(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974492
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ及び識別ツール並びに方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20211118BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20211118BHJP
A61C 3/02 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B90/00
A61C3/02 Z
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-552154(P2019-552154)
(86)(22)【出願日】2017年3月20日
(65)【公表番号】特表2020-511270(P2020-511270A)
(43)【公表日】2020年4月16日
(86)【国際出願番号】EP2017056585
(87)【国際公開番号】WO2018171862
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】516100090
【氏名又は名称】ミニナビデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】MININAVIDENT AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ボーリンガー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】バーリンホフ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブライテンシュタイン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シュコモダウ,エリック
【審査官】
小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−279263(JP,A)
【文献】
特表2004−529679(JP,A)
【文献】
特表2008−513064(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/117644(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61B 90/00
A61C 1/00
A61C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科及び/又は頭蓋顎顔面器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ及び識別ツールであって:
− ボディと、
− 光学的に検出可能であるマーカー部材であって、前記ボディ上に設けられたマーカー部材と、
− 前記ボディの外面から前記ボディの内側に延びる前記ボディ内の凹部であって、それによって前記凹部の延長方向を画定する、凹部と、
を有し、
− 前記凹部は、前記凹部の横方向の範囲が前記ボディの前記外面から前記ボディの前記内側に向かう方向に減少するような形状を有し、
前記ボディは、前記ボディの同じ前記外面から延びる、少なくとも2つの凹部を備え、
前記凹部は、互いに実質的に垂直である、前記ボディの2つの外面に対して開口し、
前記少なくとも2つの凹部は、前記ボディの前記2つの外面のうちの一方から、前記ボディの前記2つの外面のうちの他方に平行な方向に、特に、前記凹部の前記延長方向に垂直な方向に、異なる深さを有する、
位置合わせ及び識別ツール。
【請求項2】
前記マーカー部材は、二次元パターンで配置されてマーカー部材面を画定する、複数のマーカー要素を有する、
請求項1に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項3】
前記凹部は、前記凹部の前記延長方向、特に前記マーカー部材面に実質的に平行な方向に円錐形を有する、
請求項2に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項4】
前記凹部の前記延長方向は、前記マーカー部材に対して実質的に垂直、特に、前記マーカー部材面に対して実質的に垂直である、
請求項2又は3に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項5】
前記凹部又は前記凹部のうちの1つの中心は、前記マーカー部材面に対して実質的に垂直であり且つ前記マーカー部材を幅方向において中心に交差する仮想線上に配置される又は前記仮想線に沿って延びる、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項6】
基準ピンをさらに有し、前記基準ピンの中心は、前記マーカー部材面に対して垂直であり且つ前記マーカー部材を幅方向において中心に交差する仮想線上に配置される、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項7】
前記手術器具は、手術ツール、特にドリル又はミリングカッターを有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項8】
前記マーカー部材は、前記ボディから取り外し可能であるように構成される、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項9】
前記複数のマーカー要素は、イメージングユニットによって、特に、1つ又は複数の立体カメラユニット、及び/又は、レーザスキャナなどの1つ又は複数の3Dスキャナなどによって、検出可能であるように構成される、
請求項2乃至6、請求項2を引用する請求項7又は8のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項10】
前記マーカー部材は、互いに対して反対側である、特に互いに実質的に平行である、前記マーカー部材の2つの表面上に位置する、第1の複数のマーカー要素及び第2の複数のマーカー要素を備える、
請求項2乃至6、請求項2を引用する請求項7又は8、請求項9のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項11】
前記第1の複数のマーカー要素は、第1の2次元パターンで配置され、前記第2の複数のマーカー要素は、第2の2次元パターンで配置され、前記第1の2次元パターン及び前記第2の2次元パターンは互いに異なる、
請求項10に記載の位置合わせ及び識別ツール。
【請求項12】
歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ及び識別システムであって:
− 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツールと、
− 前記マーカー部材を撮像するように構成されたイメージングユニットであって、前記イメージングユニットは前記手術器具に取り付け可能である、イメージングユニットと、を有する、
位置合わせ及び識別システム。
【請求項13】
前記マーカー部材と前記凹部との間の相対的な向き及び/又は位置に関する情報を記憶する処理ユニットをさらに有する、
請求項12に記載の位置合わせ及び識別システム。
【請求項14】
前記処理ユニットは、前記マーカー部材と前記基準ピンとの間の相対的な向き及び/又は位置に関する情報をさらに記憶し、
前記位置合わせ及び識別ツールは、請求項6、請求項6を引用する請求項7乃至11のいずれか1項に記載のである、
請求項13に記載の位置合わせ及び識別システム。
【請求項15】
歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な手術のためのナビゲーションシステムであって:
− 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の位置合わせ及び識別ツールと、
− 手術器具と、
− 前記手術器具に、移動可能に、取り付けられたイメージングユニットと、を有する、
ナビゲーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ(registration)及び識別(identification)ツール、並びにこの位置合わせ及び識別ツールを用いた歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための方法に関する。さらに、本発明は、歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な手術のための位置合わせ及び識別システム並びにナビゲーションシステムに関し、両システムは、前記位置合わせ及び識別ツールを有する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の口腔内を観察するための画像撮影機能を有する、歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な治療又は手術のための手術器具が開発されている。
【0003】
さらに、歯科及び/又は頭顎顔面治療又は手術中に外科医を助けるために、患者の身体の一部に対する器具の位置関係を確認する医療用ナビゲーションのためのナビゲーションシステムが開発されている。
【0004】
特許文献1は、手術器具、特に手術ツール、及び患者の身体の一部が正しい位置関係で表示される画像出力と、医療用イメージング方法によってキャプチャされた仮想画像データに基づいて、及びナビゲーション中にキャプチャされた実際の画像に基づいて、患者の身体の一部の表示を生成する画像プロセッサとを有する装置を開示している。本装置は、画像出力上の仮想画像データを、主に且つ画像のベースとして表示する画像表示制御装置をさらに有し、実際の画像は、単に付加として且つ副次的に、仮想画像データ上に重畳される。
【0005】
実際の画像は、装置上に固定配置されたビデオ画像キャプチャユニットによって提供される。患者の身体の部分に対する手術ツールの位置関係は、2つのカメラと2つの基準アセンブリとを有する静止トラッキングシステムによって確認され、一方のアセンブリは患者の身体の部分上に配置され、他方のアセンブリは器具上に配置される。手術中のどんなときでもこの位置関係を検出するために、2つの基準アセンブリは常にトラッキングシステムの視野内になければならない。
【0006】
特許文献2は、手術用ハンドピースと、手術用ハンドピースに移動可能に取り付けられたイメージングユニットと、患者の頭蓋骨、顔面骨、歯に取り付け可能なマーカー部材とを有する、歯科及び頭蓋顎顔面手術のためのナビゲーションシステムを開示している。マーカー部材は、イメージングユニットによって検出可能な複数のマーカー要素を含む。さらに、ナビゲーションシステムを用いた歯科及び頭蓋顎顔面手術のためのナビゲーション方法が開示されている。
【0007】
上述のナビゲーションシステム又は方法が、歯科手術及び/又は頭蓋顎顔面手術中に正確な手術ナビゲーションを提供することができるように、システムに、手術器具、特に手術ツールの幾何学的特徴、及び手術器具の残りの部分に対する手術ツールの相対位置の正確且つ信頼できる情報を提供することが必要である。従って、手術ツールが変更されるたびに、手術ツールの幾何学的特性及び手術ツールの手術器具に対する相対的位置を測定する必要がある。さらに、歯及び/又は頭蓋顎顔面手術処置の間に、手術ツールは、手術器具のツールホルダ内で動くことがあるので、歯及び/又は頭蓋顎顔面手術処置の間に、前述の情報を獲得又は更新することも必要である。
【0008】
従って、手術器具、特に手術ツールの、正確な位置合わせ及び識別を、簡単且つ信頼できる方法で可能にする歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための位置合わせ及び識別ツール並びに方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第2 236 104 B1号
【特許文献2】国際公開第2015/048994A1 号
【発明の概要】
【0010】
本発明の一つの目的は、簡単且つ信頼できる方法で手術器具の正確な位置合わせ及び/又は識別を可能にする歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な手術のための手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための位置合わせ及び識別ツール並びに方法を提供することである。さらに、本発明は、前記位置合わせ及び識別ツールを有する歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な手術のための位置合わせ及び識別システム並びにナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【0011】
これらの目標は、請求項1の技術的特徴を有する位置合わせ及び識別ツール、請求項15の特徴を有する位置合わせ及び識別システム、請求項18の特徴を有するナビゲーションシステム、請求項19の特徴を有する歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための方法、並びに請求項21の特徴を有する位置合わせ及び識別ツールの使用によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に従う。
【0012】
本発明は、ボディと、光学的に検出可能であるマーカー部材であって、ボディ上に設けられたマーカー部材と、ボディの外面からボディの内側に延びるボディ内の凹部であって、それによって、凹部の延長方向を画定する、凹部とを有する、歯科及び/又は顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ及び識別ツールを提供する。
【0013】
凹部は、凹部の横方向の範囲(lateral extension)がボディの外面からボディの内側に向かう方向に減少するような、形状、特にテーパ形状を有する。
【0014】
本発明では、凹部のテーパ形状に関する用語「テーパ(tapered)」は、凹部の軸方向延長方向(又は長手方向延長方向)でありボディの外面からボディの外面に実質的に垂直にボディの内面に向かって延びる、凹部の延長方向に沿って、凹部の長手方向延長が、延長方向、特にボディの外面からボディの内面に向かって減少することを定義する。言い換えると、凹部が円錐形状の場合、凹部の直径(内径)は、ボディの外面からボディの内面に向かって減少する。一方、凹部が互いに対してある角度で互いに対向して(互いに面して)配置された2つの実質的に平坦な面から基本的に構成されていることを意味する、凹部がいわゆる「くさび形」を有する場合、2つの平坦な面間の距離は、凹部の延長方向に沿って短くなる。
【0015】
さらに、凹部の「横方向の範囲」という用語は、ボディの外面からボディの内側へ向かう方向に垂直な平面における範囲、すなわち、凹部の延長方向を意味する。凹部の円錐形状の場合、以下に詳細に説明するように、「横方向の範囲」は、円錐の直径、又は円錐の内径若しくは半径方向の範囲に対応する。
【0016】
加えて、凹部は、手術ツールの幾何学的特徴を識別するため、及び/又は手術ツールの手術器具に対する相対位置を位置合わせするために使用されるので、凹部又は凹部(複数)は、「ゲージ凹部」として説明することもできる。
【0017】
さらに、凹部は、凹部の横方向の範囲がボディの外面からボディの内側に向かう方向に減少するような形状、特にテーパ状の形状を有するので、円筒形、球形又は円錐形の物体、特に円筒形、球形又は円錐形の手術ツールは、それが凹部と少なくとも2点で接触するまでは、凹部に挿入されることができるのみである。これはまた、段付き形状を有する物体及び手術ツールにも適用され、ここで、1つ又は2つの段付き形状が特に好ましい。
【0018】
したがって、円筒形、球形、又は円錐形の物体の中心がどの程度深く凹部に挿入されることができるかに基づいて、円筒形、球形、又は円錐形の物体の直径を決定又は計算することが可能である(以下で詳細に説明する)。円筒形物体の場合、円筒形物体の軸方向は、凹部の延長方向に対して実質的に垂直に挿入される必要がある。
【0019】
マーカー部材は、複数のマーカー要素を含むことができ、これらのマーカー要素は、好ましくは二次元パターンで配置され、それによってマーカー部材面を画定する。
【0020】
複数のマーカー要素は、別個の要素、又は、少なくとも部分的に接続されている若しくは互いに接合されている要素であり得る。マーカー要素は、互いに分離されるようにマーカー部材に提供され得る。マーカー要素は、マーカー要素の少なくともいくつか又は全部が、例えば光学パターンなどの連続したパターンを形成するように、少なくとも部分的に接続又は互いに接合されるように、マーカー要素に提供され得る。
【0021】
上述のように、複数のマーカー要素は、二次元パターン又はアレイ、例えば、二次元光学パターン又はアレイに配置され得る。用語「二次元」は、マーカー要素が、マーカー部材平面である共通平面に配置されることを定義する。マーカー要素のこのような配置は、マーカー部材の特に単純な構成を可能にする。
【0022】
さらに、凹部は、凹部の延長方向、特にマーカー部材面に実質的に平行な方向に円錐形を有し得る。
【0023】
円錐形の形状を有する凹部を形成することは、特に、球形又は円錐形の形状を有する手術ツールの位置合わせ及び識別が行われる場合に有利な効果を提供する。すなわち、手術ツールの球面又は円錐面を凹部の円錐面に接触させる場合、くさび形凹部の場合のように点接触を実現することができるだけでなく、実質的に線接触、特に実質的に円形の線接触を実現することができる。これにより、手術ツールの幾何学的特徴を識別する精度、及び手術ツールの手術器具の残りの部分に対する相対位置の位置合わせを高めることができる。
【0024】
さらに、マーカー部材面に対して実質的に平行である延長方向を有する凹部を提供することは、この場合、手術ツールが使用中にその周りを回転する手術ツールの長手方向軸がマーカー部材面に対して実質的に平行であるので、凹部の円錐形状との組み合わせで特に有利である。
【0025】
さらに、凹部の延長方向は、マーカー部材に対して実質的に垂直、特に、マーカー部材面に対して実質的に垂直であり得る。
【0026】
凹部の延長方向がマーカー部材に対して実質的に垂直であるような凹部を提供することは、この場合の手術ツールの長手方向軸線もマーカー部材面に対して実質的に平行であるので、楔形の凹部と組み合わせて特に有利である。
【0027】
ボディは、好ましくはボディの同じ外面から延びる少なくとも2つの凹部を備え得る。
【0028】
この方法では、異なる形状(円錐形、立方体形、又はくさび形)を有する2つ以上の凹部を設けることができる。従って、凹部の形状を、位置合わせ及び/又は識別されることになる手術ツールのニーズに適合させるために、凹部の異なる形状の間で選択する可能性を提供する。
【0029】
凹部は、好ましくは互いに実質的に垂直である、ボディの2つの外面に対して開口し得る。
【0030】
第一に、凹部をボディの2つの外面に開口させることによって、手術ツールを凹部に挿入又は配置することがより容易になる。第二に、手術器具の枢動(pivoting)中及び/又は検出プロセスの実行中に、ユーザが、手術ツールの凹部への正しい配置を視覚的に検査又は監視することが可能になる。これにより、手術ツールの正確且つ信頼できる位置合わせ及び識別を確保することが可能になる。最後に、凹部の製造を単純化することができる。
【0031】
さらに、少なくとも2つの凹部は、ボディの2つの外面のうちの一方から、ボディの2つの外面のうちの他方に平行な方向に、特に、凹部の延長方向に垂直な方向に、異なる深さを有し得る。
【0032】
「深さ」という用語は、ここでは、凹部の底面とボディの外面、特に、凹部の延長方向に実質的に垂直であるボディの外面との間の距離を定義する。
【0033】
従って、手術ツールの先端が凹部の底部に到達できない、又は円筒形ヘッドの先端の長さが長すぎるため、先端の大部分が凹部に挿入できず、これが不安定性並びに誤った測定及び/又は検出結果につながることを回避することができる。
【0034】
さらに、凹部又は凹部のうちの1つの中心は、マーカー部材面に対して実質的に垂直であり且つマーカー部材を幅方向において中心に交差する仮想線上に配置され得る又はこの仮想線に沿って延び得る。
【0035】
マーカー部材面に垂直な凹部の配置位置決めは、手術器具の相対移動(relative movement)の検出プロセスに必要な計算を行う。
【0036】
位置合わせ及び識別ツールは、さらに、基準ピンを有し得、基準ピンの中心は、マーカー部材面に対して垂直であり且つマーカー部材を幅方向において中心に交差する仮想線上に配置され得ることが好ましい。
【0037】
基準ピンを有する位置合わせ及び識別ツールを提供することによって、手術器具、特に手術器具のイメージングユニットを較正することが可能になる。較正処理は、以下に詳しく説明される。
【0038】
さらに、手術器具は、手術ツール、特に、ドリル又はミリングカッター(milling cutter)を有し得る。さらに、手術ツールは、歯科手術ツールであり得る。手術ツールは、歯科用ドリルであり得る。特に、手術器具は、歯科用ドリルなどの歯科用器具を用いる、歯の除去又は置換、歯科インプラントなどの口腔内適用のために有利に使用することができる。
【0039】
マーカー部材は、ボディから取り外し可能であるように構成され得る。さらに、マーカー部材は、位置合わせ及び識別ツールのボディに取り付け可能(attachable)、取り付け可能(mountable)、固定可能(fixable)、設置可能、又は固定可能(securable)であり得る。従って、マーカー部材は、それがボディに取り付けられ(attached)、マウントされ(mounted)、固定され(fixed)、設置され(installed)又は固定される(secured)ことができるように構成される。
【0040】
さらに、複数のマーカー要素は、イメージングユニットによって、特に、1つ又は複数の立体カメラユニットによって、及び/又はレーザスキャナなどの1つ又は複数の3Dスキャナによって、検出可能であるように構成され得る。
【0041】
マーカー部材は、互いに対して反対側である、特に互いに実質的に平行である、マーカー部材の2つの異なる表面上に位置する第1の複数のマーカー要素及び第2の複数のマーカー要素を備え得る。
【0042】
この方法では、マーカー要素のどの側面に手術器具が位置しているかを識別し、それにより、手術ツールがどの凹部に配置されているかを場合により識別することが可能になる。これは、必要であれば、手術ツールを位置合わせ及び/又は識別するために使用されるルーチン(アルゴリズム)を調整する可能性を提供する。
【0043】
さらに、第1の複数のマーカー要素は、第1の2次元パターンで配置され得るとともに、第2の複数のマーカー要素は、第2の2次元パターンで配置され得、第1の2次元パターン及び第2の2次元パターンは互いに異なる。
【0044】
本発明は、さらに、上述の位置合わせ及び識別ツールと、マーカー部材を撮像する(image)ように構成されたイメージングユニットとを有し、イメージングユニットは好ましくは手術器具に取り付け可能である、歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ及び識別システムを提供する。
【0045】
イメージングユニットは、手術ツールに対して移動可能であるように、手術器具に移動可能に取り付け可能、マウント可能、又は設置可能であり得る。従って、イメージングユニットは、手術器具から独立して動かすことができる。
【0046】
イメージングユニットは、連続的に、例えば無段階に、手術器具又は手術ツールに対して移動可能であるように、手術器具に移動可能に取り付けられ得る。イメージングユニットは、器具又は手術ツールに対して離散的なステップ又はステージで移動可能であるように、手術器具に移動可能に取り付けられ得る。
【0047】
イメージングユニットは、イメージングデータ、すなわち、マーカー要素が提供される領域のイメージングデータを取得又は提供するように、特に、マーカー要素がリアルタイムで提供される領域のイメージングデータを取得又は提供するように構成され得る。さらに、イメージングユニットは、マーカー部材の複数のマーカー要素を検出するように構成され得る。特に、マーカー部材に対する手術器具の位置のいかなる変化も、イメージングユニットによって検出されるマーカー要素の二次元パターン又はアレイの対応する歪みを検出することによって検出されることができる。従って、手術器具及びマーカー部材の相対位置は、特に簡単、信頼性があり且つ正確な方法で決定されることができ、手術器具の幾何学的特徴の簡単、信頼性があり且つ正確な識別、及び/又は手術器具の残りの部分に対する手術ツールの相対位置の位置合わせを可能にする。
【0048】
位置合わせ及び識別システムは、単一のイメージングユニット、又は2つ、3つ、4つ又はそれより多いイメージングユニットなどの複数のイメージングユニットを含み得る。イメージングユニットは、手術器具上の異なる位置に、例えば、手術器具の長さに沿って及び/又は手術器具の周囲の周りに配置可能であり得る。
【0049】
イメージングユニットは、1つ又は複数のカメラユニット、例えば1つ又は複数の立体カメラユニット、及び/又はレーザスキャナなどの1つ又は複数の3Dスキャナなどを含み得る。イメージングユニットは、可視光及び/又は赤外光スペクトルにおいて、イメージングできる、すなわちイメージングデータを取得又は提供することができる。イメージングユニットは、マーカー要素が提供される領域の三次元イメージングデータを取得又は提供するように構成され得る。
【0050】
3Dスキャナは3D表面スキャナであり得る。3D表面スキャナは、マーカー部材、特に複数のマーカー要素が設けられた領域の表面、例えばマーカー要素の二次元パターンを光学的にスキャンするように構成され得る。この方法では、マーカー要素と3Dスキャナとの間の相対的な向き及び位置、したがってマーカー要素と手術器具との間の相対的な向き及び位置は、特に正確かつ信頼性のある方法で位置合わせ及び/又は監視することができる。
【0051】
イメージングユニットは、手術器具に取り外し可能に取り付け可能であり得る。この場合、イメージングユニットは、手術器具から外され得る又は取り外され得る。イメージングユニット及び手術器具のそのようなモジュール構成を使用することによって、イメージングユニットは、異なる手術器具に取り付けられ、異なる手術器具と組み合わせて使用することができる。従って、単一のイメージングユニットを種々の異なる手術処置のために使用することができ、それにより、手術のコストをさらに低減することができる。
【0052】
さらに、位置合わせ及び識別システムは、例えば、マーカー部材のマーカー要素を照射するために、イメージングユニット上に配置され得る、LED、レーザーポインタなどの光源をさらに有し得る。この方法では、イメージングユニットによるマーカー要素の検出プロセスをさらに改善することができる。
【0053】
イメージングユニットは、手術器具に対して複数の離散位置又は連続位置でロック可能又は停止可能であり得る。特に、イメージングユニットは、連続的に、例えば無段階に、器具に対して移動可能であり、手術器具に対して達成可能な全ての位置においてロック可能であるように、手術ハンドピースに移動可能に取り付けられ得る。
【0054】
イメージングユニットを手術器具に対してある位置にロック又は停止すること、すなわち、イメージングユニットが器具に対して固定されるようにイメージングユニットをロック又は停止することによって、イメージングユニットは、手術器具に対して、特に手術ツールに対して、明確に規定された位置に安定且つ堅牢に保持することができる。そのような構成は、マーカー部材のマーカー要素に対する手術器具の位置の特に正確な測定又は検出を可能にする。
【0055】
さらに、位置合わせ及び識別システムは、マーカー部材と凹部との間の相対的な向き及び/又は位置に関する情報を記憶する処理ユニットを有し得る。
【0056】
さらに、処理ユニットは、マーカー部材と基準ピンとの間の相対的な向き及び/又は位置に関する情報を記憶し得る。また、処理ユニットは、マーカー部材と基準ピンとの間の相対的な向き及び/又は位置に関する情報のみを記憶するが、マーカー部材と凹部との間の相対的な向き及び/又は位置に関する情報は記憶しないことも可能である。
【0057】
CPUなどのような処理ユニットは、イメージングユニットのイメージングデータ、すなわち、イメージングユニットによって得られたイメージングデータを処理するように構成され得る。
【0058】
本発明の歯科及び/又は顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のための位置合わせ及び識別システムは、本発明の位置合わせ及び識別ツールを使用するシステムである。従って、位置合わせ及び識別ツールの上記説明に関連して開示されたさらなる特徴は、発明の位置合わせ及び識別システムにも適用され得る。
【0059】
本発明はまた、歯科及び/又は頭蓋顎顔面及び/又は一般的な手術のためのナビゲーションシステムを提供し、上記の位置合わせ及び識別ツールと、手術器具と、手術器具に、好ましくは移動可能に、取り付けられたイメージングユニットとを有する。
【0060】
本発明の歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具のためのナビゲーションシステムは、本発明の位置合わせ及び識別ツール並びに位置合わせ及び識別システムの要素を使用するシステムである。従って、位置合わせ及び識別ツール並びに位置合わせ及び識別ツールの上記説明に関連して開示されたさらなる特徴は、発明の位置合わせ及び識別システムにも適用にも適用され得る。
【0061】
さらに、本発明は、上述の位置合わせ及び識別ツールを用いる、歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための方法を提供する。この方法は、手術器具の手術ツールを位置合わせ及び識別ツールの凹部に配置するステップと、手術ツールが凹部の内部に配置されている間に、マーカー部材に対して手術器具を枢動させるステップと、手術器具の相対移動の検出プロセスを実行するステップと、手術器具の幾何学的特徴を識別するステップ及び/又は検出プロセスの結果を使用して手術器具の残りの部分に対する手術ツールの相対位置を位置合わせするステップとを含む。
【0062】
歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための方法は、イメージングユニットを有する手術器具を、位置合わせ及び識別ツール上に、特にその基準ピン上に配置するステップと、検出プロセスを実行するステップと、必要であれば、検出プロセスの間に、手術器具を枢動させるステップと、イメージングユニット及びマーカー部材を使用するステップと、位置合わせ及び識別システムを較正するステップと、手術ツールを手術器具に挿入するステップをさらに含み得る。
【0063】
本発明の歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための方法は、本発明の位置合わせ及び識別ツールについて既に詳細に説明した有利な効果を提供する。特に、本方法は、簡単且つ信頼性のある方法で、手術ツールの正確な位置合わせ及び識別を可能にする。この方法は、手術ツールとマーカー部材との間の相対位置が、簡単且つ信頼性のある方法で正確に決定されることを可能にする。
【0064】
検出プロセスは、好ましくは手術器具に取り付けられたイメージングユニットによって実行され得、イメージングユニットは、マーカー部材を撮像することによって検出プロセスを実行する。
【0065】
本発明の歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別方法は、本発明の位置合わせ及び識別ツール又は位置合わせ及び識別システムを使用する方法である。従って、位置合わせ及び識別ツール並びに位置合わせ及び識別システムの上記の説明に関連して開示されたさらなる特徴は、本発明の方法にも適用され得る。
【0066】
さらに、本発明は、歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための上述の位置合わせ及び識別ツールの使用を提供する。
【0067】
歯科及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための上述の位置合わせ及び識別ツールの使用は、手術器具の手術ツールを位置合わせ及び識別ツールの凹部に配置するステップと、手術器具が凹部内に配置される間にマーカー部材に対して手術器具を枢動させるステップと、手術器具の相対移動の検出プロセスを実行するステップと、手術器具の幾何学的特徴を識別するステップ及び/又は検出プロセスの結果を使用して手術器具の残りの部分に対する手術ツールの相対位置を位置合わせするステップとを含み得る。
【0068】
本発明の歯科及び/又は顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具の位置合わせ及び/又は識別のための位置合わせ及び識別ツールの使用は、本発明の位置合わせ及び識別ツール又は位置合わせ及び識別システムを使用する。従って、位置合わせ及び識別ツール並びに位置合わせ及び識別システムの上記の説明に関連して開示されたさらなる特徴は、本発明の方法にも適用され得る。位置合わせ及び識別ツールの使用についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
以下、図面を参照して、本発明の非限定的な例を説明する。
【0070】
【
図1】本発明の一実施形態による位置合わせ及び識別ツールの概略斜視図を示す。
【
図2】
図1に示す位置合わせ及び識別ツールの概略断面図を示す。
【
図3】
図1に示す位置合わせ及び識別ツールの概略上面図を示す。
【
図4】
図1に示す位置合わせ及び識別ツールの左側からの概略断面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態によるナビゲーションシステムの一部を形成する手術器具の概略正面図を示す。
【
図6a】本発明の一実施形態の方法/使用による、歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための凹部4dの使用の説明図を示す。
【
図6b】本発明の実施形態の方法/使用による、歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための凹部4aの使用の説明図を示す。
【
図7a】正面からの概略断面図における本発明の一実施形態の方法/使用による歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための凹部4dの使用の説明図を示す。
【
図7b】正面からの概略断面図における本発明の一実施形態の方法/使用による歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための凹部4aの使用の説明図を示す。
【
図8】本発明の一実施形態によるナビゲーションシステムの概略斜視図を示す。
【
図9】本発明の一実施形態による歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための方法を示すブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、本発明の現在の好ましい実施形態による、位置合わせ及び識別ツールの概略斜視図を示す。
【0072】
歯及び/又は頭蓋顎顔面手術器具及び/又は一般的な手術器具100のための位置合わせ及び識別ツール1は、ボディ2と、光学的に検出可能であるマーカー部材3であって、ボディ2に取り外し可能に設けられる、マーカー部材3と、ボディ2の複数の凹部4a〜eであって、凹部4a〜eの各々はボディ2の外面からボディ2の内側に延び、それによって凹部4a〜eの各々の延長方向を画定する、複数の凹部4a〜eとを有し、凹部4a〜eの各々は、凹部4a〜eの横方向の範囲がボディ2の外面からボディ2の内側に向かう方向に減少するような形状を有する。異なる凹部4a〜e及びそれらの目的は、以下に詳細に説明される。
【0073】
さらに、位置合わせ及び識別ツール1は、マーカー要素3の前に設けられた基準ピン5を有する。
【0074】
図1に示す位置合わせ及び識別ツールの左側からの概略断面図を示す
図4に示すように、マーカー要素3は、2次元パターンに配置された複数のマーカー要素3−1、3−2を有し、それによってマーカー部材面3cを画定する。
【0075】
図1に示す位置合わせ及び識別ツールの概略断面図を示す
図2では、位置合わせ及び識別ツール1は、2つのマーカー要素3a及び3bを有することが分かる。2つのマーカー要素3a及び3bは、互いに平行であるマーカー要素3の2つの反対側の側部に設けられている。
【0076】
さらに、マーカー要素3は、実質的にボディ2の中心に配置され、それによってボディ2を前部と後部とに分割する。実質的に半円形を有するボディ2の前部には、基準ピン5及び凹部4a〜eのうちの2つの凹部4d、4eが設けられている。ボディ2の後部には、凹部4a〜4cのうちの3つの凹部4a〜4cが設けられている。基準ピン5及び凹部4dは、ボディ2の幅方向におけるボディ2の中央に両方設けられている。凹部4a〜4cは、ボディ2の幅方向におけるボディ2の中央に対称に設けられており、凹部4a〜4cのうちの中心凹部4bは、幅方向におけるボディ2の中央に設けられている。
【0077】
図2からわかるように、凹部4dは、凹部の延長方向にかなり短く、特に凹部4a〜4cより短く、凹部4dの延長方向に円錐形状を有する。図示の実施形態では、凹部4dの延長方向は、
図2の鉛直方向に対応している。
【0078】
さらに、
図2及び
図4に示すように、凹部4a〜4cは、それぞれ実質的に平坦な底部を備え、凹部4a〜4cの各々の平坦な底部は、ボディ2の平坦な底部に対して平行であり、マーカー要素面3cに対して実質的に垂直である。加えて、
図2及び
図3から分かるように、凹部4a〜4cは、ボディ2の2つの外面に対して開口し、ボディ2の2つの外面は互いに実質的に垂直である。しかし、2つの凹部4d及び4eは、ボディ2の一方の外面にのみ開口し、特にボディ2の上面に開口している。
【0079】
したがって、凹部4d、4eの延長方向は、マーカー要素面3cに対して平行である。一方、特に
図3に見ることができるように、凹部4a〜4cの延長方向は、マーカー部材面3cに対して実質的に垂直である。したがって、凹部4a〜4cの延長方向は、凹部4d、4eの延長方向に対して実質的に垂直である。
【0080】
さらに、凹部4a〜4cは、
図3に見ることができるように、くさび形を有し、これは、凹部が、互いに対してある角度で互いに対向して配置された2つの実質的に平坦な面で構成され、2つの平坦な面間の距離が、凹部の延長方向に沿って、特に、
図3の図における左から右に減少することを意味する。
【0081】
本発明の文脈において、凹部4a〜4eの延長方向は、凹部4a〜4eの各々の方向を規定し、この方向においてそれぞれの凹部4a〜4eは、凹部4a〜4eの延長方向において凹部4a〜4eの横方向の範囲が減少するような形状を有する。
【0082】
したがって、凹部4d、4eの横方向の範囲は、垂直方向、特に
図2の図において頂部から底部の方向に減少し、凹部4a〜4cの横方向の範囲は、水平方向、特に
図2及び3の図において左から右の方向に減少する。
【0083】
さらに、
図4に示すように、3つの凹部4a〜4cは、ボディ2の外面、特に凹部4a〜4cの延長方向に実質的に垂直且つマーカー部材面3cに実質的に垂直な方向の上面からの異なる深さを有する。
【0084】
図5は、上述のナビゲーションシステムの一部を形成する手術器具100の概略正面図を示す。手術器具100は、位置合わせ及び識別システムの一部を形成するイメージングユニット101を有する。さらに、手術器具100及びイメージングユニット101は、本発明のナビゲーションシステムの一部を形成する。さらに、前記位置合わせ及び識別システムは、処理ユニット(図示せず)をさらに有する。
【0085】
図6a及び
図6bは、手術ツール、すなわち、歯科用ドリル102の位置合わせ及び/又は識別のための凹部4a及び4dの使用の説明図を示す。
【0086】
図6aに示すように、球形チップ(球形先端部(spherical tip))を有する歯科用ドリル102が円錐形凹部4dに挿入される。凹部4dは円錐形であり、歯科用ドリル102の球形チップの外径は、凹部4dの最小の横方向の範囲より大きいので、歯科用ドリル102は凹部4d内に完全に挿入することができない。言い換えれば、球形チップの球面は、円錐形凹部4dの表面と実質的に線接触しており、線接触は実質的に円形形状を有する。
【0087】
凹部4dの円錐形の形状、特に、ボディ2の外面からの距離に関する凹部4dの直径は知られているので、球形チップの中心が円錐形凹部4dの中にどれだけ深く挿入されたかが知られている場合に、歯科用ドリル102の球形チップの直径を決定又は計算することができる。
【0088】
図6aは追加的に、球形チップ又は円筒形チップ(図示せず)を有する歯科用ドリル102の場合、歯科用ドリル102は、2つの空間方向(spatial directions)で実質的に枢動され(pivoted)、他の2つの空間方向に垂直な一つの空間方向に回転され得ることを示す。
【0089】
従って、歯科用ドリル102のチップ(先端部)が凹部4dに配置されている間に、歯科用ドリル102が挿入される手術器具100を2つの空間方向に枢動させることが可能である。従って、マーカー部材3に対して手術器具を枢動させることが可能であり、また、特に手術器具100のイメージングユニット101によって、手術器具の相対移動の検出プロセスを同時に実行することが可能である。
【0090】
一方、
図6bは、凹部4a〜4cの使用、特に凹部4aの使用を示す。
図4に示すように、凹部4a〜4cは、円筒形又は円錐形(図示せず)を持つ手術ツール102、特に歯科用ドリルを位置合わせ及び/又は識別する使用を目的とするものである。凹部4a〜4cの深さを歯科用ツール102の円筒チップの長さに調整するために、
図4に関して前述したように、凹部4a〜4cは異なる深さを備える。従って、歯科用ツール102のチップが凹部4a〜cの底部に到達できない、又は、円筒形ヘッドのチップの長さが長すぎるため、チップの大部分が凹部4a〜cに挿入できず、これが不安定さ並びに誤った測定及び/又は検出結果を招くことが回避され得る。
【0091】
凹部4a〜4cのテーパ形状、特に、ボディ2の外面(
図3におけるボディ2の左外面)からの距離に対する凹部4a〜cの横方向の範囲が知られているので、円筒形チップの中心がテーパ状凹部4a〜cにどれくらい深く挿入されたかが分かる(イメージングユニットで検出され、以下、
図7で詳細に説明する)場合には、歯科用ドリル102の円筒形チップの直径を決定又は計算することができる。換言すれば、歯科用ドリル102の円筒形チップの直径は、円筒形チップの中心が、ボディ2の左側からその右側へどれだけ挿入され得るかに基づいて決定される。
【0092】
さらに、円錐形状を有するドリルヘッド102が凹部4a〜4cに配置又は挿入される場合、マーカー部材面3cと実質的に垂直且つ凹部4a〜4cの延長方向と実質的に平行である傾斜軸を中心としたドリルヘッド102の枢動を監視するとき、ドリルヘッド102の円錐の角度を決定することができる。
【0093】
図7a及び
図7bは、本発明の一実施形態の方法/使用による、歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための凹部4a及び4dの使用の図を、正面から概略断面図で示す。
図7a及び
図7bの両方に見られるように、凹部4a〜4eの位置配置(positional arrangement)のために、それぞれの凹部4a〜eは、ボディ2の頂部から常に容易にアクセス可能であり、手術器具100は、歯科用ツール102の位置合わせ及び識別の間、快適で実質的に水平な位置に保持されることができる。さらに、凹部4a〜4eが頂部からアクセス可能であるので、歯科用ツール102のそれぞれの凹部4a〜eへの正しい配置は、視覚的に容易に検査及び/又は監視することができる。
【0094】
図8は、本発明の一実施形態によるナビゲーションシステム200の概略斜視図を示す。ナビゲーションシステム200は、手術器具100と、位置合わせ及び識別ツール1とを有する。さらに、ナビゲーションシステム200は、位置合わせ及び識別システムの一部を形成するイメージングユニット101を有する。
【0095】
図9は、本発明の一実施形態による歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための方法を示すブロック図を示す。
【0096】
以下、
図9に示すブロック図を参照して、歯科用ドリルの位置合わせ及び/又は識別のための方法について説明する。
【0097】
位置合わせ及び識別ツール1並びに手術器具100に取り付けられたイメージングユニット101を有する、位置合わせ及び識別システムが、手術器具100に挿入される歯科用ツール102を位置合わせ及び/又は識別することを可能にするために、位置合わせ及び識別システムの較正を実行する必要がある。
【0098】
したがって、まず、位置合わせ及び識別システムの較正プロセスを以下に説明する。較正プロセスの説明の後、本発明の位置合わせ及び識別システムを用いることによって手術ツール102を位置合わせ及び識別する方法を説明する。
【0100】
位置合わせ及び識別システムの較正プロセスのステップ1では、空の手術器具100が位置合わせ及び識別システム上に配置される。特に、手術ツール102は、手術器具に取り付けられない(挿入されていない)、すなわち、手術器具102のツールホルダは空である。したがって、手術器具102のツールホルダを、位置合わせ及び識別ツール1の基準ピン5上に配置することが可能であり、この基準ピンは、ツールホルダに挿入され且つツールホルダによってクランプされることができる手術器具102のシャフトに対応するように形成される。
【0101】
ツールホルダを有する手術器具100を基準ピン5上に配置した後、較正プロセスのステップ2が実行される。ステップ2では、検出プロセスが実行される。検出プロセスは、手術器具100が移動されない間に実行することができる。この方法では、イメージングユニット101とマーカー部材3との間の相対的な向き及び位置を較正することが可能である。加えて、イメージングユニット101と手術器具100のツールホルダとの間の相対的な向き及び位置を決定(計算)することが可能である。
【0102】
しかし、手術器具100が枢動される間に検出プロセスを実行することも可能である。ここで、また、以下の枢動は、好ましくは、円形の様式で実行され、すなわち、手術器具は、較正プロセスの場合には、基準ピン5の長手軸と同軸である軸である垂直軸の周りを実質的に円運動する(circulated)。この方法では、イメージングユニット101/処理ユニットに、マーカー部材3の検出結果に対する手術器具100の相対移動(枢動及び/又は円運動)の影響を教示することが可能である。
【0103】
ステップ3では、検出プロセスの検出結果を使用して、位置合わせ及び識別システムの較正が実行される。ステップ3が終了すると、位置合わせ及び識別システムは使える状態である。
【0105】
ステップ3を完了した後、システムは使用の準備ができているので、ステップ4で、歯科用ツール102が、手術器具100のツールホルダに挿入され、クランプされる。
【0106】
ステップ5では、手術器具100は、再び、位置合わせ及び識別ツール上に配置される。特に、歯科用ツール102のチップは、凹部4a〜eのうちの1つに挿入される。本例の歯科用ツール102は球形のチップを有するので、歯科用ツール102は凹部4d内に配置される。
【0107】
ステップ6では、歯科用ツール102が凹部4dの内側に配置される間に、マーカー部材3に対する手術器具100の枢動が行われる。上述のように、この例で使用される歯科用ツール102は、球形チップを有する歯科用ツール102である。したがって、ステップ6、特に枢動を実行する必要がある。円筒形を有する歯科用ツール102、特に円筒形チップを有する歯科用ツール102の場合、ステップ6を実行する必要はなく、すなわち、手術器具100の枢動を実行する必要はない。
【0108】
ステップ7では、マーカー部材3に対する手術器具100の相対移動の検出プロセスが実行される。
【0109】
相対移動の検出プロセスが終了すると、ステップ8が実行される。ステップ8では、歯科用ツール102の位置合わせ及び/又は識別が検出プロセスの検出結果を用いて行われる。特に、検出プロセスの検出結果に基づいて、処理ユニットは、歯科用ツール102の幾何学的特性を決定することができる。さらに、検出プロセスの検出結果に基づいて、処理ユニットが、手術器具102の残りの部分に対する歯科用ツール102の相対位置を決定することも可能である。
【0110】
前述の実施形態及びその変形形態は、例示目的のためにのみ開示されており、さらなる変形は、当業者の能力の範囲内で全面的に可能である。従って、添付の特許請求の範囲は、当業者が自身の一般的及び専門的知識及び専門性を考慮して前述の開示から達成し得る、全ての修正、置換、変更、省略及び追加をカバーすることを意図している。