(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板間を接続する従来のレセプタクルコネクタ及びプラグコネクタは、スマートフォン、携帯端末等の小型電子機器内の基板に実装されるため、非常に小さなコネクタであり、その部品である複数の端子も非常に小さく、金型、固定冶具等でそれら端子を保持して固定し、インサート成型によって、設計どおりにハウジングを形成することは、一般的にコネクタのサイズが小さいほどその難易度が上がる。例えば、ハウジングに埋め込まれる複数の端子自体が小さいと、それら端子とハウジングとをインサート成型する際に、ハウジングから露出させる端子の一部分を十分に金型又は固定冶具等で隙間なく覆うことができないことがあるため、当該一部分への樹脂の流れ込みを防ぐことができない。
【0007】
特許文献1に記載の従来のレセプタクルコネクタのハウジングに埋め込まれる複数の端子の各々では、ハウジングの樹脂から内側に露出した端子の一部分(相手端子との接触部を備えたバネ部に向かい合った対向部)の両側側面が平坦である。そのため、金型又は固定冶具等で端子を支持する際に、端子の平坦な側面には支持に適した突起等の引っ掛かりがないため、金型又は固定冶具等との隙間がなく端子を十分に支持することができず、インサート成型の際に樹脂がその隙間から流れ込み、本来ならハウジングから露出させる端子の表面を覆ってしまうという問題が生じる。端子の平坦な側面と金型又は固定冶具等との隙間は、例えば、端子の製造上の誤差等の様々な要因によって端子の平坦な側面に歪等が生じた場合に引き起こされる。
【0008】
以上のような課題を解決するために、相手端子との接点となる可動接点を備えた可動部と、可動部に対向する固定部であって相手端子との接点となる固定接点を備えた固定部と、可動部と固定部との間をつなぐ底部とを含む端子において、固定接点と底部との間の側面に固定部の幅を広げるように構成された傾斜部を設けたことで、金型又は固定冶具等で端子の側面を支持する際に、固定部の幅を広げた傾斜部が金型又は固定冶具等による支持に適した突起となり、端子を隙間なく十分に支持することができ、インサート成型によるハウジングの形成に適した端子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの実施形態に係る端子は、コネクタに用いられる端子であって、
相手コネクタの相手端子との接点となる可動接点を備えた可動部と、
前記可動部と対向し、前記相手端子との接点となる固定接点を備えた固定部と、
前記可動部と前記固定部との間をつなぐ底部とを含み、
前記固定部は、一対の傾斜部を有し、前記傾斜部の各々は前記固定部の両側の固定部側面に設けられ、
前記傾斜部は、前記固定部の幅を広げるように形成されたこと
を特徴とする。
【0010】
本発明に係る端子の好ましい実施形態として、
前記端子は、前記底部を介して前記固定部と前記可動部とが対向するように、前記底部と前記固定部との間及び前記底部と前記可動部との間を湾曲させてU字状に形成され、
前記傾斜部から前記底部の途中までの間の端子側面に幅広部を更に含むこと
を特徴とする。
【0011】
本発明に係る端子の好ましい実施形態として、前記端子は、基板に取り付けるための実装部を端部に備えた脚部と、前記固定接点及び前記固定部と前記脚部との間をつなぐ頂部とを更に含み、
前記脚部は、前記固定部と対向すること
を特徴とする。
【0012】
本発明の1つの実施形態に係るコネクタは、前記端子と、前記端子を保持するハウジングとを含み、
前記ハウジングは、前記端子の前記可動部側に嵌合凸部と、前記端子の前記固定部側に側壁部とを含み、
前記ハウジングは、ハウジング裏面に設けられた開口部から少なくとも前記底部の底部裏面を露出すること
を特徴とする。
【0013】
本発明に係るコネクタの好ましい実施形態として、
前記固定部は、前記側壁部に埋め込まれて支持され、前記可動部と対向する面及び前記固定部の側面の一部を前記側壁部から露出させたこと
を特徴とする。
【0014】
本発明に係るコネクタの好ましい実施形態として、
前記側壁部から露出した前記固定部側面の一部には、前記固定接点の側部である接点側部の一部と、前記傾斜部の一部と、前記幅広部の一部とを含むこと
を特徴とする。
【0015】
本発明に係るコネクタの好ましい実施形態として、
前記底部の平坦な部分の底部表面と、前記底部表面の周囲の前記ハウジングの樹脂の表面とは面一であること
を特徴とする。
【0016】
本発明に係るコネクタの好ましい実施形態として、
前記固定接点は、前記側壁部の内壁面よりも、前記可動接点側に突出し、前記頂部は、前記側壁部の頂部壁面と面一であること
を特徴とする。
【0017】
本発明に係るコネクタの好ましい実施形態として、前記ハウジングは、前記端子を複数含み、
前記複数の端子は、前記ハウジングの長手方向に沿って等間隔に配列され、
前記複数の端子の前記脚部及び前記固定部は、対向する面を前記側壁部によって支持されること
を特徴とする。
【0018】
本発明の1つの実施形態に係るコネクタ製造方法は、固定冶具によって前記端子を固定側金型に固定する工程と、
前記端子が固定された前記固定側金型に、前記端子を内部に収納可能なように構成された可動側金型を被せることで、前記端子を前記可動側金型の内部に入れて、前記端子の前記傾斜部の各々を前記可動側金型で押さえる工程と、
前記固定側金型と前記可動側金型との間の空間に、前記ハウジングを形成するための絶縁性の樹脂を注入する工程と、
前記樹脂を硬化する工程と、
前記可動側金型及び前記固定側金型を取り外して、前記樹脂を硬化して形作られ、前記端子を保持するハウジングを取り出す工程と
を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコネクタ製造方法の好ましい実施形態として、前記ハウジングのハウジング裏面に設けられた前記開口部は、前記端子から前記固定冶具を外すことで形成されたこと
を特徴とする。
【0020】
本発明に係るコネクタ製造方法の好ましい実施形態として、前記端子の前記傾斜部の各々を前記可動側金型で押さえる工程は、前記傾斜部の各々の位置を基準に、前記可動側金型を定位置に位置決めすること
を特徴する。
【0021】
本発明に係るコネクタ製造方法の好ましい実施形態として、前記端子の前記傾斜部の各々を前記可動側金型で押さえる工程は、前記可動側金型の中央部分に設けられた底部固定壁で、前記端子の前記底部の底部表面を押さえ、前記可動側金型の端部分に設けられた可動部支持壁で、前記端子の前記可動部を支持する工程を含み、
前記可動側金型によって、前記端子の前記固定部の固定部表面と前記底部固定壁との間の第1空間、及び、前記底部固定壁と前記可動部支持壁との間の第2空間であって、前記端子の前記可動部の周囲の第2空間が定められること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
相手端子との接点となる可動接点を備えた可動部と、可動部に対向する固定部であって相手端子との接点となる固定接点を備えた固定部と、可動部と固定部との間をつなぐ底部とを含む端子において、固定接点と底部との間の側面に傾斜部を設けたことで、金型又は固定冶具等で端子の側面を支持する際に、傾斜部が金型又は固定冶具等による支持に適した突起となり、端子を隙間なく十分に支持することができ、インサート成型の際に絶縁体の樹脂が意図しない部分に流れ込むことを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、それぞれの実施形態は、独立して説明されているが、互いの構成要素を組み合わせてコネクタ及び端子を構成することを排除するものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る端子を含むコネクタ(レセプタクルコネクタ)と相手側コネクタ(プラグコネクタ)を示す。本発明のコネクタは、例えば、携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラ、ノートパソコンなどの小型電子機器における内部部品として使用することができる。
図1に示されるように、ここでは、本発明において、コネクタに含まれる複数の端子が配列された方向を長手方向と呼び、長手方向はX1−X2方向(X軸方向)であり、長手方向(X軸方向)に直交する方向を短手方向と呼び、短手方向はY1−X2方向(X軸方向)であり、長手方向(X軸方向)に直交する方向を短手方向と呼び、Y2方向(Y軸方向)である。
【0026】
コネクタの嵌合方向は、図中のZ1−X2方向(X軸方向)であり、長手方向(X軸方向)に直交する方向を短手方向と呼び、Z2方向(Z軸方向)である。レセプタクルコネクタ100は、Z軸方向のZ2側にある相手コネクタであるプラグコネクタ200と嵌合し、プラグコネクタ200は、Z軸方向のZ1側にある相手コネクタであるレセプタクルコネクタ100と嵌合して、それぞれ電気的に接続される。
【0027】
また、レセプタクルコネクタ100及びレセプタクル端子120における上下について、基板側(基板に取り付けられる側)を「下」又は「裏」とし、プラグコネクタ200及びプラグ端子220を受け入れる側を「上」又は「表」とする。
【0028】
本発明の一実施形態に係るコネクタであるレセプタクルコネクタ100は、レセプタクルハウジング110と、レセプタクル端子120とを含む。本発明の一実施形態に係るレセプタクルコネクタ100の大きさは、長手方向(X軸方向)は1.5〜3.0mm程度、短手方向(Y軸方向)は1.5〜2.5mm程度、嵌合方向(Z軸方向)は0.5〜1.0mm程度である。本発明の一実施形態に係る端子であるレセプタクル端子120は、リン青銅等の金属からなり、レセプタクルハウジング110の長手方向(X軸方向)の第1側壁部112に埋め込まれて、相手端子であるプラグ端子220と接触する表面を第1側壁部112から露出させてレセプタクルハウジング110に保持される。レセプタクル端子120は、基板に取り付けるための実装部121を端部に備える。
【0029】
レセプタクルハウジング110は、液晶ポリマー(LCP)等の絶縁性の樹脂からなり、長手方向(X軸方向)の第1側壁部112及び短手方向(Y軸方向)の第2側壁部114を備え、第1側壁部112及び第2側壁部114に囲まれた中央部分に長手方向(X軸方向)に延在した嵌合凸部116を備える。つまり、レセプタクルハウジング110は、レセプタクル端子120の可動部127側に、嵌合凸部116と、レセプタクル端子120の固定部125側に第1側壁部112を含む。
【0030】
相手コネクタであるプラグコネクタ200は、プラグハウジング210と、プラグ端子220端子とを含む。本発明の一実施形態に係るプラグコネクタ200の大きさは、長手方向(X軸方向)は1.0〜2.5mm程度、短手方向(Y軸方向)は1.2〜2.0mm程度、嵌合方向(Z軸方向)は0.4〜0.8mm程度である。プラグ端子220は、リン青銅等の金属からなり、プラグハウジング210の長手方向(X軸方向)の第1側壁部212に埋め込まれて、レセプタクル端子120と接触する表面を第1側壁部212から露出させて、プラグハウジング210に保持される。プラグ端子220は、基板に取り付けるための実装部221を端部に備える。プラグハウジング210は、液晶ポリマー(LCP)等の絶縁性の樹脂からなり、長手方向(X軸方向)の第1側壁部212及び短手方向(Y軸方向)の第2側壁部214を備え、第1側壁部212及び第2側壁部214に囲まれた中央部分に嵌合凹部216(
図2参照)を備える。
【0031】
図2は、
図1に示すレセプタクルコネクタ100及び相手側のコネクタであるプラグコネクタ200をそれぞれ短手方向(Y軸方向)に、レセプタクル端子120及びプラグ端子220がある位置から切断した断面図である。
図2では、
図1では図示しなかった基板も示す。ここでは、プリント配線基板及びフレキシブルフラットケーブル等、コネクタが実装されるものを、単に「基板」と呼ぶ。レセプタクル端子120の実装部121は、半田付け等により基板300に取り付けられ、プラグ端子220の実装部221は、半田付け等により基板400に取り付けられる。レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200との嵌合状態において、嵌合凸部116は、嵌合凹部216に収容される。
【0032】
図2を参照すると、レセプタクル端子120は、基板側の端部に実装部121を備え、実装部121から上方(Z軸方向のZ2側)に湾曲した部分を介して脚部122を備える。脚部122は、固定接点124及び固定部125とレセプタクルハウジング110の第1側壁部112を挟んで対向し、脚部122と固定接点124及び固定部125との間は、第1側壁部112の端部に位置する頂部123を介してつながっている。
【0033】
図2と共に
図1を合わせて参照すると、脚部122の周囲は、頂部123に隣接する部分を除いて、すべてレセプタクルハウジング110の樹脂に覆われている。すなわち、脚部122は、頂部123に隣接する部分を除いて第1側壁部112に埋め込まれて、レセプタクルハウジング110に保持される。脚部122、頂部123、固定接点124及び固定部125の裏面(相手端子に接触する面とは反対側の面)は、第1側壁部112によって支持される。つまり、レセプタクル端子120の脚部122及び固定部125は、それぞれ対向する面を第1側壁部112によって支持される。
【0034】
固定接点124は、頂部123に隣接した固定部125の部分を、可動接点128側(Y1側に固定部125があればY2側、Y2側に固定部125があればY1側)に突出させて形成される。固定接点124は、相手端子であるプラグ端子220との嵌合状態において、外側脚部225に当接し電気的に接続される。固定接点124及び固定部125は、相手端子との嵌合の際に動くことがないように、相手端子と接触する面とは反対側の面を第1側壁部112によって支持されて固定される。
【0035】
レセプタクル端子120は、固定部125と可動部127との間に、それらとつながっている底部126を含む。底部126は、レセプタクルコネクタ100の短手方向(Y軸方向)に延び、直角に湾曲した部分を介して固定部125及び可動部127につながっている。底部126の基板側(相手端子を受け入れる面(Z2側の面)とは反対側(Z1側))の面の一部分は、レセプタクルハウジング110の嵌合凸部116付近の樹脂によって支持される。
【0036】
可動部127は、嵌合凸部116の側壁には触れておらず自由端であり、端部周辺を固定接点124側に突出させて形成された可動接点128を含み、可動接点128よりも端には可動端部129を含む。可動部127は、相手端子であるプラグ端子220を受け入れて嵌合する際に、弾性により嵌合凸部116側に押されて変形し、嵌合状態において、可動接点128は、プラグ端子220の内側脚部222に当接し電気的に接続される。
【0037】
プラグ端子220は、基板側の端部に実装部221を備え、実装部221から下方に湾曲した部分を介して内側脚部222を備える。内側脚部222は、外側脚部225とプラグハウジング210の第1側壁部212を挟んで対向し、内側脚部222と外側脚部225との間は、第1側壁部212の端部に位置する頂部223を介してつながっている。内側脚部222、頂部223、接点224、外側脚部225の裏面(相手端子に接触する面とは反対側の面)は、第1側壁部212によって支持される。
【0038】
接点224は、頂部223に隣接した外側脚部225の部分を外側に突出させて形成され、相手端子であるレセプタクル端子120との嵌合状態において、固定部125に当接し電気的に接続される。内側脚部222、頂部223、接点224及び外側脚部225は、相手端子との嵌合の際に動くことがないように第1側壁部212によって固定される。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に係る端子を含むレセプタクルコネクタを上側(プラグコネクタと嵌合する側)からみた図である。
図3では、レセプタクルコネクタ100における複数の端子のうちの一部に符号「120」を付し、その他の同じ形状の端子の符号を省略して示す。レセプタクルハウジング110は、レセプタクル端子120を複数含み、複数のレセプタクル端子120は、レセプタクルハウジング110の長手方向(X軸方向)に沿って等間隔に配列される。
【0040】
図3中の線A−Aに沿って切り出した端子周辺部分を
図4から
図7に示す。
図4は、線A−Aに沿って切り出した端子周辺部分を上方から見た図であり、
図5は端子周辺部分を側面(X軸方向)から見た図である。
図6は、線A−Aに沿って切り出した端子周辺部分を上方(Z軸方向のZ2側)から見た斜視図であり、
図7は、端子周辺部分を下方(Z軸方向のZ1側)から見た斜視図である。
【0041】
図3から
図6に示されるように、レセプタクル端子120の可動端部129は、レセプタクルコネクタ100の嵌合凸部116に形成された空間に収められ、相手端子であるプラグ端子220との嵌合状態において、可動部127が変形して可動端部129は嵌合凸部116側に移動することができる。
図4に示されるように、レセプタクル端子120は、嵌合方向(Z軸方向)のプラグコネクタ200側(Z2側)からみると左右対称であり、一方の片側の構成は、当然のことながら他方の片側の構成と同じである。
【0042】
図5及び
図7等に示されるように、レセプタクル端子120の固定部125は、第1側壁部112に埋め込まれて支持され、可動部127と対向する固定部表面125A及び固定部125の固定部側面125B(固定接点124と底部126との間の側面)の一部は、第1側壁部112から露出している。すなわち、固定部125の固定部側面125Bは、レセプタクル端子120の板厚まで、レセプタクルハウジング110の樹脂によってすべて覆われるわけではない。固定部表面125A及び固定部側面125Bの一部分は、第1側壁部112の内壁面112Aから露出した状態で、固定部125が第1側壁部112に支持固定される。
【0043】
図4から
図7等に示されるように、レセプタクル端子120の固定接点124は、第1側壁部112の内壁面112Aよりも嵌合凸部116側に突出し、固定接点124の接点側面131が第1側壁部112から露出している。
図7を参照すると、レセプタクルハウジング110の基板に対向する面であるハウジング裏面110Aには、開口部140が設けられ、少なくともレセプタクル端子120の底部126の裏面である底部裏面126B及びその周辺の湾曲部分が開口部140から露出する。
【0044】
図8は、
図6に示す端子周辺部分から取り出した本発明の一実施形態に係る端子のみを示した図である。
図8に加えて、
図4から
図6に示されるように、固定部125は、固定部側面125Bにおいて、固定接点124と底部126との間の位置に傾斜部130を備える。傾斜部130は、固定部125の幅を広げるように形成される。固定部125は、一対の傾斜部130を有しており、傾斜部130の各々は、固定部125両側の固定部側面125Bに設けられる。つまり、固定部125は、一対の傾斜部130うち一方の傾斜部を一方の側の固定部側面125Bに、他方の傾斜部を他方の側の固定部側面125Bにそれぞれ備える。
【0045】
レセプタクル端子120は、底部126を介して固定部125と可動部127とが対向するように底部126と固定部125との間を、底部126に対して嵌合方向(Z軸方向)上方(Z2側)に湾曲させ、底部126と可動部127との間も同様に、底部126に対して嵌合方向(Z軸方向)上方(Z2側)に湾曲させることで、レセプタクル端子120の固定部125から底部126を介して可動部127までの部分はU字状に形成される。レセプタクル端子120は、傾斜部130と底部126との間の端子側面(傾斜部130と底部126との間の湾曲部分及びその周辺部分の側面)に幅広部132を有する。つまり、幅広部132は、固定部125の傾斜部130から湾曲部分を介して底部126の側面の途中までの間に形成される。
【0046】
図5又は
図6に示されるように、固定部125の固定部側面125Bの一部は、第1側壁部112から露出する。固定部125の固定部側面125Bの一部には、接点側面131の一部と、固定部125の固定部側面125Bに設けられた傾斜部130の一部と、幅広部132の一部とを含む。底部126の平坦な部分の表面である底部表面126Aは、底部表面126Aの周囲のレセプタクルハウジング110の樹脂の表面と面一である。また、固定接点124は、第1側壁部112の内壁面よりも、可動接点128側に突出し、頂部123は、第1側壁部112の頂部壁面112Bと面一である。
【0047】
図9及び
図10は、
図6及び
図7に示す端子周辺部分のうちハウジング部分のみをそれぞれ示す図である。レセプタクル端子120とのインサート成型により形成されるレセプタクルハウジング110は、絶縁体の樹脂がレセプタクル端子120の周囲を取り囲み、レセプタクル端子120を支持するハウジング部分は、レセプタクル端子120の傾斜部130に接する傾斜内壁部141と、幅広部132に接する幅広内壁部142と、頂部123の裏面(基板側の面)を支持する支持頂部143とを含む。また、レセプタクルハウジング110の裏面であるハウジング裏面110Aには、レセプタクル端子120の底部126の底部裏面126B及びその周辺部分を露出する開口部140の他に、実装部121を支持する支持実装部144を含む。
【0048】
図11は、インサート成型の際に金型によってレセプタクル端子の下部を支持した様子を示す図である。複数のレセプタクル端子120を長手方向(X軸方向)に等間隔に2列で配列したレセプタクルハウジング110をインサート成型により形成するために、レセプタクル端子120は、固定側金型500の固定冶具510によって金型に固定される。固定冶具510は、レセプタクル端子120の底部126の底部裏面126B及びその周辺の湾曲部分を支持して固定する。
図7及び
図10に示される、レセプタクルハウジング110のハウジング裏面110Aに形成される開口部140は、インサート成型後に固定冶具510を取り外した跡である。つまり、開口部140は、レセプタクル端子120を固定していた金型、固定冶具等を、インサート成型終了後にレセプタクル端子120から取り外したときに形成される孔である。
【0049】
図12は、インサート成型の際に端子の下部(Z軸方向のZ1側)を支持する固定側金型に上部(Z軸方向のZ2側)から別の可動側金型を被せた様子を示す図である。可動側金型600は、固定冶具510で固定側金型500に固定されたレセプタクル端子120を内部に収容可能に構成されている。そして、可動側金型600は、レセプタクル端子120を固定冶具510で固定した固定側金型500に被せることで、レセプタクル端子120を可動側金型600の内部に入れて、レセプタクル端子120の脚部122の周囲、脚部122と固定部125との間、底部裏面126Bと固定側金型500との間に樹脂が入り込む空間を定めることができる。例えば、脚部122と固定部125との間及び脚部122の外側(
図12中のY2側)に、可動側金型600によって、第1樹脂充填空間520及び第2樹脂充填空間530がそれぞれできる。この際に、レセプタクル端子120の傾斜部130の各々は、可動側金型600によって押さえられる。
【0050】
可動側金型600は、レセプタクル端子120の可動部127側(
図12中のY1側)の端部分に、可動部127を支持してインサート成型の際に樹脂の侵入を防ぐための可動部支持壁610を有する。また、可動側金型600は、底部126の底部表面126Aに当接して、底部裏面126Bを固定するために固定冶具510との間に、底部126を挟み込むための底部固定壁612を中央部分に有する。さらに、可動側金型600は、脚部122側(
図12中のY2側)に、脚部122の第2樹脂充填空間530を定める外側壁部614を有する。
【0051】
可動側金型600でレセプタクル端子120の側面を支持する際に、レセプタクル端子120の一対の傾斜部130は、可動側金型600による支持に適した突起となり、レセプタクル端子120を隙間なく十分に支持することができる。つまり、インサート成型を行う際に、可動側金型600を上(Z2側)から下(Z1側)に動かして、可動側金型600を固定側金型500に被せたときに、可動側金型600は、レセプタクル端子120の一対の傾斜部130を突起としてしっかり押さえることができ、レセプタクル端子120を固定側金型500に確実に固定することができる。また、可動側金型600は、レセプタクル端子120の一対の傾斜部130を押さえることで、傾斜部130の各々の位置を基準に、可動側金型600を定位置に位置決めすることができ、可動側金型600のずれにより生じ得る金型と端子との間の隙間を予め防ぐことができる。
【0052】
インサート成型により、1以上のレセプタクル端子120を含むレセプタクルハウジング110を形成する際に、まず、固定側金型500、可動側金型600、固定冶具510等によってレセプタクルハウジング110の長手方向(X軸方向)になり得る方向に端子を配列する。次に、金型によって定められた空間(第1樹脂充填空間520及び第2樹脂充填空間530等)に流動性のある絶縁性樹脂を流し込むことで、レセプタクル端子120の頂部123の周辺部分を除く脚部122の周囲をすべて樹脂で覆うことができる。また、レセプタクル端子120の頂部123、固定部125の固定部表面125Aと固定部側面125Bの一部、底部表面126A、及び可動部127を樹脂から露出させて、それ以外の部分を樹脂で覆うことができる。最後に、樹脂を硬化させた後、可動側金型600及び固定側金型500を取り外して、樹脂の硬化により形作られたハウジングを取り出すことができる。最終的に、複数のレセプタクル端子120が埋め込まれて保持されたレセプタクルハウジング110を形成することができる。
【0053】
レセプタクル端子120において、レセプタクルハウジング110の樹脂から露出させる部分は、固定接点124の接点側面131、固定部125の固定部側面125B、傾斜部130、幅広部132の湾曲部分の周辺部分を可動側金型600で押さえて覆い、実装部121の周辺部分を固定側金型500で覆うことで、インサート成型の際に樹脂の流れ込みを防ぐことができる。特に、レセプタクル端子120の固定部125の固定部側面125Bに設けられた傾斜部130は、金型又は固定冶具等による支持に適した突起として機能し、側面に傾斜部を設けない場合に比べて、可動側金型600によってレセプタクル端子120を固定冶具510に押し付ける垂直方向(Z軸方向のZ1側)の力が、レセプタクル端子120の傾斜部130にも伝わり、レセプタクル端子120(特に、固定部125)の側面を隙間なく覆うことができる。
【0054】
このように可動側金型600によってレセプタクル端子120の傾斜部130を利用して、レセプタクル端子120を固定側金型500とで挟み込むことで、レセプタクル端子120の固定部側面125Bを隙間なく支持することができ、レセプタクル端子120の表面や、固定部125の固定部側面125Bの一部に樹脂の流れ込みを適切に防ぐことができ、インサート成型を経て、例えば、
図3から
図6に示すようなレセプタクルハウジング110を形成することができる。
【0055】
端子の平坦な側面と金型又は固定冶具等との隙間は、例えば、端子の製造上の誤差等の様々な要因によって端子の平坦な側面に歪等が生じた場合に引き起こされることがあるが、本発明の一実施形態に係る端子であるレセプタクル端子120の側面に傾斜部130を設けたことで、可動側金型600による垂直方向に押す力が傾斜部130に伝わり、従来よりも強く支持することができるため、端子の平坦な側面に歪等があったとしても、それにより生じる側面と金型との隙間を埋めることができる。このようにして、レセプタクル端子120の表面や、固定部125の固定部側面125Bの一部に樹脂の流れ込みを適切に防ぐことができる。
【0056】
図13は、
図12中の線B−Bに沿って金型及び端子を切断して上方からみた断面図である。レセプタクル端子120の固定部125の固定部側面125Bは、可動側金型600の底部固定壁612の表面に凹状に形成された溝部分の側面に接し、傾斜部130は、その形状に合わせて形成された可動側金型600の底部固定壁612の溝部分で隙間なく支持される。レセプタクル端子120の固定部125の固定部表面125Aと、固定部125よりも突出した固定接点124に面する底部固定壁612との間には第1空間616ができるが、第1空間616は周囲を可動側金型600(底部固定壁612)によって隙間なく塞がれており、インサート成型の際に、樹脂が流れ込まない空間である。このよう隙間を塞いだことにより、レセプタクル端子120の固定部125の固定部表面125A及び固定部側面125Bの一部をレセプタクルハウジング110の樹脂から露出させることができる。
【0057】
可動部127と底部固定壁612との間にも第2空間618ができるが、第2空間618の周囲を可動部支持壁610と底部固定壁612によって隙間なく塞がれており、インサート成型の際に、樹脂が流れ込まない空間である。このよう隙間を塞いだことにより、可動部127をレセプタクルハウジング110の樹脂から露出させることができる。固定部125と脚部122との間は、樹脂を充填するための空間である第1樹脂充填空間520であり、脚部122と外側壁部614との間も、同様に、樹脂を充填するための空間である第2樹脂充填空間530である。
【0058】
以上のとおり、本発明は、本発明の個々の実施形態は、独立したものではなく、それぞれ組み合わせて適宜実施することができる。