特許第6974819号(P6974819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974819漆喰、漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974819
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】漆喰、漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/12 20060101AFI20211118BHJP
   C04B 22/00 20060101ALI20211118BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20211118BHJP
   C04B 18/24 20060101ALI20211118BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C04B28/12
   C04B22/00
   C04B40/02
   C04B18/24 Z
   B28B11/24
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-35767(P2017-35767)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-140894(P2018-140894A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】515194007
【氏名又は名称】株式会社瀬戸漆喰本舗
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】森村 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4843733(JP,B1)
【文献】 特開2013−087049(JP,A)
【文献】 特開2009−067665(JP,A)
【文献】 特開2013−234562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰と細骨材と混練水とを主成分とする漆喰であり、
前記石灰が生石灰及び/又は消石灰であり、
前記細骨材が砂及び繊維状に粉砕された竹チップであり、
前記竹チップの前記石灰に対する重量割合が40〜80%、前記竹チップの前記砂に対する重量割合が10〜30%であり、
前記混練水が高Caイオン含有水溶液であり、
前記高Caイオン含有水溶液に含まれるCaイオン濃度が2〜20g/Lであることを特徴とする漆喰。
【請求項2】
前記竹チップの長さが3〜15mmあることを特徴とする請求項1に記載の漆喰。
【請求項3】
前記漆喰が40×40×160mmの角柱状の型枠に流し込まれ24時間経過後に脱型されたときの体積をV、脱型後、1〜8日炭酸ガス養生を行い、その後さらに気中養生を行い、合計で41日間養生され得られる前記漆喰の硬化体の体積をVとしたとき、(V−V)/Vが、0〜+0.6%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の漆喰。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の漆喰を硬化させてなる漆喰パネル。
【請求項5】
木ずりを下地として請求項1から3のいずれか1項に記載の漆喰を硬化させてなる漆喰パネル。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の漆喰パネルにおいて、表面仕上げが施されていることを特徴とする化粧板。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載の漆喰パネル又は請求項6に記載の化粧板の製造方法であって、
養生工程として気中養生工程と炭酸ガス養生工程と、
を含むことを特徴とする漆喰パネル又は化粧板の製造方法。
【請求項8】
前記気中養生工程に先立ち前記炭酸ガス養生工程を実施することを特徴とする請求項7に記載の漆喰パネル又は化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で靱性に優れる漆喰、その漆喰を用いた漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漆喰は、全て自然素材で製造されるため住環境に非常に優しく、防火性能・耐震性能・防音性能・住環境性能に優れた効果があることは過去の実験で確認されており、21世紀にふさわしい建築材料といえる。
【0003】
従来の一般的な漆喰は、石灰に麻、藁等からなるスサ、草本や海藻から得る接着剤、砂、水などが加えられ、これらが混練して作られる、二酸化炭素を吸収しながら硬化する気硬性材料である。漆喰の施工は、左官が塗布して仕上げる湿式工法であるため塗布してから乾燥するまでに時間がかかる。また漆喰は、高い強度・硬度を発揮するまでに時間がかかることが課題とされている。
【0004】
これらの課題を解決すべく本発明者は、強度発現性に優れ、早期に所定の強度・硬度を発揮させることができる漆喰材料を開発している(例えば特許文献1参照)。また従来の漆喰に対して、調湿機能やホルムアルデヒドの吸着分解機能など漆喰の本来の特性に着目した新たな製品の開発などを通じ、漆喰の使用範囲・用途を拡大するための試みがなされている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4843733号公報
【特許文献2】特開2007−284294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が開発した漆喰材料を使用することで早期に所定の強度・硬度を発揮させるという課題は解決できるが、漆喰の施工等に関する課題は残ったままである。漆喰を石膏ボードのようにパネル化することができれば、施工等に関する問題を解決することができ、さらに用途も広がることが期待される。
【0007】
漆喰パネルは、漆喰を板状にしこれを硬化させることで製造することができるが、壁材等として使用するには剪断、曲げに対する耐性が必要である。また従来の漆喰は密度が大きいため、これを単にパネル化しただけでは重く運搬、取扱い難い。
【0008】
本発明の目的は、軽量で高い強度及び靱性を有する漆喰パネルを得ることのできる漆喰、軽量で高い強度及び靱性を有する漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、石灰と細骨材と混練水とを主成分とする漆喰であり、前記石灰が生石灰及び/又は消石灰であり、前記細骨材が砂及び繊維状に粉砕された竹チップであり、前記竹チップの前記石灰に対する重量割合が40〜80%、前記竹チップの前記砂に対する重量割合が10〜30%であり、前記混練水が高Caイオン含有水溶液であり、前記高Caイオン含有水溶液に含まれるCaイオン濃度が2〜20g/Lであることを特徴とする漆喰である。
【0010】
本発明の漆喰において、前記竹チップの長さが3〜15mmあることを特徴とする。
【0011】
本発明の漆喰において、前記漆喰が40×40×160mmの角柱状の型枠に流し込まれ24時間経過後に脱型されたときの体積をV、脱型後、1〜8日炭酸ガス養生を行い、その後さらに気中養生を行い、合計で41日間養生され得られる前記漆喰の硬化体の体積をVとしたとき、(V−V)/Vが、0〜+0.6%であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記漆喰を硬化させてなる漆喰パネルである。
【0013】
また本発明は、木ずりを下地として前記漆喰を硬化させてなる漆喰パネルである。
【0014】
また本発明は、前記漆喰パネルにおいて、表面仕上げが施されていることを特徴とする化粧板である。
【0015】
また本発明は、前記漆喰パネル又は前記化粧板の製造方法であって、養生工程として気中養生工程と炭酸ガス養生工程と、を含むことを特徴とする漆喰パネル又は化粧板の製造方法である。
【0016】
また本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造方法において、前記気中養生工程に先立ち前記炭酸ガス養生工程を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽量で高い強度及び靱性を有する漆喰パネルを得ることのできる漆喰、軽量で高い強度及び靱性を有する漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造手順を示す図である。
図2】本発明の実施例に記載の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の体積増減率測定結果である。
図3】本発明の実施例に記載の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の密度測定結果である。
図4】本発明の実施例に記載の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度測定結果である。
図5】本発明の実施例に記載の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の圧縮強度測定結果である。
図6】本発明の実施例に記載の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の中性化進行状態を示す図である。
図7】本発明の実施例に記載の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の養生時のリバウンド量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態、実施例において各種漆喰を次のように定義する。従来の漆喰と同様に、石灰、山砂等を水を用いて混練してなるものを砂漆喰組成物、砂漆喰組成物を製造するに用いる材料を砂漆喰材料という。よって砂漆喰材料には混練水が含まれ、砂漆喰材料を混練したものが砂漆喰組成物となる。また砂漆喰組成物と砂漆喰材料とを合わせて砂漆喰、さらに砂漆喰組成物を養生し硬化させてなるものを砂漆喰硬化体と言う。
【0020】
上記砂漆喰等と同じ要領で、水に代え混練水に高Caイオンを含有する水溶液(高Caイオン含有水溶液)を用いるものを高Ca砂漆喰組成物、高Ca砂漆喰材料、高Ca砂漆喰、高Ca砂漆喰硬化体と言う。
【0021】
さらに砂漆喰に竹チップを含有するものを、竹チップ砂漆喰組成物、竹チップ砂漆喰材料、竹チップ砂漆喰、竹チップ砂漆喰硬化体、さらに高Ca砂漆喰に竹チップを含有するものを、竹チップ高Ca砂漆喰組成物、竹チップ高Ca砂漆喰材料、竹チップ高Ca砂漆喰、竹チップ高Ca砂漆喰硬化体と言う。
【0022】
本発明の第1実施形態の漆喰は、石灰と細骨材と混練水とを主成分とする漆喰であり、石灰が生石灰及び/又は消石灰であり、細骨材が砂及び繊維状に粉砕された竹チップであり、混練水が高Caイオン含有水溶液である。上記定義に従えば第1実施形態の漆喰は、竹チップ高Ca砂漆喰組成物、及び竹チップ高Ca砂漆喰材料を含む竹チップ高Ca砂漆喰であり、砂漆喰に竹チップを添加し、混練水に高Caイオン含有水溶液を使用した漆喰である。
【0023】
また本実施形態の漆喰は、竹チップの添加量が特定され、さらに高Caイオン含有水溶液に含まれるCaイオン濃度が特定されている。
【0024】
本実施形態の漆喰は、上記成分の他、漆喰において一般に使用される麻の繊維や藁の繊維(すさ)、草本や海藻から得る接着剤又は合成樹脂からなる接着剤等が含まれていてもよいが、その場合でも石灰と細骨材と混練水とを主成分とする。本実施形態の漆喰は、生石灰及び/又は消石灰と、砂と、竹チップと、高Caイオン含有水溶液のみで構成することができる。
【0025】
本実施形態の漆喰において、石灰は、生石灰又は消石灰又は生石灰と消石灰との混合物を使用することができる。生石灰又は消石灰の素材として、カキ殻やホタテ貝などの貝殻を焼成したものを使用することもできる。
【0026】
細骨材の1つである砂は、特に限定されるものではなく、従来から砂漆喰に一般的に使用される山砂、川砂や石灰製砂などを使用することができる。
【0027】
竹チップは、竹を粉砕機等で繊維状に粉砕し得られたものである。竹チップの原料である竹の種類は特に限定されるものではない。竹を粉砕する粉砕機等も特に限定されるものではないが、竹が十分に解砕され細い繊維状物が得られるものが好ましい。竹を粉砕すると繊維状物の他に塊状物、粉状物もいっしょに排出されるが、塊状物及び粉状物は、可能な限り少ない方がよい。適宜、粉砕物を篩、スクリーン等に通じ、塊状物及び/又は粉状物を取り除き、または分級し所定の大きさの繊維状物のみを得るのが好ましい。竹チップの長さは、3〜15mmのものが好ましく、3〜8mmのものがより好ましく、3〜6mmのものがさらにより好ましい。竹チップの太さは、1mm以下のものが好ましい。
【0028】
本実施形態の漆喰において、竹チップは石灰に対して重量比で40〜80%、砂に対して重量比で10〜30%とする。これによりパネル化したとき軽量で高い強度及び靱性を有する漆喰パネルを得ることができる。またこの漆喰パネルは、適度な密度と強度とを有するバランスのよいパネルとなる。
【0029】
高Caイオン含有水溶液とは高濃度のCaイオンを含む液体を言う。公開されているデータ(例えば、http://www.takenet-eco.co.jp/pages/jitsurei/sokai_senjo.html、http://www.questions.gr.jp/chem/odoroki1.htm)によると、生石灰(CaO)や消石灰(Ca(OH))は、重量百分率濃度で純水に0.2%程度溶解するとされる。本実施形態の漆喰においては、CaOやCa(OH)が0.2%よりもさらに多く溶解したものを使用する。
【0030】
このため、例えば、先ずCaOを溶解させやすい酢酸水溶液などに溶解させた原液を製造する。そしてこの原液、又はこの原液を水で希釈した水溶液を製造し、これらを竹チップを含む石灰等に加えて混練を行う。なお、高Caイオン含有水溶液で使用する水、これを希釈する水は特に限定されず、上水、イオン水又は純水などいずれであってもよい。
【0031】
高Caイオン含有水溶液は、例えば、10%酢酸水溶液を用いると重量百分率濃度でCaOを常温で、Caベースで3.2%(32g/L)程度溶解させることができる。CaOやCa(OH)の溶解が困難である場合は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を添加することができる。また、酢酸水溶液以外にクエン酸水溶液、ギ酸水溶液などの酸性水溶液を用いて、CaO及び/又はCa(OH)を溶解させてもよい。但し、溶解能力等を考えれば酢酸水溶液が好ましい。また、使用に際し、高Caイオン含有水溶液のpHを調整することもできる。
【0032】
高Caイオン含有水溶液の製造の際に使用するCaO及び/又はCa(OH)は、特定のCaO及び/又はCa(OH)に限定されるものではなく、後述の実施例で示すように900〜1200℃で焼成したカキ殻粉末を使用することができる。カキ殻に代え、他の貝殻を焼成し使用することもできる。
【0033】
本実施形態の漆喰において、高Caイオン含有水溶液のCaイオンの量は、Caイオンが約2〜20g/Lのものを使用することができ、中でもCaイオン濃度が5〜20g/Lの高Caイオン含有水溶液を好適に使用することができる。
【0034】
本実施形態の漆喰は、硬化体にした際の体積増減率が小さい漆喰であり、竹チップ含有量が多いほど硬化体にする際の体積変化が小さい。特に後述の実施例に示すように竹チップ含有率80%(BTR80%)の漆喰(竹チップ高Ca砂漆喰)を型枠(40×40×160mmの角柱状)に流し込み24時間経過後に脱型し、養生工程において先に炭酸ガス養生しその後気中養生する、計41日間養生し得られる漆喰硬化体(竹チップ高Ca砂漆喰硬化体)の場合、体積増減率は、約0〜+0.6%であり、養生中に体積が殆ど変化しないか、また僅かに膨張する程度であった。
【0035】
本実施形態の漆喰を硬化させてなる竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の密度は、砂漆喰硬化体の密度と比較するとかなり小さい。具体的には後述の実施例に示すように漆喰(竹チップ高Ca砂漆喰)を型枠(40×40×160mmの角柱状)に流し込み24時間経過後に脱型し、養生工程において先に炭酸ガス養生しその後気中養生する、計41日間養生し得られる漆喰硬化体(竹チップ高Ca砂漆喰硬化体)の密度ρを、砂漆喰硬化体の密度ρと比較すると、竹チップ含有率40%の漆喰硬化体で密度比ρ/ρ≒0.81、竹チップ含有率80%の漆喰硬化体で密度比ρ/ρ≒0.75である。また竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の密度は、竹チップ含有量に比例して直線的に低下する。
【0036】
また本実施形態の漆喰を硬化させてなる漆喰硬化体の強度は、砂漆喰硬化体の強度と比較するとかなり大きい。具体的には後述の実施例に示すように本実施形態の漆喰を型枠(40×40×160mmの角柱状)に流し込み24時間経過後に脱型し、養生工程において先に炭酸ガス養生しその後気中養生する、計41日間養生し得られる漆喰硬化体の曲げ強度σを、砂漆喰硬化体の曲げ強度σB0と比較すると、強度比はσ/σB0>6.0以上であった。
【0037】
同様に本実施形態の漆喰を硬化させてなる漆喰硬化体の圧縮強度σを、砂漆喰硬化体の圧縮強度σC0と比較すると、強度比はσ/σC0>5.5以上であった。
【0038】
以上のように本実施形態の漆喰は、硬化体にした際の体積増減率が小さいため、割れ、隙間等が発生し難くパネル用の漆喰として適している。また従来の砂漆喰と比較して20%程度軽い一方で5.5倍以上の強度を有する漆喰硬化体を得ることができ、パネル化を進める素材として非常に有望であるといえる。軽量性と強度とのバランスもよく、また靱性に優れ、現在市販されている漆喰に見られない特性を備える素材といえる。
【0039】
次に、本実施形態の漆喰(竹チップ高Ca砂漆喰)を用いた漆喰パネル(ボード)又は化粧板について説明する。本実施形態の漆喰(漆喰組成物)を硬化させてなる漆喰パネル又は化粧板は、軽量でかつ強度及び靱性に優れるので壁材などの建材として好適に使用することができる。竹には、殺菌作用、減菌作用があることが知られており、この点においても当該漆喰パネル又は化粧板は、好ましい建材といえる。
【0040】
漆喰パネルの大きさは、特に限定されるものではないが、厚さを9mm、又は12mm、幅×長さを910mm×2400mm、910mm×1820mm、910mm×910mmとすれば使い勝手がよい。
【0041】
化粧板は、表面がきめ細かい仕上げの漆喰ボードであり、表面を特に細かく仕上げていない一般的な漆喰パネルと異なり、表面への仕上げ材の塗布が不要である。このような化粧板の寸法は特に限定されるものではないが、厚さを9mm、12mm又は15mm、幅×長さを300mm×600mm、400mm×800mmとすれば使い勝手がよい。
【0042】
漆喰パネル又は化粧板は、下地材を用いることなく漆喰を硬化させ漆喰パネル又は化粧板としてもよく、小舞又は木摺りを下地材として、その上に漆喰を塗布し、漆喰を硬化させ漆喰パネル又は化粧板としてもよい。
【0043】
次に、漆喰の硬化体の製作手順を図1に示す。なお本方法は、漆喰パネル又は化粧板のような板材に限定されることなく、幅広く漆喰の硬化体の製造に利用することができる。
【0044】
第1ステップとして、所定量の石灰、砂、竹チップ及び高Caイオン含有水溶液を混練し、竹チップ高Ca砂漆喰(組成物)を製造する。次に、竹チップ高Ca砂漆喰を型に充填し(ステップS2)、24時間経過後に脱型する(ステップS3)。続いて脱型した漆喰を炭酸ガス養生する(ステップS4)。ここで漆喰中の水酸化カルシウム、Caイオンと炭酸ガスとで炭酸化反応が起こる。
【0045】
炭酸ガス養生時間は、漆喰パネル又は化粧板の大きさ等にもよるが、後述の実施例と併せて考えれば、2〜3日程度行えばよい。炭酸ガス養生終了後は、気中養生を行う(ステップS5)。
【0046】
図1に示す製作手順では、脱型後、直ちに炭酸ガス養生を行うが、炭酸ガス養生に先立ち気中養生を行ってもよい。炭酸ガス養生に先立ち行う気中養生は、主として漆喰の乾燥を目的とするものであるから、気中養生期間は大気温度、湿度、漆喰パネル又は化粧板の大きさ等により適宜決定すればよい。漆喰パネル又は化粧板の大きさ等にもよるが、後述の実施例と併せて考えれば、気中養生期間は、3〜7日程度行えばよい。
【0047】
上記のように本実施形態の漆喰を用いて硬化体を製作する際には、養生工程に炭酸ガス養生工程と気中養生工程とを含めるのがよく、特に図1に示す脱型後、直ちに炭酸ガス養生を行い、その後気中養生を行う方法は、漆喰パネル又は化粧板の製造に適している。漆喰パネル又は化粧板の物性安定性、製造コストを考えれば、第1養生工程として2〜3日程度の炭酸ガス養生を行い、その後、気中養生することが好ましい。これにより工場等で容易に漆喰パネル又は化粧板を製造し出荷することができる。
【0048】
以上のとおり、好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【実施例】
【0049】
実施例:竹チップ高Ca砂漆喰組成物
作製要領を示す。表1に示す生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、石灰砂300重量部と、長さ3mm以下の繊維状の竹チップ40重量部と、下記要領で作製した高Caイオン含有水溶液110重量部とを混合し、竹チップ高Ca砂漆喰組成物を得た。竹チップ含有率(BTR)は40%、水石灰比は110%である。竹チップは、目開き3mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度は、10g/Lとした。同じ要領で竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca砂漆喰組成物を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
高Caイオン含有水溶液は、以下の要領で作製した。酢酸(和光純薬工業株式会社製一級、コードNo.014-00266)100gを900gの純水に加えた酢酸水溶液(10重量%濃度)に、カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末30gを数回に分けて加え完全に溶解させた。この溶液を半日放置した後に上澄み液を採取し、これを高Caイオン含有水溶液(原液)とした。上記原液に水を加え、高Caイオン含有水溶液を得た。カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末の成分分析結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
さらに長さ6mm以下の繊維状の竹チップを用い、竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca砂漆喰組成物を製作した。この漆喰組成物は、後述の養生パターン2で養生し、試験体(竹チップ高Ca砂漆喰硬化体)を得た。
【0054】
比較例:高Ca砂漆喰
比較例として、竹チップを含まない高Ca砂漆喰組成物を以下の要領で作製した。表1に示す生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、石灰砂300重量部と、高Caイオン含有水溶液110重量部とを混合し高Ca砂漆喰組成物を得た。水石灰比は110%である。高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度は、10g/Lとした。
【0055】
竹チップ高Ca砂漆喰の硬化体
竹チップ高Ca砂漆喰の物性等を測定する試験体は、以下の要領で作製した竹チップ高Ca砂漆喰の硬化体を使用した。上記漆喰組成物(以下、漆喰と記す)を3連型枠に半分程度まで流し込み、型枠の隅々まで漆喰が行き渡るように突き棒で万遍なく突いた後、型枠一杯まで漆喰を流し込み、突き棒の底が前回の1/3の深さとなるまで万遍なく突いた。さらに型枠の表面が隠れるまで、漆喰を流し込み、4時間放置した。その後、型枠の上部を平行棒でカットし、24時間気中養生後に型枠から取り出し、養生ケースに入れ以下の要領で養生し試験体を得た。試験体は、40×40×160mmの角柱状である。養生中は、毎日、試験体の重量及び試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定した。
【0056】
養生パターン1
脱型後の養生は、以下の要領で行った。脱型後、第1養生工程として気中養生室で0〜8日間気中養生した。その後、第2養生工程として炭酸ガス養生室で8日間養生した。さらに第3養生工程として破壊試験(強度試験)前日まで気中養生した。これを養生パターン1とする。破壊試験は、脱型後39日経過後に行った。
【0057】
養生パターン2
脱型後の養生は、以下の要領で行った。脱型後、第1養生工程として炭酸ガス養生室で0〜8日間養生した。さらに第2養生工程として破壊試験前日まで気中養生した。これを養生パターン2とする。破壊試験は、脱型後42日経過後に行った。
【0058】
図2及び図3に、養生パターン1及び養生パターン2で得られた試験体の破壊試験前日の体積増減率、密度の測定結果を示した。図2及び図3の横軸の第1養生日数は、第1養生工程の日数を表し、符号の説明は、第1養生工程が気中養生か炭酸ガス養生か、さらに竹チップ含有量を示す。例えば、図2中の黒丸の符号説明である「気中養生BTR40」は、第1養生工程が気中養生であり、つまり養生パターン1で養生された試験体であり、竹チップ含有率が40%であることを示す。他の図においても同じである。
【0059】
体積増減率(体積変化率)は、破壊試験前日の試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定し、これらをもとに試験体の体積Vを求め、脱型時の体積Vを基準として、式(1)を用いて求めた。
体積増減率(%)=(破壊試験前日の体積−脱型時の体積)/脱型時の体積
×100 ・・・(1)
【0060】
密度は、破壊試験前日の試験体の重量Wを測定し、上記要領で算出した体積Vで重量を除算し求めた。
【0061】
体積増減率は、図2に示すように養生パターンによらず竹チップ含有率が大きい程小さかった。第1養生日数との関係では、第1養生日数1〜8日間での体積増減率の変化量は、最大で2.5%程度であった。養生パターンとの関係では、第1養生工程を気中養生とした養生パターン1では、第1養生日数に比例して体積収縮が増加する傾向であった。一方、第1養生工程を炭酸ガス養生とした養生パターン2では、第1養生の日数によらず体積増減率はほぼ同じか、僅かに増加(膨張)する傾向であった。
【0062】
竹チップ含有率80%の試験体の場合、脱型後に炭酸ガス養生を行う養生パターン2で養生すると、第1養生日数1〜8日において体積増減率の変化量は非常に小さく、約0〜+0.6%と僅かに膨張した程度であった。
【0063】
密度は、図3に示すように養生パターンによらず竹チップ含有率が大きい程小さく、竹チップ含有率80%の場合、密度は約1.42〜1.51g/cm、竹チップ含有率40%の場合、密度は約1.55〜1.64g/cmであった。
【0064】
本試験体(竹チップ高Ca砂漆喰硬化体)の密度を砂漆喰硬化体の密度と比較した場合、砂漆喰硬化体の密度は1.9〜2.0g/cmであるから、竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体は、砂漆喰硬化体に比較して約0.5g/cm、割合にして約25%小さい。同様に竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体は、砂漆喰硬化体に比較して約0.35g/cm、割合にして約19%小さい。
【0065】
本試験体の密度を養生パターンからみると、脱型後直ちに気中養生を行いその後炭酸ガス養生及び気中養生を行う養生パターン1で養生を行うと、密度は、竹チップ含有量によらず第1養生日数に比例して増加する傾向であった。一方、脱型後直ちに炭酸ガス養生を行う養生パターン2で養生を行うと、竹チップ含有量によらず密度は第1養生日数が2日で安定し、以降ほぼ一定となった。
【0066】
図4及び図5に、養生パターン1及び養生パターン2で得られた試験体の強度試験結果を示した。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。
【0067】
曲げ強度は、図4に示すように第1養生日数1〜8日において、竹チップ含有率40%で約0.95〜1.9N/mm、竹チップ含有率80%で約1.25〜1.87N/mmであった。砂漆喰を40日間程度気中養生し得られる試験体(40×40×160mmの角柱状)の曲げ強度は、約0.2N/mmであるから竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、砂漆喰硬化体の曲げ強度の約5〜9.5倍となる。
【0068】
竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、図4に示すように養生パターンによらずほぼ同じ値となった。竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、第1養生日数が4〜7日において養生パターンによらずほぼ同じ値となった。
【0069】
圧縮強度は、図5に示すように第1養生日数1〜8日において、竹チップ含有率40%で約2.3〜6.4N/mm、竹チップ含有率80%で約3.9〜7.9N/mmであった。第1養生日数2〜8日の場合においては、竹チップ含有率40%で約3.9〜6.4N/mmであった。砂漆喰を40日間程度気中養生し得られる試験体(40×40×160mmの角柱状)の曲げ強度は約0.7N/mmであるから、第1養生日数2〜8日の場合の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、砂漆喰硬化体の曲げ強度の5.5〜11倍となる。
【0070】
圧縮強度を養生パターンとの関係で見ると、第1養生パターンで養生した場合、竹チップ含有率によらず第1養生日数1〜8日の範囲で第1養生日数に比して増加した。一方、第2養生パターンで養生した場合、竹チップ含有率によらず圧縮強度は第1養生日数が2日までは増加したが、2日以降はほぼ同じ値となった。特に竹チップ含有率80%の試験体の場合、脱型後に炭酸ガス養生を行う養生パターン2で養生すると、早期に圧縮強度が安定した。
【0071】
図6(a)は、養生パターン1により得られた竹チップ高Ca砂漆喰硬化体(試験体)の中性化進行状態を示す図であり、強度試験による各試験体の曲げ破断面にフェノールフタレイン液を吹きかけて得た図である。同じく図6(b)は、養生パターン2により得られた竹チップ高Ca砂漆喰硬化体(試験体)の中性化進行状態を示す図である。白色の部分が中性化部分であり炭酸カルシウムである。赤色の部分はまだ中性化されていない部分であり、水酸化カルシウムである。
【0072】
図6(a)及び図6(b)には、第1養生日数が0〜8日の試験体が含まれる。その試験体の並びは、各図とも最下段左から最上段右に向い、第1養生日数が増えている。具体的には、最下段の一番左とその右隣の試験体は、第1養生日数が0日、最下段の一番右とその左隣の試験体は、第1養生日数が2日、中段の一番左とその右隣の試験体は、第1養生日数が3日、中段の一番右とその左隣の試験体は、第1養生日数が5日、最上段の一番右とその左隣の試験体は、第1養生日数が8日である。
【0073】
図6から分かるように竹チップ含有率と中性化進行状態との関係では、養生パターン1及び養生パターン2とも竹チップ含有率が高い方が中性化が進行していることが分かる。第1養生日数と中性化進行状態との関係では、養生パターン1及び養生パターン2とも第1養生日数が増加するに従い中性化が進行している。特に養生パターン2で得た竹チップ含有率80%の試験体は、第1養生日数が2日で中心部まで中性化が進行している。
【0074】
図7は、第1養生日数とリバウンド量との関係を示す図である。リバウンド量は、第1養生工程から第2養生工程に切り替ったときの重量の変化量であり。具体的には、第2養生工程第1日目の試験体の重量と第1養生工程最終日の試験体の重量との差であり、例えば、符号が黒丸で気中養生BTR40の第1養生日数2日のデータは、第1養生工程が気中養生でその養生日数が2日、第2養生工程が炭酸ガス養生でその1日目に重量測定すると炭酸ガス養生1日間で重量が10g増加したことを示す。
【0075】
リバウンド量は、第1養生工程を気中養生とした養生パターン1においては、第1養生日数2日以降、第1養生工程を炭酸ガス養生とした養生パターン2において、第1養生日数0日以降、全てプラスとなった。
【0076】
養生パターン1で養生した場合、第1養生日数に比例してリバウンド量が増加した。このことから十分に乾燥した後に炭酸ガス養生を行うと、炭酸ガスの吸収、炭酸化反応が進行することが伺える。竹チップ含有率40%と竹チップ含有率80%とも同じ傾向を示したが、リバウンド量の値は、竹チップ含有率40%の方が大きい。
【0077】
養生パターン2で養生した場合、第1養生日数2日までは、第1養生日数に比例してリバウンド量が増加したが、第1養生日数2日以降はほぼ一定となった。竹チップ含有率40%と竹チップ含有率80%とも同じ傾向を示したが、リバウンド量の値は、竹チップ含有率80%の方が大きかった。
【0078】
養生パターンによるリバウンド量を比較すると、第1養生日数3日まで、リバウンド量は、養生パターン2が養生パターン1を上回るが、第1養生日数3日以降は、この関係が逆転した。図5及び図7から第1養生日数とリバウンド量との関係は、第1養生日数と圧縮強度との関係と同様の傾向を示すことが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7