特許第6974757号(P6974757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974757情報処理方法、情報処理装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974757
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/52 20180101AFI20211118BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20211118BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20211118BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20211118BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20211118BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20211118BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20211118BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20211118BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20211118BHJP
   F24F 110/22 20180101ALN20211118BHJP
   F24F 140/60 20180101ALN20211118BHJP
   F24F 140/12 20180101ALN20211118BHJP
【FI】
   F24F11/52
   F25B1/00 361A
   F24F11/46
   F24F11/62
   F24F11/64
   G06Q50/06
   F24F110:10
   F24F110:20
   F24F110:12
   F24F110:22
   F24F140:60
   F24F140:12
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-180996(P2019-180996)
(22)【出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2021-55968(P2021-55968A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 忠史
(72)【発明者】
【氏名】長澤 浩司
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−112771(JP,A)
【文献】 特開2018−091560(JP,A)
【文献】 特開2011−250027(JP,A)
【文献】 特開2013−213669(JP,A)
【文献】 特開2005−009852(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/098552(WO,A1)
【文献】 特開2019−032157(JP,A)
【文献】 特開2011−036084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/52
F25B 1/00
F24F 11/46
F24F 11/62
F24F 11/64
G06Q 50/06
F24F 110/10
F24F 110/20
F24F 110/12
F24F 110/22
F24F 140/60
F24F 140/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が、
所定の場所に設置された第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置の所定期間における運転状況を取得する処理と、
前記所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、前記運転状況において前記所定の場所に設置された前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第1推定処理と、
前記第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置が前記運転状況で運転された際の消費電力に関する情報と、前記第1推定処理で推定した、前記第1空気調和装置が前記運転状況において運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる処理と、
を実行する、情報処理方法。
【請求項2】
前記第2空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力との組み合わせを含むデータセットに基づいて、所定の状況において前記第2空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第2推定処理と、
前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報と、前記第2推定処理で推定した、前記第2空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる処理を実行する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、前記所定の場所における状況に応じた空調負荷を推定し、
推定した空調負荷に対する、前記第2空気調和装置の消費電力に関する情報を通知させる処理を実行する、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記状況を示す情報には、室内温度、室内湿度、室外温度、及び室外湿度の少なくとも一つが含まれる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記消費電力に関する情報には、
消費電力量積算値、消費電力ピーク値、電流値、高圧圧力、低圧圧力、圧縮機回転速度、及び圧縮機の運転効率を示す情報の少なくとも一つが含まれる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
所定の場所に設置された第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置の所定期間における運転状況を取得する取得部と、
前記所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、前記運転状況において前記所定の場所に設置された前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第1推定部と、
前記第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置が前記運転状況で運転された際の消費電力に関する情報と、前記第1推定部により推定された、前記第1空気調和装置が前記運転状況において運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる通知部と、
を有する情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
所定の場所に設置された第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置の所定期間における運転状況を取得する処理と、
前記所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、前記運転状況において前記所定の場所に設置された前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第1推定処理と、
前記第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置が前記運転状況で運転された際の消費電力に関する情報と、前記第1推定処理で推定した、前記第1空気調和装置が前記運転状況において運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる処理と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旧設備よりも省エネ性能が高い新設備等で設備を更新し、設備の更新による省エネ効果を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−032438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、旧設備が稼働されていた際の状況と、新設備が稼働された際の状況とが異なる場合、設備の更新による省エネ効果を適切に推定できない場合がある。設備の更新による省エネ効果を適切に推定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様による情報処理方法は、情報処理装置が、所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、所定の状況において前記所定の場所に設置された前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第1推定処理と、前記第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置が第1の状況で運転された際の消費電力に関する情報と、前記第1推定処理で推定した、前記第1空気調和装置が前記第1の状況において運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる処理と、を実行する。これにより、設備の更新による省エネ効果を適切に推定できる。
【0006】
また、本開示の第の態様は、第1の態様に記載の情報処理方法であって、前記第2空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力との組み合わせを含むデータセットに基づいて、前記所定の状況において前記第2空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第2推定処理と、前記第1推定処理で推定した、前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報と、前記第2推定処理で推定した、前記第2空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる処理を実行する。
【0007】
また、本開示の第の態様は、第1または2の態様に記載の情報処理方法であって、前記所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、前記所定の場所における状況に応じた空調負荷を推定し、推定した空調負荷に対する前記第2空気調和装置の消費電力に関する情報を通知させる処理を実行する。
【0009】
また、本開示の第の態様は、第1からのいずれかの態様に記載の情報処理方法であって、前記状況を示す情報には、室内温度、室内湿度、室外温度、及び室外湿度の少なくとも一つが含まれる。
【0010】
また、本開示の第の態様は、第1からのいずれかの態様に記載の情報処理方法であって、前記消費電力に関する情報には、消費電力量積算値、消費電力ピーク値、電流値、高圧圧力、低圧圧力、圧縮機回転速度、及び圧縮機の運転効率を示す情報の少なくとも一つが含まれる。
【0011】
また、本開示の第6の態様による情報処理装置は、所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、所定の状況において前記所定の場所に設置された前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第1推定部と、前記第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置が第1の状況で運転された際の消費電力に関する情報と、前記第1推定部により推定された、前記第1空気調和装置が前記第1の状況において運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる通知部と、を有する。
【0012】
また、本開示の第7の態様によるプログラムは、コンピュータに、所定の場所に設置された第1空気調和装置が運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、所定の状況において前記所定の場所に設置された前記第1空気調和装置が運転される場合の消費電力に関する情報を推定する第1推定処理と、前記第1空気調和装置の代わりに前記所定の場所に設置される第2空気調和装置が第1の状況で運転された際の消費電力に関する情報と、前記第1推定処理で推定した、前記第1空気調和装置が前記第1の状況において運転される場合の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を通知させる処理と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る情報処理装置の学習時の処理の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る運転状況DBに記憶される運転状況の履歴の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る情報処理装置の省エネ効果の推論時の処理の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る省エネ効果の通知画面の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0015】
<システム構成>
はじめに、情報処理システム1のシステム構成について説明する。図1は、実施形態に係る情報処理システム1のシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置10、機器20A、機器20B(以下で、それぞれを区別する必要がない場合は、単に「機器20」と称する。)、及び端末30を有する。なお、機器20Bは、旧設備である機器20Aが更新された新設備でもよい。この場合、機器20Bは、例えば、機器20Aと同様の機能を有する新機種等の機器でもよい。または、機器20Bは、機器20Aにおいて省エネに関する運転設定等が更新された機器でもよい。情報処理装置10、機器20、及び端末30の数は、図1の例に限定されない。
【0016】
情報処理装置10と機器20、及び情報処理装置10と端末30は、例えば、インターネット、無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)及び5G等の携帯電話網、LAN、及び信号線等のネットワークNWを介して通信できるように接続されてもよい。機器20は、例えば、住宅、オフィス、及び公共施設等に設置されてもよい。情報処理装置10は、例えば、クラウド上のサーバでもよい。また、情報処理装置10は、例えば、複数の機器20が設置される建物に設置されたエッジサーバでもよい。また、情報処理装置10は、例えば、機器20(例えば、空気調和装置の室内機筐体)に収容されてもよい。
【0017】
情報処理装置10は、所定の場所(施設、部屋、設備)に設置された機器20Aが運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、所定の状況において当該所定の場所に設置された機器20Aが運転される場合の消費電力に関する情報を推定する。
【0018】
そして、情報処理装置10は、推定した、機器20Aが運転される場合の消費電力に関する情報と、機器20Aの代わりに運転される機器20Bが当該所定の状況において運転された際の消費電力に関する情報との比較に基づく情報を端末30に送信することにより、省エネ効果をユーザに通知する。
【0019】
機器20は、例えば、空気調和装置(エアコン)、冷蔵庫、給湯器、及び照明等の各種の機器であり、測定した各種の情報を情報処理装置10に送信するIoT(Internet of Things)デバイスを有してもよい。
【0020】
端末30は、例えば、機器20のユーザが利用する、スマートフォン、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等の端末でもよい。端末30は、情報処理装置10から受信した情報に基づき、機器の更新による省エネ効果を示す情報をユーザに通知する。
【0021】
なお、各機器20のユーザは、予め、自身が利用する機器20及び端末30のID、及び通信アドレス等を、情報処理装置10に登録しており、情報処理装置10は、機器20Aを機器20Bに更新したことによる省エネ効果等の情報を機器20のユーザの各端末30に通知できるものとする。
【0022】
<情報処理装置10、及び機器20のハードウェア構成>
次に、実施形態に係る情報処理システム1の情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。
【0023】
図2は、実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103を有する。CPU101、ROM102、RAM103は、いわゆるコンピュータを形成する。また、情報処理装置10は、補助記憶装置104、表示装置105、操作装置106、I/F(Interface)装置107、ドライブ装置108を有する。情報処理装置10の各ハードウェアは、バス109を介して相互に接続される。
【0024】
CPU101は、補助記憶装置104にインストールされている各種プログラム(例えば、機械学習プログラム等)を実行する演算デバイスである。ROM102は、不揮発性メモリである。ROM102は、主記憶デバイスとして機能し、補助記憶装置104にインストールされている各種プログラムをCPU101が実行するために必要な各種プログラムやデータ等を格納する。具体的には、ROM102はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する。
【0025】
RAM103は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM103は、主記憶デバイスとして機能し、補助記憶装置104にインストールされている各種プログラムがCPU101によって実行される際に展開される作業領域を提供する。
【0026】
補助記憶装置104は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する。
【0027】
表示装置105は、各種の情報を表示する表示デバイスである。操作装置106は、各種操作を受け付けるための操作デバイスである。I/F装置107は、外部の機器と通信する通信デバイスである。
【0028】
ドライブ装置108は記録媒体110をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体110には、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体110には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0029】
なお、補助記憶装置104にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体110がドライブ装置108にセットされ、該記録媒体110に記録された各種プログラムがドライブ装置108により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置104にインストールされる各種プログラムは、不図示のネットワークよりダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0030】
<機能構成>
次に、図3を参照し、実施形態に係る情報処理システム1の機能構成について説明する。図3は、実施形態に係る情報処理装置10の機能ブロックの一例を示す図である。
【0031】
実施形態に係る情報処理装置10は、運転状況DB111、取得部11、訓練データ生成部12、学習部13、推論部14、及び通知部15を有する。これら各部は、例えば、情報処理装置10にインストールされた1以上のプログラムと、情報処理装置10のCPU101、ROM102、及びRAM103等の協働により実現されてもよい。
【0032】
取得部11は、機器20の運転状況を取得し、運転状況DB111に記録する。
【0033】
訓練データ生成部12は、取得部11により取得された情報に基づき、機器20が運転される際の周囲の環境、及び機器20の運転設定に応じた消費電力に関する情報を学習(機械学習)するための訓練データを生成する。学習部13は、訓練データ生成部12により生成された訓練データに基づき、機器20が運転される際の周囲の環境、及び機器20の運転設定に応じた消費電力に関する情報を学習する。
【0034】
推論部14は、機器20Aを機器20Bに更新したことによる省エネ効果を推論する。推論部14は、例えば、取得部11により取得された所定期間における機器20Bが運転された際の周囲の環境、及び機器20Bの運転設定と、学習部13による学習結果とに基づき、当該所定期間において機器20Bの代わりに機器20Aを用いていた場合の機器20Aの消費電力に関する情報を推論する。そして、推論部14は、例えば、当該所定期間において機器20Aを用いていた場合の機器20Aの消費電力に関する情報と、当該所定期間における機器20Bの消費電力に関する情報との比較に基づく情報を生成する。
【0035】
通知部15は、推論部14により推論された機器20の更新による省エネ効果を示す情報を、機器20のユーザに通知する。
【0036】
<処理>
以下では、機器20が空気調和装置(エアコン)である場合を例として説明するが、開示の技術は、例えば、冷蔵庫、給湯器、及び照明等の各種の機器20に対して適用できる。
【0037】
≪学習時の処理≫
図4及び図5を参照し、実施形態に係る情報処理システム1の学習時の処理の一例について説明する。図4は、実施形態に係る情報処理装置10の学習時の処理の一例を示すフローチャートである。図5は、実施形態に係る運転状況DB111に記憶される運転状況の履歴の一例を示す図である。
【0038】
(訓練データの取得)
ステップS101において、情報処理装置10の取得部11は、所定の場所に設置されている機器20Aの運転状況を取得する。ここで、情報処理装置10の取得部11は、例えば、所定時間(例えば、1時間)間隔で、機器20Aの現在の運転状況を機器20Aから取得してもよい。または、所定時間間隔(例えば、1日1回)で、機器20Aの運転状況の履歴を機器20Aから取得してもよい。情報処理装置10の取得部11は、例えば、外部サーバに蓄積されている、機器20Aの運転状況の履歴を取得してもよい。
【0039】
ここで、機器20Aの運転状況には、例えば、機器20AのIDである機器ID、機器20Aが運転された日時、機器20Aが運転された際(例えば、当該日時)の周囲の環境を示す情報、当該機器が運転された際の運転設定の情報、及び当該機器が運転された際の消費電力に関する情報が含まれてもよい。
【0040】
続いて、情報処理装置10の取得部11は、取得した運転状況を、運転状況DB111に記録する(ステップS102)。
【0041】
図5の例では、運転状況DB111には、機器ID及び日時に対応付けて、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報、運転設定の情報、及び消費電力に関する情報の組(レコード)が記憶されている。
【0042】
((機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報))
機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報には、例えば、外気温(室外温度)、室内の人数、室内の照度、外気湿度(室外湿度)、日射量、天気の種別、室内温度、及び室内湿度等が含まれてもよい。
【0043】
外気温は、機器20が設置されている建物の外の気温である。外気温は、例えば、機器20のエアコン室外機に設けられた温度センサにより測定されてもよい。
【0044】
室内の人数は、機器20が設置されている室内の人数である。室内の人数は、例えば、機器20のエアコン室内機に設けられた輻射温度センサ、またはカメラ等で検出された情報に基づいて機器20により測定されてもよい。
【0045】
室内の照度は、機器20が設置されている室内の照度である。室内の照度は、例えば、機器20のエアコン室内機に設けられた照度センサにより測定されてもよい。
【0046】
外気湿度は、機器20が設置されている建物の外の湿度である。外気湿度は、例えば、機器20のエアコン室外機に設けられた湿度センサにより測定されてもよい。
【0047】
日射量は、機器20が設置されている建物の外の日射量である。日射量は、例えば、機器20のエアコン室外機に設けられた日射量センサ(日射計)により測定されてもよい。
【0048】
天気の種別は、機器20が設置されている地域の天気の種別である。天気の種別には、例えば、晴れ、曇り、雨、雪等の種別が含まれてもよい。天気の種別は、例えば、機器20に予め設定されている、機器20が設置されている地域の情報と、気象庁等のサーバから取得した各日時における各地域の天気の種別の情報とに基づいて判定されてもよい。
【0049】
室内温度及び室内湿度は、それぞれ、機器20が設置されている室内の温度及び湿度である。室内温度及び室内湿度は、それぞれ、例えば、機器20のエアコン室内機に設けられた温度センサ及び湿度センサにより測定されてもよい。
【0050】
((運転設定の情報))
運転設定の情報は、機器20が運転された際の運転設定の情報である。運転設定の情報には、例えば、機器20のリモコン等の操作でユーザにより設定された、機器20の運転に関する設定の情報が含まれてもよい。運転設定には、例えば、運転モード、設定温度、及び設定風量等が含まれてもよい。運転モードには、例えば、自動運転、冷房運転、暖房運転、除湿運転、及び送風運転等が含まれてもよい。また、運転設定の情報には、例えば、機器20の稼働率(稼働時間、稼働台数)の情報が含まれてもよい。
【0051】
((消費電力に関する情報))
消費電力に関する情報は、機器20が運転された際の、機器20の消費電力に関する情報である。消費電力に関する情報には、例えば、消費電力量積算値、消費電力ピーク値、電流値、高圧圧力、低圧圧力、圧縮機回転速度、及び圧縮機の運転効率を示す情報の少なくとも一つが含まれてもよい。
【0052】
消費電力量積算値は、例えば、所定時間(例えば、直近の10分)内の機器20の消費電力量の積算値である。消費電力ピーク値は、例えば、所定時間内の機器20の消費電力のピーク値である。電流値は、例えば、所定時間内の機器20の電流の平均値である。
【0053】
高圧圧力は、所定時間内の機器20の高圧圧力の平均値である。なお、高圧圧力は、機器20の冷凍サイクルにおける高圧圧力(以下で、適宜、単に「高圧」とも称する。)であり、例えば、機器20の圧縮機により圧縮されて吐出される冷媒の圧力(圧縮機の吐出圧力)でもよいし、凝縮器における冷媒の圧力でもよい。
【0054】
低圧圧力は、所定時間内の機器20の低圧圧力の平均値である。なお、低圧圧力は、機器20の冷凍サイクルにおける低圧圧力(以下で、適宜、単に「低圧」とも称する。)であり、例えば、圧縮機に吸入される冷媒の圧力(圧縮機に圧縮される前の冷媒の圧力。)でもよい。
【0055】
圧縮機の運転効率は、例えば、所定の消費電力で冷媒を圧縮する効率である。圧縮機の運転効率は、例えば、圧縮機の回転速度が所定の値の場合に最も高くなる。
【0056】
続いて、情報処理装置10の訓練データ生成部12は、運転状況DB111に記録されているデータセットに基づいて、機器20Aが運転される際の状況に応じた消費電力に関する情報を学習するための訓練データを生成する(ステップS103)。
【0057】
ここで、情報処理装置10の訓練データ生成部12は、例えば、運転状況DB111に記録されている、機器20Aが運転された際の周囲の環境を示す情報または運転設定の情報に含まれる少なくとも一の項目の情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットを、消費電力に関する情報の学習用の訓練データとしてもよい。この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部12は、例えば、機器20Aが運転された際の周囲の環境を示す情報または運転設定の情報に含まれる少なくとも一の項目の情報を入力とし、消費電力に関する情報を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせ(セット)を、消費電力に関する情報の学習用の訓練データとしてもよい。
【0058】
続いて、情報処理装置10の学習部13は、生成した当該訓練データに基づいて、機器20Aが運転される際の状況に応じた機器20Aの消費電力に関する情報を機械学習する(ステップS104)。
【0059】
ここで、情報処理装置10の学習部13は、例えば、教師有り学習により、入力に基づいて消費電力に関する情報を推論する回帰問題を機械学習してもよい。なお、回帰問題とは、例えば、連続値を予測する問題である。
【0060】
情報処理装置10の学習部13は、例えば、線形回帰(linear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、消費電力に関する情報を目的変数(応答変数、従属変数)とし、機器20Aが運転された際の状況を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報を説明変数(入力変数、独立変数)とし、最小二乗法等を用いて、機械学習を行ってもよい。
【0061】
また、情報処理装置10の学習部13は、例えば、非線形回帰(nonlinear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、回帰型ニューラルネットワーク(Recurrent neural network)、一般回帰ニューラルネットワーク(General Regression Neural Network)、ランダムフォレスト(Random Forest)、またはサポートベクターマシン(support vector machine, SVM)等を用いた機械学習を行ってもよい。
【0062】
≪推論時の処理≫
次に、図6及び図7を参照し、実施形態に係る情報処理装置10の省エネ効果の推論時の処理の一例について説明する。図6は、実施形態に係る情報処理装置10の省エネ効果の推論時の処理の一例を示すフローチャートである。図7は、実施形態に係る省エネ効果の通知画面の一例について説明する図である。以下では、所定の場所に設置されていた機器20Aが機器20Bに更新され、機器20Bが一定期間運用されているものとする。
【0063】
ステップS201において、情報処理装置10の取得部11は、機器20Aが設置されていた場所に設置されている機器20Bの所定期間における運転状況を取得する。ここで、情報処理装置10の取得部11は、機器20のユーザにより指定された期間における運転状況を取得してもよい。
【0064】
続いて、情報処理装置10の推論部14は、取得した所定期間における運転状況に含まれる、機器20Bが運転された際の周囲の環境を示す情報、及び運転設定の情報と、図4のステップS104の処理による消費電力に関する情報の学習結果とに基づいて、当該所定期間において機器20Aを運転させた場合の機器20Aの消費電力に関する情報を推論する(ステップS202)。ここで、情報処理装置10の推論部14は、機器20Bが運転された際の周囲の環境を示す情報、及び運転設定の情報に含まれる項目のうち、消費電力に関する情報を学習した際に用いた項目の情報を入力とし、消費電力に関する情報の学習結果を用いて、機器20Aによる消費電力に関する情報を推論する。
【0065】
また、情報処理装置10の推論部14は、例えば、上述した各手法によりそれぞれ学習した各結果に基づいて、機器20Aによる消費電力に関する情報を推論してもよい。この場合、情報処理装置10の推論部14は、例えば、図4のステップS104の処理で説明した各手法によりそれぞれ学習した各結果に基づいて、機器20Aによる消費電力に関する情報をそれぞれ推論する。そして、情報処理装置10の推論部14は、それぞれ推論した値の平均値等を、機器20Aによる消費電力に関する情報として推論してもよい。
【0066】
続いて、情報処理装置10の推論部14は、当該所定期間において機器20Aを用いていた場合の機器20Aの消費電力に関する情報と、当該所定期間における機器20Bの消費電力に関する情報との比較に基づく省エネ効果を示す情報を生成する(ステップS203)。ここで、情報処理装置10の推論部14は、例えば、旧機器20Aの消費電力と、新機器20Bの消費電力との差分に応じて、機器20の更新により低減できた電気料金の情報を算出してもよい。また、情報処理装置10の推論部14は、例えば、旧機器20Aの消費電力と、新機器20Bの消費電力との比に応じて、機器20の更新により低減できた消費電力の割合を算出してもよい。
【0067】
続いて、情報処理装置10の通知部15は、推論部14により推論された機器20の更新による省エネ効果を示す情報を、機器20のユーザに通知する(ステップS204)。ここで、情報処理装置10の通知部15は、例えば、図7の表示画面701を端末30に表示させる情報を送信する。図7の例では、情報処理装置10の通知部15は、省エネ効果の比較対象とした期間702、期間702における新機器20Bでの消費電力703と電気代704、期間702における旧機器20Aでの消費電力705と電気代706を端末30に表示させている。
【0068】
また、情報処理装置10の通知部15は、機器20の更新により期間702において削減された消費電力の割合707、及びそれにより削減された電気代708も表示させている。これにより、例えば、旧機器20Aを運用した昨年の夏が冷夏で、新機器20Bを運用した今年の夏が猛暑である等により、夏の期間の消費電力が昨年の方が低い等の場合でも、適切に機器20の更新による省エネ効果をユーザに提示することができる。
【0069】
<変形例1>
なお、情報処理装置10は、例えば、機器20Aを機器20Bに更新していた場合の省エネ効果を推論してもよい。これにより、例えば、機器20の更新をより早く実施していた場合に得られたはずの省エネ効果をユーザに提示することができる。
【0070】
この場合、情報処理装置10の学習部13は、機器20Bの運転状況に基づいて、図4の学習時の処理と同様の処理により、機器20Bが運転される際の周囲の環境、及び機器20の運転設定に応じた消費電力に関する情報を学習する。そして、推論部14は、例えば、取得部11により取得された所定期間における機器20Aが運転された際の周囲の環境、及び機器20Bの運転設定と、学習部13による機器20Bの消費電力に関する情報の学習結果とに基づき、当該所定期間において機器20Aの代わりに機器20Bを用いていた場合の機器20Bの消費電力に関する情報を推論する。そして、推論部14は、例えば、当該所定期間において機器20Bを用いていた場合の機器20Bの消費電力に関する情報と、当該所定期間における機器20Aの消費電力に関する情報との比較に基づく情報を生成してもよい。
【0071】
<変形例2>
機器20Aを機器20Bに更新する前に、更新した場合の省エネ効果を推論し、機器20のユーザに通知するようにしてもよい。
【0072】
この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、ユーザにより機器20が設置されることが想定される各種の建物(実験室)等に設置された、機器20Aと同型(同機種)の各機器20から、各種の建物の特性を示す情報(「空調負荷」の一例。)と、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、状況を示す情報と、消費電力に関する情報とに応じた各種の建物の特性を機械学習しておく。
【0073】
なお、建物の特性を示す情報には、例えば、外気との温度差が伝熱・幅射して伝導する熱負荷、窓や扉からの隙間風や換気のために入ってくる外気による外気負荷、及び太陽熱がガラスを通過して入ってくる熱や屋根・壁を通して入ってくる熱である太陽輻射の情報が含まれてもよい。
【0074】
そして、情報処理装置10の推論部14は、例えば、所定の場所に設置された機器20Aが運転された際の、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、当該所定の場所における状況に応じた空調負荷を推論する。
【0075】
また、情報処理装置10の学習部13は、例えば、各種の建物等に設置された、機器20Bと同型(同機種)の各機器20から、各種の建物の特性を示す情報と、状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、状況を示す情報と、各種の建物の特性を示す情報とに応じた、消費電力に関する情報を機械学習しておく。
【0076】
そして、情報処理装置10推論部14は、例えば、当該所定の場所における推定した空調負荷と、所定期間における状況を示す情報に基づいて、当該所定の場所における機器20Bの消費電力に関する情報を推論する。
【0077】
そして、情報処理装置10の通知部15は、推定した機器20Bの消費電力に関する情報を端末30に通知させる。
【0078】
<変形例3>
情報処理装置10の各機能部は、例えば1以上のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。また、上述した情報処理装置10の各機能部の処理の少なくとも一部は、機器20にて実行されてもよい。また、情報処理装置10と機器20とを一体の装置として構成してもよい。
【0079】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0080】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
111 運転状況DB
11 取得部
12 訓練データ生成部
13 学習部
14 推論部
15 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7