(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974628
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】フラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 11/00 20060101AFI20211118BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20211118BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
H01B11/00 G
H01B7/08
H01B11/00 J
H01B13/00 525D
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-552080(P2020-552080)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(65)【公表番号】特表2021-508409(P2021-508409A)
(43)【公表日】2021年3月4日
(86)【国際出願番号】CN2018112611
(87)【国際公開番号】WO2019114441
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年6月15日
(31)【優先権主張番号】201711356575.7
(32)【優先日】2017年12月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520215061
【氏名又は名称】▲ボ▼州聯滔電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOZHOU LANTO ELECTRONIC LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張傑
(72)【発明者】
【氏名】李騰飛
(72)【発明者】
【氏名】李揚
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−117726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/00
H01B 7/08
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数対の差動信号導体と、接地導体と、絶縁シースと、被覆層と、金属導電部材と、を備え、
前記接地導体は、各隣接する2対の前記差動信号導体の間に設けられ、
前記絶縁シースは、前記複数対の差動信号導体および前記接地導体の外側を包み、
前記被覆層は、前記絶縁シースの外側を被覆し、
前記絶縁シースに開孔部が設けられ、前記接地導体は、前記開孔部内に露出し、
前記金属導電部材の少なくとも一部は、前記開孔部内に収容され、前記接地導体と電気的に接触し、
前記被覆層は絶縁層であり、
前記接地導体の数は、少なくとも2つであり、前記少なくとも2つの接地導体は、前記金属導電部材を介して短絡されている、
フラットケーブル。
【請求項2】
前記金属導電部材は、金属片、銀ペーストまたは錫ペーストである、
請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記金属導電部材は、溶接、溶着、塗布または焼付凝固で前記接地導体の上に固着される、
請求項1または2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記金属導電部材は、一体型構造または別体型構造である、
請求項1または2に記載のフラットケーブル。
【請求項5】
前記導電性シールド層は、銅箔、アルミ箔、導電性布、または中間層に導電性材料が含まれる複合的なシールド材料である、
請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項6】
複数対の差動信号導体と、接地導体と、絶縁シースとを提供し、各隣接する2対の前記差動信号導体の間に前記接地導体を設け、前記絶縁シースで前記複数対の差動信号導体および前記接地導体の外側を包むことと、
前記絶縁シースの一部を除去して開孔部を形成し、前記接地導体を前記開孔部内に露出させ、
金属導電部材を提供し、前記金属導電部材の少なくとも一部を、前記開孔部内に収容して、前記接地導体と電気的に接触するようにすることと、
被覆層を提供し、前記被覆層を前記絶縁シースおよび前記金属導電部材の外側に被覆することと、を含み、
前記被覆層は、絶縁層であり、
前記接地導体の数は、少なくとも2つであり、前記少なくとも2つの接地導体は、前記金属導電部材を介して短絡されている、
フラットケーブルの製造方法。
【請求項7】
前記金属導電部材は、金属片、銀ペーストまたは錫ペーストである、
請求項6に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項8】
前記金属導電部材は、溶接、溶着、塗布または焼付凝固で前記接地導体の上に固着される、
請求項6または7に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項9】
前記金属導電部材は、一体型構造または別体型構造である、
請求項6または7に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項10】
前記導電性シールド層は、銅箔、アルミ箔、導電性布、または中間層に導電性材料が含まれる複合的なシールド材料である、
請求項6に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項11】
前記絶縁シースの一部を除去する手段は、レーザー照射、打ち抜き、またはシースの原材料に穴を開けること、を含む、
請求項6に記載のフラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月16日に中国特許局に出願された中国出願番号201711356575.7に基づく優先権を主張するものであり、その出願における全ての内容が引用により本発明に組み込まれる。
【0002】
本開示は、フラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フラットケーブル(flat cable)は、占有スペースが小さく、反りができるなどの利点があり、様々な電子機器内で信号伝送を行うために広く適用される。従来のフラットケーブルは、左右に間隔をあけて配置された複数の導体と、導体の上下の表面を包む絶縁シースと、絶縁シースの外側を覆う導電性シールド層とを備える。しかし、信号伝送中、特に高周波信号の伝送中、フラットケーブルは外部の電磁信号からの干渉を受けやすいため、フラットケーブル内部の構造を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、接地効果と信号シールド機能を改善するフラットケーブルおよび該フラットケーブルの製造方法を提供する。
【0005】
一実施例において、本開示は、複数対の差動信号導体と、接地導体と、絶縁シースと、被覆層と、金属導電部材と、を備え、前記接地導体は、各隣接する2対の前記差動信号導体の間に設けられ、前記絶縁シースは、前記複数対の差動信号導体および前記接地導体の外側を包み、前記被覆層は、前記絶縁シースの外側を被覆し、前記絶縁シースに開孔部が設けられ、前記開孔部は、前記接地導体と連通し、前記接地導体の面積よりも大きい面積を有し、前記金属導電部材の少なくとも一部は、前記開孔部内に収容され、前記接地導体と電気的に接触する、フラットケーブルを提供する。
【0006】
一実施例において、本開示は、複数対の差動信号導体と、接地導体と、絶縁シースとを提供し、各隣接する2対の前記差動信号導体の間に前記接地導体を設け、前記絶縁シースで前記複数対の差動信号導体および前記接地導体の外側を包むことと、前記絶縁シースの一部を除去して開孔部を形成し、前記接地導体と前記開孔部とを連通させ、前記開孔部の面積を前記接地導体の面積よりも大きくすることと、金属導電部材を提供し、前記金属導電部材の少なくとも一部を、前記開孔部内に収容して、前記接地導体と電気的に接触するようにすることと、被覆層を提供し、前記被覆層を前記絶縁シースおよび前記金属導電部材の外側に被覆することと、を含む、フラットケーブルの製造方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施例に係るフラットケーブルの断面模式図である。
【
図2】本開示の実施例に係る別のフラットケーブルの断面模式図である。
【
図3】本開示の実施例に係るフラットケーブルの製造方法のフローチャートである。
【
図4】本開示の実施例に係るさらに別のフラットケーブルの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の実施例に係るフラットケーブルの断面模式図であり、
図2は、本開示の実施例に係る別のフラットケーブルの断面模式図であり、
図2には、導電性シールド層と金属片とが省略されている。
図1〜
図2を参照すると、本開示に係る第1フラットケーブル100は、複数対の差動信号導体11と、各隣接する2対の差動信号導体11の間に位置する接地導体12と、差動信号導体11および接地導体12の外側を包む絶縁シース20と、絶縁シース20の外側を覆う被覆層30と、接地導体12と電気的に接触して接続する金属導電部材40と、を備える。
【0009】
本開示に係るフラットケーブルでは、複数の接地導体が、金属導電部材または被覆層を介して電気的に直列に接続され、共通の接地経路を形成し、フラットケーブルの接地効果を改善するとともに、信号シールド機能を向上させ、高周波信号の伝送品質を向上させる。
【0010】
一実施例において、金属導電部材40は金属片であってもよい。
【0011】
絶縁シース20は、接地導体12の位置に開孔部21が設けられ、開孔部21は、接地導体12と連通し、接地導体12の面積よりも大きい面積を有し、すなわち、接地導体12が開孔部21内に露出する。
【0012】
被覆層30は、導電性シールド層または絶縁層として設けられ、被覆層30が導電性シールド層である場合、被覆層30は、銅箔、アルミ箔、導電性布、または中間層に導電性材料が含まれる複合的なシールド材料を採用する。
【0013】
一実施例において、金属導電部材40は、溶接、溶着、塗布または焼付凝固で接地導体12の上に固着される。
【0014】
一実施例において、金属導電部材40は、一体型構造または別体型構造である。
【0015】
一実施例において、被覆層30は、絶縁層である。被覆層30が絶縁層である場合、接地導体12の数は2つ以上であり、金属導電部材40は、少なくとも2つの接地導体12を金属導電部材40を介して短絡する。
【0016】
一実施例において、被覆層30は、導電性シールド層である。被覆層30が導電性シールド層である場合、金属導電部材40は、被覆層30と接地導体12とを接続し、被覆層30と接地導体12とを電気的に接続させ、この場合、接地導体12の数は1つ以上である。
【0017】
一実施例において、金属片の少なくとも一部は、開孔部21内に位置し、接地導体12に溶接または溶着されており、金属片が一体型構造である場合、複数の接地導体12を電気的に直列に接続して共通の接地経路を形成し、このような設計によって、第1フラットケーブル100の接地効果を強化するのに役立ち、個別の接地導体12の接地が安定しない場合にも、接地効果が影響を受けない。
【0018】
被覆層30が導電性シールド層である場合、金属片は一体型構造または別体型構造であってもよく、金属片の外側面は、被覆層30と電気的に接触し、被覆層30は、複数の接地導体12を電気的に直列に接続しており、同様に共通の接地経路を形成でき、複数の接地導体12と被覆層30に共通の接地回路を形成するように促し、被覆層30は、第1フラットケーブル100のノイズを接地することによって導出することができ、第1フラットケーブル100の信号シールド機能を改善し、高周波信号の伝送品質を向上させることに役立つ。
【0019】
一実施例において、金属導電部材40は銀ペーストまたは錫ペーストであってもよい。一実施例において、本開示の実施例は、フラットケーブルの製造方法をさらに提供し、
図3に示すように、この製造方法は、以下のステップを含む。
【0020】
ステップ310において、複数対の差動信号導体と、接地導体と、絶縁シースとを提供し、各隣接する2対の差動信号導体の間に接地導体を設け、絶縁シースで差動信号導体および接地導体の外側を包む。
【0021】
ステップ320において、絶縁シースの一部を除去して開孔部を形成し、接地導体と開孔部とを連通させ、開孔部の面積を接地導体の面積よりも大きくし、すなわち、接地導体を開孔部内に露出させる。
【0022】
ステップ330において、金属導電部材を提供し、金属導電部材の少なくとも一部を、開孔部内に収容して、接地導体と電気的に接触するようにする。
【0023】
ステップ340において、被覆層を提供し、被覆層を絶縁シースおよび金属導電部材の外側に被覆する。
【0024】
上記のステップを経て、フラットケーブルの製造が完了する。
【0025】
一実施例において、金属導電部材40は金属片であってもよい。
【0026】
一実施例において、金属導電部材40の少なくとも一部を、開孔部21内に収容して、接地導体12と電気的に接触することは、金属導電部材40の少なくとも一部を、上記露出した接地導体12に、錫溶接またはレーザー溶接などの溶接手段を採用して溶接する、または、溶着することを含んでもよい。
【0027】
一実施例において、金属導電部材40は、溶接、溶着、塗布または焼付凝固で接地導体12の上に固着される。1つの実施例において、金属導電部材40は、一体型構造または別体型構造である。
【0028】
一実施例において、被覆層30は、絶縁層または導電性シールド層である。被覆層30が絶縁層である場合、接地導体12の数は2つ以上であり、少なくとも2つの接地導体12は、金属導電部材40を介して短絡されている。被覆層30が導電性シールド層である場合、被覆層30は、金属導電部材40と電気的に接触し、接地導体12の数は少なくとも1つであり、少なくとも1つの接地導体12は、被覆層30と電気的に接続されている。
【0029】
一実施例において、導電性シールド層は、銅箔、アルミ箔、導電性布、または中間層に導電性材料が含まれる複合的なシールド材料である。
【0030】
一実施例において、絶縁シース20の一部を除去する手段は、レーザー照射、打ち抜き、またはシースの原材料に穴を開けること、を含む。
【0031】
図4には、本開示の実施例に係るさらに別のフラットケーブルの断面模式図が示されている。第2フラットケーブル200は、上述した実施形態の第1フラットケーブル100との違いは、金属片の代わりに、銀ペーストまたは錫ペースト50を用いて、銀ペーストまたは錫ペースト50を塗布または焼付凝固して接地導体12に固着し、被覆層30を銀ペーストまたは錫ペースト50の外側に被覆し、複数の接地導体12は、銀ペーストまたは錫ペースト50または被覆層30を介して電気的に直列に接続し、共通の接地経路を形成することである。
【0032】
要約すると、本開示の実施例によって提供される金属導電部材40は、金属片、銀ペーストまたは錫ペースト50を含むことができ、金属導電部材40は、接地導体12と電気的に接触して接続し、金属導電部材40自体または被覆層30を用いて複数の接地導体12を電気的に直列に接続し、共通の接地経路を形成することにより、第1フラットケーブル100または第2フラットケーブル200の接地効果を改善することに役立ち、被覆層30が導電性シールド層である場合、被覆層30は、さらに、第1フラットケーブル100または第2フラットケーブル200のノイズを接地することによって導出することができ、第1フラットケーブル100または第2フラットケーブル200の信号シールド機能を改善し、高周波信号の伝送品質を向上させることに役立つ。
【符号の説明】
【0033】
11 差動信号導体
12 接地導体
20 絶縁シース
21 開孔部
30 被覆層
40 金属導電部材
50 銀ペースト又は錫ペースト
100 第1フラットケーブル
200 第2フラットケーブル