106は、総合評価部107によって第1割当てエレベーター号機が選択されると、総合評価部107によって演算された第1割当てエレベーター号の到着予測時間、予測乗車人数、予測乗込み人数を参照する。また、配車台数設定部106は、要求情報出力部103から取得する予測乗場人数情報から、第1割当てエレベーター号の到着予測時間における予測乗場人数を抽出する。
【0037】
次に、配車台数設定部106は、第1割当てエレベーター号機の予測乗込み人数および第1割当てエレベーター号の到着予測時間における予測乗場人数を比較し、予測乗場人数が予測乗込み人数以下である場合、第1割当てエレベーター号機の乗りかごにより予測乗場人数を輸送処理できるので、配車台数設定部106は動作を終了する。また、予測乗場人数が予測乗込み人数より大である場合、第1割当てエレベーター号機の乗りかごだけでは、エレベーター利用者の積み残しが予測されるので、配車台数設定部106は、総合評価部107に対し、積み残し人数すなわち予測乗場人数と予測乗込み人数の差分を出力するとともに、2台目の配車を設定する。
【0038】
配車台数設定部106によって2台目の配車が設定されると、総合評価部107は、当該階床の乗場人数を、配車台数設定部106によって出力される予測乗場人数と予測乗込み人数の差分として、第1割当てエレベーター号機を除く複数台のエレベーター号機から、第1割当てエレベーター号機の場合と同様に、最適な評価値を示す一台のエレベーター号機(以下、「第2割当てエレベーター号機」と記す)を選択する。また、総合評価部107は、第2割当てエレベーター号機の乗りかごの到着予測時間、予測乗車人数、並びに乗場から乗りかごへの予測乗込み人数を演算する。ここで、総合評価部107は、第1割当てエレベーター号機の場合と同様に、最大乗車可能人数を条件として、第2割当てエレベーター号機を選択する。そして、総合評価部107は、選択した第2割当てエレベーター号機への乗場呼びの割り当てを割当て指令部108に指令する。そして、割当て指令部108が、第2割当てエレベーター号機のエレベーター号機制御システム20に対して、同じ乗場呼びへの応答を指令する。
【0039】
配車台数設定部106、総合評価部107および割当て指令部108が、上述のような処理を繰り返し実行することにより、同じ乗場呼びに対して、予測乗場人数を輸送処理するに足りる台数のエレベーター号機が割り当てられる。
【0040】
学習部109は、上述のように、目標ルートを設定するために用いられる建物内における交通需要状態を学習するとともに、乗りかご内のカメラ画像や乗りかご内荷重検出値に基づいて、階床毎および乗りかごの走行方向(上、下)毎に乗車率を学習して、乗車率設定部110に設定する。なお、学習部109は、乗車率の時間変化を学習して、乗車率設定部110に設定しても良い。
【0041】
乗車率の学習方法としては、エレベーター内の荷重やかご内カメラによって、エレベーターかご内の乗車人数を、検出、あるいは算出する。更に、乗り場の人数を検出するため、乗り場カメラや、距離センサ等を用いて乗り場の人数を直接検出する。あるいは乗場のボタン登録状況から、乗り場ボタンが押下された時点で乗り場に人がいるということを認識すう方式でも良い。
【0042】
各階からの乗り場ボタン登録に応答し、到着してドアが開いた際、乗り場の人数がいなくなるか否かを判定し、乗り場の人数がいた場合、現在の乗車人数から、人が乗車可能と判断する乗車率を記録する。具体的には、5階に乗り場に10名存在し、かご内に10名乗車していた場合、かごが5階に到着し、乗り場の人数が2名残った場合、かご内の乗車人数は18名となる。定員数が24人乗りであった場合、かご内の乗車率は75%となる。あるいは、人数でなく、その際のかご内利用者の占有率、またはかご内の空き率を検出し、その占有率、あるいは空き率を記録する方式でも良い。
【0043】
乗り場のカメラが不付きの場合、5階の呼びが作成され、かごが5階に到着した際に、ドアが戸閉した後、ある任意の時間内に同一方向への乗場呼び、あるいは同一行先階へのサービス要求があった場合、乗り場に利用者が乗車できず、再登録したと判断し、その際の当該階の乗車人数、あるいは占有率、空き率を記録する。
【0044】
記録された、乗車人数、あるいは占有率、空き率を乗車率とし、これらを日々、階別に学習する。
【0045】
図2は、本実施形態のエレベーターシステムを備える建物におけるエレベーター乗場の様子を示す。なお、簡単のため、4階床分の乗場だけを示すと共に、エレベーター号機は1台のみ示す。
【0046】
図2に示すように、エレベーター号機において、乗りかご1と釣り合い錘2とが主ロープ3の両端に接続される。図示しない巻上機に主ロープが巻き掛けられて、乗りかご1および釣り合い錘2が昇降路内に吊られる。巻上機によって主ロープ3が駆動されると、乗りかご1および釣り合い錘2は昇降路内を昇降する。
【0047】
乗りかご1のかご室内には、カメラ4が設けられ、カメラ画像に基づいて、室内における乗客(C)の人数(以下、「乗車人数」と記す)が計測される。また、かご床の下部には防振用の弾性体5(例えば、防振ゴム)と、荷重センサ6が設けられる。荷重センサ6は、弾性体の撓みに応じて、乗りかご内の荷重を計測する。計測される荷重に基づいて、かご室内における乗車人数が計測される。上述のように、計測された乗車人数に基づいて、乗車率が学習される。
【0048】
乗車人数は、カメラ4および荷重センサ6のどちらか一方、あるいは両方を用いて計測すれば良い。なお、カメラ4は、かご室内の監視用としても用いられる。
【0049】
図2に示すように、各階床の乗場には、監視カメラ40が設けられる。監視カメラ40によって取得される、乗場と、乗場におけるエレベーター利用者とのカメラ画像が、上述のように、交通需要状況の計測や学習、乗場人数の計測や予測などに用いられる。
【0050】
図2において、N〜N+3階において、下方向の乗場呼びが登録されている。このため、乗場エレベーターサービス要求装置30(
図1)に相当する呼びボタン(30)の下方向ボタンが点灯している。また、登録された乗場呼びに対して、エレベーター号機(上述の「第1割当てエレベーター号機」)が割り当てられているので、到着予告灯として機能するホールランタン7の下部が点灯している。N+3階において、乗場呼び登録時点では、エレベーター利用者Aが乗場で乗りかごの到着を待っているが、その後、エレベーター利用者Bが乗場に来る。本実施形態では、このように第1割当てエレベーター号機の到着時には乗場待ち人数が変化していることが予測され、第1割当てエレベーター号機に全員乗りきれないと予測される場合は、同じ乗場呼びに対して割り当てるエレベーター号機を追加する。
【0051】
図3および
図4は、
図2における一つの階床のエレベーター乗場の様子を示す。
図3は、乗場の入側から奥行き方向を見た図であり、
図4は乗場を上から見た図である。なお、
図3および
図4に示す階床は、
図2におけるN+2階に相当する。また、一つの乗場で利用できるエレベーター号機は4台(1〜4号機)としている。各エレベーター号機の定員は24名、乗車率設定部110(
図1)に設定されている当該階床の下方向の乗車率は50%とする。
【0052】
図3に示す乗場においては、下方向の乗場呼びが登録され、呼び登録時点では10人のエレベーター利用者Aが待っている。この乗場呼びに対し、まず、3号機(第1割当てエレベーター号機)が割り当てられ、3号機のホールランタン7の下部が点灯して3号機の到着を予告している。このエレベーター利用者Aの人数は、乗場に設けられる監視カメラ40(
図2)によって計測され、人数の予測精度の検証、呼び登録時点以降の乗場からの乗り込み人数の予測、並びにエレベーター号機の割り当てに用いられる。
【0053】
さらに、
図3に示す乗場においては、呼び登録時点以降に、8人のエレベーター利用者Bが乗場に発生している。このため、3号機到着時点において、乗場からの乗り込み人数は18人となる。この場合、当該階床の下方向の乗車率が50%であり、3号機だけでは利用者の積み残しが発生すると予測される。本実施形態では、このような状況を判定し、さらに2号機(第2割当てエレベーター号機)に同じ乗場呼びを割り当てられる。さらに、2号機によっても積み残しが発生すると予測されるため、本実施形態では、1号機(第3割当てエレベーター号機)に同じ乗場呼びが割り当てられる。このため、
図3に示すように、2号機および1号機のホールランタン7の下部が順次点灯して、これらの号機の到着が予告される。そして
図4の矢印が示すように、乗場のエレベーター利用者は、1〜3号機に分乗し、積み残しなく輸送処理される。
【0054】
図5は、本実施形態のエレベーター運行管理システムにおける主たる処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS1において、階床別に乗車率が、乗車率設定部110(
図1)に設定される。本実施形態において、乗車率は、各階床毎に、乗りかごの走行方向、すなわち上(UP)方向および下(DN)方向について設定される。なお、上述のように、学習部109(
図1)が、カメラ画像あるいは荷重検出値によって計測される乗りかご内の乗車人数に基づいて乗車率を学習して、学習値が乗車率設定部110(
図1)に設定される。
【0056】
ステップS2において、ステップS1で設定される乗車率および乗りかごの定員数から、配車台数設定部106(
図1)によって、各エレベーター号機の乗りかごにおける乗車可能人数の最大値(以下、「最大乗車可能人数」と記す)が設定される。本実施形態においては、乗車率がUP方向およびDN方向について設定されるので、最大乗車可能人数もUP方向およびDN方向について設定される。
【0057】
ステップS3においては、乗場呼び登録時点において、各階床の乗場におけるエレベーター利用者の人数(以下、「乗場人数」と記す)に関する情報が、受信部105(
図1)によって、乗場に設置される監視カメラ40(
図1)から受信される。
【0058】
ステップS4においては、総合評価部107(
図1)によって乗場呼びの割り当て処理が実行される時に、乗場呼び登録階を含む各階床への到着予測時間が総合評価部107によって算出される。
【0059】
ステップS5において、ステップS4と同様に割り当て処理実行時に、乗場呼び登録階を含む各階床における乗りかご内の乗車人数の予測値(以下、「予測乗車人数」と記す)、および乗場呼び登録階から乗り込むエレベーター利用者の人数の予測値(以下、「予測乗込み人数」と記す)が総合評価部107によって算出される。ここで、乗車人数とは、乗りかごによって輸送されるエレベーター利用者の人数である。従って、乗りかごおよび乗場間でエレベーター利用者の乗降が有る場合、乗車人数は、乗降後の乗りかご内のエレベーター利用者の人数を示す。なお、本実施形態では、乗車率が設定されているので、乗場呼びの登録階では、最大乗車可能人数が予測乗車人数の上限となる。
【0060】
ステップS6では、ステップS4で予測される到着予測時間が経過した時点において乗場において乗りかごの到着を待つエレベーター利用者の人数の予測値(以下、「予測乗場人数」と記す)が、前述の人流予測手段による予測結果に基づいて、配車台数設定部106によって算出される。さらに、ステップS6では、算出される予測乗場人数、ステップS4で算出される予測乗車人数、ステップS5で算出される予測乗込み人数に基づいて、乗場呼びに割り当てられたエレベーター号機の乗りかごによって予測乗場人数を積み残しなく処理できるか、すなわち乗場に待つと予測されるエレベーター利用者が積み残しなく乗車できるかが判定される。そして、積み残しがあると判定される場合は、上述のように、配車台数設定部106によって、総合評価部107(
図1)に対して、割り当て処理の実行が設定される。
【0061】
ステップS7では、総合評価部107(
図1)によって、所定の評価値、本実施形態では、目標ルートと予測ルートの近さ、待ち時間(上述の「予測到着時間」に相当)などに基づいて、最適な評価値を示すエレベーター号機が乗場呼びに割り当てられる。
【0062】
上述のように、本実施形態によれば、人流予測手段によって予測される建物内の人流に基づいて、呼び登録以降の時点における乗場のエレベーター利用者の人数を予測し、予測される人数を輸送処理できる台数のエレベーター号機に呼びが割り当てられる。これにより、乗りかごが到着するまでに、乗場人数が変動しても、乗場人数を積み残しなく輸送処理することができる。さらに、乗場呼びを割り当てるエレベーター号機の台数が、乗車率に応じて設定されるので、混雑状態の乗りかごへの乗車を避けるなど、乗りかごへの乗りこみ時における利用者の感覚によって、乗車人数が影響を受ける場合でも、乗場人数を積み残しなく輸送処理することができる。
【0063】
なお、乗車率として、乗りかご内に乗車するエレベーター利用者による乗りかご内の空間占有率(例えば、かご床面積に対する、乗りかご内のエレベーター利用者の占有面積の比率)を設定しても良い。この場合、上述のエレベーター利用者の人数に関する情報は、エレベーター利用者の総占有空間の大きさに置き換えられる。これにより、各エレベーター利用者の占有する空間の大きさが大きく異なる場合、例えば、車いす利用者が混在する場合などにおいても、乗場で乗りかごの待つエレベーター利用者を積み残しなく輸送処理することができる。
【0064】
次に、乗車率の設定例、定員数の一例、最大乗車可能人数の一例、予測乗場人数の一例、乗場呼びの割り当て結果の比較例、並びに本実施形態による乗場呼びの割り当て結果の一例について説明する。
【0065】
図6は、本実施形態において設定される乗車率の一例を示す。
【0066】
図6に示すように、最下階(1階)〜最上階(11階)について、乗りかごの走行方向(UP,DN)毎に、乗車率が設定される。例えば、6階においては、UP方向およびDN方向の乗車率が、それぞれ、60%および50%である。なお、最下階(1階)において、乗りかごの走行方向は、UPおよびDN方向の内、UP方向のみであるから、UP方向のみについて乗車率が設定される。また、最上階(11階)において、乗りかごの走行方向は、UPおよびDN方向の内、DN方向のみであるから、DN方向のみについて乗車率が設定される。
【0067】
図7は、本実施形態の各エレベーター号機における乗りかごの定員数の一例を示す。
【0068】
図7に示すように、本実施形態では、運行管理制御されるエレベーター号機を4台備える。すなわち、エレベーター利用者は、一つの乗場において、4台のエレベーター号機のいずれかを利用することができる。各エレベーター号機(1〜4号機)の定員数は、いずれも24人である。なお、4台のエレベーター号機のいずれかの定員数が、他と異なっていても良い。
【0069】
図7中には、各エレベーター号機の積載可能量(1260kg)が併記される。乗りかごに設けられる荷重計による乗りかご内荷重の計測値に基づいて、乗車率が学習される場合、積載可能量に対する乗りかご内荷重の計測値の比率を乗車率とすることができる。
【0070】
図8は、本実施形態により演算される最大乗車可能人数の一例である。
【0071】
図8に示す最大乗車可能人数は、
図6に示す乗車率と
図7に示す定員数から演算される。従って、各階床における最大乗車可能人数が、乗りかごの進行方向(UP,DN)毎に、かつ各エレベーター号機(1〜4号機)について、演算される。例えば、
図6において6階のDN方向の乗車率は50%であり、
図7において各エレベーター号機(1〜4号機)の定員数は、いずれも24人であるので、6階のDN方向の最大乗車可能人数は、いずれのエレベーター号機も、定員24名の50%、すなわち12人である。
【0072】
図9は、本実施形態における予測乗場人数を示す。
【0073】
図9において、乗場人数は、乗場呼び登録時における乗場人数である。従って、
図9中、乗場人数が0人の階床では、乗場呼びが登録されていない。また、
図9において、予測発生人数は乗場呼び登録時点以降に乗場に発生すると予測されるエレベーター利用者の人数、すなわちエレベーター利用者の増減分である。
【0074】
図9に示す乗場人数は、乗場に設けられる監視カメラ40(
図2)のカメラ画像に基づく計測値、もしくは前述の人流予測手段の予測結果に基づく予測値である。また、
図9に示す予測発生人数は、前述の人流予測手段の予測結果に基づく予測値である。これら、
図9に示す乗場人数と予測発生人数との加算値を予測乗場人数とする。なお、本実施形態では、上述のように、予測乗場人数は、乗場呼びに割り当てられる1台目のエレベーター号機の予測到着時点における乗場人数の予測値である。
【0075】
図9において、例えば、6階では、乗場呼び登録時における乗場人数が10人であるが、乗場呼び登録時以降における予測発生人数が8人であるので、乗場呼び登録時以降における予測乗場人数は18人である。この18人に対し、最大乗車可能人数が12名であるから、乗車率を設定しない公知の運行管理手段を用いる場合(後述の比較例)、空の乗りかごが配車されたとしても、積み残しが生じる。これに対し、本実施形態では、予測乗場人数18人が積み残しなく輸送処理されるように、複数台のエレベーター号機に同じ乗場呼びが割り当てられる。
【0076】
図10は、割り当て処理において用いられる各エレベーター号機の運行状態の初期値である。例えば、3号機については、乗車人数が2人、位置が8階、走行方向が下方向(DN)、乗りかごの運転状態が停止状態である。従って、6階で下方向の乗場呼びが登録される場合、3号機は、位置(8階)が6階に近く、乗車人数(2人)が最大乗車可能人数(12名)より少なく、さらに走行方向が乗場呼びの方向と同じであるため、運行管理によって6階の乗場呼びが割り当てられる可能性が比較的高くなる。しかし、6Fの下方向の最大乗車可能人数が12人であるため、3号機だけでは18人の乗場人数を輸送処理することはできないと判定され、前述もしくは後述のように、同じ乗場呼びに対して他のエレベーター号機(後述の
図12では2号機と1号機)が追加割り当てされる。
【0077】
図11は、割り当て処理結果の比較例である。本比較例においては、前述の定員数(
図7)、予測乗場人数(
図9)および運行状態の初期値(
図10)のもとで、乗車率を考慮することなく公知の運行管理手段により割り当て処理が実行された結果の一例である。
【0078】
例えば、6階におけるDN方向の呼びに対しては、
図11に示すように、3号機が割り当てられる。6階における予測乗車人数は20人であるが、これは3号機の乗車人数の初期値2人(
図10)に6階における予測乗場人数18人が加算された人数である。従って、6階からの予測乗込み人数は18人であり、本比較例では、定員数24人までは乗車可能としているので、乗車率を考慮しなければ、積み残しは発生しないことになる。しかし、
図6に示すように、6階における3号機のDN方向の乗車率が50%であれば、3号機の最大乗車可能人数は12名であるから、6階では降車しない2人が乗車する3号機の乗りかごへの予測乗込み人数は10人だけである。従って、本比較例では、6階において積み残しが発生し、乗場のエレベーター利用者は、再度、乗場呼びを登録することになる。
【0079】
図12は、本実施形態による割り当て処理結果の一例である。
図12は、比較例と同様に前述の定員数(
図7)、予測乗場人数(
図9)および運行状態の初期値(
図10)のもとで、さらに、乗車率(
図6)を設定すると共に、最大乗車可能人数(
図8)を演算して、前述のように割り当て処理が実行された結果の一例である。
【0080】
図12に示すように、6階におけるDN方向の乗場呼びに対して、比較例と同様に3号機(第1割当てエレベーター号機)が割り当てられるが、本実施形態では、さらに、2号機(第2割当てエレベーター号機)および1号機(第3割当てエレベーター号機)が、順次割り当てられる。
【0081】
ここで、6階における3号機の最大乗車可能人数は12人(図示していないが、内2人は6階到着時に乗車済で降車しない)であり、6階からは、予測乗場人数は18人(
図9)の内、10人まで乗込むことができる。従って、予測乗り込み人数は上限の10人となり、予測乗場人数18人のうち8人が残る。このため、エレベーター号機の割当追加が設定され、2号機が割り当てられる。
【0082】
6階における2号機の最大乗車可能人数は12人(図示していないが、内7人は6階到着時に乗車済で降車しない)であり、6階からは、3号機に乗車しないと予測される8人の内、5人まで乗込むことができる。従って、予測乗り込み人数は上限の5人となり、3号機に乗車しないと予測される8人の内、3人が残る。このため、エレベーター号機の割当追加が設定され、1号機が割り当てられる。
【0083】
6階における3号機の最大乗車可能人数は12人(図示していないが、3号機は空状態で6階に配車)であり、6階からは、2号機に乗車しないと予測される3人全員が乗込むことができる。従って、予測乗り込み人数は3人となり、2号機に乗車しないと予測される3人の内、残りは0人となる。
【0084】
このように、
図12に示すようなエレベーター号機の割り当てにより、乗車率50%である6階において、乗場呼び登録時以降に乗場人数が変動しても、予測される乗場人数を積み残しなく輸送処理できる台数のエレベーター号機の乗りかごを配車することができる。
【0085】
図13は、
図11に示す比較例における各エレベーター号機の運行線図を示す。なお、本運行線図は、
図11に示す割り当て処理結果における階床と到着予測時間の関係を、階床−時間平面にプロットしたものである。従って、各運行線上では、乗場呼びへの応答に伴う乗りかごの停止状態だけが示され、かご呼びへの応答に伴う行先階での停止状態については図示を省略している。なお、本比較例においては、目標ルートを設定して、予測ルートと目標ルートとの近さを評価する運行管理手段が用いられているので、
図13における各運行線図は、割り当て処理が実行された後の予測ルートを示す。
【0086】
図13中の、矢印が、6階におけるDN方向の乗場呼びへの応答を示す。
図13の矢印が示すように、本比較例においては、DN方向に走行する3号機が、6階におけるDN方向の乗場呼びに応答している。なお、本比較例においては、予測ルートと目標ルートとの近さに併せて、各エレベーター号機の予測到着時間すなわち待ち時間も評価されるため、DN方向の呼びに応答した場合に最も待ち時間が短い3号機に乗場呼びが割り当てられている。
【0087】
図14は、本実施形態における各エレベーター号機の運行線図を示す。なお、本運行線図は、
図12に示す割り当て処理結果における階床と到着予測時間の関係を、階床−時間平面にプロットしたものである。従って、
図13と同様に、各運行線上では、かご呼びへの応答に伴う行先階での乗りかごの停止状態については図示を省略している。また、
図13と同様に、
図14における各運行線図は、割り当て処理が実行された後の予測ルートを示す。
【0088】
図14中の矢印が示すように、本実施形態においても、DN方向に走行する3号機が、6階におけるDN方向の乗場呼びに応答している。さらに、本実施形態においては、DN方向に走行する2号機および1号機も、6階におけるDN方向の乗場呼びに順次応答している。なお、本比較例においても、予測ルートと目標ルートとの近さに併せて、各エレベーター号機の待ち時間も評価されるため、DN方向の呼びに応答した場合の待ち時間が短い順に、3号機、2号機およご1号機に乗場呼びが割り当てられている。
【0089】
なお、比較例と本実施形態は、共に、予測ルートと目標ルートとの近さを評価する運行管理手段が用いられているので、運行線図の間隔など予測ルートの全体的なパターンは概略同様である。また、予測ルートと目標ルートとの近さと待ち時間を総合的に評価されるため、上述のように、待ち時間の短い順に乗場呼びが割り当てられている。
【0090】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0091】
例えば、運行管理手段における評価値は、目標ルートと予測ルートの近さや待ち時間に限らず、消費電力量などでもよい。また、乗場エレベーターサービス要求装置30として、乗場呼び釦に限らず、乗場に備えられる行先階登録装置を適用しても良い。
【0092】
また、運行管理されるエレベーター号機の台数は、4台に限らず、任意の複数台でも良い。
【0093】
また、エレベーター号機を構成する巻上機やエレベーター号機制御システム(モータ駆動用のインバータを含む)は、機械室に設置されても良いし、昇降路内に設置されても良い。