特許第6974496号(P6974496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974496HIFプロリルヒドロキシラーゼ活性の阻害剤としてのカンナビジオール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974496
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】HIFプロリルヒドロキシラーゼ活性の阻害剤としてのカンナビジオール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 225/20 20060101AFI20211118BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C07C225/20CSP
   A61K31/133
   A61K31/137
   A61P43/00 111
   A61P9/10
   A61P17/02
   A61P7/06
   A61P11/00
   A61P31/00
   A61P37/06
   A61P13/12
   A61P9/00
【請求項の数】4
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2019-553369(P2019-553369)
(86)(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公表番号】特表2020-515590(P2020-515590A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】EP2017057389
(87)【国際公開番号】WO2018177516
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】518051846
【氏名又は名称】エメラルド ヘルス ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド ムニョス ブランコ
(72)【発明者】
【氏名】カルメン マリア ナバレテ ルエダ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティナ クルス テーノ
(72)【発明者】
【氏名】マリア ルース ベリド カベジョ デ アルバ
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/158381(WO,A1)
【文献】 特表2013−523623(JP,A)
【文献】 特表2007−517861(JP,A)
【文献】 特表2006−514113(JP,A)
【文献】 特表2014−522409(JP,A)
【文献】 DEL RIO, C. et al.,The cannabinoid quinol VCE-004.8 alleviates bleomycin-induced scleroderma and exerts potent antifibrotic effects through peroxisome proliferator-activated receptor-γ and CB2 pathways,Scientific Reports,2016年,pp.1-14,DOI:10.1038/srep21703
【文献】 KANG, Ju-Hee et al.,Involvement of Prolyl Hydroxylase Domain Protein in the Rosiglitazone-Induced Suppression of Osteoblast Differentiation,PLOS ONE,2015年,pp.1-16,DIO:10.1371/journal.pone.0139093
【文献】 YAN, L. et al.,Prolyl hydroxylase domain-containing protein inhibitors as stabilizers of hypoxia-inducible factor: small molecule-based therapeutics for anemia,xpert Opinion on Therapeutic Patents,2010年,Vol.20, No.9,pp.1219-1245
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその誘導体を含む、低酸素誘導因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための組成物であって、
【化1】
式中、Rは、直鎖若しくは分岐アルキルアミン基、アリールアミン基、直鎖若しくは分岐アルケニルアミン基、又は直鎖若しくは分岐アルキニルアミン基から独立して選択される基の窒素原子であり
前記HIF PHD活性阻害から恩恵を受ける状態が、脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、及び動脈疾患からなる群より選択される、
前記組成物
【請求項2】
前記式(I)の化合物が、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
および
【化10】
からなる群より独立して選択される、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
式(I)の化合物又はその誘導体、及び少なくとも1種の医薬的に不活性な成分を含む低酸素誘導因子(HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための組成物であって、
【化11】
式中、Rは、直鎖若しくは分岐アルキルアミン基、アリールアミン基、直鎖若しくは分岐アルケニルアミン基、又は直鎖若しくは分岐アルキニルアミン基から独立して選択される基の窒素原子であ
前記医薬的に不活性な成分は、賦形剤、担体、及びその組み合わせからなる群より場合により選択され、そして
前記HIF PHD活性阻害から恩恵を受ける状態が、脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、及び動脈疾患からなる群より選択される、
前記組成物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
からなる群より独立して選択される、請求項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)阻害から恩恵を受ける疾患の治療における使用のための式(I)のカンナビジオールキノール誘導体の使用に関する。特にHIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤として、前記化合物はHIF−1αタンパク質レベル及びHIF−2αタンパク質レベルを安定化し、HIF−1経路の活性化をもたらす。PHDの阻害は、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、又は動脈疾患などの状態において有用な血管新生及びコラーゲン収縮を誘発する。本発明は、前記疾患を治療するための前記化合物を含む医薬組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の細胞は、好気性代謝及びエネルギー生成を実行するために、適切な酸素恒常性を維持する必要がある。低酸素誘導因子(HIF)−1の発見以来、HIF転写因子による酸素検知の根底にあるシグナル伝達メカニズムは、生物学的意味合いで広く研究されてきた(Wangら, Redox Rep. 1996. 2:89−96)。酸素に不安定なαサブユニット及び構成的に発現したβサブユニットで構成されるHIFは、赤血球生成、血管新生、エネルギー代謝、虚血、及び炎症などの多様な細胞プロセスに関与する多数の遺伝子の転写を促進する(Semenzaら, J. Biol. Chem. 1994. 269:237357−63及びEltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 13:852−69)。HIFは、ほぼ以下の2つの形態のみで細胞に存在する:HIF−1及びHIF−2。それらは、構成的に産生された非常に豊富なHIF−βサブユニットと、HIF−1α又はHIF−2αパートナーのいずれかからなるヘテロ二量体転写因子であり、HIF−1及びHIF−2それぞれの場合において48%の配列相同性を共有する(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56: 9369−4025)。HIF−1は低酸素に対する代謝応答及び血管応答と関連していることが多いが、HIF−2は血管系だけでなく赤血球生成とも関連している(Ratcliffe PJ, J. Clin. Invest. 2007. 17:862−5)。
【0003】
酸素がHIF−1αを調節するメカニズムは、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)の同定によって明らかにされた(Bruick and McKnight, Science 2001. 294(5545):1337−40)。酸素正常状態では、PHDはHIF−1αの酸素依存性分解ドメインのプロリン残基をヒドロキシル化し、それにより、フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel Lindau)タンパク質(pVHL)−エロンギンB−エロンギンCへの結合が可能になり、半減期が約5分のアクティブなユビキチン化と分解をもたらす。対照的に、低酸素状態(細胞内の酸素不足)下での酸素欠乏は、PHDによるHIF−1αのヒドロキシル化を損ない、結果としてHIF−1α分解の減少、HIF−1α安定化の増加、続いて血管内皮増殖因子(VEGF)−A及びエリスロポエチン(EPO)遺伝子を含む遺伝標的子の過剰な誘導をもたらす(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56(23):9369−4025)。PHDは、触媒活性により酸素、鉄、2−オキシグルタル酸(2−OG)を必要とするジオキシゲナーゼ酵素のファミリーに属する。3つのPHDアイソフォーム(PHD1、PHD2、及びPHD3)が特定されており、それらの基質は非常に多様でアイソフォーム特異的であることが知られている(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56:9369−4025及びEltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 11:852−69)。
【0004】
PHD2はHIF経路の制御に重要であると考えられている。具体的には、PHD2の条件付きノックアウトで血管新生の促進、VEGF−Aレベル及びEPレベルの増加が観察された(Takedaら, Circulation 2007. 116:774−81)。このような観察は、HIFがEPO放出を増強し、同時に赤血球生成を増加させることを示す報告とともに、PHDの調節によるHIFの活性化が貧血及び虚血関連疾患の患者に有益である可能性を示唆している。したがって、全身性及び局所性の低酸素関連疾患を治療するために、PHD活性を阻害することによりHIF経路を操作する薬理学的アプローチが追求されてきた(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56: 9369−4025及びEltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 13:852−69)。
【0005】
低酸素症などの脳損傷に続発する神経損傷は、複雑なプロセスである。HIF−1αの安定化及びトランス活性化によって媒介される、生存又は細胞死に関連する一般的なメカニズムの活性化は、これらの条件で観察されている。PHDは、HIF−1αの酸素依存性分解のゲートキーパーであり、細胞代謝の統合センサーとしても機能する(Aragonesら, Cell Metab. 2009. 9:11−22)。低酸素プレコンディショニング(HP:hypoxic preconditioning)がそれに続く重篤な無酸素症を防ぐ現象は、約20年前に見出された。その後、HPの効果はインビトロ及びインビボの低酸素モデルで集中的に研究されてきた。正確なメカニズムは完全には開示されていないが、基礎となる分子メカニズムが仮定されている。例えば、HPは、HIF−1αレベル及びHIF−2αレベルの安定化を含む多種多様な内因性保護メディエーターを活性化し、重度の酸素欠乏下での細胞生存能力を向上させる(Wuら, 2012, The protective role of hypoxic preconditioning in CNS, Anoxia, Dr. Pamela Padilla (Ed.), InTech, DOI: 10.5772/27621)。
【0006】
脳の低酸素症が発生する疾患には、脳卒中、外傷などがある。これまでに、これらの疾患から脳を保護する有効な薬物は存在していない。HPのメカニズムの開示は、上記疾患の予防のための創薬に貢献する。低酸素症に対する多くの細胞適応応答はHIF−1αによって媒介され、HPによるこの因子の活性化は重篤な無酸素症又は虚血に耐える能力を高める。一方、HIF−1の標的遺伝子は、赤血球形成の制御におけるEPO、血管新生における血管内皮増殖因子(VEGF)、グルコース取り込みにおけるグルコーストランスミッター(GLUT)、及び嫌気性解糖の解糖酵素など、エネルギー恒常性に関与している(Speerら, Free Radio. Biol. Med. 2013. 62:23−36)。さらに、乏突起膠細胞におけるHIF−1αの活性化は、EPOを誘導し、それにより興奮毒性に対する乏突起膠細胞の保護を付与することが報告されている(Sunら, J. Neurosci. 2010. 30:9621−30)。この意味で、脳卒中、脱髄性疾患、外傷性脳損傷などのいくつかの疾患におけるEPOの利点も実証されている(Pengら, J. Neurosurg. 2014. 1:653−64、Ehrenreichら, Stroke 2009 40 (12): e647−56、Liら, Ann. Neurol. 2004. 56:767−77)。さらに、デフェロキサミン(DFX)などの低酸素模倣剤は、3−ニトロプロピオン酸(3-nitropoionic acid)によって誘発された神経損傷を保護する(Yangら, J. Neurochem. 2005. 96: 513−25)。したがって、低酸素性小分子によるPHDの阻害は、脳卒中や外傷などの低酸素症が生じる状態の臨床管理のための興味深い戦略又は治療法の開発を示す。
【0007】
かなりの数の薬理学的研究(一般に非特異的PDH2阻害剤を使用)が動物モデルで実施されており、いくつかの臨床研究が実施されている。実際、いくつかの企業は、貧血や、IBD、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、及び動脈疾患などの他の適応症に対するPHD阻害剤の創薬と開発に携わっており、これらはPHD阻害剤が、新規治療アプローチとして多くの研究者によって積極的に追求されている分野である(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56:9369−4025及びEltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 13:852−69)。さらに、PDH阻害剤は創傷治癒及び組織リモデリングに影響を与え、コラーゲンゲルモデルシステムは組織リモデリングに関連する機能的アウトプットの測定に使用されることが示されている(Philipsら, Exp Cell Res. 2005; 310:79−87)。
【0008】
HIF発現の調節因子としてのHIF選択的PHDの本来の説明により、PHDに基づいた分子ツール及び治療法の開発のためのテンプレートが提示された。2−OGアナログによるPHDの薬理学的不活性化はHIF−1αを安定化するのに十分であるが、この作用は個々のPHDアイソフォームに関して非特異的であり、インビトロの研究では、HIF−1αの酸素分解ドメイン配列がPHD2によって最も効率的にヒドロキシル化されることが判明した(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56:9369−4025)。これらの観察により、酵素修飾小分子阻害剤の特定に大きな関心が寄せられている。実に、いくつかのPHD阻害剤クラスが記述されており、DFX、ヒドララジン、AKB-4924、FG-2229、TM-6008、及びL-ミモシンなどの鉄キレート剤、MLN4924などのCUL2脱NEDD化剤(CUL2 deneddylators)、キシメチルオキサリルグリシンやN−オキサリル−d−フェニルアラニンなどの2−OG模倣体、ピラゾロピリジン、8-ヒドロキシキノリ、化合物A、FG-4497、及びTM-6089などのPHD活性部位遮断薬、並びにCo2+、Ni2+、及びCu2+などのFe2+代替物質が含まれる。これらの化合物の作用機序は、必須Fe2+イオンを含む触媒ドメインへの補助基質2OGの結合が、PHD2酵素活性にとって重要であるという観察に基づいている。したがって、N−オキサリルグリシン又はその前駆体DMOG(ジメチルオキサロイルグリシン)などの2OGを構造的に模倣する化合物は、前記補助基質の侵入をブロックすることによりPHD2を阻害する(Rabinowitz MH, J. Med. Chem. 2013. 56:9369−4025及びEltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 13:852−69)。
【0009】
カンナビジオール(CBD)は、大麻種に由来するフィトカンナビノイドであり、精神活性作用を有さず、鎮痛作用、抗炎症作用、抗新生物作用、及び化学予防作用を持つ。投与により、カンナビジオール(CBD)は、カンナビノイド受容体1型(CB1)及びカンナビノイド受容体2型(CB2)によるシグナル伝達を含まない可能性が高い様々なメカニズムを介して、その抗増殖活性及びアポトーシス促進活性を発揮する。また、CBDはPPARγの弱いアゴニストである(Granjaら, J. Neuroimmune Pharmacol. 2012. 7:1002−16)。CBDは、癌細胞の浸潤と転移を阻害し、HIF−1αの低酸素誘導安定化も阻害する(Solinasら, PLoS One. 2013. 8(10):e76918)核内受容体PPARγの弱い活性化因子である。対照的に、いくつかのCDBキノール誘導体は、この核内受容体のより強い結合と活性化能力を示した(del Rioら, Sci Rep. 2016. 6:21703)(Vivacell Biotechnology Espana, S.L. 2015. Novel Cannabidiol quinone derivatives. WO2015158381A1)。
【発明の概要】
【0010】
従来技術とは異なり、本発明の課題は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)を阻害する活性を示し、その結果HIF−1αレベル及びHIF−2α レベルの安定化をもたらし、HIF依存性転写活性を誘導する化合物を提供することにある。したがって、本発明の課題は、PHD活性の阻害から恩恵を受ける状態の治療に使用するための化合物を提供することにある。
【0011】
上述の通り、カンナビジオール(CBD)はHIF−1α安定化を阻害するが、出願人は驚くべきことに、一部のCBDキノール誘導体がPHD活性の阻害剤であり、したがってCBD前駆体のように安定化を阻害することなく、HIF−1αレベル及びHIF−2αレベルを安定化することを見出した。
【0012】
より具体的には、本発明は、下記式(I)の化合物(CBD−Q誘導体)に関する:
【0013】
【化1】
【0014】
式中、Rは、アリール基、直鎖若しくは分岐アルケニル基、直鎖若しくは分岐アルキニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基から独立して選択される基の炭素原子であるか、Rは、直鎖若しくは分岐アルキルアミン基、アリールアミン基、直鎖若しくは分岐アルケニルアミン基、又は直鎖若しくは分岐アルキニルアミン基から独立して選択される基の窒素原子であり、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための、前記化合物又はその誘導体。
【0015】
したがって、そうした式(I)の化合物及びそれを含む組成物はPHDの阻害剤であり、その結果前記化合物及び組成物はHIF−1αタンパク質レベル及びHIF−2αタンパク質レベルを安定化し、異なる細胞型においてHIF経路を活性化し、ヒト血管内皮細胞の血管新生を誘導し、HIF−1依存性遺伝子の発現を誘導し、コラーゲン収縮を仲介する能力を発揮する。よって、前記式(I)の化合物は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療において有用である。
【0016】
PHD活性の阻害は、HIF−1αレベル及びHIF−1βレベルの安定化をもたらし、これにより、酸素欠乏又は低酸素下での細胞生存能力が増強する。したがって、PHD活性の阻害から恩恵を受ける条件は、低酸素症(細胞内の酸素不足)が起こる条件であり、したがって、HIF−1αレベル及びHIF−1βレベルの安定化がその治療に有利となる条件である。酸素不足(低酸素症)が発生すると、一時的な生物学的応答によりHIF経路が活性化される。前記一時的な応答は、しばしば、前述の低酸素症によって生物に生じた損傷を修復し回避するのに十分な長さではない。本発明で開示される化合物は、PHDの活性を阻害することにより、低酸素症の場合の身体の応答を模倣し、HIFタンパク質のレベルを安定化し、HIF経路を活性化することが可能であり、それにより低酸素症に見られる酸素の不足によって引き起こされる細胞損傷の保護に関与する血管新生、創傷治癒、及び/又は遺伝子の発現を誘導する。
【0017】
よって、PHDの阻害は、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、又は動脈疾患などの状態において有用な、HIF依存性遺伝子の発現、血管新生、及びコラーゲン収縮を誘発する。
【0018】
本発明の目的のために、前記HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態は、限定されるものではないが、脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、又は動脈疾患である。
【0019】
本明細書における説明目的のために、脳卒中は、脳血管が原因の神経学的欠損を指す。脳卒中は、虚血性及び出血性の2つの主要なカテゴリに分類され得る。虚血性脳卒中は、脳への血液供給の中断によって引き起こされるが、出血性脳卒中は、血管の破裂又は異常な血管構造から生じる。どちらの場合も、脳への酸素の正常な供給が中断されるため、脳卒中により脳細胞が低酸素状態になる。HIF経路の薬理学的活性化は、その産物が急性低酸素イベントによって引き起こされる損傷から神経細胞を保護できる遺伝子の発現を高める。
【0020】
本明細書の目的のために、外傷は、救急医療を要する突然の発症及び重症度による身体的損傷を指す。外傷は、鈍的損傷、貫通、火傷のメカニズムによるものである。上記の外傷には、自動車の衝突、スポーツによる負傷、転倒、自然災害、その他の多数の身体的負傷が含まれる。これらのイベントでは、負傷により、しばしば細胞への血液供給が遮られるので、血管を通る酸素の通常の供給の中断による低酸素状態をもたらす。PHD活性の阻害及びその結果としてのHIF経路の活性化は、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生を促進し、組織への酸素供給を高める新しい血管の形成を増加させる。
【0021】
本明細書の目的のために、貧血は、血液中の赤血球又はヘモグロビンの総量の減少を指す。これは、細胞内の酸素供給量に影響を与え、低酸素状態に至る。PHD活性の阻害及びその結果としてのHIF経路の活性化は、エリスロポエチン(EPO)の産生を促進し、赤血球の産生を増加させる。
【0022】
本明細書の目的のために、心筋虚血−再灌流障害は、心筋虚血又は酸素不足(無酸素症、低酸素症)の期間後に血液供給が組織に戻るときに引き起こされる組織損傷を指す。PHD活性の阻害及びその結果としてのHIF経路の活性化は、虚血性プレコンディショニングによる心臓保護を誘導する。虚血性プレコンディショニングは、短期間の虚血の非致死性エピソードへの事前曝露により、その後の虚血−再灌流障害中に心筋組織傷害が減弱する実験的戦略である。
【0023】
本明細書の目的のために、急性肺障害は、急性重症低酸素症を特徴とする状態を指し、その診断は、重篤患者の非心原性肺浮腫及び呼吸不全の存在に基づく。マウスにおけるPHD活性の阻害及びその結果としてのHIF経路の活性化は、機械的換気によって誘発される急性肺障害中の生存率の劇的な増加と関連していた(Eckle, T. et al. 2013. PLoS Biol. 11, e1001665)。
【0024】
本明細書の目的のために、感染症は、細菌、ウイルス、寄生虫、又は真菌などの病原性微生物によって引き起こされる疾患を指し、前記疾患は、直接的又は間接的に人から人へと伝染し得る。PHD活性の阻害及びその結果としてのHIF経路の活性化は、感染を除去する骨髄細胞の機能に関与している。HIF1は食細胞の解糖代謝をサポートするために不可欠であるだけでなく、細菌の取り込み、抗菌エフェクター分子の産生、及び好中球の寿命延長などの重要な機能も制御する(Eltzschig, H.K. and Carmeliet, P. N. Engl. J. Med. 2011. 364, 656-665)。
【0025】
本説明の目的のために、糖尿病性及び慢性創傷は、一連の順序立った経過でほとんどの創傷が治癒する予測可能な期間で治癒しない、糖尿病状態によって引き起こされる可能性のある創傷を指す。一般に、3か月以内に治癒しない創傷は、しばしば慢性と見なされる。PHD活性の阻害及びその結果としてのHIFレベルの安定化は、(1)治癒を促進する血管新生の強化、並びに(2)創傷治癒及び組織リモデリングにも影響するコラーゲン収縮をもたらす。
【0026】
本明細書の目的のために、急性腎障害は、7日以内に発症する多くの原因による腎機能の突然の喪失を指す。前記腎機能の突然の喪失は、腎組織の損傷を引き起こし、一般的に腎血流の減少(腎虚血)によって引き起こされる。
【0027】
臓器移植に関する本明細書の目的のために、いくつかの研究は、HIF活性化因子が、心臓、腎臓、肺、又は肝臓移植などの固形臓器移植中の早期移植片不全を予防できることを示唆している。他の研究は、虚血及び再灌流も早期肝拒絶の重症度に影響を及ぼすなど、臓器移植において重要な免疫学的結果をもたらすことを示している(Eltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 13:852−69)。
【0028】
本説明の目的のために、動脈疾患には、末梢動脈の虚血及び慢性血管閉塞を伴う疾患のクラスが含まれる。虚血は通常、血管新生サイトカインの産生及び骨髄由来血管新生細胞のホーミングを誘導するが、HIFの発現低下により、これらの適応応答は加齢とともに損なわれる。HIF経路の活性化は、大腿動脈結紮を受けた老齢マウスの灌流、運動機能、及び救肢を増加させた。同様に、別の研究により、Phd1の遺伝的欠失を有するマウスが、HIFレベルの増加の結果として後肢虚血中に保護されることを強く示す証拠が提示された(Eltzschigら, Nat. Rev. Drug Discov. 2014. 13:852−69)。
【0029】
好ましい実施形態では、Rは、直鎖若しくは分岐アルキルアミン基、アリールアミン基、直鎖若しくは分岐アルケニルアミン基、又は直鎖若しくは分岐アルキニルアミン基から独立して選択される基の窒素である。
【0030】
好ましい実施形態では、Rは直鎖アルキルアミンの窒素原子である。別の好ましい実施形態では、Rは分岐アルキルアミンの窒素原子である。別の好ましい実施形態では、Rはアリールアミンの窒素原子である。
【0031】
したがって、式(I)の化合物は、以下の能力を示す:
−本明細書で以下に開示する実施例2に示すように、PHDの活性を阻害する、すなわち、前記化合物はPHDによるHIFタンパク質のヒドロキシル化を阻害する、
−以下に開示する実施例1に示すように、HIF経路を活性化する、
−本明細書で以下に開示する実施例2に示すように、HIFタンパク質レベルを安定化する、
−本明細書で以下に開示される実施例3に示されるように、ヒト血管内皮細胞において血管新生を誘導する、
−本明細書で以下に開示される実施例4に示されるように、HIF−1α依存性遺伝子の発現を誘導する、及び
−以下に開示される実施例5に示されるように、コラーゲン収縮を誘発する。
【0032】
PHDのヒドロキシラーゼ活性の阻害及びその結果によるHIF−1αタンパク質レベル及びHIF−2αタンパク質レベルの安定化は、低酸素下での酸素欠乏がPHDによるHIF−1αのヒドロキシル化を損ない、HIF経路を活性化する状況を模倣する。
【0033】
本発明はまた、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための、式(I)の化合物の誘導体を含む。前記式(I)の化合物の誘導体は、互変異性体、異性体、立体異性体、多形体、エステル、医薬的に許容される塩又は医薬的に許容される溶媒和物を指す。より好ましい実施形態では、前記式(I)の化合物の誘導体は、その医薬的に許容される塩を指す。
【0034】
「互変異性体」という用語は、化学プロセス(互変異性化)によって容易に相互変換される有機化合物の構成異性体である。
【0035】
「異性体」又は「立体異性体」という用語は、同一の化学構成を有するが、空間内の原子又は基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0036】
本明細書で使用する用語「多形体」とは、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、及び/又はイオンの空間配置が異なる結晶形を指す。
【0037】
「医薬的に許容される塩」という用語は、患者への投与時に本明細書に記載の化合物を(直接的又は間接的に)提供することができる任意の医薬的に許容される塩を指す。そのような塩は、生理学的に許容される有機酸又は無機酸との酸付加塩であることが好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩などの鉱酸付加塩、並びに例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びアンモニウム塩などの無機塩、並びに例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N、N−ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。しかし、医薬的に許容されない塩も、意訳的に許容される塩の調製に有用である可能性があるため、医薬的許容されない塩も本発明の範囲に含まれることが理解されよう。塩形成の手順は、当技術分野で慣習的である。
【0038】
本発明による「溶媒和物」という用語は、本発明による活性化合物の任意の形態を意味すると理解されるべきであり、前記化合物は、非共有結合により別の分子(通常、極性溶媒)に結合し、特に水和物及びアルコラートを含む。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療において有用である前記式(I)の化合物は、下記式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(X)、及び(XI)の化合物である。
【0040】
【化2】
(1’R,6’R)−3−(エチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0041】
【化3】
(1’R,6’R)−3−(ペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0042】
【化4】
(1’R,6’R)−3−(イソブチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0043】
【化5】
(1’R,6’R)−3−(ブチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0044】
【化6】
(1’R,6’R)−3−(メチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0045】
【化7】
(1’R,6’R)−3−(イソプロピルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0046】
【化8】
(1’R,6’R)−3−(ベンジルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0047】
【化9】
(1’R,6’R)−3−(ネオペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−)−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0048】
【化10】
(1’R,6’R)3−(イソペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−アミン−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0049】
VCE−004は、本発明による使用のための式II〜Xの化合物の前駆体であり、CBD(THC Pharma、ドイツ、参照番号:THC−1073G−10)から容易に合成できる(del Rioら, Sci Rep. 2016. 6:21703及びWO2015158381A1)。
【0050】
【化11】
【化12】
【0051】
以下の実施例と図から推測されるように、式Iに含まれる3’位の修飾は、本発明の化合物にHIF経路を活性化する能力を付与し、したがって、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療に有用な化合物となる。
【0052】
重要なことは、CBDもVCE−004(キノール環の前記3位に置換がないことを特徴とする既知のCBD誘導体)もHIF経路を活性化しないことから、本発明に記載の式(I)のCBD誘導体により示されるように、VCE−004のキノール環の3位の特定の修飾がHIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害に重要であることが実証される。
【0053】
本明細書の実施例及び図に示されるように、式(I)の化合物に含まれる修飾は、本明細書に開示される化合物にPHDの活性を阻害する能力を付与する。その結果、前記化合物は、HIF−1αタンパク質レベル及びHIF−2αタンパク質レベルを安定化し、異なる細胞型でHIF経路を活性化し、ヒト血管内皮細胞で血管新生を誘導し、異なるHIF−1α依存性遺伝子の発現を誘導し、コラーゲン収縮を増加させる。
【0054】
本発明の一実施形態は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療に使用するための、本明細書の前記式(I)の化合物又は式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(X)、及び(XI)の化合物のいずれかに関し、前記状態は、脳卒中、外傷、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、又は動脈疾患から独立して選択される。
【0055】
好ましい実施形態は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療に使用するための、本明細書の前記式(I)の化合物又は式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(X)、及び(XI)の化合物のいずれかに言及し、前記状態は、脳卒中、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、糖尿病性及び慢性創傷、急性腎障害、又は動脈疾患などの前記HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から独立して選択される。
【0056】
本明細書に開示される実施形態は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための、少なくとも下記式(I)の化合物又はその誘導体、及び少なくとも1つの賦形剤又は担体を含む組成物、特に医薬組成物に言及する。
【0057】
【化13】
【0058】
式中、Rは、アリール基、直鎖若しくは分岐アルケニル基、直鎖若しくは分岐アルキニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基から独立して選択される基の炭素原子であるか、Rは、直鎖若しくは分岐アルキルアミン基、アリールアミン基、直鎖若しくは分岐アルケニルアミン基、又は直鎖若しくは分岐アルキニルアミン基から独立して選択される基の窒素原子である。
【0059】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物の前記誘導体は、互変異性体、異性体、立体異性体、多形体、エステル、医薬的に許容される塩又は医薬的に許容される溶媒和物を指す。より好ましい実施形態では、式(I)の化合物の前記誘導体は、その医薬的に許容される塩を指す。
【0060】
前記賦形剤又は担体は、本発明の目的のために、共溶媒、界面活性剤、油、保湿剤、皮膚軟化剤、防腐剤、安定剤、及び酸化防止剤などの不活性成分を指すが、これらに限定されない。トリス(TRIS)又はリン酸緩衝液など薬理学的に許容される緩衝液を使用してもよい。
【0061】
本発明による使用のための典型的な組成物は、一例として、担体又は希釈剤であり得る医薬的に許容される賦形剤と関連する本明細書で上述した式(I)の化合物又はその誘導体を含む。そのような組成物は、カプセル、小袋、紙、又は他の容器の形態であり得る。前記組成物の製造において、医薬組成物の調製のための従来技術を使用してもよい。例えば、本明細書に開示した前記式(I)の化合物は、担体と混合するか、担体で希釈するか、アンプル、カプセル、小袋、紙、又は他の容器の形態である担体内に封入することも可能である。前記担体が希釈剤として機能する場合、活性化合物の媒体、賦形剤、又は培地として作用する固体、半固体、または液体材料であり得る。本明細書で上述した使用のための式(I)の前記化合物及びそれを含む組成物は、例えば小袋内の粒状固体容器に吸着させることができる。適切な担体の例としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシ化ヒマシ油、落花生油、オリーブ油、乳糖、白土、ショ糖、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸又はセルロースの低級アルキルエーテル、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンである。同様に、前記担体又は希釈剤は、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で知られている徐放性材料を単独で、またはワックスと混合して含んでもよい。前記組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、保存料、甘味剤、又は香味剤も含み得る。本発明に記載のHIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための組成物は、当技術分野で周知の手順を使用することにより、患者への投与後、本明細書に開示される式(I)の化合物の即時放出、持続放出、又は遅延放出を提供するように処方され得る。
【0062】
前記医薬組成物は、所望により、本明細書に開示した前記化合物と有害に反応しない補助剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液及び/又は着色物質などと滅菌し混合することができる。
【0063】
本明細書に開示される別実施形態は、以下の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、又は(X)から選択される式(I)の化合物のいずれかを含む、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための組成物、特に医薬組成物に言及する。
【0064】
【化14】
(1’R,6’R)−3−(エチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0065】
【化15】
(1’R,6’R)−3−(ペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0066】
【化16】
(1’R,6’R)−3−(イソブチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0067】
【化17】
(1’R,6’R)−3−(ブチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0068】
【化18】
(1’R,6’R)−3−(メチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0069】
【化19】
(1’R,6’R)−3−(イソプロピルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0070】
【化20】
(1’R,6’R)−3−(ベンジルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0071】
【化21】
(1’R,6’R)−3−(ネオペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−)−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0072】
【化22】
(1’R,6’R)3−(イソペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−アミン−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0073】
よって、上述の組成物は、PHD活性を阻害する能力を発揮し、その結果、HIF−1αタンパク質レベル及びHIF−2αタンパク質レベルを安定化し、異なる細胞型においてHIF経路を活性化し、ヒト血管内皮細胞の血管新生を誘導し、HIF−1依存性遺伝子の発現を誘導し、コラーゲン収縮を誘導する。
【0074】
本明細書に記載の別の実施形態は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療に使用するための、少なくとも式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、又は(X)のカンナビジオール誘導体又はその誘導体を含む前記医薬組成物に言及し、前記状態は、脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、又は動脈疾患から独立して選択される。前記組成物は、ヒト又は動物に投与されたときに治療効果を発揮する別の活性成分をさらに含んでいてもよい。
【0075】
前記使用のための医薬組成物の投与経路は、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体を、適切な又は所望の作用部位に効果的に輸送する、経口、経鼻、局所、経肺、経皮又は、例えば直腸、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、眼科用、又は軟膏による非経口投与などの任意の経路であり得る。
【0076】
経鼻投与の場合、前記組成物は、エアゾール用途のために、液体担体、特に水性担体に溶解又は懸濁した、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体を含み得る。前記担体は、可溶化剤、例えばプロピレングリコール、界面活性剤、レシチン(ホスファチジルコリン)又はシクロデキストリンなどの吸収促進剤、若しくはパラベンなどの防腐剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0077】
局所組成物を調製するために、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体は、当技術分野で公知の皮膚科用媒体に入れられる。本明細書に開示した式(I)の化合物又はその誘導体の投与量及び局所製剤中の前記化合物の濃度は、選択された媒体、送達システム、又はデバイス、患者の臨床状態、副作用、及び製剤中の化合物の安定性によって決定する。したがって、医師は、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体を適切な濃度で含む適切な製剤を使用し、対象となる患者又は類似の患者の臨床経験に応じて、投与する製剤の量を選択する。
【0078】
眼科用途の場合、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体は、眼における使用に適した溶液、懸濁液、及び軟膏に処方される。前記濃度は通常、局所製剤について本明細書で上述した通りである。
【0079】
経口投与の場合、固体又は液体の単位剤形を調製できる。錠剤などの固体組成物を調製するために、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸カルシウム、デンプン、乳糖、アカシア、メチルセルロース、及び医薬希釈剤又は担体と機能的に類似した材料などの従来の成分を含む製剤に混合される。
【0080】
カプセルは、本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体を不活性医薬希釈剤と混合し、混合物を適切なサイズの硬ゼラチンカプセルに充填することにより調製される。軟ゼラチンカプセルは、前記式(I)の化合物のスラリーを、許容される植物油、軽流動ワセリン、又は他の不活性油で機械的にカプセル化することにより調製される。シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁液などの経口投与用の流体単位剤形を調製することができる。水溶性剤形は、糖、芳香性香料、及び防腐剤とともに水性媒体に溶解してシロップを形成することができる。エリキシル剤は、砂糖やサッカリンなどの適切な甘味料と芳香性香料を含む水性アルコール(エタノールなど)を使用して調製される。懸濁液は、アカシア、トラガカント、メチルセルロースなどの懸濁剤を助剤として、水性媒体で調製することができる。
【0081】
非経口使用のための適切な組成物は、適切な注射可能な溶液又は懸濁液の使用など、当業者には明らかである。無菌の組成物は、皮内、筋肉内、血管内、及び皮下を含む様々な局所又は非経口投与経路に適している。
【0082】
本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体に加えて、前記組成物は、所望の組成物及び送達様式に応じて、動物又はヒトへの投与のための医薬組成物を形成するために一般的に使用される媒体を含む、医薬的に許容される非毒性の担体又は希釈剤を含み得る。前記希釈剤は、組み合わせにおける生物学的活性に過度に影響しないように選択される。
【0083】
注射製剤に特に有用であるそうした希釈剤として、水、様々な生理食塩水、有機又は無機塩溶液、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス液が挙げられる。さらに、前記医薬組成物又は製剤は、アジュバント又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤など他の担体などの添加物を含んでいてもよい。
【0084】
さらに、前記開示組成物は、賦形剤を含むことができる。例として、共溶媒、界面活性剤、油、保湿剤、皮膚軟化剤、防腐剤、安定剤、及び酸化防止剤が挙げられる、これらに限定されない。トリス又はリン酸緩衝液など薬理学的に許容される緩衝液を使用してもよい。希釈剤、添加剤、及び賦形剤の有効量は、溶解度、生物活性などの点で医薬的に許容される製剤を得るのに有効な量である。
【0085】
本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体を含む前記医薬組成物は、ミクロスフェアに組み込まれていてもよい。本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体は、アルブミンミクロスフェアに充填することが可能であり、そのようなミクロスフェアを経鼻投与用の乾燥粉末で回収可能である。ミクロスフェアの調製に適した他の材料には、寒天、アルギン酸塩、キトサン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アルブミン、アガロース、デキストラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、及びカゼインが挙げられる。ミクロスフェアは、噴霧乾燥プロセス又は乳化プロセスなどの当業者に公知の様々なプロセスによって生成することができる。
【0086】
例えば、アルブミンミクロスフェアは、ウサギ血清アルブミンを含むリン酸緩衝液をオリーブオイルに攪拌しながら加えて油中水エマルジョンを生成することにより調製できる。グルタルアルデヒド溶液を前記エマルジョンに添加し、攪拌してアルブミンを架橋する。その後、ミクロスフェアを遠心分離によって単離し、オイルを除去し、スフェアを、例えば、石油エーテルそしてさらにエタノールで洗浄する。最後に、ミクロスフェアをふるいにかけ、回収し、ろ過により乾燥させることができる。
【0087】
澱粉ミクロスフェアは、ジャガイモ澱粉などの温かい澱粉水溶液を、攪拌しながらポリエチレングリコールを含む水の加熱溶液に加えてエマルジョンを形成することにより調製できる。二相系(澱粉溶液の内相を有する)が形成されたら、攪拌を続けながら混合物を室温まで冷却すると、内相がゲル粒子に変換される。次に、これらの粒子を室温でろ過し、エタノールなどの溶媒でスラリー化し、その後、粒子を再びろ過し、静置して大気乾燥する。前記ミクロスフェアは、熱処理などの周知の架橋手順によって、又は化学架橋剤を使用して硬化させることができる。適切な薬剤には、グリオキサール、マロンジアルデヒド、コハク酸アルデヒド、アジポアルデヒド、グルタルアルデヒド、及びフタルアルデヒドなどのジアルデヒド、ブタジオンなどのジケトン、エピクロロヒドリン、ポリリン酸塩、並びにホウ酸塩が挙げられる。ジアルデヒドは、アミノ基との相互作用によりアルブミンなどのタンパク質を架橋するために使用され、ジケトンはアミノ基とシッフ塩基を形成する。エピクロロヒドリンは、アミノ又はヒドロキシルなどの求核試薬を含む化合物をエポキシド誘導体に活性化する。
【0088】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書で上述したHIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療に使用するための、式(I)の化合物又はその誘導体及び前記化合物を含む組成物の投与スキームである。「単位剤形」という用語は、対象、例えばヒト、イヌ、ネコ、及びげっ歯類などの哺乳類の対象における単位投与量として適切な物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な医薬希釈剤、担体、又は媒体に関連して所望の医薬効果を生み出すために計算された所定量の活性物質を含む。単位剤形の仕様は、(a)本明細書に開示した前記式(I)の化合物又はその誘導体の固有の特徴及び達成される特定の効果、並びに(b)ヒト及び動物にける使用のための前記式(I)の化合物を配合する技術に固有の制限、によって指示されそれらに準拠する。単位剤形の例として、錠剤、カプセル、丸薬、粉末パケット、ウエハース、座薬、顆粒、カプセル剤、小さじ量、大さじ量、スポイト量、アンプル、バイアル、定量吐出エアロゾル、それらのいずれかの複数回投与形態、及びその他本明細書に記載の形態が挙げられる。本明細書に開示の使用のための組成物は、前記組成物の1又は複数の単位剤形及び本明細書に記載の1又は複数の疾患を治療するための使用説明書を含むキットに含まれ得る。
【0089】
いくつかの生体高分子(生体に基づいたシステム)、リポソーム、コロイド、樹脂、及び他の高分子送達システム又は区画化リザーバーを使用するシステムのいずれかを含む徐放又は持続放出送達システムを、本明細書に記載の組成物と共に利用して、 治療化合物の継続的又は長期的な供給源を提供する。そのような徐放システムは、局所、眼内、経口、及び非経口経路を介した送達のための製剤に適用可能である。
【0090】
本明細書で上述した式(I)の化合物又はその誘導体の有効量は、本発明に記載されるように、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態の治療における使用のための組成物に含まれる。本発明による使用のための前記化合物の有効量は、化合物及び治療される状態、例えば受益者である患者の年齢、体重、及び臨床状態に応じて変更される。他の要因には、投与経路、患者、患者の病歴、疾患プロセスの重症度、及び特定の化合物の効力が挙げられる。有効量は、患者に許容できない毒性を生じることなく、治療される疾患の症状又は兆候を改善するのに十分な量である。一般的に、化合物の有効量は、臨床医又は他の資格のある観察者が指摘するように、症状の主観的な軽減又は客観的に特定可能な改善のいずれかを提供する量である。
【0091】
本明細書に記載の一つの実施形態は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態を患う対象を治療する方法であって、下記式(I)の化合物又はその誘導体の何れか、又はそれを含む組成物、特に医薬組成物の有効量を前記対象に投与することを含み、
【0092】
【化23】
【0093】
式中、Rは、アリール基、直鎖若しくは分岐アルケニル基、直鎖若しくは分岐アルキニル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基から独立して選択される基の炭素原子であるか、Rは、直鎖若しくは分岐アルキルアミン基、アリールアミン基、直鎖若しくは分岐アルケニルアミン基、又は直鎖若しくは分岐アルキニルアミン基から独立して選択される基の窒素原子である、前記方法に言及する。
【0094】
好ましい実施形態では、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態を患う対象を治療する前記方法は、下記(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、又は(X)から独立して選択される式(I)の化合物のいずれかの有効量又はそれを含む組成物を前記対象に投与することを含む。
【0095】
【化24】
(1’R,6’R)−3−(エチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0096】
【化25】
(1’R,6’R)−3−(ペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0097】
【化26】
(1’R,6’R)−3−(イソブチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0098】
【化27】
(1’R,6’R)−3−(ブチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0099】
【化28】
(1’R,6’R)−3−(メチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0100】
【化29】
(1’R,6’R)−3−(イソプロピルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0101】
【化30】
(1’R,6’R)−3−(ベンジルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0102】
【化31】
(1’R,6’R)−3−(ネオペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−3’−メチル−)−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン
【0103】
【化32】
(1’R,6’R)3−(イソペンチルアミン)−6−ヒドロキシ−アミン−3’−メチル−4−ペンチル−6’−(プロプ−1−エン−2−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2’,3,6−トリエン−2,5−ジオン。
【0104】
本明細書に記載の別の実施形態は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性阻害から恩恵を受ける状態を患う対照を治療する方法であって、前記方法は、有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、若しくは(X)の化合物又はその誘導体のいずれか、又はそれを含む組成物、特に医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記状態が、脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、又は動脈疾患から独立して選択される、前記方法に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1図1は、式(I)のカンナビジオール誘導体による乏突起膠細胞でHIF−1αレベルの安定化誘導を示した図である。ウエスタンブロットによりHIF−1α及びα−チューブリンの発現を測定するために、150μMのDFX、1μMのカンナビジオール(CBD)、VCE−004、化合物II、III、IV若しくはV(図1A)、又は化合物VI、VII、VIII、IX若しくはX(図1B)のいずれかにより、ヒト乏突起膠細胞MO13.3細胞を6時間刺激した。
図2図2は、乏突起膠細胞でのHIF−1αレベルの安定化を示した図である。
図2A図2Aは、6時間の間に化合物VIIIの濃度を増加又はDFX(150μM)によるMO3.13細胞への刺激を示した図である。タンパク質であるHIF−1α及びα−チューブリンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットにより決定した。
図2B図2Bは、2.5μMの化合物VIII又は150μMのDFXで刺激したMO3.13細胞におけるHIF−1α安定化の経時的誘導(1〜12時間)を示した図である。タンパク質であるHIF−1α及びα−チューブリンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットにより決定した。
図3図3は、乏突起膠細胞でのHIF−1αレベル及びHIF−2αレベルの安定化PHDの発現に影響を及ぼさない、化合物VIIIによって誘導されるHIF−1αレベル及びHIF−2αレベルの安定化を示した図である。MO3.13細胞を、化合物VIII又は150μMのDFXの濃度を増加することにより6時間刺激した。タンパク質であるHIF−1α、HIF−2α、PHD1、PHD2、PDH3、及びアクチンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットによって決定した。
図4図4は、カンナビジオールキノール誘導体によるPHD活性阻害を示した図である。PHDのHIF−1αヒドロキシル化活性の阻害及び化合物VIIIによるHIF−1αの安定化を示す。プロテアソーム阻害剤MG132の存在下で、MO3.13細胞を、化合物VIII又は150μMのDFXの濃度を増加することにより6時間刺激した。タンパク質であるヒドロキシル化されたHIF−1α(OH−HIF−1α)、HIF−1α、及びアクチンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットによって決定した。
図5図5は、ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)でのHIF−1αレベル及びHIF−2αレベルの安定化を示した図である。
図5A図5Aは、化合物VIII濃度の増加又はDFX(150μM)によりHMECに刺激を3時間付与したことを示した図である。タンパク質であるHIF−1α及びα−チューブリンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットにより決定した。
図5B図5Bは、2.5μMの化合物VIII又は150μMのDFXで刺激したHMECにおけるHIF−1α安定化の経時的誘導を示した図である。タンパク質であるHIF−1α及びα−チューブリンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットにより決定した。
図5C図5Cは、HMECにおけるPHDの発現に影響を及ぼさない、化合物VIIIによって誘導されるHIF−1αレベル及びHIF−2αレベルの安定化を示した図である。HMECを、化合物VIII又は150μMのDFXの濃度を増加することにより6時間刺激した。タンパク質であるHIF−1α、HIF−2α、PHD1、PHD2、PDH3、及びアクチンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットによって決定した。
図6図6は、神経細胞におけるHIF−1αレベルの安定化を示した図である。化合物VIIIの濃度を増加又はDFX(150μM)により、SK−N−SH細胞へ刺激を6時間付与。タンパク質であるHIF−1α及びα−チューブリンの定常状態レベルは、ウエスタンブロットにより決定した。
図7図7は、化合物VIIIによる血管新生誘導を示した図である。初代線維芽細胞と共培養し、化合物VIII(1μM)又はVEGFA(10ng/mL)で7日間別々に刺激した、緑色蛍光ヒト血管内皮細胞(HUVEC)における血管新生のモデルとしての内皮細胞管形成の測定ネットワーク長の値(mm/mm2)は、平均±SEM(n=3)を表す。
図8図8は、化合物VIIIによるHIF−1α依存性遺伝子であるVGFA及びEPOの発現誘導を示した図である。MO13.3細胞(図8A)及びHBMEC細胞(図8B)を12時間にわたって濃度を増加させた化合物VIIIで刺激し、VGFA及びEPOのmRNAの発現をqPCRにより決定した。データを平均±SEM(n=3)として表す。
図9図9は、コラーゲンゲル収縮に対する化合物VIIIの影響を示した図である。NIH 3T3−EPO−Luc線維芽細胞を、提示した濃度の化合物VIIIの有無にかかわらず、コラーゲンゲルに組み込んだ。
図9A図9Aは、化合物VIII(1μM、2.5μM、及び5μM)又はDMGOに反応して収縮したゲルマトリックスの24時間画像を示した図である。
図9B図9Bは、ImageJを使用して合計ピクセル数で定量化したゲル表面積、*p<0.025及び**p<0.01、を示した図である。
【実施例】
【0106】
以下に説明する本発明の実施例は、本発明の保護範囲を限定することなく本発明の実施形態を例示することを目的としている。
【0107】
実施例1.HIF経路の活性化
異なる化合物の生物学的活性を調べるために、NIH−3T3−EPO−Luc細胞(表1)又はHaCaT−EPO−luc細胞(表2)のいずれかでHIF−1αトランス活性化アッセイを実施した。NIH3T3−EPO−luc細胞及びHaCaT−EPO−luc細胞は、Epo−Lucプラスミドで安定的にトランスフェクトされている。EPO−低酸素応答性領域(HRE)−ルシフェラーゼレポータープラスミドには、ルシフェラーゼ遺伝子に融合したエリスロポエチン遺伝子のプロモーターからのHREコンセンサス配列の3つのコピーが含まれている。
【0108】
NIH3T3−EPO−luc細胞は、5%CO2を含む加湿雰囲気下、37℃で10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEMで維持した。デフェロキサミン(DFX)はSigma−Aldrich(米国)から購入した。アッセイ前日に、細胞を(96ウェルプレートに1x104個/ウェルで)播種した。翌日、カンナビジオール(CBD)、VCE−004、又は化合物II〜Xのいずれかの濃度を増加して細胞を刺激した。6時間刺激後、細胞を、25mMトリスリン酸pH7.8、8mMのMgCl2、1mMのDTT、1%Triton X−100、及び7%グリセロール中で、水平シェーカーを用いて室温で15分間溶解した。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)の説明書に従って、マイクロプレート用ルミノメーター(Berthold)を使用して測定した。
【0109】
HaCaT−EPO−Luc細胞は、5%CO2を含む加湿雰囲気下、37℃で10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEMで維持した。アッセイ前日に、細胞を(24ウェルプレートに1x105個/ウェルで)播種し、その後、カンナビジオール(CBD)、VCE−004、又は化合物II〜Xのいずれかの濃度を増加して細胞を刺激した。6時間刺激後、細胞を、25mMトリスリン酸(pH7.8)、8mMのMgCl2、1mMのDTT、1%Triton X−100、及び7%グリセロール中で、水平シェーカーを用いて室温で15分間溶解した。NIH3T3−EPO−Luc細胞について示されているように、前記細胞溶解物におけるルシフェラーゼ活性を測定した。RLUを計算し、両方の細胞株のEC50及びIRA(固有相対活性)値は、150μMデフェロキサミン(DFX)に対して以下の式を用いて決定した:IRA係数=(EC50-DFX×Emax)/(EC50×Emax-DFX)。ここでEC50及びEmaxはアゴニストのEC50及びEmaxを示し、EC50-DFX及びEmax-DFXは標準アゴニストDFXのEC50及びEmax値を示す(表1及び表2)。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
未処理細胞と比較して、全てのカンナビノイド誘導体でルシフェラーゼ活性の有意な増加が見られた。したがって、VCE−004の3位の化学修飾はHIF経路を活性化するために重要であると結論付けることができる。
【0113】
実施例2.カンナビノイド誘導体は、異なる細胞型でHIF−1αレベル及びHIF−2αレベルを安定化し、PHDのプロリルヒドロラーゼ活性を阻害する
式(I)の化合物によるHIF−1α安定化の制御に関する洞察を得るために、異なる細胞型におけるHIF−1α発現への影響を調べた。ヒト乏突起膠細胞であるMO13.3細胞を、150μMのDFX又は1μMのカンナビジオール(CBD)、VCE−004、化合物II〜V(図1A)、化合物VI〜X(図1B)のいずれかにで6時間刺激した。その後、細胞をPBSで洗浄し、10mMのNaF、1mMのNa3VO4、10μg/mLのロイペプチン、1μg/mLのペプスタチン、1μg/mLのアプロチニン、及び1μL/mLの飽和PMSFを添加した、50μLのNP−40緩衝液(50mMのTris−HCl、pH7.5、150mMのNaCl、10%グリセロール、及び1%NP−40)でインキュベートした。遠心分離後、上清をSDSサンプルバッファーと混合し、95℃で沸騰させた。タンパク質を8%〜10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)で電気泳動し、ポリフッ化ビニリデン膜(膜あたり20Vで30分)に転写した。脱脂乳又はBSA含有TBST緩衝液でブロッキングした後、一次抗体を加えた。洗浄した膜を、増強化学発光システム(USB)によって検出された西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した適切な二次抗体とともにインキュベートした。HIF−1αに対する抗体(610959)はBD Biosciencesから購入し、抗−β−チューブリン抗体(クローンAA2)はSigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入した。
【0114】
本発明に記載の全ての化合物は、酸素正常状態(21%O2)下でHIF−1αタンパク質レベルを上昇させた。誘導の程度は、HIF−1αレベルを安定化することが知られている鉄キレート剤であるデスフェリオキサミン(DFX)と同等であった(図1A及び図1B)。
【0115】
次に、MO13.3細胞(乏突起膠細胞細胞株)を、化合物VIIIの濃度を上げるかDFX(150μM)を用いて、6時間刺激した。その後、図1のようにタンパク質の分離とウエスタンブロットを行った。結果は、化合物VIIIが濃度依存的にHIF−1αレベルの安定化を誘導することを示している(図2A)。図2Bは、化合物VIIIで処理したMO13.3のHIF−1αレベルの安定化の経時的経過を示す。
【0116】
HIF−1αタンパク質レベル及びHIF−2αタンパク質レベルの安定化は、PHDタンパク質の発現の減少又はそのプロリルヒドロラーゼ活性の阻害により説明され得る。したがって、前記メカニズムのどれが前記安定化の原因であるかを特定するために、HIF−1αタンパク質、HIF−2αタンパク質、及びPDH(PDH1、PDH2、及びPDH3)タンパク質の発現をウエスタンブロットにより分析した。MO13.3細胞を、化合物VIIIの濃度を上げるかDFX(150μM)を用いて、6時間刺激した。その後、図1のようにタンパク質の分離とウエスタンブロットを行った。抗HIF−2α抗体(ab8365)、抗PHD3抗体(ab30782)、抗PHD1抗体(ab80361)、及び抗PHD2抗体(ab109088)は、Abcam(英国ケンブリッジ)から購入した。
【0117】
結果は、化合物VIIIがPDH1、PDH2、及びPDH3の発現に影響を与えることなくHIF−1α及びHIF−2αの発現を安定化したことを明確に示している(図3)。
【0118】
HIF−1αレベルの安定化におけるPDHの活性を検討するために、MO13.3細胞を化合物VIIIの濃度を増加させながら処理し、ヒドロキシル化HIF−1α(OH−HIF−1α)及び総HIF−1αの定常状態レベルをウエスタンブロットにより同定した。図4に示すように、化合物VIIIは総HIF−1αタンパク質の発現の増加と並行して、OH−HIF−1αの発現の減少を導いた。
【0119】
全体として、結果は、化合物VIIIがPDHのプロリルヒドロラーゼ活性を阻害し、結果としてHIF−1αレベル及びHIF−2αのタンパク質レベルが安定化されることを示している。
【0120】
式(I)の化合物によるHIF−1α及びHIF−2αのタンパク質レベルの安定化は、他の細胞型でも示された。
ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)は、化合物VIIIの濃度を増加させながら処理し(図5A)、異なる時点において化合物VIII(2.5μM)で処理した(図5B)。化合物VIIIが、濃度依存的にMO13.3細胞のHIF−1αレベルの安定化を誘導することが示されている(図5A)。さらに、化合物VIIIは、PDH1、PHD2、及びPHD3の発現に影響を与えることなく、このタイプの細胞でHIF−2αレベルの安定化も誘導する(図5C)。HIF−1αの最大発現は、化合物VIIIによる3時間の処理後に達成されたことも示されている(図5B)。同様に、化合物VIIIは、神経細胞株であるSK−N−SHのHIF−1αレベルの安定化も誘導する(図6)。
【0121】
実施例3.式(I)の化合物により誘導される血管新生
生理学的モデルで化合物VIIIによる刺激の機能的結果をテストするために、血管新生のモデルとして内皮細胞管形成を測定した。CellPlayer(商標)GFP AngioKit−96(Essen BioScience Inc.、英国ウェルインガーデンシティ)は、尿細管形成の初期段階におけるヒトマトリックス(通常のヒト皮膚線維芽細胞、NHDF)及び内皮細胞(HUVEC)の増殖共培養系として提供された。CellPlayer 96ウェル動的血管新生アッセイを、製造元のプロトコルに従って実施した。簡単に説明すると、レンチウイルス感染した緑色蛍光タンパク質(GFP)-HUVECを、96ウェルマイクロプレートで正常なヒト皮膚線維芽細胞と共培養した。プレートをIncuCyteに載置し、6時間ごとに7日間、位相及び蛍光の両方で画像を自動的に取得した。1日目に、化合物VIII(1μM)又はrhVEGFA(10ng/mL)を内皮管腔ネットワークに添加し、実験中ずっと維持した。Essen BioScience Angiogenesis Analysis Moduleを使用して、7日間のアッセイでの管腔形成を定量化した。このモジュールは、管腔の長さや分岐点の形成など、ネットワーク形成に対する血管新生の影響を評価するために使用される複数のアッセイ測定基準を提供する。簡単に説明すると、蛍光画像を分析して、インビトロネットワークに非常に近いセグメンテーションマスクを生成した。次に、マスクを改良して管腔形成イベントを具体的に識別し、IncuCyteソフトウェア及びGraphPad Prismソフトウェア(カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して動的応答をプロットした。
【0122】
図7に、1μMの化合物VIII及び陽性対照VrhEGFA(10ng/mL)がHUVEC細胞のネットワーク長を著しく増加させたことを示す。
【0123】
実施例4.式(I)の化合物は、HIF−1α転写因子によって調節される遺伝子の発現を調節する
【0124】
化合物VIIIの効果の基礎となる分子メカニズムを理解するために、HMEC細胞を化合物VIII(5μM)で12時間処理した後、mRNAそして低酸素症に関与する84遺伝子の発現を、製造元の説明書(Qiagen Iberia、スペイン、マドリード)に従って、ヒト低酸素シグナル伝達経路RT2プロファイラーPCRアレイを使用して分析した。このアレイには、線維症の発症に関与する84の重要な遺伝子が含まれている。2-ΔΔCt法を使用してデータを分析し、5つのハウスキーピング遺伝子で正規化した。
【0125】
表3に示すように、化合物VIIIは、低酸素症及びHIF PDH阻害剤に応答して上方制御されることが知られているANGPTL4及びVEGFAを含む一連の遺伝子の発現を明確に上方制御した。
【0126】
【表3】
【0127】
式(I)の化合物によって制御される遺伝子発現の解析をさらに拡張するために、ヒト脳微小血管細胞(HBMEC)及びMO13.3細胞を化合物VIIIの濃度を増加させて12時間処理し、mRNAを単離した。iScript(商標)cDNA合成キット(Bio−Rad、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して、最大1μgの全RNAから一本鎖相補DNAを合成した。反応混合物は、酵素増幅まで−20℃で凍結した。iQ(商標)SYBR Green Supermix(Bio−Rad)を使用して、VEGFA及びEPOのmRNAレベルを定量した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)を使用して、リアルタイムPCRを実施した。GAPDHハウスキーピング遺伝子を使用して、各試料のmRNA発現レベルを標準化した。発現量は、2-ΔΔCt法を使用して計算した。オリゴヌクレオチドプライマーの配列を表4に示す。
【0128】
化合物VIIIは、MO13.3細胞及びHBMEC細胞の両方でEPO及びVEGFAの発現を上方制御した(図8A及び図8B)。
【表4】
【0129】
実施例5.式(I)の化合物はコラーゲン収縮を誘発する
【0130】
式(I)の化合物が創傷治癒と組織リモデリングに影響するかを調べた。この目的のために、創傷治癒のモデルを使用して、線維芽細胞コラーゲンゲル収縮に対する化合物VIIIの影響を評価した。NIH3T3−EPO−Lucをトリプシンで培養プレートから持ち上げ、PBSで洗浄し、500,000細胞/mLで完全培地に再懸濁した。コラーゲンゲルは前述の記載の通りに作成した(Phillips and Bonassar. Exp Cell Res. 2005. 310:79-87)。全てのゲルには、化合物VIII又は1mMのDMOG(ジメチルオキサロイルグリシン)の表示濃度の有無にかかわらず、最終濃度で150,000個の細胞/mL及び1.0mg/mLのコラーゲンIが含まれていた。ゲルは、リリース後(t=0)とその後の様々な時点でデジタル画像化した。ゲル表面積は、ImageJ(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を使用してピクセル数で定量化した。表面積の相対的な変化は、元の表面積の割合として報告される。図9に示すように、化合物VIIIへの線維芽細胞包埋ゲルの曝露は、陽性対照として使用されたDMOGと同じ程度で、コラーゲンゲルの収縮を促進した。これらの知見は、化合物VIIIが組織のリモデリング及び創傷収縮に直接関係していることを示している。
【0131】
本結果は、脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、及び動脈疾患などのPHD活性の阻害又はHIF−1α及びHIF−1βの安定化から恩恵を受ける状態(脳卒中、外傷、貧血、心筋虚血−再灌流障害、急性肺障害、感染症、糖尿病性及び慢性創傷、臓器移植、急性腎障害、及び動脈疾患など)の臨床管理のための、本発明に記載の化合物の治療的使用を実証する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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