特許第6974891号(P6974891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6974891-マスク用シート及びマスク 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974891
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】マスク用シート及びマスク
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/02 20060101AFI20211118BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   A62B18/02 C
   A41D13/11 M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-79314(P2021-79314)
(22)【出願日】2021年5月7日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3226217号
【原出願日】2020年2月28日
(65)【公開番号】特開2021-165455(P2021-165455A)
(43)【公開日】2021年10月14日
【審査請求日】2021年5月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504108772
【氏名又は名称】メディカル・エイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 英樹
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−34640(JP,A)
【文献】 特開平4−41753(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/003831(WO,A1)
【文献】 特開平11−19238(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0128619(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口及び鼻孔の周辺部を覆うマスクの内部に装着され、前記着用者の呼気に含まれる水分が接触する位置に配置されるマスク用シートであって、
合成繊維の全面を銀で被覆してなるフィラメントの5〜20本を撚り合わせた撚糸のみを用い、トリコット編みによりメッシュ状に編んだメッシュシートであり、
前記メッシュシートにおける編目の目開きが1mm以上であり、
前記銀の少なくとも一部が前記水分に接触して銀イオンに変化するマスク用シート。
【請求項2】
請求項に記載のマスク用シートを備えるマスク本体部と、
前記マスク本体部に連結され、前記マスク本体部を着用者の顔面下部に固定するための固定部と、
を有することを特徴とするマスク。
【請求項3】
前記マスク本体部は、前記マスク用シートを挿入するためのポケット部を有することを特徴とする請求項記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用シート及びマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からマスクは、例えば、医療設備や市中においてインフルエンザ等のウイルスや病原菌の感染を防止したり、花粉や粉塵が多く存在する環境下で花粉や粉塵を防止するために使用されている。また、マスクは、食品の製造・加工工場等の衛生が要求される現場、掃除現場や排水処理施設等の臭気が発生する現場においても使用されている。このように、マスクの使用態様は、多岐にわたっている。
【0003】
種々のマスクが知られており、例えば特許文献1には、リン酸基を有する微細繊維状セルロースに対して金属化合物水溶液を接触させることで、銀等の金属を担持した繊維状セルロースからなるシート状体と、消臭層等とを重ね、不織布層で挟んだマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020−2483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の繊維状セルロースを有するシート状体では、機能性物質の捕捉性に優れたものとなるが、マスクにおける更なる性能向上に対する要求が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、下記のマスク用シート及びマスクを提供する。
(1) 着用者の口及び鼻孔の周辺部を覆うマスクの内部に装着され、前記着用者の呼気に含まれる水分が接触する位置に配置されるマスク用シートであって、
合成繊維の全面を銀で被覆してなるフィラメントの5〜20本を撚り合わせた撚糸のみを用い、トリコット編みによりメッシュ状に編んだメッシュシートであり、
前記メッシュシートにおける編目の目開きが1mm以上であり、
前記銀の少なくとも一部が前記水分に接触して銀イオンに変化するマスク用シート。
(2)上記(1)に記載のマスク用シートを備えるマスク本体部と、
前記マスク本体部に連結され、前記マスク本体部を着用者の顔面下部に固定するための固定部と、
を有することを特徴とするマスク。
(3) 前記マスク本体部は、前記マスク用シートを挿入するためのポケット部を有することを特徴とする(2)記載のマスク。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマスク用シート及びマスクによれば、メッシュシートを構成する銀の表面積を大幅に増やすことができ、より効果的に除菌、殺菌、抗菌、または消臭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のマスク用シートとして、トリコット編みしたメッシュシートを示す平面模式図である。
図2図2は、本発明のマスク用シートの他の例として、チュール編みしたメッシュシートを示す平面模式図である。
図3図3は、本発明のマスクの一例を示す斜視図である。
図4図4は、本発明のマスクの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
(マスク用シート)
本発明のマスク用シート10は、合成繊維を銀で被覆してなるフィラメントを、複数本撚り合わせた撚糸1をメッシュ状に編んだメッシュシートである。合成繊維としては、ポリエステル繊維やポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、アクリル樹脂繊維等を挙げることができる。また、合成繊維は、少なすぎても強度や耐久性が不足し、多すぎても可撓性や柔軟性が不足するため、合成繊維の撚り本数としては5〜20本が適当である。
【0011】
撚糸1の編み方としては、伸縮性に優れることから経編みが好ましく、例えばトリコット編みを挙げることができる。図1は、トリコット編みしたマスク用シート10を示す平面図であり、銀を被覆したフィラメントを複数本撚り合わせた撚糸1が、六角形状に編まれている。
【0012】
また、経編みの他の例として、図2に示すようなチュール編みを挙げることができる。図示されるチュール編みは、1枚オサのガイドにすべて通糸してメッシュ状のチュール組織Cを編成する。その際、ウエ−ルWからウエ−ルWにシンカーループSを通して略正六角形状の編目Hを形成する。また、挿入糸Lを用いて一本のシンカーループSの箇所を2本の編成糸SLとしてもよい。
【0013】
メッシュ状に編むときの編目の大きさ、即ち目開きは1mm以上であることが好ましい。編目の形状は、強度的に略正六角形状が好ましいが、その場合は円相当径で直径1mm以上とする。目開きが1mm未満では、通気性に劣るようなる。尚、目開きの上限は、編目が粗すぎると後述される抗菌効果や消臭効果等が十分に得られないおそれがあるため、3mm以下にすることが適当である。なお、編目の形状は、略正六角形状に限定されず、整形によっては、矩形や平行四辺形を含む多角形であればよい。
【0014】
銀は銀イオンを生じるが、この銀イオンは不安定な状況にあり、プラスに帯電する。そのため、マイナスに帯電している菌の酸素と結びつこうとして菌の細胞壁に付着し、細胞壁が破壊されて死滅(殺菌作用)させる。また、細胞壁が強い菌では細胞壁が破壊されないが、プラスイオンが細胞壁に付着するとタンパク合成の阻害を起こして分裂できなくなり、菌の増殖を抑える。更に、銀イオンは触媒として水をヒドロキシラジカルと水素ラジカルとに分解し、そのヒドロキシラジカルがウイルスや菌の中に取り込まれることによって細胞壁を破壊する。従って、幅広いウイルスや菌に対して殺菌効果や抗菌効果を期待することができる。
【0015】
銀イオンは、消臭作用も有する。銀イオンは雑菌の増殖を防ぐため、雑菌による腐敗臭を抑止する。更に、マイナスに帯電した悪臭分子を吸着することによって、酸化分解させて汗腺・皮脂線からの悪臭分子と細菌の増殖が原因で発生する体臭を抑止する。
【0016】
花粉やハウスダスト(アレル物質)はプラスとマイナスの両方に帯電しているが、銀イオンはプラスに帯電しているため、プラスに帯電したアレル物質は反発し、マイナスに帯電したアレル物質は吸着され、その活動を抑える。
【0017】
銀はこれらの効果があるが、銀は食器等に使われたり、殺菌剤や鼻用剤、点眼剤等の医薬に使用されており、通常の臨床試験では毒性を示す証拠は殆ど見られず、発癌性もないとされており、安全性も高い。
【0018】
更には、銀は塩素によってイオン化しやすくなる。人の呼気や唾液にも塩素が含まれているため、銀はマスク内でイオン化しやすい。また、水道水には微量の塩素が含まれているため、水洗いすると銀はイオン化して殺菌作用や消臭作用が発現し、本発明のマスク用シートは、水洗いするだけで何度も繰り返して使用することができる。
【0019】
尚、銀による被覆は繊維の全面が好ましいが、繊維の一部であってもよい。銀の被覆量が多いほど上記した効果が多く得られるが、過剰になっても効果が飽和するばかりでなく、高コストになる。具体的には、質量比で、フィラメント(繊維量):銀=60:40〜80:20が好ましい。また、被覆方法としては、無電解メッキが簡易で好適である。
【0020】
上述したように、本発明のマスク用シート10は、銀の表面積が大幅に大きくなるので、銀イオンが発生する量や銀イオン濃度が高まる時間を短縮することができ、より効果的に除菌、殺菌、抗菌、または消臭することができる。
また、本マスク用シート10は、洗濯しても抗菌性は劣化しないので、何度も繰り返して使用でき、長時間銀イオンを発生させる効果を維持することができる。
【0021】
銀による殺菌効果を検証するために、下記の試験を行った。この試験は、財団法人日本化学繊維検査協会 生物試験センターにて以下の通り行った。
【0022】
(試験品)
銀をナイロンの表面に無電解メッキしたフィラメントの撚糸を、ハニカム形状にトリコット編みして試験品(MGネット100:メディカル・エイド株式会社製)とした。フィラメントにおける銀の被覆量は、ナイロン70質量%、銀30質量%であり、試験品の大きさは、巾90mm×高さ70mm×厚み0.2mmである。また、目開きは1.0mm、撚糸の直径は0.2mm、繊維1本の直径は0.02mm(フィラメント12本の場合)である
(試験機関)
財団法人 日本化学繊維検査協会 生物試験センター
(試験内容)
抗菌性及び殺菌性(統一試験法)
(試験概要)
統一試験法に基づき培養液に試験品と、銀被覆無しのナイロン標準白布を浸し、そこに各種生菌を同数量接種し、18時間経過後の生菌数を検査した。尚、生菌数を数える際に培養液を20倍に薄めており、生菌数が0個の場合は生菌数20以下という表示になる。更に、高温加速洗濯法(JIS L 0217、103号、JAFET標準洗剤を使用)に基づき、洗濯を10回と50回行った後に同じ試験をした際の生菌数も検査した。(試験用細菌種)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538P)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae ATCC 4352、MRSA Methicillin Resistant Staphylococcus aureus ID 1677)、大腸菌Escherichia coli O157:H7 ATCC 43888)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC 3080) (菌の培養基)
Luria broth(トリプトン10g、イースト抽出体5g、食塩0.5gを水1リットルに溶解)
【0023】
試験結果は、下記の通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
SEK規格(繊維製品新機能評価協議会規格)では静菌活性値が2.2以上で抗菌性が良好とされているが、上記表1〜5から明らかなように、本発明に従う試験品は静菌活性値だけでなく、殺菌活性値も最高レベルである。
【0030】
(マスク)
本発明のマスクは、図3に示すように、上記したマスク用シート10(図3では図示せず)を備えるマスク本体部11と、マスク本体部11に連結され、マスク本体部11を着用者の顔面下部に固定するための固定部である耳掛け部13とを備える。耳掛け部13は、ループ状もしくは紐状の伸縮性材料から構成されることが好ましい。伸縮性材料としては、ゴム糸と綿の交織帯や、樹脂フィラメントの交編ネット、伸縮性の不織布等を挙げることができる。
【0031】
マスク本体部11は、マスク用シート10を不織布やガーゼで包囲したものである。例えば、図4に示すように、マスク本体部11には、略同じ大きさの2枚の不織布(表側シート及び裏側シート)の両側端部及び下端部(上下端部の一方)を溶着などにより結合し、2枚の不織布の上端部(上下端部の他方)を開口としたポケット部14を2枚の不織布によって形成し、このポケット部14の開口からマスク用シート10を挿入してもよい。あるいは、2枚の不織布は、これらの両側端部を結合して、上端部及び下端部の開口からマスク用シート10を挿入可能なポケット部14を構成してもよい。また、マスク用シート10は単独で使用してもよいが、必要に応じて、例えば芳香作用や保湿作用を有するシートを積層してもよい。また、マスク本体部11は、プリーツ状の立体形状を形成し得る折り目を有することが好ましい。このような折り目は、マスク本体部11に襞状に形成され、両側端部が接合されることによって端部で形状を保持する。すなわち、両側端部の接合部で折り目の展開が阻止され、両側端部領域の間に位置する中間領域において、装着時に折り目が展開されることで、マスク本体部11のプリーツが広げられ立体形状が形成される。なお、非装着時にはプリーツが閉じてかさばらない平面状とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 撚糸
10 マスク用シート
11 マスク本体部
13 耳かけ部(固定部)
図1
図2
図3
図4