(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)スクロール圧縮機の構成
図1は本実施形態に係るスクロール圧縮機10の縦断面の構成を説明するための模式図である。
図2は
図1の一部拡大図である。なお、
図1,2は、厳密な断面図ではなく、中心から右側と左側とで異なる方向の断面図を示している。また、構成部材の一部を適宜省略している箇所がある。
【0018】
スクロール圧縮機10は、
図1に示されるように、筐体20と、仕切部材28と、固定スクロール30及び可動スクロール40を含むスクロール圧縮機構50と、ハウジング60と、駆動モータ70と、クランクシャフト80と、下部軸受部90とを備える。
【0019】
以下、構成部材の位置関係等を説明するため、「上」「下」等の表現を用いる場合がある。ここでは、
図1の矢印Uの方向を上、矢印Uと逆方向を下と呼ぶ。また、以下の説明では、「垂直」「水平」「縦」「横」等の表現を用いる場合があるが、上下方向を垂直方向かつ縦方向とする。
【0020】
(1−1)筐体
スクロール圧縮機10は、縦長円筒状の密閉ドーム型の筐体20を有する。筐体20は、上下が開口した略円筒状の胴体部21と、胴体部21の上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋22aおよび下蓋22bとを有する。胴体部21と、上蓋22aおよび下蓋22bとは、気密を保つように溶接により固定される。
【0021】
筐体20には、スクロール圧縮機構50、駆動モータ70、クランクシャフト80、および下部軸受部90を含むスクロール圧縮機10の構成機器が収容される。スクロール圧縮機構50は、胴体部21内の上部に配置される。また、筐体20の下部には油溜まり空間Soが形成される。油溜まり空間Soには、スクロール圧縮機構50等を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。
【0022】
筐体20の上部には、吸入管23が上蓋22aを貫通して設けられる。吸入管23の下端は、固定スクロール30の吸入接続口に接続される。これにより、吸入管23は、後述するスクロール圧縮機構50の圧縮室Scと連通する。吸入管23には、スクロール圧縮機10による圧縮前の、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒が流入する。そして、吸入管23を経由してガス冷媒がスクロール圧縮機構50に供給される。
【0023】
筐体20の胴体部21には、筐体20外に吐出される冷媒が通過する吐出管24が設けられる。吐出管24は、筐体20の内部空間から外部に、スクロール圧縮機構50により圧縮した高圧のガス冷媒を流出する。
【0024】
なお、スクロール圧縮機10の冷媒としては、例えばR32を用いることができる。
【0025】
(1−2)スクロール圧縮機構
スクロール圧縮機構50は、筐体20内に配置され、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を筐体20の内部空間に形成される冷媒流路(冷媒流路R1〜R3を含む)に吐出する。
【0026】
具体的に、スクロール圧縮機構50は、
図1,2に示されるように、ハウジング60の上方に配置される固定スクロール30と、固定スクロール30と組み合わされて圧縮室Scを形成する可動スクロール40とを有する。
【0027】
(1−2−1)固定スクロール
固定スクロール30は、
図1,2に示されるように、平板状の固定側鏡板32と、固定側鏡板32の前面から突出する渦巻状の固定側ラップ33と、固定側ラップ33を囲む外縁部34とを有する。固定側ラップ33は、後述する吐出口32aから外縁部34に亘って渦巻き状に延びて形成されるものである。また、固定スクロール30の外縁部34には吸入口が設けられる。この吸入口を介して、吸入管23から流入する冷媒がスクロール圧縮機構50の圧縮室Scに導入される。なお、吸入口には、冷媒の逆流を防ぐ逆止弁が設けられる。
【0028】
固定側鏡板32の中央部には、スクロール圧縮機構50の圧縮室Scに連通する吐出口32aが、固定側鏡板32を厚さ方向に貫通して形成される。圧縮室Scで圧縮された冷媒は、吐出口32aから吐出され、固定スクロール30およびハウジング60に形成された第1冷媒流路R1を通過して、高圧空間S1へ流入する。
【0029】
(1−2−2)可動スクロール
可動スクロール40は、
図1,2に示されるように、平板状の可動側鏡板42と、可動側鏡板42の前面から突出する渦巻状の可動側ラップ43と、可動側鏡板42の背面から突出する円筒状のボス部44とを有する。
【0030】
ここで、固定スクロール30の固定側ラップ33と、可動スクロール40の可動側ラップ43とは、固定側鏡板32の下面と可動側鏡板42の上面とが対向するように組み合わされる。これにより、隣接する固定側ラップ33と可動側ラップ43との間に、圧縮室Scが形成される。そして、可動スクロール40が固定スクロール30に対して公転することにより、圧縮室Scの体積が周期的に変化する。これにより、吸入管23から吸入された冷媒が圧縮室Scで圧縮される。
【0031】
ボス部44は、上端の塞がれた円筒状の形態を有する。ボス部44の中空部には、クランクシャフト80の偏心部82が挿入される。これにより、可動スクロール40とクランクシャフト80とが連結される。ボス部44は、可動スクロール40とハウジング60との間に形成される偏心部空間Snに配置される。偏心部空間Snは、クランクシャフト80内部の給油経路等を介して高圧空間S1と連通しており、偏心部空間Snには高い圧力が作用する。この圧力により、偏心部空間Sn内の可動側鏡板42の下面は、固定スクロール30に向かって上方に押される。これにより、可動スクロール40は、固定スクロール30に密着する。
【0032】
なお、可動スクロール40は、オルダムリングを介してハウジング60に支持される。オルダムリングは、可動スクロール40の自転を防止し、公転させる部材である。
【0033】
(1−3)ハウジング
ハウジング60は、胴体部21に圧入され、その外周面において周方向の全体に亘って胴体部21に固定される。また、ハウジング60と固定スクロール30とは、ハウジング60の上端面が、固定スクロール30の外縁部34の下面と密着するように、ボルト等により固定される。
【0034】
ハウジング60には、上面中央部に凹むように配置される凹部61と、凹部61の下方に配置される軸受部62とが形成される。
【0035】
凹部61は、可動スクロール40のボス部44が配置される偏心部空間Snの側面を囲む。
【0036】
軸受部62には、クランクシャフト80の主軸81を軸支する軸受62rが配置される。軸受62rは、軸受62rに挿入された主軸81を回転自在に支持する。
【0037】
(1−4)駆動モータ
駆動モータ70は、胴体部21の内壁面に固定された環状のステータ71と、ステータ71の内側に、隙間(エアギャップ通路)を空けて回転自在に収容されたロータ72とを有する。
【0038】
ロータ72は、胴体部21の軸心に沿って上下方向に延びるように配置されたクランクシャフト80を介して可動スクロール40と連結される。ロータ72が回転することで、可動スクロール40は、固定スクロール30に対して公転する。
【0039】
また、駆動モータ70は、駆動モータ70の外周と筐体20の内壁との間の一部に、冷媒流路R3を形成するように配置される。冷媒流路R3の詳細については後述する。
【0040】
(1−5)クランクシャフト
クランクシャフト80(駆動軸)は、胴体部21内に配置され、スクロール圧縮機構50を駆動するものである。具体的には、クランクシャフト80は、駆動モータ70の駆動力を可動スクロール40に伝達する。クランクシャフト80は、胴体部21の軸心に沿って上下方向に延びるように配置され、駆動モータ70のロータ72と、スクロール圧縮機構50の可動スクロール40とを連結する。
【0041】
クランクシャフト80は、胴体部21の軸心と中心軸が一致する主軸81と、胴体部21の軸心に対して偏心した偏心部82とを有する。主軸81は、ハウジング60の軸受部62の軸受62r、および、下部軸受部90の軸受90rにより、回転自在に支持される。偏心部82は、前述のように可動スクロール40のボス部44に挿入される。
【0042】
クランクシャフト80の内部には、スクロール圧縮機構50等に冷凍機油Oを供給するための給油経路が形成される。主軸81の下端は、筐体20の下部に形成された油溜まり空間So内に位置し、油溜まり空間Soの冷凍機油Oは、給油経路を通じてスクロール圧縮機構50等に供給される。
【0043】
(1−6)下部軸受部
下部軸受部90は、胴体部21内の下部に設けられ、クランクシャフト80を軸支するものである。具体的には、下部軸受部90は、クランクシャフト80の下端側に軸受90rを有する。これにより、クランクシャフト80の主軸81が回転自在に支持される。なお、下部軸受部90には、クランクシャフト80の給油経路に連通するオイルピックアップが固定される。
【0044】
(2)スクロール圧縮機の動作
次に、上述したスクロール圧縮機10の動作について説明する。
【0045】
まず、駆動モータ70が起動する。これにより、ロータ72がステータ71に対して回転し、ロータ72と固定されたクランクシャフト80が回転する。クランクシャフト80が回転すると、クランクシャフト80と連結された可動スクロール40が固定スクロール30に対して公転する。そして、冷凍サイクルにおける低圧のガス冷媒が、吸入管23を通って、圧縮室Scの周縁側から、圧縮室Scに吸引される。可動スクロール40が公転するのに従い、吸入管23と圧縮室Scとが連通しなくなる。そして、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇し始める。
【0046】
圧縮室Sc内の冷媒は、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って圧縮され、最終的に高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、固定側鏡板32の中心付近に位置する吐出口32aから吐出される。その後、高圧のガス冷媒は、固定スクロール30およびハウジング60に形成された冷媒流路R1を経由して高圧空間S1へ流入し、吐出管24から吐出される。
【0047】
(3)冷媒温度の計測
次に、上述したスクロール圧縮機10における冷媒の温度を計測するための構成について説明する。
【0048】
(3−1)温度センサの構成
スクロール圧縮機10は、スクロール圧縮機構50で圧縮された冷媒の温度を計測するために、第1温度センサ15と第2温度センサ25とを備えている。
【0049】
第1温度センサ15は、
図3に示すように、感温部15aと、ネジ状部分15nとを有する。感温部15aは、温度を計測するサーミスタと、サーミスタを保護する金属カバーとを有する。金属とは、たとえば、銅である。
図2に示すように、感温部15aの金属カバーは、第2冷媒流路R2を流れる冷媒に接するように配置される。言い換えると、感温部15aは、冷媒温度を直接的に計測するように配置される。ここで、第2冷媒流路R2は、ハウジング60に形成される第1冷媒流路R1と連続する空間である。また、直接的に計測するとは、冷媒が内部を流れるパイプや、冷媒から熱伝達を受ける部品の温度を計測するのではなく、冷媒の温度を直接計測するとの意味である。
【0050】
第1温度センサ15は、筐体20を貫通して配置されている。この第1温度センサ15は、筐体20の胴体部21に設けられた、ねじ込み式の継手21fに螺着し、シールすることで固定して配置できるものである。また、第1温度センサ15は、ネジ状部分15nで螺着されるので、筐体20の外側から容易に取り付けることができる。また、第1温度センサ15の感温部15aは、筐体20からは熱絶縁されている。第1温度センサ15は、ハウジング60の冷媒流路R1の流出口に近い位置に配置される。なお、感温部15aは熱伝導率の高い銅などにより構成される。また、継手21fは熱伝達率の低い鉄などにより構成される。
【0051】
第2温度センサ25は、第1温度センサ15とは異なる場所に配置される。ここでは、第2温度センサ25は、
図1に示すように、吐出管24の表面に配置され、吐出管24の表面の温度を計測する。また、第2温度センサ25は、筐体20からの流路の長さが1m以内の範囲に配置される。したがって、第2温度センサ25は、圧縮機10本体から1m以内の範囲の吐出管24の表面に配置される。
【0052】
(3−2)案内板の配置
スクロール圧縮機10は、
図1,2に示すように、案内板65を備える。上述の第1温度センサ15は、案内板65により形成される空間(第2冷媒流路R2)の温度を計測する。
【0053】
案内板65は、筐体20内に配置され、第2冷媒流路R2の流路断面積を小さくするものである。具体的には、案内板65は、ハウジング60の下方の空間であって、駆動モータ70の外周と筐体20の内壁との間の一部に形成される第3冷媒流路R3に冷媒を誘導するように配置される。言い換えると、案内板65を介して第2冷媒流路R2と第3冷媒流路R3とが連続している。
【0054】
なお、案内板65は、
図4に示すような形状を有しており、駆動モータ70の外周と筐体20の内壁との間の一部(ステータ71の一極部分のコアカット部)に集中するように第2冷媒流路R2を形成する。そのため、その他のコアカット部を油戻し等のために利用することが可能となる。
【0055】
(3−3)冷媒温度の演算
スクロール圧縮機10は、後述するような制御装置5に接続する。制御装置5は、第1温度センサ15の計測値Tp及び第2温度センサ25の計測値Tdに基づいて、吐出口32aにおける冷媒の温度推定値HTpを演算する演算部5aとして機能する。具体的に、制御装置5(演算部5a)は、下式(1)に基づいて冷媒の温度を推定する。なお、Kは補正係数であり、実験環境において計測された吐出口32aにおける冷媒温度の実測値に基づいて設定される。また、nは自然数である。
【数1】
【0056】
(3−4)温度推定の検証例
本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、上述した第1温度センサ15及び第2温度センサ25を有して、吐出口32aにおける冷媒温度を推定するものであるが、これは、本発明者らの下記の知見に基づいている。言い換えると、本発明者らは、鋭意努力の結果、上式(1)を用いることで、高精度に吐出口32aにおける冷媒温度を推定できるとの知見を得た。
【0057】
一例として、スクロール圧縮機10を制御したときの温度センサの計測値を示すと、
図5のような結果が得られた。ここでは、吐出口32aにおける冷媒温度の実測値、第1温度センサ15の計測値、第2温度センサ25の計測値が、それぞれ
図5の線T,Tp,Tdで示されている。また、上式(1)を用いて演算された温度推定値が、線HTpで示されている。なお、
図5の横軸は時間を示しており、縦軸は温度を示している。
【0058】
図5の点線部分A1,A2等に着目すると、能力変動等による急激な温度変化が生じたときでも、線HTpが実測値である線Tを良くとらえていることが認識される。なお、保護が必要となる吐出口32aの温度上昇時に誤差がプラスになるようにすることで、安全性を高めることができる。
【0059】
また、吐出口32aにおける冷媒温度の実測値Tを横軸にとり、上式(1)を用いて演算された温度推定値HTpを縦軸にとると、
図6に示すような結果が得られた。ここでは、推定精度が概ね±10℃以下であることが認識される。
【0060】
このように、上述した第1温度センサ15及び第2温度センサ25を有するスクロール圧縮機10を用いることで、高精度に吐出口32aにおける冷媒温度を推定することができることが確認された。
【0061】
(4)冷凍サイクル装置
(4−1)冷凍サイクル装置の構成
図7は本実施形態に係る圧縮機10を備えた冷凍サイクル装置100の構成の一例を説明するための図である。
【0062】
ここでは、冷凍サイクル装置100は、ヒートポンプを用いた水の加熱装置及び/又は冷却装置である。具体的に、冷凍サイクル装置100は、給湯器または冷水器として、加熱または冷却された水を供給する。また、冷凍サイクル装置100は、加熱または冷却された水を媒体として、室内を暖めたり、冷やしたりする。
【0063】
冷凍サイクル装置100は、
図7に示すように、スクロール圧縮機10、アキュムレータ102、四路切換弁103、空気熱交換器104、逆止弁ブリッジ109、第1膨張機構107、第2膨張機構(流量調整機構)108、エコノマイザ熱交換器110、水熱交換器111を備える。さらに、冷凍サイクル装置100は、空気熱交換器104に空気を通過させるためのファン105と、ファン105を駆動するモータ106とを備える。なお、各機器および分岐部112は、配管141〜154で接続される。また、各装置は
制御装置5により制御される。
【0064】
なお、本実施形態において「膨張機構」とは、冷媒を減圧できるものをいい、例えば電子膨張弁、キャピラリーチューブがこれに該当する。また、膨張機構は、開度を自在に調節できるものである。
【0065】
(4−2)冷凍サイクル装置の動作
冷凍サイクル装置100では、制御装置5が、各構成機器に対して以下の制御を実行する。なお、制御装置5は、マイクロコンピュータ及びプログラムを格納したメモリなどにより構成される。
【0066】
(4−2−1)循環制御
制御装置5は、
図8に示すように循環制御部5hを有しており、冷凍サイクル装置100の各構成機器を制御して、冷媒を循環する制御を行なう。具体的には、冷凍サイクル装置100は、水を加熱又は冷却する際に冷媒を循環する制御を実行する。
【0067】
例えば、水を加熱する際には、制御装置5の制御により、スクロール圧縮機10にガス冷媒が送られる。そして、スクロール圧縮機10により、ガス冷媒が圧縮される。圧縮されたガス冷媒は、凝縮器として機能する水熱交換器111に送られる。水熱交換器111ではガス冷媒と水とが熱交換され、冷媒が液化される。続いて、冷媒は、第1膨張機構107に送られる。第1膨張機構107により、冷媒は減圧される。次に、冷媒は、蒸発器として機能する空気熱交換器104に送られる。空気熱交換器104では冷媒と空気とが熱交換され、冷媒が気化される。そして、気化された冷媒は、スクロール圧縮機10へ再び送られる。この後は、同様にして冷凍サイクルの各構成機器を冷媒が循環する。
【0068】
そして、冷媒の循環が開始したタイミング以後に、水入側配管161から水熱交換器111に水が送られる。この際、水熱交換器111に高温の冷媒が流れている。そのため、水熱交換器111では、冷媒により水が加熱される。加熱された水は、水出口側配管162より排出される。このようにして加熱された水が供給される。
【0069】
なお、四路切換弁103の切換により冷媒の流れを変更することで、水を冷却することができる。この場合は、水熱交換器111が、冷媒の蒸発器として機能することになる。
【0070】
(4−2−2)インジェクション制御
制御装置5は、
図8に示すようにインジェクション制御部5iを有しており、上述した循環制御を行なう際にインジェクション制御を実行する。本実施形態に係る冷凍サイクル装置100では、第2膨張機構108、エコノマイザ熱交換器110、分岐部112、配管152〜154により、いわゆるインジェクション回路が形成されている。
【0071】
例えば、水を加熱する場合には、制御装置5の制御により、スクロール圧縮機10で圧縮されたガス冷媒が、凝縮器として機能する水熱交換器111に送られる。水熱交換器111ではガス冷媒と水とが熱交換され、冷媒が液化される。液化された冷媒は、分岐部112で分岐されて、第2膨張機構108に送られる。
【0072】
ここで、第2膨張機構108は流量調整機構として機能する。具体的には、制御装置5の制御により、第2膨張機構108の開度等が調整される。これにより、分岐される冷媒の流量が調整される。この際、第2膨張機構108の絞り膨張作用により冷媒の圧力及び温度は低下する。そして、第2膨張機構108からエコノマイザ熱交換器110に冷媒が送られる。
【0073】
エコノマイザ熱交換器110はガス化機構として機能する。具体的には、エコノマイザ熱交換器110において、配管153から配管154に流れる冷媒(インジェクション回路を流れる冷媒)と配管147から配管146に流れる冷媒(主となる冷凍サイクルを流れる冷媒)との熱交換が行なわれて、配管153から配管154に流れる冷媒(インジェクション回路を流れる冷媒)がガス化される。そして、ガス化された冷媒は、スクロール圧縮機10の圧縮途中にインジェクションされる。これにより、スクロール圧縮機10で圧縮されるガス冷媒の吐出温度が高くなりすぎないように調整される。なお、ここでのインジェクション回路における「ガス化」とは、液冷媒の一部でもガス化していればよく(ガスリッチな状態)、必ずしも液冷媒の全てをガス化することを意味するものではない。
【0074】
(4−2−3)駆動モータの回転数制御
制御装置5は、
図8に示すように回転数制御部5bを有しており、駆動モータ70の回転数の制御を行なう。具体的には、回転数制御部5bは、上述した演算部5aにより演算された冷媒の温度推定値HTpが吐出目標温度になるように、駆動モータ70の回転数を制御する。
【0075】
例えば、制御装置5は、高温の水を供給する場合、スクロール圧縮機10の駆動モータ70の回転数が増加するように制御する。これにより、冷凍サイクルにおける冷媒の循環量が増加して、水熱交換器111における冷媒の単位時間当たりの放熱量が増加する。結果として、熱交換する水の温度が上昇して高温の水を供給することができる。なお、制御装置5は、水の温度が設定温度よりも高くなると、駆動モータ70の回転を停止する。
【0076】
(4−2−4)第1膨張機構の開度制御
制御装置5は、
図8に示すように第1開度制御部5cを有しており、第1膨張機構107の開度の制御を行なう。具体的には、第1開度制御部5cは、上述した演算部5aにより演算された冷媒の温度推定値HTpに基づいて、第1膨張機構107の開度を制御する。
【0077】
例えば、制御装置5は、スクロール圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度の推定値が目標吐出温度よりも高い場合、第1膨張機構107の開度が増加するように制御する。これにより、空気熱交換器104を通過する冷媒の流量が増加してスクロール圧縮機10に吸入される冷媒の過熱度が小さくなる。そのため、冷媒の吐出温度が目標吐出温度に近づくことになる。
【0078】
また、制御装置5は、水熱交換器111の出口部の冷媒過冷却度、またはエコノマイザ熱交換器110の出口部の冷媒過冷却度が目標過冷却度となるように、第1膨張機構107の開度を制御しても良い。
【0079】
(4−2−5)第2膨張機構の開度制御
制御装置5は、
図8に示すように第2開度制御部5dを有しており、第2膨張機構108の開度の制御を行なう。
【0080】
具体的には、
図9に示すような手順で、第2膨張機構108の開度が制御される。まず、制御装置5の演算部5aが、第1温度センサ15の計測値Tpを取得する(S1)。また、演算部5aは、第2温度センサ25の計測値Tdを取得する(S2)。ここで、ステップS1とステップS2のタイミングは逆であっても良いし、同時であっても良い。そして、演算部5aは、第1温度センサの計測値Tp及び第2温度センサの計測値Tdから、スクロール圧縮機構50の吐出口32aにおける冷媒の温度推定値HTpを演算する(S3)。次に制御装置5の第2開度制御部5dが、上述した演算部5aにより演算された冷媒の温度推定値HTpに基づいて、第2膨張機構108の開度を制御する(S4)。
【0081】
例えば、制御装置5は、スクロール圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度の推定値が目標吐出温度よりも高い場合、第2膨張機構108の開度を増加するように制御する。これにより、インジェクション回路に流入する冷媒の流量が増加してスクロール圧縮機10に吸入される冷媒の温度が低下する。そのため、冷媒の吐出温度が目標吐出温度に近づくことになる。
【0082】
(5)特徴
(5−1)
上述したように、本実施形態のスクロール圧縮機10は、筐体20と、スクロール圧縮機構50と、吐出管24と、第1温度センサ15と、第2温度センサ25とを備える。
【0083】
ここで、第1温度センサ15は、感温部15aを有している。感温部15aは、第2冷媒流路R2に配置されている。感温部15aは、冷媒の温度(計測値Tp)を直接的に計測することができる。直接的に計測するとは、冷媒が内部を流れるパイプや、冷媒から熱伝達を受ける部品の温度を計測するのではなく、冷媒の温度を直接計測するとの意味である。そのため、第1温度センサ15を用いることで、スクロール圧縮機構50の吐出口32a直後の吐出温度の変化に素早く追随した温度を計測することができる。
【0084】
また、第2温度センサ25は、吐出管24の表面の温度(計測値Td)を計測する。そのため、第2温度センサ25を用いることで、スクロール圧縮機10の構成部材の熱容量の影響が反映された温度を計測することができる。
【0085】
したがって、本実施形態のスクロール圧縮機10では、第1温度センサ15及び第2温度センサ25により計測された2つの温度値を用いることで、スクロール圧縮機構50の吐出口32a直後の冷媒の温度(温度推定値HTp)を高精度に推定できる。結果として、信頼性の高いスクロール圧縮機10を提供できるようになる。
【0086】
ここで、本実施形態に係るスクロール圧縮機10の効果について補足する。スクロール圧縮機10では、冷媒の吐出温度が高温になりすぎると、内部の構成部材が破損することがあるので、冷媒の吐出温度が所定値を超えないように制御される。そして、上記制御を行うための第1の方法として、スクロール圧縮機10の筐体20から伸びた吐出管24の温度を計測し、熱損失等を考慮して補正した値を吐出温度と推定する方法がある。また、第2の方法として、最も高温となるスクロール圧縮機10の吐出口32aの位置に温度センサを配置し、その計測値を吐出温度と推定する方法がある。
【0087】
第1の方法の場合、スクロール圧縮機10の筐体20等の熱容量による温度変化の応答性の遅れ又は鈍り、あるいは周囲への放熱による温度低下が起こる。ここで、温度の変化量は運転条件で大きく異なる。そのため、スクロール圧縮機10の吐出口32aにおける温度を正確な推定できないことがある。結果として、吐出温度が許容し得る上限を超えてしまい、スクロール圧縮機10が破損することがある。もしくは、信頼性を確保するために過剰な誤差を見込んでしまい、圧縮機が過剰設計となり、コストが増加することがある。また、吐出温度の上限を低めに設定することで、圧縮機の運転許容エリアを小さくしてしまうことや、スクロール圧縮機10の運転が非効率となることがある。さらに、液インジェクション等を行い、吐出口32aの温度が上限を超えないように冷却することがある。しかしながら、温度計測の応答の遅れに起因して冷却のタイミングが遅れ、過昇温になったり、逆に冷却しすぎて吐出湿りになったりすることがある。結果として、スクロール圧縮機10の信頼性を損なうことがある。
【0088】
一方、第2の方法を用いることで、第1の方法の問題点を解消することも考えられる。しかしながら、第2の方法では、スクロール圧縮機10の筐体20内に温度センサを配置する必要がある。そのため、温度センサの取り付けが煩雑になり、コストが高くなる。また、吐出口32aの近傍に温度センサを取り付けるための構造により、圧縮機内部での冷媒漏れ及び圧力損失等が生じることがある。また、温度センサが高温高圧の雰囲気にさらされるため、故障しやすくなる。さらに、一旦故障が生じると、温度センサを容易に取り換えることができない等の問題が生じる。
【0089】
本実施形態に係るスクロール圧縮機10では、筐体20内の冷媒流路に配置され、冷媒の温度を直接的に計測する第1温度センサ15と、吐出管24の表面温度を計測する第2温度センサ25との2つの温度センサを有しているので、冷媒の吐出温度を高精度に算出することができる。結果として、上述した第1の方法及び第2の方法で生じる問題を回避することができ、信頼性の高いスクロール圧縮機10を提供することができる。
【0090】
(5−2)
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、第1温度センサ15が、筐体を貫通して配置されており、筐体20の外側から着脱自在に取り付けられる。したがって、仮に第1温度センサ15が故障した場合であってもメンテナンスを容易に行なうことができる。また、第1温度センサ15を容易に交換可能な構造であるため、必要以上に耐久性を考慮する必要がない。結果として、製造コストを抑えることができる。
【0091】
(5−3)
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、第1温度センサ15の感温部15aが、筐体20から熱絶縁されている。したがって、冷媒の温度を高精度に測定できる。
【0092】
(5−4)
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、筐体20内に配置され、冷媒流路の流路断面積を小さくする案内板65をさらに備える。ここで、流路断面積が小さくなるように案内板65が配置されるので、その空間での冷媒の流速が早くなる。そして、第1温度センサ15が、案内板65により形成される空間(第2冷媒流路R2)の温度を計測する。したがって、このような構成により、流速の早い冷媒の温度を測定することになるので、応答性を向上することができる。
【0093】
(5−5)
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、駆動モータ70が、駆動モータ70の外周と筐体20の内壁との間の一部に、第3冷媒流路R3を形成するように配置される。そして、案内板65が、駆動モータ70の外周と筐体20の内壁との間の第3冷媒流路R3に冷媒を誘導するように配置される。したがって、スクロール圧縮機10をコンパクトに製造することができる。具体的には、上記構成により、駆動モータ70の外周のコアカット部を流路とすることができる。そのため、余計なスペースを設けずにすむので、スクロール圧縮機10のコンパクト化、低コスト化を実現できる。
【0094】
なお、ここでは、駆動モータ70の外周と筐体20の内壁との間の一部(一極部分のコアカット部)に冷媒が集中するように案内板65を配置する。そのため、その他のコアカット部を油戻し等のために利用することができる。
【0095】
(5−6)
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、吐出管24が、筐体20の内壁の近傍領域のうち、案内板65により形成される領域とは平面視で略反対側に配置される。このような構成により、第2温度センサ25が、第1温度センサ15では反映されていない影響が反映された温度を計測できる。補足すると、第1温度センサ15では、スクロール圧縮機10の構成部材の熱容量の影響があまり反映されていない温度を計測できる。一方、第2温度センサ25では、スクロール圧縮機10の構成部材の熱容量の影響が大きく反映された温度を計測できる。したがって、第2温度センサ25の温度計測値には、第1温度センサ15では反映されていない影響が反映されることになる。
【0096】
(5−7)
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機10は、第2温度センサ25が、筐体20からの流路の長さが1m以内の範囲に配置される。このような構成により、熱ロスや熱容量の影響を抑制することができる。
【0097】
(5−8)
上述したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、水熱交換器111及び空気熱交換器104を、それぞれ凝縮器及び蒸発器として用いることができる。この場合、冷凍サイクル装置100は、スクロール圧縮機10、凝縮器(水熱交換器111)、第1膨張機構107、蒸発器(空気熱交換器104)の順に冷媒が流れる冷凍サイクルを有する。
【0098】
ここで、冷凍サイクル装置100は、第1温度センサ15及び第2温度センサ25を用いて、スクロール圧縮機構50から吐出された冷媒の温度を演算する演算部5aをさらに備えている。
【0099】
したがって、冷凍サイクル装置100は、スクロール圧縮機構50の吐出口32a直後の冷媒温度を高精度に推定することができる。
【0100】
(5−9)
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、演算部5aにより演算された冷媒の温度に基づいて駆動モータ70の回転数を制御する回転数制御部5bをさらに備えている。このような構成により、信頼性の高い冷凍サイクル装置100を提供できる。
【0101】
例えば、回転数制御部5bの制御により、駆動モータ70の回転数を落とすことで高圧状態の圧力を下げることができる。これにより吐出温度を抑えることができ、オイルが劣化したり、機械部品が破損したりするなどの事態を回避できる。
【0102】
(5−10)
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、配管152〜154(インジェクション配管)と、第2膨張機構108(流量調整機構)と、第2開度制御部5dと、をさらに備える。ここで、配管152〜154は、水熱交換器111(凝縮器)から第1膨張機構107に向かう配管の一部を分岐して、スクロール圧縮機10に接続する。第2膨張機構108は、配管152〜154の冷媒の流量を調整する。第2開度制御部5dは、演算部5aにより演算された冷媒の温度に基づいて、第2膨張機構108の開度を制御する。このような構成により、信頼性の高い冷凍サイクル装置100を提供できる。
【0103】
例えば、吐出温度を高精度に推定することにより、温度計測の応答遅れに起因する過昇温又は吐出湿り等が生じる事態を回避できる。
【0104】
(5−11)
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、配管152〜154に流れる液冷媒をガス化するエコノマイザ熱交換器110(ガス化機構)をさらに備える。このような構成により、冷媒の吐出温度が目標値となるようにさらに高精度に制御できる。
【0105】
(5−12)
なお、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、スクロール圧縮機10の吐出冷媒を高温にする必要がある用途に適したものである。特に、冷媒としてR32を用いる場合には、吐出温度が高温となることから、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100の利用が好適である。例えば、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、燃焼暖房の代替として、ヒートポンプを用いた給湯暖房機などへの適用に好適である。
【0106】
(6)変形例
(6−1)
上記説明では、スクロール圧縮機10と制御装置5とは別装置として説明したが、制御装置5の一部又は全ての機能はスクロール圧縮機10に組み込まれていてもよいものである。言い換えると、スクロール圧縮機10が、吐出口32aにおける冷媒の温度を推定する機能を有するものでもよい。
【0107】
(6−2)
上記説明では、第2温度センサ25は、吐出管24の表面の温度を計測するものとしたが、これに限定されるものではない。具体的には、第2温度センサ25は、第1温度センサ15とは異なる場所に配置され、吐出管24の表面、吐出管24の内部空間、又は筐体20の表面のいずれかの温度を計測するものでもよい。第2温度センサ25がこれらの場所に配置されたとしても、第1温度センサ15の計測値と組み合わせることで高精度の吐出口32aにおける冷媒の温度を推定することができる。
【0108】
(6−3)
上記説明では、冷凍サイクル装置100は、水を加熱又は冷却するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、冷凍サイクル装置100は、水以外の流体としてブラインの加熱及び冷却をするものでもよいし、水熱交換器を空気熱交換機に置き換えた室内機により、直膨の空気調和機として室内を加熱及び冷却をするものでもよい。
【0109】
(6−4)
上記説明では、スクロール圧縮機10を用いて説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態に係る圧縮機は、例えばロータリ圧縮機などの他の圧縮機であってもよい。
【0110】
<他の実施形態>
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0111】
言い換えると、本開示は、上記各実施形態そのままに限定されるものではない。本開示は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。また、本開示は、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の開示を形成できるものである。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよいものである。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよいものである。