特許第6974593号(P6974593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974593内視鏡装置、画像圧縮装置の作動方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974593
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】内視鏡装置、画像圧縮装置の作動方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20211118BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   A61B1/045 613
   A61B1/00 682
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-511637(P2020-511637)
(86)(22)【出願日】2019年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2019007103
(87)【国際公開番号】WO2019193867
(87)【国際公開日】20191010
【審査請求日】2020年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-71699(P2018-71699)
(32)【優先日】2018年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 伸介
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/061495(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0251904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを生成する撮像部と、
前記画像データを圧縮する画像圧縮装置とを備え、
前記画像圧縮装置は、
圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの前記画像データから複数の圧縮データを生成する圧縮処理制御部と、
所定の大きさの記憶容量を有し、前記複数の圧縮データの各々を記憶する記憶部と、
前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って算出した算出データ量が、前記画像データの伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第1の圧縮パラメータを生成する第1の圧縮パラメータ生成部と、
前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第2の圧縮パラメータを生成する第2の圧縮パラメータ生成部と、
前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータを比較して、圧縮後のデータ量が小さくなるパラメータを選択パラメータとして選択する圧縮パラメータ判断部とを有し、
前記圧縮処理制御部は、前記圧縮パラメータを前記選択パラメータで更新することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記算出データ量は、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記算出データ量は、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を、前記複数の圧縮データの数で割った値であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記第1の圧縮パラメータ生成部は、前記算出データ量と前記第1の目標データ量との差に応じて、前記第1の圧縮パラメータの大きさを変えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記第2の圧縮パラメータ生成部は、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値と前記第2の目標データ量との差に応じて、前記第2の圧縮パラメータの大きさを変えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記圧縮パラメータ判断部は、前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータの各々の値を比較して前記選択パラメータを選択することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記記憶部は、更に、前記選択パラメータを記憶することができるように構成され、
前記圧縮処理制御部は、前記記憶部に記憶された前記選択パラメータを取得し、前記圧縮パラメータを、取得した前記選択パラメータで更新することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記第1の目標データ量は、前記転送可能データ量に加えて、前記画像データの各色信号の画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに基づいて規定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
更に、前記転送可能データ量を逐次的に算出する転送可能データ量算出部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記記憶容量は、一定であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記記憶容量は、変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項12】
前記記憶容量は、前記記憶部の一部の稼働と休止を制御することによって変更されることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡装置。
【請求項13】
更に、前記記憶部に記憶された前記複数の圧縮データを送信する第1の無線通信部と、
送信された前記複数の圧縮データを受信する第2の無線通信部と、
受信した前記複数の圧縮データに対して所定の画像処理を行う信号処理部と、
前記画像処理の結果を表示する表示部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項14】
更に、前記転送可能データ量を逐次的に算出する転送可能データ量算出部を備え、
前記転送可能データ量算出部は、無線通信の環境に基づいて前記転送可能データ量を算出することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡装置。
【請求項15】
更に、前記撮像部が搭載される内視鏡と、
前記内視鏡に対して物理的に分離されたプロセッサとを備え、
前記第1の圧縮パラメータ生成部、前記第2の圧縮パラメータ生成部、前記圧縮パラメータ判断部、前記第2の無線通信部および前記信号処理部は、前記プロセッサに設けられ、
前記圧縮処理制御部、前記記憶部および前記第1の無線通信部は、前記内視鏡に設けられ、
前記第2の無線通信部は、前記選択パラメータを送信し、
前記第1の無線通信部は、送信された前記選択パラメータを受信することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡装置。
【請求項16】
更に、前記撮像部が搭載される内視鏡と、
前記内視鏡に対して物理的に分離されたプロセッサとを備え、
前記第2の無線通信部および前記信号処理部は、前記プロセッサに設けられ、
前記画像圧縮装置および前記第1の無線通信部は、前記内視鏡に設けられていることを特徴とする請求項13に記載の内視鏡装置。
【請求項17】
内視鏡の撮像部が生成した画像データを圧縮する画像圧縮装置の作動方法であって、
前記画像圧縮装置は、
圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの前記画像データから複数の圧縮データを生成し、所定の大きさの記憶容量を有する記憶部に前記複数の圧縮データの各々を記憶
記憶された前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って算出した算出データ量が、前記画像データの伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第1の圧縮パラメータを生成
前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第2の圧縮パラメータを生成
前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータを比較して、圧縮後のデータ量が小さくなるパラメータを選択パラメータとして選択
前記圧縮パラメータ用いて、新たに取得した前記画像データを圧縮する、ことを特徴とする画像圧縮装置の作動方法。
【請求項18】
内視鏡の撮像部が生成した画像データを圧縮するためのプログラムであって、
圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの前記画像データから複数の圧縮データを生成し、所定の大きさの記憶容量を有する記憶部に前記複数の圧縮データの各々を記憶させることと、
記憶された前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って算出した算出データ量が、前記画像データの伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第1の圧縮パラメータを生成することと、
前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第2の圧縮パラメータを生成することと、
前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータを比較して、圧縮後のデータ量が小さくなるパラメータを選択パラメータとして選択することと、
前記圧縮パラメータ用いて、新たに取得した前記画像データを圧縮することと、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを圧縮する画像圧縮装置を備えた内視鏡装置、画像圧縮装置の作動方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡装置は、医療分野および工業用分野において広く用いられている。特に、医療分野において用いられる内視鏡は、体腔内の臓器の観察、処置具を用いた治療措置、内視鏡観察下における外科手術等に、広く用いられている。
【0003】
また、近年、半導体技術の進歩や、照明用光源としてLEDを用いることによる省電力化によって、充電式のバッテリを搭載したバッテリ駆動型の内視鏡が実用化され始めている。バッテリ駆動型の内視鏡は、プロセッサとの間で無線通信を行う無線通信部を内蔵し、撮像素子によって撮像した画像データを無線で伝送するように構成されている。
【0004】
無線通信によって転送可能なデータ量(以下、転送可能データ量とも記す。)は、無線通信の仕様で規定されている。バッテリ駆動型の内視鏡を備えた内視鏡装置では、無線伝送する画像データのデータ量が転送可能データ量以下になるように、画像データを圧縮して伝送している。
【0005】
画像データの圧縮率を大きくして、画像データのデータ量を少なくすると、画像データを安定して無線伝送することができると共に、内視鏡の消費電力を低減することができる。しかし、画像データの圧縮率を大きくすると、画像データの画質が劣化してしまう。従って、高画質の画像データが求められる場合には、圧縮率を小さくする等、必要に応じて圧縮率を制御することが望ましい。
【0006】
日本国特許第6192882号公報には、術者が内視鏡手技を行おうとするシーンの状態に基づいて、画像データの圧縮率を制御する内視鏡システムが記載されている。日本国特許第6253600号公報には、撮像素子の撮像特性や被写体の分光特性によって決定される画素値の分布特性に基づいて、画像データの圧縮率を制御する内視鏡システムが記載されている。
【0007】
ところで、画像データを圧縮して無線伝送する方法としては、画像データを複数の単位領域に分割して単位領域毎に圧縮し、圧縮されたデータを単位領域毎に内視鏡に設けられた記憶部(メモリ)に一時的に保存し、記憶部に保存されたデータの一部を読み出して無線信号を生成して送信する方法がある。もし、圧縮されたデータのデータ量が記憶部の記憶容量よりも大きい場合には、圧縮されたデータの一部を記憶部に保存することができないため、画像データの伝送が途絶してしまうという問題が発生する。日本国特許第6192882号公報および日本国特許第6253600号公報のいずれにおいても、記憶部の記憶容量は考慮されていない。そのため、日本国特許第6192882号公報および日本国特許第6253600号公報では、上記の問題が発生することを防止することができない。
【0008】
なお、上記の問題は、画像データを無線で伝送する場合に限らず、画像データを有線で伝送する場合にも当てはまる。
【0009】
そこで、本発明は、画像データの伝送が途絶することを防止することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の内視鏡装置は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像部と、前記画像データを圧縮する画像圧縮装置とを備え、前記画像圧縮装置は、圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの前記画像データから複数の圧縮データを生成する圧縮処理制御部と、所定の大きさの記憶容量を有し、前記複数の圧縮データの各々を記憶する記憶部と、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って算出した算出データ量が、前記画像データの伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第1の圧縮パラメータを生成する第1の圧縮パラメータ生成部と、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第2の圧縮パラメータを生成する第2の圧縮パラメータ生成部と、前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータを比較して、圧縮後のデータ量が小さくなるパラメータを選択パラメータとして選択する圧縮パラメータ判断部とを有し、前記圧縮処理制御部は、前記圧縮パラメータを前記選択パラメータで更新する。
本発明の一態様の画像圧縮装置の作動方法は、内視鏡の撮像部で取得した画像データを圧縮する方法であって、前記画像圧縮装置は、圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの前記画像データから複数の圧縮データを生成し、所定の大きさの記憶容量を有する記憶部に前記複数の圧縮データの各々を記憶、記憶された前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って算出した算出データ量が、前記画像データの伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第1の圧縮パラメータを生成、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第2の圧縮パラメータを生成、前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータを比較して、圧縮後のデータ量が小さくなるパラメータを選択パラメータとして選択、前記圧縮パラメータ用いて、新たに取得した前記画像データを圧縮する
本発明の一態様のプログラムは、内視鏡の撮像部で取得した画像データを圧縮するためのプログラムであって、圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの前記画像データから複数の圧縮データを生成し、所定の大きさの記憶容量を有する記憶部に前記複数の圧縮データの各々を記憶させることと、記憶された前記複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って算出した算出データ量が、前記画像データの伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第1の圧縮パラメータを生成することと、前記複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮処理するための第2の圧縮パラメータを生成することと、前記第1の圧縮パラメータと前記第2の圧縮パラメータを比較して、圧縮後のデータ量が小さくなるパラメータを選択パラメータとして選択することと、前記圧縮パラメータ用いて、新たに取得した前記画像データを圧縮することと、をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の全体構成を示す説明図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の内視鏡、プロセッサおよび画像圧縮装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における圧縮パラメータ演算部の構成を示す機能ブロック図である。
図4図2に示した内視鏡における画像データ処理手順を示すフローチャートである。
図5図2に示したプロセッサにおける画像データ処理手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態における第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第1の実施の形態における第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の第1の実施の形態における画像データおよび圧縮データを模式的に示す説明図である。
図9】本発明の第1の実施の形態における圧縮データのデータ量の最大値の推移を模式的に示す説明図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係わる内視鏡装置の内視鏡、プロセッサおよび画像圧縮装置の構成を示す機能ブロック図である。
図11図10に示した内視鏡における画像データ処理手順を示すフローチャートである。
図12図10に示したプロセッサにおける画像データ処理手順を示すフローチャートである。
図13】本発明の第3の実施の形態に係わる内視鏡装置の内視鏡、プロセッサおよび画像圧縮装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
(内視鏡装置の構成)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係わる内視鏡装置1の全体構成を示す説明図である。本実施の形態に係わる内視鏡装置1は、バッテリ駆動型の携帯型内視鏡であるワイヤレス内視鏡2を備えたワイヤレス内視鏡装置である。以下、ワイヤレス内視鏡2を単に内視鏡2と記す。
【0014】
内視鏡装置1は、更に、内視鏡2に対して物理的に分離されたプロセッサ3と、プロセッサ3に接続された表示部としてのモニタ4とを備えている。プロセッサ3は、内視鏡2とは無線によって接続され、後述する所定の画像処理を行う。モニタ4は、画像処理の結果、具体的には内視鏡2によって撮像された画像等を表示する。
【0015】
なお、図1に示したように、手術室では、カート6上に、プロセッサ3とモニタ4と各種医療機器が載置される。カート6上に載置される医療機器としては、例えば、電気メス装置、気腹装置およびビデオレコーダ等の装置類や、二酸化炭素を充填したガスボンベ等がある。
【0016】
内視鏡2は、体腔内に挿入される細長の挿入部2Aと、挿入部2Aの基端部に設けられた操作部2Bと、被写体を撮像して画像データを生成する撮像部21とを有している。撮像部21は、挿入部2Aの先端部に設けられたCCDまたはCMOS等の図示しない撮像素子を含んでいる。
【0017】
内視鏡装置1は、更に、撮像部21によって生成された画像データを圧縮する画像圧縮装置5を備えている。なお、画像圧縮装置5は、後で説明する図2に示されている。本実施の形態では、画像データを伝送する伝送経路は、無線による伝送経路を含んでいる。
【0018】
(内視鏡、プロセッサおよび画像圧縮装置の構成)
次に、図2を参照して、内視鏡2、プロセッサ3および画像圧縮装置5の構成について詳しく説明する。図2は、内視鏡2、プロセッサ3および画像圧縮装置5の構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態では、画像圧縮装置5の一部は内視鏡2に設けられ、画像圧縮装置5の他の一部はプロセッサ3に設けられている。図2に示したように、画像圧縮装置5は、内視鏡2に設けられた圧縮処理制御部51および記憶部52と、プロセッサ3に設けられた圧縮パラメータ演算部53とを有している。
【0019】
以下、内視鏡2の構成と、圧縮処理制御部51および記憶部52について説明する。図2に示したように、内視鏡2は、前記撮像部21と、内視鏡制御部22と、第1の無線通信部23と、アンテナ24と、バッテリ25と、光源部26とを有している。なお、内視鏡2は内視鏡装置1の一部であることから、内視鏡装置1が第1の無線通信部23を備えていると共に、第1の無線通信部23が内視鏡2に設けられているとも言える。
【0020】
バッテリ25は、操作部2B(図1参照)に装着することができるように構成されている。また、バッテリ25は、操作部2Bに装着された後は、電源部として、撮像部21、内視鏡制御部22、第1の無線通信部23、光源部26、圧縮処理制御部51および記憶部52に対して電力を供給することができるように構成されている。
【0021】
内視鏡制御部22は、内視鏡2内の各回路部を制御すると共に、バッテリ25を制御して内視鏡2内の各部に電力を供給させる。内視鏡制御部22は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUと記す。)またはデジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPと記す。)によって構成されている。
【0022】
光源部26は、操作部2B(図1参照)に設けられた発光ダイオード等の図示しない発光素子によって構成され、体腔内を照明する照明光を発生する。この照明光は、図示しないライトガイドによって挿入部2A(図1参照)の先端に導かれ、挿入部2Aの先端に設けられた図示しないレンズを介して被写体に照射される。被写体は、例えば、被検体内の患部等の部位である。
【0023】
撮像部21の撮像素子の撮像面には、上記の照明光による被写体からの戻り光が結像する。撮像部21は、光電変換によって被写体光学像に基づく画像データを生成し、この画像データを圧縮処理制御部51に出力する。
【0024】
圧縮処理制御部51は、撮像部21が生成した画像データに対して所定の圧縮処理を行って、複数の圧縮データを生成する。記憶部52は、圧縮データを記憶するための所定の大きさの記憶容量を有し、複数の圧縮データの各々を順次記憶する。本実施の形態では、記憶容量は一定である。また、記憶部52は、更に、後述する選択パラメータを記憶することができるように構成されている。圧縮処理制御部51は、例えば、CPUまたはDSPによって構成されている。記憶部52は、内視鏡2に設けられた、RAM等の書き換え可能な記憶素子の少なくとも一部によって構成されている。圧縮処理の内容については、後で説明する。
【0025】
第1の無線通信部23は、無線で送信する信号を生成する図示しない無線送信回路と、無線で受信した信号を復調する図示しない無線受信回路とを含み、アンテナ24を介して、プロセッサ3との間で無線を用いて所定の信号を送受信する。上記所定の信号には、記憶部52に記憶された複数の圧縮データと、後述する選択パラメータが含まれる。なお、第1の無線通信部23は、複数の帯域、例えば、60GHz帯と5GHz帯を用いて無線通信ができるように構成されていてもよい。60GHz帯は、例えば圧縮データを送受信するために用いられる。5GHz帯は、例えば選択パラメータを含む情報を送受信するために用いられる。
【0026】
次に、プロセッサ3の構成と、圧縮パラメータ演算部53について説明する。図2に示したように、プロセッサ3は、プロセッサ制御部31と、無線受信機32と、信号処理部33と、ビデオ出力部34と、転送可能データ量算出部35と、ユーザインタフェース部(以下、ユーザIF部と記す。)36と、記憶部37とを有している。なお、プロセッサ3は内視鏡装置1の一部であることから、内視鏡装置1が信号処理部33および転送可能データ量算出部35を備えているとも言える。
【0027】
無線受信機32は、プロセッサ3に内蔵されていてもよいし、プロセッサ3の本体とは別体に構成されていてもよい。後者の場合には、無線受信機32は、図示しないコネクタによってプロセッサ3の本体に接続されるように構成される。図1には、無線受信機32がプロセッサ3の本体とは別体に構成された例を示している。
【0028】
無線受信機32は、第2の無線通信部32Aと、アンテナ32Bとを含んでいる。なお、無線受信機32はプロセッサ3の一部であり、プロセッサ3は内視鏡装置1の一部であることから、内視鏡装置1が第2の無線通信部32Aを備えていると共に、第2の無線通信部32Aがプロセッサ3に設けられているとも言える。
【0029】
第2の無線通信部32Aは、無線で送信する信号を生成する図示しない無線送信回路と、無線で受信した信号を復調する図示しない無線受信回路とを含み、アンテナ32Bを介して、内視鏡2との間で無線を用いて所定の信号を送受信する。上記所定の信号には、第1の無線通信部23が送信した複数の圧縮データと、後述する選択パラメータが含まれる。なお、第2の無線通信部32Aは、第1の無線通信部23と同様に、複数の帯域、例えば、60GHz帯と5GHz帯を用いて無線通信ができるように構成されていてもよい。
【0030】
記憶部37は、所定の大きさの記憶容量を有し、第2の無線通信部32Aが受信した複数の圧縮データの各々を順次記憶する。また、記憶部37は、更に、後述する選択パラメータを記憶することができるように構成されている。記憶部37は、プロセッサ3に設けられた、RAM等の書き換え可能な記憶素子の少なくとも一部によって構成されている。
【0031】
信号処理部33は、記憶部37から複数の圧縮データの各々を読み出して、複数の圧縮データに対して所定の画像処理を行う。具体的には、信号処理部33は、複数の圧縮データの各々に対して伸長処理を行い、伸長されたデータを結合することによって、圧縮されていない画像データを生成する。以下、信号処理部33によって生成される圧縮されていない画像データを、伸長された画像データと言う。伸長された画像データは、ビデオ出力部34に出力される。
【0032】
ビデオ出力部34は、伸長された画像データをモニタ4において表示可能なフォーマットに変換し、変換した画像データをモニタ4(図1参照)に出力する。モニタ4は、信号処理部33における画像処理の結果として、伸長された画像データを表示する。
【0033】
転送可能データ量算出部35は、画像データを伝送する伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量を逐次的に算出する。転送可能データ量は、例えば、1フレーム分の画像データを送信する時間の間に転送することができるデータ量で規定される。本実施の形態では、伝送経路は、アンテナ24とアンテナ32Bの間に形成される無線による伝送経路を含んでいる。
【0034】
無線通信における転送可能データ量は、無線通信の仕様で規定される他に、無線通信の環境に依存して変化する。本実施の形態では、転送可能データ量算出部35は、無線通信の環境に基づいて、転送可能データ量を算出する。具体的には、例えば、内視鏡2とプロセッサ3との間で、データ量を変化させながら算出用データを送受信させ、送受信に成功した算出用データのデータ量から、転送可能データ量を算出してもよい。なお、算出用データは、撮像部21が生成した画像データであってもよい。この場合、信号処理部33と転送可能データ量算出部35は、信号処理部33によって伸長された画像データのデータ量が、転送可能データ量算出部35に出力されるように構成される。
【0035】
圧縮パラメータ演算部53は、記憶部37に記憶された複数の圧縮データに基づいて、圧縮処理制御部51において用いられる圧縮パラメータに関する一連の演算を行って、選択パラメータを生成する。圧縮パラメータ演算部53の構成と、圧縮パラメータに関する一連の演算については、後で説明する。
【0036】
ユーザIF部36は、ユーザ操作を受け付けるインタフェースである。具体的には、ユーザIF部36は、例えば、フロントパネルおよび制御系の各種ボタン等によって構成され、ユーザ操作に基づく操作信号をプロセッサ制御部31に対して出力する。ユーザ操作としては、例えば、内視鏡2の観察モードの指定や、画像表示に関する設定や、後述する圧縮パラメータの初期値の設定がある。なお、内視鏡2の観察モードは、内視鏡2にユーザIF部を設け、プロセッサ3のユーザIF部36と内視鏡2のユーザIF部の少なくとも一方において指定できるように構成されていてもよい。
【0037】
プロセッサ制御部31は、プロセッサ3内の各回路部を制御すると共に、図示しない電源部を制御して、プロセッサ3内の各部に電源を供給させる。また、プロセッサ制御部31は、ユーザIF部36から入力される操作信号に基づいて、内視鏡2とプロセッサ3との間の無線通信を介して、内視鏡2に設けられた内視鏡制御部22に対して各種指示を与えることが可能である。プロセッサ制御部31、信号処理部33、転送可能データ量算出部35および圧縮パラメータ演算部53は、それぞれ、例えばCPUまたはDSPによって構成されている。
【0038】
(圧縮パラメータ演算部の構成)
次に、図3を参照して、圧縮パラメータ演算部53の構成について説明する。図3は、圧縮パラメータ演算部53の構成を示す機能ブロック図である。圧縮パラメータ演算部53は、第1の圧縮パラメータ生成部53Aと、第2の圧縮パラメータ生成部53Bと、圧縮パラメータ判断部53Cとを有している。なお、圧縮パラメータ演算部53は画像圧縮装置5の一部であることから、画像圧縮装置5が第1の圧縮パラメータ生成部53A、第2の圧縮パラメータ生成部53Bおよび圧縮パラメータ判断部53Cを有しているとも言える。また、圧縮パラメータ演算部53はプロセッサ3に設けられていることから、第1の圧縮パラメータ生成部53A、第2の圧縮パラメータ生成部53Bおよび圧縮パラメータ判断部53Cもプロセッサ3に設けられていると言える。
【0039】
第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、記憶部37(図2参照)に記憶された複数の圧縮データの各々のデータ量を取得することができるように構成されている。第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、圧縮パラメータに関する一連の演算として、1つの画像データから生成された複数の圧縮データの各々のデータ量に基づいて、第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成する。第1の暫定圧縮パラメータQ1は、圧縮パラメータ判断部53Cに出力される。
【0040】
第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、記憶部37に記憶された複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値を取得することができるように構成されている。第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、圧縮パラメータに関する一連の演算として、1つの画像データにから生成された複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値に基づいて、第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成する。第2の暫定圧縮パラメータQ2は、圧縮パラメータ判断部53Cに出力される。
【0041】
圧縮パラメータ判断部53Cは、圧縮パラメータに関する一連の演算として、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2を比較して、これらのうちのいずれか一方を選択パラメータQ3として選択する。本実施の形態では、選択パラメータQ3は、記憶部37と、内視鏡2に設けられた記憶部52に出力される。
【0042】
圧縮パラメータ演算部53の動作、すなわち、圧縮パラメータに関する一連の演算については、後で説明する。
【0043】
(内視鏡における画像データ処理)
次に、図2および図4を参照して、内視鏡2における画像データ処理手順について説明する。図4は、内視鏡2における画像データ処理手順を示すフローチャートである。内視鏡2における画像データ処理は、圧縮処理制御部51おける圧縮処理を含んでいる。
【0044】
内視鏡2における画像データ処理は、内視鏡制御部22および圧縮処理制御部51によって実行される。また、内視鏡2における画像データ処理は、撮像処理の開始を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されることによって開始され、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されるまでの間、図4に示したステップS11〜S16からなる一連の処理が繰り返し実行される。本実施の形態では、1つの画像データを生成する毎に、上記一連の処理が1回実行される。なお、操作信号は、例えば、内視鏡2に設けられた図示しないユーザIF部またはプロセッサ3に設けられたユーザIF部36から出力される。
【0045】
内視鏡2における画像データ処理では、まず、内視鏡制御部22は、内視鏡2とプロセッサ3との間において無線通信の接続を確立する(ステップS11)。なお、N回目(Nは2以上の整数)に実行される画像データ処理では、無線通信の接続を確立する処理の代わりに、無線通信の接続が維持されているかを確認し、無線通信の接続が維持されていない場合には、無線通信の接続を確立する処理を実行してもよい。無線通信の接続が維持されている場合には、無線通信の接続を確立する処理を省略してもよい。
【0046】
次に、圧縮処理制御部51は、圧縮パラメータ演算部53の圧縮パラメータ判断部53C(図3参照)から出力された選択パラメータQ3を取得する(ステップS12)。なお、後述するように、圧縮パラメータ判断部53Cは、選択パラメータQ3をプロセッサ3の第2の無線通信部32Aに出力する。第2の無線通信部32Aは、出力された選択パラメータQ3を送信する。内視鏡2の第1の無線通信部23は、送信された選択パラメータQ3を受信する。また、本実施の形態では、記憶部52が、受信した選択パラメータQ3を記憶することができるように構成されている。圧縮処理制御部51は、記憶部52から選択パラメータQ3を読み出して、選択パラメータQ3を取得する。また、1回目に実行される上記一連の処理では、圧縮処理制御部51は、選択パラメータQ3の代わりに、圧縮パラメータの初期値Qiを取得する。初期値Qiは、ユーザIF部36に入力された設定値を用いてもよいし、記憶部37,52に記憶された設定値を用いてもよい。
【0047】
次に、内視鏡制御部22は、撮像部21を制御して、バッテリ25から供給された電力を電源として、被写体を撮像し画像データを生成する(ステップS13,S14)。画像データは、圧縮処理制御部51に出力される。画像データは、例えばRAWデータであってもよい。
【0048】
次に、圧縮処理制御部51は、画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行って、1つの画像データから複数の圧縮データを生成する画像圧縮処理を行う(ステップS15)。複数の圧縮データの各々は、記憶部52に順次記憶される。なお、圧縮処理制御部51は、撮像部21から画像データを複数の単位領域毎に順次読み込み、読み込むたびに圧縮処理を行ってもよい。
【0049】
次に、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部23を制御して、プロセッサ3に対して、記憶部52に記憶された複数の圧縮データを送信する(ステップS16)。次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されていない場合には、ステップS11に戻り、上記操作信号が内視鏡制御部22に入力された場合には、内視鏡2における画像データ処理を終了する。
【0050】
なお、内視鏡2における画像データ処理手順の各ステップの実行順序は、図4に示した順序から変更してもよい。例えば、無線通信の接続を確立する処理(ステップS11)と、選択パラメータQ3を取得する処理(ステップS12)は、被写体を撮像し画像データを生成する処理(ステップS13,S14)の後に実行されてもよい。この場合、選択パラメータQ3を取得する処理の後に、画像圧縮処理(ステップS15)が実行される。
【0051】
(圧縮処理および送信処理)
以下、図2および図8を参照して、ステップS15,S16における一連の処理について詳しく説明する。図8は、画像データおよび圧縮データを模式的に示す説明図である。圧縮処理制御部51は、1つの画像データに対して、複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの画像データから複数の圧縮データを生成する。図8において符号100は1つの画像データを示している。画像データ100は、1フレーム分の画像に対応する。
【0052】
図4に示したステップS11〜S16からなる一連の処理がN回実行される場合、圧縮処理もN回実行される。N回目に実行される圧縮処理では、圧縮処理制御部51は、まず、圧縮パラメータQを選択パラメータQ3で更新する。言い換えると、圧縮処理制御部51は、取得した選択パラメータQ3を、新たな圧縮パラメータQとする。なお、1回目に実行される圧縮処理では、圧縮処理制御部51は、初期値Qiを圧縮パラメータQとする。
【0053】
ステップS15,S16における一連の処理では、次に、圧縮処理制御部51は、画像データ100を複数の領域に分割する。ここでは、理解を容易にするために、画像データ100を3つの領域に分割する例について説明する。図8には、画像データ100に対してラスタスキャン(図8における左右方向の走査)を行って、3つの領域110,120,130に分割する例を示している。3つの領域110,120,130は、それぞれ、単位領域に対応する。
【0054】
次に、圧縮処理制御部51は、圧縮パラメータQを用いて、画像データ100に対して単位領域毎に圧縮処理を行い、画像データ100から複数の圧縮データを生成する。図8に示した例では、圧縮処理制御部51は、3つの領域110,120,130の各々を単位領域と見なして、領域110,120,130毎に圧縮処理を行い、3つの圧縮データ110c,120c,130cを生成する。圧縮データ110cは領域110を圧縮して生成されたデータであり、圧縮データ120cは領域120を圧縮して生成されたデータであり、圧縮データ130cは領域130を圧縮して生成されたデータである。
【0055】
なお、前述のように、圧縮処理制御部51が撮像部21から画像データを複数の単位領域毎に順次読み込む場合、単位領域を読み込む処理と読み込んだ単位領域に対する圧縮処理を含む一連の処理が、単位領域の数だけ繰り返し実行される。
【0056】
圧縮パラメータQは、圧縮後のデータ量を規定する値である。圧縮フォーマットとしては、任意の画像圧縮フォーマットを使用することができる。圧縮パラメータQは、圧縮フォーマットにおける圧縮率を規定するパラメータと対応関係を有している。本実施の形態では、圧縮パラメータQの値が大きくなるに従って圧縮率が大きくなる、すなわち圧縮パラメータQの値が大きくなるに従って圧縮後のデータ量が小さくなるように規定されている。
【0057】
なお、圧縮後のデータ量は、圧縮パラメータQの値だけではなく、単位領域に含まれる画像情報に違いによって変化する。図8において、領域110,120,130および圧縮データ110c,120c,130cの各々の長さは、データ量を模式的に示している。図8に示したように、圧縮パラメータQの値が同じであり且つ領域110,120,130の各々のデータ量が同じであっても、領域110,120,130の各々に含まれる画像情報が互いに異なる場合には、圧縮データ110c,120c,130cの各々のデータ量は互いに異なる。
【0058】
ステップS15,S16における一連の処理では、次に、複数の圧縮データの各々を記憶部52に一時保存する。具体的には、圧縮処理制御部51は、記憶部52に対して、複数の圧縮データを順次出力し、記憶部52は、出力された複数の圧縮データの各々を順次記憶する。次に、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部23を制御して、記憶部52に記憶された複数の圧縮データの各々を順次読み出して送信する。
【0059】
圧縮データ110c,120c,130cの各々は、具体的には、以下のようにして送信される。まず、圧縮処理制御部51は、記憶部52に対して、圧縮データ110cを出力する。記憶部52は、圧縮データ110cを記憶する。次に、第1の無線通信部23は、記憶部52から圧縮データ110cを読み出して送信する。次に、圧縮処理制御部51は、記憶部52に対して、圧縮データ120cを出力する。記憶部52は、圧縮データ110cを消去して圧縮データ120cを記憶する。次に、第1の無線通信部23は、記憶部52から圧縮データ120cを読み出して送信する。次に、圧縮処理制御部51は、記憶部52に対して、圧縮データ130cを出力する。記憶部52は、圧縮データ120cを消去して圧縮データ130cを記憶する。次に、第1の無線通信部23は、記憶部52から圧縮データ130cを読み出して送信する。
【0060】
上述のように、記憶部52は、圧縮データを一時的に保存するメモリとして用いられる。なお、第1の無線通信部23は、1つの圧縮データに対して、複数の単位パケット毎に読み出し処理と送信処理を行う。図8において、符号111,112,113,114,115は、それぞれ、単位パケット毎に分割された圧縮データ110cの一部を示している。圧縮データ110cを送信する場合には、まず、第1の無線通信部23は、記憶部52から部分111を読み出して無線信号を生成し、この無線信号を送信する。以下、第1の無線通信部23は、部分112,113,114,115に対して、順次、部分111と同様の処理を行う。
【0061】
(プロセッサにおける画像データ処理)
次に、図2および図5を参照して、プロセッサ3における画像データ処理手順について説明する。図5は、プロセッサ3における画像データ処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ3における画像データ処理は、第1の圧縮パラメータ生成部53Aにおける第1の暫定圧縮パラメータQ1の生成処理、第2の圧縮パラメータ生成部53Bにおける第2の暫定圧縮パラメータQ2の生成処理、および圧縮パラメータ判断部53Cにおける選択パラメータQ3の選択処理を含んでいる。
【0062】
プロセッサ3における画像データ処理は、プロセッサ制御部31および圧縮パラメータ演算部53によって実行される。また、プロセッサ3における画像データ処理は、内視鏡2における画像データ処理と同様に、撮像処理の開始を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されることによって開始され、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されるまでの間、図5に示したステップS21〜S25からなる一連の処理が繰り返し実行される。本実施の形態では、1つの画像データを生成する毎に、上記一連の処理が1回実行される。
【0063】
プロセッサ3における画像データ処理では、まず、プロセッサ制御部31は、内視鏡2とプロセッサ3との間において無線通信の接続を確立する(ステップS21)。なお、N回目(Nは2以上の整数)に実行される画像データ処理では、無線通信の接続を確立する処理の代わりに、無線通信の接続が維持されているかを確認し、無線通信の接続が維持されていない場合には、無線通信の接続を確立する処理を実行してもよい。無線通信の接続が維持されている場合には、無線通信の接続を確立する処理を省略してもよい。
【0064】
次に、プロセッサ制御部31は、第2の無線通信部32Aを制御して、第1の無線通信部23によって送信された複数の圧縮データを受信する(ステップS22)。受信した複数の圧縮データは、記憶部37に記憶される。
【0065】
次に、プロセッサ制御部31は、信号処理部33を制御して、記憶部37から複数の圧縮データを読み出して、複数の圧縮データに所定の画像処理を行う(ステップS23)。具体的には、前述のように、信号処理部33は、複数の圧縮データの各々に対して伸長処理を行い、伸長されたデータを結合することによって、圧縮されていない画像データ(伸長された画像データ)を生成する。
【0066】
次に、圧縮パラメータ演算部53は、圧縮パラメータに関する一連の演算を行って、選択パラメータQ3を生成する(ステップS24)。次に、プロセッサ制御部31は、第2の無線通信部32Aを制御して、内視鏡2に対して、選択パラメータQ3を送信する(ステップS25)。内視鏡2の第1の無線通信部23は、送信された選択パラメータQ3を受信する。なお、本実施の形態では、記憶部52が選択パラメータQ3を記憶することができるように構成されている。第1の無線通信部23は、受信した選択パラメータQ3を記憶部52に出力する。記憶部52は、選択パラメータQ3を記憶する。
【0067】
次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されていない場合には、ステップS21に戻り、上記操作信号がプロセッサ制御部31に入力された場合には、プロセッサ3における画像データ処理を終了する。
【0068】
(圧縮パラメータ演算処理)
以下、ステップS24における圧縮パラメータに関する一連の演算処理(以下、圧縮パラメータ演算処理と言う。)について詳しく説明する。圧縮パラメータ演算処理では、第1の圧縮パラメータ生成部53Aにおける第1の暫定圧縮パラメータ生成処理と、第2の圧縮パラメータ生成部53Bにおける第2の暫定圧縮パラメータ生成処理と、圧縮パラメータ判断部53Cにおける選択パラメータQ3の選択処理が実行される。第1の暫定圧縮パラメータ生成処理と第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行順序は、任意である。選択パラメータQ3の選択処理は、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理と第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の両方が実行された後に実行される。
【0069】
(第1の暫定圧縮パラメータ生成処理)
始めに、図2図3および図6を参照して、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理について説明する。図6は、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。第1の暫定圧縮パラメータ生成処理は、第1の圧縮パラメータ生成部53Aによって実行される。第1の暫定圧縮パラメータ生成処理では、まず、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、記憶部37に記憶された、1つの画像データから生成された複数の圧縮データの各々のデータ量を取得する(ステップS31)。
【0070】
次に、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、1つの画像データから生成された複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算を行って、算出データ量を算出する(ステップS32)。算出データ量は、複数の圧縮データの各々のデータ量の総和と対応関係を有することから、圧縮された画像データのデータ量と対応関係を有すると言える。なお、「複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を求めることを含む演算」は、上記総和のみを求める演算と、上記総和を求めた後に所定の係数で割る演算とを含む。ここでは、上記総和のみを求める演算を行って、算出データ量V1を算出する場合の例について説明する。算出データ量V1は、圧縮された画像データのデータ量を表している。
【0071】
次に、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、転送可能データ量算出部35から転送可能データ量を取得し、この転送可能データ量に基づいて、第1の目標データ量T1を規定する(ステップS33)。第1の目標データ量T1は、例えば、転送可能データ量から所定の値を減じたり、転送可能データ量に1未満の所定の係数を掛けたりすることによって、転送可能データ量よりも小さくなるように規定される。
【0072】
また、第1の目標データ量T1は、転送可能データ量に加えて、画像データの各色信号の画素値の分布特性(以下、単に画素値の分布特性と記す。)、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに基づいて規定されてもよい。画素値の分布特性は、撮像素子の撮像特性や被写体の分光特性によって決定される。画素値の分布特性の情報は、例えば、信号処理部33に設けられた画像データ解析部が伸長された画像データを解析することによって取得することができる。画素値が狭い範囲に分布している場合には、圧縮率を大きくしても画質の劣化が小さいため、第1の目標データ量T1をより小さくしてもよい。一方、画素値が広い範囲に分布している場合には、圧縮率を大きくすると画質の劣化が大きくなるため、第1の目標データ量T1をより大きくしてもよい。
【0073】
内視鏡シーンとしては、例えば、目的部位に到達させるために挿入部2Aを比較速い速度で移動させるシーンや、挿入部2Aを移動させながら異常部の有無の探索を行うシーンや、精査観察または所定の処置を行うシーン等がある。重要度が高いシーンでは、画質の劣化を防止するために、第1の目標データ量T1をより大きくしてもよい。一方、重要度が低いシーンでは、第1の目標データ量T1をより小さくしてもよい。内視鏡シーンの情報は、例えば、信号処理部33に設けられた画像データ解析部が伸長された画像データを解析することによって、または、ユーザがユーザIF部36等を用いて手動で設定した内容を参照することで取得することができる。
【0074】
無線環境に基づいて第1の目標データ量T1を規定する場合には、例えば、無線通信の環境が悪化した場合には、第1の目標データ量T1をより小さくしてもよい。無線環境の情報は、例えば、転送可能データ量算出部35から取得することができる。
【0075】
転送可能データ量および無線環境以外のパラメータによって第1の目標データ量T1を規定する場合には、上記解析結果の情報や上記設定内容の情報が第1の圧縮パラメータ生成部53Aに入力されるように構成される。
【0076】
第1の暫定圧縮パラメータ生成処理では、次に、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、算出データ量V1が第1の目標データ量T1以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータである第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成する(ステップS34)。本実施の形態では、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、算出データ量V1と第1の目標データ量T1との差に応じて、第1の暫定圧縮パラメータQ1の大きさを変える。具体的には、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、下記の式(1)によって、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出する。
【0077】
Q1(n)=Q3(n−1)+A1*(V1−T1)/T1 …(1)
なお、式(1)において、Q1(n)は、図5に示したプロセッサ3における画像データ処理の一連の処理がn回(nは1以上の整数)実行される場合に、n回目に算出される第1の暫定圧縮パラメータQ1を表している。また、Q3(n−1)は、n−1回目に選択された選択パラメータQ3を表している。Q3(n−1)は、n−1回目に算出された第1の暫定圧縮パラメータQ1またはn−1回目に算出された第2の暫定圧縮パラメータQ2に対応する。第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、記憶部37からQ3(n−1)を読み出して、Q1(n)を算出する。また、A1は、正の定数である。
【0078】
なお、1回目に算出される第1の暫定圧縮パラメータQ1(1)は、式(1)におけるQ3(n−1)の代わりに、所定の定数を用いて算出される。所定の定数は、初期値Qiであってもよい。
【0079】
式(1)を用いて算出した第1の暫定圧縮パラメータQ1を用いると、算出データ量V1が第1の目標データ量T1以下になるように圧縮処理を行うことが可能になる理由は、以下の通りである。すなわち、算出データ量V1は、Q3(n−1)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量に相当する。式(1)から理解されるように、算出データ量V1が第1の目標データ量T1よりも大きい場合には、Q1(n)はQ3(n−1)よりも大きくなり、その結果、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量は小さくなる。ここで、A1の値を適切に選択すると、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量を第1の目標データ量T1以下にすることが可能である。本実施の形態では、このようにして、算出データ量V1が第1の目標データ量T1以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータである第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成する。
【0080】
なお、式(1)から理解されるように、算出データ量V1が第1の目標データ量T1よりも小さい場合には、Q1(n)はQ3(n−1)よりも小さくなり、その結果、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量は大きくなる。A1の値は、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量が大きくなりすぎないような値が選択される。また、式(1)から理解されるように、算出データ量V1が第1の目標データ量T1と等しい場合には、Q1(n)はQ3(n−1)と等しくなる。
【0081】
第1の暫定圧縮パラメータ生成処理では、次に、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、圧縮パラメータ判断部53Cに対して、第1の暫定圧縮パラメータQ1を出力する(ステップS35)。これにより、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理が終了する。
【0082】
なお、ここまでは、算出データ量V1が複数の圧縮データの各々のデータ量の総和である場合を例にとって説明してきた。算出データ量は、複数の圧縮データの各々のデータ量の総和を、複数の圧縮データの数で割った値、すなわち複数の圧縮データの各々のデータ量の平均値であってもよい。算出データ量が上記平均値である場合、第1の目標データ量として、上記の平均値に対応したデータ量が用いられる。具体的には、例えば、第1の目標データ量は、転送可能データ量を複数の圧縮データの数で割った値に、所定の値を減ずることによって求めてもよいし、転送可能データ量を複数の圧縮データの数で割った値に、1未満の所定の係数を掛けることによって求めてもよい。
【0083】
また、図6には、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行毎に、第1の目標データ量T1を規定する例を示している。第1の目標データ量T1を規定する無線環境等のパラメータは、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行毎に変化し得る。そのため、第1の目標データ量T1も、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行毎に変化し得る。
【0084】
また、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出する方法は、式(1)に示した例に限られない。例えば、式(1)におけるA1の代わりに、画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに依存して変化するパラメータを用いて、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出してもよい。
【0085】
(第2の暫定圧縮パラメータ生成処理)
次に、図2図3および図7を参照して、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理について説明する。図7は、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。第2の暫定圧縮パラメータ生成処理は、第2の圧縮パラメータ生成部53Bによって実行される。第2の暫定圧縮パラメータ生成処理では、まず、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、記憶部37に記憶された、1つの画像データから生成された複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値V2を取得する(ステップS41)。
【0086】
次に、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、記憶部52の記憶容量の情報を取得し、記憶部52の記憶容量に基づいて、第2の目標データ量T2を規定する(ステップS42)。第2の目標データ量T2は、例えば、記憶部52の記憶容量から所定の値を減じたり、記憶部52の記憶容量に1未満の所定の係数を掛けたりすることによって、記憶部52の記憶容量よりも小さくなるように規定される。
【0087】
次に、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータである第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成する(ステップS43)。本実施の形態では、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、最大値V2と第2の目標データ量T2との差に応じて、第2の暫定圧縮パラメータQ2の大きさを変える。具体的には、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、下記の式(2)によって、第2の暫定圧縮パラメータQ2を算出する。
【0088】
Q2(n)=Q3(n−1)+A2*(V2−T2)/T2 …(2)
なお、式(2)において、Q2(n)は、図5に示したプロセッサ3における画像データ処理の一連の処理がn回(nは1以上の整数)実行される場合に、n回目に算出される第2の暫定圧縮パラメータQ2を表している。また、前述のように、Q3(n−1)は、n−1回目に選択された選択パラメータQ3を表している。第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、記憶部37からQ3(n−1)を読み出して、Q2(n)を算出する。また、A2は、正の定数である。
【0089】
なお、1回目に算出される第2の暫定圧縮パラメータQ2(1)は、式(2)におけるQ3(n−1)の代わりに、所定の定数を用いて算出される。所定の定数は、初期値Qiであってもよい。
【0090】
式(2)を用いて算出した第2の暫定圧縮パラメータQ2を用いると、最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理を行うことが可能になる理由は、以下の通りである。すなわち、最大値V2は、Q3(n−1)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値に相当する。式(2)から理解されるように、最大値V2が第2の目標データ量T2よりも大きい場合には、Q2(n)はQ3(n−1)よりも大きくなり、その結果、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値は小さくなる。ここで、A2の値を適切に選択すると、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値を第2の目標データ量T2以下にすることが可能である。本実施の形態では、このようにして、最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータである第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成する。
【0091】
なお、式(2)から理解されるように、最大値V2が第2の目標データ量T2よりも小さい場合には、Q2(n)はQ3(n−1)よりも小さくなり、その結果、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値は大きくなる。A2の値は、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が大きくなりすぎないような値が選択される。また、式(2)から理解されるように、最大値V2が第2の目標データ量T2と等しい場合には、Q2(n)はQ3(n−1)と等しくなる。
【0092】
第2の暫定圧縮パラメータ生成処理では、次に、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、圧縮パラメータ判断部53Cに対して、第2の暫定圧縮パラメータQ2を出力する(ステップS44)。これにより、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理が終了する。
【0093】
なお、図7には、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行毎に、第2の目標データ量T2を規定する例を示している。本実施の形態では、第2の目標データ量T2を規定する記憶部52の記憶容量は一定である。そのため、本実施の形態では、第2の目標データ量T2を規定する処理(ステップS42)を省略してもよい。一方、後で説明する第3の実施の形態のように、記憶部52の記憶容量が変化する場合には、第2の目標データ量T2も、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行毎に変化し得る。
【0094】
(選択パラメータの選択処理)
次に、図3を参照して、選択パラメータの選択処理について説明する。選択パラメータの選択処理は、圧縮パラメータ判断部53Cによって実行される。選択パラメータの選択処理では、まず、圧縮パラメータ判断部53Cは、第1の圧縮パラメータ生成部53Aによって生成された第1の暫定圧縮パラメータQ1と、第2の圧縮パラメータ生成部53Bによって生成された第2の暫定圧縮パラメータQ2を比較する。次に、圧縮パラメータ判断部53Cは、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2のうち、圧縮後のデータ量がより小さくなるパラメータを選択パラメータQ3として選択する。次に、圧縮パラメータ判断部53Cは、記憶部37と、内視鏡2に設けられた記憶部52に対して、選択パラメータQ3を出力する。これにより、選択パラメータの選択処理が終了する。
【0095】
前述のように、本実施の形態では、圧縮パラメータQは、その値が大きくなるに従って圧縮後のデータ量が小さくなるように規定されている。従って、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2の各々の値が大きくなるに従って、圧縮後のデータ量は小さくなる。そのため、本実施の形態では、圧縮パラメータ判断部53Cにおける比較は、第1の暫定圧縮パラメータQ1の値と第2の暫定圧縮パラメータQ2の値を比較することによって行われる。また、本実施の形態では、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2のうち、値が大きい方のパラメータが選択パラメータQ3として選択される。
【0096】
(作用および効果)
次に、本実施の形態に係わる内視鏡装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、前述のように、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2とを比較して、圧縮後のデータ量がより小さくなるパラメータを選択パラメータQ3として選択する。圧縮処理制御部51は、選択パラメータQ3の選択後に、圧縮パラメータQを選択パラメータQ3で更新し、更新した圧縮パラメータQを用いて圧縮処理を行う。これにより、本実施の形態によれば、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2のいずれが選択パラメータQ3として選択された場合であっても、前記算出データ量が第1の目標データ量T1以下になり、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理することができる。その結果、本実施の形態によれば、圧縮された画像データのデータ量が転送可能データ量以下になり、且つ複数の圧縮データの各々のデータ量が記憶部の記憶容量以下になるように圧縮処理をすることができる。これにより、本実施の形態によれば、画像データの伝送が途絶することを防止することができる。
【0097】
また、本実施の形態では、算出データ量V1と第1の目標データ量T1との差に応じて、第1の暫定圧縮パラメータQ1の大きさを変え、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値V2と第2の目標データ量T2との差に応じて、第2の暫定圧縮パラメータQ2の大きさを変える。より具体的に説明すると、式(1)に示したように、差V1―T1の絶対値が大きくなるに従ってQ1(n)とQ3(n−1)との差が大きくなるようにQ1(n)を算出すると共に、差V1―T1が正の値であればQ1(n)がQ3(n−1)よりも大きくなり、差V1―T1が負の値であればQ1(n)がQ3(n−1)よりも小さくなるようにQ1(n)を算出する。同様に、式(2)に示したように、差V2―T2の絶対値が大きくなるに従ってQ2(n)とQ3(n−1)との差が大きくなるようにQ2(n)を算出すると共に、差V2―T2が正の値であればQ2(n)がQ3(n−1)よりも大きくなり、差V2―T2が負の値であればQ2(n)がQ3(n−1)よりも小さくなるようにQ2(n)を算出する。
【0098】
本実施の形態によれば、上述のように第1および第2の暫定圧縮パラメータQ1,Q2を算出することにより、算出データ量V1を第1の目標データ量T1に近づけることができると共に、最大値V2を第2の目標データ量T2に近づけることができる。図9は、最大値V2の推移を模式的に示す説明図である。図9において横軸は時間を表し、縦軸は最大値V2の大きさを表している。最大値V2は、所定の間隔で複数回算出される。図9では、順に算出された最大値V21,V22,V23,V24,V25,V26,V27を、矢印で結んでいる。最大値V21は、初期値Qiを圧縮パラメータQとして用いて圧縮処理した場合の最大値V2である。最大値V22〜V27は、本実施の形態における圧縮パラメータ演算処理を行って生成された選択パラメータQ3を圧縮パラメータQとして用いて圧縮処理した場合の最大値V2である。
【0099】
図9に示したように、最大値V2が第2の目標データ量T2よりも小さい場合には次回の最大値V2はより大きくなり、最大値V2が第2の目標データ量T2よりも大きい場合には次回の最大値V2はより小さくなる。式(2)におけるA2を適切に選択することにより、最大値V2は、次第に、第2の目標データ量T2に近づく。
【0100】
なお、図9には、初期値Qiを比較的大きく設定した場合の例を示している。そのため、図9に示したように、最大値V21は、最大値V22〜V27よりも小さくなる。また、最大値V23は、その大きさが、記憶部52の記憶容量の大きさMmaxよりも大きくなった場合の例を示している。この場合、圧縮データを保存することができなくなるため、画像データの伝送が途絶する。画像データの伝送が途絶した場合には、例えば、ビデオ出力部34(図2参照)は、前回伝送に成功した画像データをモニタ4(図1参照)に表示する。
【0101】
図9を参照して説明した内容は、算出データ量V1および第1の目標データ量T1にも当てはまる。すなわち、式(1)におけるA1を適切に選択することにより、算出データ量V1は、次第に、第1の目標データ量T1に近づく。
【0102】
また、本実施の形態では、圧縮パラメータ演算部53は、プロセッサ3に設けられている。これにより、本実施の形態によれば、圧縮パラメータ演算部53が内視鏡2に設けられている場合に比べて、内視鏡2の消費電力を低減することができる。
【0103】
また、本実施の形態では、第1の目標データ量T1を転送可能データ量のみに基づいて規定し、式(1)におけるA1を定数とした場合には、画像データを解析することなく、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出することができる。これにより、本実施の形態によれば、第1の暫定圧縮パラメータQ1の算出処理が簡単になると共に、画像データ解析部が不要になり、その結果、圧縮パラメータに関する演算量を少なくすることができる。一方、第1の目標データ量T1を、転送可能データ量に加えて、画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに基づいて規定し、A1の代わりに、画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに依存して変化するパラメータを用いて、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出した場合には、状況の変化に応じて柔軟に圧縮パラメータを変化させることができる。
【0104】
なお、本実施の形態では、N回目の内視鏡2における画像データ処理(図4参照)では、基本的に、n−1回目のプロセッサ3における画像データ処理(図5参照)において選択された選択パラメータQ3(n−1)が用いられる。すなわち、N回目の内視鏡2における画像データ処理では、圧縮処理制御部51は、記憶部52から選択パラメータQ3(n−1)を取得し、取得した選択パラメータQ3(n−1)を、新たな圧縮パラメータQとする。しかし、例えば、無線通信の失敗等によって、プロセッサ3からの情報を一時的に受信することができなくなり、N回目の内視鏡2における画像データ処理の実行時に、Q3(n−1)を受信することができない場合がある。この場合には、圧縮処理制御部51は、記憶部52から選択パラメータQ3(n−1)を取得することができない。
【0105】
これに対し、本実施の形態では、記憶部52が選択パラメータQ3を記憶することができるように構成されている。本実施の形態では、N回目の内視鏡2における画像データ処理において、圧縮処理制御部51が選択パラメータQ3(n−1)を取得することができない場合には、圧縮処理制御部51は、選択パラメータQ3(n−1)よりも前に選択された選択パラメータQ3(m)であって、記憶部52に記憶された選択パラメータQ3(m)を取得する。なお、mは、1以上n−2以下の整数であって、n−1に最も近い整数である。これにより、本実施の形態によれば、N回目の内視鏡2における画像データ処理において、Q3(n−1)を取得することができない場合であっても、圧縮パラメータQを選択パラメータQ3(m)で更新することができる。
【0106】
また、本実施の形態では、1つの画像データに含まれる全ての単位領域に対して、同じ圧縮パラメータQを用いて圧縮処理を行っている。しかし、本実施の形態に係わる内視鏡装置1は、複数の画像データに対して同じ圧縮パラメータQを用いて圧縮処理を行うように構成されていてもよい。この場合には、1つの画像データに対する圧縮処理(図4のステップS15)と信号処理部33における画像処理(図5のステップS23)が複数回行われる度に、選択パラメータQ3を取得する処理(図4のステップS12)、圧縮パラメータ演算処理(図5のステップS24)および選択パラメータQ3を送信する処理(図5のステップS25)が1回行われる。
【0107】
[第2の実施の形態]
次に、図10を参照して、本発明の第2の実施の形態に係わるワイヤレス内視鏡装置について説明する。図10は、内視鏡2、プロセッサ3および画像圧縮装置5の構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態では、画像圧縮装置5の全体が、内視鏡2に設けられている。すなわち、本実施の形態では、画像圧縮装置5の圧縮処理制御部51および記憶部52に加えて、画像圧縮装置5の圧縮パラメータ演算部53も、内視鏡2に設けられている。
【0108】
本実施の形態における圧縮パラメータ演算部53の構成は、第1の実施の形態における図3に示した構成と同じである。図3に示したように、圧縮パラメータ演算部53は、第1の圧縮パラメータ生成部53Aと、第2の圧縮パラメータ生成部53Bと、圧縮パラメータ判断部53Cとを有している。
【0109】
本実施の形態では、第1の圧縮パラメータ生成部53Aは、記憶部52に記憶された複数の圧縮データの各々のデータ量と、プロセッサ3の転送可能データ量算出部35が算出する転送可能データ量を取得することができるように構成されている。また、第2の圧縮パラメータ生成部53Bは、記憶部52に記憶された複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値を取得することができるように構成されている。また、圧縮パラメータ判断部53Cは、選択パラメータQ3を、直接、圧縮処理制御部51に出力するように構成されている。
【0110】
本実施の形態におけるバッテリ25は、電源部として、圧縮パラメータ演算部53に対して電力を供給することができるように構成されている。
【0111】
次に、図10および図11を参照して、本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理手順について説明する。図11は、内視鏡2における画像データ処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理手順は、圧縮処理制御部51おける圧縮処理、第1の圧縮パラメータ生成部53Aにおける第1の暫定圧縮パラメータQ1の生成処理、第2の圧縮パラメータ生成部53Bにおける第2の暫定圧縮パラメータQ2の生成処理、および圧縮パラメータ判断部53Cにおける選択パラメータQ3の選択処理を含んでいる。
【0112】
本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理は、内視鏡制御部22、圧縮処理制御部51および圧縮パラメータ演算部53によって実行される。本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理手順は、複数の圧縮データを送信する処理(ステップS16)までは、第1の実施の形態における図4に示した手順と同じである。本実施の形態では、次に、圧縮パラメータに関する一連の演算を行って選択パラメータを生成する、圧縮パラメータ演算処理を行う(ステップS17)。ステップS17の内容は、第1の実施の形態における図5に示したステップS24の内容と同様である。次に、圧縮パラメータ演算部53は、圧縮処理制御部51に対して、選択パラメータを出力する処理を行う(ステップS18)。次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されていない場合には、ステップS11に戻り、上記操作信号が内視鏡制御部22に入力された場合には、内視鏡2における画像データ処理を終了する。
【0113】
次に、図10および図12を参照して、本実施の形態のプロセッサ3における画像データ処理手順について説明する。図12は、プロセッサ3における画像データ処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態のプロセッサ3における画像データ処理は、プロセッサ制御部31によって実行される。本実施の形態のプロセッサ3における画像データ処理手順は、基本的には、第1の実施の形態における図5に示した手順と同じである。ただし、本実施の形態では、図5に示したステップS24,S25が実行されない。すなわち、複数の圧縮データに所定の画像処理を行う処理(ステップS23)を実行した後、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されていない場合には、ステップS21に戻り、上記操作信号がプロセッサ制御部31に入力された場合には、プロセッサ3における画像データ処理を終了する。
【0114】
次に、本実施の形態に係わる内視鏡装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、圧縮パラメータ判断部53Cは、選択パラメータQ3を、直接、圧縮処理制御部51に出力するように構成されている。これにより、本実施の形態によれば、例えば、無線通信の失敗等によって、プロセッサ3からの情報を一時的に受信することができなくなった場合であっても、圧縮パラメータQを選択パラメータQ3で更新することができる。なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、記憶部52が選択パラメータQ3を記憶することができるように構成されていてもよい。この場合、圧縮パラメータ判断部53Cは、選択パラメータQ3を記憶部52にも出力する。
【0115】
また、図11および図12に示した例では、1つの画像データに含まれる全ての単位領域に対して、同じ圧縮パラメータQを用いて圧縮処理を行っている。しかし、本実施の形態に係わる内視鏡装置1は、1つの画像データに含まれる1つ以上の単位領域毎に異なる圧縮パラメータQを用いて圧縮処理を行うように構成されていてもよい。この場合、1つ以上の単位領域に対する圧縮処理(図11のステップS15)、圧縮データを送信する処理(図11のステップS16)、圧縮パラメータ演算処理(図11のステップS17)および選択パラメータを送信する処理(図11のステップS18)を複数回行って、1つの画像データに対する圧縮処理を完了させてもよい。
【0116】
本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した、圧縮パラメータ演算部53がプロセッサ3に設けられていることによる効果は得られない。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0117】
[第3の実施の形態]
次に、図13を参照して、本発明の第2の実施の形態に係わるワイヤレス内視鏡装置について説明する。図13は、内視鏡2、プロセッサ3および画像圧縮装置5の構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態では、画像圧縮装置5の記憶部52は、それぞれ一定の記憶容量を有する複数の部分を含んでいる。図13には、記憶部52が、複数の部分として、第1の部分52Aおよび第2の部分52Bを含む場合の例を示している。第1および第2の部分52A,52Bは、それぞれ、RAM等の書き換え可能な記憶素子によって構成されている。第1の部分52Aの記憶容量と第2の部分52Bの記憶容量は、同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0118】
記憶部52の記憶容量は、第1の部分52Aの記憶容量と第2の部分52Bの記憶容量の合計である。本実施の形態では、第1の部分52Aと第2の部分52Bの各々の稼働と休止を制御することが可能である。第1の部分52Aと第2の部分52Bの両方を稼働させた場合には、記憶部52の記憶容量は、第1の部分52Aの記憶容量と第2の部分52Bの記憶容量の合計になる。また、第1の部分52Aと第2の部分52Bの一方を休止させ、他方を稼働させた場合には、記憶部52の記憶容量は、稼働させた方の記憶容量と等しくなる。このように、本実施の形態では、記憶部52の記憶容量は、変更可能である。
【0119】
記憶部52の記憶容量が大きいほど、記憶部52に保存可能な圧縮データ量のデータ量は大きくなるが、内視鏡2の消費電力と発熱量が増加する。従って、圧縮データ量のデータ量が小さい場合には、記憶部52の一部を休止させて、内視鏡2の消費電力と発熱量を抑制することが好ましい。本実施の形態では、圧縮データ量のデータ量に応じて、第1の部分52Aと第2の部分52Bの各々の稼働と休止を制御することにより、記憶部52の記憶容量を変更することができる。
【0120】
第1の部分52Aと第2の部分52Bの各々の稼働と休止の制御は、圧縮データ量のデータ量に基づいて行われてもよい。あるいは、上記の制御は、第1および第2の暫定圧縮パラメータQ1,Q2に基づいて行われてもよい。すなわち、複数の圧縮データの各々のデータ量の最大値V2が、記憶部52の記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量T2よりも大きくなると、圧縮データを記憶部52に保存することができなくなる可能性がある。この可能性は、最大値V2と第2の目標データ量T2の差が大きくなるに従って、すなわち第2の暫定圧縮パラメータQ2が大きくなるに従って高くなる。従って、例えば、第2の暫定圧縮パラメータQ2が第1の暫定圧縮パラメータQ1よりも大きいか、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2との差が所定の閾値以下になった場合には、圧縮データを記憶部52に記憶できなくなる可能性が高くなると推定して、記憶部52の記憶容量が大きくなるように、第1の部分52Aと第2の部分52Bの両方を稼働させる。上記の場合以外の場合には、第1の部分52Aと第2の部分52Bの一方を休止させる。これにより、本実施の形態によれば、圧縮データが記憶部52に保存することができなくなることを防止しながら、内視鏡2の消費電力と発熱量を抑制することができる。
【0121】
なお、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、画像圧縮装置5の全体が、内視鏡2に設けられていてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
【0122】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。例えば、本発明の内視鏡装置は、内視鏡とプロセッサとがユニバーサルケーブルで接続された構成の内視鏡装置であってもよい。この構成の内視鏡装置では、画像データを伝送する伝送経路は、その全体が有線の伝送経路によって構成されており、無線による伝送経路を含まない。
【0123】
また、本発明の画像圧縮装置は、内視鏡装置以外の外部の装置に画像データを送信するために用いられるように構成されていてもよい。この場合、画像データを伝送する伝送経路は、無線による伝送経路を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0124】
また、圧縮パラメータ演算部53は、内視鏡2とプロセッサ3の両方に設けられていてもよい。この場合、例えば、内視鏡2に設けられた圧縮パラメータ演算部53では、第1の目標データ量T1を転送可能データ量のみに基づいて規定し、式(1)におけるA1を定数として、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出し、プロセッサ3に設けられた圧縮パラメータ演算部53では、第1の目標データ量T1を、転送可能データ量に加えて、画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに基づいて規定し、A1の代わりに、画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに依存して変化するパラメータを用いて、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出してもよい。第2の暫定圧縮パラメータQ2は、内視鏡2に設けられた圧縮パラメータ演算部53とプロセッサ3に設けられた圧縮パラメータ演算部53のうちの一方において算出されてもよい。
【0125】
本出願は、2018年4月3日に日本国に出願された特願2018−71699号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
図1
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図4
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13