特許第6974614号(P6974614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974614β−ラクタマーゼ阻害剤の結晶形およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974614
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】β−ラクタマーゼ阻害剤の結晶形およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20211118BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C07D471/08CSP
   A61K31/439
   A61P31/04
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-529494(P2020-529494)
(86)(22)【出願日】2018年12月3日
(65)【公表番号】特表2021-504416(P2021-504416A)
(43)【公表日】2021年2月15日
(86)【国際出願番号】CN2018118864
(87)【国際公開番号】WO2019105479
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年7月2日
(31)【優先権主張番号】201711251386.3
(32)【優先日】2017年12月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512078616
【氏名又は名称】チールー ファーマシューティカル カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】リー チョン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チーカン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ゼット.ディング
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェイトン
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/206947(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0288051(US,A1)
【文献】 特表2015−526501(JP,A)
【文献】 特表2016−503000(JP,A)
【文献】 第十六改正 日本薬局方,2011年,pp.64-68,2070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/08
A61K 31/439
A61P 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)化合物のA結晶形であって、その粉末X線回折スペクトルは、16.053 ± 0.2°, 16.53 ± 0.2°, 18.501 ± 0.2°, 21.302 ± 0.2° , 21.778 ± 0.2°, 22.782 ± 0.2°, 25.742 ± 0.2° 及び 27.833 ± 0.2°といった2θ角に特徴的回折ピークを有することを特徴とする結晶形。
【化1】
【請求項2】
XRPDスペクトルは、以下の:
【表1】

示された通りである請求項に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項3】
示差走査熱量測定曲線は221.11±3℃に放熱ピークを有する請求項1又は2に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項4】
DSCスペクトルは、以下の:
【表2】

で示された通りである請求項に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項5】
熱重量分析曲線は194.61±3℃に重量減少が0.5689%に達する請求項1又は2に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項6】
TGAグラムは、以下の:
【表3】
で示された通りである請求項に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項7】
前記DVSパターンが、下記の図:
【表4】
に示されるとおりである、請求項1又は2に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項8】
式(I)化合物のA結晶形が、25℃80%RHで、0.2910%の吸湿増重を有する、請求項1又は2に記載の式(I)化合物のA結晶形。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される式(I)化合物:
【化2】
のA結晶形の製造方法であって、
(a)式(I)化合物を溶媒に入れた後、55〜60℃に加熱して完全に溶解させる工程、
(b)撹拌しながらゆっくり0℃に冷却する工程、
(c)10〜16時間撹拌して結晶を析出させる工程、
(d)ろ過し、吸引乾燥する工程を含み、
ここで、前記溶媒は純水である方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の式(I)化合物のA結晶形含む、細菌感染を治療するためのβ−ラクタマーゼ阻害剤。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の式(I)化合物含む、カルバペネマーゼ産生菌の感染を治療するためのβ−ラクタマーゼ阻害剤。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載の式(I)化合物のA結晶形含む、KPC−2型カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌、NDM−1カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌、又はOXA−181カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌の感染を治療するためのβ−ラクタマーゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は以下の優先権を要求する:
CN201711251386.3、出願日2017年12月1日。
【0002】
本発明は、新規なβ−ラクタマーゼ阻害剤に関し、具体的に、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を公開する。
【背景技術】
【0003】
細菌のβ−ラクタム系抗生物質に薬剤耐性が生じる機序はいくつかあるが、主に細菌がβ−ラクタム環を加水分解して断裂させた酵素を生成することで、抗生物質が抗菌活性を失う。また、細菌は選択的に抗生物質の作用標的を変えることができる。たとえば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が多剤耐性を有することは、新たなPBP2aの生成、PBP合成の増加、薬物の親和力の低下に関連する。β−ラクタマーゼは一部の酵素耐性β−ラクタム系抗生物質と迅速に結合し、薬物を形質膜外の隙間に滞らせ、作用標的に到達して抗菌作用を発揮することができないようにする。また、グラム陰性菌の外膜は一部のβ−ラクタム系抗生物質にとって透過しにくく、非特異的な低レベルの薬剤耐性が生じる。さらに、一部の細菌の形質膜に能動的な排出系が存在し、細菌はこれによって能動的に薬物を排出する。そのため、β−ラクタム系抗生物質とβ−ラクタマーゼ阻害剤の併用は臨床において最も有効な方法である。細菌は数種類のβ−ラクタマーゼを生成するが、そのアミノ酸およびヌクレオチドの配列によってA、B、C、Dの4つのクラスに分かれる。クラスA、BおよびDの酵素はセリンを活性部位として加水分解を触媒し、クラスBの酵素はその活性部位における一つまたは複数の金属原子によって開環させる。
【化1】
【0004】
初めての周知の高活性β−ラクタマーゼ阻害剤はクラブラン酸カリウムで、今まで、そのアモキシシリンの組み合わせは未だに市場でよく売れている。市場では、もう二つの重要なβ−ラクタマーゼ阻害剤はスルバクタムおよびタゾバクタムである。この三つの薬物の共通点はいずれも構造に高活性のβ−ラクタム環があり、阻害剤の活性部位である。この三つの薬物は市販では売れているが、その自信の抗菌スペクトルが狭い。これらはクラスAおよびDのβ−ラクタマーゼのみに対して作用効果があるが、クラスCおよびクラスAの酵素の中で非常に重要なKPC酵素にまったく効果がない。
【0005】
2015年2月に、FDAによって許可された新たなβ−ラクタマーゼ阻害剤はアビバクタム(NXL−104)である。当該薬物の構造に新規なジアザ二環が含まれ、上記三つの前世代のβ−ラクタマーゼ阻害剤よりも広い抗菌スペクトルを有する。WO2009133442、WO2009091856、WO2010126820、WO2012086241、WO2013030733、WO2013030735、WO2013149121、WO2013149136、WO2013180197、WO20140191268、WO2014141132、WO2014135931、WO2015063653、WO2015110885、US20140296526を含むβ−ラクタマーゼ阻害剤の特許では、大量のジアザ二環の新規な化合物が公開された。中では、MK−7655およびOP−0595の二つの新薬は臨床段階に入った。MK−7655はIII期臨床に、OP−0595はI期臨床に入った。OP−0595は体外活性が非常に良く、ロシェ製薬に所有されている。そのため、ジアザ二環系阻害剤はβ−ラクタマーゼ阻害剤の開発の一つの新たな方向になる。
【化2】
【発明の概要】
【0006】
式(I)化合物のA結晶形であって、その粉末X線回折スペクトルは、16.053±0.2°、16.53±0.2°、22.782±0.2°、25.742±0.2°といった2θ角に特徴的回折ピークを有することを特徴とする結晶形。
【化3】
【0007】
式(I)化合物のA結晶形であって、その粉末X線回折スペクトルは、16.053±0.2°、16.53±0.2°、18.501±0.2°、21.302±0.2°、21.778±0.2°、22.782±0.2°、25.742±0.2°、27.833±0.2°といった2θ角に特徴的回折ピークを有することを特徴とする結晶形。
【0008】
本発明の一部の形態において、上記A結晶形のXRPDスペクトルは図1で示された通りである。
【0009】
本発明の一部の形態において、上記A結晶形のXRPDスペクトルの解析データは表1の通りである。
【0010】
【表1】
【0011】
本発明の一部の形態において、上記A結晶形の示差走査熱量測定曲線は221.11±3℃に放熱ピークを有する。
【0012】
本発明の一部の形態において、上記A結晶形のDSCスペクトルは図2で示された通りである。
【0013】
DSCスペクトルから、221.11℃の近くに1つの放熱ピークを有することがわかる。
【0014】
本発明の一部の形態において、上記A結晶形の熱重量分析曲線は194.61±3℃に重量減少が0.5689%に達する。
【0015】
TGAグラフでは、194.61℃に加熱すると、重量が0.5689%減少し、200℃以降大きい重量減少が現れることが示される。A結晶形は結晶水または結晶溶媒を含まず、熱安定性が良い。
【0016】
DVSグラフは図4に示すように、結果から、25℃/80%RHにおいてA結晶形の吸湿増重が0.2910%で、やや吸湿性を有することが示される。
【0017】
また、本発明の式(I)化合物のA結晶形の製造方法であって、
(a)式(I)化合物を溶媒に入れた後、55〜60℃に加熱して完全に溶解させる工程、
(b)撹拌しながらゆっくり0℃に冷却する工程、
(c)10〜16時間撹拌して結晶を析出させる工程、
(d)ろ過し、吸引乾燥する工程を含み、
ここで、前記溶媒は純水である方法を提供する。
また、細菌感染を治療するβ−ラクタマーゼ阻害剤の製造における上記A結晶形または上記製造方法によって得られる結晶形の使用を提供する。
【0018】
技術効果
本発明の技術特徴は、主に、ジアザ二環に基づき、まったく新しいグアニジルオキシ基の側鎖を導入することにある。当該基はアミノ基と比べ、より多い水素結合の結合部位を有することで、より良い水溶性などの物理・化学的性質を有する。また、当該基のpKa=8.83はアミノ基のpKaに近く(たとえばリシンにおける末端側鎖のアミノ基のpKa=8.95)、従来のグアニジル基よりも遥かに小さいため(たとえばアルギニンのpKa=12.48)、化合物はOP−0595と同様の化学安定性を維持することができる。本発明によって提供される化合物の体内外活性実験における測定データからも、式(I)化合物はOP−0595よりも良い活性を有することが示される。本発明に記載の結晶形は、製造しやすい、安定性が良い、相転移しにくいといった技術的利点があり、後の薬物の生産および応用に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義と説明
別途に説明しない限り、本明細書で用いられる以下の用語および連語は以下の意味を含む。一つの特定の連語または用語は、特別に定義されたいない場合、不確定または不明瞭ではなく、普通の定義として理解されるべきである。本明細書で商品名が出た場合、相応の商品またはその活性成分を指す。
【0020】
本発明の中間体化合物は当業者に熟知の様々な合成方法によって製造するができ、以下挙げられた具体的な実施形態、ほかの化学合成方法と合わせた実施形態および当業者に熟知の同等の代替方法を含み、好適な実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の具体的な実施形態の化学反応は適切な溶媒で完成され、前記の溶媒は本発明の化学変化およびそれに必要な試薬と材料に適するべきである。本発明の化合物を得るため、当業者が既存の実施形態に基づいて合成工程または反応スキームを変更または選択することが必要であることもある。
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の何らの制限にもならない。
【0023】
本発明に使用されたすべての溶媒は市販品で、さらに精製せずにそのままで使用してもよい。
【0024】
本発明は下記略号を使用する。MWはマイクロ波を、r.t.は室温を、aqは水溶液を、DCMはジクロロメタンを、THFはテトラヒドロフランを、DMSOはジメチルスルホキシドを、NMPはN−メチルピロリドンを、EtOAcは酢酸エチルを、EtOHはエタノールを、MeOHはメタノールを、dioxaneはジオキサンを、HOAcは酢酸を、Bocはt−ブトキシカルボニル基を、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を、両者ともアミン保護基であり、Boc2Oはジカルボン酸ジ−t−ブチルを、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンを、TEAまたはEt3Nはトリエチルアミンを、BnNH2はベンジルアミンを、PMBNH2はp−メトキシベンジルアミンを、KOAcは酢酸カリウムを、NaOAcは酢酸ナトリウムを、Cs2CO3は炭酸セシウムを、K2CO3は炭酸カリウムを、NaHCO3は炭酸水素ナトリウムを、Na2SO4は硫酸ナトリウムを、pyridineはピリジンを、NaOHは水酸化ナトリウムを、TEAまたはEt3Nはトリエチルアミンを、NaHは水素化ナトリウムを、LiHMDSはリチウムヘキサメチルジシラジドを、i−PrMgBrはイソプロピルマグネシウムブロミドを、t−BuOKはカリウムt−ブトキシドを、t−BuONaはナトリウムt−ブトキシドを、Pd2(dba)3はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを、Pd(PPh34はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを、Pd(dppf)Cl2CH2Cl2は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド・ジクロロメタンを、Pd(OAc)2は酢酸パラジウムを、Pd(PPh32Cl2はビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロリドを、Pd(PPh33Clはトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリドを、Pd(OH)2は水酸化パラジウムを、キサントホスは4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンを、Xphosは2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニルを、BINAPは(±)−2,2’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルを、Xantphosは、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンを、Xphos−Pd−G1は(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル)[2−(2’−アミノエチルフェニル)]パラジウム(II)クロリドを、Xphos−PD−G2は(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル)[2−(2’−アミノ−1,1’−ビフェニル)]パラジウム(II)クロリドを、Xphos−Pd−G3は(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル)[2−(2’−アミノ−1,1’−ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネートを、I2はヨウ素単体を、LiClは塩化リチウムを、HClは塩酸を、maleic acidはマレイン酸を表す。
【0025】
化合物は人工的にまたはChemDraw(登録商標)ソフトによって名付けられ、市販化合物はメーカーのカタログの名称が使用された。
【0026】
本発明の装置と分析方法:
1.1 粉末X線回折(X−ray powder diffractometer、XRPD)
装置型式:ブルカーD8 advance X線回折装置
測定方法:約10〜20 mgのサンプルをXRPD検出に使用した
詳細なXRPDパラメーターは以下の通りである。
X線管:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
管電圧:40 kV、管電流:40 mA
発散スリット:0.60 mm
検出器スリット:10.50 mm
散乱防止スリット:7.10 mm
走査範囲:4〜40度
ステップ幅:0.02度
ステップ時間:0.12秒
サンプルプレート回転数:15 rpm
1.2 示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimeter、DSC)
装置型式:TA Q2000示差走査熱量計
測定方法:サンプル(〜1 mg)をDSCアルミニウムパン内に置いて測定し、50 mL/min N2の条件において、10℃/minの升温速度で、サンプルを30℃から300℃に加熱する。
【0027】
1.3 熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)
装置型式:TA Q5000熱重量分析装置
測定方法:サンプル(2〜5 mg)をTGA白金パン内に置いて測定し、25 mL/min N2の条件において、10℃/minの升温速度で、サンプルを室温から210℃まで加熱する。
【0028】
1.4 動的水蒸気吸着測定(Dynamic Vapor Sorption、DVS)
装置型式:SMS DVS Advantage動的水蒸気吸着測定装置
測定条件:サンプル(10〜15 mg)をDVSサンプルパンに取って測定する。
【0029】
DVSパラメーターの詳細は以下の通りである。
【0030】
温度:25℃
平衡化:dm/dt=0.01 %/min(最短:10 min、最長:180 min)
乾燥:0% RHで120 min乾燥する
RH(%)測定刻み幅:10%
RH(%)測定範囲:0% − 90% − 0%
吸湿性評価の分類は以下の通りである。
【表2-1】
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は式(I)化合物のA結晶形のCu−Kα線のXRPDスペクトルである。
図2図2は式(I)化合物のA結晶形のDSCスペクトルである。
図3図3は式(I)化合物のA結晶形のTGAグラフである。
図4図4は式(I)化合物のA結晶形のDVSグラフである。
図5図5は式(I)KPC型β−ラクタマーゼを生成する肺炎桿菌に対する化合物の実験結果のグラフである。
【0032】
具体的な実施形態
以下、本発明の内容がより良く理解されるように、具体的な実施例と合わせてさらに説明するが、具体的な実施形態は本発明の内容に対する制限ではない。
【実施例】
【0033】
実施例1 式(I)化合物の製造
【化4】


工程1:
原料1−A(50 g、26.62 mmol)、N−ヒドロキシフタルイミド(8.69 g、53.24 mmol)およびトリエチルアミン(6.73 g、66.55 mmol)を100 mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、50℃に加熱し、16時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、撹拌しながら100 mLの氷水に注ぎ、吸引ろ過し、固体を10 mLの冷水で3回洗浄し、乾燥して化合物1−Bを得た。
【0034】
工程2:
化合物1−B(6.0 g、17.03 mmol)を400 mLのジクロロメタンおよび150 mLのメタノールに懸濁させ、それに85%水加ヒドラジン(1.71 g、34.06 mmol、1.66 mL)を入れた。反応液を25℃で18時間撹拌し、ろ過し、ケーキを50 mLの酢酸エチルで洗浄し、ろ液を乾燥するまで濃縮し、残留物を40 mLの石油エーテル/酢酸酢酸(3:1)でかき混ぜ、ろ過し、かき混ぜを2回繰り返し、ろ液を合併して濃縮し、化合物1−Cを得た。
【0035】
工程3:
化合物1−C(980 mg、10.64 mmol)を50 mLのジクロロメタンに溶解させ、−10℃に冷却し、注射器でトリエチルアミン(1.08 g、10.64 mmol、1.47 mL)を入れ、さらにジカルボン酸ジ−t−ブチル(2.32 g、10.64 mmol)の30 mLジクロロメタン溶液を滴下した。反応液をゆっくり室温(25℃)に昇温させ、20時間撹拌した。濃縮し、残留物をシリカゲルカラムによって精製し(酢酸エチル/石油エーテル混合液、勾配30%〜50%)、化合物1−Dを得た。
【0036】
工程4:
化合物1−D(300 mg、1.56 mmol)、(2S,5R)−6−ベントキシ−7−オキシ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸(431.23 mg、1.56 mmol)(合成方法は特許WO2012172368A1を参照する)、EDCI(388.77 mg、2.03 mmol)、HOBt(274.02 mg、2.03 mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(201.62 mg、1.56 mmol、272.46 μL)を順に20 mLのジクロロメタンに入れた。反応液を室温(25℃)で20時間撹拌した後、30 mLのジクロロメタンを入れて希釈し、15 mLの水で2回洗浄し、15 mLの食塩水で1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液を乾燥するまで濃縮し、粗製品をシリカゲルカラムによって精製し(酢酸エチル/石油エーテル混合液、勾配30%〜50%)、化合物1−Eを得た。
【0037】
工程5:
化合物1−E(760.00 mg、1.69 mmol)をジクロロメタン(7.00 mL)に溶解させ、20℃でトリフルオロ酢酸(3.08 g、27.01 mmol、2.00 mL)を入れて3時間撹拌し、反応混合物を濃縮し、酢酸エチル(50mL)で希釈して飽和炭酸水素ナトリウム(50 mL)で洗浄し、さらに飽和食塩水(50mL)で1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して濃縮し、化合物1−Fを得た。
【0038】
工程6:
化合物1−F (200.00 mg、570.83 μmol)および(E)−(ブトキシカルボニル)アミノ(メチレン)カルバミン酸t−ブチル(177.16 mg、570.83μmol)をアセトニトリル(2 mL)に溶解させて20℃で16時間撹拌し、反応完了後、濃縮し、残留物に対してシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=0〜2/1勾配溶離)、化合物1−Gを得た。
【0039】
工程7:
化合物1−G(300.00 mg、506.21 μmol)をイソプロパノール(3.00 mL)/水(3.00 mL)に溶解させ、湿潤パラジウム炭素(50.00 mg、10%)を入れ、混合物を水素ガスの雰囲気において18〜28℃で2時間撹拌し、ろ過し、化合物1−Hのイソプロパノール/水のろ液を得たが、そのまま次の工程の反応に使用した。
【0040】
工程8:
化合物1−H(250.00 mg、497.49 μmol)のイソプロパノール(3.00 mL)/水(3.00 mL)に三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体(69.24 mg、497.49 μmol)およびトリエチルアミン(10.07 mg、99.50 μmol、13.79 μL)を入れ、この混合物を18〜28℃で16時間撹拌した。反応完了後、酢酸エチル/石油エーテル(2/1、6 mL、2回)で洗浄し、水相を収集して硫酸水素テトラブチルアンモニウム(168.43 mg、496.07 μmol)を入れて室温で0.5時間撹拌した後、酢酸エチル(15 mL、2回)で抽出し、抽出液を飽和食塩水(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、化合物1−Iを得た。
【0041】
工程9:
化合物1−I(200.00 mg、242.71 μmol)を無水ジクロロメタン(2.00 mL)に溶解させ、窒素ガスの雰囲気の保護下において0に冷却してトリフルオロ酢酸(1.54 g、13.51 mmol、1.00 mL)を入れて2時間撹拌し、さらに25℃で4時間撹拌した後、空気中で濃縮し、残留物をアセトニトリル(2 mL)で3回かき混ぜ、得られた粗製品を高速液体クロマトグラフィーによって分離し、式(I)化合物を得た。
【0042】
1H NMR (400 MHz, D2O) 4.15 (s, 1H), 4.10 − 4.08 (m, 2H), 4.03 − 3.99 (m, 3H), 3.26 (d, J = 12Hz, 1H), 3.09 (d, J = 12Hz, 1H), 2.13 − 1.99 (m, 2H), 1.94 - 1.74 (m, 2H); LCMS (ESI) m/z: 383.1(M+1)。
【0043】
実施例2 式(I)化合物のA結晶形の製造
1.4 kgの式(I)化合物を7 Lの純水で55〜60℃に加熱して完全に溶解させた後、撹拌しながらゆっくり0℃に冷却し、12時間撹拌して結晶を析出させた。ろ過して吸引乾燥し、式(I)化合物の結晶Aを得た。
【0044】
実施例3 式(I)化合物のA結晶形の吸湿性の研究
実施材料:式(I)化合物のA結晶形
実験方法:サンプル(10〜15 mg)をDVSサンプルパンに取って測定し、動的水蒸気吸着測定(Dynamic Vapor Sorption、DVS)方法によって分析した。
【0045】
実験結果:吸湿増重 ΔW=0.2910%
実験結論:式(I)化合物のA結晶形は吸湿性がややあり、XRPDでは結晶形に変化がなかった。
【0046】
実施例4 式(I)化合物の多形の製造
実施材料:式(I)化合物。
実験方法:
1.約35 mgの式(I)化合物を3つ秤量し、それぞれ1.5 mLホウケイ酸ガラス瓶に置き、200μLの溶媒(溶媒プランは表2を参照する)を入れ、超音波で均一に混合した後、恒温シェーカーにセットし、40℃で光を避けて2日撹拌し、迅速に遠心し、得られた固体に対してXRPD測定を行い(湿潤品)、さらに30℃の真空乾燥器に置いて約15時間乾燥し、得られた乾燥サンプルに対してXRPD測定を行った(乾燥品)。
【0047】
【表2-2】
2.約35 mgの式(I)化合物を3つ秤量し、それぞれ1.5 mLホウケイ酸ガラス瓶に置き、600μLの溶媒(溶媒プランは表3を参照する)を入れ、超音波で均一に混合した後、恒温シェーカーにセットし、40℃で光を避けて2日撹拌した後、サンプルをドラフトチャンバーに置いて乾燥するまで揮発させ、得られたサンプルに対してXRPD測定を行った(湿潤品)。続いて、サンプルを30℃の真空乾燥器に置いて約15時間乾燥し、得られた乾燥サンプルに対してXRPD測定を行った(乾燥品)。
【0048】
【表3】
【0049】
実験結果:表2と表3に示す。
実験結論:懸濁および揮発のいずれも新たな結晶形が見られず、式(I)化合物のA結晶形は安定している。
【0050】
実施例5 式(I)化合物のA結晶形の溶解度試験
実験材料:式(I)化合物のA結晶形
実験方法:約2.0 mgのサンプルを秤量して1.5 mLのホウケイ酸ガラス瓶に置き、それぞれピペットで以下のような溶媒を入れ、適切に超音波で溶解させた。当該測定は室温で行われ、肉眼で溶解の様子を判断した。
【0051】
実験結果:表5に示す。
【0052】
実験結論:式(I)化合物のA結晶形は様々な有機溶媒における溶解度が低く、水およびアルコール系溶媒にある程度の溶解性がある。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
実験例6 中国臨床分離菌の体外協同抑制濃度(SIC)の測定方法
実験目的:
主要カルバペネマーゼの活性に対する式(I)化合物の抑制作用を調査する。
【0056】
実験方法:
ブロス微量希釈法によって、臨床で分離されたカルバペネマーゼ産生菌株に対する式(I)化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。
【0057】
1.薬物感受性試験:2016年版の米国臨床検査標準協議会(CLSI)の文献に記載の抗微生物薬物感受性試験の方法に従って行い、微量ブロス希釈法によって通常の抗菌薬の臨床で分離された細菌のMICを測定した。
【0058】
2.菌株:KPC−2型カルバペネマーゼ産生菌株およびNDM−1産生菌株8株ずつ、OXA型カルバペネマーゼ産生菌株6株。全ての菌株はいずれも臨床で分離された肺炎桿菌である。
【0059】
3.濃度:抗菌薬物の濃度範囲は0.06μg/mL〜128μg/mLであり、計12の濃度で、酵素阻害剤の濃度は4μg/mLに固定した。
【0060】
4.品質管理菌株:薬物感受性試験の品質管理菌株は大腸菌ATCC 25922およびATCC 35218を含む。
【0061】
実験結果:
【表6】
結論:
式(I)化合物と抗生物質の組み合わせは、KPC−2、NDM−1またはOXA−181型カルバペネマーゼを産生する臨床で分離された肺炎桿菌のいずれにも強い抗菌作用を有する。特にNDM−1型カルバペネマーゼの細菌に対して、式(I)化合物の抑制作用は顕著にアビバクタムよりも優れた。
【0062】
実験例7 マウス肺部感染モデル
実験目的:
本試験の目的は、式(I)化合物がマウス肺部感染モデルにおいて有効かどうか考察し、さらにその薬物効果が参照化合物OP−0595に対して顕著な優勢があるかどうか評価することにある。
【0063】
実験材料:
約7週齢の雌CD−1マウスで、体重は26〜28グラム程度であった。シクロホスファミドは感染の4日前に150 mg/kg、1日前にさらに100 mg/kg注射した。感染させた細菌は肺炎桿菌(ATCC BAA−1705、KPC−2)であった。式(I)化合物、参照化合物OP−0595はいずれも実験室で合成された。
【0064】
実験手順:
雌CD−1マウスを点鼻で肺炎桿菌に感染させ、各マウスは鼻腔から50μLの菌液を滴下し、投与量は各マウスに3.14E+07CFUで、感染後2h、4h、6hおよび8hで、各群のマウスに腹腔注射でそれぞれ相応する化合物または併用化合物を投与して治療した。
【0065】
感染後10hで、1、2および3群目のマウスを安楽死させた後、肺を取って10 mLの無菌生理食塩水を入れた50 mL遠心管に入れ、湿潤氷の上に移してBSL−2実験室でCFU計数を行い、感染後20hで、4、5および6群目のマウスを安楽死させ、処理手順は前記と同様であった。
【0066】
肺をIKA T10ホモジナイザーで研磨し(最高回転数20S、1回繰返し)、均質化液を勾配希釈した後、トリプトンソイブロス寒天プレートに接種し、37度のインキュベーターに入れて細菌培養を行い、24h後、プレートを取り出し、プレートにおける各希釈勾配の均質化液から生えた単一集落数を数え、そしてそれから各マウスの肺部の菌担持量を計算した。
【0067】
実験プラン:
【表7】
実験結果:
表7の実験プランに従い、薬物効果の結果は図5を参照する。薬物効果の結果図から、二つの異なる投与量では、式(I)化合物群のマウスモデルにおける体内薬物効果は参照化合物OP−0595群と比べ、菌担持量が0.5〜1.5log低下した。式(I)化合物の薬物効果は顕著に参照化合物OP−0595よりも優れた。
体外抗菌、体外酵素抑制実験、体内薬物効果実験は、異なる面から実施例を評価し、実施例における式(I)化合物はいずれも参照化合物OP−0595に対する顕著な優勢を示した。日々深刻になっている薬剤耐性菌の感染に対抗する臨床新薬が切望されている現状において、実施例における化合物はこの問題を解決する非常に将来性のある開発可能な薬物である。現在注目されている参照化合物OP−0595と比べ、式(I)化合物が将来の臨床においてより優れた臨床効果を示すことが予想される。
図1
図2
図3
図4
図5