特許第6974752号(P6974752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974752
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】液体試薬供給装置及び分析装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20211118BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B01J4/00 103
   G01N35/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-140049(P2019-140049)
(22)【出願日】2019年7月30日
(65)【公開番号】特開2021-20191(P2021-20191A)
(43)【公開日】2021年2月18日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】岩本 基
(72)【発明者】
【氏名】江原 徹
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−040538(JP,A)
【文献】 特開2017−166991(JP,A)
【文献】 特開2016−180659(JP,A)
【文献】 特開平09−189704(JP,A)
【文献】 特開2015−010830(JP,A)
【文献】 特開2005−195412(JP,A)
【文献】 特開2018−054429(JP,A)
【文献】 特開2016−070726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00−4/04
B01J 3/02
G01N 35/00−35/10
G01N 31/00−31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側が大気開放された吸気口に接続されており、下流端から液体試薬を吐出する試薬吐出配管と、下流端が前記試薬吐出配管の途中における接続点に接続して前記試薬吐出配管に液体試薬を供給する試薬供給配管と、前記吸気口と前記接続点との間に設けられた開閉弁と、前記試薬供給配管の途中に設けられ、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させる送液手段とを備え、
前記試薬吐出配管の下流端は、前記接続点より低い位置に配置され、
前記送液手段は、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させていないとき、前記送液手段と前記接続点との間の液体試薬を、前記送液手段側の気密を保った状態で保持するものであり、
前記開閉弁を閉とした状態で前記送液手段により前記接続点に向けて所定量の液体試薬を移動させ、次いで前記開閉弁を開として、前記接続点を大気開放することにより、前記接続点を超えて前記試薬吐出配管に至った液体試薬を自重により落下させ、前記試薬吐出配管の下流端から液体試薬を吐出させることを特徴とする、液体試薬供給装置。
【請求項2】
上流側が大気開放された吸気口に接続されており、下流端から液体試薬を吐出する試薬吐出配管と、下流端が前記試薬吐出配管の途中における接続点に接続して前記試薬吐出配管に液体試薬を供給する試薬供給配管と、前記吸気口と前記接続点との間に設けられた開閉弁と、前記試薬供給配管の途中に設けられ、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させる送液手段と、前記吸気口と前記接続点との間に設けられたエアポンプを備え、
前記試薬吐出配管の下流端は、前記接続点より低い位置に配置され、
前記送液手段は、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させていないとき、前記送液手段と前記接続点との間の液体試薬を、前記送液手段側の気密を保った状態で保持するものであり、
前記開閉弁を閉とした状態で前記送液手段により前記接続点に向けて所定量の液体試薬を移動させ、次いで前記開閉弁を開として、前記接続点を大気開放することにより、前記接続点を超えて前記試薬吐出配管に至った液体試薬を自重により落下させ、前記試薬吐出配管の下流端から液体試薬を吐出させ、その後、前記エアポンプにより、前記試薬吐出配管内に残存する液体試薬を前記試薬吐出配管の下流端から噴き出すことを特徴とする、液体試薬供給装置。
【請求項3】
前記吸気口と前記開閉弁との間に前記エアポンプを備える、請求項2に記載の液体試薬供給装置。
【請求項4】
前記接続点より上流側における前記試薬吐出配管は、前記接続点と同等か前記接続点より高い位置に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
【請求項5】
前記吸気口は、前記試薬吐出配管の下流端より高い位置に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
【請求項6】
前記吸気口は前記接続点より高い位置に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
【請求項7】
前記試薬吐出配管に2以上の前記試薬供給配管が接続され、前記2以上の試薬供給配管の各々に前記送液手段が設けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置の1以上と、前記液体試薬供給装置から吐出される液体試薬が供給される反応槽を備えることを特徴とする、分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試薬供給装置及び分析装置に関する。さらに詳しくは、試料液に液体試薬を添加するための液体試薬供給装置及び、この液体試薬供給装置を用いた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象となる試料液に液体試薬を添加して試料液の分析を行う分析装置が知られている。液体試薬の添加は、試薬タンクから反応槽に至る配管の下流端から、液体試薬を吐出することにより行われている。
従来、液体試薬を添加終了の状態で停止させると、試薬注入配管の先端に液滴が残り、これが反応槽内の試料液中に落下する場合があった。また、反応槽内が高温とされる場合は、残留した液体試薬が高温下で結晶化して反応槽内の試料液中に落下したり、さらには配管の詰まりを生じたりする場合があった。
残留した液体試薬やその結晶の意図しない時点での落下は、液体試薬の添加量の定量性を損なう。また、測定値に直接誤差を与える要因ともなる。
【0003】
そこで特許文献1では、反応槽の外側において、配管の途中にエア供給配管を合流させ、合流点より反応槽側に至った液体試薬を、直ちにエアで反応槽に吹き出す装置が提案されている。
特許文献1の装置によれば、配管は、液体試薬添加終了後に合流点の反応槽側が空の状態となるため、残留した液体試薬やその結晶が反応槽内の試料液中に落下したりすることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置を用いても、配管に徐々に汚れが蓄積することや意図しない時点での液体試薬の落下を充分に防げない場合があった。意図しない時点での液体試薬の落下は、近年試薬の使用量を少なくするため、反応槽の小型化が進むのに伴い、より生じやすくなる傾向が見られた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、配管に汚れが蓄積しにくく、意図しない時点での液体試薬の落下が抑制された液体試薬供給装置、及びこの液体試薬供給装置を用いることにより、精度の高い測定が可能で、しかもメンテナンスの負担が少ない分析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]下流端から液体試薬を吐出する試薬吐出配管と、下流端が前記試薬吐出配管の途中における接続点に接続して前記試薬吐出配管に液体試薬を供給する試薬供給配管と、前記試薬供給配管の途中に設けられ、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させる送液手段とを備え、
前記試薬吐出配管の下流端は、前記接続点より低い位置に配置され、
前記送液手段は、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させていないとき、前記送液手段と前記接続点との間の液体試薬を、前記送液手段側の気密を保った状態で保持するものであり、
前記試薬吐出配管の前記接続点の上流側は吸気口に接続され、
前記送液手段により前記接続点に向けて所定量の液体試薬を移動させて、前記接続点を超えて前記試薬吐出配管に至った液体試薬を自重により落下させることにより、前記試薬吐出配管の下流端から液体試薬を吐出させることを特徴とする、液体試薬供給装置。
[2]下流端から液体試薬を吐出する試薬吐出配管と、下流端が前記試薬吐出配管の途中における接続点に接続して前記試薬吐出配管に液体試薬を供給する試薬供給配管と、前記試薬供給配管の途中に設けられ、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させる送液手段と、エアポンプを備え、
前記試薬吐出配管の下流端は、前記接続点より低い位置に配置され、
前記送液手段は、前記試薬供給配管内の液体試薬を移動させていないとき、前記送液手段と前記接続点との間の液体試薬を、前記送液手段側の気密を保った状態で保持するものであり、
前記試薬吐出配管の前記接続点の上流側は吸気口に接続され、
前記エアポンプは前記試薬吐出配管の前記吸気口と前記接続点との間に設けられ、
前記送液手段により前記接続点に向けて所定量の液体試薬を移動させて、前記接続点を超えて前記試薬吐出配管に至った液体試薬を自重により落下させることにより、前記試薬吐出配管の下流端から液体試薬を吐出させ、その後、前記エアポンプにより、前記試薬吐出配管内に残存する液体試薬を前記試薬吐出配管の下流端から噴き出すことを特徴とする、液体試薬供給装置。
[3]前記接続点と前記エアポンプとの間に開閉弁を備える、[2]に記載の液体試薬供給装置。
[4]前記接続点より上流側における前記試薬吐出配管は、前記接続点と同等か前記接続点より高い位置に配置されている、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
[5]前記吸気口は、前記試薬吐出配管の下流端より高い位置に配置されている[1]〜[4]のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
[6]前記吸気口は前記接続点より高い位置に配置されている、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
[7]前記試薬吐出配管に2以上の前記試薬供給配管が接続され、前記2以上の試薬供給配管の各々に前記送液手段が設けられている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置。
[8][1]〜[7]のいずれか一項に記載の液体試薬供給装置の1以上と、前記液体試薬供給装置から吐出される液体試薬が供給される反応槽を備えることを特徴とする、分析装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体試薬供給装置によれば、配管に汚れが蓄積しにくく、意図しない時点での液体試薬の落下が抑制される。また、本発明の分析装置は、精度の高い測定が可能で、しかもメンテナンスの負担が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る液体試薬供給装置の待機状態を説明する図である。
図2図1の液体試薬供給装置で液体試薬を吐出する工程を説明する図である。
図3図1の液体試薬供給装置で液体試薬を吐出する工程を説明する図である。
図4図1の液体試薬供給装置で液体試薬を吐出する工程を説明する図である。
図5】従来の液体試薬供給装置において、配管に汚れが蓄積しやすいメカニズム(推定)の説明図である。
図6】従来の液体試薬供給装置において、配管に汚れが蓄積しやすいメカニズム(推定)の説明図である。
図7】従来の液体試薬供給装置において、配管に汚れが蓄積しやすいメカニズム(推定)の説明図である。
図8】従来の液体試薬供給装置において、意図しない時点での液体試薬の落下が生じるメカニズム(推定)の説明図である。
図9】従来の液体試薬供給装置において、意図しない時点での液体試薬の落下が生じるメカニズム(推定)の説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る分析装置の概略構成図である。
図11】比較例に係る全窒素・全りん分析計の測定結果である。
図12】実施例に係る全窒素・全りん分析計の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<液体試薬供給装置>
本発明の一実施形態に係る液体試薬供給装置を図1に基づき説明する。なお、図1における各部材の大きさや寸法比は、説明の便宜上のものであって、実際とは異なっている。
本発明の一実施形態に係る液体試薬供給装置は、試薬吐出配管1と、試薬供給配管2と給気管3と、試薬供給配管2の途中に設けられた送液手段6と、給気管3の途中に設けられたエアポンプ7を備えている。
また、試薬吐出配管1の途中の接続点4aにおいて試薬供給配管2を接続する継ぎ手4と、試薬供給配管2と給気管3の間に設けられた常閉弁5(開閉弁)を備えている。
【0011】
試薬吐出配管1は、例えばサンプルカップ11に向けて、下流端1aから液体試薬を吐出するようになっている。
本実施形態において、試薬吐出配管1は上流側配管1bと下流側配管1cとからなり、上流側配管1bと下流側配管1cとは、接続点4aにおいて継ぎ手4によって接続されている。
また、試薬供給配管2は、下流端が継ぎ手4に接続している。
常閉弁5は、試薬吐出配管1の上流端と給気管3の間に設けられている。
【0012】
試薬供給配管2は、上流端が液体試薬8を収容する試薬タンク9内に挿入されている。送液手段6は、この試薬供給配管2の途中に設けられ、試薬供給配管2内の液体試薬を移動させる手段である。送液手段6によって試薬供給配管2内の液体試薬が試薬タンク9から試薬吐出配管1に供給されるようになっている。
【0013】
送液手段6は、試薬供給配管2内の液体試薬8を移動させていない停止時に試薬供給配管2を、送液手段6が設けられた位置において気密を保って閉塞する。これにより、停止時に送液手段6と接続点4aとの間の液体試薬8を、送液手段6側の気密を保った状態で保持できるようになっている。
送液手段6としては、逆止弁を有するシリンジポンプやペリスタル型ポンプを好適に使用できる。
【0014】
給気管3は、上流端が大気開放された吸気口3aとされ、エアポンプ7は停止時に給気管3を閉塞しない構造とされている。
すなわち、試薬吐出配管1の上流側は常閉弁5とエアポンプ7を介して吸気口3aに接続されている。
【0015】
試薬吐出配管1の下流端1aは、接続点4aより低い位置に配置される。下流端1aと接続点4aの間の配管は、全体が接続点4aの高さ位置より低い位置か、それと同等の高さ位置に配置されることがより好ましい。また、全体が下流端1aの高さ位置より高い位置か、それと同等の高さ位置に配置されることがより好ましい。接続点4aから下流端1aに近づくにつれ、高さ位置が低くなっていくように配置することが特に好ましい。
これにより、液体試薬8が接続点4aから下流端1aに向かって自重により落下しやすくなる。
なお、本明細書においては、水平に配置することを意図して配置した配管の一部が撓み等により下がった程度の高さの違いは、同等の高さ位置に配置されているとみなす。
【0016】
吸気口3aは接続点4aよりも高い位置に配置されていることが好ましい。吸気口3aと接続点4aの間の配管は、全体が接続点4aの高さ位置より高い位置か、それと同等の高さ位置に配置されることがより好ましい。また、全体が吸気口3aの高さ位置より低い位置か、それと同等の高さ位置に配置されることがより好ましい。吸気口3aから接続点4aに近づくにつれ、高さ位置が低くなっていくように配置されることが特に好ましい。
これにより、上流側配管1bに液体試薬8が進入しにくくなる。
【0017】
吸気口3aは試薬吐出配管1の下流端1aよりも高い位置に配置されることが好ましい。
吸気口3aと試薬吐出配管1の下流端1aとの間の配管は、吸気口3aよりも高い部分があっても差し支えないが、全体が吸気口3aの高さ位置より低い位置か、それと同等の高さ位置に配置されることが好ましい。これにより、上流側配管1bに液体試薬8が進入しにくくなる。
【0018】
また、吸気口3aと試薬吐出配管1の下流端1aとの間の配管は、試薬吐出配管1の下流端1aよりも低い部分があっても差し支えないが、全体が下流端1aの高さ位置より高い位置か、それと同等の高さ位置に配置されることが好ましい。吸気口3aから下流端1aに近づくにつれ、高さ位置が低くなっていくように配置することが特に好ましい。
これにより、液体試薬8を自重により落下させた際、液体試薬8の一部が試薬吐出配管1の途中で留まることを防止できる。
【0019】
本実施形態の液体試薬供給装置の動作を図1図4を参照して説明する。
図1の待機状態では、液体試薬8は試薬供給配管2に、その上流端から接続点4aまで充填されている。
液体試薬8をサンプルカップ11等に供給するためには、まず、図2に示すように、常閉弁5をOFF(閉)、エアポンプ7をOFFの状態で、送液手段6を動作させ、接続点4aに向けて所定量の液体試薬8を移動させる。接続点4aを超えて試薬吐出配管1に至った液体試薬8は、上流側配管1b側が常閉弁5により閉塞されているため、下流側配管1cに入る。
【0020】
その後、送液手段6を停止し、常閉弁5をON(開)とすると、接続点4aが大気開放状態の吸気口3aと接続されるので、接続点4aを超えて下流側配管1cに入っていた液体試薬8は、図3に示すように、自重により落下し、下流端1aからサンプルカップ11に向けて吐出される。
なお、下流端1aと接続点4aの間に、接続点4aの高さ位置より高い部分がある場合は、液体試薬8を当該高い部分を超えて、接続点4aの高さより低くなる部分まで充填してから常閉弁5をON(開)とする必要がある。この場合、サイフォンの原理により、液体試薬8を自重により下流端1aかに落下させることができる。
【0021】
サンプルカップ11に液体試薬8を供給する作業は、ここで終了しても良いが、この段階では、若干の残液8aが下流側配管1cに残る。そのため、さらに、残液8aを除去するためにエアブローを行うことが好ましい。
エアブローは、図4に示すように、常閉弁5をON(開)としたまま、エアポンプ7を動作させることにより行う。これにより、試薬吐出配管1内に残存する液体試薬8(残液8a)を下流端1aから噴き出すことができる。
その後、常閉弁5をOFF(閉)、エアポンプ7をOFFの状態に戻すことにより、エアブローを終了し、残液8aが試薬吐出配管1内に存在しない状態で図1に示す待機状態に復帰する。
【0022】
エアブローの時間は、1〜20秒間が好ましく、2〜10秒間がより好ましい。例えば5秒間とすることができる。
エアブローの流量は、例えば内径2mLの場合、200〜1500mL/分が好ましく、300〜1000mL/分がより好ましい。例えば500mL/分とすることができる。好ましい流量は配管の内面積に比例する。
エアブローは、試薬供給時だけでなく、サンプルカップ11等の洗浄を行う際に、再度行うことが好ましい。これにより、極僅かに残った残液8aも除去して洗浄工程後の次回測定に備えることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の液体試薬供給装置は、基本的には、液体試薬8を自重による落下によって吐出し、サンプルカップ11等に供給するようになっている。そして、試薬吐出配管1に至った液体試薬8のほぼ全量が自重による落下した後にエアブローするようになっている。
これに対して、従来は、図5に示すように、常閉弁5をON(開)とし、エアポンプ7を動作させた状態で、送液手段6を動作させていた。この場合、接続点4aを超えて試薬吐出配管1に至った液体試薬8は、直ちにエアにより押し出され、水滴状態で移動して下流端1aから吐出される。
【0024】
本発明者らは、このエアの圧送による配管の帯電(静電気の発生)が、汚れが蓄積しやすい要因であることを見いだした。
配管、特に樹脂製のチューブで構成される配管内を流体が通過すると、静電気が発生することが知られている(ニチアス技術時報、2013年3号、No.362参照)。特に流体が気液混合状態であると帯電しやすい。
従来のように直ちにエアにより押し出される場合、水滴状態で移動する液体試薬8は、エアと混合された状態であるため、試薬吐出配管1に強い帯電が生じていた。
【0025】
試薬吐出配管1が帯電すると、図6に示すように、液体試薬8が試薬吐出配管1に吸着されて、試薬吐出配管1に残液8aとして残りやすくなる。
そして、試薬吐出配管1に残液8aが残る試薬供給作業を繰り返すと、残液8aが蓄積され、図7に示すように汚れ8bとなり試薬吐出配管1に付着しやすくなることがわかった。
【0026】
本実施形態の液体試薬供給装置は、エアブローを行う際に、液体試薬8はほぼ全量吐出済みで、試薬吐出配管1内に殆ど残留していない。そのため、気液混合状態で試薬吐出配管1内を通過することが避けられ、帯電を抑制できるようになった。その結果、本実施形態の液体試薬供給装置は、汚れが蓄積しにくい。
【0027】
また、本発明者らは、このエアの圧送による配管の帯電(静電気の発生)が、意図しない時点での液体試薬の落下の要因にもなっていることを見いだした。
すなわち、複数の試薬吐出配管の先端は、図8に示すように、通常、反応槽の蓋材12に挿入されて、サンプルカップ11等に試薬を供給可能な位置に配置される。
【0028】
図8では、試薬吐出配管1A、試薬吐出配管1B、試薬吐出配管1Cの3本の試薬吐出配管が挿入された状態を示している。
試薬吐出配管1Aから液体試薬を吐出しようとする場合、試薬吐出配管1B、試薬吐出配管1Cも帯電しやすいため、これらの先端に残液8aが残留していることがある。
【0029】
この状態で図9に示すように試薬吐出配管1Aから液体試薬を吐出すると、帯電した気液混合状態の流体が試薬吐出配管1Aの先端を移動するため、試薬吐出配管1B、試薬吐出配管1C内の残液8aに対して静電誘導的な力が働き、これらの残液8aが落下してしまうものと考えられる。
本実施形態の液体試薬供給装置は、帯電を抑制できるため、意図しない時点での液体試薬の落下を防止できる。
【0030】
なお、上記実施形態では、エアブローを行う装置としたが、エアブローは必須ではない。エアブローを行わない場合、給気管3とエアポンプ7は不要である。
また、上記実施形態では、常閉弁5を用いたが、常閉弁5に代えて常開弁を用いてもよい。また、常閉弁5または常開弁は省略してもよい。ただし、その場合は、試薬吐出配管1の上流側が常に大気開放状態の吸気口3aに接続されるため、送液手段6により液体試薬8を試薬吐出配管1に向けて送液した場合、上流側配管1bに液体試薬8が侵入しやすくなる。そのため、上流側配管1bを接続点4aより高い位置に配置することが必要となる。
また、上記実施形態では、試薬吐出配管1に単一の試薬供給配管2が接続した形態としたが、試薬吐出配管1に接続する試薬供給配管2は、2以上であってもよい。
【0031】
<分析装置>
図10に、本発明の一実施形態に係る分析装置として、全窒素・全りん分析装置を示すが、本発明の分析装置はこの実施形態に限定されるものではなく、具体的な構成や動作手順は、種々変更することが可能である。
本実施例の分析装置は、反応槽10、加熱槽13、吸光度検出部20、液を移動させるための配管及びポンプ等、及び装置全体を制御する制御部30を備えている。
【0032】
反応槽10はサンプルカップ11とサンプルカップ11を覆う蓋材12とからなり、蓋材12を貫通して、検出配管L1、試料液配管L2、第1試薬吐出配管L3、第2試薬吐出配管L4、第3試薬吐出配管L5、全窒素用分解配管L6、全窒素分解液排出管L13、全りん用分解配管L7、純水配管L8、及び排液配管L9が反応槽10に挿入されている。
【0033】
検出配管L1は、上流端がサンプルカップ11内に挿入され、下流端が廃液タンクT7に挿入されている。また、検出配管L1の途中に、上流側から順次設けられた吸光度検出部20、バッファータンク15、及び検出用ポンプP1を備えている。
すなわち、反応槽10のサンプルカップ11と吸光度検出部20との間は、検出配管L1で接続され、検出用ポンプP1により、液が移動可能とされている。
【0034】
吸光度検出部20は、フローセルを有する吸光度計である。
なお、図1には、フローセル部分のみ示しているが、吸光度検出部20は、フローセルに光を照射する光源とフローセルを透過した光を検出する光検出部と、光源と光検出部との間に設けられたレンズ等の光学部材を備えている。
【0035】
バッファータンク15は、検出配管L1の途中であって、吸光度検出部20のフローセルの下流側に接続されている。バッファータンク15は、上流側が下流側より上方(高い位置)になるようにして配置されている。
バッファータンク15は内径が上流から下流に向けて漸増しその後漸減するように形成された部分を有している。すなわち、下流から見ても、下流から上流に向けて漸増しその後漸減するように形成されている。
【0036】
下流から上流に向けて漸増する部分を有することにより、下流側から少量の液が逆流してきた場合、液膜状となった少量の液は、上昇するにつれて面積が大きくなるため途中で膜が破壊される。そのため、液膜状のままフローセル側まで逆流してきた液が至ることを阻止できる。
また、下流から上流に向けて漸増した後に漸減する部分があるため、検出配管L1の途中に接続することが可能となっている。
【0037】
検出用ポンプP1は、検出配管L1内の液を上流から下流に向かう正方向と下流から上流に向かう逆方向のいずれの方向にも送液可能なポンプである。
本実施形態の検出用ポンプP1は、ペリスタル型ポンプである。ペリスタル型ポンプは、軟質チューブをローラーでしごいて送液ないし送気するもので、チューブポンプ、ローラーポンプとも呼ばれる。ローラーでしごく方向を逆転させることにより、送液ないし送気の方向を逆転させることができるようになっている。ペリスタル型ポンプの市販品としてはペリスタポンプ(登録商標)が利用できる。
本実施形態の検出配管L1に設けるポンプとしては、吐出口側に三方弁等の流路切り替え手段を設けたシリンジポンプを使用してもよい。
【0038】
試料液配管L2の上流端には、図示を省略する受水槽等の試料液の供給源に接続され、下流端は、サンプルカップ11に試料液を吐出可能な位置に配置されている。試料液配管L2の途中には、試料液ポンプP2が設けられている。
【0039】
本実施形態の分析装置は、試薬吐出配管が第1試薬吐出配管L3である液体試薬供給装置と、試薬吐出配管が第2試薬吐出配管L4である液体試薬供給装置と、試薬吐出配管が第3試薬吐出配管L5である液体試薬供給装置を備えている。すなわち、3つの本発明に係る液体試薬供給装置を備えている。
【0040】
第1試薬吐出配管L3、第2試薬吐出配管L4、第3試薬吐出配管L5の各々の下流端は、図1の下流端1aに相当し、各々反応槽10のサンプルカップ11に液体試薬を吐出可能な位置に配置されている。
一方、各々の試薬吐出配管の上流端には加圧用配管L10が接続されており、加圧用配管L10にはエアポンプP10が設けられている。エアポンプP10は停止時に加圧用配管L10を閉塞しない構造とされており、図1の吸気口3aに相当する加圧用配管L10の上流端は大気開放とされている。
加圧用配管L10の上流端は、各試薬吐出配管の各々の下流端より、高い位置とされている。
【0041】
第1試薬吐出配管L3には、加圧用配管L10に接続された上流側に第5常閉弁V5が設けられ、その下流側には、上流側から順に配管A、配管B、配管Cが接続されている。
第2試薬吐出配管L4には、加圧用配管L10に接続された上流側に第6常閉弁V6が設けられ、その下流側には配管Dが接続されている。
第3試薬吐出配管L5には、加圧用配管L10に接続された上流側に第7常閉弁V7が設けられ、その下流側には配管Eが接続されている。
【0042】
配管A、配管B、配管C、配管D、配管Eは、いずれも試薬吐出配管に液体試薬を供給する試薬供給配管である。
すなわち、試薬吐出配管が第1試薬吐出配管L3である液体試薬供給装置は、第1試薬吐出配管L3に3つの試薬供給配管が接続されている。また、試薬吐出配管が第2試薬吐出配管L4である液体試薬供給装置と、試薬吐出配管が第3試薬吐出配管L5である液体試薬供給装置には、それぞれ1つの試薬供給配管が接続されている。
それぞれの試薬供給配管が試薬吐出配管に接続する接続点(接続点a〜接続点e)の高さ位置は、加圧用配管L10の上流端の高さ位置より低く、各々の試薬供給配管が接続する試薬吐出配管の下流端の高さ位置より高くされている。
【0043】
また、試薬吐出配管が第1試薬吐出配管L3である液体試薬供給装置の第5常閉弁V5の上流側と加圧用配管L10、試薬吐出配管が第2試薬吐出配管L4である液体試薬供給装置の第6常閉弁V6の上流側と加圧用配管L10、試薬吐出配管が第3試薬吐出配管L5である液体試薬供給装置の第7常閉弁V7の上流側と加圧用配管L10は、各々図1の給気管3に相当する。
すなわち、本実施形態の分析装置では、図1の給気管3の一部に相当する加圧用配管L10と図1のエアポンプ7に相当するエアポンプP10とが3つの液体試薬供給装置によって共用されている。
【0044】
配管Aは、上流端が水酸化ナトリウム溶液を収容する第1試薬タンクT1に挿入されており、下流端は接続点aにおいて第1試薬吐出配管L3に接続しており、途中に第1試薬ポンプP3が設けられている。
配管Bは、上流端がペルオキソ二硫酸カリウム溶液を収容する第2試薬タンクT2に挿入されており、下流端は接続点bにおいて第1試薬吐出配管L3に接続しており、途中に第2試薬ポンプP4が設けられている。
配管Cは、上流端がL−アスコルビン酸溶液を収容する第3試薬タンクT3に挿入されており、下流端は接続点cにおいて第1試薬吐出配管L3に接続しており、途中に第3試薬ポンプP5が設けられている。
【0045】
配管Dは、上流端が塩酸溶液を収容する第4試薬タンクT4に挿入されており、下流端は接続点dにおいて第2試薬吐出配管L4に接続しており、途中に第4試薬ポンプP6が設けられている。
配管Eは、上流端がモリブデン酸アンモニウム溶液を収容する第5試薬タンクT5に挿入されており、下流端は接続点eにおいて第3試薬吐出配管L5に接続しており、途中に第5試薬ポンプP7が設けられている。
【0046】
第1試薬ポンプP3を動作させることにより第1試薬タンクT1の試薬が、第2試薬ポンプP4を動作させることにより第2試薬タンクT2の試薬が、第3試薬ポンプP5を動作させることにより第3試薬タンクT3の試薬が、第4試薬ポンプP6を動作させることにより第4試薬タンクT4の試薬が、第5試薬ポンプP7を動作させることにより第5試薬タンクT5の試薬が、各々接続する試薬吐出配管に供給されるようになっている。
【0047】
それぞれの試薬供給配管に設けられた試薬ポンプは、その液体試薬を移動させる送液手段である。これらの試薬ポンプは、停止時に試薬供給配管を、当該試薬ポンプが設けられた位置において気密を保って閉塞する。これにより、停止時に各々が設けられた試薬供給配管と試薬吐出配管との接続点と、当該ポンプとの間に試薬を保持できるようになっている。
試薬供給配管に設けられた試薬ポンプとしては、逆止弁を有するシリンジポンプやペリスタル型ポンプを好適に使用できる。
【0048】
図1図4を参照して説明したのと同様に、待機状態では、各試薬供給配管の液体試薬は各々試薬供給配管の上流端から各接続点まで充填されている。
そして、第5常閉弁V5、第6常閉弁V6、第7常閉弁V7の総てをOFF(閉)、エアポンプP10をOFFの状態で、いずれかの試薬供給配管に接続された試薬ポンプを動作させると、その試薬吐出配管の接続点に向けて所定量の液体試薬が移動する。接続点を超えて試薬吐出配管に至った液体試薬は、上流側が常閉弁により閉塞されているため、試薬吐出配管の下流側に入る。
【0049】
その後、その試薬ポンプを停止し、液体試薬が導入された試薬吐出配管に設けられた常閉弁をON(開)とすると、接続点が大気開放状態の加圧用配管L10の上流端と接続されるので、試薬吐出配管に入っていた液体試薬は、自重により落下し、試薬吐出配管の下流端からサンプルカップ11に向けて吐出される。
そして、その後、ON(開)とした弁をONのままエアポンプP10を動作させると、試薬吐出配管の各接続点の下流側の残液をサンプルカップ11に噴き出すことができる。
【0050】
例えば、第1試薬タンクT1内の試薬のサンプルカップ11への供給は以下のように行う。まず、第5常閉弁V5、第6常閉弁V6、第7常閉弁V7の総てをOFF(閉)、エアポンプP10をOFFの状態で、第1試薬ポンプP3を動作させ、配管Aから接続点aに向けて第1試薬タンクT1内の試薬の所定量を移動させる。接続点aを超えて第1試薬吐出配管L3に至った試薬は、上流側が第5常閉弁V5により閉塞されているため、第1試薬吐出配管L3の下流側に入る。
【0051】
その後、その試薬ポンプを停止し、液体試薬が導入された試薬吐出配管に設けられた常閉弁をON(開)とすると、接続点aが大気開放状態の加圧用配管L10の上流端と接続されるので、第1試薬吐出配管L3に入っていた液体試薬は、自重により落下し、第1試薬吐出配管L3の下流端からサンプルカップ11に向けて吐出される。
そして、その後第5常閉弁V5をON(開)としたままエアポンプP10を動作させると、接続点aの下流側の残液をサンプルカップ11に噴き出すことができる。
【0052】
なお、残液を拭きだしたエアによりサンプルカップ11内の液を攪拌できるので、導入した試薬と試料液等を充分に混合できる。
また、サンプルカップ11に試薬を導入した後は、試薬が各試薬供給配管の接続点から試薬ポンプまでの間に充填された状態で保持されるので、次回の試薬供給に対応できる。
【0053】
また、サンプルカップ11に試薬を導入した後の試薬吐出配管には試薬が入っていない状態となるため、試薬吐出配管の先端から、意図しない時点でサンプルカップ11に試薬が落下することを防止できると共に、複数の試薬供給配管を一つの試薬吐出配管に接続することも可能となっている。
【0054】
全窒素用分解配管L6と全りん用分解配管L7は、各々反応槽10より上方において加熱分解部を有する。加熱分解部は、全窒素用分解配管L6と全りん用分解配管L7が加熱槽13に覆われている部分である。
全窒素用分解配管L6と全りん用分解配管L7の下流端は、各々サンプルカップ11の底部まで挿入されている。
【0055】
すなわち、全窒素測定用の加熱分解部は全窒素用分解配管L6により、全りん測定用の加熱分解部は全りん用分解配管L7により、各々反応槽10のサンプルカップ11と接続されており、各加熱分解部とサンプルカップ11との間は、以下に説明するようにポンプや弁の働きにより、液が移動可能とされている。
【0056】
全窒素用分解配管L6における加熱分解部の反応槽10側には第1常閉弁V1が、反応槽10と反対側には第2常閉弁V2が設けられている。
同様に、全りん用分解配管L7における加熱分解部の反応槽10側には第3常閉弁V3が、反応槽10と反対側には第4常閉弁V4が設けられている。
また、全窒素分解液排出管L13の上流端側は全窒素用分解配管L6の加熱分解部と第1常閉弁V1との間に接続しており、全窒素分解液排出管L13には、第9常閉弁V11が設けられている。
【0057】
全窒素用分解配管L6と全りん用分解配管L7の上流端は、共通配管L12を介して加圧用配管L10に接続されている。
加圧用配管L10の共通配管L12が接続されている箇所と、第1試薬吐出配管L3、第2試薬吐出配管L4、及び第3試薬吐出配管L5が接続されている部分の間には、第8常閉弁V8が設けられている。
【0058】
また、純水配管L8の上流端は純水タンクT8に挿入され、下流端は、サンプルカップ11に純水を吐出可能な位置に配置されている。
純水配管L8には、上流側から順に第1三方弁V9、第2三方弁V10が設けられている。
【0059】
第1三方弁V9には、純水ポンプP8の吐出口が接続されている。本実施形態において、純水ポンプP8はシリンジポンプである。
第1三方弁V9は、純水ポンプP8の吐出口側が共通ポート、純水タンクT8側が常閉ポート、第2三方弁V10側が常開ポートとされている。
【0060】
また、第2三方弁V10には、加熱槽洗浄用配管L11の上流端が接続されている。加熱槽洗浄用配管L11の下流端は、加圧用配管L10と共通配管L12の接続箇所に接続している。
第2三方弁V10は、第1三方弁V9側が共通ポート、純水配管L8の下流端側が常閉ポート、加熱槽洗浄用配管L11側が常開ポートとされている。
【0061】
サンプルカップ11内の液の加熱分解部への吸い上げは、純水ポンプP8の吸引動作で行われるようになっている。全窒素用分解配管L6と全りん用分解配管L7の各々における加熱分解部への吸い上げのタイミングは、別々とされる。
なお、加熱分解部への吸い上げのための純水ポンプP8の吸引動作の前には、純水ポンプP8のプランジャは吐出した位置とされている。
【0062】
全窒素用分解配管L6への吸い上げ時における純水ポンプP8の吸引動作は、第1常閉弁V1、第2常閉弁V2はON(開)、第3常閉弁V3、第4常閉弁V4、第9常閉弁V11はOFF(閉)、第8常閉弁V8はOFF(閉)、第1三方弁V9はOFF(T8側が閉)、第2三方弁V10はOFF(L11側が開)の状態で行われる。
全りん用分解配管L7への吸い上げ時における純水ポンプP8の吸引動作は、第1常閉弁V1、第2常閉弁V2、第9常閉弁V11はOFF(閉)、第3常閉弁V3、第4常閉弁V4はON(開)、第8常閉弁V8はOFF(閉)、第1三方弁V9はOFF(T8側が閉)、第2三方弁V10はOFF(L11側が開)の状態で行われる。
【0063】
液を導入した加熱分解部の加圧は、エアの圧送により行われるようになっている。加熱分解部へのエアの圧送は、エアポンプP10を動作させることにより行う。
全窒素用分解配管L6の加熱分解部を加圧する際は、第1常閉弁V1、第9常閉弁V11、第3常閉弁V3、及び第4常閉弁V4はOFF(閉)、第2常閉弁V2はON(開)、第8常閉弁V8はON(開)、第2三方弁V10はON(V8側が閉)とされる。
全りん用分解配管L7の加熱分解部を加圧する際は、第1常閉弁V1、第2常閉弁V2、第9常閉弁V11、及び第3常閉弁V3はOFF(閉)、第4常閉弁V4はON(開)、第8常閉弁V8はON(開)、第2三方弁V10はON(V8側が閉)とされる。
そして、エアポンプP10を停止し、第1常閉弁V1〜第4常閉弁V4、及び第1三方弁V9を総てOFF(閉)とした状態で、加熱槽13によって加熱分解部が加熱され、各加熱分解部に導入された液の加熱分解がされるようになっている。
【0064】
なお、加熱槽13の温度は、加熱分解時以外は、全工程を通じて約70℃の予熱状態とされ、加熱分解時には120℃とされるようになっている。
その後、全窒素用分解配管L6と全りん用分解配管L7の各々における加熱分解部の圧抜きと液(加熱分解液)をサンプルカップ11に戻すタイミングは、別々とされる。
【0065】
全窒素用分解配管L6における加熱分解部の圧抜きは、第9常閉弁V11をON(開)とすることにより行う。そして、加熱分解液のサンプルカップ11への戻しは、第9常閉弁V11と第2常閉弁V2をON(開)とすることにより、全窒素分解液排出管L13を通して液をサンプルカップ11に落下させ、その後第8常閉弁V8をON(開)、第2三方弁V10をON(V8側が閉)の状態でエアポンプP10を動作させることにより、全窒素用分解配管L6内の残液を追い出すようにして行われる。
なお、全窒素測定用の加熱分解液を全窒素分解液排出管L13を介して戻すのは、全窒素用分解配管L6に残留する未加熱のペルオキソ二硫酸カリウム溶液が加熱分解液に混入することを防ぐためである。未加熱のペルオキソ二硫酸カリウム溶液は、全窒素測定の妨害成分となる。
【0066】
全りん用分解配管L7における加熱分解部の圧抜きは、第3常閉弁V3をON(開)とすることにより行う。そして、加熱分解液のサンプルカップ11への戻しは、第3常閉弁V3と第4常閉弁V4がをON(開)とすることにより液をサンプルカップ11に落下させ、その後第8常閉弁V8をON(開)、第2三方弁V10をON(V8側が閉)の状態でエアポンプP10を動作させることにより、全りん用分解配管L7内の残液を追い出すようにして行われる。
【0067】
加熱分解部の洗浄は、純水を加熱分解部に流すことにより行われる。具体的には、第1常閉弁V1と第2常閉弁V2、第9常閉弁V11と第2常閉弁V2、又は第3常閉弁V3と第4常閉弁V4のいずれか1組以上がON(開)とされ、第8常閉弁V8、第1三方弁V9、第2三方弁V10のいずれもがOFFの状態で純水ポンプP8が吐出動作をするようになっている。
【0068】
また、洗浄や希釈のために、サンプルカップ11に直接純水を導入する作業は、第8常閉弁V8をOFF(閉)、第1三方弁V9をOFF(第2三方弁V10側が開)、第2三方弁V10をON(純水配管L8の下流端側を開)の状態で純水ポンプP8が吐出動作をするようになっている。
なお、洗浄や希釈の作業前には、第1三方弁V9をON(純水タンクT8側が開)の状態で、純水ポンプP8の吸引動作が行われ、純水ポンプP8に純水が充填した状態とされている。
【0069】
排液配管L9の上流端は、サンプルカップ11の底部まで挿入されている。下流端は、排液を装置外に排液するため、装置の排液口に至る。
排液配管L9の途中には、排液ポンプP9が設けられている。
【0070】
本実施形態の分析装置による全窒素濃度と全りん濃度の測定は、制御部30の制御の下、以下の手順により行われる。
1.全窒素サンプル調整
まず、試料液配管L2により、所定量の試料液をサンプルカップ11に導入する。ここで、必要に応じて、純水配管L8から純水をサンプルカップ11に導入して試料液を希釈する。次いで、全窒素測定用の加熱分解試薬である第1試薬タンクT1の水酸化ナトリウム溶液と第2試薬タンクT2のペルオキソ二硫酸カリウム溶液をサンプルカップ11に導入し、試料液と加熱分解試薬を混合し、全窒素サンプル液とする。
そして、全窒素サンプル液の全量を全窒素用分解配管L6の加熱槽13(予熱状態)に収容されている部分(加熱分解部)まで吸引し、第1常閉弁V1と第2常閉弁V2をOFF(閉)の状態で、全りんサンプル調整を行っている間待機する。
【0071】
2.全りんサンプル調整
サンプルカップ11内を洗浄した後、試料液配管L2により、所定量の試料液をサンプルカップ11に導入する。ここで、必要に応じて、純水配管L8から純水をサンプルカップ11に導入して試料液を希釈する。次いで、全りん測定用の加熱分解試薬である第2試薬タンクT2のペルオキソ二硫酸カリウム溶液をサンプルカップ11に導入し、試料液と加熱分解試薬を混合し、全りんサンプル液とする。
そして、全りんサンプル液の全量を全りん用分解配管L7の加熱槽13(予熱状態)に収容されている部分(加熱分解部)まで吸引して、第3常閉弁V3と第4常閉弁V4を閉状態とする。
【0072】
3.加熱分解
全窒素用分解配管L6の加熱分解部を加圧し、次いで、全りん用分解配管L7の加熱分解部を加圧する。
そして、加熱槽13の温度を120℃として、30分間、全窒素用分解配管L6の全窒素サンプル液と全りん用分解配管L7の全りんサンプル液を加熱分解し、各々全窒素測定用の加熱分解液と全りん測定用の加熱分解液とする。
加熱分解により、試料液中の窒素化合物はすべて酸化されて硝酸イオンとなる。また、試料液中のリン化合物はすべて酸化されてリン酸イオンとなる。
加熱分解後、各加熱分解部の圧抜きをする。
【0073】
4.全窒素測定
全窒素用分解配管L6の加熱分解液を、圧抜き後、全窒素分解液排出管L13を介してサンプルカップ11に戻す。ここに、第4試薬タンクT4の塩酸を導入してpHを2〜3に調整し、全窒素測定用の測定対象液を得る。
次いで、以下の手順に従って、吸光度検出部20で全窒素測定用の測定対象液の吸光度を測定する。
【0074】
サンプルカップ11内の測定対象液が少量で吸光度検出部20のフローセル内をサンプルカップ11内の測定対象液で共洗いする必要がある場合、吸光度検出部20での吸光度測定は以下のステップD1〜ステップD4の手順で行われる。
共洗いの必要がなければ、以下のステップD3〜ステップD4の手順で行われる。
【0075】
ステップD1:検出用ポンプP1を正方向に駆動して、サンプルカップ11内の測定対象液の一部を吸光度検出部20のフローセル内に吸引する。
ステップD2:検出用ポンプP1を逆方向に駆動して、フローセル内に吸引した測定対象液をサンプルカップ11内に戻す。
ステップD3:検出用ポンプP1を正方向に駆動して、サンプルカップ11内の測定対象液の一部を前記フローセル内に吸引する。
ステップD4:吸光度検出部20で測定対象液の吸光度を測定する。
【0076】
なお、ステップD1でフローセル内に吸引する測定対象液の量は、バッファータンク15まで至らないよう、共洗いのために必要な最小限の量とする。一方、ステップD3でフローセル内に吸引する測定対象液の量は、ある程度バッファータンク15まで至っても差し支えないので、ステップD1の吸引量より多めとし、フローセル21内全体に、測定対象液が確実に充填される量とする。
【0077】
吸光度は、硝酸イオン濃度に対応する波長と、硝酸イオンの吸収がなく、濁り成分等の量に対応する波長で測定される。そして、両波長の測定結果と、予め求めた検量線情報に基づき、試料液の全窒素濃度が求められる。
例えば、日本の、昭和49年環境庁(現・環境省)告示第64号及びJIS K 0102:2016の45では、硝酸イオン濃度に対応する波長220nmと、硝酸イオンの吸収がなく、濁り成分の量に対応する波長254nmの各波長の吸光度を測定し、220nmの吸光度から254nmの吸光度を差し引いた値を、予め求めた検量線情報に基づき換算することで、試料液の全窒素濃度が求められる。
また、中国の規格「HJ/ T 102−2003」、「GB 11894−89」では、硝酸イオン濃度に対応する波長220nmと、硝酸イオンの吸収がなく、濁り成分等の量に対応する波長275nmの各波長の吸光度を測定し、220nmの吸光度から275nmの吸光度の2倍を差し引いた値を、予め求めた検量線情報に基づき換算することで、試料液の全窒素濃度が求められる。
【0078】
吸光度測定後、検出用ポンプP1をさらに正方向に駆動して、サンプルカップ11内の測定対象液の全量を廃液タンクT7に廃液する。その後必要に応じて検出配管L1を洗浄する。検出配管L1を洗浄する場合は、サンプルカップ11に洗浄水を導入してから、検出用ポンプP1を正方向に駆動して、サンプルカップ11内の洗浄水を廃液タンクT7に廃液することにより、検出配管L1を洗浄する。
【0079】
洗浄水としては、純水で全窒素用分解配管L6を洗浄し、その後サンプルカップ11に吐出された水を用いることが好ましい。
これにより、全窒素用分解配管L6とサンプルカップ11と検出配管L1の総てを洗浄できる。
検出配管L1内を充分に洗浄した後に、検出配管L1のバッファータンク15等に残った洗浄水は、検出用ポンプP1を逆方向に駆動して、サンプルカップ11内に戻し、サンプルカップ11に残った洗浄水と共に、排液配管L9から排液することが好ましい。
【0080】
5.全りん測定
全りん用分解配管L7の加熱分解液をサンプルカップ11に戻す。ここに、第3試薬タンクT3のL−アスコルビン酸溶液を加えたブランク液を測定対象液として得る。
次いで、吸光度検出部20でブランク液を測定対象液としてリン酸イオンに基づくモリブデン青に対応する波長(詳細は後述する。)における吸光度を測定する。
【0081】
サンプルカップ11内の測定対象液が少量で吸光度検出部20のフローセル内をサンプルカップ11内の測定対象液で共洗いする必要がある場合、吸光度検出部20での吸光度測定は上記のステップD1、ステップD2、ステップD3、ステップD4の手順で行われる。
共洗いの必要がなければ、上記のステップD3〜ステップD4の手順で行われる。
ただし、ブランク液は、再度サンプルカップ11に戻す必要があるので、ステップD3でフローセル内に吸引する測定対象液の量は、ステップD1と同様に、バッファータンク15まで至らないよう、共洗いのために必要な最小限の量とする。
【0082】
その後、ブランク液を廃液することなく、検出用ポンプP1を逆方向に駆動して、フローセル内に吸引した測定対象液をサンプルカップ11内に戻し、これに第5試薬タンクT5のモリブデン酸アンモニウム溶液を導入してモリブデン青が生成した発色液を測定対象液として得る。
次いで、吸光度検出部20で発色液を測定対象液としてリン酸イオンに基づくモリブデン青に対応する波長(詳細は後述する。)における吸光度を測定する。
【0083】
サンプルカップ11内の測定対象液が少量で吸光度検出部20のフローセル内をサンプルカップ11内の測定対象液で共洗いする必要がある場合、吸光度検出部20での吸光度測定は上記のステップD1、ステップD2、ステップD3、ステップD4の手順で行われる。
共洗いの必要がなければ、上記のステップD3〜ステップD4の手順で行われる。
【0084】
例えば、日本の、昭和49年環境庁(現・環境省)告示第64号及びJIS K 0102:2016 46.3では、モリブデン青に対応する波長として、波長800nmを採用しているので、波長800nmにおける発色液の吸光度からブランク液の吸光度を差し引いた値を、予め求めた検量線情報に基づき換算することで、試料液の全りん濃度が求められる。
また、中国の規格「HJ/ T 103−2003」、「GB 11893−89」では、モリブデン青に対応する波長として、波長700nmを採用しているので、波長700nmにおける発色液の吸光度からブランク液の吸光度を差し引いた値を、予め求めた検量線情報に基づき換算することで、試料液の全りん濃度が求められる。
【0085】
なお、周囲温度が低いためにサンプルカップ11に戻したブランク液の温度が低くなりすぎている場合は、モリブデン酸アンモニウム溶液を導入する前に、ブランク液を全りん用分解配管L7の加熱分解部に戻し、予熱で再加熱してもよい。これにより、モリブデン青を生成する反応が促進される。
吸光度測定後、サンプルカップ11内の液を廃液タンクT7に廃液し、その後図6を用いて説明した手順に従って検出配管L1を洗浄する。洗浄水としては、純水で全りん用分解配管L7を洗浄し、その後サンプルカップ11に吐出された水を用いることが好ましい。
これにより、全りん用分解配管L7とサンプルカップ11と検出配管L1の総てを洗浄できる。
検出配管L1内を充分に洗浄した後に、検出配管L1のバッファータンク15等に残った洗浄水は、検出用ポンプP1を逆方向に駆動して、サンプルカップ11内に戻し、サンプルカップ11に残った洗浄水と共に、排液配管L9から排液することが好ましい。
【0086】
本実施形態の分析装置によれば、本発明に係る液体試薬供給装置を用いているため、試薬吐出配管に汚れが蓄積しにくく、意図しない時点での液体試薬の落下が抑制されるので、精度の高い測定が可能である。また、しかもメンテナンスの負担も少ない。
【実施例】
【0087】
<帯電試験>
図1の液体試薬供給装置を用いて、液体試薬の送液とエアブローのタイミングに応じた接続点4a付近の静電電位を測定した。
なお、試薬吐出配管1と試薬供給配管2には、内径2mmのフッ素樹脂製チューブを用いた。また、液体試薬としてはシュウ酸ナトリウム溶液を用い、エアブローは、500mL/分の流量で行った。
静電電位の測定には、株式会社ノイズ研究所社製静電電位測定器を用いた。各動作状況とその時の静電電位を以下に示す。
【0088】
(比較例)
1.待機状態:−0.8kV
2.1の後、10秒間エアブローした時点:−0.5kV
3.2に続けて、エアブローを継続したまま、液体試薬の0.5mLを試薬吐出配管1に供給し下流端1aから吐出している途中時点:+0.3kV
4.3の吐出が完了した時点:+0.3kV
上記2〜4を繰り返したところ、静電電位が徐々にマイナスにシフトし、10回目には4の時点における静電電位が−0.5kVとなった。
【0089】
(実施例)
1.待機状態:−0.8kV
2.1の後、液体試薬の0.5mLを試薬吐出配管1に供給した図2の状態:0.0kV
3.2に続けて、試薬吐出配管1を自重により落下させた図3の状態:−0.2kV
4.3の落下が完了した後、5秒間エアブローした時点:−0.2kV
上記2〜4を繰り返したところ、2〜4の時点における静電電位は0〜−0.2kVの範囲で安定していた。
【0090】
上記のように、比較例では送液を繰り返したときの静電電位が大きく変化し、安定しなかった。これは、送液を繰り返すにつれ、チューブ内に蓄積される帯電量が影響しているものと思われる。
これに対して、実施例では、静電電位は送液を繰り返しても低い値のまま安定しており、帯電が抑制されていることが確認できた。
【0091】
<全窒素濃度測定試験>
(比較例)
図1の液体試薬供給装置を用いて、純水を試料液とし、図10を用いて説明した手順に従い全窒素濃度及び全りん濃度を繰り返し測定した。
ただし、各試薬供給配管に設けた試薬ポンプは、エアポンプP10を動作させた状態で動作ざせ、試薬供給配管から試薬吐出配管に至った液体試薬は、直ちにエアと共にサンプルカップ11に吐出した。
なお、吸光度検出部20の光源としてはD2ランプ(重水素ランプ)を使用し、光検出部の受光器としては分光器を使用した。
【0092】
(実施例)
比較例の測定を終了後、液体試薬のサンプルカップ11への吐出の方法を本発明の液体試薬供給装置が実行する手順に変更した他は、比較例と同様にして、純水を試料液とする全窒素濃度と全りん濃度の繰り返し測定を継続した。
すなわち、図1〜4を用いて説明した工程に従い、各液体試薬をサンプルカップ11に供給した。
【0093】
比較例の測定結果を図11に、実施例の測定結果を図12に示す。
図11図12における略号は、各々以下の意味を示す。
N220B:サンプルカップ11に入れた試料液をそのまま吸光度検出部20のフローセルに入れてD2ランプを点灯させたときの、220nmにおける光検出部受光器の電圧である。
N220M:塩酸でpH調整した後の全窒素測定用の加熱分解液を、吸光度検出部20のフローセルに入れてD2ランプを点灯させたときの、220nmにおける光検出部受光器の電圧である。
N254B:サンプルカップ11に入れた試料液をそのまま吸光度検出部20のフローセルに入れてD2ランプを点灯させたときの、254nmにおける光検出部受光器の電圧である。
N254M:塩酸でpH調整した後の全窒素測定用の加熱分解液を、吸光度検出部20のフローセルに入れてD2ランプを点灯させたときの、254nmにおける光検出部受光器の電圧である。
TN:N220MとN254Mの値と予め用意した検量線に基づいて求めた全窒素濃度である。
【0094】
図11に示すように、比較例では、窒素を含まない純水を試料液としたにも関わらず、全窒素濃度が度々高くなった。
全窒素濃度が度々高くなった時には、pH調整した後の全窒素測定用の加熱分解液が220nmと254nmにおいて光の吸収を示した(電圧が低下した)。これは、同じ装置で全りん測定のために使用している液体試薬が、加熱分解前又は後で、全窒素測定用の液に混入したためであると考えられる。
【0095】
すなわち、全りん濃度の測定に使用するL−アスコルビン酸溶液とモリブデン酸アンモニウム溶液は、共に全窒素濃度を求めるための測定波長である紫外領域に吸収を持つ。特にモリブデン酸アンモニウム溶液の吸収は大きく、少量の混入でも測定値に与える影響が大きい。
【0096】
これに対して、図12に示すように、実施例では、pH調整した後の全窒素測定用の加熱分解液の220nmと254nmにおける光の吸収が小さく(電圧が低下せず)、全窒素濃度も0mg/L付近の正しい値を安定して示した。
以上の結果から、本発明の液体試薬供給装置によれば、意図しない時点での液体試薬の落下が抑制され、本発明の分析装置によれば、精度の高い測定が可能となることが確認できた。
【符号の説明】
【0097】
1 試薬吐出配管
2 試薬供給配管
3 給気管
4 継ぎ手
4a 接続点
5 常閉弁
6 送液手段
7 エアポンプ
8 液体試薬
8a 残液
8b 汚れ
9 試薬タンク
11 サンプルカップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12