(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各患者が、認知症問題行動に関して症状有りと回答した症状及びストレスに関して症状有りと回答した症状を前記各患者対応に記憶すると共に、模範となる施術者によって前記各患者に対して人体ケア療法を行った後の症状の評価値を、前記患者の名、前記模範となる施術者の名及び前記人体ケア療法の内容と共に記憶する評価用データベースを有しており、該評価用データベースに記憶されている前記評価値の偏差値をベイズ統計学に基づいて算出し、該算出した偏差値が所定範囲内の症状を、前記人体ケア療法に関して取得すべき症状であると判定する評価用人工知能装置と、
前記評価用人工知能装置によって判定された、取得すべき症状を記憶すると共に、該取得すべき症状を有する患者に関して、任意の施術者によって人体ケア療法を行った後の人体ケア療法の内容の評価値を、該人体ケア療法の内容、前記患者の名、前記任意の施術者の名及び前記症状と共に記憶する実施用データベースを有しており、前記実施用データベースに記憶されている前記評価値の偏差値をベイズ統計学に基づいて算出し、少なくとも、該算出した偏差値と前記人体ケア療法の内容との関係をディープラーニングにより求める実施用人工知能装置と、
を備えていることを特徴とするデュアルコア判定システム。
前記実施用人工知能装置が、前記実施用データベースに記憶されている前記評価値に関して算出した前記偏差値と、前記患者の名、前記任意の施術者の名又は前記症状との関係をディープラーニングにより求めるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデュアルコア判定システム。
前記評価用人工知能装置が、該評価用人工知能装置によって入力された症状の数があらかじめ定めた第1の所定値を超えた場合に、動作を終了するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデュアルコア判定システム。
前記実施用人工知能装置が、該実施用人工知能装置によって入力された症状の数があらかじめ定めた第2の所定値を超えた場合に、症状の入力を終了するか動作を終了するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデュアルコア判定システム。
前記人体ケア療法の内容が、該人体ケア療法の施術の時間帯、該人体ケア療法の施術場所、該人体ケア療法の施術の人的環境、及び該人体ケア療法における手技を含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のデュアルコア判定システム。
前記認知症問題行動に関しての症状が、認知症の中核症状、認知症の周辺症状及び認知症の頻度を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のデュアルコア判定システム。
前記実施用データベースが、前記取得すべき症状を有する患者に関して、年齢、性別、生活環境、食生活、介護環境、及び人的交流を含む患者個人環境及び背景情報、並びに認知症、代謝性疾患、慢性炎症性疾患、慢性内分泌疾患、慢性呼吸疾患、慢性循環器疾患、及び悪性腫瘍を含む疾病情報を記憶するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデュアルコア判定システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明のデュアルコア判定システムの一実施形態の電気的構成を概略的に示している。本実施形態のシステムは、人体ケア療法としてタクティールケアを行う場合に、どのような症状に対してどのような内容のタクティールケアが最適であるか、どのような施術者が最適であるか等を判定するシステムである。なお、本発明は、人体ケア療法として、タクティールケアの他に、従来では統計学的に評価不可能だった代替療法である整体療法、エステ等の美容療法等のタッチングケア及びその他の療法にベイズ統計に基づく統計学的評価として適用可能である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態におけるデュアルコア判定システム10は、データバス10kに接続された評価用人工知能(AI)装置10aと、この評価用AI装置10aに接続された評価用データベース(DB)10bと、データバス10kに接続された実施用人工知能(AI)装置10cと、この実施用AI装置10cに接続された実施用データベース(DB)10dと、データバス10kに接続された中央処理装置(CPU)10eと、データバス10kに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)10fと、データバス10kに接続されたリードオンリーメモリ(ROM)10gと、データバス10kに接続されたディスプレイ10hと、データバス10kに接続された入力キーボード10iと、データバス10kに接続された通信インターフェース(IF)10jとを備えたコンピュータ及びこれを動作させるプログラムから構成される。
【0022】
評価用AI装置10a及び実施用AI装置10cは、例えば、パイソン(Python)等のプログラミング言語を用いて機械学習アルゴリズム、及びディープラーニングアルゴリズムを構築したAI装置である。
【0023】
評価用DB10b及び実施用DB10dは、例えば、マイクロソフト社のSQLサーバーをインストールすることにより作成されたデータベースである。
【0024】
CPU10eは、ROM10gに記憶されているオペレーションシステム(OS)やブートプログラム等の基本プログラムに従って評価用AI装置10a及び実施用AI装置10cを含むシステム全体の動作を制御する。
【0025】
ROM10gはCPU10eを動作させるプログラム及びデータがあらかじめ格納されている。
【0026】
RAM10fはメインメモリとして使用され、ROM10gから転送されたプログラムやデータを一時的に保存するように構成されている。また、このRAM10fは、プログラム実行時の各種データが一時的に保存されるワークエリアとしても使用される。
【0027】
このような構成のコンピュータにおいて、CPU10eは、処理動作時は、まず、RAM10f内にプログラム記憶領域、データ記憶領域及びワークエリアを確保し、ROM10gからプログラム及びデータを取り込んで、プログラム記憶領域及びデータ記憶領域に格納する。次いで、このプログラム記憶領域に格納されたプログラムに基づいて、評価用AI装置10aは
図2a及び
図2bに示す処理動作を実行する。
【0028】
この処理動作の前に、種々の症状、患者個人環境及び背景並びに疾病等に関する問診票の内容に対して、タクティールケアを施術する各患者(被施術者)及び施術者又は管理者による回答が行われる。
【0029】
問診票は、後述する認知症問題行動の症状及びストレスの症状のセットと、患者個人環境及び背景のセットと、疾病のセットと、タクティールケア方法のセットとの4つの区分で仕切られており、本実施形態では、各質問に該当する場合は「1」を、該当しない場合は「0」を入力して回答するように構成されている。これら入力事項は、2次元数列化することが可能であり、これにより、入力事項を画像認識することが可能となる。例えば、認知症問題行動の症状について、その項目と重症度判定を5つに分けることで、5×X(Xは症状の数)の2次元数列を構成することができる。なお、問診票をコンピュータ化し、各患者がコンピュータを操作して回答するように構成することも可能である。
【0030】
問診票の質問事項の各セットは、以下の通りである。
認知症問題行動の症状のセット
(A)中核症状
(A1)記憶障害
(A2)実行機能障害
(A3)失行
(A4)失認
(A5)失語
(B)周辺症状
(B1)妄想
(B2)幻覚
(B3)誤認
(B4)カプグラ症候群
(B5)プレゴリ症候群
(B6)相互変身症候群
(B7)抑うつ
(B8)不眠
(B9)不安
(B10)攻撃的行動
(B11)徘徊
(B12)不穏
(B13)焦燥
(B14)社会通念上不適切な行動と性的脱抑制
(B15)落ち着かず部屋の中を行ったり来たり
(B16)叫声
(B17)泣き叫ぶ
(B18)ののしる
(B19)無気力
(B20)繰り返し尋ねる
(B21)シャドーイング(付きまとい)
(C)頻度
(C1)ほぼ毎日 :1
(C2)ほぼ2日に一度:2
(C3)ほぼ週に一度 :3
(C4)それ以上の間隔:4
ストレスの症状のセット
(D)心理面の反応
(D1)不安、落ち込み、罪悪感がある
(D2)恐怖感、緊張、イライラ感がある
(D3)孤独感、疎外感、無気力がある
(E)行動面の反応
(E1)怒りの爆発や攻撃的な行為、過激な行動がある
(E2)突然意味もなく涙が出ることがある
(E3)誰とも会いたくないという感情や、孤立したり、引きこもることがある
(E4)拒食や過食など摂食の障害がある
(E5)瞼が意味もなく痙攣するチック症状がある
(E6)アルコール、ギャンブル、などの依存行動がある
(F)身体面の反応
(F1)心臓に問題はないけど動悸を感じることがある
(F2)原因不明の発熱や冷感を感じる
(F3)頭痛を感じる
(F4)腹痛を感じる
(F5)疲労感がある、疲れてだるく何もできないことがある
(F6)食欲がわかないことがある
(F7)嘔吐感などがあり胃の調子がおかしいと感じる
(F8)下痢や便秘など排便の障害がある
(F9)のぼせ感を感じることがある
(F10)めまいを感じることがある
(F11)手足のしびれを感じることがある
(F12)息苦しさを感じることがある
(F13)睡眠の障害がある。寝つきが悪い、夢をよく見る、途中で起きてしまうことがある
【0031】
このような問診票の質問事項データと患者の回答データとが、入力キーボード10i等を介してシステムに入力されることにより判定処理が開始可能となる。具体的には、本実施形態では、患者の回答が、問診票のある症状について症状有りの場合に、その症状コードについて「1」が各患者対応で入力され(
図2aのステップS1)、評価用AI装置10aの評価用DB10bに記憶される(
図2aのステップS2)。その際に、後述する患者個人の環境及び背景の回答並びに疾病に関する回答も症状番号に紐付けして記憶される。従って、評価用DB10bには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、下記のような患者個人環境及び背景のセットと、疾病のセットにおける各コードの「1」又は「0」とが紐づけされて記憶される。
【0032】
患者個人環境及び背景のセット
(G1)年齢
(G2)性別
(G3)生活環境について
a)独居
b)日中独居
c)75歳以上の老人夫婦
d)夫婦
e)独身の子息と同居
f)子息と同居
(G4)食生活について(全食事の60%以上をどうしているか)
a)自炊中心
b)スーパーなどの総菜中心
c)配色サービスの利用中心
d)インスタント食品中心
e)食堂など
(G5)介護環境について
介護状況:
a)要支援1
b)要支援2
c)要介護1
d)要介護2
e)要介護3
f)要介護4
g)要介護5
h)自立
主な介護場所:
a)自宅
b)通所系介護事業所
c)グループホーム
d)特養
e)老健
f)サ高住
g)有料老人ホーム
(G6)人的交流(普通の日に一日に会話をする人の数、商店などでの対話を除く)について
a)一人もいない
b)一人
c)2~3人
d)7人以下
e)7人以上
疾病のセット
(H1)認知症について
a)MMSE(Mini Mental State Examination)
の点数: /30
b)アルツハイマー型認知症
c)レビー小体型認知症
d)前頭葉側頭葉型認知症:ピック病
e)脳血管型認知症
f)硬膜下血種後遺型認知症
g)脳梗塞後認知症
h)脳腫瘍型認知症
i)脳外傷性認知症
(H2)代謝性疾患:
a)糖尿病
b)高尿酸血症
c)高脂血症
d)その他
(H3)慢性炎症性疾患:
a)膠原病
b)悪性リウマチ
c)SLE
d)慢性肺炎
e)慢性胃腸炎
f)その他
(H4)慢性内分泌疾患:
a)甲状腺機能異常
b)膵炎
c)脳下垂体異常
d)その他
(H5)慢性呼吸疾患:
a)睡眠時無呼吸症候群
b)慢性閉塞性肺疾患
c)その他
(H6)慢性循環器疾患:
a)慢性心不全
b)弁膜症
c)心筋症
d)閉塞性動脈硬化症
e)その他
(H7)悪性腫瘍:腹腔内腫瘍(転移性腫瘍も含む)
a)ステージ1
b)ステージ2
c)ステージ3
d)ステージ4
(H8)悪性腫瘍:腹腔外腫瘍
a)ステージ1
b)ステージ2
c)ステージ3
d)ステージ4
【0033】
次いで、このように入力された症状の数が2000〜5000のうちの第1の所定値(例えば、3000)を超えたかどうか判別され(
図2aのステップS3)、症状数が第1の所定値を超えていないと判別された場合(NOの場合)、ステップS1へ戻って、上述したステップS1〜S3の処理が繰り返される。
【0034】
図2aのステップS3において、症状の数が第1の所定値を超えたと判別された場合(YESの場合)、評価用AI装置10aの処理動作が一時的に終了する。
【0035】
その後、よく訓練されたと認定されている施術者(模範となる施術者)によって、各患者に所定のタクティールケアを施術する。タクティールケアの内容については、以下の通りである。
タクティールケアの内容のセット
(I1)施術者名
(I2)施術(手技)の内容
(I3)施術の時間
a)8時30分から12時まで
b)12時から15時まで
c)15時から18時30分まで
d)18時30分から翌日8時30分まで
(I4)施術の物理的環境
a)個室
b)特別な施術室
c)大部屋
(I5)施術を行う場所での環境
a)立ち合い人数 1
b)施術者と二人
c)施設職員などと一緒
d)家族と一緒
(I6)手技の種類
a)利き腕の手のケア
b)利き腕でない手のケア
c)両手のケア
d)背中のケア
e)利き足のケア
f)利き足でない足のケア
g)両足のケア
h)おなかのケア
i)顔のケア
j)頭のケア
【0036】
このように模範となる施術者によってタクティールケアの施術をした後に、その症状の改善度を各患者、施術者又は第三者(例えば看護師)が評価し回答することにより評価が行われる。具体的には、評価用AI装置10aの処理動作が再開され、その施術による症状の改善度(評価値)が入力キーボード10i等を介してシステムに入力され(
図2bのステップS4)、評価用AI装置10aの評価用DB10bに記憶される(
図2bのステップS5)。タクティールケアとしては、例えば、手のタクティールケアを、時間を問わず、1日1回、1週間で5回行う。各症状の改善度(評価値)は、次のように評価0〜4の数値で回答される。
症状が悪化した又は変化無かった(悪化、変化なし):評価0
症状の改善にやや有効であった(やや有効) :評価1
症状の改善に有効であった(有効) :評価2
症状の改善に著しく有効であった(著効) :評価3
症状が消失した(症状消失) :評価4
例えば、症状B11(徘徊)について評価2、症状B11(徘徊)について評価3、症状B11(徘徊)について評価0などが回答され、記憶される。従って、評価用DB10bには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、疾病コードの「1」又は「0」と、模範となる施術者の名及びタクティールケアの内容と、評価値とが紐づけして記憶される。この評価が患者によって行われたのか、施術者によって行われたのか、又は第三者によって行われたのかも紐づけして記憶される。
【0037】
次いで、評価値の少なくとも偏差値がベイズ統計学に基づいて算出され(
図2bのステップS6)、評価用AI装置10aの評価用DB10bに記憶される(
図2bのステップS7)。具体的には、例えば、症状の総数が1000、症状として徘徊の数が500、評価0が125、評価1が75、評価2が150、評価3が100、評価4が50であるとする。この場合、全症例に対する徘徊(B11)の出現率は500/1000=0.5となる。ベイズ推定において、0は棄却事象となるため、徘徊(B11)の有効率は(500−125)/500=0.75となる。評価点数の平均μ
xは、μ
x=(1×75+2×150+3×100+4×50)/375=875/375=2.33となり、標準偏差σ
xは、{75(1−2.33)
2+150(2−2.33)
2+100(3−2.33)
2+50(4−2.33)
2}/(75+150+100+50)=322/375=0.85の平方根となる。即ち、σ
x=√(0.85)=0.92となる。変動(分散)係数は、0.92/2.33=0.39となる。そのときの評価1の偏差値T
1は、T
1=10(1−2.33)/0.92+50=33.54となる。評価2の偏差値T
2は、T
2=10(2−2.33)/0.92+50=46.41となり、評価3の偏差値T
3は、T
3=10(3−2.33)/0.92+50=57.28となり、評価4の偏差値T
4は、T
4=10(4−2.33)/0.92+50=68.15となる。この徘徊(B11)の症状の有効出現頻度は、その有効率が0.75であるため、500×0.75/1000=0.375となる。症状の総数の確率を1とするために偏差値を加重平均する。例えば、症状が徘徊(B11)しかなく、その評価が2の有効のみである場合、この徘徊(B11)の有効出現頻度と評価2の偏差値T
2とから、0.375×(T
2=49.64)/0.375=49.64がこのトライアルの偏差値(事後確率)となる。その確率値(偏差値)をそのほかのサブセットに特徴数として割り当てる。サブセットを組み合わせて3つ以上の特徴数が与えられると、平均、標準偏差及び変動係数を得ることができる。
【0038】
次いで、算出された偏差値T
iが所定範囲であるか否か、即ち35≦Ti≦75であるか否かが判別される(
図2bのステップS8)。偏差値T
iが所定範囲ではない場合(NOの場合)、この評価用AI装置10aの処理動作が終了する。
【0039】
ステップS8において、偏差値T
iが所定範囲(35≦Ti≦75)にあると判別された場合(YESの場合)、タクティールケアがこの症状に効果的であり、その症状が実施用AI装置10cに入力すべき症状であると認識し、その症状のコードが他の情報と紐づけして評価用DB10bに記憶される(
図2bのステップS9)。この取得すべき症状のコードは、実施用AI装置10cの実施用DB10dにも記憶される。その後、この評価用AI装置10aの処理動作が終了する。
【0040】
次に、
図3a及び
図3bに示す、実施用AI装置10cの処理動作を説明する。実施用AI装置10cは、評価用AI装置10aによって評価された症状の数が第1の所定数を超えていない場合は、評価用AI装置10aと同一の動作を行う(
図3aのステップS11)。この動作は、評価用AI装置10aが作動停止となるまで繰り返される(
図3aのステップS12)。評価用AI装置10aに入力された症状の数が第1の所定数(例えば3000)を超えて、この評価用AI装置10aが動作停止となったと判別された場合(
図3aのステップS12でYESの場合)に、実施用AI装置10cは、評価用AI装置10aの場合と同様の処理を行う。
【0041】
まず、患者の回答が、問診票のある症状について症状有りの場合に、その症状コードについて「1」が各患者対応で入力される(
図3aのステップS13)。次いで、入力された症状が、取得すべき症状であるか否かが判別される(
図3aのステップS14)。即ち、入力された症状コードが、実施用DB10dに記憶されている取得すべき症状コードであるか否かが判別される。入力された症状コードが、取得すべき症状コードではないと判別された場合(NOの場合)、その入力された症状を記憶することなく、ステップS13に戻り、次の症状コードが入力される。入力された症状コードが、取得すべき症状コードであると判別された場合(YESの場合)、その症状コードが実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図3aのステップS15)。その際に、患者個人の後述する環境及び背景の回答も症状番号に紐付けして記憶される。従って、実施用DB10dには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、患者個人環境及び背景のセットと、疾病のセットにおける各コードの「1」又は「0」とが紐づけされて記憶される。即ち、実施用DB10dには、患者コードと、その患者が症状有りと回答した症状コードと、患者に関する年齢、性別、生活環境、食生活、介護環境、及び人的交流を含む患者個人環境及び背景情報と、認知症、代謝性疾患、慢性炎症性疾患、慢性内分泌疾患、慢性呼吸疾患、慢性循環器疾患、及び悪性腫瘍を含む疾病情報とが記憶される。
【0042】
次いで、このように評価された症状の数が第2の所定値(例えば、10000)を超えたかどうか判別され(
図3aのステップS16)、症状数が第2の所定値を超えていないと判別された場合(NOの場合)、ステップS13へ戻って、上述したステップS13〜S16の処理が繰り返される。
【0043】
図3aのステップS16において、症状の数が第2の所定値を超えたと判別された場合(YESの場合)、実施用AI装置10cの処理動作が一時的に終了する。
【0044】
その後、任意の施術者によって、各患者に任意のタクティールケアを施術した後に、その症状の改善度を各患者、施術者又は第三者(例えば看護師)が評価し回答することにより評価が行われる。具体的には、実施用AI装置10cの処理動作が再開され、その施術による症状の改善度(評価値)が入力キーボード10i等を介してシステムに入力され(
図3bのステップS17)、実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図3bのステップS18)。ここで、任意のタクティールケアとは、例えば、手のタクティールケア、背中のタクティールケア、足のタクティールケア、おなかのタクティールケア、顔のタクティールケア、又は頭のタクティールケアを、時間を問わず、1日1回、1週間で所定回行う施術である。各症状の改善度(評価値)は、前述の場合と同様に、次のように評価0〜4の数値で回答される。
症状が悪化した又は変化無かった(悪化、変化なし):評価0
症状の改善にやや有効であった(やや有効) :評価1
症状の改善に有効であった(有効) :評価2
症状の改善に著しく有効であった(著効) :評価3
症状が消失した(症状消失) :評価4
従って、実施用DB10dには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、疾病コードの「1」又は「0」と、施術者名、及びタクティールケアの内容と、評価値及び評価者とが紐づけして記憶される。
【0045】
次いで、評価値の少なくとも偏差値がベイズ統計学に基づいて算出され(
図3bのステップS19)、実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図3bのステップS20)。具体的には、例えば、症状の総数が1000、症状として徘徊の数が500、評価0が125、評価1が75、評価2が150、評価3が100、評価4が50であるとする。この場合、全症例に対する徘徊(B11)の出現率は500/1000=0.5となる。ベイズ推定において、0は棄却事象となるため、徘徊(B11)の有効率は(500−125)/500=0.75となる。評価点数の平均μ
xは、μ
x=(1×75+2×150+3×100+4×50)/375=875/375=2.33となり、標準偏差σ
xは、{75(1−2.33)
2+150(2−2.33)
2+100(3−2.33)
2+50(4−2.33)
2}/(75+150+100+50)=322/375=0.85の平方根となる。即ち、σ
x=√(0.85)=0.92となる。変動(分散)係数は、0.92/2.33=0.39となる。そのときの評価1の偏差値T
1は、T
1=10(1−2.33)/0.92+50=33.54となる。評価2の偏差値T
2は、T
2=10(2−2.33)/0.92+50=46.41となり、評価3の偏差値T
3は、T
3=10(3−2.33)/0.92+50=57.28となり、評価4の偏差値T
4は、T
4=10(4−2.33)/0.92+50=68.15となる。この徘徊(B11)の症状の有効出現頻度は、その有効率が0.75であるため、500×0.75/1000=0.375となる。症状の総数の確率を1とするために偏差値を加重平均する。例えば、症状が徘徊(B11)しかなく、その評価が2の有効のみである場合、この徘徊(B11)の有効出現頻度と評価2の偏差値T
2とから、0.375×(T
2=49.64)/0.375=49.64がこのトライアルの偏差値(事後確率)となる。その確率値(偏差値)をそのほかのサブセットに特徴数として割り当てる。サブセットを組み合わせて3つ以上の特徴数が与えられると、平均、標準偏差及び変動係数を得ることができる。
【0046】
次いで、算出された偏差値T
iが所定範囲であるか否か、即ち35≦Ti≦75であるか否かが判別される(
図3bのステップS21)。偏差値T
iが所定範囲ではない場合(NOの場合)、この実施用AI装置10cの処理動作が終了する。
【0047】
ステップS21において、偏差値T
iが所定範囲(35≦Ti≦75)にあると判別された場合(YESの場合)、この偏差値T
iとタクティールケアの内容との関係がディープラーニングを用いた自動機械学習によって求められる(
図3bのステップS22)。例えば、偏差値T
iとタクティールケアの施術の時間帯との関係、偏差値T
iとタクティールケアの施術場所との関係、偏差値T
iとタクティールケアの施術の人的環境との関係、及び偏差値T
iとタクティールケア手技との関係、さらに、偏差値T
iとタクティールケアの患者の名との関係、偏差値T
iとタクティールケアの施術者の名との関係、及び偏差値T
iとタクティールケアの症状との関係がディープラーニングを用いた自動機械学習によって求められる。次いで、求めた関係が実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図3bのステップS23)。これにより、実施用AI装置10cの処理動作が終了する。
【0048】
本実施形態におけるデュアルコア判定システムにおいては、以上の動作が繰り返して行われる。繰り返して動作するたびに、得られる数値は変化する。そして、自動機械学習するたびにサブバージョンを上昇させる。症状のセットに大きな変更があった場合には、バージョンが1つ上がる。また、サブセットの項目を変化させた場合にバージョンが上がる。さらに、自動機械学習させる都度、3項目のバージョンが以下のように上がる。例えば、Ver.2.4.35であれば、症状の項目に2回目の変更をかけ、サブドメインに4回目の変更をかけ、35回自動機械学習をさせたバージョンということになる。前述のごとく、実施用AI装置10cについては、10000データごとに自動機械学習させている。多数のデータを取得することによって、多変数についての解析が可能となる。これらの新たなデータの構築には人為が全く入っておらず、実際の数値をベイズ統計学に基づいて計算して得た結果であり、いままで何となく考えていたことが客観的に評価できるようになる点が本発明の特徴点である。また、データを集めれば集めるほど真実に近づくということも、重要な利点である。その結果、一度に多変数解析が可能となり、今まで感覚で行っていた行為を数値化した効果で評価できるようになる。
【0049】
認知症問題行動に関する症状及びストレスに関する症状と、これら症状に対するタクティールケアの内容、施術者及び患者との因果関係は非常に複雑であり、その関係を表すデータは膨大な量となるが、評価用AI装置10aによって、システムが取得すべき症状を判定し、その取得すべき症状のみについて実施用AI装置10cが動作するように構成されている。即ち、取得すべき症状を有する患者に関して、実施用AI装置10cによって、タクティールケアを行った後のその内容の評価値の偏差値をベイズ統計学に基づいて算出し、算出した偏差値と人体ケア療法の内容との関係をディープラーニングにより求めている。実施用AI装置10cが、全ての症状について、偏差値とタクティールケアの内容との関係を求めるのではなく、評価用AI装置10aによってシステムが取得すべき症状であると判定した症状についてのみ、このような偏差値と人体ケア療法の内容との関係を求めているため、システムの処理するデータ量は大幅に少なくなるから、データ処理時間の短縮化を図ることができる。また、評価用AI装置10aによって判定された取得すべき症状が模範となる施術者によって正しく実施されたものであるため、実施用AI装置10cによって得られる大量のデータ(メガデータ)に含まれるノイズは非常に少なく、高い信頼性を有するデータとなる。さらに、評価用AI装置10a及び実施用AI装置10cが、偏差値をベイズ統計学に基づいて算出しているため、これによって得られるデータは、客観的かつ科学的なエビデンスに基づくものとなる。
【0050】
このように、本実施形態では、評価用AI装置10a及び実施用AI装置10cという2つの人工知能が協調して1つの現象を解析することで、複数の現象の出現確率を推定できる。即ち、小さな「正しいと定義した」人工知能を評価する側として、その評価により機械学習を自動化させ、より進化させるディープラーニングに結びつけようとするものである。正しいと思われるものを人為の作業ではなく、人工知能という機械に判定させている。そして、1つのことを両者の協調で行うことにより、お互いが進化していく仕組みが論理的かつ数学的に作れることを初めて示したものである。
【0051】
次に、本発明のデュアルコア判定システムの他の実施形態について説明する。この実施形態の電気的構成は
図1に示したものと同様であるため、説明は省略する。
図4a及び
図4bはこの実施形態における評価用AI装置の動作を概略的に示しており、
図5a及び
図5bはこの実施形態におけるデュアルコア判定システムの実施用AI装置の動作を概略的に示している。
【0052】
本実施形態においては、評価値の偏差値の算出を症状の数が第1の所定値及び第2の所定値を超えてから行うのではなく、その都度行うようにしている。即ち、本実施形態では、RAM10f内のプログラム記憶領域に格納されたプログラムに基づいて、評価用AI装置10aは
図4a及び
図4bに示す処理動作を実行する。
【0053】
前述の実施形態の場合と同様に、この処理動作の前に、種々の症状、患者個人環境及び背景並びに疾病等に関する問診票を作成しておき、これに、タクティールケアを施術する各患者(被施術者)及び施術者又は管理者が回答することが行われる。
【0054】
問診票は、後述する認知症問題行動の症状及びストレスの症状のセットと、患者個人環境及び背景のセットと、疾病のセットと、タクティールケア方法のセットとの4つの区分で仕切られており、各質問に該当する場合は「1」を、該当しない場合は「0」を入力して回答するように構成されている。これら入力事項は、2次元数列化することが可能であり、これにより、入力事項を画像認識することが可能となる。例えば、認知症問題行動の症状について、その項目と重症度判定を5つに分けることで、5×X(Xは症状の数)の2次元数列を構成することができる。
【0055】
問診票の質問事項の各セットは、前述の実施形態における認知症問題行動の症状のセット及びストレスの症状のセットの通りである。
【0056】
このような問診票の質問事項データと患者の回答データとが、入力キーボード10i等を介してシステムに入力されることにより判定処理が開始可能となる。具体的には、本実施形態では、患者の回答が、問診票のある症状について症状有りの場合に、その症状コードについて「1」が各患者対応で入力され(
図4aのステップS31)、評価用AI装置10aの評価用DB10bに記憶される(
図4aのステップS32)。その際に、後述する患者個人の環境及び背景の回答並びに疾病に関する回答も症状番号に紐付けして記憶される。従って、評価用DB10bには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、前述の実施形態と同様な患者個人環境及び背景のセットと、疾病のセットにおける各コードの「1」又は「0」とが紐づけされて記憶される。
【0057】
これにより、評価用AI装置10aの処理動作が一時的に終了する。
【0058】
その後、よく訓練されたと認定されている施術者(模範となる施術者)によって、各患者に所定のタクティールケアを施術する。タクティールケアの内容は、前述の実施形態におけるタクティールケアの内容と同様である。
【0059】
このように模範となる施術者によってタクティールケアの施術をした後に、その症状の改善度を各患者、施術者又は第三者(例えば看護師)が評価し回答することにより評価が行われる。具体的には、評価用AI装置10aの処理動作が再開され、その施術による症状の改善度(評価値)が入力キーボード10i等を介してシステムに入力され(
図4bのステップS33)、評価用AI装置10aの評価用DB10bに記憶される(
図4bのステップS34)。タクティールケアとしては、例えば、手のタクティールケアを、時間を問わず、1日1回、1週間で5回行う施術である。各症状の改善度(評価値)は、前述の実施形態における評価0〜4の数値と同じである。例えば、症状B11(徘徊)について評価2、症状B11(徘徊)について評価3、症状B11(徘徊)について評価0などが回答され、記憶される。従って、評価用DB10bには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、疾病コードの「1」又は「0」と、模範となる施術者の名及びタクティールケアの内容と、評価値とが紐づけして記憶される。この評価が患者によって行われたのか、施術者によって行われたのか、又は第三者によって行われたのかも紐づけして記憶される。
【0060】
その後、評価値の少なくとも偏差値がベイズ統計学に基づいて算出され(
図4bのステップS35)、評価用AI装置10aの評価用DB10bに記憶される(
図4bのステップS36)。具体的には、例えば、症状の総数が1000、症状として徘徊が500、評価0が125、評価1が75、評価2が150、評価3が100、評価4が50であるとする。この場合、全症例に対する徘徊(B11)の出現率は500/1000=0.5となる。ベイズ推定において、0は棄却事象となるため、徘徊(B11)の有効率は(500−125)/500=0.75となる。評価点数の平均μ
xは、μ
x=(1×75+2×150+3×100+4×50)/375=875/375=2.33となり、標準偏差σ
xは、{75(1−2.33)
2+150(2−2.33)
2+100(3−2.33)
2+50(4−2.33)
2}/(75+150+100+50)=322/375=0.85の平方根となる。即ち、σ
x=√(0.85)=0.92となる。変動(分散)係数は、0.92/2.33=0.39となる。そのときの評価1の偏差値T
1は、T
1=10(1−2.33)/0.92+50=33.54となる。評価2の偏差値T
2は、T
2=10(2−2.33)/0.92+50=46.41となり、評価3の偏差値T
3は、T
3=10(3−2.33)/0.92+50=57.28となり、評価4の偏差値T
4は、T
4=10(4−2.33)/0.92+50=68.15となる。この徘徊(B11)の症状の有効出現頻度は、その有効率が0.75であるため、500×0.75/1000=0.375となる。症状の総数の確率を1とするために偏差値を加重平均する。例えば、症状が徘徊(B11)しかなく、その評価が2の有効のみである場合、この徘徊(B11)の有効出現頻度と評価2の偏差値T
2とから、0.375×(T
2=49.64)/0.375=49.64がこのトライアルの偏差値(事後確率)となる。その確率値(偏差値)をそのほかのサブセットに特徴数として割り当てる。サブセットを組み合わせて3つ以上の特徴数が与えられると、平均、標準偏差及び変動係数を得ることができる。
【0061】
次いで、算出された偏差値T
iが所定範囲であるか否か、即ち35≦Ti≦75であるか否かが判別される(
図4bのステップS37)。偏差値T
iが所定範囲ではない場合(NOの場合)、
図4bのステップS39へ進み、偏差値T
iが所定範囲(35≦Ti≦75)にあると判別された場合(YESの場合)、タクティールケアがこの症状に効果的であり、その症状が実施用AI装置10cに入力すべき症状であると認識し、その症状のコードが他の情報と紐づけして評価用DB10bに記憶される(
図4bのステップS38)。この取得すべき症状のコードは、実施用AI装置10cの実施用DB10dにも記憶される。
【0062】
次いで、このように評価された症状の数が2000〜5000のうちの第1の所定値(例えば、3000)を超えたかどうか判別され(
図4bのステップS39)、症状数が第1の所定値を超えていないと判別された場合(NOの場合)、ステップS33へ戻って、上述したステップS33〜S39の処理が繰り返される。
【0063】
ステップS39において、症状の数が第1の所定値を超えたと判別された場合(YESの場合)、この評価用AI装置10aの処理動作が終了する。
【0064】
次に、
図5a及び
図5bに示す、実施用AI装置10cの処理動作を説明する。実施用AI装置10cは、評価用AI装置10aによって評価された症状の数が第1の所定数を超えていない場合は、評価用AI装置10aと同一の動作を行う(
図5aのステップS41)。この動作は、評価用AI装置10aが動作停止となるまで繰り返される(
図5aのステップS42)。即ち、評価用AI装置10aに入力された症状の数が所定の数(例えば3000)を超えて、この評価用AI装置10aが動作停止となったと判別されるまで(
図5aのステップS42でYESとなるまで)、実施用AI装置10cは、評価用AI装置10aの場合と同様の処理を行う。
【0065】
図5aのステップS42でYESと判別された場合、患者の回答が、問診票のある症状について症状有りの場合に、その症状コードについて「1」が各患者対応で入力される(
図5aのステップS43)。次いで、入力された症状が、取得すべき症状であるか否かが判別される(
図5aのステップS44)。即ち、入力された症状コードが、実施用DB10dに記憶されている取得すべき症状コードであるか否かが判別される。入力された症状コードが、取得すべき症状コードではないと判別された場合(NOの場合)、その入力された症状を記憶することなく、ステップS43に戻り、次の症状コードが入力される。入力された症状コードが、取得すべき症状コードであると判別された場合(YESの場合)、その症状コードが実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図5aのステップS45)。その際に、患者個人の後述する環境及び背景の回答も症状番号に紐付けして記憶される。従って、実施用DB10dには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、患者個人環境及び背景のセットと、疾病のセットにおける各コードの「1」又は「0」とが紐づけされて記憶される。
【0066】
これにより、実施用AI装置10cの処理動作が一時的に終了する。
【0067】
その後、任意の施術者によって、各患者に任意のタクティールケアを施術した後に、その症状の改善度を各患者、施術者又は第三者(例えば看護師)が評価し回答することにより評価が行われる。具体的には、実施用AI装置10cの処理動作が再開され、その施術による症状の改善度(評価値)が入力キーボード10i等を介してシステムに入力され(
図5bのステップS46)、実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図5bのステップS47)。ここで、任意のタクティールケアとは、例えば、手のタクティールケア、背中のタクティールケア、足のタクティールケア、おなかのタクティールケア、顔のタクティールケア、又は頭のタクティールケアを、時間を問わず、1日1回、1週間で所定回行う施術である。各症状の改善度(評価値)は、前述の場合と同様に、評価0〜4の数値で回答される。従って、実施用DB10dには、患者名(患者コード)と、その患者が症状有りと回答した症状コードの「1」と、疾病コードの「1」又は「0」と、施術者名、及びタクティールケアの内容と、評価値及び評価者とが紐づけして記憶される。
【0068】
次いで、評価値の少なくとも偏差値がベイズ統計学に基づいて算出され(
図5bのステップS48)、実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図5bのステップS49)。具体的には、例えば、症状の総数が1000、症状として徘徊が500、評価0が125、評価1が75、評価2が150、評価3が100、評価4が50であるとする。この場合、全症例に対する徘徊(B11)の出現率は500/1000=0.5となる。ベイズ推定において、0は棄却事象となるため、徘徊(B11)の有効率は(500−125)/500=0.75となる。評価点数の平均μ
xは、μ
x=(1×75+2×150+3×100+4×50)/375=875/375=2.33となり、標準偏差σ
xは、{75(1−2.33)
2+150(2−2.33)
2+100(3−2.33)
2+50(4−2.33)
2}/(75+150+100+50)=322/375=0.85の平方根となる。即ち、σ
x=√(0.85)=0.92となる。変動(分散)係数は、0.92/2.33=0.39となる。そのときの評価1の偏差値T
1は、T
1=10(1−2.33)/0.92+50=33.54となる。評価2の偏差値T
2は、T
2=10(2−2.33)/0.92+50=46.41となり、評価3の偏差値T
3は、T
3=10(3−2.33)/0.92+50=57.28となり、評価4の偏差値T
4は、T
4=10(4−2.33)/0.92+50=68.15となる。この徘徊(B11)の症状の有効出現頻度は、その有効率が0.75であるため、500×0.75/1000=0.375となる。症状の総数の確率を1とするために偏差値を加重平均する。例えば、症状が徘徊(B11)しかなく、その評価が2の有効のみである場合、この徘徊(B11)の有効出現頻度と評価2の偏差値T
2とから、0.375×(T
2=49.64)/0.375=49.64がこのトライアルの偏差値(事後確率)となる。その確率値(偏差値)をそのほかのサブセットに特徴数として割り当てる。サブセットを組み合わせて3つ以上の特徴数が与えられると、平均、標準偏差及び変動係数を得ることができる。
【0069】
次いで、算出された偏差値T
iが所定範囲であるか否か、即ち35≦Ti≦75であるか否かが判別される(
図5bのステップS50)。偏差値T
iが所定範囲ではない場合(NOの場合)、
図5bのステップS53へ進む。
【0070】
ステップS50において、偏差値T
iが所定範囲(35≦Ti≦75)にあると判別された場合(YESの場合)、この偏差値T
iとタクティールケアの内容との関係がディープラーニングを用いた自動機械学習によって求められる(
図5bのステップS51)。例えば、偏差値T
iとタクティールケアの施術の時間帯との関係、偏差値T
iとタクティールケアの施術場所との関係、偏差値T
iとタクティールケアの施術の人的環境との関係、及び偏差値T
iとタクティールケア手技との関係、さらに、偏差値T
iとタクティールケアの患者の名との関係、偏差値T
iとタクティールケアの施術者の名との関係、及び偏差値T
iとタクティールケアの症状との関係がディープラーニングを用いた自動機械学習によって求められる。次いで、求めた関係が実施用AI装置10cの実施用DB10dに記憶される(
図5bのステップS52)。
【0071】
次いで、評価された症状の数が第2の所定値(例えば、10000)を超えたかどうか判別され(
図5bのステップS53)、症状数が第2の所定値を超えていないと判別された場合(NOの場合)、
図5bのステップS46へ戻って、上述したステップS46〜S53の処理が繰り返される。
【0072】
ステップS53において、症状の数が第2の所定値を超えたと判別された場合(YESの場合)、この実施用AI装置10cの処理動作が終了する。
【0073】
本実施形態におけるデュアルコア判定システムにおいては、以上の動作が繰り返して行われる。繰り返して動作するたびに、得られる数値は変化する。そして、自動機械学習するたびにサブバージョンを上昇させる。症状のセットに大きな変更があった場合には、バージョンが1つ上がる。また、サブセットの項目を変化させた場合にバージョンが上がる。さらに、自動機械学習させる都度、3項目のバージョンが以下のように上がる。例えば、Ver.2.4.35であれば、症状の項目に2回目の変更をかけ、サブドメインに4回目の変更をかけ、35回自動機械学習をさせたバージョンということになる。前述のごとく、実施用AI装置については、10000データごとに自動機械学習させている。多数のデータを取得することによって、多変数についての解析が可能となる。これらの新たなデータの構築には人為が全く入っておらず、実際の数値をベイズ統計学に基づいて計算して得た結果であり、いままで何となく考えていたことが客観的に評価できるようになる点が本発明の特徴点である。また、データを集めれば集めるほど真実に近づくということも、重要な利点である。その結果、一度に多変数解析が可能となり、今まで感覚で行っていた行為を数値化した効果で評価できるようになる。
【0074】
認知症問題行動に関する症状及びストレスに関する症状と、これら症状に対するタクティールケアの内容、施術者及び患者との因果関係は非常に複雑であり、その関係を表すデータは膨大な量となるが、評価用AI装置10aによって、システムが取得すべき症状を判定し、その取得すべき症状のみについて実施用AI装置10cが動作するように構成されている。即ち、取得すべき症状を有する患者に関して、実施用AI装置10cによって、タクティールケアを行った後のその内容の評価値の偏差値をベイズ統計学に基づいて算出し、算出した偏差値と人体ケア療法の内容との関係をディープラーニングにより求めている。実施用AI装置10cが、全ての症状について、偏差値とタクティールケアの内容との関係を求めるのではなく、評価用AI装置10aによってシステムが取得すべき症状であると判定した症状についてのみ、このような偏差値と人体ケア療法の内容との関係を求めているため、システムの処理するデータ量は大幅に少なくなるから、データ処理時間の短縮化を図ることができる。また、評価用AI装置10aによって判定された取得すべき症状が模範となる施術者によって正しく実施されたものであるため、実施用AI装置10cによって得られる大量のデータ(メガデータ)に含まれるノイズは非常に少なく、高い信頼性を有するデータとなる。さらに、評価用AI装置10a及び実施用AI装置10cが、偏差値をベイズ統計学に基づいて算出しているため、これによって得られるデータは、客観的かつ科学的なエビデンスに基づくものとなる。
【0075】
このように、本実施形態では、評価用AI装置10a及び実施用AI装置10cという2つの人工知能が協調して1つの現象を解析することで、複数の現象の出現確率を推定できる。即ち、小さな「正しいと定義した」人工知能を評価する側として、その評価により機械学習を自動化させ、より進化させるディープラーニングに結びつけようとするものである。正しいと思われるものを人為の作業ではなく、人工知能という機械に判定させている。そして、1つのことを両者の協調で行うことにより、お互いが進化していく仕組みが論理的かつ数学的に作れることを初めて示したものである。
【0076】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
デュアルコア判定システムは、各患者が、認知症問題行動に関して症状有りと回答した症状及びストレスに関して症状有りと回答した症状を、各患者対応に記憶すると共に、模範となる施術者によって各患者に対して人体ケア療法を行った後の症状の評価値を、患者の名、模範となる施術者の名及び人体ケア療法の内容と共に記憶する評価用DBを有しており、この評価用DBに記憶されている評価値の偏差値をベイズ統計学に基づいて算出し、算出した偏差値が所定範囲内の症状を、人体ケア療法に関して取得すべき症状であると判定する評価用AI装置と、評価用AI装置によって判定された、取得すべき症状を記憶すると共に、取得すべき症状を有する患者に関して、任意の施術者によって各患者に対して人体ケア療法を行った後の人体ケア療法の内容の評価値を、患者、任意の施術者及び症状と共に記憶する実施用DBを有しており、この実施用DBに記憶されている評価値の偏差値をベイズ統計学に基づいて算出し、少なくとも、算出した偏差値と人体ケア療法の内容との関係をディープラーニングにより求める実施用AI装置とを備えている。