(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6974660
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】抗菌活性を有する6−アミノウラシルカス酸エステルおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 239/545 20060101AFI20211118BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20211118BHJP
A61K 31/513 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
C07D239/545CSP
A61P31/04
!A61K31/513
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-168910(P2020-168910)
(22)【出願日】2020年10月6日
【審査請求日】2021年1月29日
(31)【優先権主張番号】16/909,862
(32)【優先日】2020年6月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521378163
【氏名又は名称】シーアン・カンユアンシェン・バイオメディカル・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XI’AN KANGYUANSHENG BIOMEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジャ
(72)【発明者】
【氏名】コン,チュンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,グアイピン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ウェンボ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ムーダン
(72)【発明者】
【氏名】ジエン,ヤンリン
(72)【発明者】
【氏名】プー,フアイン
【審査官】
高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105884645(CN,A)
【文献】
特開平05−001044(JP,A)
【文献】
特開昭63−287770(JP,A)
【文献】
STASEVYCH, M. et al.,Synthesis and investigation of antimicrobial and antioxidant activity of anthraquinonylhydrazones,Monatshefte fur Chemie - Chemical Monthly,2018年,Vol.149, No.6,pp.1111-1119,DOI:10.1007/s00706-018-2157-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて前記式(I)の化合物を得る工程を含む、請求項1に記載の式(I)の化合物を調製する方法。
【化2】
【請求項3】
前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、下記の工程、
前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物を、1:1〜1:1.3のモル比で反応容器中に入れる工程と、
有機溶媒および触媒量のEDCを窒素雰囲気下で加えて反応混合物を得る工程と、
前記反応混合物を50〜80℃で4〜8時間加熱する工程と、
前記反応混合物を濃縮し、前記反応混合物を酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程と、
溶離剤として石油エーテルおよび酢酸エチルを用いてシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラム上で前記粗生成物を精製して前記式(I)の化合物を得る工程と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒はトルエン、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルである、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物とのモル比は1:1.1である、前記反応混合物を70℃で加熱する、前記反応混合物を6時間加熱する、および、前記溶離剤は石油エーテル:酢酸エチル=3:10である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、下記の工程、
前記式(II)の化合物、触媒、およびイオン性液体を窒素雰囲気下で反応容器中に入れる工程であって、前記触媒は12−モリブド珪酸水和物(H6Mo12O41Si)である、工程と、
前記式(III)の化合物を前記反応容器に加えて反応混合物を形成する工程と、
前記反応混合物を25〜50℃で5〜10時間加熱する工程と、
前記反応混合物を分液漏斗に入れ、粗生成物を分離する工程と、
メタノール中で再結晶して前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程と、
前記イオン性液体をリサイクルする工程と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン性液体は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩([BMIM][BF4])である、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物は、1:1〜1:1.3のモル比を有する、前記反応混合物を30℃で加熱する、および、前記反応混合物を8時間加熱する、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は医薬化学の分野に関し、特に、抗菌活性を有する6−アミノウラシルカス酸エステルおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
抗生物質が広く使用されるようになって、抗生物質の過剰使用がより一般的になりつつある。対応する抗生物質に耐性を発現する微生物が出現し、ヒトの健康に対する新たな脅威となっている。薬剤耐性細菌の出現は、感染症の治癒の困難さを増す。グラム陽性細菌、グラム陰性細菌ともに薬剤耐性の傾向があり、グラム陽性細菌の薬剤耐性の問題はより深刻である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は臨床でよくみられる毒性の強い細菌である。その発見以来、ほぼ世界中に広がっており、臨床的な抗感染治療において非常に厳しい問題である。新規な抗菌薬剤の開発が急務であり、世界中の多くの製薬企業が多剤耐性細菌に対応できる新規な薬剤を積極的に探している。構造活性相関の指針のもとに既存の抗菌薬剤の化学構造を改変することは、薬剤耐性細菌に対する新規な薬剤を開発するための一般的な方法である。
【0003】
カス酸(cassic acid)(レイン(rhein)としても知られる)は天然のアントラキノン化合物(式(II)の化合物)であり、これは、種々の生物学的および薬理学的活性を有し、そして、ルバーブから抽出され得る。糖・脂質代謝の改善、肝臓の保護、抗線維化、抗酸化、抗炎症、抗菌、抗がん、抗腫瘍など多くの作用を有している。しかしながら、その臨床応用はその水溶性が乏しく、生物学的利用能が低いために、かなりの程度まで制限される。
【0004】
6−アミノウラシル(式(III)の化合物)は、医薬品の合成に使用される。例えば、カフェイン、テオフィリン、SDMなどの中間体として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、6−アミノウラシル構造によりカス酸を改変して、6−アミノウラシルカス酸エステルを得る。予備的な抗菌活性実験は化合物が優れた抗菌活性を有し、多剤耐性細菌によって引き起こされる感染症の治療において高い医学的研究および応用価値を有することを示す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
一実施形態では、本発明は、式(I)を有する化合物(6−アミノウラシルカス酸エステル)を提供する。
【化1】
【0007】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物を調製する方法を提供する。この方法は、有機溶媒中で式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて前記式(I)の化合物を得る工程を含む。
【化2】
【0008】
別の実施形態では、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、下記の工程、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物とを1:1〜1:1.3のモル比で反応容器中に入れる工程と、有機溶媒および触媒量のEDCを加えて反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を50〜80℃で4〜8時間加熱する工程と、前記反応混合物を濃縮し、前記反応混合物を酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程と、石油エーテルおよび酢酸エチルを溶離剤として用いるシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラム上で前記粗生成物を精製して前記式(I)の化合物を得るス工程と、を含む。
【0009】
別の実施形態では、前記有機溶媒は、トルエン、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルである。
【0010】
別の実施形態では、前記有機溶媒はアセトニトリルである。
【0011】
別の実施形態では、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物とのモル比は1 : 1.1である。
【0012】
別の実施形態では、前記反応混合物を70℃で加熱する。
【0013】
別の実施形態では、前記反応混合物を6時間加熱する。
【0014】
別の実施形態では、前記溶離剤は石油エーテル:酢酸エチル=3:10である。
【0015】
別の実施形態では、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、下記の工程、前記式(II)の化合物、触媒、およびイオン性液体を窒素雰囲気下で反応容器中に入れ、前記触媒は12−モリブド珪酸水和物(H
6Mo
12O
41Si)である工程と、前記式(III)の化合物を前記反応容器に加えて反応混合物を形成する工程と、前記反応混合物を25〜50℃で5〜10時間加熱する工程と、前記反応混合物を分液漏斗中に入れて粗生成物を分離する工程と、メタノール中での再結晶によって前記粗生成物を精製して前記式(I)の化合物を得る工程と、イオン性液体をリサイクルする工程と、を含む。
【0016】
別の実施形態では、前記イオン性液体は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩([BMIM][BF
4])である。
【0017】
別の実施形態では、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物とのモル比は1:1.1である。
【0018】
別の実施形態では、前記反応混合物を30℃で加熱する。
【0019】
別の実施形態では、前記反応混合物を8時間加熱する。
【0020】
前記した一般的な説明と、下記の詳細な説明とは、どちらも例示的および説明的であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供するように意図されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は本発明の実施形態を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】
図1は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対する6−アミノウラシルカス酸エステルのin vitroでの抗菌活性の結果を示す。
【
図2】
図2は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するカス酸のin vitroでの抗菌活性の結果を示す。
【
図3】
図3は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対する6−アミノウラシルカス酸エステルのin vitroでの抗菌活性の結果を示す。
【
図4】
図4は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するゲンタマイシンのin vitroでの抗菌活性の結果を示す。
【
図5】
図5は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するセファゾリンナトリウムのin vitroでの抗菌活性の結果を示す。
【
図6】
図6は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するセフトリアキソンナトリウムのin vitroでの抗菌活性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図示の実施形態の詳細な説明
次に、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。下記の実施例は本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミド(式(I)の化合物)の調製
【0024】
250mLの三口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸および115.0mg(0.6mmol)のEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を、窒素雰囲気下で90mLのアセトニトリルに溶解した。83.8mg(0.66mmol)の6−アミノウラシルを15mLのアセトニトリルに溶解し、分液漏斗によってフラスコにゆっくりと滴下した。滴下終了後、70℃まで昇温し、6時間反応させた。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。濃縮溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:10を溶離剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧下で濃縮し、乾燥して、169.4mgの表題化合物を収率71.85%で得た。
【0025】
1H−NMR(400MHz、DMSO−d
6)δ(ppm):11.91(1H、s)、10.07(1H、s)、8.15(3H、d)、7.78(1H、s)、7.07(1H、d)、6.99(1H、s)、6.83(3H、s);
13C−NMR(400MHz、DMSO−d
6)δ(ppm):191.8、181.4、165.8、161.9、157.2、138.5、138.0、134.3、133.7、124.6、119.9、116.9、115.7。
【0026】
実施例2
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0027】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸および115.0mg(0.6mmol)のEDCを、窒素雰囲気下で90mLのトルエンに溶解した。83.8mg(0.66mmol)の6−アミノウラシルを15mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によってフラスコにゆっくりと滴下した。滴下終了後、50℃まで昇温し、8時間反応させた。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。濃縮溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:10を溶離剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧下で濃縮し、乾燥して、161.6mgの表題化合物を収率68.54%で得た。
【0028】
実施例3
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0029】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸および115.0mg(0.6mmol)のEDCを、窒素雰囲気下で90mLのテトラヒドロフランに溶解した。83.8mg(0.66mmol)の6−アミノウラシルを15mLのテトラヒドロフランに溶解し、分液漏斗によりフラスコにゆっくり滴下した。滴下終了後、80℃まで昇温し、4時間反応させた。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。濃縮溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を、石油エーテル:酢酸エチル=3:10を溶離剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに精製し、溶離剤を減圧下で濃縮し、乾燥させて、144.6mgの表題化合物を収率61.32%で得た。
【0030】
実施例4
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0031】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸および115.0mg(0.6mmol)のEDCを、窒素雰囲気下で90mLのトルエンに溶解した。91.4mg(0.72mmol)の6−アミノウラシルを15mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によってフラスコにゆっくりと滴下した。滴下終了後、65℃まで昇温し、6時間反応させた。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。濃縮溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を、石油エーテル:酢酸エチル=3:10を溶離剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、溶離剤を減圧下で濃縮し、乾燥させて、158.3mgの表題化合物を収率67.14%で得た。
【0032】
実施例5
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0033】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸および115.0mg(0.6mmol)のEDCを、窒素雰囲気下で90mLのアセトニトリルに溶解した。91.4mg(0.72mmol)の6−アミノウラシルを15mLのアセトニトリルに溶解し、分液漏斗によってフラスコにゆっくりと滴下した。滴下終了後、70℃まで昇温し、7時間反応させた。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。濃縮溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を、石油エーテル:酢酸エチル=3:10を溶離剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに精製し、溶離剤を減圧下で濃縮し、乾燥させて、145.2mgの表題化合物を収率61.56%で得た。
【0034】
実施例6
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0035】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸および115.0mg(0.6mmol)のEDCを、窒素雰囲気下で90mLのテトラヒドロフランに溶解した。83.8mg(0.66mmol)の6−アミノウラシルを15mLのテトラヒドロフランに溶解し、分液漏斗によりフラスコにゆっくり滴下した。滴下終了後、60℃まで昇温し、5時間反応させた。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。濃縮溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を、石油エーテル:酢酸エチル=3:10を溶離剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに精製し、溶離剤を減圧下で濃縮し、乾燥して、154.1mgの表題化合物を収率65.33%で得た。
【0036】
実施例7
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0037】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸、83.8mg(0.66mmol)の6−アミノウラシルおよび10.3mg(0.006mmol)のモリブド珪酸を、窒素雰囲気下で100mLの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩に溶解した。完全に溶解した後、温度を30℃に上げ、反応を8時間行った。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。反応混合物系を層に分離させて、粗生成物を得た。粗生成物を40mLのメタノールで再結晶し、乾燥させて、195.2mgの表題化合物を収率82.79%で得た。
【0038】
実施例8
化合物N−(2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキサミドの調製
【0039】
250mLの三つ口フラスコ中で、170.4mg(0.6mmol)のカス酸、83.8mg(0.66mmol)の6−アミノウラシルおよび10.3mg(0.006mmol)のモリブド珪酸を、窒素雰囲気下で100mLの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩に溶解した。完全に溶解した後、温度を50℃に上げ、反応を5時間行った。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。反応混合物系を層に分離させて、粗生成物を得た。粗生成物を40mLのメタノールで再結晶し、乾燥させて、183.6mgの表題化合物を収率77.85%で得た。
【0040】
実施例9
本発明の化合物の抗菌活性試験
【0041】
ゲンタマイシン、セファゾリンナトリウムおよびセフトリアキソンナトリウムを陽性対照とするマイクロブロス希釈法により測定した化合物の最小発育阻止濃度(MIC)。
【0042】
実験菌株は、メチシリン耐性グラム陽性細菌:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)MRSA 18−222、18−575、多剤耐性グラム陰性細菌:バンコマイシン耐性腸球菌(enterococci)VRE 18−80、18−94、多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)MDR−PA 18−1774、18−202、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii) CR−AB 18−183、18−560であった。すべての実験菌株はフダン大学(フダン大学抗生物質研究所)に所属するフアサン病院から供与され、ルーチンの同定後に使用された。
【0043】
試験菌株の調製:
MHB培地の調製:20.0gのMHB培地を、1Lの蒸留水に加えて、完全に溶解するまで沸騰させ、コニカルボトルに充填し、121℃で15分間滅菌した。
【0044】
実験菌株を対数増殖期まで培養した、無菌条件下で、実験菌株を100mLのMHB培地に接種し、37℃の恒温恒湿インキュベーター中で20〜22時間インキュベートした。
【0045】
保存溶液の調製:
試験する試料を秤量し、1% DMSO溶液で溶解し、濃度2560μg/mLの保存溶液を調製し、陽性標準物質を秤量し、無菌蒸留水で溶解し、濃度2560μg/mLの保存溶液を調製する。
【0046】
細菌懸濁液の調製:
無菌条件下で、対数増殖期まで培養した実験菌株をMHB培地で0.5MCF濁度基準に調整し、1:10に従って希釈し、10
6 CFU/mLの濃度の細菌懸濁液をスタンバイ用に調製した。
【0047】
保存溶液の希釈および実験菌株の接種:
無菌条件下で、保存溶液を256μg/mL溶液に希釈した。滅菌の96ウェルプレートをとり、12番目のウェルに200μLのMHB培地を加え、各ウェルに100μLのMHB培地を加える。最初のウェルに100μLの陽性対照溶液を加え、よく混合し、それから100μLを吸引し、廃棄する。2番目のウェルに100μLの化合物試料溶液を加え、よく混合した後、3番目のウェルに100μLをピペットで移す。混合後、4番目のウェルに100μLをピペットで移し、このようにして11番目のウェルまで希釈する。最後に、100μLを11番目のウェルからピペットで採取し、廃棄した。12番目の穴は、薬剤を含まない増殖対照であった。これまでのところ、陽性標準物質の濃度は128μg/mLであり、試料溶液の濃度はそれぞれ128、64、16、8、4、2、1、0.5、0.25μg/mLである。次に、調製した細菌懸濁液100μLを各ウェルに加えて、各ウェル中の細菌液の終濃度を5×10
5CFU/mLとする。
【0048】
インキュベーション:
実験菌株を接種した96ウェルプレートを被覆し、37℃の恒温恒湿ボックス内で20〜22時間インキュベートする。
【0049】
MICエンドポイントの解釈:
黒色バックグラウンド下の96ウェルプレート中の細菌の増殖を完全に阻害することができる濃度は、細菌に対するサンプルの最低発育阻止濃度である。
【0050】
図1〜6において、12個のウェルは12群を表し、左から右に、陽性、128μg/mL、64μg/mL、32μg/mL、16μg/mL、8μg/mL、4μg/mL、2μg/mL、1μg/mL、0.25μg/mL、0.0625μg/mL、陰性である。
図1は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するレイン6−アミノウラシル誘導体のin vitroでの抗菌活性を示したものである。
図2は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するレインのin vitroでの抗菌活性を示したものである。
図3は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対する6−アミノウラシルのin vitroでの抗菌活性を示す。
図4は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するゲンタマイシンのin vitroでの抗菌活性を示す。
図5は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するセファゾリンナトリウムのin vitroでの抗菌活性を示す。
図6は、薬剤耐性細菌MDR−PA 18−174に対するセフトリアキソンナトリウムのin vitroでの抗菌活性を示す。その結果を表1に示す。
【0052】
図1〜6および表1の実験結果によると、カス酸および6−アミノウラシルは薬剤耐性細菌に対して阻止作用を示さなかったが、6−アミノウラシルカス酸エステルはバンコマイシン耐性腸球菌VRE(MIC=64μg/mL)と同様に多剤耐性緑膿菌MDR−PA(MIC=128μg/mL)に対して強い阻止作用を示した。要約すると、本発明の6−アミノウラシルカス酸エステルは、グラム陰性細菌の多剤耐性緑膿菌の抗菌薬剤候補として、および、さらなる前臨床研究に使用することができる。
【要約】 (修正有)
【課題】抗菌活性を有する6−アミノウラシルカス酸エステルおよびその調製方法を提供する。
【解決手段】下記反応式により式(I)を有する化合物を調製する方法である。
【選択図】なし