【実施例】
【0049】
実施例:竹チップ高Ca砂漆喰組成物
作製要領を示す。表1に示す生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、石灰砂300重量部と、長さ3mm以下の繊維状の竹チップ40重量部と、下記要領で作製した高Caイオン含有水溶液110重量部とを混合し、竹チップ高Ca砂漆喰組成物を得た。竹チップ含有率(BTR)は40%、水石灰比は110%である。竹チップは、目開き3mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度は、10g/Lとした。同じ要領で竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca砂漆喰組成物を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
高Caイオン含有水溶液は、以下の要領で作製した。酢酸(和光純薬工業株式会社製一級、コードNo.014-00266)100gを900gの純水に加えた酢酸水溶液(10重量%濃度)に、カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末30gを数回に分けて加え完全に溶解させた。この溶液を半日放置した後に上澄み液を採取し、これを高Caイオン含有水溶液(原液)とした。上記原液に水を加え、高Caイオン含有水溶液を得た。カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末の成分分析結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
さらに長さ6mm以下の繊維状の竹チップを用い、竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca砂漆喰組成物を製作した。この漆喰組成物は、後述の養生パターン2で養生し、試験体(竹チップ高Ca砂漆喰硬化体)を得た。
【0054】
比較例:高Ca砂漆喰
比較例として、竹チップを含まない高Ca砂漆喰組成物を以下の要領で作製した。表1に示す生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、石灰砂300重量部と、高Caイオン含有水溶液110重量部とを混合し高Ca砂漆喰組成物を得た。水石灰比は110%である。高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度は、10g/Lとした。
【0055】
竹チップ高Ca砂漆喰の硬化体
竹チップ高Ca砂漆喰の物性等を測定する試験体は、以下の要領で作製した竹チップ高Ca砂漆喰の硬化体を使用した。上記漆喰組成物(以下、漆喰と記す)を3連型枠に半分程度まで流し込み、型枠の隅々まで漆喰が行き渡るように突き棒で万遍なく突いた後、型枠一杯まで漆喰を流し込み、突き棒の底が前回の1/3の深さとなるまで万遍なく突いた。さらに型枠の表面が隠れるまで、漆喰を流し込み、4時間放置した。その後、型枠の上部を平行棒でカットし、24時間気中養生後に型枠から取り出し、養生ケースに入れ以下の要領で養生し試験体を得た。試験体は、40×40×160mmの角柱状である。養生中は、毎日、試験体の重量及び試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定した。
【0056】
養生パターン1
脱型後の養生は、以下の要領で行った。脱型後、第1養生工程として気中養生室で0〜8日間気中養生した。その後、第2養生工程として炭酸ガス養生室で8日間養生した。さらに第3養生工程として破壊試験(強度試験)前日まで気中養生した。これを養生パターン1とする。破壊試験は、脱型後39日経過後に行った。
【0057】
養生パターン2
脱型後の養生は、以下の要領で行った。脱型後、第1養生工程として炭酸ガス養生室で0〜8日間養生した。さらに第2養生工程として破壊試験前日まで気中養生した。これを養生パターン2とする。破壊試験は、脱型後42日経過後に行った。
【0058】
図2及び
図3に、養生パターン1及び養生パターン2で得られた試験体の破壊試験前日の体積増減率、密度の測定結果を示した。
図2及び
図3の横軸の第1養生日数は、第1養生工程の日数を表し、符号の説明は、第1養生工程が気中養生か炭酸ガス養生か、さらに竹チップ含有量を示す。例えば、
図2中の黒丸の符号説明である「気中養生BTR40」は、第1養生工程が気中養生であり、つまり養生パターン1で養生された試験体であり、竹チップ含有率が40%であることを示す。他の図においても同じである。
【0059】
体積増減率(体積変化率)は、破壊試験前日の試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定し、これらをもとに試験体の体積Vを求め、脱型時の体積V
0を基準として、式(1)を用いて求めた。
体積増減率(%)=(破壊試験前日の体積−脱型時の体積)/脱型時の体積
×100 ・・・(1)
【0060】
密度は、破壊試験前日の試験体の重量Wを測定し、上記要領で算出した体積Vで重量を除算し求めた。
【0061】
体積増減率は、
図2に示すように養生パターンによらず竹チップ含有率が大きい程小さかった。第1養生日数との関係では、第1養生日数1〜8日間での体積増減率の変化量は、最大で2.5%程度であった。養生パターンとの関係では、第1養生工程を気中養生とした養生パターン1では、第1養生日数に比例して体積収縮が増加する傾向であった。一方、第1養生工程を炭酸ガス養生とした養生パターン2では、第1養生の日数によらず体積増減率はほぼ同じか、僅かに増加(膨張)する傾向であった。
【0062】
竹チップ含有率80%の試験体の場合、脱型後に炭酸ガス養生を行う養生パターン2で養生すると、第1養生日数1〜8日において体積増減率の変化量は非常に小さく、約0〜+0.6%と僅かに膨張した程度であった。
【0063】
密度は、
図3に示すように養生パターンによらず竹チップ含有率が大きい程小さく、竹チップ含有率80%の場合、密度は約1.42〜1.51g/cm
3、竹チップ含有率40%の場合、密度は約1.55〜1.64g/cm
3であった。
【0064】
本試験体(竹チップ高Ca砂漆喰硬化体)の密度を砂漆喰硬化体の密度と比較した場合、砂漆喰硬化体の密度は1.9〜2.0g/cm
3であるから、竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体は、砂漆喰硬化体に比較して約0.5g/cm
3、割合にして約25%小さい。同様に竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体は、砂漆喰硬化体に比較して約0.35g/cm
3、割合にして約19%小さい。
【0065】
本試験体の密度を養生パターンからみると、脱型後直ちに気中養生を行いその後炭酸ガス養生及び気中養生を行う養生パターン1で養生を行うと、密度は、竹チップ含有量によらず第1養生日数に比例して増加する傾向であった。一方、脱型後直ちに炭酸ガス養生を行う養生パターン2で養生を行うと、竹チップ含有量によらず密度は第1養生日数が2日で安定し、以降ほぼ一定となった。
【0066】
図4及び
図5に、養生パターン1及び養生パターン2で得られた試験体の強度試験結果を示した。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。
【0067】
曲げ強度は、
図4に示すように第1養生日数1〜8日において、竹チップ含有率40%で約0.95〜1.9N/mm
2、竹チップ含有率80%で約1.25〜1.87N/mm
2であった。砂漆喰を40日間程度気中養生し得られる試験体(40×40×160mmの角柱状)の曲げ強度は、約0.2N/mm
2であるから竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、砂漆喰硬化体の曲げ強度の約5〜9.5倍となる。
【0068】
竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、
図4に示すように養生パターンによらずほぼ同じ値となった。竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、第1養生日数が4〜7日において養生パターンによらずほぼ同じ値となった。
【0069】
圧縮強度は、
図5に示すように第1養生日数1〜8日において、竹チップ含有率40%で約2.3〜6.4N/mm
2、竹チップ含有率80%で約3.9〜7.9N/mm
2であった。第1養生日数2〜8日の場合においては、竹チップ含有率40%で約3.9〜6.4N/mm
2であった。砂漆喰を40日間程度気中養生し得られる試験体(40×40×160mmの角柱状)の曲げ強度は約0.7N/mm
2であるから、第1養生日数2〜8日の場合の竹チップ高Ca砂漆喰硬化体の曲げ強度は、砂漆喰硬化体の曲げ強度の5.5〜11倍となる。
【0070】
圧縮強度を養生パターンとの関係で見ると、第1養生パターンで養生した場合、竹チップ含有率によらず第1養生日数1〜8日の範囲で第1養生日数に比して増加した。一方、第2養生パターンで養生した場合、竹チップ含有率によらず圧縮強度は第1養生日数が2日までは増加したが、2日以降はほぼ同じ値となった。特に竹チップ含有率80%の試験体の場合、脱型後に炭酸ガス養生を行う養生パターン2で養生すると、早期に圧縮強度が安定した。
【0071】
図6(a)は、養生パターン1により得られた竹チップ高Ca砂漆喰硬化体(試験体)の中性化進行状態を示す図であり、強度試験による各試験体の曲げ破断面にフェノールフタレイン液を吹きかけて得た図である。同じく
図6(b)は、養生パターン2により得られた竹チップ高Ca砂漆喰硬化体(試験体)の中性化進行状態を示す図である。白色の部分が中性化部分であり炭酸カルシウムである。赤色の部分はまだ中性化されていない部分であり、水酸化カルシウムである。
【0072】
図6(a)及び
図6(b)には、第1養生日数が0〜8日の試験体が含まれる。その試験体の並びは、各図とも最下段左から最上段右に向い、第1養生日数が増えている。具体的には、最下段の一番左とその右隣の試験体は、第1養生日数が0日、最下段の一番右とその左隣の試験体は、第1養生日数が2日、中段の一番左とその右隣の試験体は、第1養生日数が3日、中段の一番右とその左隣の試験体は、第1養生日数が5日、最上段の一番右とその左隣の試験体は、第1養生日数が8日である。
【0073】
図6から分かるように竹チップ含有率と中性化進行状態との関係では、養生パターン1及び養生パターン2とも竹チップ含有率が高い方が中性化が進行していることが分かる。第1養生日数と中性化進行状態との関係では、養生パターン1及び養生パターン2とも第1養生日数が増加するに従い中性化が進行している。特に養生パターン2で得た竹チップ含有率80%の試験体は、第1養生日数が2日で中心部まで中性化が進行している。
【0074】
図7は、第1養生日数とリバウンド量との関係を示す図である。リバウンド量は、第1養生工程から第2養生工程に切り替ったときの重量の変化量であり。具体的には、第2養生工程第1日目の試験体の重量と第1養生工程最終日の試験体の重量との差であり、例えば、符号が黒丸で気中養生BTR40の第1養生日数2日のデータは、第1養生工程が気中養生でその養生日数が2日、第2養生工程が炭酸ガス養生でその1日目に重量測定すると炭酸ガス養生1日間で重量が10g増加したことを示す。
【0075】
リバウンド量は、第1養生工程を気中養生とした養生パターン1においては、第1養生日数2日以降、第1養生工程を炭酸ガス養生とした養生パターン2において、第1養生日数0日以降、全てプラスとなった。
【0076】
養生パターン1で養生した場合、第1養生日数に比例してリバウンド量が増加した。このことから十分に乾燥した後に炭酸ガス養生を行うと、炭酸ガスの吸収、炭酸化反応が進行することが伺える。竹チップ含有率40%と竹チップ含有率80%とも同じ傾向を示したが、リバウンド量の値は、竹チップ含有率40%の方が大きい。
【0077】
養生パターン2で養生した場合、第1養生日数2日までは、第1養生日数に比例してリバウンド量が増加したが、第1養生日数2日以降はほぼ一定となった。竹チップ含有率40%と竹チップ含有率80%とも同じ傾向を示したが、リバウンド量の値は、竹チップ含有率80%の方が大きかった。
【0078】
養生パターンによるリバウンド量を比較すると、第1養生日数3日まで、リバウンド量は、養生パターン2が養生パターン1を上回るが、第1養生日数3日以降は、この関係が逆転した。
図5及び
図7から第1養生日数とリバウンド量との関係は、第1養生日数と圧縮強度との関係と同様の傾向を示すことが分かる。