特許第6974776号(P6974776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6974776-非水電解液電池用部材 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974776
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】非水電解液電池用部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20211118BHJP
【FI】
   H01M50/193
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-142683(P2020-142683)
(22)【出願日】2020年8月26日
(65)【公開番号】特開2021-141042(P2021-141042A)
(43)【公開日】2021年9月16日
【審査請求日】2020年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-153773(P2019-153773)
(32)【優先日】2019年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-38592(P2020-38592)
(32)【優先日】2020年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井坂 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】津田 早登
(72)【発明者】
【氏名】善家 佑美
(72)【発明者】
【氏名】山本 有香里
(72)【発明者】
【氏名】青山 高久
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−048976(JP,A)
【文献】 特開平08−321287(JP,A)
【文献】 特開2012−130557(JP,A)
【文献】 特開2001−283907(JP,A)
【文献】 特開平09−245832(JP,A)
【文献】 国際公開第03/048214(WO,A1)
【文献】 特開2009−059690(JP,A)
【文献】 特開2002−063934(JP,A)
【文献】 特開2001−283921(JP,A)
【文献】 特開2013−177574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10−50/198
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル単位を含有する共重合体を含有し、前記共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数が、100個以下であり、前記共重合体のメルトフローレートが、20g/10分未満であり、10%以上の圧縮変形率で圧縮変形した状態で用いられる非水電解液電池用部材。
【請求項2】
前記共重合体の融点が、295〜320℃である請求項1に記載の非水電解液電池用部材。
【請求項3】
前記共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0〜10.0質量%である請求項1または2に記載の非水電解液電池用部材。
【請求項4】
前記フルオロアルキルビニルエーテル単位が、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位である請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液電池用部材。
【請求項5】
非水電解液と接する状態で用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解液電池用部材。
【請求項6】
非水電解液との接液面を有する請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液電池用部材。
【請求項7】
電解液浸漬試験において検出される溶出フッ素イオン量が、1ppm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解液電池用部材。
【請求項8】
射出成形品である請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解液電池用部材。
【請求項9】
封止部材または絶縁部材である請求項1〜8のいずれかに記載の非水電解液電池用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解液電池用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体は、良好な絶縁特性を有していることから、電池の絶縁部材などに用いられている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、外装缶と、前記外装缶内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、前記外装缶の開口部に取り付けられる蓋と、前記正極の端子部と、前記負極の端子部とを具備する電池であって、前記正極の端子部または前記負極の端子部のうち少なくとも一方は、前記蓋に開口された貫通孔と、前記蓋の貫通孔内に挿入される筒部を有する絶縁ガスケットと、を備え、前記絶縁ガスケットを形成する前記樹脂は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であることを特徴とする電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−48976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、高温での耐圧縮永久歪み性に優れる非水電解液電池用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル単位を含有する共重合体を含有し、前記共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数が、100個以下であり、前記共重合体のメルトフローレートが、20g/10分未満である非水電解液電池用部材が提供される。
【0007】
本開示の非水電解液電池用部材において、前記共重合体の融点が、295〜320℃であることが好ましい。
本開示の非水電解液電池用部材において、前記共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0〜10.0質量%であることが好ましい。
本開示の非水電解液電池用部材において、前記フルオロアルキルビニルエーテル単位が、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位であることが好ましい。
本開示の非水電解液電池用部材は、10%以上の圧縮変形率で圧縮変形した状態で用いることができる。
本開示の非水電解液電池用部材は、非水電解液との接液面を有することが好ましい。
本開示の非水電解液電池用部材は、電解液浸漬試験において検出される溶出フッ素イオン量が、1ppm以下であることが好ましい。
本開示の非水電解液電池用部材は、射出成形品であることが好ましい。
本開示の非水電解液電池用部材は、封止部材または絶縁部材として好適に利用できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高温での耐圧縮永久歪み性に優れる非水電解液電池用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1〜3および比較例1で作製した試験片を用いた電解液浸漬試験において測定した溶出フッ素イオン濃度(ppm)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本開示の非水電解液電池用部材は、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル(FAVE)単位を含有する共重合体を含有する。
【0012】
本開示の非水電解液電池用部材が含有する共重合体は、溶融加工性のフッ素樹脂である。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0013】
上記FAVE単位を構成するFAVEとしては、一般式(1):
CF=CFO(CFCFYO)−(CFCFCFO)−Rf (1)
(式中、YはFまたはCFを表し、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0〜5の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)で表される単量体、および、一般式(2):
CFX=CXOCFOR (2)
(式中、Xは、同一または異なり、H、FまたはCFを表し、Rは、直鎖または分岐した、H、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が1〜6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が5または6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0014】
なかでも、上記FAVEとしては、一般式(1)で表される単量体が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PEVEおよびPPVEからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、PPVEが特に好ましい。
【0015】
共重合体のフルオロアルキルビニルエーテル(FAVE)単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは1.0〜10.0質量%であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、尚さらに好ましくは3.5質量%以上で あり、特に好ましくは4.0質量%以上であり、最も好ましくは5.6%質量%以上であり、より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは7.0質量%以下であり、特に好ましくは6.5質量%以下であり、最も好ましくは6.0質量%以下である。共重合体のFAVE単位の含有量が上記範囲内にあることにより、非水電解液電池用部材の一層優れた高温での耐圧縮永久歪み性を得ることができる。
【0016】
共重合体のテトラフルオロエチレン(TFE)単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは99.0〜90.0質量%であり、より好ましくは98.0質量%以下であり、さらに好ましくは97.0質量%以下であり、尚さらに好ましくは96.5質量%以下であり、特に好ましくは96.0質量%以下であり、最も好ましくは94.4%質量%以下であり、より好ましくは92.0質量%以上であり、さらに好ましくは93.0質量%以上であり、特に好ましくは93.5質量%以上であり、最も好ましくは94.0質量%以上である。共重合体のTFE単位の含有量が上記範囲内にあることにより、非水電解液電池用部材の一層優れた高温での耐圧縮永久歪み性を得ることができる。
【0017】
本開示において、共重合体中の各単量体単位の含有量は、19F−NMR法により測定する。
【0018】
共重合体は、TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を含有することもできる。この場合、TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体の含有量は、共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.4質量%である。
【0019】
TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、CZ=CZ(CF(式中、Z、ZおよびZは、同一または異なって、HまたはFを表し、Zは、H、FまたはClを表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、および、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。なかでも、HFPが好ましい。
【0020】
共重合体としては、TFE単位およびFAVE単位のみからなる共重合体、および、TFE/HFP/FAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFE単位およびFAVE単位のみからなる共重合体がより好ましい。
【0021】
共重合体の融点は、耐熱性および耐ストレスクラック性の観点から、好ましくは280〜322℃であり、より好ましくは285℃以上であり、さらに好ましくは295℃以上であり、より好ましくは320℃以下であり、さらに好ましくは315℃以下であり、特に好ましくは310℃以下である。融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて測定できる。
【0022】
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは85℃以上であり、尚さらに好ましくは90℃以上であり、特に好ましくは95℃以上であり、最も好ましくは100℃以上である。ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定できる。
【0023】
共重合体のメルトフローレートは、20g/10分未満であり、非水電解液電池用部材の高温での耐圧縮永久歪み性がさらに向上することから、好ましくは19g/10分以下であり、より好ましくは18g/10分以下であり、さらに好ましくは17g/10分以下である。また、共重合体のメルトフローレートは、共重合体の成形性が大きく損なわれず、比較的容易に非水電解液電池用部材を製造できることから、好ましくは5g/10分以上であり、より好ましくは8g/10分以上であり、さらに好ましくは11g/10分以上であり、特に好ましくは13g/10分以上である。
【0024】
本開示において、メルトフローレートは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0025】
本開示の非水電解液電池用部材に含有される共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数は、100個以下である。本開示の非水電解液電池用部材は、主鎖炭素数10個当たりの官能基数が100個以下である共重合体を含有することから、高温での圧縮永久歪み率が低いとともに、非水電解液に対する耐膨潤性に優れており、しかも、非水電解液にフッ素イオンを溶出させにくい。
【0026】
共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数は、非水電解液電池用部材の一層優れた高温での耐圧縮永久歪み性を得ることができることから、好ましくは80個以下であり、より好ましくは50個以下であり、さらに好ましくは20個以下である。
【0027】
上記官能基の種類の同定および官能基数の測定には、赤外分光分析法を用いることができる。
【0028】
官能基数については、具体的には、以下の方法で測定する。まず、上記共重合体をコールドプレスにより成形して、厚さ0.25〜0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記共重合体の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記共重合体における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0029】
参考までに、本開示における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT−IR測定データから決定したものである。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、−CHCFH、−CHCOF、−CHCOOH、−CHCOOCH、−CHCONHの吸収周波数は、それぞれ表中に示す、−CFH、−COF、−COOH freeと−COOH bonded、−COOCH、−CONHの吸収周波数から数十カイザー(cm−1)低くなる。
従って、たとえば、−COFの官能基数とは、−CFCOFに起因する吸収周波数1883cm−1の吸収ピークから求めた官能基数と、−CHCOFに起因する吸収周波数1840cm−1の吸収ピークから求めた官能基数との合計である。
【0032】
上記官能基は、共重合体の主鎖末端または側鎖末端に存在する官能基、および、主鎖中または側鎖中に存在する官能基である。上記官能基数は、−CF=CF、−CFH、−COF、−COOH、−COOCH、−CONHおよび−CHOHの合計数であってよい。
【0033】
上記官能基は、たとえば、共重合体を製造する際に用いた連鎖移動剤や重合開始剤によって、共重合体に導入される。たとえば、連鎖移動剤としてアルコールを使用したり、重合開始剤として−CHOHの構造を有する過酸化物を使用したりした場合、共重合体の主鎖末端に−CHOHが導入される。また、官能基を有する単量体を重合することによって、上記官能基が共重合体の側鎖末端に導入される。
【0034】
このような官能基を有する共重合体を、フッ素化処理することによって、上記範囲内の官能基数を有する上記共重合体を得ることができる。すなわち、本開示の非水電解液電池用部材に含有される上記共重合体は、フッ素化処理されたものであることが好ましい。また、本開示の非水電解液電池用部材に含有される上記共重合体は、−CF末端基を有することも好ましい。
【0035】
上記フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。
【0036】
上記フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、Fガス、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(例えばIF、ClF)等が挙げられる。
【0037】
上記Fガス等のフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、安全性の面から不活性ガスと混合し5〜50質量%に希釈して使用することが好ましく、15〜30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0038】
上記フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態の共重合体とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、共重合体の融点以下、好ましくは20〜240℃、より好ましくは80〜240℃、さらに好ましくは100〜220℃の温度下で行うことができる。上記フッ素化処理は、一般に1〜30時間、好ましくは5〜25時間行う。上記フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体をフッ素ガス(Fガス)と接触させるものが好ましい。
【0039】
フッ素化処理に用いる共重合体は、例えば、その構成単位となる単量体や、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0040】
本開示の非水電解液電池用部材は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0041】
上記その他の成分としては、なかでも、充填剤が好ましい。充填剤としては、たとえば、シリカ、カオリン、クレー、有機化クレー、タルク、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、架橋ポリスチレン、チタン酸カリウム、カーボン、チッ化ホウ素、カーボンナノチューブ、ガラス繊維等が挙げられる。
【0042】
上述したように、本開示の非水電解液電池用部材は、共重合体以外にその他の成分を含むことができる。ただし、共重合体が有する優れた特性を充分により発揮させる観点からは、その他の成分の含有量は少ないほうが好ましく、その他の成分を含まないことが最も好ましい。具体的には、その他の成分は、本開示の非水電解液電池用部材に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、すなわち、本開示の非水電解液電池用部材がその他の成分を含まないことである。本開示の非水電解液電池用部材は、共重合体のみからなるものであってよい。
【0043】
本開示の非水電解液電池用部材は、共重合体、または、共重合体およびその他の成分を含有する組成物を所望の形状や大きさに成形することにより製造することができる。上記組成物の製造方法としては、共重合体とその他の成分とを乾式で混合する方法や、共重合体およびその他の成分を予め混合機で混合し、次いで、ニーダー、溶融押出し機等で溶融混練する方法等を挙げることができる。
【0044】
上記共重合体または上記組成物を成形する方法は特に限定されず、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法等が挙げられる。成形方法としては、なかでも、圧縮成形法または射出成形法が好ましく、高い生産性で非水電解液電池用部材を生産できることから、射出成形法がより好ましい。すなわち、本開示の非水電解液電池用部材は、圧縮成形品または射出成形品であることが好ましく、高い生産性で生産できることから、射出成形品であることがより好ましい。
【0045】
本開示の非水電解液電池用部材は、高い圧縮変形率で変形させても、低い圧縮永久歪み率を示す。本開示の非水電解液電池用部材は、10%以上の圧縮変形率で圧縮変形した状態で用いることができ、20%以上または25%以上の圧縮変形率で圧縮変形した状態で用いることができる。本開示の非水電解液電池用部材を、このような高い圧縮変形率で変形させて用いることによって、一定の反発弾性を長期間維持することができ、封止特性および絶縁特性を長期間維持できる。
【0046】
また、本開示の非水電解液電池用部材は、高温で高い圧縮変形率で変形させても、低い圧縮永久歪み率を示す。本開示の非水電解液電池用部材は、150℃以上で、10%以上の圧縮変形率で圧縮変形した状態で用いることができ、150℃以上で、20%以上または25%以上の圧縮変形率で圧縮変形した状態で用いることができる。本開示の非水電解液電池用部材を、このような高温で、高い圧縮変形率で変形させて用いることによって、一定の反発弾性を長期間維持することができ、高温での封止特性および絶縁特性を長期間維持できる。
【0047】
上記の圧縮変形率は、非水電解液電池用部材が圧縮された状態で用いられる場合に、最も圧縮変形率が大きい部位の圧縮変形率である。たとえば、扁平な非水電解液電池用部材が、その厚み方向に圧縮した状態で用いられる場合には、厚み方向の圧縮変形率である。また、たとえば、非水電解液電池用部材の一部のみが圧縮された状態で用いられる場合は、圧縮された部位の圧縮変形率のうち、最も圧縮変形率が大きい部位の圧縮変形率である。
【0048】
本開示の非水電解液電池用部材の大きさや形状は用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。本開示の非水電解液電池用部材の形状は、たとえば、環状であってよい。また、本開示の非水電解液電池用部材は、平面視で円形、長円形、角を丸めた四角形などの形状を有し、かつその中央部に貫通孔を有するものであってよい。
【0049】
本開示の非水電解液電池用部材は、非水電解液電池を構成するための部材である。本開示の非水電解液電池用部材は、非水電解液に対する耐膨潤性に優れており、しかも、非水電解液にフッ素イオンを溶出させにくいことから、非水電解液電池中の非水電解液と接する状態で用いられる部材として、特に好適である。すなわち、本開示の非水電解液電池用部材は、非水電解液電池中の非水電解液との接液面を有するものであってもよい。
【0050】
本開示の非水電解液電池用部材は、官能基数が低減された共重合体を含有することから、非水電解液にフッ素イオンを溶出させにくいという驚くべき効果をも奏する。したがって、本開示の非水電解液電池用部材を用いることによって、非水電解液中のフッ素イオン濃度の上昇を抑制することができる。結果として、本開示の非水電解液電池用部材を用いることによって、非水電解液電池中でのHFなどのガスの発生を抑制できたり、非水電解液電池の電池性能の劣化および短寿命化を抑制できたりする。
【0051】
また、本開示の非水電解液電池用部材は、非水電解液電池中でのHFなどのガスの発生を一層抑制できたり、非水電解液電池の電池性能の劣化および短寿命化を一層抑制できたりすることから、電解液浸漬試験において検出される溶出フッ素イオン量が、質量基準で、1ppm以下であることが好ましく、0.8ppm以下であることが好ましく、0.7ppm以下であることがより好ましい。電解液浸漬試験は、非水電解液電池用部材を用いて、成形品(15mm×15mm×0.2mm)10枚に相当する重量を有する試験片を作製し、試験片と2gのジメチルカーボネート(DMC)とを入れたガラス製サンプル瓶を、80℃の恒温槽に入れて、24〜144時間(好ましくは144時間)放置することにより、行うことができる。
【0052】
非水電解液電池としては、非水電解液を備える電池であれば特に限定されず、たとえば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどが挙げられる。また、非水電解液電池を構成する部材としては、封止部材、絶縁部材などが挙げられる。
【0053】
上記非水電解液は、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの公知の溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。非水電解液電池は、電解質をさらに備えてもよい。上記電解質は、特に限定されるものではないが、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、炭酸セシウムなどを用いることができる。
【0054】
本開示の非水電解液電池用部材は、たとえば、封止ガスケット、封止パッキンなどの封止部材、絶縁ガスケット、絶縁パッキンなどの絶縁部材として、好適に利用できる。封止部材は、液体もしくは気体の漏出または外部からの液体もしくは気体の侵入を防止するために用いられる部材である。絶縁部材は、電気を絶縁するために用いられる部材である。本開示の非水電解液電池用部材は、封止および絶縁の両方の目的のために用いられる部材であってもよい。
【0055】
本開示の非水電解液電池用部材は、高温で圧縮した後であっても、低い圧縮永久歪み率を示すことから、高温となる環境下で好適に使用できる。たとえば、本開示の非水電解液電池用部材は、最高温度が40℃以上となる環境下で使用することが好適である。また、たとえば、本開示の非水電解液電池用部材は、最高温度が150℃以上となる環境下で使用することが好適である。本開示の非水電解液電池用部材がこのような高温になり得る場合としては、たとえば、非水電解液電池用部材を圧縮した状態で電池に取り付けた後、その他の電池部材を溶接により電池に取付ける場合や、非水電解液電池が発熱した場合などが挙げられる。
【0056】
本開示の非水電解液電池用部材は、高温で圧縮した後であっても、低い圧縮永久歪み率を示すとともに、非水電解液に対する耐膨潤性に優れており、しかも、非水電解液にフッ素イオンを溶出させにくいことから、非水電解液電池用封止部材または非水電解液電池用絶縁部材として好適に使用できる。たとえば、非水電解液二次電池などの電池の充電時には、電池の温度が一時的に40℃以上、特に一時的に150℃以上となることがある。本開示の非水電解液電池用部材は、非水電解液二次電池などの電池中で、高温で高い圧縮変形率で変形させて使用しても、さらには、高温で非水電解液と接触しても、高い反発弾性が損なわれない。したがって、本開示の非水電解液電池用部材を封止部材として使用した場合には、優れた封止特性が長期間維持される。また、本開示の非水電解液電池用部材は、上記の共重合体を含有することから、優れた絶縁特性を有している。したがって、本開示の非水電解液電池用部材を絶縁部材として使用した場合には、2以上の導電部材にしっかりと密着して、短絡を長期間に渡って防止する。
【0057】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0058】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0060】
(単量体単位の含有量)
各単量体単位の含有量は、NMR分析装置(たとえば、ブルカーバイオスピン社製、AVANCE300 高温プローブ)により測定した。
【0061】
(メルトフローレート(MFR))
ASTM D1238に従って、メルトインデクサーG−01(東洋精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
【0062】
(融点)
示差走査熱量計(商品名:X−DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。
【0063】
(官能基数)
ペレットを、コールドプレスにより成形して、厚さ0.25〜0.3mmのフィルムを作製した。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析装置〔FT−IR(Spectrum One、パーキンエルマー社製)〕により40回スキャンし、分析して赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得た。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って試料における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出した。
【0064】
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0065】
参考までに、本開示における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表2に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT−IR測定データから決定したものである。
本開示では、−COOH、−COOCH、−CHOH、−COF、−CF=CF、−CONH、−CFHの数の合計を官能基数とする。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例1
国際公開第2003/048214号の実施例2に記載の製造方法と同様にして、下記ペレットを得た。
組成:TFE/PPVE=94.4/5.6(質量%)
MFR:14.7(g/10min)
融点:302℃
官能基数:4個/10
【0068】
金型(内径120mm、高さ38mm)に、上記ペレットを約5g投入した状態で、熱板プレスにて370℃で20分間溶融後、圧力1MPa(樹脂圧)で加圧しながら水冷して、厚み約0.2mmの成形品を作製した。その後、得られた成形品を用いて、15mm四方の試験片を作製した。
【0069】
(電解液浸漬試験)
20mLガラス製サンプル瓶に、得られた試験片10枚、および、2gの電解液(ジメチルカーボネート(DMC))を入れて、サンプル瓶の蓋を閉めた。サンプル瓶を、80℃の恒温槽に入れて、144時間放置することにより、試験片を電解液に浸漬させた。その後、サンプル瓶を恒温槽から取り出し、室温まで冷却してから、サンプル瓶から試験片を取り出した。試験片を取り出した後に残った電解液を、サンプル瓶に入った状態のままで、25℃で管理された部屋で24時間風乾し、超純水2gを加えた。得られた水溶液を、イオンクロマトシステムの測定セルに移し、この水溶液のフッ素イオン濃度を、イオンクロマトグラフシステム(Thermo Fisher Scientific社製 Dionex ICS−2100)により測定した。結果を図1に示す。
【0070】
(圧縮永久歪み率(CS))
圧縮永久歪み率の測定は、ASTM D395またはJIS K6262に記載の方法に準じた。
金型(内径13mm、高さ38mm)に、上記ペレットを約2g投入した状態で、熱板プレスにて370℃で30分間溶融後、圧力0.2MPa(樹脂圧)で加圧しながら水冷して、高さ約8mmの成形品を作製した。その後、得られた成形品を切削することにより、外径13mm、高さ6mmの試験片を作製した。作製した試験片を、圧縮装置を用いて、常温で、圧縮変形率50%まで圧縮(つまり、高さ6mmの試験片を、高さ3mmまで圧縮)した。
【0071】
次に、圧縮した試験片を圧縮装置に固定したまま、電気炉内に静置し、150℃、170℃または190℃で18時間放置した。電気炉から圧縮装置を取り出し、室温まで冷却後、試験片を取り外した。回収した試験片を、室温で、30分放置した後、高さを測定した。次式により、圧縮永久歪み率を求めた。結果を表3に示す。
圧縮永久歪み率(%)=(t−t)/(t−t)×100
:試験片の元の高さ(mm)
:スペーサの高さ(mm)
:圧縮装置から取り外した試験片の高さ(mm)
上記の試験においては、t=6mm、t=3mmである。
【0072】
(2MPa保持温度)
圧縮永久歪み率を測定した結果を利用して、各温度での復元量t−tを算出し、温度と復元量をプロットしTFE/PPVE共重合体の復元量と温度との関係の線形近似直線を作成した。圧縮変形率が50%である場合、TFE/PPVE共重合体の弾性率を600MPaと仮定すると、復元量が0.01mmのときに反発応力は2MPaとなる。復元量が0.01mmとなる温度を線形近似直線から求め、2MPa保持温度とした。結果を表3に示す。
【0073】
実施例2
特開2009−059690号公報の比較製造例1に記載の製造方法と同様にして、下記ペレットを得た。
組成:TFE/PPVE=93.4/6.6(質量%)
MFR:17.1(g/10min)
融点:302℃
官能基数:20個/10
【0074】
上記ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を作製し、得られた試験片を用いて、電解液浸漬試験を行った。結果を図1に示す。上記ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を作製し、得られた試験片を用いて、圧縮永久歪み率および2MPa保持温度を求めた。結果を表3に示す。
【0075】
実施例3
国際公開第2003/048214号の実験例6に記載の製造方法と同様にして、下記ペレットを得た。
組成:TFE/PPVE=94.5/5.5(質量%)
MFR:6.9(g/10min)
融点:302℃
官能基数:3個/10
【0076】
上記ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を作製し、得られた試験片を用いて、電解液浸漬試験を行った。結果を図1に示す。上記ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を作製し、得られた試験片を用いて、圧縮永久歪み率および2MPa保持温度を求めた。結果を表3に示す。
【0077】
比較例1
国際公開第2003/048214号の合成例2に記載の製造方法と同様にして、下記ペレットを得た。
組成:TFE/PPVE=94.4/5.6(質量%)
MFR:14.5(g/10min)
融点:302℃
官能基数:271個/10
【0078】
上記ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を作製し、得られた試験片を用いて、電解液浸漬試験を行った。結果を図1に示す。上記ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を作製し、得られた試験片を用いて、圧縮永久歪み率および2MPa保持温度を求めた。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
図1