(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
「投影型画像表示装置」
図1は、第1実施形態に係る投影型画像表示装置PJの模式図である。投影型画像表示装置PJは、例えば、プロジェクタである。投影型画像表示装置PJは、例えば、光源Lsと拡散板Dp1、Dp2、インテグレータレンズIR及びスクリーンScを有する。
【0022】
光源Lsは、例えば、ランプ、レーザーである。レーザーは、青色、緑色、赤色のそれぞれのレーザーを準備してもよいし、蛍光体に青色レーザーを照射することで黄色、緑及び赤色を生み出してもよい。
【0023】
拡散板Dp1、Dp2は、光源Lsからの光を拡散する。拡散板Dp1、Dp2は、例えば、複数のマイクロレンズアレイが配列した拡散板である。マイクロレンズアレイの詳細は、後述する。光源LsとスクリーンScとの間に、拡散板Dp1、Dp2が2枚以上あることで、スクリーンScに投影される光のムラが低減される。インテグレータレンズIRの形状、スクリーンScに投影される画像は四角形であり、拡散板Dp1、Dp2は光を四角形に拡散することが好ましい。
【0024】
インテグレータレンズIRは、照射面への照度の均一性を高めるレンズである。インテグレータレンズIRを光が通過することで、スクリーンScに投影される画像の精度が高まる。
【0025】
「マイクロレンズアレイ」
図2は、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイ100の平面図である。また
図3は、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイ100の断面図である。
図3は、
図2におけるA−A線に沿ってマイクロレンズアレイ100を切断した断面である。例えば、複数のマイクロレンズアレイ100を規則的に配列することで、上述の拡散板Dp1、Dp2となる。
【0026】
ここで方向について定義する。マイクロレンズアレイ100が広がる平面をxy平面とし、その一方向をx方向とし、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向及びy方向はそれぞれ、マイクロレンズアレイ100を構成するマイクロレンズ10が配列する一方向である。x方向は、行方向の一例であり、y方向は、列方向の一例である。z方向は、xy平面に対して直交する方向である。z方向は、マイクロレンズアレイ100に対して光が入射する方向でもある。
【0027】
マイクロレンズアレイ100は、z方向からの平面視で、複数のマイクロレンズ10が行列状に配列している。行列状に配列するとは、マイクロレンズ10がx方向及びy方向に並ぶことである。隣接するマイクロレンズ10の頂点を結ぶ線の主ベクトル方向は、x方向又はy方向である。一つのマイクロレンズ10のサイズは、例えば、100μm程度である。
【0028】
複数のマイクロレンズ10は、基板Sの一面に形成されている。以下、基板Sのマイクロレンズ10が配置された側の面を第1面Sa、第1面Saと対向する面を第2面Sbと称する。基板Sは、例えば、入射する光の波長帯域に対して透明な基板である。基板Sは、例えば、光学ガラス、水晶、サファイア、樹脂板、樹脂フィルムである。光学ガラスは、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、白板ガラス等である。樹脂は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン・コポリマー(COC)等である。光学ガラス、水晶及びサファイアの無機材料は、耐光性に優れる。また水晶、サファイアは放熱性に優れる。基板Sのz方向からの平面視形状は問わない。
【0029】
複数のマイクロレンズ10のそれぞれは、例えば、基準面Rpに対して凹む凹レンズである。複数のマイクロレンズ10のそれぞれは、例えば、基準面Rpに対して突出する凸レンズでもよい。基準面Rpは、xy平面(例えば、第2面Sb)と平行な面であり、第1面Saの最も突出した部分と接する面である。基準面Rpは、例えば、加工前の基板Sの表面である。
【0030】
それぞれのマイクロレンズ10の表面は、湾曲面10aである。湾曲面10aによって光が屈折することで、入射した光が拡散する。それぞれの湾曲面10aの曲率半径は、例えば、異なる。それぞれの湾曲面10aの曲率半径は、例えば、平均曲率半径を基準に50%以上150%以内である。それぞれの湾曲面10aの曲率は、例えば、平均曲率半径を基準に70%以上130%以内でもよい。
【0031】
湾曲面10aの極大点又は極小点を頂点10vと称する。マイクロレンズ10が凹レンズの場合は、湾曲面10aの極小点が頂点10vであり、マイクロレンズ10が凸レンズの場合は、湾曲面10aの極大点が頂点10vである。それぞれのマイクロレンズ10における頂点10vと基準面Rpとの距離は、例えば、一定ではない。
【0032】
図4は、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイ100の特徴部分を拡大した平面図である。それぞれのマイクロレンズ10は、x方向及びy方向に基本パターンに沿って配列する。基本パターンは、複数の行仮想線RLと複数の列仮想線CLによって区切られた四角形がx方向及びy方向に並んだパターンである。行仮想線RLはx方向と平行な仮想線であり、列仮想線CLはy方向と平行な仮想線である。それぞれの列仮想線CLの間隔G
xは一定であり、それぞれの行仮想線RLの間隔G
yは一定である。間隔G
x、G
yはそれぞれ、数μmから数十μmであり、例えば1μm以上100μm以下である。基本パターンのそれぞれの四角形には、一つのマイクロレンズ10が配置されている。行仮想線RL及び列仮想線CLで区切られる四角形は正方形でも長方形でもよい。
【0033】
それぞれのマイクロレンズ10をz方向から平面視した形状は、4つの主辺m1、m2、m3、m4を有する多角形である。多角形は、例えば、4つの主辺m1、m2、m3、m4と1つ以上の副辺sとからなる。副辺sは、2つの主辺を繋ぐ接続部である。例えば、
図4に示す主辺m1と主辺m4は、副辺sで接続されている。主辺m1、m2、m3、m4及び副辺sは、隣接するマイクロレンズ10の境界であり、マイクロレンズ10の曲率が急激に変化する線状の領域である。マイクロレンズ10が凹レンズの場合、境界は稜線であり、マイクロレンズ10が凸レンズの場合、境界は谷間である。主辺m1、m2、m3、m4及び副辺sは、z方向に湾曲していてもよい。
【0034】
4つの主辺m1、m2、m3、m4のうち主辺m1、m2はx方向に延び、主辺m3、m4はy方向に延びる。本明細書において「x方向に延びる」とは、例えば、xy平面においてx方向の長さがy方向の長さより長いことを意味する。主辺m1、m2、m3、m4の長さは、副辺sの長さより長い。主辺m1、m2の長さは、例えば隣接する列仮想線CLの間隔Gxの50%以上150%以下であり、主辺m3、m4の長さは、例えば、隣接する行仮想線RLの間隔Gyの50%以上150%以下である。
【0035】
4つの主辺m1、m2、m3、m4のうち少なくとも一つの主辺は、行仮想線RLまたは列仮想線CLに対して傾斜している。4つの主辺m1、m2、m3、m4はそれぞれ、行仮想線RLまたは列仮想線CLに対して傾斜していてもよい。主辺m1、m2は、行仮想線RLに対して傾斜している。主辺m1は、例えば、行仮想線RLに対して傾斜角θ1で傾いている。主辺m2は、例えば、行仮想線RLに対して傾斜角θ2で傾いている。主辺m3、m4は、列仮想線CLに対して傾斜している。主辺m3は、例えば、列仮想線CLに対して傾斜角θ3で傾いている。主辺m4は、例えば、列仮想線CLに対して傾斜角θ4で傾いている。傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4はそれぞれ異なる。
【0036】
傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4のうち少なくとも一つは、2.5°以上36°以下である。傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4はいずれも、例えば、2.5°以上36°以下である。傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4の平均値は、例えば19.3°である。傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4が当該範囲内であると、マイクロレンズアレイ100を通過後の拡散光の拡散強度のバラつきが低減される。
【0037】
またz方向からの平面視で、それぞれのマイクロレンズ10の頂点10vは、行仮想線RL及び列仮想線CLで区切られる四角形の中心10cからシフトしてもよい。頂点10vの中心10cに対するx方向のシフト量は、例えば、隣接する列仮想線CLの間隔Gxの50%以内であり、30%以内でもよい。頂点10vの中心10cに対するy方向のシフト量は、例えば、隣接する行仮想線RLの間隔Gyの50%以内であり、30%以内でもよい。
【0038】
第1実施形態に係るマイクロレンズアレイ100は、それぞれのマイクロレンズ10が4つの主辺m1、m2、m3、m4を有することで、拡散光の形状が四角形になる。またそれぞれの主辺m1、m2、m3、m4が列仮想線CL又は行仮想線RLに対して傾斜することで、拡散光の拡散強度のバラつきを抑えることができる。
【0039】
またマイクロレンズ10が副辺sを有することで、拡散光の形状を四角形に維持しつつ、拡散強度のバラつきをより抑えることができる。マイクロレンズ10が副辺sを有すると、マイクロレンズ10が配置される位置が、行仮想線RL及び列仮想線CLで区切られる基本パターンの四角形から大幅にずれない。マイクロレンズ10が基本パターンの配列を維持することで、拡散光の形状をより四角形に保つことができ、各辺が基本パターンを構成する列仮想線CL又は行仮想線RLに対して傾斜することで、拡散光の拡散強度のバラつきが抑えられる。
【0040】
以上、第1実施形態について詳述したが、当該例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0041】
例えば、
図5は、第1変形例に係るマイクロレンズアレイ101の断面図である。マイクロレンズアレイ101は、反射防止膜11、12を有する点が、
図3に示すマイクロレンズアレイ100と異なる。マイクロレンズアレイ101において、
図3に示すマイクロレンズアレイ100と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
【0042】
反射防止膜11は、基板Sの第1面Saを被覆している。反射防止膜12は基板Sの第2面Sbを被覆している。
【0043】
反射防止膜11、12は、例えば低屈折率層と高屈折率層とが積層された積層膜である。低屈折率層は、例えばSiO
2、MgF
2、CaF
2である。高屈折率層は、例えば、Nb
2O
5、TiO
2、Ta
2O
5、Al
2O
3、HfO
2、ZrO
2である。SiO
2、Nb
2O
5及びTa
2O
5は、耐光性に優れ、高出力レーザー等によって出射される高い光密度の光が照射されても劣化しにくい。
【0044】
図5では、基板Sの両面に反射防止膜11、12を設ける場合を例示したが、いずれか一方の面にのみ反射防止膜を設けてもよい。また反射防止膜は、数百nmピッチの微細な凹凸が配列したモスアイ構造でもよい。
【0045】
第1変形例に係るマイクロレンズアレイ101は、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイ100と同様の構成を有するため、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイ100と同様の効果を奏する。また反射防止膜11、12を有することで、界面反射を抑え、反射迷光を抑制できる。
【0046】
またここまで、マイクロレンズアレイ100、101を投影型画像表示装置PJに用いる場合を例に説明したが、マイクロレンズアレイ100、101を別の用途に用いてもよい。例えば、照明装置等に用いてもよい。
【0047】
「マイクロレンズアレイの製造方法」
図6は、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイの製造方法を説明するための図である。マイクロレンズアレイの製造方法は、レジスト塗布工程と、露光・現像工程と、エッチング工程とを有する。
【0048】
まずレジスト塗布工程では、基板S1上にレジストR1を塗布する。基板S1は、加工により上述の基板Sとなるため、基板Sと同様の材料である。後述するエッチング工程では、エッチングガスとしてフッ素系エッチングガス(CF
4、SF
6、CHF
3等)を用いる場合がある。Al
2O
3及びアルカリ金属等は、フッ素系エッチングガスと反応して不揮発性物質となる場合がある。例えば、アルカリ金属は含有しないがAl
2O
3を27%含有するガラス基板(例えば、コーニング社製のイーグルXG)をフッ素系エッチングガスでエッチングすると、エッチングされにくいAl
2O
3が残り、表面に微小突起が発生し、ガラス基板の透過率が低下する。基板S1は、アルカリ成分の含有量が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。基板S1は、例えば、石英ガラス、テンパックスガラスが好ましい。レジストR1は、公知のものを適用できる。
【0049】
次いで、露光工程では、グレースケールマスクGmを介してレジストR1に光L1を照射し、レジストR1を露光する。露光は、例えば、グレースケールマスクを動かしながら繰り返し露光するステップアンドリピート露光を行う。ステッピングの位置精度によっては、1回の露光で形成される基本セルの間に最大で数μm程度の幅の繋ぎ目が生じる場合がある。このような問題を避けるために、基本セル同士が重なるように露光することが好ましい。基本セル同士を大きく重ねる場合は、複数回の露光で所望の露光量となるように調整してもよい。
【0050】
次いで、現像工程では、露光したレジストパターンを現像する。現像によりレジストR1の一部が除去され、表面にレジストパターンを有するレジストR2となる。レジストR2の表面には、所望のマイクロレンズアレイと同様のレジストパターンが形成される。レジストパターンを所望のマイクロレンズアレイのパターンに設計する方法は、詳細を後述する。
【0051】
次いで、エッチング工程では、レジストR2を介して基板S1をドライエッチングする。ドライエッチングは、例えば、反応性のガスGを用いて行う。ガスGは、例えば、上述のフッ素系エッチングガスである。ドライエッチングによりレジストR2の表面に形成されたマイクロレンズアレイのパターンが、基板S1に転写される。基板S1は、第1面Saにマイクロレンズアレイが形成された基板Sとなる。
【0052】
図5に示すマイクロレンズアレイ101の場合、この後、反射防止膜11、12を成膜する。反射防止膜11、12は、例えば、蒸着、スパッタリング等で成膜する。
【0053】
「マイクロレンズアレイの設計方法」
マイクロレンズアレイの設計方法は、第1工程と第2工程と第3工程とに分けられる。
第1工程は、基本パターンを設定する工程である。第2工程は、基本パターンに対して種々の条件をばらつかせたパターンを設定する工程である。第3工程は、エッチングの条件を選択する工程である。以下、各工程について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7及び
図8は、第1実施形態に係るマイクロレンズアレイの設計方法を説明するための図である。
【0054】
まず
図7に示すように、第1工程では基本パターンを設定する。まず、行仮想線RL及び列仮想線CLをそれぞれ複数引き、行仮想線RL及び列仮想線CLによって囲まれる四角形が配列したアレイパターンを設定する。次いで、
図8に示すように、マイクロレンズアレイに求められる拡散角θdに応じて、マイクロレンズの曲率半径Rを決定する。曲率半径Rと拡散角θdとは、以下の関係を満たす。
θd=2sin
−1{(p(n−1)/2R)
上記式において、pは、隣接する列仮想線CLの間隔Gx又は隣接する行仮想線RLの間隔Gyである。nは、基板Sの屈折率である。
【0055】
次いで、アレイパターンのそれぞれの四角形の中心cが、マイクロレンズの頂点vとなるように設定する。このような手順で、所定の曲率のマイクロレンズが行列状に配列した基本パターンが設定される。
図7及び
図8は、設定された基本パターンの一例である。
【0056】
次いで、第2工程では、第1工程で設定した基本パターンを基準に、いくつかのパラメータをばらつかせる。基本パターンに対してばらつかせるパラメータは、行仮想線RL及び列仮想線CLの間隔G
x、G
y、それぞれのマイクロレンズの頂点の位置、それぞれのマイクロレンズの曲率半径のうち2つ以上である。これらのパラメータを全てシフトさせてもよい。
【0057】
隣接する列仮想線CLの間隔G
x’は、基本パターンにおける列仮想線CLの間隔Gxを基準にばらつかせる。隣接する行仮想線RLの間隔G
y’は、基本パターンにおける行仮想線RLの間隔G
yを基準にばらつかせる。隣接する列仮想線CLの間隔G
x及び隣接する行仮想線RLの間隔G
yがばらつくと、シフトパターンにおける四角形の各辺の長さが、基本パターンにおける四角形の各辺の長さに対してばらつく。
【0058】
隣接する列仮想線CLの間隔G
x’は、以下の関係を満たす。g
xはバラつきの程度であり、g
x≧0%であり、0%<g
x≦50%を満たすことが好ましい。
G
x’=G
x±G
x×g
x
【0059】
また隣接する列仮想線CLの間隔G
y’は、以下の関係を満たす。g
yはバラつきの程度であり、g
y≧0%であり、0%<g
y≦50%を満たすことが好ましい。
G
y’=G
y±G
y×g
y
【0060】
それぞれのマイクロレンズの頂点vの位置は、基本パターンのそれぞれの四角形の中心cの位置に対してばらつかせる。マイクロレンズの頂点vの基本パターンのそれぞれの四角形の中心cに対するx方向のバラつき量はG
x×T
xで表され、y方向のバラつき量はG
y×T
yで表される。T
x及びT
yはバラつきの程度であり、0%≦T
x、T
y≦50%を満たし、0%<T
x、T
y≦50%を満たすことが好ましい。
【0061】
それぞれのマイクロレンズの曲率半径は、基本パターンで設定したマイクロレンズの曲率半径Rを基準にばらつかせる。曲率半径のバラつき量は、R×rで表される。rはバラつきの程度であり、0%≦r≦50%を満たし、0%<r≦50%を満たすことが好ましい。
【0062】
上記の手順で、基本パターンに対して各種パラメータを上記の範囲でばらつかせたシフトパターンをレイアウト化する。レイアウト化は、公知のレンズ配置の算出アルゴリズムに基づいて行う。次いで、レイアウト化されたシフトパターンが、所望のマイクロレンズアレイの平面視パターンを満たしているかを判定する。所望のマイクロレンズアレイの平面視パターンは、上述の構成を満たすマイクロレンズアレイのパターンである。シフトパターンが、所望のマイクロレンズアレイの平面視パターンを満たしていると判定された場合は、第3工程に進む。シフトパターンが、所望のマイクロレンズアレイの平面視パターンを満たしていないと判定された場合は、再度、第2工程に戻って、各種パラメータのバラつき量を調整する。この結果、第1工程及び第2工程によって、マイクロレンズアレイの平面視パターンが決定される。
【0063】
次いで、第3工程ではエッチングの条件を選択する。設定するエッチング条件は、エッチング工程におけるレジストR2のエッチング速度に対する基板S1のエッチング速度の比(「基板S1のエッチング速度」/「レジストR2のエッチング速度」)である。以下、レジストR2のエッチング速度に対する基板S1のエッチング速度の比をエッチング選択比と称する。エッチング選択比は、例えば、エッチングに用いられる複数のエッチングガスの流量比率等によって調整される。
【0064】
例えば、エッチングガスとしてCF
4、Ar、O
2を用いる場合、Arガスの流量に対するCF
4ガスの流量の比(「CF
4ガスの流量」/「Arガスの流量」)を0.25から4.0まで変化させると、エッチング選択比は1.0から1.7まで変化する。またこの状態で、O
2ガスを3%〜10%の範囲で添加すると、エッチング選択比は0.7以上1.0以下まで低減する。つまり、エッチング選択比は、0.7以上1.7以下の範囲で設定できる。この場合、基板Sに形成されるマイクロレンズアレイの曲率半径を、レジストR2の表面に形成されたレジストパターンの曲率半径に対して、70%以上170%以下の範囲で調整できる。
【0065】
上述のように、エッチング選択比を変えることで、ドライエッチングにおける基板S1の加工深さを変えることができる。エッチング選択比をη、予定されるマイクロレンズの深さをSとすると、実際に形成されるマイクロレンズの深さはη×Sに近似される。またレジストパターンの曲率半径がRrの場合、実際に形成されるマイクロレンズの曲率半径はRr/ηとなる。第3工程では、上記関係を踏まえて、エッチング条件を選択する。
【0066】
上記手順を経ることで、所望のマイクロレンズアレイを作製することができる。すなわち、本実施形態に係るマイクロレンズアレイの設計方法及び製造方法によれば、拡散光の拡散強度のバラつきが小さいマイクロレンズアレイを得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下の実施例1〜6及び比較例1、比較例2では、所定の条件でマイクロレンズアレイを設計し、得られたマイクロレンズアレイの拡散特性をシミュレーションにより求めた。
シミュレーションは、Zemax社のOpticStudioを用いて行った。拡散特性は、作製されたマイクロレンズアレイの中心に、強度1W、スポット径0.6mmの入射光を入れ、200mm離れた位置に設置した1辺が150mmのディテクターにおける拡散光の強度分布である。入射光は、波長450nmのコヒーレントの平行光とした。拡散特性は、
図9に示すように、x方向とxy方向のそれぞれで求めた。xy方向は、x方向及びy方向のそれぞれに対して45°傾いた方向である。
図9は、実施例1〜実施例6及び比較例1に係るマイクロレンズアレイの評価方法を説明するための模式図である。
【0068】
「比較例1」
比較例1は、基本パターンのマイクロレンズアレイを設計した。一つのマイクロレンズは、1辺が80μmの正方形の凹レンズとした。マイクロレンズの曲率半径は150μmとし、基板の450nmの波長の光に対する屈折率を1.47とした。このマイクロレンズをx方向及びy方向に10個ずつ並べ、行列配置のマイクロレンズアレイを作製した。
【0069】
マイクロレンズの平面視形状は正方形であり、主辺のみで構成されている。それぞれの主辺は、行仮想線または列仮想線と並行であり、行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は0°であった。
図10(a)は、比較例1に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。
【0070】
図11は、比較例1に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図11(a)はx方向の拡散特性であり、
図11(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向及びxy方向の拡散強度の標準偏差σ
x、σ
xyは、いずれも0.039W/cm
2であった。また拡散光の10%角度幅を求めた。10%角度幅は、強度分布をガウス関数でフィッティングし、フィッティングカーブにおいて最大強度の10%以上の強度となる角度の範囲である。x方向の10%角度幅は、15.6°であり、xy方向の10%角度幅は22.9°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、0.68であった。
【0071】
「実施例1〜6」
実施例1〜6は、基本パターンを基準に、行仮想線RL及び列仮想線CLの間隔、それぞれのマイクロレンズの頂点の位置、それぞれのマイクロレンズの曲率半径をすべてばらつかせた。基板の450nmの波長の光に対する屈折率は、比較例1と同様に、1.47とした。実施例1〜6は、バラつきの程度がそれぞれ異なる。実施例1〜6のマイクロレンズはいずれも、平面視で、4つの主辺と副辺とからなる多角形であった。
【0072】
実施例1は、列仮想線及び行仮想線のバラつきの程度g
x、g
yを5%、頂点位置のx方向及びy方向のバラつきの程度T
x、T
yを5%、マイクロレンズの曲率半径のバラつきの程度rを5%とした。
【0073】
図10(b)は、実施例1に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。実施例1において、主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は−3.7°以上3.7°以下の範囲内であった。
【0074】
図12は、実施例1に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図12(a)はx方向の拡散特性であり、
図12(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向の拡散強度の標準偏差σ
xは0.025W/cm
2であり、x方向の拡散強度の標準偏差σ
xyは0.028W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、16.2°であり、xy方向の10%角度幅は22.7°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、0.71であった。
【0075】
実施例2は、列仮想線及び行仮想線のバラつきの程度g
x、g
yを10%、頂点位置のx方向及びy方向のバラつきの程度T
x、T
yを10%、マイクロレンズの曲率半径のバラつきの程度rを10%とした。
【0076】
図10(c)は、実施例2に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。実施例2において、主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は−11.7°以上11.7°以下の範囲内であった。
【0077】
図13は、実施例2に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図13(a)はx方向の拡散特性であり、
図13(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向の拡散強度の標準偏差σ
xは0.023W/cm
2であり、x方向の拡散強度の標準偏差σ
xyは0.027W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、16.6°であり、xy方向の10%角度幅は22.0°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、0.75であった。
【0078】
実施例3は、列仮想線及び行仮想線のバラつきの程度g
x、g
yを20%、頂点位置のx方向及びy方向のバラつきの程度T
x、T
yを20%、マイクロレンズの曲率半径のバラつきの程度rを20%とした。
【0079】
図10(d)は、実施例3に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。実施例3において、主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は−12.5°以上12.5°以下の範囲内であった。
【0080】
図14は、実施例3に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図14(a)はx方向の拡散特性であり、
図14(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向の拡散強度の標準偏差σ
xは0.022W/cm
2であり、x方向の拡散強度の標準偏差σ
xyは0.024W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、18.0°であり、xy方向の10%角度幅は22.0°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、0.82であった。
【0081】
実施例4は、列仮想線及び行仮想線のバラつきの程度g
x、g
yを30%、頂点位置のx方向及びy方向のバラつきの程度T
x、T
yを30%、マイクロレンズの曲率半径のバラつきの程度rを30%とした。
【0082】
図10(e)は、実施例4に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。実施例4において、主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は−19.3°以上19.3°以下の範囲内であった。
【0083】
図15は、実施例4に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図15(a)はx方向の拡散特性であり、
図15(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向の拡散強度の標準偏差σ
xは0.019W/cm
2であり、x方向の拡散強度の標準偏差σ
xyは0.024W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、18.5°であり、xy方向の10%角度幅は23.2°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、0.80であった。
【0084】
実施例5は、列仮想線及び行仮想線のバラつきの程度g
x、g
yを40%、頂点位置のx方向及びy方向のバラつきの程度T
x、T
yを40%、マイクロレンズの曲率半径のバラつきの程度rを40%とした。
【0085】
図10(f)は、実施例5に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。実施例5において、主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は−27.7°以上27.7°以下の範囲内であった。
【0086】
図16は、実施例5に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図16(a)はx方向の拡散特性であり、
図16(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向の拡散強度の標準偏差σ
xは0.020W/cm
2であり、x方向の拡散強度の標準偏差σ
xyは0.027W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、19.4°であり、xy方向の10%角度幅は22.0°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、0.88であった。
【0087】
実施例6は、列仮想線及び行仮想線のバラつきの程度g
x、g
yを50%、頂点位置のx方向及びy方向のバラつきの程度T
x、T
yを50%、マイクロレンズの曲率半径のバラつきの程度rを50%とした。
【0088】
図10(g)は、実施例6に係るマイクロレンズアレイの主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角の分布図である。実施例6において、主辺の行仮想線または列仮想線に対する傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4は−35.9°以上35.9°以下の範囲内であった。
【0089】
図17は、実施例6に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図17(a)はx方向の拡散特性であり、
図17(b)はxy方向の拡散特性である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。x方向の拡散強度の標準偏差σ
xは0.018W/cm
2であり、x方向の拡散強度の標準偏差σ
xyは0.023W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、23.2°であり、xy方向の10%角度幅は23.2°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、1.00であった。
【0090】
「比較例2」
比較例2は、マイクロレンズを配列させずにランダムにした点が比較例1と異なる。隣接するマイクロレンズの頂点間隔の平均は80μm、マイクロレンズの曲率半径の平均は150μmとした。基板の450nmの波長の光に対する屈折率は、比較例1と同様に、1.47とした。マイクロレンズを配列していないため、拡散光は円形であった。
【0091】
図18は、比較例2に係るマイクロレンズアレイの拡散特性である。
図18は任意の位置方向(例えばx方向)の拡散特性である。拡散光が円形のため、拡散特性はいずれの方向でも略同一である。横軸は、入射光に対する角度であり、縦軸は拡散光の強度である。
拡散強度の標準偏差σは0.031W/cm
2であった。またx方向の10%角度幅は、22.5°であり、xy方向の10%角度幅は22.4°であった。xy方向の10%角度幅に対するx方向の10%角度幅の比は、1.00であった。
【0092】
上記の作製条件を表1に、作製したマイクロレンズアレイの特性を表2にまとめた。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
正方形の1辺を1とした場合、対角線の長さは約1.414である。すなわち、x方向の長さをxy方向の長さで割った比は、約0.70である。すなわち、マイクロレンズアレイの拡散光におけるx方向とxy方向の角度幅の比が0.70に近いほど、拡散光の形状は四角形となる。実施例1〜5は、比較例2に対して拡散光が四角形に近いと言える。
実施例6は、拡散光の形状が円形に近づいているが、強度の標準偏差が比較例2より小さく、拡散光の強度の均一性が高まっていると言える。
【0096】
また
図19に、実施例1〜6、比較例1、比較例2の光学特性の結果をまとめた。
図19における丸のドットは、実施例1〜6、比較例1のx/xyをプロットした結果であり、三角のドットは、実施例1〜6、比較例1のxy方向の強度の標準偏差σxyをプロットした結果であり、四角のドットは、実施例1〜6、比較例1のx方向の強度の標準偏差σxをプロットした結果である。また比較例2のマイクロレンズアレイの標準偏差0.031W/cm
2をグラフに同時に表記した。実施例1〜6のマイクロレンズアレイは、いずれもx方向及びxy方向の強度の標準偏差σ
x、σ
xyがいずれも、比較例2のマイクロレンズアレイの標準偏差より値が小さく、実施例1〜6のマイクロレンズアレイから拡散された拡散光が均一であることを示している。