(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<発明者の得た知見>
まず、発明者の得た知見について説明する。
【0018】
本発明者は、カメラを精度よく調整するため、テストチャートとして3次元構造を有するチャートを検討した。しかしながら、テストチャートの構造などによっては、焦点位置の検出精度が低くなる可能性があることを見出した。
【0019】
ここで、
図19A、
図19Bおよび
図20を用い、比較例のテストチャート90について説明する。
図19Aは、比較例に係るテストチャートを示す斜視図である。
図19Bは、比較例に係るテストチャートをカメラで撮像した画像の拡大図である。
図20は、比較例における画素数に対する明るさの対応関係を示す図である。
【0020】
カメラを調整するためのチャートとしては、例えば、
図19Aに示すような比較例のテストチャート90が考えられる。比較例のテストチャート90は、例えば、3角柱構造を備え、カメラの光軸に対して傾斜して配置される1つの斜面914を有している。斜面914は、例えば、パターン916として、白と黒との境界を形成する境界線を有している。このような3角柱構造を備える比較例のテストチャート90の画像を取得することで、画像内でのパターン916の検出結果に基づいて、光軸方向のカメラの焦点位置を容易に検出することができる。
【0021】
しかしながら、比較例のテストチャート90では、1つの斜面914しか設けられていないため、焦点位置として得られるデータは、当該斜面914に沿って延在した境界線に基づいて得られる1つのデータのみである。このため、焦点位置の検出精度が低くなる可能性がある。例えば、カメラの光軸の傾きを精度よく検出することが困難となる。
【0022】
また、比較例では、例えば、
図19Bに示すように、カメラが撮像したときに境界線と画素配列方向とが平行となるように、テストチャート90が配置される。
【0023】
しかしながら、比較例では、例えば、
図20に示すように、境界線と交差する所定の評価領域において指標値としての明るさの変化を検出したときに、各画素の指標値としての明るさが画素ピッチで(単位pixelごとに)プロットされる。また、画像内で指標値の変化が境界線の延在方向に均等であるため、所定の指標値を示す複数点が重なってプロットされる。このため、画素ピッチよりも小さい範囲内での指標値の変化を検出することが困難となる。すなわち、指標値の変化の検出精度が低くなる。その結果、焦点位置の検出精度が低くなる可能性がある。
【0024】
以上のように、比較例では、焦点位置の検出精度が低くなることがあるため、カメラにおける光学系と撮像素子との相対的な位置を精度よく調整することができない可能性がある。
【0025】
以下の本発明は、発明者等が見出した上記新規課題に基づくものである。
【0026】
<本発明の第1実施形態>
(1)テストチャート
本実施形態に係るテストチャート10について、
図1〜
図2Bを用いて説明する。
図1および
図2Aは、それぞれ、本実施形態に係るテストチャートを示す斜視図および平面図である。なお、
図1において支持板190は実際よりも小さく示されており、
図2Aにおいて支持板190は省略している。
図2Bは、本実施形態に係るテストチャートをカメラで撮像した画像の拡大図である。
【0027】
なお、以下において、テストチャート10がカメラ製造装置1内に配置されたときのカメラ20を基準として、光学系220の光軸方向を「Z方向」といい(テストチャート10からカメラ20に向けて+とする)、光学系220の光軸に直交する撮像素子240の画素配列方向のうちの1方向を「X方向」といい、光学系220の光軸に直交する撮像素子240の画素配列方向のうちの他方向を「Y方向」ということがある。また、Z方向を軸とした回転方向を「θ
Z方向」といい、X方向を軸とした回転方向を「θ
X方向」といい、Y方向を軸とした回転方向を「θ
Y方向」ということがある。
【0028】
図1および
図2Aに示すように、本実施形態のテストチャート10は、例えば、3次元構造(立体構造)を備えている。テストチャート10は、例えば、カメラ20における光学系220と撮像素子240との位置を調整するために用いられるパターン160を斜面140に有している。
【0029】
具体的には、本実施形態のテストチャート10は、例えば、支持板190と、3次元ブロック(3Dブロック)110と、を有している。
【0030】
支持板190は、例えば、板状部材として構成され、3Dブロック110を支持するよう構成されている。支持板190は、例えば、外からの光、例えば部屋の照明光が入らないようにするため、黒く塗装したアルミ合金からなっている。平面視での支持板190の形状は、例えば、四角形(長方形)である。
【0031】
支持板190は、後述のカメラ製造装置1においてチャート支持部310に支持(固定)されるよう構成されている。支持板190は、例えば、チャート支持部310の所定位置に固定される被固定部(不図示)を有していてもよい。被固定部としては、例えば、ボルトが挿通される貫通孔などが挙げられる。
【0032】
3Dブロック110は、例えば、支持板190上に設けられ、3次元構造を有している。本実施形態の3Dブロック110は、例えば、錐体として構成されている。3Dブロック110が構成する錐体としては、例えば、多角錐(三角錐、四角錐など)、または円錐などが挙げられる。本実施形態では、3Dブロック110は、例えば、四角錐(正四角錐)として構成されている。
【0033】
本実施形態では、3Dブロック110は、例えば、1つ設けられている。3Dブロック110は、例えば、支持板190の中央に設けられている。
【0034】
本実施形態の3Dブロック110は、例えば、底面(不図示)と、頂点120と、斜面140と、を有している。
【0035】
3Dブロック110の底面は、例えば、支持板190の上面に接し、支持板190に対して固定されている。本実施形態では、底面の形状は、例えば、4つの直交する底辺を有する正方形である。
【0036】
頂点120は、例えば、支持板190から所定の高さに設けられている。
【0037】
具体的には、例えば、以下の手順で、頂点120の高さを設定する。完成品のカメラモジュールの仕様をもとに、目標焦点位置を定める。このとき、目標焦点位置は、後述するリレーレンズ320を交換することによっても調整できる。例えば、数m先で焦点が合うように組立てるカメラ20の場合でも、数m先の焦点位置を200mm程度に変換するリレーレンズ320を選択すれば、数mを超える大きなカメラ製造装置1を製作する必要は無い。ここでいう200mm程度の距離はカメラ製造装置1を製作しやすい大きさである。次に、その目標焦点位置を、3Dブロック110の中央、すなわち頂点120の高さの半分とする。次に、組立前のカメラ20の焦点位置を測定できるように、頂点120の高さを設定する。ここで、組立前のカメラ20の焦点位置は、カメラ支持部340およびカメラ調整機構360の運動誤差でばらつく可能性がある。従って、それらの機構の精度が高ければ、頂点120の高さを低くすることができる。反対に、頂点120の高さを高くすれば、上述の機構の精度を下げることができる。
【0038】
本実施形態では、頂点120は、例えば、平面視で3Dブロック110(支持板190)の中央に位置している。
【0039】
斜面140は、例えば、底辺と頂点120とを繋ぎ、底面の法線方向に対して傾斜して設けられている。例えば、当該斜面140が、調整対象のカメラ20の光学系220の光軸に対して傾斜するように、テストチャート10が後述のチャート支持部310に支持される。
【0040】
本実施形態では、斜面140は、例えば、4つ設けられている。4つの斜面140は、例えば、頂点120を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜している。本実施形態では、4つの斜面140のそれぞれの形状は、例えば、二等辺三角形となっている。
【0041】
斜面140は、例えば、パターン160を有している。ここでいう「パターン160」とは、カメラ20が撮像可能な図柄または模様などのことを意味する。
【0042】
本実施形態では、例えば、複数の斜面140のそれぞれが、パターン160を有している。複数のパターン160は、例えば、頂点120側からそれぞれ異なる傾斜方向に沿って連続的に延在している。パターン160が斜面140に沿って連続していることで、連続したパターン160上でカメラ20の焦点位置(後述の暫定焦点位置)を精度よく検出することができる。また、複数のパターン160が異なる傾斜方向に沿って延在していることで、複数のパターン160の検出結果の相関に基づいて、カメラ20の最適焦点位置を検出することができる。
【0043】
本実施形態では、複数のパターン160は、例えば、頂点120の上方(直上)から見たときに(実空間で目視したときに、すなわち設計上では)頂点120を中心として点対称となるように設けられている。これにより、頂点12に対して点対称な各パターン160の検出結果に基づいて、カメラ20の焦点位置をバランスよく検出することができる。
【0044】
なお、カメラ20によって撮像した画像内では、複数のパターン160は、必ずしも点対称とならない。例えば、調整前のカメラ20の光学系220の向きが正面に向いていない影響、または光学系220の歪曲収差の影響などが考えられる。
【0045】
本実施形態では、斜面140は、パターン160として、例えば、少なくとも1つの境界線162を有している。境界線162は、例えば、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成している。また、境界線162は、例えば、該斜面140の傾斜方向に沿って直線状に延在している。
【0046】
本実施形態では、斜面140のそれぞれは、例えば、複数の境界線162を有している。具体的には、斜面140は、例えば、黒色の素地面に対して開設されたスリット(線状開口)を有している。すなわち、スリットの両辺が、境界線162a,162bを構成している。
【0047】
また、
図2Aに示すように、スリットは、例えば、斜面140ごとに1つずつ設けられている。合計で4つのスリットは、平面視で十字状に配置され、4つのスリットをそれぞれ延長した4つの仮想直線は、頂点120で交差している。これにより、上述のように、実空間で目視したときに、頂点120を中心として点対称となっている。
【0048】
なお、
図1に示すように、境界線162上の所定点(例えば、後述の暫定焦点位置)について、Zは、支持板190上のZ(高さ)方向の座標であり、Lは、平面視(画像)で境界線162の下端から境界線162に沿った方向の距離である。
【0049】
(画像内での配置)
ここで、
図2Bを用いて、調整対象のカメラ20が撮像した画像における境界線162の配置について説明する。
【0050】
図2Bに示すように、本実施形態では、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10が配置される。言い換えれば、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが交差するように、テストチャート10が配置される。これにより、画素ピッチよりも細かいピッチで、画素の指標値の変化を検出することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、カメラ20が撮像したときに境界線162が撮像素子240の画素配列方向に対して直線状に傾くように、テストチャート10が配置される。
【0052】
画素配列方向に対する境界線162の傾斜角度αは、例えば、0.02rad超である。これにより、50列の画素のデータを補間して、1ピクセル相当の指標値を評価することができる。ただし、実際には、後述の評価領域ERの列数を増やすと、画像横方向の分解能、すなわち焦点位置のZ方向の分解能が悪くなる傾向がある。すなわち、補間精度が向上するほど、画像横方向の分解能が悪化する傾向がある。そのため、実際には、評価領域ERの列数を、10列以上30列以下としている。
【0053】
一方で、画素配列方向に対する境界線162の傾斜角度αは、例えば、約0.79rad(45°)以下である。これにより、1画素より細かい指標値の変化を精度良く把握することができる。
【0054】
なお、カメラ20が撮像したときには、光学系220の歪曲の影響を受けることが考えられる。しかしながら、本実施形態では、カメラ20が撮像したときに、光学系220の歪曲のみに起因したずれよりも大きく、境界線162が撮像素子240の画素配列方向に対してずれるように、テストチャート10が配置される。つまり、カメラ20が撮像したときの画素配列方向に対する境界線162のずれは、例えば、光学系220の歪曲起因成分と、撮像素子240の画素配列方向に対して直線状に傾く成分と、を有することとなる。
【0055】
また、カメラ20が撮像したときには、結像倍率の違いに起因して、カメラ20に近い側のスリットの幅が、底辺側のスリットの幅よりも広くなる。このため、1つのスリットにおいて、一方の境界線162aと他方の境界線162bとが非平行となる。しかしながら、上述の結像倍率の違いに起因した影響を考慮したうえでも、画像CI内で、境界線162a,162bのそれぞれと画素配列方向とが交差していることが好ましい。
【0056】
このような画像CI内での配置が得られる実空間でのテストチャート10の配置としては、例えば、3Dブロック110の4つの底辺のそれぞれが支持板190の4辺(撮像素子240の直交する画素配列方向に相当)のいずれかに平行になっているのに対して、斜面140のそれぞれにおける境界線162は、平面視で4つの底辺のいずれかの延在方向に対して所定の角度αで傾いている。
【0057】
(2)カメラ製造装置
次に、本実施形態に係るカメラ製造装置1について、
図1〜
図5を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係るカメラ製造装置を示す概略構成図である。
図4は、カメラ製造装置に配置されるカメラを示す概略構成図である。
図5は、本実施形態に係る制御部を示すブロック図である。
【0058】
図3に示すように、本実施形態のカメラ製造装置1は、例えば、テストチャート10の検出結果に基づいて、カメラ20における光学系220と撮像素子240との相対的な位置を調整するよう構成されている。具体的には、カメラ製造装置1は、例えば、チャート支持部310と、リレーレンズ320と、カメラ支持部340と、カメラ調整機構360と、カメラ固定部380と、制御部400と、を有している。
【0059】
(カメラ)
ここで、
図4を用い、カメラ製造装置1で調整されるカメラ20について説明する。
図4に示すように、カメラ20は、例えば、光学系220と、オートフォーカス機構(不図示)と、撮像素子240と、回路基板260と、コネクタ280と、を有している。
【0060】
光学系220は、例えば、少なくとも1つのレンズを含むレンズ群(不図示)と、レンズバレル(不図示)と、を有している。レンズバレルは、レンズ群を一体として支持している。
【0061】
オートフォーカス機構は、例えば、レンズ群を支持するレンズバレルを光軸に沿って移動可能に構成されている。オートフォーカス機構としては、例えば、ボイスコイルモータなどのアクチュエータなどが挙げられる。
【0062】
撮像素子240は、例えば、固体イメージセンサとして構成されている。撮像素子240としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)などが挙げられる。
【0063】
撮像素子240は、例えば、光学系220の光軸に対して直交し、且つ、光学系220を介して結像される位置に配置される。当該撮像素子240と光学系220との相対的な位置が、カメラ製造装置1により調整される。
【0064】
回路基板260は、例えば、撮像素子240を搭載し、撮像素子240およびオートフォーカス機構を駆動するよう構成されている。回路基板260上の撮像素子240の周辺には、光学系220を固定するための接着剤262が塗布される。接着剤262としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0065】
コネクタ280は、カメラ20が搭載される携帯電話などに接続可能に構成されている。なお、カメラ製造装置1においても、コネクタ280を介してカメラ20が接続されることとなる。
【0066】
(チャート支持部)
チャート支持部310は、例えば、テストチャート10を支持するよう構成されている。
【0067】
本実施形態のチャート支持部310は、例えば、斜面140が光学系220の光軸に対して傾斜し、且つ、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10を支持するよう構成されている。
【0068】
具体的には、チャート支持部310では、例えば、テストチャート10の支持板190が光学系220の光軸と直交し、且つ、支持板190の中央が光学系220の光軸と一致するように、テストチャート10が配置される。また、チャート支持部310では、例えば、3Dブロック110の斜面140のそれぞれにおける境界線162が撮像素子240の画素配列方向に対して所定の角度αで傾くように、テストチャート10が配置される。
この状態で、テストチャート10の被固定部としての貫通孔にボルトが挿通され、ボルトがチャート支持部310のネジ穴に螺合される。このようにして、テストチャート10がチャート支持部310に固定されるようになっている。
【0069】
なお、チャート支持部310は、例えば、テストチャート10を光軸方向に位置調節可能に構成されていてもよい。具体的には、例えば、送りねじにより、テストチャート10を光軸方向に±50mm程度、移動可能になっていてもよい。
【0070】
チャート支持部310は、例えば、チャート光源312を有している。チャート光源312は、例えば、テストチャート10の裏面側に配置され、3Dブロック110の内側から光を照射し、斜面140のスリットから光を透過させるように構成されている。
【0071】
なお、カメラ製造装置1の側面は、不透明なアクリル板または暗幕で覆われ、遮光されていることが好ましい。
【0072】
(リレーレンズ)
リレーレンズ320は、例えば、テストチャート10の像を撮像素子240の位置に結像するよう構成されている。リレーレンズ320は、例えば、凸レンズとして構成されている。このような構成により、カメラ製造装置1内の物像間距離を短くすることができる。例えば、焦点距離が10mで設計されたカメラ20を調整する場合に、物像間距離を200mmに短くすることができる。なお、リレーレンズ320の光軸がテストチャート10の中央法線とカメラ20の光学系220の光軸と重なるように、リレーレンズ320が配置されている。
【0073】
(カメラ支持部)
カメラ支持部340は、例えば、テストチャート10を撮像可能な位置に、光学系220および撮像素子240を有するカメラ20の少なくとも一部を支持するよう構成されている。本実施形態では、カメラ支持部340は、例えば、撮像素子240、回路基板260およびコネクタ280を支持するよう構成されている。
【0074】
カメラ支持部340には、カメラ20のコネクタ280が接続される。これにより、カメラ製造装置1において撮像素子240によりテストチャート10を撮像することができる。
【0075】
(カメラ調整機構)
カメラ調整機構360は、例えば、カメラ20の焦点位置に基づいて、光学系220および撮像素子240の相対的な位置を調整するよう構成されている。
【0076】
具体的には、カメラ調整機構360は、例えば、Z方向、X方向、Y方向、θ
Z方向、θ
X方向およびθ
Y方向に光学系220を調整可能に構成されている。さらに、カメラ調整機構360は、例えば、撮像素子240を支持するカメラ支持部340をX方向およびY方向に調整可能に構成されていてもよい。
【0077】
(カメラ固定部)
カメラ固定部380は、例えば、光学系220と撮像素子240とを固定するよう構成されている。具体的には、カメラ固定部380は、例えば、紫外線を出射する光源として構成されている。例えば、カメラ固定部380からの紫外線を回路基板260上の接着剤262に向けて照射し、接着剤262を硬化させることで、光学系220と撮像素子240とを固定することができる。
【0078】
(制御部)
制御部400は、例えば、カメラ製造装置1の各部を制御し、カメラ20が撮像したテストチャート10の画像に基づいて、カメラ20を調整するよう構成されている。
【0079】
具体的には、
図5に示すように、制御部400は、コンピュータとして構成され、例えば、CPU(Central Processing Unit)410と、RAM(Random Access Memory)420と、記憶装置430と、I/Oポート440と、入力部450と、表示部460と、を有している。RAM420、記憶装置430、およびI/Oポート440は、CPU410とデータ交換可能に構成されている。
【0080】
I/Oポート440は、例えば、チャート光源312、カメラ支持部340、カメラ調整機構360、およびカメラ固定部380に接続されている。なお、I/Oポート440は、カメラ支持部340を介してカメラ20の撮像素子240に接続されている。
【0081】
記憶装置430は、例えば、カメラ20の焦点検出に係るプログラム、カメラ調整機構360を制御するプログラム、テストチャート10の画像などを記憶するよう構成されている。記憶装置430は、例えば、HDD(Hard disk drive)またはSSD(Solid State Drive)などである。
【0082】
RAM420は、CPU410によって記憶装置430から読み出されるプログラムや情報等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0083】
CPU410は、記憶装置430に格納された所定のプログラムを実行することで、画像解析部、カメラ調整制御部として機能するように構成されている。
【0084】
画像解析部は、例えば、テストチャート10を撮像した画像を解析し、カメラ20の焦点位置を検出するよう構成されている。
カメラ調整制御部は、例えば、カメラ20の焦点位置に基づいて、光学系220および撮像素子240の相対的な位置を調整するよう、カメラ調整機構360を制御するよう構成されている。
上述の各部によるカメラ製造方法については、詳細を後述する。
【0085】
上述の各部を実現するための所定プログラムは、例えば、制御部400が構成するコンピュータにインストールして用いられる。プログラムは、例えば、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。或いは、プログラムは、例えば、制御部400と接続する通信回線(光ファイバ等)を通じて当該コンピュータへ提供されるものであってもよい。
【0086】
表示部460は、例えば、テストチャート10の画像、後述の補正画素数に対する指標値のグラフ、各評価領域における補間曲線を周波数解析したグラフ、境界線の位置に対するピーク空間周波数を示すグラフなどを表示するよう構成されている。表示部460は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(OLED)ディスプレイなどである。
【0087】
入力部450は、例えば、ユーザが所定の操作を行う情報を制御部400に入力可能に構成されている。入力部450は、例えば、マウス、キーボードなどである。
【0088】
なお、表示部460および入力部450は、タッチパネル等により両者を兼ねて構成されていてもよい。
【0089】
(3)カメラの製造方法
次に、
図1、
図4〜
図11を用い、本実施形態のカメラの製造方法について説明する。
図6は、本実施形態に係るカメラの製造方法を示すフローチャートである。
図7は、テストチャートを撮像したときの画像である。
図8Aは、テストチャートにおける1つのパターンを拡大した図である。
図8Bは、評価領域を示す画像である。
図9は、本実施形態における補正画素数に対する明るさの対応関係を示す図である。
図10は、各評価領域における補間曲線を周波数解析した図である。
図11は、境界線の位置に対するピーク空間周波数の対応関係を示す図である。
【0090】
図6に示すように、本実施形態のカメラの製造方法は、例えば、準備工程S100と、撮像工程S200と、画像解析工程S310〜S370と、焦点誤差算出工程S400と、焦点位置判定工程S520と、カメラ位置調整工程S540と、カメラ固定工程S600と、を有している。準備工程S100よりも後の各工程は、制御部400により処理または制御される。
【0091】
(S100:準備工程)
まず、本実施形態のテストチャート10を準備する。
【0092】
このとき、例えば、斜面140が光学系220の光軸に対して傾斜し、且つ、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、チャート支持部310によりテストチャート10を支持する。テストチャート10を配置したら、チャート光源312を起動し、テストチャート10に光を照射する。
【0093】
また、調整対象のカメラ20をカメラ製造装置1に配置する。
【0094】
このとき、例えば、テストチャート10を撮像可能な位置に、カメラ20の少なくとも一部をカメラ支持部340により支持する。カメラ支持部340によりカメラ20を支持する際には、カメラ20のコネクタ280をカメラ支持部340に接続する。また、光学系220および撮像素子240の相対的な位置を調整可能なように、光学系220および撮像素子240の少なくとも一部をカメラ調整機構360に配置する。
【0095】
(S200:撮像工程)
次に、
図7に示すように、上述のカメラ20を用い、テストチャート10を撮像することで、テストチャート10の画像CIを取得する。
【0096】
このとき、例えば、上述のテストチャート10の配置により、画像CI内では、テストチャート10の境界線162と画素配列方向とが非平行となっている。
【0097】
(S310〜S370:画像解析工程)
次に、テストチャート10を撮像した画像CIを解析し、カメラ20の焦点位置を検出する。
【0098】
本実施形態では、例えば、テストチャート10を撮像した画像CIにおいて、境界線162の検出結果に基づいて、カメラ20の焦点位置を検出する。
【0099】
具体的には、画像解析工程S310〜S370は、例えば、評価領域選択工程S310と、指標値取得工程S320と、補間工程S330と、周波数解析工程S340と、全評価領域終了判定工程S350と、暫定焦点位置検出工程S360と、全境界線終了判定工程S370と、を有している。
【0100】
(S310:評価領域選択工程)
図8Aに示すように、テストチャート10の画像CI内で、境界線162と交差した複数の画素を含む評価領域ERを選択する。
【0101】
このとき、
図8Aに示すように、例えば、境界線162の延在方向に沿って位置が異なる複数の評価領域ERを選択する。具体的には、例えば、本実施形態のテストチャート10におけるパターン160としての4つのスリットのなかから、1つのスリットを選択する。次に、当該パターン160としてのスリットの一辺を構成する境界線162aに沿って、複数の評価領域ERを選択する。また、例えば、境界線162aに沿って所定の等しい間隔で、複数の評価領域ERを選択する。
【0102】
また、このとき、
図8Bに示すように、評価領域ERとして、例えば、境界線162と交差する複数の画素列を選択する。また、評価領域ERの形状を、例えば、直交する2つの画素配列方向にそれぞれ平行な2辺を有する長方形とする。また、評価領域ERの列数を、上述のように画像横方向の分解能に基づいて設定し、例えば、10列以上30列以下とする。
【0103】
(S320:指標値取得工程)
次に、評価領域ER内の各画素において、画素の色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの指標値(画素値)を取得する。
【0104】
また、
図8Bの評価領域ER内の各画素において、評価領域ERの角部を通り境界線162に平行な基準線から起算した補正画素数d’を求める。境界線162は画素配列方向に対して角度αで傾斜していることから、補正画素数d’は、以下の式(1)により求められる。
d’=d+ntanα ・・・(1)
ただし、dは、評価領域ERの一端から評価領域ER内で境界線162と交差する画素配列方向(評価領域ERの長手方向、図縦方向)への画素数(画素行数)(単位pixel)である。nは、評価領域ERの画素列数である。
【0105】
これらの結果に基づき、
図9に示すように、評価領域ER内の各画素において、補正画素数d’に対する画素の指標値の対応関係を取得する。なお、
図9の縦軸は、例えば、指標値としての明るさ(輝度)である。
【0106】
このとき、例えば、横軸を画素配列方向への画素数dとすると、各画素の指標値が画素ピッチで(単位pixelごとに)プロットされる。このため、上述した比較例と同じような課題が生じる可能性がある。
【0107】
これに対して、本実施形態では、横軸を、評価領域ERの角部を通り境界線162に平行な基準線から起算した補正画素数d’とすることで、評価領域ERの列1本ごとに、補正画素数d’がtanαだけずれた指標値を得ることができる。tanα≦1、すなわち、α≦0.79rad(45°)とすることで、各画素の指標値を画素ピッチよりも短いピッチでプロットすることができる。つまり、サンプリングピッチを仮想的に短くすることが可能となる。その結果、境界線162と交差する方向において、1画素より細かい指標値の変化を精度よく把握することが可能となる。
【0108】
(S330:補間工程)
次に、
図9に示すように、評価領域ER内の補正画素数d’と画素の指標値との対応関係としての離散的データを補間することで、補間曲線(補間関数)ICを取得する。
【0109】
具体的な補間方法としては、特に限定されないが、例えば、直線補間法、またはスプライン補間法などが挙げられる。
【0110】
(S340:周波数解析工程)
次に、補間工程S330で得られた明るさの変化を示す補間曲線ICを周波数解析(フーリエ変換)する。これにより、
図10の1つの曲線として示すように、空間周波数に対する周波数応答(SFR:Spatial Frequency Response)の曲線を取得する。なお、以下において、空間周波数に対する周波数応答の曲線を「周波数応答曲線」ともいう。
【0111】
以上のようにして、境界線162の延在方向に沿って位置が異なる複数の評価領域ERにおいて、評価領域選択工程S310、指標値取得工程S320、補間工程S330および周波数解析工程S340を行う。
【0112】
(S350:全評価領域終了判定工程)
次に、1つの境界線162において選択した全ての評価領域ERについて、評価領域選択工程S310から周波数解析工程S340までの工程が終了しているか否かを判定する。
【0113】
全ての評価領域ERについて、評価領域選択工程S310から周波数解析工程S340までの工程が終了していない場合には(S350でNo)、残りの評価領域ERについてこれらの工程を行う。
【0114】
(S360:暫定焦点位置検出工程)
全ての評価領域ERについて、評価領域選択工程S310から周波数解析工程S340までの工程が終了した場合には(S350でYes)、
図10に示すように、全ての評価領域ERのそれぞれにおいて周波数応答曲線が得られる。
【0115】
このとき、本実施形態では、例えば、複数の評価領域ERのなかで、補正画素数d’に対する指標値の変化が最も急である評価領域ER内の位置を暫定焦点位置として検出する。ここでいう「暫定焦点位置」とは、1つの境界線162における複数の評価領域ERの検出結果に基づいて検出された暫定的な焦点の候補位置のことを意味する。
【0116】
具体的には、
図10に示すように、各評価領域ERにおいて、所定の基準(Criteria)以上の周波数応答を有する空間周波数の最大値を、「最適空間周波数(Best
Frequency)」として求める。
【0117】
次に、
図11に示すように、境界線162に沿った方向の各評価領域ERの中心位置(L)に対する、最適空間周波数の対応関係を取得する。当該対応関係を取得したら、対応関係を所定の近似関数によりフィッティングする。
【0118】
近似関数が得られたら、近似関数において最も高い空間周波数をピーク空間周波数として求める。このとき、ピーク空間周波数が得られた位置では、指標値の変化が最も急であったことに相当する。したがって、当該ピーク空間周波数が得られた位置を、境界線162における暫定焦点位置として特定する。
【0119】
暫定焦点位置を特定したら、画像CIにおいて、境界線162の下端から境界線162に沿った方向に暫定焦点位置までの距離Lに基づいて、実空間での暫定焦点位置の座標(3次元座標)B
mn1(X,Y,Z)を求める。なお、テストチャート10の支持板190の中心点の座標が(0,0,0)とする。
【0120】
(S370:全境界線終了判定工程)
次に、所定の境界線162において暫定焦点位置を求めたら、テストチャート10が有する全ての境界線162について、評価領域選択工程S310から暫定焦点位置検出工程S360までの工程が終了しているか否かを判定する。
【0121】
全ての境界線162について、評価領域選択工程S310から暫定焦点位置検出工程S360までの工程が終了していない場合には(S370でNo)、残りの境界線162についてこれらの工程を行う。
【0122】
(S400:焦点誤差算出工程)
全ての境界線162について、評価領域選択工程S310から暫定焦点位置検出工程S360までの工程が終了した場合には(S370でYes)、
図2Aに示すように、全ての境界線162のそれぞれにおいて暫定焦点位置(座標B
111〜B
142)が得られる。
【0123】
このとき、本実施形態では、例えば、複数の境界線162の検出結果の相関に基づいて、カメラ20の最適焦点位置を検出する。
【0124】
具体的には、まず、1つのスリットにおける境界線162a,162bにおける暫定焦点位置の座標に基づいて、平均焦点位置の座標を求める。平均焦点位置の座標B
mnは、例えば、以下の式(2)により求められる。
B
mn=(B
mn1+B
mn2)/2 ・・・(2)
ただし、mは3Dブロック110を特定する自然数であり、nは斜面140を特定する自然数である。B
mn1は、1つのスリットにおける一方の境界線162aの暫定焦点位置の座標であり、B
mn2は、1つのスリットにおける他方の境界線162bの暫定焦点位置の座標である。
【0125】
次に、複数のスリットのそれぞれにおいて平均焦点位置の座標B
mnを求めたら、平均焦点位置の座標B
mnに基づいて、カメラ20の最適焦点位置の座標B
mを求める。最適焦点位置の座標B
mは、例えば、以下の式(3)により求められる。
B
m=(B
m1+B
m2+B
m3+B
m4)/4 ・・・(3)
【0126】
なお、上述の暫定焦点位置の座標B
mn1,B
mn2、および平均焦点位置の座標B
mnのうち、異常な座標が検出されていた場合には、少なくとも異常な座標が検出された境界線162などについて画像解析工程S310〜S370をやり直してもよい。
【0127】
以上のようにして、カメラ20の最適焦点位置の座標B
mを求めたら、以下の手順で、カメラ20の焦点面の傾斜角度θ
x、θ
yと、焦点面の中心位置の座標(C
x,C
y,C
z)を求める。
【0128】
具体的には、例えば、全ての境界線162における暫定焦点位置の座標B
ijkに基づいて、以下の式(4)により、焦点面の方程式を求める。
z=ax+by+c ・・・(4)
ただし、iは3Dブロック110を特定する自然数であり(本実施形態では1)、jは斜面140を特定する自然数であり、kは同一斜面140での境界線162を特定する自然数である。a、bおよびcは定数である。
【0129】
本実施形態では、3点超の暫定焦点位置の座標B
ijkが得られるため、例えば、最小二乗法により、定数a、bおよびcを最適化する。この計算方法はカーブフィットと呼ばれることがある。
【0130】
なお、上述で求めた一対の境界線162a,162bにおける平均焦点位置の座標B
ij、または、各3Dブロック110における最適焦点位置の座標B
iに基づいて、定数a、bおよびcを最適化してもよい。
【0131】
次に、焦点面の中心位置の座標のうち、C
x,C
yを求める。具体的には、まず、スリットの中心線を延長した交点を求める。n本のスリットがあると、n×(n−1)個の交点を計算することができる。これらの交点を平均することで、最適交点を求める。その結果、最適交点の座標に基づいて、C
x,C
yを求める。
【0132】
次に、焦点面の中心位置の座標C
x,C
yに基づいて、式(4)によりC
zを求める。
【0133】
また、上述の式(4)における定数に基づいて、以下の式から傾斜角度θ
x、θ
yを求める。
θ
x=−b
θ
y=−a
【0134】
このようにしてカメラ20の焦点面の傾斜角度θ
x、θ
yと、焦点面の中心位置の座標(C
x,C
y,C
z)を求めたら、それぞれの値と目標値との誤差を計算する。なお、目標値は例えば0である。このようにして求められる誤差を以下では「焦点誤差」ともいう。焦点誤差は、カメラ20の光学系220の位置および姿勢の誤差に相当する。
【0135】
(S520:焦点位置判定工程)
焦点誤差を求めたら、カメラ20の焦点位置が良好か否かを判定する。
【0136】
具体的には、例えば、上述の焦点誤差が予め設定した許容値以下であるか否かを判定する。
【0137】
(S540:カメラ位置調整工程)
カメラ20の焦点位置が良好でない場合には(すなわち、焦点誤差が許容値よりも大きい場合、S520でNo)、当該カメラ20の焦点位置に基づいて、光学系220および撮像素子240の相対的な位置をカメラ調整機構360により調整する。
【0138】
具体的には、例えば、上述の焦点誤差が0(ゼロ)になるように、Z方向、X方向、Y方向、θ
Z方向、θ
X方向およびθ
Y方向に光学系220を調整する。
【0139】
カメラ20の調整後は、撮像工程S200以降の工程を再度行う。
【0140】
(S600:カメラ固定工程)
一方で、カメラ20の焦点位置が良好である場合には(すなわち、焦点誤差が予め設定した許容値以下である場合、S520でYes)、カメラ固定部380により、光学系220と撮像素子240とを固定する。
【0141】
具体的には、例えば、カメラ固定部380からの紫外線を回路基板260上の接着剤262に向けて照射し、接着剤262を硬化させる。これにより、光学系220と撮像素子240とを固定する。
【0142】
以上により、本実施形態のカメラ製造工程を終了する。
【0143】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0144】
(a)本実施形態では、斜面140が光学系220の光軸に対して傾斜し、且つ、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10が配置される。例えば、テストチャート10の画像CI内で、境界線162と交差した評価領域ERを選択し、評価領域ER内の各画素において、評価領域ERの角部を通り境界線162に平行な基準線から起算した補正画素数d’に対する指標値の対応関係を取得する。これにより、評価領域ERの列1本ごとに、補正画素数d’がtanαだけずれた指標値を得ることができる。tanα≦1、すなわち、α≦0.79rad(45°)とすることで、各画素の指標値を画素ピッチよりも短いピッチでプロットすることができる。つまり、サンプリングピッチを仮想的に短くすることが可能となる。その結果、境界線162と交差する方向において、1画素より細かい指標値の変化を精度よく把握することが可能となる。
【0145】
このように、境界線162と交差する方向の指標値の変化を精度よく把握することで、境界線162における焦点位置(上述の暫定焦点位置)を精度よく検出することができる。その結果、カメラ20における光学系220と撮像素子240との相対的な位置を精度よく調整することが可能となる。
【0146】
(b)本実施形態では、テストチャート10の斜面140は、複数の境界線162を有している。これにより、同一斜面140内の近接する複数の箇所に位置する暫定焦点位置に基づいて、平均焦点位置を検出することができる。その結果、同一斜面140内での焦点位置精度を向上させることができる。
【0147】
(c)本実施形態では、テストチャート10の斜面140は、頂点120を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜している。斜面140における複数のパターン160は、頂点120側からそれぞれ異なる傾斜方向に沿って連続的に延在している。パターン160が斜面140に沿って連続していることで、連続したパターン160上でカメラ20の暫定焦点位置を精度よく検出することができる。また、複数のパターン160が異なる傾斜方向に沿って延在していることで、複数のパターン160の検出結果の相関に基づいて、カメラ20の最適焦点位置を検出することができる。これらの結果、カメラ20の調整精度を向上させることが可能となる。
【0148】
(d)本実施形態では、テストチャート10は、4つ以上の斜面140を有している。当該4つの斜面140のそれぞれにおけるパターン160の検出結果の相関に基づいて、最適焦点位置を検出する。
【0149】
ここで、最適焦点位置の3次元座標は、3つの測定データがあれば算出可能である。しかしながら、3つの測定データの少なくともいずれかが測定誤差を有している可能性がある。測定誤差の原因としては、例えば、カメラの撮像素子に付着した異物による画質劣化、光学系の製造誤差などの様々な原因が考えられる。このような測定誤差が生じた場合、最適焦点位置の精度が低下する可能性がある。
【0150】
これに対し、本実施形態では、4つの斜面140のそれぞれにおけるパターン160の検出結果の相関に基づいて、最適焦点位置を検出することで、測定データ数を増やし、冗長性を確保することができる。これにより、4つの斜面140のそれぞれにおける測定データのいずれかに測定誤差が生じていたとしても、最適焦点位置の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0151】
(e)本実施形態では、境界線162の延在方向に沿って位置が異なる複数の評価領域ERにおいて、画像解析工程を行う。その後、複数の評価領域ERのなかで、補正画素数d’に対する指標値の変化が最も急である評価領域ER内の位置を暫定焦点位置として検出する。
【0152】
ここで、他の比較例として、例えば、複数の平面チャートを光学系の光軸方向に所定の間隔で配置し、それぞれの位置での平面チャートの検出結果に基づいて、カメラの焦点位置を検出する方法が考えられる。しかしながら、当該方法では、得られるデータ数は平面チャート数で制限されるため、焦点位置の検出精度が低くなる可能性がある。また、複数の平面チャートを互いに干渉することがないよう配置するため、平面チャート数を増やすことが困難である。また、複数の平面チャートをそれぞれ平行に配置しなければならず、装置の構造が複雑となる。この理由においても、平面チャート数を増やすことが困難である。さらに、平面チャートの位置を変えて複数回にわたって平面チャートを撮像しなければならないため、カメラの製造工程が複雑化し、製造時間が長くなる可能性がある。
【0153】
これに対し、本実施形態では、3次元構造を有するテストチャート10を撮像した画像CI内において、複数の評価領域ERを選択することで、それぞれの評価領域ERの位置を、境界線162に沿った任意の位置とすることができる。また、評価領域ER同士の間隔を、上述の平面チャートを用いた場合の実空間での間隔よりも狭い間隔で選択することができる。また、評価領域ERの数を任意の数とし、上述の平面チャートを用いた場合の数よりも容易に増やすことができる。また、評価領域ERのサイズを任意のサイズとし、かつ、評価領域ER同士のサイズを容易に均等にすることができる。これらの結果、境界線162上での暫定焦点位置の検出精度を向上させることが可能となる。
【0154】
また、本実施形態では、テストチャート10を1回だけ撮像するだけで、複数の評価領域ERを選択することができる。これにより、カメラ20の製造工程を簡略化し、製造時間を短縮することができる。
【0155】
(5)本発明の第1実施形態の変形例
上述の実施形態では、テストチャート10の斜面140が複数の境界線162を有する場合について説明したが、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0156】
以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下の第2実施形態および第3実施形態などについても、本変形例と同様に説明を省略する。
【0157】
図12Aおよび
図12Bを用い、本実施形態の変形例に係るテストチャート10について説明する。
図12Aおよび
図12Bは、それぞれ、本実施形態の変形例に係るテストチャートを示す斜視図および平面図である。なお、支持板190は省略している。
【0158】
本変形例のテストチャート10では、例えば、4つの斜面140のそれぞれが、1つの境界線162を有している。具体的には、それぞれの斜面140は、例えば、パターン160として、光非透過性領域と光透過性領域とを有している。境界線162は、例えば、光非透過性領域と光透過性領域との境界を形成している。
【0159】
(効果)
本変形例によれば、上述のように、テストチャート10の斜面140が1つのみの境界線162を有していてもよい。これにより、テストチャート10のパターン160を簡略化することができる。パターン160の簡略化により、テストチャート10を容易に製造することができる。その結果、テストチャート10のコストを低減することが可能となる。
【0160】
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0161】
(1)テストチャート
本実施形態に係るテストチャート10について、
図13および
図14を用いて説明する。
図13および
図14は、それぞれ、本実施形態に係るテストチャートを示す斜視図および平面図である。
【0162】
図13および
図14に示すように、本実施形態のテストチャート10は、例えば、支持板190と、複数の3Dブロック110と、を有している。
【0163】
複数の3Dブロック110は、例えば、中央ブロック110aと、4つの外側ブロック110bと、を有している。
【0164】
中央ブロック110aは、例えば、第1実施形態の3Dブロック110と同様に正四角錐として構成されている。中央ブロック110aは、例えば、カメラ20の視野の中央、すなわち、支持板190の中央に配置されている。
【0165】
外側ブロック110bは、例えば、カメラ20の視野の中央から離れた位置、すなわち、支持板190の中央から離れた位置に配置されている。本実施形態では、4つの外側ブロック110bが、それぞれ、支持板190の4つの角部付近に配置されている。
【0166】
本実施形態では、外側ブロック110bは、例えば、四角錐として構成されているが、正四角錐から変形した形状を有している。
【0167】
具体的には、
図13に示すように、外側ブロック110bの頂点120は、支持板190の中央側に偏った位置に設けられている。
【0168】
一方で、
図14に示すように、カメラ20が撮像したときに頂点120が該外側ブロック110bの中心に位置するように、テストチャート10が配置される。つまり、カメラ20の光学系220に歪曲が生じていても、実空間で外側ブロック110bの頂点120が支持板190の中央側に偏った位置に設けられていることで、頂点120が該外側ブロック110bの中心に位置するように、テストチャート10が配置される。
【0169】
なお、本実施形態の外側ブロック110bにおいても、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10が配置される。
【0170】
(2)カメラの製造方法
次に、本実施形態のカメラの製造方法について説明する。
【0171】
(S100:準備工程)
本実施形態の準備工程S100では、例えば、上述のように、カメラ20が撮像したときに外側ブロック110bの頂点120が該外側ブロック110bの中心に位置するように、チャート支持部310によりテストチャート10を支持する。
【0172】
(S310〜S370:画像解析工程)
本実施形態の画像解析工程S310〜S370では、例えば、中央ブロック110aおよび4つの外側ブロック110bのそれぞれの全ての境界線162において、暫定焦点位置(座標B
111〜B
542)を検出する。
【0173】
(S400:焦点誤差算出工程)
本実施形態の焦点誤差算出工程S400では、例えば、中央ブロック110aおよび4つの外側ブロック110bのそれぞれの全ての境界線162の検出結果の相関に基づいて、カメラ20の焦点面を検出する。
【0174】
具体的には、例えば、全ての境界線162における暫定焦点位置の座標B
ijkに基づいて、上述の式(4)により、焦点面の方程式を求める。
【0175】
本実施形態では、3点超の暫定焦点位置の座標B
ijkが得られるため、例えば、最小二乗法により、定数a、bおよびcを最適化する。
【0176】
なお、上述の第1実施形態で求めた一対の境界線162a,162bにおける平均焦点位置の座標B
ij、または、各3Dブロック110における最適焦点位置の座標B
iに基づいて、定数a、bおよびcを最適化してもよい。
【0177】
(S540:カメラ位置調整工程)
本実施形態のカメラ位置調整工程S540では、カメラ20の焦点面の方程式に基づいて、光学系220および撮像素子240の相対的な位置をカメラ調整機構360により調整する。
【0178】
以降の工程は、上述の第1実施形態と同様である。
【0179】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、カメラ20の光学系220に歪曲が生じていても、実空間で外側ブロック110bの頂点120が支持板190の中央側に偏った位置に設けられていることで、テストチャート10の画像CI内で、頂点120が該外側ブロック110bの中心に位置するように、テストチャート10が配置される。これにより、外側ブロック110bがカメラ20の視野中央から離れた位置に配置されていても、テストチャート10の画像CI内の外側ブロック110bにおいて、頂点120を中心として複数のパターン160をバランスよく配置させることができる。例えば、テストチャート10の画像CI内の各斜面140において、パターン160としての境界線162の長さを均等にすることができる。これにより、テストチャート10の画像CIの中央から離れた位置であっても、複数のパターン160における暫定焦点位置の検出精度を等しくすることができる。すなわち、視野全体に亘ってバランスよく暫定焦点位置を検出することができる。その結果、焦点面の検出精度を向上させることが可能となる。
【0180】
(4)本発明の第2実施形態の変形例
上述の実施形態では、各3Dブロック110の斜面140が複数の境界線162を有する場合について説明したが、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0181】
図15および
図16を用い、本実施形態の変形例に係るテストチャート10について説明する。
図15および
図16は、それぞれ、本実施形態の変形例に係るテストチャートを示す斜視図および平面図である。
【0182】
本変形例のテストチャート10では、例えば、各3Dブロック110における4つの斜面140のそれぞれが、1つの境界線162を有している。本変形例のパターン160としての境界線162の態様は、例えば、上述の第1実施形態の変形例における態様と同様である。
【0183】
(効果)
本変形例によれば、テストチャート10の斜面140が1つのみの境界線162を有していることで、テストチャート10のパターン160を簡略化することができる。これにより、外側ブロック110bが、頂点120の偏りおよび境界線162の配置に起因して複雑な形状を有していても、外側ブロック110bを容易に製造することができる。その結果、外側ブロック110bを有するテストチャート10のコストを低減することが可能となる。
【0184】
<本発明の第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0185】
(1)テストチャート
本実施形態に係るテストチャート10について、
図17および
図18を用いて説明する。
図17および
図18は、それぞれ、本実施形態に係るテストチャートを示す斜視図および平面図である。
【0186】
図17および
図18に示すように、本実施形態のテストチャート10は、例えば、支持板190と、複数の3Dブロック110と、複数の2次元ブロック(2Dブロック)170を有している。
【0187】
複数の3Dブロック110は、例えば、中央ブロック110aと、4つの外側ブロック110bと、を有している。本実施形態の中央ブロック110aおよび4つの外側ブロック110bのそれぞれにおける配置および形状は、上述の第2実施形態のそれらと同様である。
【0188】
なお、
図18に示すように、中央ブロック110aは、例えば、中心マーク122を有していてもよい。中心マーク122は、例えば、カメラが認識可能なマークとして構成されている。中心マーク122は、例えば、カメラ20の光軸と重なる位置に配置されている。すなわち、中心マーク122は、例えば、支持板190の中央法線と重なった頂点120に設けられている。これにより、例えば、中心マーク122の検出結果に基づいて、X方向およびY方向の中心を容易に検出することができる。
【0189】
複数の2Dブロック170のそれぞれは、例えば、2次元パターン(2Dパターン)180を有している。2Dパターン180は、例えば、カメラ20の光軸に対して直交するように設けられている。
【0190】
2Dパターン180は、例えば、2Dブロック170が有する平坦な上面に設けられている。支持板190からの2Dパターン180の高さは、例えば、3Dブロック110の頂点120の高さよりも低い。具体的には、2Dパターン180の高さは、例えば、3Dブロック110の頂点120の高さの1/2倍となっている。
【0191】
また、2Dブロック170は、2Dパターン180として、例えば、少なくとも1つの境界線182を有している。境界線182は、例えば、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成している。また、境界線182は、例えば、該2Dブロック170の中央(中心軸)側から外側に向けて直線状に延在している。
【0192】
また、2Dブロック170は、2Dパターン180として、例えば、4つのスリットを有し、4つのスリットの両辺が一対の境界線182を構成している。
【0193】
また、2Dパターン180としての4つのスリットは、例えば、2Dブロック170の上方から見たときに(実空間で目視したときに)該2Dブロック170の中央を中心として点対称となるように設けられている。
【0194】
本実施形態では、カメラ20が撮像したときに2Dパターン180の境界線182と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10が配置される。これにより、3Dブロック110における境界線162の原理と同様の原理により、境界線182と交差する方向の指標値の変化を精度よく把握することができる。
【0195】
2Dブロック170は、例えば、4つ設けられている。4つの2Dブロック170は、例えば、中央ブロック110aを中心として対称に配置されている。また、2Dブロック170は、例えば、一対の外側ブロック110bの間の中央に設けられている。このような配置により、2Dブロック170の検出結果(の相関)に基づいて、X方向およびY方向の中心を容易に検出することができる。
【0196】
(2)カメラの製造方法
次に、本実施形態のカメラの製造方法について説明する。本実施形態のカメラの製造方法は、例えば、準備工程S100と評価領域選択工程S310との間に、カメラ原点調整工程S150を有する点が、上述の第1実施形態および第2実施形態と異なる。
【0197】
(S150:カメラ原点調整工程)
暫定的にテストチャート10を撮像した画像CIのうち、2Dブロック170の部分を解析し、カメラ20の光学調整機構により光学系220の位置を原点位置に調整する。ここでいう「原点位置」とは、例えば、光軸方向の光学系220の可動域の中心のことを意味する。
【0198】
具体的には、2Dブロック170における2Dパターン180の検出結果に基づいて、カメラ20の初期焦点位置を検出する。次に、カメラ20の初期焦点位置に基づいて、カメラ20の光学調整機構により光学系220の位置を原点位置に調整する。
【0199】
なお、さらに、中央ブロック110aの中心マーク122の検出結果に基づいて、光学系220の位置を原点位置に調整してもよい。
【0200】
(S540:カメラ位置調整工程)
本実施形態のカメラ位置調整工程S540では、上述の実施形態で行う調整に加えて、2Dブロック170または中央ブロック110aの中心マーク122の検出結果に基づいて、調整後の焦点位置がX方向およびY方向の中心と重なるように、光学系220を調整してもよい。
【0201】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、2Dブロック170は、カメラ20の光軸に対して直交する2Dパターン180を有している。これにより、2Dブロック170の2Dパターン180の検出結果に基づいて、カメラ20の光学調整機構により光学系220の位置を原点位置に調整することができる。
【0202】
ここで、上述の第1実施形態および第2実施形態のようにテストチャート10が3Dブロック110のみを有する場合には、3Dブロック110のパターン160の検出結果に基づいて、光学系220の位置を原点位置に調整することが困難である。光学系220の位置が光軸上の原点位置に配置されていないまま、光学系220と撮像素子240との相対的な位置が固定されると、製造後のカメラ20において光軸方向の光学系220の可動域が偏ってしまう可能性がある。
【0203】
これに対し、本実施形態では、2Dブロック170の2Dパターン180の検出結果に基づいて光学系220の位置を原点位置に調整することで、当該光学系220の位置が光軸上の原点位置に配置された状態で、光学系220と撮像素子240との相対的な位置を最適化し、これらを固定することができる。これにより、製造後のカメラ20において光軸方向の光学系220の可動域が偏ることを抑制することができる。
【0204】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下において、「上述の実施形態」とは、第1実施形態、第2実施形態並びに第3実施形態、およびこれらの変形例のことをいう。
【0205】
上述の第1実施形態では、以下の(a)および(b)を満たす場合について説明し、上述の第2実施形態および第3実施形態では、(a)、(b)および(c)を満たす場合について説明したが、これらの場合に限られない。(a)、(b)および(c)のうち少なくともいずれかを満たせば、光学系220と撮像素子240との相対的な位置を精度よく調整することができる。ただし、(a)、(b)および(c)のなかで満たす構成が多いほど、カメラ20の調整位置精度を向上させることができる。
(a)斜面140が光学系220の光軸に対して傾斜し、且つ、カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10が配置される。
(b)テストチャート10の斜面140は、頂点120側からそれぞれ異なる傾斜方向に沿って連続的に延在する複数のパターン160を有する。
(c)外側ブロック110bの頂点120は、カメラ20の視野の中央側に偏った位置に設けられている。また、カメラ20が撮像したときに外側ブロック110bの頂点120が該外側ブロック110bの中心に位置するように、テストチャート10が配置される。
【0206】
上述の実施形態では、3Dブロック110が複数の斜面140を有する場合について説明したが、この場合に限られない。カメラ20が撮像したときに境界線162と撮像素子240の画素配列方向とが非平行となるように、テストチャート10が配置されるのであれば、3Dブロック110は1つの斜面140のみを有していてもよい。これにより、当該1つの斜面140における境界線162の検出結果に基づいて、焦点位置を検出することができる。ただし、上述の実施形態のように、3Dブロック110が複数の斜面140を有しているほうが、焦点位置の検出精度を向上させることができるため、好ましい。
【0207】
上述の実施形態では、カメラ20が撮像したときに、結像倍率の違いに起因して、1つのスリットにおける一方の境界線162aと他方の境界線162bとが非平行となる場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、カメラ20が撮像したときに1つのスリットにおける一方の境界線162aと他方の境界線162bとが平行となるように、テストチャート10が配置されてもよい。すなわち、結像倍率の違いを予め考慮して、カメラ20に近い側のスリットの幅が、底辺側のスリットの幅よりも狭くなっていてもよい。これにより、画像CI内で、境界線162a,162bを画素配列方向に対して同じ角度で傾斜させることができる。その結果、境界線162a,162bにおいて、指標値の変化の検出精度を等しくすることが可能となる。
【0208】
上述の実施形態では、3Dブロック110の4つの底辺のそれぞれが支持板190の4辺のいずれかに平行になっているのに対して、斜面140のそれぞれにおける境界線162が、平面視で4つの底辺のいずれかの延在方向に対して所定の角度αで傾いている場合について説明したが、この場合に限られない。
【0209】
例えば、3Dブロック110の4つの稜線のそれぞれが支持板190の4辺のいずれかに平行になっているのに対して(すなわち、3Dブロック110が平面視でひし形状に配置されているのに対して)、斜面140のそれぞれにおける境界線162が、平面視で4つの稜線のいずれかの延在方向に対して所定の角度αで傾いていてもよい。
【0210】
または、例えば、テストチャート10は、斜面140のそれぞれにおける境界線162が平面視で4つの底辺のいずれかの延在方向に平行である3Dブロック110を有し、当該3Dブロック110が、底面の法線方向を軸として角度αで回転させた状態で支持板190上に設けられていてもよい。
【0211】
上述の実施形態では、ボルトの締結により、テストチャート10がチャート支持部310に固定される場合について説明したが、この場合に限られない。テストチャート10がチャート支持部310に固定される方法は、ボルトの締結以外の方法であってもよい。
【0212】
上述の実施形態では、補正画素数d’に対する指標値の補間曲線ICを周波数解析したときのピーク空間周波数に基づいて、指標値の変化が最も急である暫定焦点位置を検出する場合について説明したが、補正画素数d’に対する指標値の傾きの最大値が得られる位置を暫定焦点位置として検出してもよい。
【0213】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0214】
(付記1)
光学系および撮像素子を有するカメラを調整するテストチャートであって、
少なくとも1つの斜面を備え、
前記斜面は、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成し、該斜面の傾斜方向に沿って直線状に延在する少なくとも1つの境界線を有し、
前記斜面が前記光学系の光軸に対して傾斜し、且つ、前記カメラが撮像したときに前記境界線と前記撮像素子の画素配列方向とが非平行となるように配置される
テストチャート。
【0215】
(付記2)
前記カメラが撮像したときに前記境界線が前記光学系の歪曲のみに起因したずれよりも大きく前記撮像素子の画素配列方向に対してずれるように配置される
付記1に記載のテストチャート。
【0216】
(付記3)
前記カメラが撮像したときの前記画素配列方向に対する前記境界線のずれは、前記光学系の歪曲起因成分と前記撮像素子の画素配列方向に対して直線状に傾斜する成分とを有する
付記1又は2に記載のテストチャート。
【0217】
(付記4)
前記斜面は、複数の境界線を有する
付記1〜3のいずれか1つに記載のテストチャート。
【0218】
(付記5)
所定の高さに設けられた頂点を備え、
前記斜面は、前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜している
付記1〜4のいずれか1つに記載のテストチャート。
【0219】
(付記6)
カメラを調整するテストチャートであって、
所定の高さに設けられた頂点と、
前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜した斜面と、
を有し、
前記斜面は、前記頂点側からそれぞれ異なる傾斜方向に沿って連続的に延在する複数のパターンを有する
テストチャート。
【0220】
(付記7)
前記複数のパターンは、前記頂点よりも上方から見たときに前記頂点を中心として点対称となるように設けられている
付記6に記載のテストチャート。
【0221】
(付記8)
前記カメラの視野の中央から離れた位置に配置され、前記頂点および前記斜面を有する外側ブロックを備え、
前記外側ブロックの前記頂点は、前記中央側に偏った位置に設けられ、
前記カメラが撮像したときに前記頂点が該外側ブロックの中心に位置するように配置される
付記6又は7に記載のテストチャート。
【0222】
(付記9)
カメラを調整するテストチャートであって、
前記カメラの視野の中央から離れた位置に配置された外側ブロックを備え、
前記外側ブロックは、前記中央側に偏った位置で所定の高さに設けられた頂点と、前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜した斜面と、を有し、
前記カメラが撮像したときに前記頂点が前記外側ブロックの中心に位置するように配置される
テストチャート。
【0223】
(付記10)
前記斜面を有する3次元ブロックと、
前記カメラの光軸に対して直交するように配置される2次元パターンを有する2次元ブロックと、
を備える
付記1〜9のいずれか1つに記載のテストチャート。
【0224】
(付記11)
前記カメラの光軸と重なる位置に配置され、前記カメラが認識可能な中心マークを有する
付記1〜10のいずれか1つに記載のテストチャート。
【0225】
(付記12)
所定のテストチャートを支持するチャート支持部と、
前記テストチャートを撮像可能な位置に、光学系および撮像素子を有するカメラの少なくとも一部を支持するカメラ支持部と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する画像解析部と、
前記カメラの前記焦点位置に基づいて、前記光学系および前記撮像素子の相対的な位置を調整するカメラ調整機構と、
を有し、
前記チャート支持部は、
前記テストチャートとして、少なくとも1つの斜面を備え、前記斜面が、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成し、該斜面の傾斜方向に沿って直線状に延在する少なくとも1つの境界線を有するチャートを支持するとともに、
前記斜面が前記光学系の光軸に対して傾斜し、且つ、前記カメラが撮像したときに前記境界線と前記撮像素子の画素配列方向とが非平行となるように、前記テストチャートを支持するよう構成され、
前記画像解析部は、前記境界線の検出結果に基づいて前記焦点位置を検出する
カメラ製造装置。
【0226】
(付記13)
所定のテストチャートを支持するチャート支持部と、
前記テストチャートを撮像可能な位置に、光学系および撮像素子を有するカメラの少なくとも一部を支持するカメラ支持部と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する画像解析部と、
前記カメラの前記焦点位置に基づいて、前記光学系および前記撮像素子の相対的な位置を調整するカメラ調整機構と、
を有し、
前記チャート支持部は、前記テストチャートとして、所定の高さに設けられた頂点と、前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜した斜面と、を有し、前記斜面が、前記頂点側からそれぞれ異なる傾斜方向に沿って連続的に延在する複数のパターンを有するチャートを支持するよう構成され、
前記画像解析部は、前記複数のパターンの検出結果の相関に基づいて前記焦点位置を検出する
カメラ製造装置。
【0227】
(付記14)
所定のテストチャートを支持するチャート支持部と、
前記テストチャートを撮像可能な位置に、光学系および撮像素子を有するカメラの少なくとも一部を支持するカメラ支持部と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する画像解析部と、
前記カメラの前記焦点位置に基づいて、前記光学系および前記撮像素子の相対的な位置を調整するカメラ調整機構と、
を有し、
前記チャート支持部は、
前記テストチャートとして、前記カメラの視野の中央から離れた位置に配置された外側ブロックを備え、前記外側ブロックが、前記中央側に偏った位置で所定の高さに設けられた頂点と、前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜した斜面と、を有するチャートを支持するとともに、
前記カメラが撮像したときに前記頂点が前記外側ブロックの中心に位置するように、前記テストチャートを支持するよう構成され、
前記画像解析部は、前記外側ブロックの検出結果に基づいて前記焦点位置を検出する
カメラ製造装置。
【0228】
(付記15)
所定のテストチャートを準備する工程と、
光学系および撮像素子を有するカメラを用い、前記テストチャートを撮像する工程と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する工程と、
前記カメラの前記焦点位置に基づいて、前記光学系および前記撮像素子の相対的な位置を調整する工程と、
を有し、
前記テストチャートを準備する工程では、
前記テストチャートとして、少なくとも1つの斜面を備え、前記斜面が、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成し、該斜面の傾斜方向に沿って直線状に延在する少なくとも1つの境界線を有するチャートを準備し、
前記斜面が前記光学系の光軸に対して傾斜し、且つ、前記カメラが撮像したときに前記境界線と前記撮像素子の画素配列方向とが非平行となるように、前記テストチャートを配置し、
前記画像を解析する工程では、
前記境界線の検出結果に基づいて前記焦点位置を検出する
カメラの製造方法。
【0229】
(付記16)
前記画像を解析する工程は、
前記テストチャートの画像内で、前記境界線と交差した複数の画素を含む評価領域を選択する工程と、
前記評価領域内の各画素において、前記評価領域の角部を通り前記境界線に平行な基準線から起算した補正画素数に対する、前記画素の色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの指標値の対応関係を取得する工程と、
を含む工程を、前記境界線の延在方向に沿って位置が異なる複数の評価領域において行う工程と、
前記複数の評価領域のなかで、前記補正画素数に対する前記指標値の変化が最も急である評価領域内の位置を前記焦点位置として検出する工程と、
を有する
付記15に記載のカメラの製造方法。
【0230】
(付記17)
所定のテストチャートを準備する工程と、
光学系および撮像素子を有するカメラを用い、前記テストチャートを撮像する工程と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する工程と、
前記カメラの前記焦点位置に基づいて、前記光学系および前記撮像素子の相対的な位置を調整する工程と、
を有し、
前記テストチャートを準備する工程では、
前記テストチャートとして、所定の高さに設けられた頂点と、前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜した斜面と、を有し、前記斜面が、前記頂点側からそれぞれ異なる傾斜方向に沿って連続的に延在する複数のパターンを有するチャートを準備し、
前記画像を解析する工程では、
前記複数のパターンの検出結果の相関に基づいて前記焦点位置を検出する
カメラの製造方法。
【0231】
(付記18)
所定のテストチャートを準備する工程と、
光学系および撮像素子を有するカメラを用い、前記テストチャートを撮像する工程と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する工程と、
前記カメラの前記焦点位置に基づいて、前記光学系および前記撮像素子の相対的な位置を調整する工程と、
を有し、
前記テストチャートを準備する工程では、
前記テストチャートとして、前記カメラの視野の中央から離れた位置に配置された外側ブロックを備え、前記外側ブロックが、前記中央側に偏った位置で所定の高さに設けられた頂点と、前記頂点を挟んで相反する傾斜方向に向けて傾斜した斜面と、を有するチャートを準備し、
前記カメラが撮像したときに前記頂点が前記外側ブロックの中心に位置するように、前記テストチャートを配置し、
前記画像を解析する工程では、
前記外側ブロックの検出結果に基づいて前記焦点位置を検出する
カメラの製造方法。
【0232】
(付記19)
光学系および撮像素子を有するカメラを用い、所定のテストチャートの画像を取得する手順と、
前記テストチャートを撮像した画像を解析し、前記カメラの焦点位置を検出する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記画像を取得する手順では、
前記テストチャートとして、少なくとも1つの斜面を備え、前記斜面は、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成し、該斜面の傾斜方向に沿って直線状に延在する少なくとも1つの境界線を有するチャートを用い、
前記斜面が前記光学系の光軸に対して傾斜し、且つ、前記カメラが撮像したときに前記境界線と前記撮像素子の画素配列方向とが非平行となるように、前記テストチャートを配置した状態で、前記テストチャートの前記画像を取得し、
前記画像を解析する手順では、
前記境界線の検出結果に基づいて前記焦点位置を検出する
焦点検出プログラム、および
焦点検出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0233】
(付記20)
前記画像を解析する手順では、
前記テストチャートの画像内で、前記境界線と交差した複数の画素を含む評価領域を選択する手順と、
前記評価領域内の各画素において、前記評価領域の角部を通り前記境界線に平行な基準線から起算した補正画素数に対する、前記画素の色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの指標値の対応関係を取得する手順と、
を含む手順を、前記境界線の延在方向に沿って位置が異なる複数の評価領域において行う手順と、
前記複数の評価領域のなかで、前記補正画素数に対する前記指標値の変化が最も急である評価領域内の位置を前記焦点位置として検出する手順と、
を実行させる
付記19に記載の焦点検出プログラム、および
付記19に記載の焦点検出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【解決手段】光学系および撮像素子を有するカメラを調整するテストチャートであって、少なくとも1つの斜面を備え、斜面は、色、濃淡および明るさのうち少なくともいずれかの境界を形成し、該斜面の傾斜方向に沿って直線状に延在する少なくとも1つの境界線を有し、斜面が光学系の光軸に対して傾斜し、且つ、カメラが撮像したときに境界線と撮像素子の画素配列方向とが非平行となるように配置される。