【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各物性の測定方法、及び発泡体シートの評価方法は以下のとおりである。
【0066】
第1の発明に係る実施例
[成型後の物性]
(1)ガラス転移温度(Tg)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率
アィティー計測制御株式会社製、商品名「DVA−200/L2」の引張貯蔵弾性率測定装置を用いて、以下の測定条件により、Tg、tanδ及び貯蔵弾性率を求めた。
(測定条件)
標線間長さ:2.5cm
サンプル幅:0.5cm
サンプル厚み:発泡体シートの厚み
変形モード:引張
静/動応力比:1.5
設定歪:1.0%
設定昇温速度:10℃/min
測定周波数10Hz
温度範囲:−100℃〜100℃
【0067】
(2)破断点強度
各実施例及び比較例にて作製した発泡シートを、JIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、引張試験機(製品名:テンシロンRTF235、エー・アンド・デイ社製)により、測定温度23℃で、速度500mm/minにて引張を実施し、測定した。
【0068】
(3)架橋度(ゲル分率)
発泡体シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm
3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×(B/A)
【0069】
(4)独立気泡率
発泡体シートから一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出した。そして、試験片の厚みを測定して試験片の見掛け体積V1を算出すると共に、試験片の質量W1を測定する。次に、気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出した。なお、試験片の密度をρ(g/cm
3)とする。
気泡の占める体積V2=V1−W1/ρ
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加えた。しかる後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の質量W2を測定し、下記式に基づいて独立気泡率F1を算出した。
独立気泡率F1(%)=100−100×(W2−W1)/V2
【0070】
(5)平均気泡径
発泡体シートをMD及びTDそれぞれに沿って厚み方向に切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名「VHX−900」)を用いて200倍の拡大写真を撮影した。撮影した拡大写真において、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMDの気泡径、及びTDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡のMD、TDそれぞれの気泡径の平均値をMD、TDの平均気泡径とした。
なお、MDは、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向である。TDは、Transverse directionを意味し、MDに直交しかつ発泡体シートに平行な方向である。また、ZDは、発泡シートの厚み方向であり、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
【0071】
(6)25%圧縮強度
JIS K6767に準拠した測定方法で、測定温度23℃で測定した。
(7)見掛け密度及び発泡倍率
発泡体についてJIS K7222に準拠して見掛け密度を測定し、その逆数を発泡倍率とした。
【0072】
(8)WVTR
温度40℃において、各実施例及び比較例で作製した発泡体シートを10cm×10cm程度に切り取り、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 1/50)の測定部に設置後、40℃、90%RHの条件での水蒸気透過率を測定した。
評価基準は以下の通りである。
〇:透湿度(WVTR)が200g/m
2・day以下
×:透湿度(WVTR)が200g/m
2・day超
【0073】
[評価]
(9)耐衝撃性試験(タンブリング試験)
各実施例及び比較例にて製造した発泡体シートを、縦0.15cm×横7cmの大きさで2枚切り出して試験片を作製した(厚み:第1−1表に記載)。該試験片2枚を5cm間隔で配置し、2枚のアクリル製の板(縦:9.5cm、横7cm)を縦方向に1.5cmずらす形で挟み、接着剤にて固定し、タンブリング用の試験片とした。
市販の一斗缶(天板、地板の一片の長さ:約24cm、高さ:約35cm)に、上記タンブリング用の試験片を入れ、500回転させることで、1000回の連続落下を行った。その後、試験片を取り出して、発泡体シートの層間での破壊を目視にて観察した。評価基準は以下の通りである。
〇:発泡体シートの層間で破壊は見られなかった。
×:発泡体シートの層間で破壊が見られた。
【0074】
(10)湿気試験(透湿度)
各実施例及び比較例にて製造した発泡体シートを5cm×7cmに切り出し、試験片を額縁上に作成した(厚み:表に記載の厚み(mm)、幅:1.5mm)。該試験片の内側に感水試験紙(アズツール 水没管理シート)を入れ、2枚をアクリル製の板にハサミ、接着剤で固定し、湿気試験用の試験片とした。該試験片を23℃、70%RHのオーブンに24時間静置させた。24時間後、感水試験紙の変化を確認した。
評価基準は以下の通りである。
〇:感水試験紙に変化なし
×:感水試験紙に変化あり
【0075】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
エラストマー(a):ハイブラー(登録商標)7311F(株式会社クラレ製、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン含有量12質量%)
エラストマー(b):K−9330M(三井化学株式会社製、エチレン/ブテン/非共役ジエン3元共重合体(EBDM))
ポリオレフィン樹脂:カーネル(登録商標)KF283(日本ポリエチレン株式会社製、メタロセン触媒で重合されたエチレン/α−オレフィン共重合体(LLDPE))
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
分解温度調整剤:酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、商品名「OW−212F」
フェノール系酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
【0076】
実施例1−1
エラストマー(a)80質量部、ポリオレフィン樹脂20質量部と、熱分解型発泡剤9質量部と、分解温度調整剤1質量部と、フェノール系酸化防止剤0.5質量部とを原料として用意した。これらの材料を溶融混練後、プレスすることにより厚み0.1mmの発泡性樹脂シートを得た。得られた発泡性樹脂シートの両面に加速電圧500keVにて電子線を6Mrad照射させて、発泡性樹脂シートを架橋させた。次に、架橋した発泡性樹脂シートを250℃に加熱することによって発泡させ、密度0.56g/cm
3、厚み0.10mmの発泡体シートを得た。
上記方法にて評価した結果を第1−1表に示す。
【0077】
実施例1−2
実施例1−1において、発泡性樹脂シートの厚みを0.15mmに変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0078】
実施例1−3
実施例1−1において、熱分解型発泡剤を8.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更し、照射線量を5.5Mradとしたこと以外は、実施例1−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0079】
実施例1−4
実施例1−1において、エラストマー(a)の配合量を50質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を50質量部としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0080】
実施例1−5
実施例1−4において、照射線量を8Mradとしたこと以外は、実施例1−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0081】
実施例1−6
実施例1−4において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例1−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0082】
実施例1−7
実施例1−4において、エラストマー(a)に代えて、エラストマー(b)を用い、照射線量を7Mradとしたこと以外は、実施例1−4と同様にして発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0083】
実施例1−8
実施例1−7において、照射線量を8Mradとしたこと以外は、実施例1−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0084】
実施例1−9
実施例1−7において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更し、照射線量を5Mradとしたこと以外は、実施例1−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0085】
実施例1−10
実施例1−7において、エラストマー(b)の配合量を40質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を60質量部とし、照射線量を5Mradとしたこと以外は、実施例1−7と同様にして発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0086】
実施例1−11
実施例1−10において、照射線量を5.5Mradとしたこと以外は、実施例1−10と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0087】
実施例1−12
実施例1−10において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例1−10と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0088】
比較例1−1
実施例1−2において、エラストマーを用いず、ポリオレフィン樹脂のみを100質量部用い、照射線量を4.5Mradとしたこと以外は、実施例1−2と同様にして発泡体シートを得た。なお、Tgは本願の測定条件下では、観測されなかった。
【0089】
比較例1−2
実施例1−2において、エラストマー(a)の配合量を10質量部とし、ポリオレフィン樹脂(b)の配合量を90質量部としたこと以外は、実施例1−2と同様にして発泡体シートを得た。評価結果を第1−1表に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
以上のように、比較例の発泡体シートが、透湿性が高いのに比較して、各実施例の発泡体シートは、高い耐衝撃性と低透湿性を兼ね備えた発泡体シートであることがわかる。
【0092】
第2の発明に係る実施例
[成型後の物性]
(1)ガラス転移温度(Tg)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率
第1の発明における方法と同様の方法及び測定条件にて測定した。
【0093】
(2)破断点強度
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0094】
(3)架橋度(ゲル分率)
第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0095】
(4)独立気泡率
第1の発明における方法に対し、試験片を23℃の蒸留水中に水面から500mmの深さに沈めたこと以外は第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0096】
(5)平均気泡径
第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0097】
(6)25%圧縮強度
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
(7)見掛け密度及び発泡倍率
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0098】
(8)層間強度
図2に層間強度を評価するための試験装置の模式図を示す。発泡体シート11の25mm角範囲にプライマー(セメダイン株式会社製「PPXプライマー」)を塗布した後、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤12(セメダイン株式会社製「PPX」)を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に25mm角のアルミ製治具13を置き、発泡体シートと治具13とを圧着した。その後、治具13の大きさに沿って発泡体シートをカットした。カットした発泡体シートの治具13を接着していない面にプライマーを塗布し、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤12を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に10mm角のアルミ製治具14を置き、発泡体シートと治具14とを圧着した。治具14の周辺にはみ出した接着剤をふき取った後、治具14の大きさに沿って発泡体シートに切り込み15を入れた。これを室温で30分間放置することで接着剤を養生し、層間強度測定用サンプルとした。
続いて、恒温槽内で試験が行えるように恒温槽を設けた試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)に1kNのロードセルを設置した。そして、発泡体シートのシート面が引張方向に対して垂直になるように層間強度測定用サンプルを試験機に取り付けた。恒温槽の温度を23℃に設定した後、層間強度測定用サンプルの温度が23℃になるまで放置した。そして、治具の一方を速度100mm/分で垂直上向きに引っ張り、発泡体シートの1cm角の範囲のみを剥離させた。このときの最大荷重を測定し、1回目の測定結果とした。同様の操作を3回繰り返し、その平均値を23℃の層間強度とした。
【0099】
[評価]
(9)耐衝撃性試験(タンブリング試験)
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した(発泡体シートの厚み:第2−1表に記載)。
【0100】
実施例及び比較例で使用した成分は以下の通りである。
エラストマー(a):ハイブラー(登録商標)7311F(株式会社クラレ製、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン含有量12質量%)
エラストマー(b):K−9330M(三井化学株式会社製、エチレン/ブテン/非共役ジエン3元共重合体(EBDM))
ポリオレフィン樹脂:カーネル(登録商標)KF283(日本ポリエチレン株式会社製、メタロセン触媒で重合されたエチレン/α−オレフィン共重合体(LLDPE))
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
分解温度調整剤:酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、商品名「OW−212F」
フェノール系酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
【0101】
実施例2−1
エラストマー(a)80質量部と、ポリオレフィン樹脂20質量部と、熱分解型発泡剤9.0質量部と、分解温度調整剤1質量部と、フェノール系酸化防止剤0.5質量部とを原料として用意した。これらの材料を溶融混練後、プレスすることにより厚み0.1mmの発泡性樹脂シートを得た。得られた発泡性樹脂シートの両面に加速電圧500keVにて電子線を6Mrad照射させて、発泡性樹脂シートを架橋させた。次に架橋した発泡性樹脂シートを250℃に加熱することによって発泡させて、見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.10mmの発泡体シートを得た。
上記方法にて評価した結果を第2−1表に示す。
【0102】
実施例2−2
実施例2−1において、発泡性樹脂シートの厚みを0.15mmに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0103】
実施例2−3
実施例2−1において、熱分解型発泡剤を8.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更し、電子線量を5.5Mradに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0104】
実施例2−4
実施例2−1において、エラストマー(a)の配合量を50質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を50質量部としたこと以外は、実施例2−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0105】
実施例2−5
実施例2−1において、エラストマー(a)に代えて、エラストマー(b)を用い、エラストマー(b)の配合量を40質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を60質量部とし、電子線量を5.0Mradに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0106】
実施例2−6
実施例2−5において、エラストマー(b)の配合量を50質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を50質量部とし、電子線量を7.0Mradに変更したこと以外は、実施例2−5と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0107】
実施例2−7
実施例2−4において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更し、電子線量を5.0Mradに変更したこと以外は、実施例2−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0108】
比較例2−1
実施例2−2において、エラストマー(a)の配合量を10質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を90質量部としたこと以外は、実施例2−2と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0109】
比較例2−2
実施例2−2において、エラストマー(a)を配合せず、ポリオレフィン樹脂のみを用い、電子線量を4.5Mradに変更したこと以外は、実施例2−2と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0110】
比較例2−3
実施例2−7において、エラストマー(a)のみを用い、電子線量を4.5Mradに変更したこと以外は、実施例2−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第2−1表に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
以上のように、各実施例の発泡体シートは、高い耐衝撃性を有し、また、低温での貯蔵弾性率も良好で、特に高速耐衝撃性に優れることがわかる。また、層間強度も大きく、低速耐衝撃性にも優れていることがわかる。すなわち、本発明の発泡シートは、高速耐衝撃性と低速耐衝撃性のいずれも優れる発泡体シートである。
一方、比較例に記載される発泡体シートは、耐衝撃性が低いか(比較例2−1及び2−2)、又は層間強度が小さい(比較例2−3)ことがわかる。
【0113】
第3の発明に係る実施例
[成型後の物性]
(1)ガラス転移温度(Tg)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率
第1の発明における方法と同様の方法及び測定条件にて測定した。
【0114】
(2)破断点強度
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0115】
(3)伸び
各実施例及び比較例にて作製した発泡シートを、JIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、引張試験機(製品名:テンシロンRTF235、エー・アンド・デイ社製)により、測定温度23℃で、引張速度500m/minにおいて、応力0.06N/10mmのときの、伸び(%)を測定した。
【0116】
(4)架橋度(ゲル分率)
第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0117】
(5)独立気泡率
第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0118】
(6)平均気泡径
発泡体シートをMD及びTDそれぞれに沿って厚み方向に切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名「VHX−900」)を用いて200倍の拡大写真を撮影した。撮影した拡大写真において、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD,ZDの気泡径、及びTD,ZDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡のMD、TDそれぞれの気泡径の平均値をMD、TDの平均気泡径とするとともに、以上の操作によって測定された全てのZDの気泡径の平均値をZDの平均気泡径とした。
なお、MDは、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向である。TDは、Transverse directionを意味し、MDに直交しかつ発泡体シートに平行な方向である。また、ZDは、発泡シートの厚み方向であり、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
【0119】
(7)25%圧縮強度
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
(8)見掛け密度及び発泡倍率
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0120】
[評価]
(9)耐衝撃性試験(タンブリング試験)
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した(発泡体シートの厚み:第3−1表に記載)。
【0121】
(10)ラミネート後シート剥離試験
実施例及び比較例に基づいて製造した発泡体シートから、横幅100mm×長さ200mmの測定用試料を切り出した。引張試験機(製品名:テンシロンRTF235、エー・アンド・デイ社製)により、該発泡体シートを荷重0.6Nで引っ張った状態で、発泡体シートと樹脂シート(横幅100mm×長さ50mm)とを治具(横幅130mm×長さ70mm×厚み20mm)で挟み、治具についたねじを締めて、10分間静置することで、発泡体シートと樹脂シートを貼り合わせた。その後、治具を取り外し水平な台の上で静置して2分経過した後の発泡体シートの表面を目視にて観察した。
〇:剥離を起こさず、しわの発生もない
×:剥離又はしわが発生した
【0122】
実施例及び比較例で使用した成分は以下の通りである。
エラストマー(a):ハイブラー(登録商標)7311F(株式会社クラレ製、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン含有量12質量%)
エラストマー(b):K−9330M(三井化学株式会社製、エチレン/ブテン/非共役ジエン3元共重合体(EBDM))
ポリオレフィン樹脂:カーネル(登録商標)KF283(日本ポリエチレン株式会社製、メタロセン触媒で重合されたエチレン/α−オレフィン共重合体(LLDPE))
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
分解温度調整剤:酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、商品名「OW−212F」
フェノール系酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
【0123】
実施例3−1
エラストマー(a)80質量部、ポリオレフィン樹脂20質量部と、熱分解型発泡剤9.0質量部と、分解温度調整剤1質量部と、フェノール系酸化防止剤0.5質量部とを原料として用意した。これらの材料を溶融混練後、プレスすることにより厚み0.1mmの発泡性樹脂シートを得た。得られた発泡性樹脂シートの両面に加速電圧500keVにて電子線を6Mrad照射させて、発泡性シートを架橋させた。次に、架橋した発泡性シートを250℃に加熱することによって発泡性樹脂シートを発泡させ、密度0.56g/cm
3、厚み0.10mmの発泡体シートを得た。
上記方法にて評価した結果を第3−1表に示す。
【0124】
実施例3−2
実施例3−1において、発泡性樹脂シートの厚みを0.15mmに変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0125】
実施例3−3
実施例3−1において、熱分解型発泡剤を8.0質量部に変更し、電子線量を5.5Mradに変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0126】
実施例3−4
実施例3−1において、エラストマー(a)の配合量を50質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を50質量部としたこと以外は、実施例3−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0127】
実施例3−5
実施例3−4において、電子線量を8.0Mradに変更したこと以外は、実施例3−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0128】
実施例3−6
実施例3−4において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、電子線量を6.0Mradに変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例3−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0129】
実施例3−7
実施例3−4において、エラストマー(a)に代えて、エラストマー(b)を用い、電子線量を7.0Mradに変更したこと以外、実施例3−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0130】
実施例3−8
実施例3−7において、電子線量を8.0Mradに変更したこと以外は、実施例3−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0131】
実施例3−9
実施例3−7において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、電子線量を5.0Mradに変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例3−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0132】
実施例3−10
実施例3−7において、エラストマー(b)の配合量を40質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を60質量部とし、電子線量を5.0Mradに変更したこと以外は、実施例3−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0133】
実施例3−11
実施例3−10において、電子線量を5.5Mradに変更したこと以外は、実施例3−10と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0134】
実施例3−12
実施例3−10において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、電子線量を5.0Mradに変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例3−10と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0135】
比較例3−1
実施例3−2において、ポリオレフィン樹脂を用いず、エラストマー(a)のみを100質量部用いたこと以外は、実施例3−2と同様にして発泡体シートを得た。
【0136】
比較例3−2
実施例3−2において、ポリオレフィン樹脂を用いず、エラストマー(b)のみを100質量部用いたこと以外は、実施例3−2と同様にして発泡体シートを得た。
【0137】
比較例3−3
実施例3−2において、エラストマーを用いず、ポリオレフィン樹脂のみを100質量部用い、電子線量を4.5Mradに変更したこと以外は、実施例3−2と同様にして発泡体シートを得た。なお、Tgは本願の測定条件下では、観測されなかった。
【0138】
比較例3−4
実施例3−2において、エラストマー(a)の配合量を10質量部とし、ポリオレフィン樹脂(b)の配合量を90質量部とし、電子線量を6.0Mradに変更したこと以外は、実施例3−2と同様にして発泡体シートを得た。評価結果を第3−1表に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
以上のように、比較例3−1及び3−2の発泡体シートは、ラミネート後シート剥離試験において、剥離又はしわが発生した。また比較例3−3及び3−4の発泡体シートは、ラミネート後シート剥離試験の結果は良好だったが、十分な耐衝撃性が得られなかった。
これに対して、各実施例の発泡体シートは、高い耐衝撃性を有し、かつ、ラミネート後シート剥離試験において、剥離もしわの発生も生じなかった。
【0141】
第4の発明に係る実施例
[成型後の物性]
(1)ガラス転移温度(Tg)、損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率
第1の発明における方法と同様の方法及び測定条件にて測定した。
【0142】
(2)破断点強度
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0143】
(3)架橋度(ゲル分率)
第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0144】
(4)独立気泡率
第1の発明における方法と同様の方法にて算出した。
【0145】
(5)平均気泡径
第3の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0146】
(6)25%圧縮強度
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
(7)見掛け密度及び発泡倍率
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した。
【0147】
(8)タック性
発泡体シートを10cm角にカットし、タックテスター(UBM社製、製品名「Tack Tester TA−500」)により、温度23℃で測定を行った。
発泡体シートの表面に対して、断面積0.03cm
2の冶具(金属製)を、荷重100000gf/cm
2で、1秒間押し付けた後、0.8mm/秒の速度で冶具を引き上げた際の荷重(gf/cm
2)を測定し、得られた値を樹脂発泡体シートの表面のタック性とした。
【0148】
[評価]
(9)耐衝撃性試験(タンブリング試験)
第1の発明における方法と同様の方法にて測定した(発泡体シートの厚み:第4−1表に記載)。
【0149】
(10)ハンドリング性
各実施例及び比較例にて製造した発泡体シートを用いて、縦5.0cm×横5.0cmの大きさの試験片を作成した。該試験片に15kg,25cm辺の錘を乗せ3秒間静置した。その後錘を持ち上げた際に発泡体シートが錘にくっつき持ち上がってくるかどうかを評価した。
評価基準は5回テストし、多かった結果を評価結果とした。評価基準は以下の通りである。
○:発泡体シートが錘と共に持ち上がらない (ハンドリング性良い)
×:発泡体シートが錘と共に持ち上がる (ハンドリング性悪い)
【0150】
実施例及び比較例で使用した成分は以下の通りである。
エラストマー(a):ハイブラー(登録商標)7311F(株式会社クラレ製、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン含有量12質量%)
エラストマー(b):K−9330M(三井化学株式会社製、エチレン/ブテン/非共役ジエン3元共重合体(EBDM))
ポリオレフィン樹脂:カーネル(登録商標)KF283(日本ポリエチレン株式会社製、メタロセン触媒で重合されたエチレン/α−オレフィン共重合体(LLDPE))
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
分解温度調整剤:酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、商品名「OW−212F」
フェノール系酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
【0151】
実施例4−1
エラストマー(a)80質量部、ポリオレフィン樹脂20質量部と、熱分解型発泡剤9.0質量部と、分解温度調整剤1質量部と、フェノール系酸化防止剤0.5質量部とを原料として用意した。これらの材料を溶融混練後、プレスすることにより厚み0.1mmの発泡性樹脂シートを得た。得られた発泡性樹脂シートの両面に加速電圧500keVにて電子線を6Mrad照射させて、発泡性シートを架橋させた。次に、架橋した発泡性シートを250℃に加熱することによって発泡性樹脂シートを発泡させ、密度0.56g/cm
3、厚み0.10mmの発泡体シートを得た。
上記方法にて評価した結果を第4−1表に示す。
【0152】
実施例4−2
実施例4−1において、発泡性樹脂シートの厚みを0.15mmに変更したこと以外は、実施例4−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0153】
実施例4−3
実施例4−1において、熱分解型発泡剤を8.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更し、電子線量を5.5Mradに変更したこと以外は、実施例4−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0154】
実施例4−4
実施例4−1において、エラストマー(a)の配合量を50質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を50質量部としたこと以外は、実施例4−1と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0155】
実施例4−5
実施例4−4において、照射線量を8.0Mradにしたこと以外は、実施例4−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0156】
実施例4−6
実施例4−4において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例4−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0157】
実施例4−7
実施例4−4において、エラストマー(a)に代えて、エラストマー(b)を用いて照射線量を7.0Mradに変えたこと以外、実施例4−4と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0158】
実施例4−8
実施例4−7において、照射線量を8.0Mradにしたこと以外は、実施例4−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0159】
実施例4−9
実施例4−7において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更し、照射線量を5.0Mradにしたこと以外は、実施例4−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0160】
実施例4−10
実施例4−7において、エラストマー(b)の配合量を40質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を60質量部とし、照射線量を5Mradにしたこと以外は、実施例4−7と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.1mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0161】
実施例4−11
実施例4−10において、照射線量を5.5Mradに変更したこと以外は、実施例4−10と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0162】
実施例4−12
実施例4−10において、熱分解型発泡剤を6.0質量部に変更し、発泡性樹脂シートの厚みを0.35mmに変更したこと以外は、実施例4−10同様にして、発泡後の見掛け密度0.14g/cm
3、厚み0.5mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0163】
比較例4−1
実施例4−2において、ポリオレフィン樹脂を用いず、エラストマー(a)のみを100質量部用い、照射線量を4.5Mradにしたこと以外は、実施例4−2と同様にして発泡体シートを得た。なおTgは本願の測定条件では観測されなかった。
【0164】
比較例4−2
実施例4−2において、ポリオレフィン樹脂を用いず、エラストマー(b)のみを100質量部用いたこと以外は、実施例4−2と同様にして発泡体シートを得た。
【0165】
比較例4−3
実施例4−2において、エラストマーを用いず、ポリオレフィン樹脂のみを100質量部用い、照射線量を4.5Mradにしたこと以外は、実施例4−2と同様にして発泡体シートを得た。
【0166】
比較例4−4
実施例4−2において、エラストマー(a)の配合量を10質量部とし、ポリオレフィン樹脂の配合量を90質量部とし、電子線量を6.0Mradに変更したこと以外は、実施例4−2と同様にして、発泡後の見掛け密度0.56g/cm
3、厚み0.15mmの発泡体シートを得た。評価結果を第4−1表に示す。
【0167】
【表4】
【0168】
以上のように、比較例4−1及び4−2の発泡体シートは、タック性が高く、ハンドリング性に劣る。また、比較例4−3、4−4の発泡体シートは、耐衝撃性に劣る結果となった。一方、本発明の発泡体シートは、高い耐衝撃性と良好なタック性を示すことがわかる。