特許第6974844号(P6974844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974844
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】磁気リーダライタ
(51)【国際特許分類】
   G11B 25/04 20060101AFI20211118BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20211118BHJP
   G11B 5/41 20060101ALI20211118BHJP
   G11B 5/008 20060101ALI20211118BHJP
   G07D 11/26 20190101ALI20211118BHJP
   G07D 11/235 20190101ALI20211118BHJP
   G07F 19/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G11B25/04
   G06K7/08 040
   G11B5/41 D
   G11B5/41 J
   G11B5/41 E
   G11B5/008 Z
   G07D11/26
   G07D11/235
   G07F19/00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-43945(P2018-43945)
(22)【出願日】2018年3月12日
(65)【公開番号】特開2019-160362(P2019-160362A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2021年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 翔
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−178864(JP,A)
【文献】 実開昭53−035510(JP,U)
【文献】 特開平04−209306(JP,A)
【文献】 特開平10−255240(JP,A)
【文献】 特開平08−203040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 25/04
G06K 7/08
G11B 5/41
G11B 5/008
G07D 11/26
G07D 11/235
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の媒体の板面に層状に、かつ、長手方向に延在するように形成された磁気ストライプに対して磁気データの読み取りおよび書き込みを行う磁気リーダライタであって、
前記媒体の前記板面を支持する媒体支持部と、
前記媒体支持部に支持された前記媒体の前記磁気ストライプの表面に垂直な接近離脱方向に移動可能であると共に、該磁気ストライプの前記長手方向に平行なスライド方向に移動可能に構成され、該磁気ストライプに接触または近接した状態で、該スライド方向に移動しながら磁気データの読み取りおよび書き込みを行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドの前記スライド方向の移動範囲に対応する範囲で開口し、前記媒体支持部に支持された前記媒体の前記磁気ストライプに接触または近接可能となるように該磁気ヘッドを通過させるヘッド用開口部と、を有し、
前記ヘッド用開口部は、前記スライド方向に平行な対の長辺と該対の長辺に直交する対の短辺とを備え、
前記ヘッド用開口部の前記対の長辺のそれぞれから対向する長辺に向かって前記対の短辺間の中間部まで延在するブラシ片が、当該長辺に亘って複数本並列して成るブラシ部をさらに有し、
前記ブラシ部の複数本の前記ブラシ片は、磁気データの読み取りおよび書き込み時に、前記磁気ヘッドによって押しのけられることにより、該磁気ヘッドの側面に接触する形状に復帰可能に変形する磁気リーダライタ。
【請求項2】
前記磁気ヘッドは、
前記接近離脱方向において、前記磁気ストライプから離間して磁気データの読み取りおよび書き込みを行わない不働位置と、該磁気ストライプに接触または近接した読み書き位置との間を、移動可能であり、
前記スライド方向において、前記磁気ストライプの前記長手方向の一端よりも外側の退避位置と、該磁気ストライプの他端との間を、移動可能である請求項1に記載の磁気リーダライタ。
【請求項3】
前記接近離脱方向において、前記ブラシ部は、前記不働位置にある前記磁気ヘッドの磁気データの読み取りおよび書き込みを行う先端面と同じ位置にある請求項2に記載の磁気リーダライタ。
【請求項4】
磁気データの読み取りおよび書き込みのうち少なくとも読み取り時に、次のように動作するように構成されている:
前記不働位置および前記退避位置にある前記磁気ヘッドが、前記接近離脱方向において、前記読み書き位置に移動し、
前記読み書き位置および前記退避位置にある前記磁気ヘッドが、前記スライド方向において、前記磁気ストライプの前記一端を経て前記他端に向かって移動しながら、磁気データの読み取りおよび書き込みを行い、
磁気データの読み取りを終えて前記磁気ストライプの前記他端に相当する位置に到達した前記磁気ヘッドが、前記接近離脱方向において、前記不働位置に移動し、
前記不働位置および前記磁気ストライプの前記他端に相当する位置にある前記磁気ヘッドが、前記スライド方向において、前記磁気ストライプの前記一端を経て前記退避位置に向かって移動しながら、該磁気ヘッドの前記磁気ストライプの前記一端を経て前記他端に向かって移動しながら、該磁気ヘッドの前記先端面が前記ブラシ部によって清掃される、請求項3に記載の磁気リーダライタ。
【請求項5】
前記ブラシ部の複数本の前記ブラシ片の少なくとも一部は、その先端が、前記不働位置にある前記磁気ヘッドの前記先端面を向いている請求項3または4に記載の磁気リーダライタ。
【請求項6】
前記磁気ヘッドを前記接近離脱方向および前記スライド方向にそれぞれ駆動するヘッド駆動機構をさらに有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気リーダライタ。
【請求項7】
前記ブラシ部の複数本の前記ブラシ片は、前記磁気ヘッドが前記スライド方向に通過して該磁気ヘッドによる押しのけが解除されたときに、元の形状に復帰するような弾性を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気リーダライタ。
【請求項8】
前記ブラシ部の複数本の前記ブラシ片は、金属を含む樹脂から成るか、あるいは、樹脂から成ると共に表面に帯電防止コーティングが施されており、これにより、帯電しないように構成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気リーダライタ。
【請求項9】
前記媒体支持部を支持すると共に、前記磁気ヘッドを移動可能に支持する金属製のフレームをさらに有し、
前記ブラシ部の複数本の前記ブラシ片は、その基部が前記フレームと電気的に接続されており、これにより、前記磁気ヘッドと摺動する際に発生する静電気を除電するように構成されている請求項8に記載の磁気リーダライタ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁気リーダライタを有する、自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気リーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automated Teller Machine)等の自動取引装置やPOS(Point Of Sales)端末装置などには、磁気リーダライタが内蔵もしくは隣接して設置されることがある。磁気リーダライタは、磁気カードや通帳等の板状(紙葉状、冊子状を含む)の媒体の板面(紙面を含む)に層状にかつ長手方向に延在するように形成された磁気ストライプに対し、磁気データの読み取りおよび書き込み(磁気データの読み書き)を行う装置である。
【0003】
一般に、磁気リーダライタは、磁気リーダライタに対して媒体を出し入れすべく、媒体を搬送方向に搬送する媒体搬送路と、媒体搬送路上に設けられ、媒体の磁気ストライプが形成された面を支持する媒体支持部と、媒体支持部に支持された媒体の磁気ストライプに対して磁気データの読み書きを行う磁気ヘッドと、媒体搬送路上の特に媒体支持部に設けられ、媒体の磁気ストライプに対して磁気ヘッドを接触または接近可能とすべく、磁気ヘッドを通過させるヘッド用開口部とを有している。
【0004】
尚、磁気ストライプに対して磁気データの読み書きを行う際には、媒体と磁気ヘッドとは、磁気ストライブの延在方向に、相対的に移動する必要がある。具体的には、磁気データの読み書き中に、媒体を移動させるように構成した磁気リーダライタと、磁気ヘッドを移動するように構成した磁気リーダライタとがある。
【0005】
特許文献1および2には、磁気ヘッドを移動するように構成した磁気リーダライタの類が開示されている。特許文献3には、媒体を移動させるように構成した磁気リーダライタの類が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−184488号公報
【特許文献2】国際公開第2015/045458号
【特許文献3】特開2000−132640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、磁気データの読み書きを行うべく、磁気リーダライタに挿入される媒体には、汚れや埃が付着していることがある。媒体に付着した汚れや埃は、媒体が媒体搬送路上を搬送される際に、媒体から剥離し、落下する可能性がある。媒体から落下した汚れや埃は、前述したヘッド用開口部を通して磁気リーダライタの更なる内部、即ち、磁気リーダライタ内であり、かつ、媒体搬送路外に、異物として混入する可能性がある。
【0008】
特に、特許文献1および2に開示されたものをも含め、磁気ヘッドを移動するように構成した磁気リーダライタは、そのヘッド用開口部が、磁気ヘッドの移動範囲に応じて長い範囲で開口している。このため、異物が混入する可能性が高い。
【0009】
通常、磁気リーダライタの更なる内部には、磁気ヘッドの移動機構や、電気回路基板等が搭載されている。よって、磁気ヘッドの移動機構が異物を噛み込んで磁気ヘッドの移動に支障を来したり、磁気ヘッド移動機構が損傷する可能性がある。また、異物が電気回路を短絡して回路部品が損傷する可能性がある。そのため、ヘッド用開口部を介する異物混入への対策が望まれる。
【0010】
ヘッド用開口部を通した異物混入への対策として、例えば、磁気ヘッドの不使用時にヘッド用開口部を塞ぐシャッタを設ける方策が考えられる。しかし、磁気ヘッドの使用/不使用に応じてシャッタを開閉する機構が必要であるため、磁気リーダライタの構造が複雑となり、製造コスト上昇、メインテナンス性の低下、耐久性の低下などが懸念される。
【0011】
それ故、本発明の目的は、簡素な構造であるけれども、ヘッド用開口部を通した異物混入を防止することができる磁気リーダライタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、板状の媒体の板面に層状に、かつ、長手方向に延在するように形成された磁気ストライプに対して磁気データの読み取りおよび書き込みを行う磁気リーダライタであって、前記媒体の前記板面を支持する媒体支持部と、前記媒体支持部に支持された前記媒体の前記磁気ストライプの表面に垂直な接近離脱方向に移動可能であると共に、該磁気ストライプの前記長手方向に平行なスライド方向に移動可能に構成され、該磁気ストライプに接触または近接した状態で、該スライド方向に移動しながら磁気データの読み取りおよび書き込みを行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドの前記スライド方向の移動範囲に対応する範囲で開口し、前記媒体支持部に支持された前記媒体の前記磁気ストライプに接触または近接可能となるように該磁気ヘッドを通過させるヘッド用開口部と、を有し、前記ヘッド用開口部は、前記スライド方向に平行な対の長辺と該対の長辺に直交する対の短辺とを備え、前記ヘッド用開口部の前記対の長辺のそれぞれから対向する長辺に向かって前記対の短辺間の中間部まで延在するブラシ片が、当該長辺に亘って複数本並列して成るブラシ部をさらに有し、前記ブラシ部の複数本の前記ブラシ片は、磁気データの読み取りおよび書き込み時に、前記磁気ヘッドによって押しのけられることにより、該磁気ヘッドの側面に接触する態勢に復帰可能に変形する磁気リーダライタが得られる。
【0013】
本発明によればまた、前記磁気リーダライタを有し、前記媒体は、通帳である、自動取引装置が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による磁気リーダライタは、簡素な構造であるけれども、ヘッド用開口部を通した異物混入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の比較例による磁気リーダライタの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの概略的な矢視図である。
図4】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの概略的な矢視図である。
図5】(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタのブラシ部の変形を説明するための概略的な矢視図である。
図6】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの動作を説明するための概略的な矢視図である。
図7】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの動作を説明するための概略的な矢視図である。
図8】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの動作を説明するための概略的な矢視図である。
図9】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの動作を説明するための概略的な矢視図である。
図10】本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタの動作を説明するための概略的な矢視図である。
図11】本発明の第2の実施形態による磁気リーダライタの斜視図である。
図12】本発明の第3の実施形態による磁気リーダライタの概略的な矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明による磁気リーダライタの幾つかの実施形態を説明する。
【0017】
これら実施形態において、磁気リーダライタは、ATMに内蔵されたものを例に挙げている。尚、図中、ATMの磁気リーダライタ以外の構成については、図示を省略している。また、磁気リーダライタについても、その全ての構成要素を図示してはおらず、本発明に関係する部位のみを図示しており、その他の部位については、図示を省略している。
【0018】
各図中、符号Wは磁気リーダライタの幅方向を示し、符号Hは磁気リーダライタの高さ方向を示し、符号Dは磁気リーダライタの奥行方向を示している。尚、後述する磁気ストライプの長手方向ならびに磁気ヘッドのスライド方向は、磁気リーダライタの幅方向Wと平行である。このため、以下においては、長手方向Wならびにスライド方向Wと表記することもある。また、後述する磁気ヘッドの接近離脱方向は、磁気リーダライタの高さ方向Hと平行である。このため、以下においては、接近離脱方向Hと表記することもある。
【0019】
まずはじめに、本発明の理解の助けとして、比較例による磁気リーダライタについて説明する。
【0020】
図1を参照すると、比較例による磁気リーダライタは、板状(紙葉状、冊子状を含む)の媒体である通帳の板面(紙面を含む)に層状に、かつ、長手方向に延在するように形成された磁気ストライプに対して磁気データの読み取りおよび書き込みを行うものであって、媒体支持部10と、ヘッド用開口部61と、磁気ヘッド20とを有している。
【0021】
媒体支持部10は、通帳の板面を支持する。磁気ヘッド20は、媒体支持部10に支持された通帳の磁気ストライプの表面に垂直な接近離脱方向Hに移動可能であると共に、磁気ストライプの長手方向に平行なスライド方向Wに移動可能に構成されている。磁気ヘッド20は、磁気ストライプ101に接触または近接した状態で、スライド方向Wに移動しながら磁気データの読み取りおよび書き込みを行う。ヘッド用開口部61は、磁気ヘッド20のスライド方向Wの移動範囲に対応する範囲で開口し、媒体支持部10に支持された通帳の磁気ストライプに接触または近接可能となるように磁気ヘッド20を通過させる。
【0022】
通帳には、汚れや埃が付着していることがある。通帳に付着した汚れや埃は、通帳から剥離し、落下する可能性がある。通帳から落下した汚れや埃は、ヘッド用開口部61を通して磁気リーダライタの更なる内部、即ち、磁気リーダライタ内であり、かつ、媒体支持部10外に、異物として混入する可能性がある。特に、ヘッド用開口部61は、磁気ヘッド20の移動範囲に応じて長い範囲で開口している。このため、異物が混入する可能性が高い。
【0023】
[第1の実施形態]
図2図4を参照すると、本発明の第1の実施形態による磁気リーダライタは、比較例による磁気リーダライタと同様に、板状(紙葉状、冊子状を含む)の媒体である通帳100の板面(紙面を含む)に層状に、かつ、長手方向Wに延在するように形成された磁気ストライプ101に対して磁気データの読み取りおよび書き込みを行うものである。
【0024】
本磁気リーダライタは、媒体支持部10と、ヘッド用開口部11と、磁気ヘッド20と、ブラシ部30とを有している。
【0025】
媒体支持部10は、図示しないATMの媒体搬送路(図示せず)上に設けられ、通帳100の磁気ストライプ101が板面を支持する。媒体支持部10には、左側壁部12Lと、右側壁部12Rとが設けられており、通帳の左側および右側の少なくとも一方が位置決めされる。図示はしないが、媒体支持部10にはさらに、奥側壁部と、上方から通帳100を押さえ付ける機構も設けられている。これらにより、磁気データの読み取りおよび書き込み中、通帳のように冊子状の媒体であっても確実に媒体支持部10に支持(保持)される。
【0026】
磁気ヘッド20は、媒体支持部10に支持された通帳100の磁気ストライプ101の表面に垂直な接近離脱方向Hに移動可能であると共に、磁気ストライプ101の長手方向Wに平行なスライド方向Wに移動可能に構成されている。磁気ヘッド20は、磁気ストライプ101に接触または近接した状態で、スライド方向Wに移動しながら磁気データの読み取りおよび書き込みを行う。
【0027】
ヘッド用開口部11は、磁気ヘッド20のスライド方向Wの移動範囲に対応する範囲で開口し、媒体支持部10に支持された通帳の磁気ストライプに接触または近接可能となるように磁気ヘッド20を通過させる。ヘッド用開口部11は、スライド方向Wに平行な対の長辺と、対の長辺に直交する、即ち、奥行方向Dと平行な対の短辺とを備えている。
【0028】
図3中、符号50Hは、磁気ヘッド20を接近離脱方向Hに駆動する第1のヘッド駆動機構を示している。符号50Wは、磁気ヘッド20をスライド方向Wにそれぞれ駆動する第2のヘッド駆動機構を示している。尚、図3以外の図においては、第1のヘッド駆動機構50H、第2のヘッド駆動機構50Wの図示を省略している。
【0029】
磁気ヘッド20は、接近離脱方向Hにおいて、磁気ストライプ101から離間して磁気データの読み取りおよび書き込みを行わない不働位置(図3に示す位置)と、磁気ストライプ101に接触または近接した読み書き位置(図4に示す位置)との間を移動可能である。磁気ヘッド20はまた、スライド方向Wにおいて、磁気ストライプ101の長手方向Wの一端部101pよりも外側(図4中、右側)の退避位置(図3に示す位置)と、磁気ストライプ101の長手方向Wの他端部101d(図4)との間を、移動可能である。
【0030】
ブラシ部30は、ヘッド用開口部11の対の長辺のそれぞれから、対向する長辺に向かって対の短辺間の中間部まで延在するブラシ片が、長辺に亘って複数本並列して成る。ブラシ部30は、接近離脱方向Hにおいて、不働位置(図3に示す位置)にある磁気ヘッド20の磁気データの読み取りおよび書き込みを行う先端面20T(図5(a)および(b)参照)と、同じ位置に設けられている。図2に示すように、ブラシ部30は、ヘッド用開口部11の一方の長辺から延在する第1のブラシ片群30Aと、ヘッド用開口部11の他方の長辺から延在する第2のブラシ片群30Bとを有している。ブラシ部30は、ヘッド用開口部11のうち、磁気ヘッド20の退避位置に相当する領域にも設けられている。
【0031】
通帳100には汚れや埃が付着していることがあり、通帳100に付着した汚れや埃が剥離し、落下する可能性がある。通帳100から落下した汚れや埃は、ヘッド用開口部11を通して磁気リーダライタの更なる内部、即ち、磁気リーダライタ内であり、かつ、媒体支持部10外に、異物として混入する可能性があるが、本発明に係る磁気リーダライタは、図3に示すように、磁気リーダライタの更なる内部への異物の混入を防止することができる。しかも、ヘッド用開口部に必要に応じて自動的に開閉するシャッタ機構の類を設ける場合に比べ、動力源が不要なブラシ部は、構造が簡素であり、低コストで製造することができる。
【0032】
ブラシ部30の複数本のブラシ片は、図5(a)および(b)に示すように、磁気データの読み取りおよび書き込み時、即ち、磁気ヘッド20が接近離脱方向Hにおいて図4に示すように読み書き位置にある磁気ヘッド20によって押しのけられることにより、磁気ヘッド20の側面20Sに接触するような形状に、復帰可能に変形する。これにより、磁気データの読み取りおよび書き込み時に、ブラシ片が磁気ストライプ101と磁気ヘッド20の磁気データの読み取りおよび書き込みを行う先端面20Tとの間に介在してしまうことがなく、磁気データの読み取りおよび書き込みに支障を来すことがない。尚、図5(a)および(b)以外の、接近離脱方向において読み書き位置にある磁気ヘッドを示す図(例えば、図4)においては、図示の煩雑さを避ける目的上、ブラシ片が変形していないように描いている。
【0033】
ブラシ部30の複数本の前記ブラシ片は、樹脂製であり、磁気ヘッド20がスライド方向Wに通過して磁気ヘッド20による押しのけが解除されたときに、元の形状に復帰するような弾性を有している。また、ブラシ部30の複数本のブラシ片は、金属を含む樹脂から成るか、あるいは、表面に帯電防止コーティングが施されている。即ち、ブラシ部30は、帯電しないように構成されている。さらに、図示はしないが、本磁気リーダライタは、媒体支持部10等を支持すると共に、磁気ヘッド20を移動可能に支持する金属製の筐体フレームを有している。この金属製の筐体フレームと、ブラシ部30の複数本のブラシ片の基部とは、電気的に接続されている。即ち、ブラシ部30は、磁気ヘッド20と摺動する際に発生する静電気を除電するように構成されている。
【0034】
次に、本実施形態による磁気リーダライタの動作として、媒体の磁気ストライプに既に記録されている磁気データの読み取り動作を説明する。
【0035】
図6は、通帳100が磁気リーダライタに挿入され、媒体支持部10に支持された直後の状態を示している。このとき、磁気ヘッド20は、接近離脱方向Hにおいて不働位置にあると共に、スライド方向Wにおいて退避位置にある。
【0036】
次に、磁気ヘッド20が、第1のヘッド駆動機構50H(図3)によって駆動され、図7中、破線で示すように読み書き位置に移動する。この際、磁気ヘッド20は、ブラシ部30を上方に突き抜けるため、先端面20T(図5(a)および(b))が清掃される。即ち、図7中、破線で示す磁気ヘッド20は、接近離脱方向Hにおいて読み書き位置にあると共に、スライド方向Wにおいて退避位置にある。
【0037】
次いで、磁気ヘッド20が、第2のヘッド駆動機構50W(図3)によって駆動され、図7中、実線で示すように、スライド方向Wにおいて退避位置から磁気ストライプ101の他端部101dに向かって移動しつつ、磁気ストライプ101に既に記録されている磁気データの読み取り(リード)を行う。磁気ヘッド20は、ブラシ部30を押しのけながらスライド方向Wに移動するが、図5(a)および(b)に示すように、ブラシ部30のブラシ片は磁気ヘッド20の側面20Sに接触するのに留まり、ブラシ部30が磁気ヘッド20の先端面20T(図5(a)および(b))に乗り上げること、即ち、磁気ストライプ101と磁気ヘッド20との間に入り込むことはない。よって、磁気リード出力低下によるリードエラーを起こすことはない。
【0038】
磁気ヘッド20が磁気ストライプ101の他端部101dまで到達し(厳密には、他端部101dの手前の記録領域の端部)、磁気ストライプ101からの読み取りが完了すると、磁気ヘッド20が、第1のヘッド駆動機構50H(図3)によって駆動され、図8に示すように不働位置に移動する。即ち、図8中、磁気ヘッド20は、接近離脱方向Hにおいて不働位置にあると共に、スライド方向Wにおいて磁気ストライプ101の他端部101dに相当する位置にある。また、このとき、磁気ヘッド20の先端面20T(図5(a)および(b))は、接近離脱方向Hにおいて、ブラシ部30と同じ高さにある。
【0039】
次に、磁気ヘッド20が、第2のヘッド駆動機構50W(図3)によって駆動され、図9に示すように、スライド方向Wにおいて磁気ストライプ101の他端部101dに相当する位置から図中、右側の退避位置に向かって移動する。この際、磁気ヘッド20の先端面20T(図5(a)および(b))が接近離脱方向Hにおいてブラシ部30と同じ高さにあるため、先端面20Tが清掃される。
【0040】
次いで、図9中、実線で示すように、磁気ヘッド20は、接近離脱方向Hにおいて不働位置にあると共に、スライド方向Wにおいて退避位置に戻る。
【0041】
以上のようにして、媒体の磁気ストライプに既に記録されている磁気データの読み取りが終了する。
【0042】
ところで、媒体の磁気ストライプへの磁気データの書き込みの際には、磁気ストライプへの書き込み後、書き込みが正しく行われたことを検証するため、図10に示すように、磁気ヘッド20がスライド方向Wにおいて戻り移動しながら、検証読み取り(ベリファイリード)を行う。つまり、媒体の磁気ストライプへの磁気データの書き込みの際には、最初に、磁気ヘッド20が、接近離脱方向Hにおいて、不働位置から読み取り位置に移動するときにブラシ部30によって磁気ヘッド20の先端面20T(図5(a)および(b))が清掃されるが、磁気ヘッド20のスライド方向Wの移動時には、先端面20T(図5(a)および(b))の清掃がされない。
【0043】
ただし、通常は、媒体の磁気ストライプへの磁気データの書き込みを行う際は、これに先立ち、媒体の磁気ストライプからの磁気データの読み取りを行うため、磁気ヘッドがスライド方向に移動しながらの清掃もされる。したがって、書き込み時に清掃が行われなくとも、運用上は支障がない。
【0044】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、ブラシ部35の複数本のブラシ片の少なくとも一部は、その先端が特徴のある形状を呈している点で、第1の実施形態と異なる。このため、第1の実施形態と同一部または同様部については、第1の実施形態の説明を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0045】
図11を参照すると、第2の実施形態による磁気リーダライタは、媒体支持部10と、ヘッド用開口部11と、磁気ヘッド20と、ブラシ部35とを有している。
【0046】
ブラシ部35は、ヘッド用開口部11の対の長辺のそれぞれから、対向する長辺に向かって対の短辺間の中間部まで延在するブラシ片が、長辺に亘って複数本並列して成る。ブラシ部35は、接近離脱方向Hにおいて、不働位置(図11に示す位置)にある磁気ヘッド20の磁気データの読み取りおよび書き込みを行う先端面20T(図5(a)および(b)を援用的に参照)と、同じ位置に設けられている。ブラシ部35は、ヘッド用開口部11の一方の長辺から延在する第1のブラシ片群35Aと、ヘッド用開口部11の他方の長辺から延在する第2のブラシ片群35Bとを有している。ブラシ部35は、ヘッド用開口部11のうち、磁気ヘッド20の退避位置に相当する領域にも設けられている。
【0047】
媒体には汚れや埃が付着していることがあり、媒体に付着した汚れや埃が剥離し、落下する可能性がある。媒体から落下した汚れや埃は、ヘッド用開口部11を通して磁気リーダライタの更なる内部、即ち、磁気リーダライタ内であり、かつ、媒体支持部10外に、異物として混入する可能性があるが、本発明に係る磁気リーダライタは、ブラシ部35によって磁気リーダライタの更なる内部への異物の混入を防止することができる。しかも、ヘッド用開口部に必要に応じて自動的に開閉するシャッタ機構の類を設ける場合に比べ、動力源が不要なブラシ部は、構造が簡素であり、低コストで製造することができる。
【0048】
特に、ブラシ部35の複数本のブラシ片は、その先端が、接近離脱方向Hにおいて図11に示すように不働位置にある磁気ヘッド20の先端面20T(図5(a)および(b)を援用的に参照)を向いている。
【0049】
本磁気リーダライタにおいても、第1の実施形態と同様に、磁気ヘッド20が接近離脱方向Hにおいて不働位置から読み取り位置に移動するときと、不働位置にある磁気ヘッド20がスライド方向Wに移動するときに、ブラシ部35によって先端面20Tの清掃がなされる。
【0050】
第2の実施形態による磁気リーダライタは、ブラシ片の先端の特徴的な形状により、第1の実施形態よりも高い清掃作用を期待できる。
【0051】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、異物混入抑止用のブラシ部と磁気ヘッド清掃用のブラシ部との多層のブラシ部を有している点で、第1、第2の実施形態と異なる。このため、第1、第2の実施形態と同一部または同様部については、第1、第2の実施形態の説明を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0052】
図12を参照すると、第3の実施形態による磁気リーダライタは、媒体支持部10と、ヘッド用開口部11と、磁気ヘッド20と、ブラシ部30と、ブラシ部40とを有している。
【0053】
ブラシ部30は、ヘッド用開口部11の対の長辺のそれぞれから、対向する長辺に向かって対の短辺間の中間部まで延在するブラシ片が、長辺に亘って複数本並列して成る。ブラシ部30は、ヘッド用開口部11の一方の長辺から延在する第1のブラシ片群と、ヘッド用開口部11の他方の長辺から延在する第2のブラシ片群とを有している。ブラシ部30は、ヘッド用開口部11のうち、磁気ヘッド20の退避位置に相当する領域にも設けられている。
【0054】
媒体には汚れや埃が付着していることがあり、媒体に付着した汚れや埃が剥離し、落下する可能性がある。媒体から落下した汚れや埃は、ヘッド用開口部11を通して磁気リーダライタの更なる内部、即ち、磁気リーダライタ内であり、かつ、媒体支持部10外に、異物として混入する可能性があるが、本発明に係る磁気リーダライタは、ブラシ部30によって磁気リーダライタの更なる内部への異物の混入を防止することができる。しかも、ヘッド用開口部に必要に応じて自動的に開閉するシャッタ機構の類を設ける場合に比べ、動力源が不要なブラシ部は、構造が簡素であり、低コストで製造することができる。
【0055】
ブラシ部40も、ブラシ部30と同様に、ヘッド用開口部11の対の長辺のそれぞれから、対向する長辺に向かって対の短辺間の中間部まで延在するブラシ片が、長辺に亘って複数本並列して成る。ブラシ部40は、ヘッド用開口部11の一方の長辺から延在する第1のブラシ片群と、ヘッド用開口部11の他方の長辺から延在する第2のブラシ片群とを有している。ブラシ部40は、ヘッド用開口部11のうち、磁気ヘッド20の退避位置に相当する領域にも設けられている。
【0056】
ブラシ部40は、接近離脱方向Hにおいて、不働位置(図12に示す位置)にある磁気ヘッド20の磁気データの読み取りおよび書き込みを行う先端面20T(図5(a)および(b)を援用的に参照)と、同じ位置に設けられている。
【0057】
本磁気リーダライタにおいても、第1、第2の実施形態と同様に、磁気ヘッド20が接近離脱方向Hにおいて不働位置から読み取り位置に移動するときと、不働位置にある磁気ヘッド20がスライド方向Wに移動するときに、ブラシ部40によって先端面20Tの清掃がなされる。
【符号の説明】
【0058】
10 媒体支持部
11 ヘッド用開口部
12L 左側壁部
12R 右側壁部
20 磁気ヘッド
20S 側面
20T 先端面
30、35、40 ブラシ部
30A、35A 第1のブラシ片群
30B、35B 第2のブラシ片群
50H 第1のヘッド駆動機構
50W 第2のヘッド駆動機構
100 通帳
101 磁気ストライプ
101p 一端部
101d 他端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12