【実施例】
【0044】
以下において本発明に係る分離膜構造体の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0045】
(サンプルNo.1の作製)
以下のようにして、サンプルNo.1に係る分離膜構造体を作製した。
【0046】
まず、平均粒径30μmのアルミナ粒子100質量部に対して無機結合材20質量部を添加し、さらに、水、分散剤及び増粘剤を加えて混練することによって多孔質材料を調製した。
【0047】
次に、調製した多孔質材料を押出成形することによって、モノリス型のアルミナ基材の成形体を形成した。続いて、アルミナ基材の成形体を焼成(1250℃、1時間)してアルミナ基材を形成した。次に、アルミナにPVA(有機バインダ)を添加してスラリーを調製し、スラリーを用いた濾過法によって、アルミナ基材のセル内表面に表面層の成形体を形成した。続いて、表面層の成形体を焼成(1250℃、1時間)した後、アルミナ基材の両端部をガラスでシールしてモノリス型のアルミナ支持体を作製した。
【0048】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、MFI型ゼオライト種結晶(Si/Al比≧200)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液をアルミナ支持体のセル内に流し込んだ。次に、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、40質量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM製)0.86gとテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業製)0.45gとを混合した後、蒸留水192.0gと約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)6.75gとを加えてマグネチックスターラーで撹拌(室温、30分)することによって膜形成用ゾルを調製した。得られた膜形成用ゾルをステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)に入れた後、MFI型ゼオライト種結晶を付着させたアルミナ支持体を浸漬して、160℃の熱風乾燥機中で20時間反応させることによってハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で500℃まで昇温して4時間保持することによって、ハイシリカMFI型ゼオライト膜からテトラプロピルアンモニウムを除去した。サンプルNo.1のハイシリカMFI型ゼオライト膜表面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を
図2に示す。
【0049】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、40質量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM製)6.28gとテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業製)4.97gと水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ製)26.3gと硫酸アルミニウム(和光純薬製)0.54gを混合した後、蒸留水147.1gと約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)14.8gとを加えてマグネチックスターラーで撹拌(室温、30分)することによって膜形成用ゾルを調製した。得られた膜形成用ゾルをステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)に入れた後、ハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成したアルミナ支持体を浸漬して、160℃の熱風乾燥機中で10時間反応させることによってローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥した。次に、アルミナ支持体を電気炉で500℃まで昇温して4時間保持することによって、ローシリカMFI型ゼオライト膜からテトラプロピルアンモニウムを除去した。サンプルNo.1のローシリカMFI型ゼオライト膜表面のSEM像を
図3に示す。
【0050】
次に、硝酸銀(関東化学製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したイオン交換用液をローシリカMFI型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持することによって、ローシリカMFI型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。その後、ローシリカMFI型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
【0051】
(サンプルNo.2〜8の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0052】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同様のハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。サンプルNo.3では、反応時間を調整して、サンプルNo.1よりも膜厚を厚くした。
【0053】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.1と同様のローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。ただし、サンプルNo.3〜8では、膜形成用ゾルの組成比を調整して、Si/Al原子比を変更した。また、サンプルNo.2〜8では、膜形成用ゾルの濃度や反応時間を調整して、サンプルNo.1よりも膜厚を厚く、もしくは薄くした。
【0054】
次に、サンプルNo.1と同様に、ローシリカMFI型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0055】
(サンプルNo.9の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0056】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0057】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.3と同じローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0058】
次に、塩化リチウム(関東化学製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したLiイオン交換用液をハイシリカMFI型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持することによって、ハイシリカMFI型ゼオライト膜に陽イオンとしてLiを導入した。その後、ハイシリカMFI型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
(サンプルNo.10の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0059】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同様のハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。サンプルNo.10では、膜形成用ゾルの濃度や反応時間を調整して、サンプルNo.1よりも膜厚を薄くした。
【0060】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてローシリカBEA型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、35質量%テトラエチルアンモニウム水酸化物(シグマアルドリッチ製)24.3gとアルミン酸ナトリウム1.6gと蒸留水143.1gと約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)31.0gとを加えてマグネチックスターラーで撹拌(室温、90分)することによって膜形成用ゾルを調製した。得られた膜形成用ゾルをステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)に入れた後、ハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成したアルミナ支持体を浸漬して、140℃の熱風乾燥機中で10時間反応させることによってローシリカBEA型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で500℃まで昇温して4時間保持することによってローシリカBEA型ゼオライト膜からテトラエチルアンモニウムを除去した。
【0061】
次に、サンプルNo.1と同様に、ローシリカBEA型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0062】
(サンプルNo.11の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0063】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0064】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.10と同様のローシリカBEA型ゼオライト膜を形成した。サンプルNo.11では、膜形成用ゾルの組成比を調整して、サンプルNo.10よりもSi/Al原子比を大きくした。また、サンプルNo.11では、膜形成用ゾルの濃度や反応時間を調整して、サンプルNo.10よりも膜厚を厚くした。
【0065】
次に、サンプルNo.10と同様に、ローシリカBEA型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0066】
(サンプルNo.12の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0067】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてハイシリカBEA型ゼオライト膜を形成した。具体的には、35質量%のテトラエチルアンモニウム溶液85.1gと蒸留水33.9g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)81.0gとを加えてマグネチックスターラーで攪拌(室温、90分)することによって膜形成用ゾルを調製した。得られた膜形成用ゾルをステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)に入れた後、アルミナ支持体を浸漬して、140℃の熱風乾燥機中で24時間反応させることによってハイシリカBEA型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で500℃まで昇温して4時間保持することによって、ハイシリカBEA型ゼオライト膜からテトラエチルアンモニウムを除去した。
【0068】
次に、ハイシリカBEA型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.10と同じローシリカBEA型ゼオライト膜を形成した。
【0069】
次に、サンプルNo.10と同様に、ローシリカBEA型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
(サンプルNo.13の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0070】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0071】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてローシリカMFI含有シリカ膜を形成した。具体的には、MFI型ゼオライト粉末(Si/Al比=20)を、テトラエトキシシランをエタノール中で加水分解して作製したシリカゾル液に分散させ、固形分1%のコーティング液とした。コーティング液をハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に塗布乾燥した後、400℃で1時間大気焼成した。第2分離膜の膜厚が1μmとなるまでコーティング液の塗布と焼成を繰り返した。
【0072】
次に、サンプルNo.1と同様に、ゼオライト含有シリカ膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0073】
(サンプルNo.14の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0074】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.13と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0075】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.13と同様のローシリカMFI含有シリカ膜を形成した。サンプルNo.14では、サンプルNo.13よりもSi/Al原子比が大きいMFI型ゼオライト粉末(Si/Al比=60)を使用した。また、サンプルNo.14では、コーティング液の塗布と焼成の回数を調整して、サンプルNo.13よりも膜厚を薄くした。
【0076】
次に、サンプルNo.13と同様に、ローシリカMFI含有シリカ膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0077】
(サンプルNo.15の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0078】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0079】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜として有機シリカ膜を形成した。具体的には、カルボキシエチルシラントリオールナトリウム塩25%水溶液24.0gと蒸留水72.9gと60%硝酸3.0gとを加えてマグネチックスターラーで攪拌(60℃、6時間)することによってコーティング液とした。コーティング液をハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に塗布乾燥した後、150℃で2時間大気焼成した。
【0080】
次に、サンプルNo.1と同様に、有機シリカ膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0081】
(サンプルNo.16の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0082】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、DDR型ゼオライト種結晶(Si/Al比≧200)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液をアルミナ支持体のセル内に流し込んだ。次に、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、フッ素樹脂製の広口瓶にエチレンジアミン(和光純薬工業製)7.35gを入れた後、1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)1.16gを加えて1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。続いて、別の容器に30重量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)98.0gと蒸留水116.5gを入れて軽く攪拌した後、これを広口瓶に加えて強く振り混ぜて膜形成用ゾルを調製した。次に、ステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)内にDDR型ゼオライト種結晶を付着させたアルミナ支持体を配置した後、膜形成用ゾルを入れて加熱処理(水熱合成:130℃、10時間)することによってハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で450℃まで昇温して50時間保持することによって、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。
【0083】
次に、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、フッ素樹脂製の広口瓶に蒸留水152.4gを入れた後、1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)1.32gと水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ製)0.35gと30重量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)52.6gとアルミン酸ナトリウム(和光純薬製)0.36gを加えて攪拌することによって膜形成用ゾルを調製した。次に、ステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)内にハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成したアルミナ支持体を配置した後、調合した原料溶液を入れて加熱処理(水熱合成:160℃、10時間)することによってローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で450℃まで昇温して50時間保持することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。
【0084】
次に、サンプルNo.9と同様に、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてLiを導入した。
(サンプルNo.17の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0085】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.16と同じハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0086】
次に、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.16と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0087】
次に、塩化セシウム(和光純薬工業製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したイオン交換用液をローシリカDDR型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてCsを導入した。その後、ローシリカDDR型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
(サンプルNo.18の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0088】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.16と同じハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0089】
次に、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.16と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0090】
次に、塩化カルシウム(和光純薬工業製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したイオン交換用液をローシリカDDR型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてCaを導入した。その後、ローシリカDDR型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
(サンプルNo.19の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0091】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.16と同じハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0092】
次に、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.16と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0093】
次に、塩化パラジウム(東京化成工業製)を塩酸(和光純薬工業製)を加えた水に添加して0.1mol/Lになるように調製したイオン交換用液をローシリカDDR型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてPdを導入した。その後、ローシリカDDR型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
(サンプルNo.20の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0094】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.16と同様のハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。サンプルNo.20では、膜形成用ゾルの濃度や反応時間を調整して、サンプルNo.16よりも膜厚を厚くした。
【0095】
次に、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.16と同様のローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。サンプルNo.20では、膜形成用ゾルの組成比を調整して、サンプルNo.16よりもSi/Al原子比を大きくした。
【0096】
次に、サンプルNo.1と同様に、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0097】
(サンプルNo.21の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0098】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.10と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0099】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.16と同様のローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。サンプルNo.21では、膜形成用ゾルの濃度や反応時間を調整して、サンプルNo.16よりも膜厚を厚くした。
次に、サンプルNo.16と同様に、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてLiを導入した。
【0100】
(サンプルNo.22の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0101】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.21と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0102】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.20と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0103】
次に、サンプルNo.20と同様に、ローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0104】
(サンプルNo.23の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0105】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、ローシリカMFIゼオライト種結晶(Si/Al比=20)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液をアルミナ支持体のセル内に流し込んだ。次に、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、40質量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM製)6.28gとテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業製)4.97gと水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ製)26.3gと硫酸アルミニウム(和光純薬製)0.54gを混合した後、蒸留水147.1gと約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)14.8gとを加えてマグネチックスターラーで撹拌(室温、30分)することによって膜形成用ゾルを調製した。得られた膜形成用ゾルをステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)に入れた後、ゼオライト種結晶を付着させたアルミナ支持体を浸漬して、160℃の熱風乾燥機中で32時間反応させることによって、ローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で500℃まで昇温して4時間保持することによって、ローシリカMFI型ゼオライト膜からテトラプロピルアンモニウムを除去した。
【0106】
次に、第2分離膜を成膜せずに、サンプルNo.1と同様にローシリカMFI型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0107】
(サンプルNo.24の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0108】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、ローシリカDDR型ゼオライト種結晶(Si/Al比=40)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液をアルミナ支持体のセル内に流し込んだ。次に、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、フッ素樹脂製の広口瓶に蒸留水152.4gを入れた後、1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)1.32gと水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ製)0.35gと30重量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)52.6gとアルミン酸ナトリウム(和光純薬製)0.36gを加えた。次に、広口瓶をホモジナイザーにセットして1時間攪拌した。次に、ステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)内にDDR型ゼオライト種結晶を付着させたアルミナ支持体を配置した後、調合した原料溶液を入れて加熱処理(水熱合成:160℃、48時間)することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で450℃まで昇温して50時間保持することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。
【0109】
次に、第2分離膜を成膜せずに、サンプルNo.16と同様にローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてLiを導入した。
【0110】
(サンプルNo.25の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0111】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.24と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0112】
次に、第2分離膜を成膜せずに、サンプルNo.20と同様にローシリカDDR型ゼオライト膜に陽イオンとしてAgを導入した。
【0113】
(サンプルNo.26の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0114】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.10と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0115】
次に、特開2005−289735号公報に記載の手法に従って、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面にローシリカLTA型ゼオライトを固着させた。具体的には、まず、蒸留水80gに水酸化ナトリウム(和光純薬製)0.72gを完全に溶解してA液を得た。次に、A液の半分量にアルミン酸ナトリウム(ナカライタスク製)8.26gを加え完全に溶解してB液を得た。次に、A液の残りの半分量にケイ酸ナトリウム(和光純薬製)を加え完全に溶解してC液を得た。B液にC液を加えて白濁した溶液を原料溶液として得た。次に、原料溶液をディップコートして、水蒸気オーブン(デンソク(株)製、BL−400)に移して水蒸気処理(90℃、20分)することによって、ローシリカLTA型ゼオライトを形成した。ただし、ローシリカLTA型ゼオライトは、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面を80%以上被覆しておらず膜状には形成されていなかった。
【0116】
次に、サンプルNo.1と同様にして、ローシリカLTA型ゼオライトに陽イオンとしてAgを導入した。
【0117】
(サンプルNo.27の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0118】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0119】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面にサンプルNo.26と同じローシリカLTA型ゼオライトを固着させた。
【0120】
次に、サンプルNo.26と同様にして、ローシリカLTA型ゼオライトに陽イオンとしてAgを導入した。
【0121】
(サンプルNo.28の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0122】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.10と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0123】
次に、第2分離膜を成膜せずに、サンプルNo.1と同様に調製したAgイオン交換用液をハイシリカMFI型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持した。その後、ハイシリカMFI型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。ただし、ハイシリカMFI型ゼオライトはイオン交換サイトを有していないため、Agは第1分離膜に導入されなかった。
【0124】
(サンプルNo.29の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0125】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0126】
次に、第2分離膜を成膜せずに、サンプルNo.1と同様に調製したAgイオン交換用液をハイシリカMFI型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持した。その後、ハイシリカMFI型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。ただし、ハイシリカMFI型ゼオライトはイオン交換サイトを有していないため、Agは第1分離膜に導入されなかった。
【0127】
(サンプルNo.30の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0128】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.10と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0129】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、DDR型ゼオライト種結晶(Si/Al比≧200)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液をアルミナ支持体のセル内に流し込んだ。次に、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、フッ素樹脂製の広口瓶にエチレンジアミン(和光純薬工業製)7.35gを入れた後、1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)1.16gを加えて1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。続いて、別の容器に30重量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)98.0gと蒸留水116.5gを入れて軽く攪拌した後、これを広口瓶に加えて強く振り混ぜて原料溶液を調製した。次に、ステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)内にハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成したアルミナ支持体を配置した後、調合した原料溶液を入れて加熱処理(水熱合成:160℃、20時間)することによってハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。次に、アルミナ支持体を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、アルミナ支持体を電気炉で450℃まで昇温して50時間保持することによって、ハイシリカDDR型ゼオライト膜の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。
次に、サンプルNo.1と同様に調製したAgイオン交換用液をハイシリカDDR型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持した。その後、ハイシリカDDR型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。ただし、ハイシリカDDR型ゼオライトはイオン交換サイトを有していないため、Agは第2分離膜に導入されなかった。
【0130】
(サンプルNo.31の作製)
まず、サンプルNo.1と同じアルミナ支持体を作製した。
【0131】
次に、アルミナ支持体のセル内表面に第1分離膜としてサンプルNo.1と同じハイシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。
【0132】
次に、ハイシリカMFI型ゼオライト膜の表面に第2分離膜としてサンプルNo.30と同じハイシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0133】
次に、第2分離膜を成膜せずに、サンプルNo.1と同様に調製したAgイオン交換用液をハイシリカDDR型ゼオライト膜に接触させた状態で24時間保持した。その後、ハイシリカDDR型ゼオライト膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。ただし、ハイシリカDDR型ゼオライトはイオン交換サイトを有していないため、Agは第2分離膜に導入されなかった。
【0134】
(第2分離膜の確認)
サンプルNo.1〜22,30,31の第1分離膜と第2分離膜の断面を機械研磨した後に、Arイオンミリング(GATAN製 Dual Mill 600型)による研磨を実施し、STEM(JEOL製 JEM2100F 加速電圧:200kV STEMビーム径:約0.7nmφ)にて観察を行った。その結果、これらのサンプルでは、膜状に形成された第2分離膜が確認できた。サンプルNo.1の分離膜の断面をSTEMで観察した際のHAADF(高角散乱環状暗視野)像を
図4に示す。
【0135】
一方で、サンプルNo.26,27を顕微鏡で観察したところ、LTA型ゼオライトは膜状ではなく粉が散りばめられたように形成されていることが確認された。
【0136】
(分離性能と透過量)
サンプルNo.1〜15,20,22,23,25〜29,31について、エチレン/エタンの分離係数αとエチレンの透過性能を以下のように測定した。まず、エチレン(C
2H
4)とエタン(C
2H
6)の25℃の混合ガス(各ガスの体積比=50:50)を0.4MPaでセル内に導入し、第1分離膜と第2分離膜を透過したガスの流量をマスフローメーターにて測定した。また、ガスクロマトグラフを用いて回収したガスの成分分析を行い、エチレン/エタンの透過速度比から分離係数αを算出した。なお、透過速度とは、単位圧力差・単位膜面積・単位時間あたりに第1分離膜と第2分離膜を透過したガスの流量であり、[mol/(m
2・s・Pa)]という単位で表される。
【0137】
また、サンプルNo.16〜18,21,24,26,28,30について、二酸化炭素/メタンの分離係数αと二酸化炭素の透過性能を以下のように測定した。まず、二酸化炭素とメタンの25℃の混合ガス(各ガスの体積比=50:50)を0.3MPaでセル内に導入し、第1分離膜と第2分離膜を透過したガスの流量をマスフローメーターにて測定した。また、ガスクロマトグラフを用いて回収したガスの成分分析を行い、二酸化炭素/メタンの透過速度比から分離係数αを算出した。
【0138】
また、サンプルNo.19,30について、水素/酸素の分離係数αと水素の透過性能を以下のように測定した。まず水素と酸素の25℃の混合ガス(各ガスの体積比=50:50)を0.3MPaでセル内に導入し、第1分離膜と第2分離膜を透過したガスの流量をマスフローメーターにて測定した。また、ガスクロマトグラフを用いて回収したガスの成分分析を行い、水素/酸素の透過速度比から分離係数αを算出した。
【0139】
【表1】
【0140】
表1に示すように、ハイシリカゼオライトを含有する第1分離膜上に陽イオンを含有する第2分離膜を形成したサンプルNo.1〜22では、十分な分離性能と透過量が得られた。これは、第1分離膜と第2分離膜が共に分離膜として機能し、かつ、第2分離膜の陽イオンによって透過成分を吸着できたためである。
【0141】
また、サンプルNo.13とサンプルNo.15を比べると分かるように、第2分離膜がローシリカゼオライトを含有するサンプルNo.13の方が分離性能を向上できた。これは、ゼオライトの均一な細孔径が分離性能向上に有効なためと考えられる。
【0142】
また、サンプルNo.1とサンプルNo.13を比べると分かるように、第2分離膜がローシリカゼオライトを含有する場合には、第2分離膜がローシリカゼオライトによって構成されるサンプルNo.1の方が分離性能を向上できた。これは、第2分離膜全体がゼオライトからなるために、より効果的にゼオライトの均一な細孔径で分離できるためと考えられる。
【0143】
また、サンプルNo.1,5,8を比べると分かるように、第1分離膜と第2分離膜が共にゼオライト膜である場合には、前記第2分離膜のSi/Al原子比が60以下であるNo.1,5の方が分離性能を向上できた。これは、第2分離膜中の陽イオンの量を十分多くすることができたためと考えられる。
【0144】
また、サンプルNo.16とサンプルNo.21を比べると分かるように、第1分離膜と第2分離膜が共にゼオライト膜である場合には、共通したコンポジットビルディングユニットが存在するサンプルNo.16の方が分離性能を向上できた。
【0145】
また、サンプルNo.5とサンプルNo.11を比べると分かるように、第1分離膜と第2分離膜が骨格構造の同じゼオライトによって構成されるサンプルNo.5の方が分離性能を向上できた。
【0146】
また、例示しないが、別途、第1分離膜の膜厚を変化させたサンプルを作製して、第1分離膜を薄膜化することによって透過性能を向上させられることを実験的に確認した。同様に、第2分離膜を薄膜化することによって透過性能を向上させられることも実験的に確認した。