【実施例】
【0035】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(調製例)
以下の接着成分及びイオン液体を用いて本発明のマイクロ波解体性接着組成物を調製した。なお、以下の各組成物ではイオン液体の濃度を20重量%とした。
【0037】
接着成分としては以下を使用した。
SGA:第二世代アクリル系接着剤(デンカ株式会社、ハードロックNS−700S20)
エポキシ接着剤:主剤としてエピコート828、硬化剤としてメチル−1,2,3,6,−テトラヒドロフタル酸無水物、及び、促進剤として1−メチルイミダゾールを100:87.5:1.5の重量比で混合したもの。
ポリビニルアルコール:水にPVA(日本合成化学社製ゴーセノールNH−18)を5重量%混合したもの。
ポリメタクリル酸メチル:THF溶液にPMMA(三菱レイヨン社製アクリペットVH)を5重量%混合したもの。
ポリスチレン:THF溶液にPS(旭化成工業社製スタイロン679)を10重量%混合したもの。
ポリビニルブチラール:THF溶液にPVB(積水化学工業エスレックBH−3)を5重量%混合したもの。
【0038】
イオン液体としては以下を使用した。
(a)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・チオシアネート
(b)トリブチルメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(c)トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・クロライド
(d)1−ブチル−1メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(e)1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(f)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスフェート
(g)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレート
(h)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・アイオダイド
(i)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ブロマイド
(j)1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・チオシアネート
【0039】
各接着組成物について粘度を評価し、その結果を表1及び2に示した。表1及び2では、評価した結果を以下の基準で分類した。
高高:100,000mPa・s以上
高:10,000〜100,000mPa・s
中:1,000〜10,000mPa・s
低:100〜1,000mPa・s
低低:100mPa・s以下
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
<結果>
表1及び2に記載の接着成分とイオン液体とを含有するマイクロ波解体性接着組成物は、上記のとおり、粘度が、高高〜低低まで分類することができ、用いる基材に応じて、適宜、本発明の解体性接着組成物を選択し使用することができる。
【0043】
(実施例1〜3及び比較例)
以下の実施例及び比較例では、イオン液体として、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・チオシアネート(Sigma−Aldlich社)を使用し、接着剤として、第二世代アクリル系接着剤:SGA(デンカ株式会社、ハードロックNS−700S20)を使用した。
【0044】
比較例では、接着剤にイオン液体を添加せず、そのまま、接着組成物として使用した。
【0045】
各実施例では、接着剤に対し、濃度が15重量%(実施例1)、16.7重量%(実施例2)、又は20重量%(実施例3:表1中のNo.1)になるような量でイオン液体を添加し、混合することで、各接着組成物を製造した。
【0046】
(剪断剥離試験)
接着基板としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社)を幅100mm,長さ35mmの大きさに切り出したものを使用した。接着領域を確定するために幅100mm×長さ15mmの穴を設けたスペーサーとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)を使用した。接着基板の平滑な表面上にスペーサーを配置して、スペーサーの穴から露出した基板表面に各実施例又は比較例の接着組成物を塗布した後、もう一枚のポリイミドフィルムを重ね合わせて接着し、一日間室温で接着組成物を硬化させた。得られた接着物から、接着領域が幅15mm×長さ15mmになるように長さ方向に切り出したものを、剪断剥離試験用の試験片とした。
【0047】
図1は、この試験片を示す斜視図である。
図1中、試験片10は、2枚の接着基板11と、両基板に挟まれた接着層12とから構成される。接着層の大きさは幅15mm×長さ15mmである。
【0048】
作製された各試験片について、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS−1kND)を用いて、室温で、引張速度を50mm/minとして、引張剪断強度を測定した。結果を
図2に示した。
【0049】
各実施例及び比較例で作製した試験片では、いずれも1.0MPa近傍の引張剪断強度を示した。このことから、接着剤にイオン液体を添加しても、接着組成物が示す接着強度は変化せず、ほぼ一定の値を示すことが明らかとなった。
【0050】
また、破断した各試験片の破断面を観察したところ、イオン液体を添加していない比較例1の試験片では、界面破壊が生じていることが観察された。一方、イオン液体を16.7重量%濃度で添加した実施例2の試験片でも、界面破壊が観察された。このことからも、イオン液体の添加が、接着組成物の接着力に影響を及ぼさないことが分かる。
【0051】
(マイクロ波応答剥離試験)
接着基板としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社)を幅100mm,長さ25mmの大きさに切り出したものを使用し、スペーサーとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)を使用した。接着基板の平滑な表面上に各実施例又は比較例の接着組成物を塗布した後、接着領域が幅100mm×長さ5mmとなるようにもう一枚のポリイミドフィルムに重ね合わせて接着し、一日間室温で接着組成物を硬化させた。得られた接着物から、接着領域が幅10mm×長さ5mmになるように切り出したものを、マイクロ波応答剥離試験用の試験片とした。なお、この試験片は、接着領域の大きさを上記のように変更した以外は、
図1の試験片とおおよそ同じものである。
【0052】
マイクロ波照射装置としては、出力が500Wの市販の家庭用電子レンジ(TWIN BIRD社製、DR−D259)を使用した。
【0053】
作製された試験片の上下に2箇所ずつ穴を空けた。上側の穴に通した糸で電子レンジ内に試験片を吊るし、下側の穴に通した糸を用いて500gの荷重を試験片に掛けた。その状態で、周波数2450MHz、出力500Wの条件で5分間、マイクロ波を試験片に照射し、解体に至るまでのマイクロ波照射時間(マイクロ波の照射開始から、接着部分が下にずれて、荷重を掛けた側の接着基板が落下するまでに要する時間)を測定した。結果を
図3に示した。
【0054】
イオン液体を15重量%濃度で添加した実施例1の試験片では、マイクロ波照射開始後150秒で解体が生じた。イオン液体を16.7重量%濃度で添加した実施例2の試験片では、マイクロ波照射開始後30秒で解体が生じた。イオン液体を20重量%濃度で添加した実施例3の試験片では、マイクロ波照射開始後20秒で解体が生じた。一方、イオン液体を添加していない比較例1の試験片では、解体は生じなかった。
【0055】
以上により、接着剤にイオン液体が添加された接着組成物では、マイクロ波の照射によって接着強度が低下し、接着物の解体が生じることが分かる。また、イオン液体の濃度が増加するに従い、マイクロ波照射による解体をより短時間で実現できることが分かる。
【0056】
(マイクロ波照射時の温度測定試験)
切り出した接着領域を25mm×5mmに変更した以外は上記と同様に作製した試験片を剥離して、接着面が表面に露出させた。露出した接着面に、蛍光式光ファイバー温度計(安立計器株式会社製、FL−2000)の温度検出部の先端を粘着テープで直接固定し、その状態で、電子レンジ内でマイクロ波(周波数2450MHz、出力500W)を30秒間照射し、そのときの温度の経時的変化をメモリハイコーダー(日置電気株式会社製、8807)で測定した。
【0057】
その結果、イオン液体を添加していない比較例1の試験片では、接着面の温度が室温から約30℃までわずかに上昇するのが確認された。一方、イオン液体を16.7重量%濃度で添加した実施例2の試験片では、室温から約45℃まで急激な温度上昇が確認された。この結果より、イオン液体が添加された接着組成物から形成された接着層では、マイクロ波照射により急激に温度が上昇することが分かり、このために、マイクロ波照射による解体が実現するものと推測される。
【0058】
(実施例4)
この実施例では、イオン液体として、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用し、接着剤として、汎用ポリマーであるポリスチレンを使用した。接着剤に対し、濃度が20重量%になる量のイオン液体を添加し、混合することで、接着組成物を製造した(表2中のNo.47)。この接着組成物を用いて、上記のマイクロ波応答剥離試験を行なったところ、マイクロ波照射開始後100秒で解体が生じた。
【0059】
(実施例5)
イオン液体の濃度を30重量%に変更した以外は実施例4と同様にして接着組成物を製造した。この接着組成物を用いて、上記のマイクロ波応答剥離試験を行なったところ、マイクロ波照射開始後90秒で解体が生じた。
【0060】
(実施例6)
この実施例では、イオン液体として、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用し、接着剤として、ポリビニルブチラールを使用し、接着基板としてスライドガラス(MICRO SLIDE GLASS、松波硝子工業株式会社)を使用した。接着剤に対し、濃度が20重量%になる量のイオン液体を添加し、混合することで、接着組成物を製造した(表2中のNo.50)。この接着組成物を用いて、上記のマイクロ波応答剥離試験を行なったところ、マイクロ波照射開始後161秒で解体が生じた。