特許第6974633号(P6974633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974633
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】ポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20211118BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20211118BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C08F290/06
   G02C7/00
   G02C7/04
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2020-564947(P2020-564947)
(86)(22)【出願日】2019年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2019007260
(87)【国際公開番号】WO2020174570
(87)【国際公開日】20200903
【審査請求日】2020年11月18日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健吾
(72)【発明者】
【氏名】砂原 一潤
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−513173(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/103791(WO,A3)
【文献】 特表2016−540087(JP,A)
【文献】 特表2014−505067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
G02C 7/00
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)モノマー成分と、(b)親水性ポリマー成分と、を含む重合性混合物を重合させて得られるポリマー材料であって、
(a)モノマー成分が、(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーと、(a−2)親水性モノマーと、(a−3)アニオン性基を有さないシリコーン含有モノマーとを含み、
(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーが、3つ以上の重合性官能基を有し、
該重合性混合物における(b)親水性ポリマー成分の配合量が、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分との合計配合量100質量部に対して、1質量部〜30質量部であり、
該(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーが、下記式(a)〜(c)に示す構造を有する重合性シリコーン化合物から選択される、ポリマー材料。
【化1】
(式(a)中、nは、10〜200の整数であり、Rは、
【化2】
である。)
【化3】
(式(b)中、nは、10〜200の整数であり、Rは、
【化4】
である。)
【化5】
(式(c)中、nは、10〜200の整数であり、Rは、
【化6】
である。)
【請求項2】
前記重合性混合物における(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーの配合割合が、前記(a)モノマー成分と前記(b)親水性ポリマー成分との合計配合量に対して、5質量%〜60質量%である、請求項に記載のポリマー材料。
【請求項3】
前記(b)親水性ポリマー成分の重量平均分子量が、100,000以上である、請求項1または2に記載のポリマー材料。
【請求項4】
前記(b)親水性ポリマー成分が、ポリビニルアミドである、請求項1からのいずれかに記載のポリマー材料。
【請求項5】
前記(b)親水性ポリマー成分が、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、請求項1からのいずれかに記載のポリマー材料。
【請求項6】
前記(b)親水性ポリマー成分が、ポリ−N−ビニルピロリドンである、請求項1からのいずれかに記載のポリマー材料。
【請求項7】
前記(a)モノマー成分中におけるヒドロキシル基を有するシリコーン含有モノマーの含有量が0.1質量%以下である、請求項1からのいずれかに記載のポリマー材料。
【請求項8】
酸素透過係数が、30Barrer〜120Barrerである、請求項1からのいずれかに記載のポリマー材料。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載のポリマー材料を含む、眼科用医療機器。
【請求項10】
コンタクトレンズである、請求項に記載の眼科用医療機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料に関し、より具体的に眼用レンズ用途に適したポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズとに大別される。近年、ハードコンタクトレンズの多くは、シロキサン構造(Si−O−Si)を有するシリコーン含有ポリマーを用いて形成されることにより、高い酸素透過性を有するが、その硬さに起因して装用時に異物感を生じさせる場合がある。一方、ソフトコンタクトレンズは、親水性モノマーと(メタ)アクリル系モノマーと架橋剤とを共重合させた含水ハイドロゲルから形成されることにより、優れた装用感が得られる一方で、ハードコンタクトレンズに比べて酸素透過性が低い傾向にある。これに対し、シリコーン系モノマーをさらなる共重合成分として含むシリコーンハイドロゲルを用いて、高い酸素透過性と優れた装用感とを両立するソフトコンタクトレンズが開発されている。
【0003】
しかしながら、シリコーンハイドロゲルから形成されたソフトコンタクトレンズは、表面に脂質が付着しやすい。よって、プラズマ処理または親水性ポリマーを内部湿潤剤としてハイドロゲル内に混在させることによって、脂質の付着を抑制することが行われている。
【0004】
内部湿潤剤を用いる場合、親水性度が高い内部湿潤剤と疎水性度が高いシリコーン系モノマーとの相溶性が低いことから、通常、両者を相溶化させるために、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート(「SiGMA」とも称する)等のヒドロキシル基を有するシリコーン含有モノマーが用いられる(例えば、特許文献1)。これにより、脂質の付着が抑制され、かつ、透明性に優れたポリマー材料が得られるが、脂質に対する防汚性については更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−518826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる目的は、内部湿潤剤を含み、透明性に優れたシリコーン含有ポリマー材料であって、脂質に対する防汚性が向上されたシリコーン含有ポリマー材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの局面によれば、(a)モノマー成分と、(b)親水性ポリマー成分と、を含む重合性混合物を重合させて得られるポリマー材料であって、(a)モノマー成分が、(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーを含み、該重合性混合物における(b)親水性ポリマー成分の配合量が、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分との合計配合量100質量部に対して、約1質量部〜約30質量部である、ポリマー材料が提供される。
1つの実施形態において、上記(a)モノマー成分が、(a−2)親水性モノマーをさらに含む。
1つの実施形態において、上記(a)モノマー成分が、(a−3)アニオン性基を有さないシリコーン含有モノマーをさらに含む。
1つの実施形態において、上記(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーが、2つ以上の重合性官能基を有する。
1つの実施形態において、上記(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーが、3つ以上の重合性官能基を有する。
1つの実施形態において、上記(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーが、下記式(I)で表される構造を有する。
【化1】
[式(I)中、
a1〜Ra8はそれぞれ独立して、水素原子あるいはヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜50の炭化水素基であり、
およびZはそれぞれ独立して、下記式(1)で表される基であり、
−Rb1−X−Rb2 (1)
(式(1)中、
b1は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20アルキレン基であり、
b2は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基であり、
Xは、単結合、−O−または−NRb3−であり(ここで、Rb3は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である))、
は、k4個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
は、k5個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
は、k11個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
は、k12個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
〜Bはそれぞれ独立して、アニオン性基を有する一価の基であり、
Eは、−O−または−NRc1−であり(ここで、Rc1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である)、
は、単結合または(k2+1)価の連結基であり、
は、単結合または(k3+1)価の連結基であり、
k1およびk1’はそれぞれ独立して、4以上の整数であり、
k2およびk3はそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、
k4およびk5はそれぞれ独立して、1〜5の整数であり、
k6は、0または1であり、
k7は、0〜100の整数であり、
k8は、0〜5の整数であり、
k9およびk10はそれぞれ独立して、0または1であり、
k11およびk12はそれぞれ独立して、0〜5の整数である。]
1つの実施形態において、上記アニオン性基が、カルボキシル基を含む。
1つの実施形態において、上記(b)親水性ポリマー成分の重量平均分子量が、100,000以上である。
1つの実施形態において、上記(b)親水性ポリマー成分が、ポリビニルアミドである。
1つの実施形態において、上記(b)親水性ポリマー成分が、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む。
1つの実施形態において、上記(b)親水性ポリマー成分が、ポリ−N−ビニルピロリドンである。
1つの実施形態において、上記ポリマー材料の酸素透過係数が、30Barrer〜120Barrerである。
本発明の別の局面によれば、上記ポリマー材料を含む、眼科用医療機器が提供される。
1つの実施形態において、上記眼科医療機器は、コンタクトレンズである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーを用いることにより、内部湿潤剤を含み、透明性に優れたシリコーン含有ポリマー材料であって、脂質に対する防汚性が向上されたシリコーン含有ポリマー材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料は(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分とを含む重合性混合物を重合させることによって得られる。より具体的には、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分とが混合した状態、好ましくは相溶した状態で(a)モノマー成分を重合させる。本発明で使用される(b)親水性ポリマー成分は、代表的には、重合性官能基を有さない非重合性成分であるが、このような状態で(a)モノマー成分を重合させることにより、(a)モノマー成分由来の構造単位を含むポリマーと(b)親水性ポリマー成分とが高度に複合化したポリマー材料が得られ得る。
【0011】
本明細書において、「モノマー」とは、1つ以上の重合性官能基を有する重合性化合物を意味する。よって、2つ以上のモノマー単位によって構成されている重合性化合物(オリゴマーとも称される)および分子量が大きい重合性化合物(マクロマーまたはマクロモノマーとも称される)もモノマーに含まれる。
【0012】
上記重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0013】
本明細書において、「(メタ)」は、任意のメチル置換を意味する。よって、「(メタ)アクリロイル」は、メタクリロイルおよび/またはアクリロイルを意味する。「(メタ)アクリル」等の他の記載も同様である。
【0014】
本明細書において、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%、±5%、±1%または±0.5%の範囲を含むことを意図する。また、本明細書において、成分含有量や数値範囲等を示すのに用いられる数値は、特に明示がない限り、用語「約」で修飾されているものと理解されるべきである。
【0015】
本明細書において、多価の基の構造表記は、特に明示がない限り、当該基の結合方向を規定するものではない。具体的には、Rが−C(=O)O−である場合の式:R−R−Rは、R−C(=O)O−RまたはR−OC(=O)−Rであり得る。
【0016】
A.重合性混合物
上記重合性混合物は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分とを含み、該(a)モノマー成分は、(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーを含む。(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーが、(b)親水性ポリマー成分との相溶性に優れ、かつ、酸素透過性の向上および脂質に対する防汚性の向上に寄与し得ることから、優れた透明性と酸素透過性とを有し、さらには、脂質の付着が抑制されたポリマー材料が得られ得る。また、重合性混合物は、必要に応じて、(c)添加剤をさらに含んでもよい。
【0017】
1つの実施形態において、重合性混合物は、SiGMA等のヒドロキシル基を有するシリコーン含有モノマーを実質的に含まない。ここで、「ヒドロキシル基を有するシリコーン含有モノマーを実質的に含まない」とは、モノマー成分中における当該モノマーの含有量が、0.1質量%以下であることを意味する。
【0018】
(a)モノマー成分
モノマー成分は、(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーを含み、好ましくは(a−2)親水性モノマーおよび/または(a−3)アニオン性基を有さないシリコーン含有モノマーをさらに含む。モノマー成分は、必要に応じて、(a−4)疎水性モノマー、(a−5)架橋性モノマー、(a−6)機能性モノマー等をさらに含んでもよい。モノマー成分中における(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマー、(a−2)親水性モノマーおよび(a−3)アニオン性基を有さないシリコーン含有モノマーの合計含有割合は、例えば30質量%〜99質量%、好ましくは70質量%〜95質量%とすることができる。
【0019】
(a−1)アニオン性基を有するシリコーン含有モノマー
アニオン性基を有するシリコーン含有モノマー(以下、第1のシリコーン含有モノマーと称する場合がある)は、シロキサン構造(Si−O−Si)を有することに起因して、ポリマー材料に高い酸素透過性を付与し得るとともに、アニオン性基を有することに起因して、親水性ポリマー成分との相溶性および脂質に対する防汚性の向上に寄与し得る。上記アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーは、ヒドロキシル基を有さない。
【0020】
第1のシリコーン含有モノマーは、1つ以上の重合性官能基を有し、好ましくは2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上または5つ以上の重合性官能基を有する。第1のシリコーン含有モノマーが2つ以上の重合性官能基を有することにより、架橋性モノマーを用いない場合であっても、良好な機械特性を有するポリマー材料が得られ得る。また、未反応モノマーが減少する、モールド重合の際に、重合により得られたポリマー材料(例えば、眼用レンズ)をモールドから容易に脱離できる、等の効果が得られ得る。
【0021】
第1のシリコーン含有モノマーが有するアニオン性基の数は、1つ以上であり、好ましくは2〜10である。アニオン性基の数が当該範囲内であれば、親水性ポリマー成分との相溶性および脂質に対する防汚性の向上効果が得られ得る。一方、アニオン性基が多すぎると、例えば本発明のポリマー材料をコンタクトレンズとして使用した際に、洗浄の際の消毒剤が付着し、眼障害を引き起こす可能性がある上、コンタクトレンズの含水率が高くなりすぎて、適切な酸素透過性や機械特性が得られにくくなる等の不具合が発生する場合がある。
【0022】
上記アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、硫酸エステル基(−O−SO)等が挙げられる。アニオン性基は、好ましくはカルボキシル基である。
【0023】
第1のシリコーン含有モノマーは、例えば500以上、好ましくは1,000〜100,000の重量平均分子量を有するマクロモノマーであり得る。第1のシリコーン含有モノマーがマクロモノマーであることにより、機械特性の向上、変形回復性の向上等の効果が得られ得る。
【0024】
1つの実施形態において、第1のシリコーン含有モノマーは、例えば、下記一般式(I)で表される構造を有し得る。
【化2】
[式(I)中、
a1〜Ra8はそれぞれ独立して、水素原子あるいはヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜50の炭化水素基であり、
およびZはそれぞれ独立して、下記式(1)で表される基であり、
−Rb1−X−Rb2 (1)
(式(1)中、
b1は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20アルキレン基であり、
b2は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基であり、
Xは、単結合、−O−または−NRb3−であり(ここで、Rb3は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である))、
は、k4個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
は、k5個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
は、k11個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
は、k12個の水素原子がBの基によって置換された炭素数1〜12のアルキレン基(ただし、Bの基以外のヘテロ原子を有していてもよい)であり、
〜Bはそれぞれ独立して、アニオン性基を有する一価の基であり、
Eは、−O−または−NRc1−であり(ここで、Rc1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である)、
は、単結合または(k2+1)価の連結基であり、
は、単結合または(k3+1)価の連結基であり、
k1およびk1’はそれぞれ独立して、4以上の整数であり、
k2およびk3はそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、
k4およびk5はそれぞれ独立して、1〜5の整数であり、
k6は、0または1であり、
k7は、0〜100の整数であり、
k8は、0〜5の整数であり、
k9およびk10はそれぞれ独立して、0または1であり、
k11およびk12はそれぞれ独立して、0〜5の整数である。]
【0025】
上記式(I)において、Ra1〜Ra8に関して規定される炭素数1〜50の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基またはアラルキル基が例示できる。
【0026】
上記アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐していてもよく、環状構造を含んでいてもよい。当該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基またはエチル基であり、さらにより好ましくはメチル基である。
【0027】
上記アルキル基は、ヘテロ原子を有することができる。ヘテロ原子は、水素原子を置換する一価の置換基に含まれていてもよく、主鎖または分岐鎖の炭素原子を含む基(−CH−)を置換する二価の置換基に含まれていてもよい。
【0028】
上記ヘテロ原子を含む一価の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。
【0029】
上記ヘテロ原子を含む二価の置換基としては、−O−、−NRa9−、−C(=O)O−、−NRa9C(=O)−、−NRa9C(=O)O−、−NRa9C(=O)NRa10−、−CH=N−、−C(=O)−NRa9−C(=O)−等が挙げられる(ここで、Ra9およびRa10はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキル基である)。
【0030】
上記アリール基またはアラルキル基としては、炭素数6〜20アリール基または炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。具体例としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0031】
上記アリール基またはアラルキル基は、ヘテロ原子を有することができる。ヘテロ原子は、代表的には、水素原子を置換する一価の置換基に含まれる。ヘテロ原子を含む一価の置換基については、上述のとおりである。
【0032】
上記A〜Aに関して規定される炭素数1〜12のアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐していてもよく、環状構造を含んでいてもよい。当該アルキレン基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。
【0033】
上記A〜Aに関して規定されるアルキレン基はそれぞれ、アニオン性基を有する一価の基(B、B、BまたはBの基)以外のヘテロ原子を有することができる。ヘテロ原子は、アルキレン基の水素原子を置換する一価の置換基に含まれていてもよく、主鎖または分岐鎖の炭素原子を含む基(−CH−)を置換する二価の置換基に含まれていてもよい。ヘテロ原子を含む一価の置換基および二価の置換基については、上述のとおりである。
【0034】
上記B〜Bはそれぞれ独立して、例えばアニオン性基を有する炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜5の有機基であり得る。BおよびBの具体例としてはカルボキシル基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基、スルホン酸基、スルホメチル基、2−スルホエチル基、2,3−ジスルホプロピル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、リン酸基、ホスホメチル基、ホスホエチル基、3−ホスホプロピル基、4−ホスホブチル基等が挙げられる。
【0035】
上記式(1)において、Rb1に関して規定される炭素数1〜20アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐していてもよく、環状構造を含んでいてもよい。当該アルキレン基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基であり得る。
【0036】
上記Rb1に関して規定されるアルキレン基は、ヘテロ原子を有することができる。ヘテロ原子は、水素原子を置換する一価の置換基に含まれていてもよく、主鎖または分岐鎖の炭素原子を含む基(−CH−)を置換する二価の置換基に含まれていてもよい。ヘテロ原子を含む一価の置換基については、上述のとおりである。ヘテロ原子を含む二価の置換基についても上述したものが挙げられ、なかでも−NH−、−NHC(=O)−または−NHC(=O)O−が好ましい。これらの置換基は、水素結合性プロトンを有することから、アニオン性基の導入数を抑制しつつ、親水性ポリマー成分との親和性や親水性ポリマー成分と他のモノマーとの相溶性を向上させることができる。なかでも、ウレタン結合(−NHC(=O)O−)を含むことが好ましい。重合性末端を有し、重合性官能基とシロキサンセグメントとの間にウレタン結合を有することにより、少ないアニオン性基の数で本発明の効果が好適に得られ得る。また、得られるポリマー材料の機械的強度が増大され得る。
【0037】
1つの実施形態において、Rb1は、「−Rb3−ウレタン結合−Rb4−」または「−Rb3−ウレタン結合−Rb4−ウレタン結合−Rb5−」の構造を有する。なお、これらの構造中、Rb3、Rb4およびRb5はそれぞれ独立して、ヘテロ原子(好ましくはエーテル酸素)を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基であり得る。
【0038】
b2は、好ましくは(メタ)アクリロイル基であり、この場合、Xは、好ましくは−O−である。
【0039】
式(1)で表される基の具体例としては、下記式(2)または(3)に示される基が例示できる。
【化3】
(式(2)中、
d1、Rd2、Rd4およびRd5はそれぞれ独立して、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分岐アルキレン基であり、
d3は、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状アルキレン基あるいはその組み合わせからなる基であり、
d6は、水素またはメチル基であり、
p1およびp2はそれぞれ独立して、0〜15の整数であり、
p3は、0または1であり、
ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH=CRd6−COO−)を除いた残基に含まれる炭素原子数は、20以下である。)
【0040】
【化4】
(式(3)中、
d7およびRd8はそれぞれ独立して、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分岐アルキレン基であり、
d9は、水素またはメチル基であり、
p4は、0〜15の整数であり、
ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH=CRd9−COO−)を除いた残基に含まれる炭素原子数は、20以下である。)
【0041】
および/またはLが連結基である場合の連結基の具体例としては、下記式(4)〜(10)に示される基およびこれらの基の2つ以上の組合せからなる基が例示できる。式(4)〜(10)において、*は結合手を示し、いずれの結合手がAまたはAと結合していてもよい。
【化5】
(上記式中、
e1、Re2およびRe3はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0042】
k1およびk1’はそれぞれ独立して、例えば10〜200の整数であり、好ましくは15〜150の整数、より好ましくは20〜80の整数である。
【0043】
k2およびk3はそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくはk2+k3≧3の関係、より好ましくはk2+k3≧4の関係を満たすように選択される。1つの実施形態において、k2およびk3はともに1、2または3である。
【0044】
k4およびk5はそれぞれ独立して、好ましくは1または2である。1つの実施形態において、k4およびk5はともに1または2である。また、k11およびk12は、それぞれ独立して、好ましくは0、1、または2である。k4、k5、k11およびk12の合計(k4+k5+k11+k12)は、好ましくは2〜8の整数であり、より好ましくは2〜6の整数である。
【0045】
k7は、好ましくは50以下の整数であり、より好ましくは30以下の整数である。k7が1以上の整数である場合、−{CH−CH−(E)k6k7−は、好ましくはエチレン(もしくはポリエチレン)基またはオキシエチレン(もしくはポリオキシエチレン)基である。
【0046】
k8は、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0、1、または2であり、さらに好ましくは0または1である。
【0047】
k9およびk10はそれぞれ独立して、0または1である。
【0048】
一般式(I)で表される第1のシリコーン含有モノマーのより具体的な構造の一例を以下の式(II)に示す。
【化6】
(式中、
f1、Rf2、Rf3およびRf4はそれぞれ独立して、上記式(2)または(3)で表される基であり、
およびLはそれぞれ独立して、二価または三価の連結基であり、
m1、m2、m4およびm5はそれぞれ独立して、0〜5の整数であり、
m3は、10〜200の整数であり、
m6およびm7はそれぞれ独立して、0〜5の整数であり、
ただし、Lが二価の連結基であるとき、Rf2は存在せず、
が二価の連結基のとき、Rf4は存在しない。)
【0049】
重合性混合物中における第1のシリコーン含有モノマーの配合割合は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量に対して、例えば1質量%〜70質量%、好ましくは5質量%〜60質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%とすることができる。第1のシリコーン含有モノマーの配合割合が当該範囲内であれば、高い酸素透過性と透明性とを有し、脂質に対する防汚性に優れたポリマー材料が得られ得る。
【0050】
(a−2)親水性モノマー
親水性モノマーは、第1のシリコーン含有モノマー等と共重合することによって親水性の高いシリコーン含有ポリマーを形成し、得られるポリマー材料をハイドロゲルとすることができる。親水性モノマーとしては、例えば、25℃の水への溶解度が0.03g/mL以上であるモノマー、好ましくは0.07g/mL以上であるモノマー(ただし、ケイ素原子を含有するものおよび重合性官能基を2つ以上有するものを除く)が用いられ得る。
【0051】
親水性モノマーの具体例としては、アルキル基の炭素数が1〜4のヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよびN−ビニルラクタムが挙げられる。親水性モノマーは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
ヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、必要に応じ、分岐していても構わない。ヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等のジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0054】
N−ビニルラクタムとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0055】
親水性モノマーは、上述したものに限定されない。他に使用可能な親水性モノマーとしては、例えば、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリジノン、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、2−メトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記例示された親水性モノマー中、アルキル基の炭素数が1〜4のヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。
【0057】
重合性混合物中における親水性モノマーの配合割合は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量に対して、例えば0.1質量%〜90質量%、好ましくは20質量%〜80質量%、より好ましくは30質量%〜70質量%とすることができる。親水性モノマーの配合割合が当該範囲内であれば、高い含水率を有するポリマー材料が得られ得る。
【0058】
(a−3)アニオン性基を有さないシリコーン含有モノマー
アニオン性基を有さないシリコーン含有モノマー(以下、第2のシリコーン含有モノマーと称する場合がある)は、ポリマー材料の酸素透過性をより一層向上させ得る。第2のシリコーン含有モノマーとしては、シロキサン構造を有し、アニオン性基とヒドロキシル基とを有さない限りにおいて、任意の適切なモノマー(例えば、従来の眼用レンズ用途に用いられているモノマー)を用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、特表2015−503631号公報の0039段落〜0044段落に記載のシリコーン含有モノマー(ただし、ヒドロキシル基を有するものを除く)、特開2014−40598号公報の0060段落〜0065段落に記載のシリコーン含有モノマーが挙げられる。第2のシリコーン含有モノマーは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
第2のシリコーン含有モノマーの具体例としては、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキシプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキシメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート等のシリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート;トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジメチルシリルスチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジメチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、ペンタデカメチルヘプタシロキサニルスチレン、ヘンエイコサメチルデカシロキサニルスチレン、ヘプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルスチレン、トリメチルシロキシペンタメチルジシロキシメチルシリルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシリルスチレン、トリメチルシロキシビス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシメチルシリルスチレン、トリス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、(トリストリメチルシロキシヘキサメチル)テトラシロキシ[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]トリメチルシロキシシリルスチレン、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシリルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、トリメチルシリルスチレン等のシリコーン含有スチレン誘導体;ビス(3−(トリメチルシリル)プロピル)フマレート、ビス(3−(ペンタメチルジシロキサニル)プロピル)フマレート、ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル)フマレート等のシリコーン含有フマル酸ジエステル;等が挙げられる。
【0060】
第2のシリコーン含有モノマーの別の具体例としては、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジエチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ−n−メチル末端ポリジエチルシロキサン等が挙げられる。これらのシリコーン含有モノマーにおいて、(Si−O)の繰り返し数は、例えば4〜20、好ましくは4〜12、より好ましくは4〜10であり得る。
【0061】
重合性混合物中における第2のシリコーン含有モノマーの配合割合は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量に対して、例えば0質量%〜70質量%、好ましくは5質量%〜60質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%とすることができる。第2のシリコーン含有モノマーの含有割合が当該範囲内であれば、透明性を維持しつつ、高い酸素透過性を有するポリマー材料が得られ得る。
【0062】
重合性混合物中における第1のシリコーン含有モノマーと第2のシリコーン含有モノマーの合計配合割合は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量に対して、例えば1質量%〜90質量%、好ましくは10質量%〜80質量%、より好ましくは20質量%〜70質量%とすることができる。このようにシリコーン含有モノマーの配合割合が高い場合であっても、親水性ポリマー成分との相溶性を確保できることは、本発明の特徴の1つということができる。
【0063】
(a−4)疎水性モノマー
疎水性モノマーは、共重合反応性の向上、ポリマー材料の硬度または機械的強度の調整等を目的として、必要に応じて添加される。疎水性モノマーとしては、例えば、25℃の水への溶解度が0.03g/mL未満であるモノマー(ただし、ケイ素原子を含有するものおよび重合性官能基を2つ以上有するものを除く)が用いられ得る。
【0064】
疎水性モノマーの具体例としては、眼用レンズ材料に従来用いられているモノマーを適宜用いることができる。具体例としては、25℃の水への溶解度が0.03g/mL未満であるアルキル(メタ)アクリレート(例えば、アルキル基の炭素数が20以下のアルキル(メタ)アクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、アルコキシアルキル基の炭素数が20以下のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。当該アルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。
【0065】
重合性混合物中における疎水性モノマーの配合割合は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量に対して、例えば0質量%〜40質量%、好ましくは0質量%〜30質量%、より好ましくは0質量%〜20質量%とすることができる。疎水性モノマーの含有割合が当該範囲内であれば、透明性および機械的強度に優れたポリマー材料が得られ得る。
【0066】
(a−5)架橋性モノマー
架橋性モノマーは、ポリマー材料の機械的強度や形状安定性等の向上を目的として、必要に応じて添加される。架橋性モノマーとしては、重合性官能基を2つ以上有するモノマー(ただし、ケイ素原子を含有するものを除く)が用いられる。
【0067】
架橋性モノマーの具体例としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。なかでも、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび/またはエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。架橋性モノマーは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
重合性混合物中における架橋性モノマーの配合割合は、目的に応じて適切に設定される。例えば、上記(a−1)または(a−3)に記載のモノマーが多官能である場合等においては、架橋性モノマーの使用は必須ではなく、その配合割合を0%とすることができる。架橋性モノマーを用いる場合、その配合割合は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量に対して、例えば2質量%以下、1質量%以下、または0.5質量%以下とすることができる。
【0069】
(a−6)機能性モノマー
機能性モノマーは、ポリマー材料に所定の機能を付与することを目的として、必要に応じて添加される。機能性モノマーとしては、重合性色素、重合性紫外線吸収剤、重合性紫外線吸収性色素等が挙げられる。
【0070】
重合性色素の具体例としては、例えば、1−フェニルアゾ−4−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−フェニルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−ナフチルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(α−アントリルアゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−((4’−(フェニルアゾ)−フェニル)アゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(2’,4’−キシリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(o−トリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、2−(m−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4,6−ビス(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2−(m−ビニルアニリノ)−4−(4’−ニトロフェニルアゾ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチルオキシ)−4−(m−ビニルアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(p−ビニルアニリノ)−4−(1’−(o−トリルアゾ)−2’ナフチルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、N−(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチル)−3−ビニルフタル酸モノアミド、N−(1’−(o−トリルアゾ)−2’−ナフチル)−6−ビニルフタル酸モノアミド、3−ビニルフタル酸−(4’−(p−スルホフェニルアゾ)−1’−ナフチル)モノエステル、6−ビニルフタル酸−(4’−(p−スルホフェニルアゾ)−1’−ナフチル)モノエステル、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−フェニルアゾフェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(8’−ヒドロキシ−3’,6’−ジスルホ−1’−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(1’−フェニルアゾ−2’−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(p−トリルアゾ)フェノール、2−アミノ−4−(m−(2’−ヒドロキシ−1’−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(2’−ヒドロキシ−1’−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(4’−ヒドロキシ−1’−フェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(4’−ヒドロキシフェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(3’−メチル−1’−フェニル−5’−ヒドロキシ−4’−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(3’−メチル−1’−フェニル−5’−ヒドロキシ−4’−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(p−フェニルアゾアニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、4−フェニルアゾ−7−(メタ)アクリロイルアミド−1−ナフトール等のアゾ系重合性色素;1,5−ビス((メタ)アクリロイルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−アミノ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、5−アミノ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、8−アミノ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ニトロ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ヒドロキシ−1−(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(4’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス(4’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5’−ビス(4’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5−ビス(4’−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(3’−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(4’−ビニルベンゾイルオキシエチルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−アミノ−4−(3’−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(4’−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(2’−ビニルベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(3’−(メタ)アクリロイルアミノフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(3’−(メタ)アクリロイルアミノベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−(β−エトキシカルボニルアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1,5−ジ−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−イソプロポキシカルボニルアリルアミノ)−5−ベンゾイルアミド−9,10−アントラキノン、2−(3’−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3’−(3”−スルホ−4”−アミノアントラキノン−1”−イル)−アミノ−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(3’−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3’−(3”−スルホ−4”−アミノアントラキノン−1”−イル)−アミノ−アニリノ)−6−ヒドラジノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス−((4”−メトキシアントラキノン−1”−イル)−アミノ)−6−(3’−ビニルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−(2’−ビニルフェノキシ)−4−(4’−(3”−スルホ−4”−アミノアントラキノン−1”−イル−アミノ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(4−(2−メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ)9,10−アントラキノン、1,4−ビス((2−メタクリルオキシエチル)アミノ)9,10−アントラキノン等のアントラキノン系重合性色素;o−ニトロアニリノメチル(メタ)アクリレート等のニトロ系重合性色素;(メタ)アクリロイル化テトラアミノ銅フタロシアニン、(メタ)アクリロイル化(ドデカノイル化テトラアミノ銅フタロシアニン)等のフタロシアニン系重合性色素等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
重合性紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2’,4’−ジクロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(2”−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等のサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2−シアノ−3−フェニル−3−(3’−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステル等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
重合性紫外線吸収性色素の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシ−3(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収色素や、2−ヒドロキシ−4−(p−スチレノアゾ)安息香酸フェニル等の安息香酸系重合性紫外線吸収色素等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
上記機能性モノマーの合計配合量は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量100質量部に対して例えば0.001質量部〜5質量部、好ましくは0.05質量部〜3質量部とすることができる。
【0074】
(b)親水性ポリマー成分
親水性ポリマー成分としては、ポリマー材料に表面親水性を付与し得る任意の適切なポリマーが用いられ得る。例えば、ポリビニルアミド(例えば、ポリビニルラクタム)、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタム等のポリマーを親水性ポリマーとして用いることができる。親水性ポリマーは、2種以上のモノマーからなるランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体でもよい。なかでも、主鎖または側鎖に環状構造、例えば環状アミド構造または環状イミド構造を含むポリマーが好ましく用いられ得る。親水性ポリマー成分としては、親水性ポリマーを1種のみ用いてもよく、2種以上の親水性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。
【0075】
親水性ポリマーの具体例としては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドンおよびポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリ−2−エチル・オキサゾリン、ヘパリン・ポリサッカライド、ポリサッカライド、および、これらのコポリマーが挙げられる。なかでも、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等が好ましく用いられ得る。
【0076】
親水性ポリマーの重量平均分子量は、例えば100,000以上であり、好ましくは150,000〜2,000,000、より好ましくは300,000〜1,800,000、さらに好ましくは500,000〜1,500,000であってよい。
【0077】
親水性ポリマーのK値は、例えば30〜150、好ましくは60〜120、より好ましくは90〜120であってよい。ここでK値は、第16改正日本薬局方中の粘度測定法第1法<2.53>により粘度を測定し、薬局方記載の「K値」の欄記載の方法に従ってFikentscherの式により求めることができる。
【0078】
重合性混合物中における親水性ポリマー成分の配合量は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量100質量部に対して、代表的には1質量部〜30質量部、好ましくは3量部〜20質量部、より好ましくは5質量部〜15質量部とすることができる。親水性ポリマーの配合量が当該範囲内であれば、表面親水性に優れたポリマー材料が得られ得る。
【0079】
(c)添加剤
添加剤としては、目的に応じて、任意の適切な添加剤が選択され得る。添加剤としては、例えば、重合開始剤、有機溶剤等が挙げられる。
【0080】
重合開始剤は、重合方法に応じて適切に選択される。加熱による重合に用いられる熱重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0081】
重合性混合物中における熱重合開始剤の配合量は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部〜2質量部、より好ましくは0.01質量部〜1質量部である。
【0082】
光照射による重合に用いられる光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系光重合開始剤;メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(HMPPO)、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン等のフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、光重合開始剤と共に光増感剤を用いてもよい。
【0083】
重合性混合物中における光重合開始剤および光増感剤の配合量は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマー成分の合計配合量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部〜2質量部、より好ましくは0.01質量部〜1質量部である。
【0084】
有機溶媒としては、水溶性有機溶媒が好ましい。水溶性有機溶媒としては、炭素数1〜4のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、ジメトキシエタン、テトロヒドロフラン等を用いることができる。水溶性有機溶媒を用いることにより、モノマー成分相互あるいは親水性ポリマー成分とモノマー成分との相溶性が向上し得る。また、水への浸漬により容易に水溶性有機溶媒を除くことができる。
【0085】
重合性混合物中における有機溶媒の配合量は、重合性混合物中のモノマー成分と親水性ポリマー成分の合計100質量部に対して、例えば40質量部以下、好ましくは25質量部以下、より好ましくは10質量部、さらに好ましくは0質量部〜5質量部であり得る。本発明においては、重合性混合物中の各成分の相溶性が良好であることから、水溶性有機溶媒の配合量を少なくすることができる。
【0086】
上記以外の他の添加剤としては、眼用レンズ用途に従来用いられている添加剤を用いることができる。例えば、清涼化剤、粘稠化剤、界面活性剤および非重合性の色素、紫外線吸収剤または紫外線吸収性色素等が挙げられる。
【0087】
重合性混合物中における上記他の添加剤の配合量は、(a)モノマー成分と(b)親水性ポリマーの合計配合量100質量部に対して、例えば0.01質量部〜5質量部、好ましくは0.01質量部〜3質量部とすることができる。
【0088】
B.重合方法
本発明のポリマー材料は、例えば、上記各成分を含有する重合性混合物を加熱および/または光(紫外線および/または可視光)照射し、当該重合性混合物中の各モノマー成分を共重合させることによって得ることができる。また、光照射に替えて電子線照射による共重合によっても得ることができる。
【0089】
重合方法としては、塊状重合法または溶液重合法が用いられ得る。塊状重合法においては、モノマー成分の一部が未重合のまま残留する場合がある。また溶液重合法においては、反応に関与しない溶媒が得られたポリマー内に残留し得る。医療機器であるコンタクトレンズ等の製造においては、これら残留物を極力減量させるべく、水または有機溶媒またはこれらの混合溶液に、得られたポリマー材料を浸漬し、好ましくはこれを繰り返すことによって、これら残留物を溶出させてポリマー材料から除く処理が施され得る。
【0090】
本発明のポリマー材料をコンタクトレンズ等の眼用レンズ用材料として用いる場合は、上記重合性混合物を鋳型法にて反応させることができる。鋳型法にて重合性混合物を加熱して重合させる場合には、所望の眼用レンズ用材料の形状に対応した鋳型内に、上記重合性混合物を充填し、この鋳型を徐々に加熱する。
【0091】
鋳型内の重合性混合物を加熱する際の加熱温度および加熱時間は、重合性混合物の組成等に応じて適切に設定される。加熱温度は、好ましくは50℃以上150℃以下であり、より好ましくは60℃以上140℃以下である。また、鋳型内の重合性混合物を加熱する際の加熱時間は、好ましくは10分間以上120分間以下、より好ましくは20分間以上60分間以下である。
【0092】
鋳型法において、光照射により重合性混合物を重合させる場合には、所望の眼用レンズ材料の形状に対応した鋳型内に、上記重合性混合物を充填した後、この鋳型に光を照射する。光照射による重合に用いられる鋳型の材質は、重合に必要な光を透過し得る材質である限り特に限定されるものではない。
【0093】
鋳型内の重合性混合物に照射する光の波長は、使用する光重合開始剤の種類等に応じて適切に設定される。光照度および照射時間は、重合性混合物の組成等に応じて適切に設定される。光照度は、好ましくは0.1mW/cm〜100mW/cm以下である。照射時間は、好ましくは1分以上である。異なる照度の光を段階的に照射してもよい。
【0094】
上記鋳型法での重合により、所望の形状を有するポリマー材料が得られる。得られた成形体としてのポリマー材料には、必要に応じて切削加工、研磨加工等の機械的加工を施してもよい。切削は、ポリマー材料の一方または両方の面の全面にわたって行なってもよいし、ポリマー材料の一方の面または両方の面の一部に対して行なってもよい。
【0095】
本発明のポリマー材料は、内部湿潤材として親水性ポリマー成分を含むことから、優れた表面親水性を有するが、さらなる表面改質を目的として、低温プラズマ処理、大気圧プラズマ、コロナ放電等の表面改質処理を施すことができる。
【0096】
C.ポリマー材料の特性
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料の酸素透過係数(Dk値)は、好ましくは30Barrer〜120Barrer、より好ましくは40Barrer〜110Barrer、さらに好ましくは50Barrer〜100Barrerである。
【0097】
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料の含水率は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%〜70質量%である。ポリマー材料の含水率を10質量%とすることにより、得られるポリマー材料をハイドロゲルとすることができ、コンタクトレンズに加工した際の装用感を向上することができる。
【0098】
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料のヤング率は、好ましくは0.05MPa〜1.5MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.8MPa、さらに好ましくは0.15MPa〜0.7MPaである。ポリマー材料のヤング率を0.05MPa〜1.5MPaとすることにより、コンタクトレンズに加工した際の装用感と取扱い性とを両立することができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は質量基準である。
【0100】
[使用成分]
実施例および比較例で用いられる成分の略称の意味を以下に示す。
(1)親水性ポリマー
・PVP(K−90): ポリビニルピロリドン(K値90)
・PVP(K−120): ポリビニルピロリドン(K値120)
(2)第1のシリコーン含有モノマー
・シリコーンマクロモノマーA: 下記式に示す構造を有する重合性シリコーン化合物(式中、n=30〜80)
【化7】
・シリコーンマクロモノマーB: 下記式に示す構造を有する重合性シリコーン化合物(式中、n=30〜80)
【化8】
・シリコーンマクロモノマーC: 下記式に示す構造を有する重合性シリコーン化合物(式中、n=15〜50)
【化9】
・シリコーンマクロモノマーD、E: 下記式に示す構造を有する重合性シリコーン化合物(式中、n=15〜80)
【化10】
・シリコーンマクロモノマーF: 下記式に示す構造を有する重合性シリコーン化合物(式中、n=15〜50)
【化11】
(3)第2のシリコーン含有モノマー
・AA−PDMS: 以下に示す構造を有する重合性シリコーン化合物
【化12】
・TRIS:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(構造を以下に示す)
【化13】
(4)ヒドロキシル基を有するシリコーン含有モノマー
・SiGMA: (3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(構造を以下に示す)
【化14】
(5)親水性モノマー
・ブレンマーPME−200: オキシエチレン鎖の繰り返しユニット数が約4であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート
・HEMA: 2−ヒドロキシエチルメタクリレート
・2−HPMA: 2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
・DMAA: N,N−ジメチルアクリルアミド
・2−MTA: 2−メトキシエチルアクリレート
(6)架橋性モノマー
・EDMA: エチレングリコールジメタクリレート
(7)疎水性モノマー
・MMA: メチルメタクリレート
・HOB: 3−ヒドロキシブチルメタクリレートと2−ヒドロキシブチルメタクリレートとの混合物
(8)機能性モノマー
・HMEPBT: ベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)
・RB246: アントラキノン系重合性色素(1,4−ビス(4−(2−メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ)9,10−アントラキノン)
(9)添加剤
・TPO: 開始剤(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド)
・EtOH: エタノール
・IPA: イソプロピルアルコール
【0101】
[合成例1:シリコーンマクロモノマーAの調製]
【化15】
最初に、上記に示す合成経路にて二級アミンを有するウレタンジメタクリレートを合成した。具体的な合成手順は、以下のとおりである。
1)1L褐色ナスフラスコにジエタノールアミン(21.04g,200.0mmol)、ジクロロメタン(200.38g)を加えて氷浴で0℃にして撹拌した。100mL滴下ロートにて二炭酸ジ−tert−ブチル(48.02g,220.0mmol)をジクロロメタン(49.81g)に溶解させ、30分かけて滴下した。滴下ロートは少量のジクロロメタンで3回洗い、反応溶液に加えた。滴下終了後、反応溶液を室温に戻し、1時間撹拌した。
2)反応溶液にp−メトキシフェノール(0.042g,0.34mmol)とテトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム(IV)(0.402g,0.82mmol)を加え、氷浴で0℃にて撹拌した。100mL滴下ロートにてカレンズMOI(68.27g,440.0mmol)を40分かけて滴下した。滴下ロートは少量のジクロロメタンで3回洗い、反応溶液に加えた。滴下終了後、反応溶液を室温に戻し、1時間撹拌した。その後、蒸留水20.04gを加えてさらに室温で1時間撹拌した。
3)反応溶液にトリフルオロ酢酸(228.11g,2.0mol)を加えて、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中で40℃として4時間撹拌した。
4)反応溶液を室温に戻した後に氷浴に移し、トリエチルアミン(202.95g,2.1mol)をゆっくり加え、中和した。
5)反応溶液を分液ロートに移し、400mLのジクロロメタンを加えた。その後、蒸留水400mLで3回洗浄した。得られたジクロロメタン溶液を、硫酸ナトリウムを用いて脱水乾燥した。
6)硫酸ナトリウムを濾過し、残った溶液を減圧留去した。
7)得られた粗製物をアセトニトリル200mLに溶解して分液ロートに移し、ヘキサン200mLで3回洗浄した。得られたアセトニトリル溶液にp−メトキシフェノール(0.042g,0.34mmol)を加えて減圧留去し、オイル状化合物を収率85%(70.65g,170.1mmol)で得た。H−NMR(CDCl,400MHz)にて目的の化合物の構造であることを確認した。
【0102】
【化16】
次いで、上記に示す合成経路にてシリコーンマクロモノマーAを合成した。具体的な合成手順は、以下のとおりである。
1)500mL褐色ナスフラスコに両末端無水コハク酸変性シリコーン(56.60g、官能基当量1590g/molより平均分子量3180g/molとして17.8mmol)、ヘキサン55.34g、二級アミンを有するウレタンジメタクリレート(18.48g,44.5mmol)を加え、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中で40℃として2時間撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻した後に、2Lの分液ロートに移した。ヘキサン600mLとアセトニトリル300mLを加えて、分液操作を行った。3層分離した最も下層を廃棄した。残った溶液に、アセトニトリル300mL加えて、再度分液操作を行い、3層分離した最も下層を廃棄した。
3)残った溶液にアセトニトリル300mLを加えて、再度分液操作を行った。3層分離した上層と中層を1L褐色フラスコに移し、p−メトキシフェノール(0.022g,0.018mmol)を加えて、減圧留去することで、高粘度の液体を56.33g得た。SEC測定によって得られたシリコーンマクロモノマーAの分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)が6000、重量平均分子量(Mw)が7000(ポリスチレン換算)であった。
【0103】
[合成例2:シリコーンマクロモノマーBの合成]
【化17】
最初に、上記に示す合成経路にて二級アミンを有するジメタクリレートを合成した。具体的な合成手順は、以下のとおりである。
1)500mL褐色ナスフラスコにジエタノールアミン(10.52g,100.0mmol)、ジクロロメタン(101.03g)を加えて氷浴で0℃にして撹拌した。100mL滴下ロートにて二炭酸ジ−tert−ブチル(24.02g,110.1mmol)をジクロロメタン(25.09g)に溶解させ、20分かけて滴下した。滴下ロートは少量のジクロロメタンで3回洗い、反応溶液に加えた。滴下終了後、反応溶液を室温に戻し、20時間撹拌した。
2)反応溶液にトリエチルアミン(23.00g,227.2mmol)を加え、氷浴で0℃にして撹拌した。滴下ロートにてメタクリロイルクロリド(23.20g,221.9mmol)を20分かけて滴下した。滴下ロートは少量のジクロロメタンで3回洗い、反応溶液に加えた。滴下終了後、反応溶液を室温に戻し、1.5時間撹拌した。
3)反応溶液にトリフルオロ酢酸(114.30g,1.0mol)を加えて、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中で40℃として2.5時間撹拌した。
4)反応溶液を室温に戻した後に氷浴に移し、トリエチルアミン(104.30g,1.0mol)をゆっくり加え、中和した。
5)反応溶液を分液ロートに移し、200mLのジクロロメタンを加えた。その後、蒸留水200mLで3回洗浄した。得られたジクロロメタン溶液を、硫酸ナトリウムを用いて脱水乾燥した。
6)硫酸ナトリウムを濾過し、残った溶液を減圧留去した。
7)得られた粗製物をアセトニトリル200mLに溶解して分液ロートに移し、ヘキサン200mLで3回洗浄した。得られたアセトニトリル溶液にp−メトキシフェノール(0.024g,0.19mmol)を加えて減圧留去し、オイル状化合物を収率65%(15.61g,64.7mmol)で得た。H−NMR(CDCl,400MHz)にて目的の化合物の構造であることを確認した。
【0104】
【化18】
次いで、上記に示す合成経路にてシリコーンマクロモノマーBを合成した。具体的な合成手順は、以下のとおりである。
1)200mL褐色ナスフラスコに(44.12g、官能基当量1470g/molより平均分子量2940g/molとして15.0mmol)、ヘキサン45.22g、二級アミンを有するジメタクリレート(9.10g,37.7mmol)を加え、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中で40℃として3時間撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻した後に、2Lの分液ロートに移した。ヘキサン400mLとアセトニトリル200mLを加えて、分液操作を行い、アセトニトリル層を廃棄した。同様な操作を2回繰り返し行った。
3)得られたヘキサン溶液を褐色ナスフラスコに移し、p−メトキシフェノール(0.021g,0.017mmol)を加えて、減圧留去することで、高粘度の液体を41.77g得た。SEC測定によって得られたシリコーンマクロモノマーBの分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)が4500、重量平均分子量(Mw)が6300(ポリスチレン換算)であった。
【0105】
[合成例3:シリコーンマクロモノマーCの合成]
【化19】
上記に示す合成経路にてシリコーンマクロモノマーCを合成した。具体的な合成手順は以下のとおりである。
1)300mLナスフラスコに両末端無水コハク酸変性シリコーン(114.45g、官能基当量956g/molより平均分子量1912g/molとして59.9mmol)、エチレングリコール(1.86g,30.0mmol)、を加えトリエチルアミン(18.25g,180.3mmol)を室温にて7分間かけて滴下した。
2)オイルバス中45℃にて30分間撹拌した。
3)HEMA(11.73g,90.1mmol)を系中へ加え、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中45℃にて1時間撹拌した。
4)反応液をヘキサン800mLに溶解し、2L分液ロートへ移した。ヘキサン層を、トリフルオロ酢酸(25.14g,22.0mmol)を溶解させたアセトニトリル400mLで洗浄した。
5)ヘキサン層をアセトニトリル400mLにて3回洗浄した。
6)ヘキサン層を回収し、減圧濃縮して無色の透明液体を102.96g得た。SEC測定によって得られたシリコーンマクロモノマーCの分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)が5000、重量平均分子量(Mw)が7400(ポリスチレン換算)であった。
【0106】
[合成例4:シリコーンマクロモノマーDの合成]
【化20】
上記に示す合成経路にてシリコーンマクロモノマーDを合成した。具体的な合成手順は以下のとおりである。
1)100mL褐色ナスフラスコに両末端無水コハク酸変性シリコーン(28.60g、官能基当量953g/molより平均分子量1906g/molとして15.0mmol)、グリセロールジメタクリレート(8.57g,37.5mmol)、トリエチルアミン(4.57g,45.1mmol)を加え、室温にて30分撹拌した後、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中で40℃として1時間30分撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻した後、分液ロートに移した。ヘキサン200mLとトリフルオロ酢酸(6.15g,53.9mmol)を溶解させたアセトニトリル100mLを加えて、分液操作を行い、アセトニトリル層を廃棄した。残った溶液に、アセトニトリル200mL加えて、再度分液操作を行い、アセトニトリル層を廃棄した。同様の操作を繰り返した。
3)残ったヘキサン溶液を褐色フラスコに移し、減圧留去することで、高粘度の液体を23.15g得た。SEC測定によって得られたシリコーンマクロモノマーDの分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)が3400、重量平均分子量(Mw)が4300(ポリスチレン換算)であった。
【0107】
[合成例5:シリコーンマクロモノマーEの合成]
合成例4を参考にして、シリコーンマクロモノマーDと分子量の異なる、シリコーンマクロモノマーEを合成した。具体的な合成手順は以下のとおりである。
1)100mL褐色ナスフラスコに両末端無水コハク酸変性シリコーン(官能基当量1590g/molより平均分子量3180g/molとして31.84g,10.0mmol)、グリセロールジメタクリレート(5.77g,25.0mmol)、トリエチルアミン(3.05g,30.0mmol)を加えてジムロート冷却器を装着し、室温で約40分間撹拌した後、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中で40℃とし約3時間撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻し、200mLヘキサンに溶解させ、分液ロートに移した。
3)分液ロートに1M HCl36mLを加えたアセトニトリル100mLを移し、ヘキサン溶液を1回洗浄した。その後、100mLアセトニトリルでヘキサン溶液を2回洗浄した。
4)得られたヘキサン溶液を減圧留去し、オイル状化合物を31.87gで得た。SEC測定によって得られたシリコーンマクロモノマーEの分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)が4600、重量平均分子量(Mw)が6200(ポリスチレン換算)であった。
【0108】
[合成例6:シリコーンマクロモノマーFの合成]
【化21】
上記に示す合成経路にてシリコーンマクロモノマーFを合成した。具体的な合成手順は以下のとおりである。
1)100 mL褐色ナスフラスコに両末端無水コハク酸変性シリコーン(官能基当量953g/molより平均分子量1906g/molとして28.82g,15.0mmol)、HOB(5.95g、37.6mmol)、トリエチルアミン(4.61g,45.6mmol)を加えてジムロート冷却器を装着し、室温で約40分間撹拌した後、オイルバス中で40℃とし約1時間撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻し、200mLヘキサンに溶解させ、分液ロートに移した。
3)分液ロートにトリフルオロ酢酸(6.64g,58.2mmol)を溶解させた100mLアセトニトリルを加え、ヘキサン溶液を1回洗浄した。その後、100mLアセトニトリルでヘキサン溶液を2回洗浄した。
4)得られたヘキサン溶液を減圧留去し、オイル状化合物を26.22gで得た。SEC測定によって得られたシリコーンマクロモノマーFの分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)が3200、重量平均分子量(Mw)が3900(ポリスチレン換算)であった。
【0109】
なお、上記合成例1〜6において、SEC測定は以下に記載の条件で行った。
≪SEC測定≫
示差屈折率検出器 Shodex RI−101(昭和電工社製)、カラム恒温槽 Shodex AO−30 (昭和電工社製)、溶存ガス除去装置 ERC3115α (ERC INC社製)、送液ポンプ Shodex DS−4 (昭和電工社製)、SECカラム Shodex KF802.5 (昭和電工社製)、ガードカラム Shodex KF−G(昭和電工社製)を用いて、得られたシリコーンマクロモノマーのSEC測定を実施した。流速:1.0mL/min、移動相:THF、カラム温度:40℃の条件にてサンプル濃度約0.3mg/10mL のTHF溶液を用いて測定を行った。分子量違いのポリスチレン標準液から検量線を作成して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0110】
[実施例1]
親水性ポリマー成分としてPVP(K−90)(BASF社製)を13質量部、第1のシリコーン含有モノマーとしてシリコーンマクロモノマーAを10質量部、第2のシリコーン含有モノマーとしてAA−PDMSを20質量部、親水性モノマーとしてDMAA(KJケミカル社製)を31質量部、ブレンマーPME−200(日油社製)を5質量部および2−MTA(大阪有機化学社製)を6質量部、疎水性モノマーとしてHOB(共栄社化学社製)を15質量部、重合性紫外線吸収剤としてHMEPBT(大和化成社製、DAISORB−T31)を1.8質量部および重合性色素としてRB246(ARRAN社製)を0.01質量部、重合開始剤としてTPO(大和化成製、IHI−PI−TPO)を1.0質量部、および水溶性有機溶媒としてIPAを4質量部、を混合して重合性混合物を調製した。該重合性混合物を、コンタクトレンズ形状を有する鋳型(ポリプロピレン製、直径14.2mmおよび厚さ0.08mmのコンタクトレンズに対応)内に注入した。次いで、室温下、この鋳型に、主波長405nmの青色LED光(405nmにおける照度1.5mW/cm)を20分照射して光重合を行った。重合後、鋳型からコンタクトレンズ形状のポリマー材料を取り出した。
【0111】
[実施例2〜実施例14]
表1に記載の組成となるように各成分を混合して重合性混合物を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてコンタクトレンズ形状のポリマー材料を得た。
【0112】
[比較例1〜13]
表1に記載の組成となるように各成分を混合して重合性混合物を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてコンタクトレンズ形状のポリマー材料を得た。
【0113】
上記実施例および比較例で得られたポリマー材料をpH7.5のリン酸緩衝液に浸漬し平衡となるまで膨潤させた後、121℃で20分間オートクレーブ滅菌し、同量の新たな当該リン酸緩衝液に置換して平衡化したものを、以下の各特性評価に供した。ただし、酸素透過係数の測定においては、コンタクトレンズ形状を有する鋳型の代わりに、平均厚みが約0.3mmとなるようなプレート型試料が得られるPP製鋳型を用いたこと以外は、上記と同様に重合、水和処理および滅菌処理を行い、直径14.0mmの円形に加工したプレート型サンプルを用いた。結果を表1に示す。
【0114】
≪酸素透過係数(Dk値)の測定≫
上記のとおり、直径14.0mmの円形のプレート型サンプルを測定試料とした。リファレンススタンダードとして「2WEEKメニコン プレミオ」(メニコン社製)の素材で同様のプレート型サンプルを作製し、このDk値を129とした。
測定試料を電極にセットし、製科研式フィルム酸素透過率計(理化精機工業社製)を用い、35℃の生理食塩水中にて窒素バブリングして平衡状態となったときの電流値をゼロとして設定した。次いで、酸素バブリングして平衡状態になったときの電流値を記録した。これをリファレンススタンダードに対しても同様に実施した。下記式に従ってレンズの酸素透過係数を算出した。なお酸素透過係数の単位は(×10-11(cm2/sec)・(mLO2/(mL×mmHg))=Barrer)である。
Dk値=R×(IS/IR)×(TS/TR)×(PR/PS)
ここで、上記式中の記号の意味は、以下の通りである。
R:リファレンススタンダードのDk値(129)
IS:測定試料の電流値(μA)
IR:リファレンススタンダードの電流値(μA)
TS:測定試料の平均厚み(mm)
TR:リファレンススタンダードの平均厚み(mm)
PS:測定試料測定時の大気圧(mmHg)
PR:リファレンススタンダード測定時の大気圧(mmHg)
【0115】
≪引張弾性率(ヤング率)の測定≫
作製したコンタクトレンズを打ち抜いて、伸張部分の幅約1.8mm、厚み約0.1mmのダンベル形状のサンプルを作製し、試験サンプルとした。島津製作所社製、島津精密万能試験機オートグラフAG−IS MS型を用いて、20℃の生理食塩液中にて引張試験を実施し、応力―伸び曲線から引張弾性率としてヤング率(MPa)を算出した。引張速度は100mm/分とした。
【0116】
≪含水率の測定≫
20℃のpH7.5リン酸緩衝液中で調節したコンタクトレンズの表面の水分を軽く拭き取り、平衡含水状態での質量(W(g))を測定した。その後、該レンズを105℃に設定した乾燥器にて乾燥させた後、放冷した状態での質量(W(g))を測定した。これらの測定値WおよびWを用い、以下の式に従って含水率(質量%)を算出した。
含水率(質量%)={(W−W)/W}×100
【0117】
≪外観評価≫
コンタクトレンズの外観を肉眼で観察した。
【0118】
≪脂質付着性評価≫
1)マルチウェルプレートの各ウェルに常温で固体の人工脂質(製品名「ファーマゾール」)1gを入れ、80℃に加熱して融解した。
2)コンタクトレンズ表面の水分を拭き取り、各ウェルへ入れた後、室温で一晩、次いで、80℃で1h放置した。
3)コンタクトレンズをウェルから取出し、ビーカーに入れたコンタクトレンズ洗浄液(メニコン社製、製品名「エピカコールド」)中で濯いだ後、コンタクトレンズ洗浄液(メニコン社製、製品名「エピカコールド」)で30回こすり洗いした。
4)マルチウェルプレートの各ウェルにコンタクトレンズ洗浄液(メニコン社製、製品名「エピカコールド」)とコンタクトレンズを入れ、10℃で一晩放置した。
5)コンタクトレンズをウェルから取り出し、肉眼で外観を確認し、以下の判定基準に基づいて評価した。
[判定基準]
0:ほとんど白く観察されない
1:わずかに一部分が白く観察される
2:全体の約50%が白く観察される
3:レンズがほぼ全体にわたって白く観察されるが、所々に濁度の薄い部分がある
4:レンズが全体にわたって白く観察される
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示されるとおり、アニオン性基を有するシリコーン含有モノマーを用いて得られた実施例のポリマー材料は、透明性および酸素透過性が高く、かつ、脂質に対する防汚性が比較例のポリマー材料よりも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のポリマー材料は、眼科用医療機器、例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜オンレイ、角膜インレイ等の眼用レンズに好適に用いられる。