【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこの実施例に何ら限定されるものではない。以下に示す実施例、比較例においては、特に断りがない限り、試薬は和光純薬製の試薬を用いた。また、紫外線吸収スペクトルは、島津製作所社製商品名「UV1800」を使用した。液体クロマトグラフィー(LC)は、島津製作所社製商品名「LC−2010」を使用して以下の条件で測定した。
・LC条件
測定波長:259nm
測定温度:40℃、
カラム:YMC−Pack ODS−A 150mm、4.6mm
移動相:30mMの酢酸−70mM酢酸アンモニウム
【0042】
[実施例1]argIPQの合成(原料:PQQジナトリウム)
PQQジナトリウム(三菱瓦斯化学社製商品名「BioPQQ」)1gとアルギニン1gとを水20mLと混合し、30分以上室温で攪拌し、混合物を得た。この混合物を70℃に加熱して、1日間反応させた。反応後、液中に黄色い固体が析出したことを確認した。その後、室温に冷やし、濾過して黄色固体を得た。その黄色固体をエタノール10mLで洗い、室温で12時間、減圧乾燥し、黄色い結晶1.3gを得た。
【0043】
得られた結晶の液体クロマトグラフィーを測定した。ピークは23.7分に現れ、液体クロマトグラフィーから求めた純度は99%であった。
得られた結晶は、含水物であり、元素分析による結果からargIPQジナトリウム三水和物を確認した。下記に元素分析の結果と、argIPQジナトリウム三水和物の理論値を示す。
元素分析:C 38.73、H 4.47、N 14.56
計算値:C 38.73、H 4.47、N 14.56
【0044】
得られた結晶の分子構造を次のように、核磁気共鳴法によって同定した。得られた結晶にそれが飽和するまで重メタノールを加え、その後、遠心分離して固体を除去して核磁気共鳴装置(JEOL社製の商品名「JNM−ECA500スペクトルメーター」)により測定した。結果を下記に示す。
1H−NMR(内部標準:トリメチルシラン(TMS)))
ケミカルシフト(ppm)、(積分比)、分裂パターンの順に示す。
2.17(2)t、3.27(4)m、7.27(1)s、7.81s(1)
上記の結果、及び上記元素分析の結果より、結晶の分子構造がargIPQジナトリウムであることを同定した。
【0045】
得られた結晶の粉末X線回折を測定し、2θ5.371の位置に特徴的なピークを確認した(
図1)。また、確認したピークを、下記表にまとめた。
【0046】
【表1】
【0047】
[実施例2]argIPQ(原料:PQQトリナトリウム)
PQQジナトリウム(三菱瓦斯化学社製商品「BioPQQ」)40gを水0.4Lと混合して、混合物を得た。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液と塩酸とを適量添加して、混合物のpHを7に調整した。次に、混合物に、食塩83gと水500mLとを撹拌して混合し、50℃で3日間結晶化させた。その後、室温に冷却し、濾過して赤色固体を得た。その赤色固体をエタノール10mLで洗い、室温で12時間減圧乾燥し、PQQトリナトリウム42.9gを得た。
【0048】
得られたPQQトリナトリウム1gとアルギニン1gと、水25mLとを混合し、30分以上室温で攪拌し、混合物を得た。この混合物を70℃に加熱して、3日間反応させた。反応後、液中に黄色い固体が析出したことを確認した。その後、室温に冷やし、濾過して黄色固体を得た。その黄色固体をエタノール10mLで洗い、室温で12時間減圧乾燥し、黄色い結晶0.76gを得た。
【0049】
得られた結晶の液体クロマトグラフィーを測定すると、実施例1における液体クロマトグラフィーと同じ溶出時間であった。純度は99%であった。
得られた結晶は、含水物であり、元素分析による結果からargIPQジナトリウム三水和物であることを確認した。下記に元素分析の結果と、argIPQジナトリウム三水和物の理論値を示す。
元素分析:C 38.58、H 4.47、N 14.17
計算値:C 38.73、H 4.47、N 14.56
【0050】
[実施例3]argIPQ(原料:PQQフリー)
PQQジナトリウム(三菱瓦斯化学社製商品名「BioPQQ」)と塩酸との反応によりPQQフリー体を得た。
【0051】
得られたPQQフリー体1gと25%水酸化ナトリウム水溶液0.8gとアルギニン1gと水25mLとを混合し、30分以上室温で攪拌し、混合物を得た。この混合物を70℃に加熱して、3日間反応させた。反応後、液中に黄色い固体が析出したことを確認した。その後、室温に冷やした、濾過して固体を得た。その固体をエタノール10mLで洗い、室温で12時間減圧乾燥し、黄色い結晶0.69gを得た。
【0052】
得られた結晶は、含水物であり、元素分析結果による結果からargIPQジナトリウム三水和物であることを確認した。下記に元素分析の結果と、argIPQジナトリウム三水和物の理論値を示す。
【0053】
得られた結晶の液体クロマトグラフィーを測定すると、実施例1における液体クロマトグラフィーの結果と一致した。純度99%であった。
元素分析:C 38.50、H 4.35、N 14.03
計算値:C 38.73、H 4.47、N 14.56
【0054】
[比較例1]ナトリウムを含まない物質の場合
実施例1で得られたargIPQジナトリウム三水和物0.30gを水200mLと混合し、濃塩酸1gを加え、室温で一晩攪拌し、溶液を得た。濃塩酸を加えた後のpH、1.5であった。その後、この溶液を濾過し、エタノールで洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を1日間減圧乾燥し、オレンジ色の固体0.23gを得た。
【0055】
得られた固体について、ナトリウム(Na)電極を使用して固体に含まれるナトリウム量と、原料であるargIPQジナトリウム三水和物に含まれるナトリウム量とを測定した結果、その固体に含まれるナトリウム量は、原料のナトリウム量の1/70であった。
【0056】
(溶解度)
実施例1で得られたargIPQジナトリウム三水和物(以下、「実施例1のサンプル」ともいう。)、及び比較例1で得られたオレンジ色の固体のサンプル(以下、「比較例1のサンプル」ともいう。)について、それぞれ約20mgを水1mLと混合し、5分超音波で処理した。下記の温度(23℃又は50℃)で1時間放置し、その後に遠心分離し、0.5μmのフィルターでろ過し、水中に溶けているサンプルの濃度を吸収波長260nmにおける吸光度より求めた。下記にその溶解度を示す。また、水1mLをエタノール1mLに替え、温度(23℃又は50℃)を下記の温度(23℃)に変更した以外は上記と同様にして求めた溶解度を示す。
・実施例1のサンプル
23℃:37g/L(水)
50℃:47g/L(水)
23℃:0.4g/L(エタノール)
・比較例1のサンプル
23℃:0.7g/L(水)
50℃:1.1g/L(水)
23℃:7.1g/L(エタノール)
【0057】
水への溶解度は、実施例1のサンプルがアルカリ金属を含まない比較例1のサンプルと比較して高いことが少なくとも確認された。また、エタノールへの溶解度は、予想外にも、実施例1のサンプルよりもアルカリ金属を含まない比較例1のサンプルの方が高いことが確認された。
【0058】
(細胞活性試験)
ヒト子宮がん細胞(HeLa細胞)を、5%CO
2濃度、37℃のインキュベーターで培養した。その後、ヒト子宮がん細胞を96ウェルに1000個/ウェルなるように撒き、1晩培養した。次に、実施例1のサンプルを1g/Lになるようにリン酸バッファーに懸濁したものを使用して15.6mg/mLになるように加えた。その2日後に、同仁化学社製商品名「cell counting kit 8」を使用して、ヒト子宮がん細胞の細胞数を測定した。
実施例1のサンプルを添加せずに、1晩培養後にその2日間後のヒト子宮がん細胞の細胞数を100とすると、実施例1のサンプル15.6mg/Lを用いたときの細胞数は112であった。
【0059】
ここで検証した細胞増殖を促進する効果は、実施例のサンプルを化粧品の成分として用いた場合には、皮膚の細胞を増やし、皮膚の状態を改善する効果として機能することが期待できる。また、実施例のサンプルを医薬品、又は食品の成分として用いた場合には、生物(特にヒト)に投与してその体内で、損傷している臓器の細胞活性や機能が低下している臓器を改善する効果として機能することが期待できる。
【0060】
実施例1のサンプルは、細胞増殖を進める働きがあることが少なくとも確認された。