(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1クランプボディ及び第2クランプボディの互いに相対する位置には、相互に接続及び分離自在の第1接続ポートと第2接続ポートとが設けられ、第1クランプボディに設けられた前記第1接続ポートは、前記実装ハンダ鏝の内部に形成されたガス流路を通じて該実装ハンダ鏝の先端部に開口するガス噴射口に連通し、前記第2クランプボディに設けられた第2接続ポートは不活性ガス源に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のハンダ付け装置。
ハンダ付けロボットのロボットアームに自動交換機構を介して交換可能に取り付けられた実装ハンダ鏝と、鏝置き台に格納された1つ以上の予備ハンダ鏝と、自動ハンダ付けのための制御プログラムが入力された制御装置とを有するハンダ付け装置において、前記実装ハンダ鏝を予備ハンダ鏝に自動交換するための方法であって、
ハンダ付け工程中に、前記実装ハンダの鏝先の摩耗量を測定し、測定した摩耗量の分だけハンダ付け部位に対する鏝先の位置を自動補正すると共に、補正量を累積し、累積した補正量が基準補正量に達したとき、前記鏝先の摩耗度が基準値に達したものと判断し、前記制御装置で前記自動交換機構を動作させることにより、前記実装ハンダ鏝をロボットアームから取り外すと共に、前記鏝置き台に格納されている予備ハンダ鏝を該ロボットアームに取り付ける、
ことを特徴とするハンダ鏝自動交換方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント配線基板に電子部品をハンダ付けする場合、特許文献1に記載されているような自動ハンダ付け装置(ハンダ付けロボット)が使用される。このハンダ付けロボットは、ロボットアームの先端にハンダ鏝を取り付け、このハンダ鏝の鏝先をハンダ付け部位に当接させた状態で、ハンダ供給ノズルから供給される線状ハンダを該鏝先により溶融し、溶融したハンダを前記ハンダ付け部位に供給してハンダ付けするものである。
前記ハンダ鏝の鏝先は、ハンダと接触することにより侵食されて次第に摩耗していき、その摩耗と共にハンダ付け精度も低下していく。このため、前記ハンダ鏝は、鏝先の摩耗がある程度進行した段階で新たなハンダ鏝に交換する必要がある。
【0003】
特許文献2には、このようなハンダ付けロボットに使用するハンダ付けヘッドとして、ハンダ鏝を簡単に交換することができるようにしたものが開示されている。
しかし、このハンダ付けヘッドは、ハンダ鏝の交換を作業者が手作業で行うものであるため、効率上の問題があり、ハンダ鏝の交換を行う場合には、ハンダ付け作業をある程度の時間中断しなければならない。
このため、摩耗したハンダ鏝の交換を自動的に、しかも、ハンダ付け工程の途中であってもハンダ付け作業を長時間中断することなく簡単且つ迅速に行うことができるようにすることが望まれている。
【0004】
一方、ワークの位置決めやアーク溶接等に使用されるロボットにおいては、特許文献3−4等に開示されているように、ワーク位置決め治具やトーチなどのツールを自動交換するように構成されたものが知られている。
【0005】
しかし、特許文献3に開示されたロボットは、複数種類のワーク位置決め治具を、複数種類のワークに対応させて交換するものであって、前記位置決め治具の交換は、一種類のワークに対する位置決め処理工程が全て終了したあと、他種類のワークに対する位置決め処理工程に移行する前に行われるものであり、一種類のワークの位置決め処理工程中に行われるものではない。このため、この特許文献3の技術を、摩耗したハンダ鏝をハンダ付け工程の途中においても交換しなければならないハンダ付けロボットに、そのまま適用することはできない。
【0006】
また、特許文献4に開示されたロボットは、ツールの交換を自動的に行うように構成されているが、その交換は、オペレータが操作盤の交換命令ボタンを押すことによって実行されるものであり、ロボットがツールの交換時期を自ら判断して自動的に行うものではない。このため、この技術をそのままハンダ付けロボットに適用しても、摩耗したハンダ鏝を効率良く自動交換することが可能なハンダ付けロボットを得ることはできない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係るハンダ鏝自動交換機構付きハンダ付け装置の一実施形態を示すものである。このハンダ付け装置は、制御装置2に入力された制御プログラムに従って自動制御される多軸型のハンダ付けロボット1と、このハンダ付けロボット1のロボットアーム11に自動交換可能なるように取り付けられたハンダ鏝22Aと、前記ハンダ付けロボット1に取り付ける前のハンダ鏝22Bを格納しておくための複数の鏝置き台85a,85b,85cとを有している。図示した例では、3つの鏝置き台が設けられていて、第1の鏝置き台85aに格納されていたハンダ鏝は前記ハンダ付けロボット1に取り付けられているため、該第1の鏝置き台85aは空の状態にあり、第2の鏝置き台85b及び第3の鏝置き台85cには、交換用のハンダ鏝22Bがそれぞれ格納されている。前記ハンダ鏝22Aとハンダ鏝22Bとは、互いに同一構成を有するものである。
【0018】
なお、以下の説明においては、必要に応じて、前記ハンダ付けロボット1に取り付けられたハンダ鏝22Aを「実装ハンダ鏝」、鏝置き台85に格納されたハンダ鏝22Bを「予備ハンダ鏝」と呼ぶこともある。
また、前記3つの鏝置き台85a,85b,85cを区別して呼ぶ必要がない場合は、単に「鏝置き台85」と呼ぶものとする。
【0019】
前記ハンダ付けロボット1は、一定位置に固定的に設置された機体10と、該機体10に旋回自在に取り付けられた前記ロボットアーム11とを有している。該ロボットアーム11は、前記機体10の上端に鉛直な第1軸線L1を中心に旋回自在に取り付けられた第1旋回アーム11aと、該第1旋回アーム11aの先端に鉛直な第2軸線L2を中心に旋回自在に取り付けられた第2旋回アーム11bと、該第2旋回アーム11bから鉛直な第3軸線L3(
図2参照)に沿って昇降自在且つ回転自在なるように延出するロッド12とを有していて、該ロッド12の下端のヘッド取付軸12a(
図2参照)にハンダ付けヘッド20が取り付けられ、該ハンダ付けヘッド20に前記ハンダ鏝22Aが、中心軸線である鏝軸線L0を前記第3軸線L3と一致させた姿勢で、該ハンダ付けヘッド20の一部品として組み付けられている。以下、前記ハンダ付けヘッド20の構成について詳細に説明する。
【0020】
前記ハンダ付けヘッド20は、
図2−
図8に示すように、前記ロボットアーム11のロッド12の前記ヘッド取付軸12aに取り付けられたマスターブロック21と、該マスターブロック21に自動交換機構23を介して交換可能なるように取り付けられた前記ハンダ鏝22Aとを有している。
【0021】
前記ハンダ鏝22Aは、四角い箱形をした鏝ホルダ26と、該鏝ホルダ26の下端から前記鏝軸線L0に沿って延出する中空の鏝スリーブ27とを有していて、該鏝スリーブ27の内部に、銅製の鏝先部材28が、先端の鏝先28aを外部に突出させた状態で収容されると共に、該鏝先部材28を加熱するヒーター29と、前記鏝先28aの温度を検出する温度センサ30とが収容されている。該温度センサ30は、パイプ31の先端に収容されており、該温度センサ30に接続されたリード線30a,30bが、前記パイプ31の内部を延びて該パイプ31の上端部から前記鏝ホルダ26の内部に延出している。
【0022】
前記鏝ホルダ26の前面には、第1クランプボディ33及び第1電極ホルダ34が、前記鏝軸線L0に沿って上下隣接する位置に固定的に取り付けられている。このうち第1クランプボディ33は、マスターブロック21側に設けられた第2クランプボディ43と協同して前記自動交換機構23を構成するものであるから、その構成については、後で自動交換機構23の説明を行う際に一緒に説明するものとする。
【0023】
前記鏝ホルダ26の上端部に取り付けられた前記第1電極ホルダ34の接続面34aには、前記ヒーター29からのリード線29a,29bが接続された一対の受電電極35a,35bと、前記温度センサ30からのリード線30a,30bが接続された一対の送信電極36a,36bとが設けられている。
前記一対の受電電極35a,35bは、前記接続面34aの中央部に左右に並べて形成された2つの円柱状をなすプラグ部の先端に、1つずつ設けられており、また、前記一対の送信電極36a,36bは、前記接続面34aの側端寄りの位置に形成された1つの縦長角柱状をなすプラグ部の先端に、上下に並べて配設されている。
【0024】
一方、前記マスターブロック21は、エアで駆動される昇降機構が内蔵された四角い箱形のベース部材40を有している。該ベース部材40の上端部には、前記ロッド12のヘッド取付軸12aに取り付けるための取付アーム41が固定され、該ベース部材40の前面には、支持プレート42が前記昇降機構で上下動されるように取り付けられ、該支持プレート42の前面に、前記第2クランプボディ43と第2電極ホルダ44とが、前記第3軸線L3に沿って上下隣接する位置に固定的に取り付けられ、前記支持プレート42の下端に、ハンダ供給ニードル46を支持するニードル支持部材47が固定されている。
【0025】
前記ベース部材40の内部の昇降機構は、前記ハンダ鏝22Aで複数のハンダ付け部位P(
図3、
図4参照)を順番にハンダ付けする際に、該ハンダ鏝22Aを小ストロークで上下動させるためのものであり、この昇降機構に対してエアを給排するため、前記ベース部材40の側面には、2つの昇降用ポート48a,48bが設けられ、この昇降用ポート48a,48bが不図示の配管を介して圧縮空気源に接続されている。
【0026】
前記第2電極ホルダ44の接続面44aには、前記ハンダ鏝22Aのヒーター29に電力を供給するための一対の給電電極50a,50bと、前記温度センサ30からの測定信号を受信するための一対の受信電極51a,51bとが設けられ、これら給電電極50a,50b及び受信電極51a,51bは、前記第2電極ホルダ44の側面に設けられたコネクタ52に接続されている。
【0027】
前記一対の給電電極50a,50bは、前記接続面44aの中央部に左右に並べて配設された2つの円孔状をなすソケット部の内底に、1つずつ設けられており、また、前記一対の受信電極51a,51bは、前記接続面44aの側端寄りの位置に形成された1つの縦長の角孔状をなすソケット部の内底に、上下に並べて配設されており、前記ハンダ鏝22Aを前記支持プレート42に取り付けると、前記受電電極35a,35bが前記給電電極50a,50bに接触して相互に電気接続されると共に、前記送信電極36a,36bが前記受信電極51a,51bに接触して相互に電気接続される。
【0028】
続いて、前記自動交換機構23について説明する。該自動交換機構23は、前記第2クランプボディ43に設けられたクランプ軸55と、前記第1クランプボディ33に設けられたクランプ穴56とを有していて、前記クランプ軸55を該クランプ穴56内に嵌合、係止させると、前記ハンダ鏝22Aがマスターブロック21に連結され、前記クランプ軸55を前記クランプ穴56から分離させると、前記ハンダ鏝22Aが前記マスターブロック21から取り外されるように構成されている。
【0029】
このため、
図5−
図8から明らかなように、前記第2クランプボディ43にはピストン室57が形成され、該ピストン室57内にピストン58が、Oリング58aを介して、前記鏝軸線L0と直交するクランプ軸線L4に沿って進退動自在なるように収容されている。また、前記第2クランプボディ43の取付面43aには、前記クランプ軸線L4に沿って突出する筒部59が形成され、該筒部59の内部に前記クランプ軸55が、Oリング60を介して前記クランプ軸線L4に沿って進退動自在なるように収容され、該クランプ軸55の基端部は前記ピストン58に一体に連結されている。
【0030】
前記ピストン室57内には、前記ピストン58の一側及び他側にロック用圧力室61a及びリリース用圧力室61bが形成され、前記第2クランプボディ43の側面には、前記ロック用圧力室61aに通じるロック用ポート62aと、前記リリース用圧力室61bに通じるリリース用ポート62bとが設けられている。なお、
図7においては、分かり易くするため、前記ポート62a,62bを前記第2クランプボディ43の下端面に開口させている。
【0031】
また、前記筒部59の先端寄りの位置には、複数(図では3個)の保持孔63が円周方向に等間隔で形成され、各保持孔63内にそれぞれ、係止部材である鋼球64が収容されている。該鋼球64は、その一部が前記保持孔63から筒部59の外側に突出することはできるが、該保持孔63から脱落しないような大きさに形成されている。
【0032】
前記クランプ軸55の先端部外周の前記鋼球64と対応する位置には、円弧状断面を有する凹溝65が形成され、
図7に示すように、前記ロック用圧力室61aをロック用ポート62aを通じて大気に開放すると共に、前記リリース用圧力室61bにリリース用ポート62bからエアを供給することにより、前記ピストン58及びクランプ軸55を前進させると、前記鋼球64が前記凹溝65内に嵌合して前記筒部59の外周面から後退した非突出の位置(非係止位置)を占め、
図8に示すように、前記リリース用圧力室61bをリリース用ポート62bを通じて大気に開放すると共に、前記ロック用圧力室61aにロック用ポート62aからエアを供給することにより、前記ピストン58及びクランプ軸55を後退させると、前記鋼球64が前記凹溝65の前端壁65aに押されて前記筒部59の外周面から突出した位置(係止位置)を占めるようになっている。
【0033】
これに対し、前記第1クランプボディ33の取付面33aには、前記クランプ穴56が前記クランプ軸線L4に沿って開口するように形成され、該クランプ穴56の内周の一部に、前記鋼球64が係止及び離脱する断面略V字状の環状壁からなる係合部66が形成されている。
【0034】
そして、
図7に示すように、前記ピストン58及びクランプ軸55を前進させて前記鋼球64を非係止位置に保持させた状態で、前記クランプ軸55を前記クランプ穴56内に嵌合させ、そのあと、
図8に示すように、前記ピストン58及びクランプ軸55を後退させて前記鋼球64を係止位置に変位させ、該鋼球64を前記係合部66に係止させることにより、前記ハンダ鏝22Aが前記支持プレート42即ちマスターブロック21に取り付けられる。前記ハンダ鏝22Aをマスターブロック21から取り外すときは、前記取り付けるときの動作とは逆の動作が行われる。
【0035】
図中の符号67a,67bを付した部材は、第2クランプボディ43に設けられた位置決め用の突起、同68a,68bは、第1クランプボディ33に設けられた位置決め孔である。
【0036】
各図から分かるように、前記ニードル支持部材47は、先端に、前記ハンダ鏝22Aの半周ほどを取り囲む平面視形状が円弧状をした取付用アーム部70を有し、該取付用アーム部70にニードル支持ブロック71が取り付けられ、該ニードル支持ブロック71に、ニードル支持軸72が上下位置調節自在に支持され、該ニードル支持軸72の下端にニードルホルダ73が角度調節自在に取り付けられ、該ニードルホルダ73に前記ハンダ供給ニードル46が、先端のハンダ送出口46aをハンダ鏝22Aの鏝先28aに向けた斜めの姿勢に支持されている。
【0037】
図1に示すように、前記ハンダ付けヘッド20を前記制御装置2及び圧縮空気源等に接続するため、前記ロッド12には、中継端子や電磁弁等の電気機器やエアシリンダ等の流体圧機器が収容された中継ボックス76が取り付けられ、該中継ボックス76が、不図示の配線・配管ケーブルにより、前記ロボットアーム11の内部を通じて、前記機体10の内部又は外部に設けられた圧縮空気源に接続されると共に、前記制御装置2に接続され、また、不図示の電気ケーブルやエア配管等により、前記ハンダ付けヘッド20の前記コネクタ52及びポート48a,48b、62a,62bに接続されている。
【0038】
また、前記中継ボックス76には、前記ハンダ供給ニードル46に線状ハンダ81を供給するためのハンダ供給装置80が付設されている。該ハンダ供給装置80は、前記中継ボックス76の側面に取り付けられたハンダリール82及びハンダ送り装置83を有し、前記ハンダリール82に巻かれた線状ハンダ81を、前記ハンダ送り装置83に設けられたハンダ送りローラによって前記ハンダ供給ニードル46に送り、このハンダ供給ニードル46を通じて前記ハンダ鏝22Aの鏝先28aに供給するように構成されている。従って、前記中継ボックス76の内部には、前記ハンダ送りローラを駆動するモーターや、前記線状ハンダ81の送り量を検出するロータリエンコーダ等も収納されている。
【0039】
前記鏝置き台85は、
図1及び
図9から明らかなように、平板状をした基板86と、該基板86の一端から立ち上がった支柱87と、該支柱87の上端に高さ調節自在に取り付けられた取付ブロック88と、該取付ブロック88に連結板89を介して取り付けられた鏝支持部材90とを有している。該鏝支持部材90には、U字形をした鏝支持アーム90aが形成されていて、該鏝支持アーム90aにハンダ鏝22Bの鏝ホルダ26を上方から係止させることにより、該ハンダ鏝22Bが、鏝軸線L0を鉛直に向けると共にクランプ穴56を鏝置き台85の前方に向けた縦向き姿勢で、該鏝置き台85に格納される。
【0040】
前記連結板89には、前記ハンダ鏝22Bの姿勢を調整するための調整ボルト91が設けられており、ハンダ鏝の種類によって該調整ボルト91を進退動させることにより、該ハンダ鏝の姿勢を鉛直に向けられるようになっている。
前記鏝置き台85には、ハンダ鏝22Bの有無を検出して検出信号が前記制御装置2に送る鏝センサを設けておくことが望ましい。
【0041】
前記構成を有するハンダ付け装置は、前記制御装置2に入力された制御プログラムに従って、複数のハンダ付け部位Pを、実装ハンダ鏝22Aによって順番に且つ自動的にハンダ付けする。前記ハンダ付け部位Pは、例えば、
図3及び
図4に示すように、プリント配線基板100に形成された環状の端子101と、該端子101内に挿入された電子部品103のリード102である。
【0042】
ハンダ付けを行うと、前記実装ハンダ鏝22Aの鏝先28aは、ハンダと接触することによって侵食されるため、ハンダ付けを行う度に次第に摩耗していき、それに伴ってハンダ付け精度も低下していく。このため、前記実装ハンダ鏝22Aは、鏝先28aの摩耗がある程度進行した段階で新たなハンダ鏝と交換する必要がある。
【0043】
そこで、本発明においては、ハンダ付け工程中に、前記実装ハンダ鏝22Aの鏝先28aの摩耗度を測定し、測定した摩耗度が前記制御装置2に予め入力されている基準値に達したとき、該制御装置2で自動交換機構23を動作させることにより、前記実装ハンダ鏝22Aを、鏝置き台85に格納されている前記予備ハンダ鏝22Bと自動交換するようにしている。
【0044】
図10には、ハンダ鏝22Aの自動交換方法の第1例を示すフローチャートが示されている。この第1例では、前記鏝先28aの摩耗はハンダ付け回数にほぼ比例した状態で進行していくため、前記ハンダ鏝22Aによるハンダ付け回数をカウントし、カウントしたハンダ付け回数が一定回数に達したとき、前記鏝先28aの摩耗度が基準値に達したものと判断してハンダ鏝22Aを交換するようにしている。
【0045】
即ち、
図10において、ハンダ付け装置の自動運転が開始され、ステップS1でハンダ付け作業が開始されると、ステップS2でハンダ付け回数がカウントされる。このハンダ付け回数は、1つのハンダ付け部位Pをハンダ付けすると1回である。カウントされたハンダ付け回数は、ステップS3で、制御装置2に予め入力された基準回数と比較される。この基準回数は、鏝先の大きさや形状等によって異なるが、通常は4000−5000回程度である。
【0046】
そして、カウントされたハンダ付け回数が基準回数に達していない場合には、鏝先28aの摩耗度は未だ基準値に達していないと判断され、ステップS1に戻ってハンダ付け作業は続行される。
【0047】
一方、カウントされたハンダ付け回数が基準回数に達すると、鏝先28aの摩耗度が基準値に達したものと判断され、ハンダ鏝22Aの交換のため、ステップS4において、鏝置き台85に未使用の予備ハンダ鏝22Bがあるか否かが確認される。
【0048】
予備ハンダ鏝22Bがある場合には、ステップS5に移行し、前記制御装置2で前記自動交換機構23を動作させることにより、前記ハンダ鏝の自動交換が次のようにして行われる。即ち、前記ロボットアーム11が第1の鏝置き台85aの位置に移動し、前記実装ハンダ鏝22Aを該第1の鏝置き台85aに格納した状態にしたあと、該実装ハンダ鏝22Aをマスターブロック21から取り外し、そのあと、前記ロボットアーム11は第2の鏝置き台85bの位置に移動し、該第2の鏝置き台85bに格納されている予備ハンダ鏝22Bを前記マスターブロック21に取り付ける。これによって交換動作は完了する。
続いて、ステップS6で制御装置2に登録されている予備ハンダ鏝22Bの数が1本減らされたあと、ステップS1に戻って前記ステップS4までの動作が繰り返される。
【0049】
一方、鏝置き台85に予備ハンダ鏝22Bがない場合には、ハンダ付け装置の自動運転は停止される。
【0050】
前記制御例では、ハンダ付け回数をカウントする毎に基準回数と比較しているが、一定回数毎に基準回数と比較しても良い。例えば、一定個数の電子部品103をプリント配線基板100にハンダ付けする毎に、或いは、一定枚数のプリント配線基板100に対して前記電子部品103をハンダ付けする毎に、それまでにカウントしたハンダ付け回数を基準回数と比較するようにしても良い。
【0051】
なお、ハンダ付け工程の途中でハンダ鏝22Aの交換が必要になったにも拘わらず、前記鏝置き台85に予備ハンダ鏝22Bがない場合には、該鏝置き台85に予備ハンダ鏝22Bを補充し、そのあと前記ハンダ鏝22Aの自動交換及びハンダ付け作業を再開するように設定することもできる。
【0052】
図11には、ハンダ鏝22Aの自動交換方法の第2例を示すフローチャートが示されている。この制御例は、鏝先28aの位置補正とハンダ鏝22Aの自動交換とを組み合わせたものである。
【0053】
前記鏝先28aの位置補正は、ハンダ付けに伴う該鏝先28aの摩耗によって該鏝先28aとハンダ付け部位Pとの位置関係にずれが生じた場合に、その位置ずれ分(摩耗分)を補正することによって、換言すれば、その摩耗分だけハンダ付け部位Pに対する第3軸線L3の位置を調整することによって、前記鏝先28aとハンダ付け部位Pとの位置関係を、ハンダ付け開始前に行ったティーチング登録時の位置関係に保つものである。
【0054】
前記位置補正は、前記鏝先28aを不図示の位置検出器に押し付けることにより、前記制御装置2において該鏝先28aと前記第3軸線L3との座標上の距離を測定し、測定した距離を、前回測定した距離と比較して、両者の偏差を鏝先28aの摩耗として検出し、検出した摩耗分だけ前記第3軸線L3の位置を調整するもので、自動的に行われる(特許第4312724号参照)。従って、前記第3軸線L3の位置の調整量が鏝先位置の補正量である。
【0055】
前記補正量は累積され、累積された補正量が一定量に達したとき、前記鏝先28aの摩耗度が基準値に達したものと判断されてハンダ鏝22Aの交換が行われる。
【0056】
このため、前記制御装置2には、鏝先28aの位置補正を行う時期を決めるための判断基準となる動作サイクル数が基準サイクル数として設定されると共に、ハンダ鏝22Aを交換する時期を決めるための判断基準となる基準補正量が設定されている。
前記動作サイクルとは、ハンダ付け作業を複数バッチについて順次行う場合の1バッチ分のハンダ付け動作であり、例えば、プリント配線基板100に電子部品103をハンダ付けする作業を、複数枚のプリント配線基板100について順次行う場合の、1枚のプリント配線基板100に対するハンダ付け動作のことである。
【0057】
図11において、ハンダ付け装置の自動運転が開始され、ステップS11でハンダ付け作業が開始されると、ステップS12において、1つの動作サイクルが完了する毎に動作サイクル数がカウントされ、ステップS13において、カウントされた動作サイクル数が基準サイクル数と比較される。
【0058】
そして、前記動作サイクル数が基準サイクル数以下である場合には、鏝先28aの摩耗が少ないため位置補正は不要と判断され、ステップS11に戻ってハンダ付け作業は続行される。
一方、前記動作サイクル数が基準サイクル数に達していると、鏝先28aの位置補正は必要と判断され、ステップS14において鏝先の位置補正が行われる。そのときの補正量は累積される。
【0059】
次に、ステップS15において、累積された補正量(累積補正量)が基準補正量と比較され、累積補正量が基準補正量に達していない場合には、前記鏝先28aの摩耗度は基準値に達していないためハンダ鏝22Aの交換は不要であると判断され、ステップS11に戻ってハンダ付け作業は続行され、ステップS15までの動作が繰り返される。
【0060】
一方、前記累積補正量が基準補正量に達している場合には、前記鏝先28aの摩耗度が基準値に達したものと判断され、ハンダ鏝交換のため、ステップS16において、鏝置き台85に未使用の予備ハンダ鏝22Bがあるか否かが確認される。
【0061】
そして、予備ハンダ鏝22Bがある場合には、ステップS17に移行し、前記制御装置2で前記自動交換機構23を動作させることにより、前記ハンダ鏝22Aの自動交換が行われる。その交換動作は、前記第1例において説明した場合と同様である。
【0062】
続いて、ステップS18において、制御装置2に登録されている予備ハンダ鏝22Bの数が1本減らされ、そのあと、ステップS11に戻って前記ステップS16までの動作が繰り返される。
その際、交換後の新たなハンダ鏝について、鏝先28aの位置補正を行う時と同様に、該鏝先28aと第3軸線L3との距離を測定し、測定した距離をティーチング登録時の距離と比較して、両者の偏差分だけ前記第3軸線L3の位置を調整したあとにハンダ付け作業が再開される。
【0063】
一方、鏝置き台85に予備ハンダ鏝22Bがない場合には、ハンダ付け装置の自動運転は停止される。
この場合、引き続きハンダ付け作業を行う必要がある時に、前記鏝置き台85に予備ハンダ鏝22Bを補充し、そのあと前記ハンダ鏝22Aの自動交換及びハンダ付け作業を再開するように設定することもできる。
【0064】
本発明のハンダ付け装置は、ハンダ鏝22Aの先端からハンダ付け部位Pに向けて窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを噴射することにより、不活性ガスの雰囲気の中でハンダ付けを行うように構成することもできる。
図12及び
図13には、その場合に使用されるハンダ付けヘッド20Aが第2実施形態として示されており、この第2実施形態のハンダ付けヘッド20Aは、前述した第1実施形態のハンダ付けヘッド20に、以下に述べるような不活性ガス噴射のための構成を付加したものである。
【0065】
即ち、前記ハンダ付けヘッド20Aのハンダ鏝22Aには、鏝スリーブ27の内部にガス流路93が形成されると共に、該鏝スリーブ27の先端に前記ガス流路93に通じるガス噴射口94が形成されている。前記ガス流路93は、ヒーター29の内周側に形成することも、該ヒーター29の外周を取り巻くように形成することもできる。
【0066】
また、前記鏝スリーブ27の側面には、前記ガス流路93に通じるガス導入口93aが形成され、該ガス導入口93aと、第1クランプボディ33の側面に形成された第1配管ポート96aとが、前記鏝スリーブ27の外部を延びるガス配管95によって相互に接続されている。更に、前記第1クランプボディ33の取付面33aには、前記第1配管ポート96aに連通する第1接続ポート97aが形成されている。図中の符号98が付された部材はOリングである。
【0067】
これに対し、マスターブロック21側に設けられた第2クランプボディ43の取付面43aには、前記第1接続ポート97aに対向する位置に、該第1接続ポート97aに接続される第2接続ポート97bが形成され、該第2接続ポート97bが、前記第2クランプボディ43の側面に形成された第2配管ポート96bに連通し、該第2配管ポート96bが、中継ボックス76を介して不活性ガス源に接続されるようになっている。
【0068】
この構成により、前記ハンダ鏝22Aをマスターブロック21に取り付けると、前記第1接続ポート97aと第2接続ポート97bとが接続され、前記第2配管ポート96bから供給される不活性ガスが、前記第2接続ポート97b及び第1接続ポート97aから、前記ガス配管95及びガス流路93を通じて、ハンダ鏝22Aの先端のガス噴射口94からはんだ付けポイントに向けて噴射される。
【0069】
前記ハンダ付けヘッド20Aのその他の構成については、第1実施形態のハンダ付けヘッド20と実質的に同じであるから、両者の主要な同一構成部分に第1実施形態と同様の符号を付し、その説明は省略する。
【0070】
なお、この第2実施形態のハンダ付けヘッド20Aにおいて、前記ハンダ鏝22Aを自動交換する際に前記ガス配管95がハンダ供給ニードル46に接触するおそれがある場合には、該ハンダ供給ニードル46を、ニードル支持ブロック71やニードル支持軸72等を含めて取付用アーム部70の他の場所に取り付けるなどの安全対策が施されることは勿論である。