特許第6974909号(P6974909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974909減少したコンビナトリアル冗長性及び最適化ループ長分布を有するHC−CDR3のみのライブラリー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974909
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】減少したコンビナトリアル冗長性及び最適化ループ長分布を有するHC−CDR3のみのライブラリー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20211118BHJP
   C40B 40/02 20060101ALI20211118BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20211118BHJP
   C40B 40/08 20060101ALN20211118BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20211118BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   C12N15/63 ZZNA
   C40B40/02
   !C12N15/13
   !C40B40/08
   !C40B40/10
   !C07K16/00
【請求項の数】12
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2019-513413(P2019-513413)
(86)(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公表番号】特表2019-528712(P2019-528712A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017072315
(87)【国際公開番号】WO2018046525
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2020年4月10日
(31)【優先権主張番号】16187884.8
(32)【優先日】2016年9月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591279294
【氏名又は名称】イタルファルマコ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ITALFARMACO SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ラーム
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ステインクーラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ フィローカモ
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/032181(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/132287(WO,A2)
【文献】 特表2010−538656(JP,A)
【文献】 特表2008−536473(JP,A)
【文献】 特表2007−501011(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/003108(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C40B 10/00−99/00
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の多様性ファミリーのメンバーを発現し、抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の前記ファミリーの多様性の少なくとも一部を発現する、全体の複雑さC=1.3×1010のベクターのライブラリーであって、前記ベクターがHC−CDR3領域の前の位置94及びHC-CDR3領域をコード化する多様なDNA配列を含み、
- 長さL=7のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、101及び102で、表3Aに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Aは、長さL=7を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3A:
【表3A】
ベクターのライブラリーにおける長さL=7を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が0.1%であり、
- 長さ8のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、101及び102で、表3Bに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Bは、長さL=8を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3B:
【表3B】
ベクターのライブラリーにおける長さL=8を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が1.0%であり、
- 長さL=9のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、101及び102で、表3Cに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Cは、長さL=9を有するHC-CDR3に対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3C:
【表3C】
ベクターのライブラリーにおける長さL=9を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が2.5%であり、
- 長さL=10のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、100B、101及び102で、表3Dに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Dは、長さL=10を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3D:
【表3D】
ベクターのライブラリーにおける長さL=10を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が11.5%であり、
- 長さL=11のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、100B、100C、101及び102で、表3Eに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Eは、長さL=11を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3E:
【表3E】
ベクターのライブラリーにおける長さL=11を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が28.3%であり、
- 長さL=12のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、100B、100C、100D、101及び102で、表3Fに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Fは、長さL=12を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3F:
【表3F】
ベクターのライブラリーにおける長さL=12を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が19.8%であり、
- 長さL=13のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、100B、100C、100D、100E、101及び102で、表3Gに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Gは、長さL=13を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3G:
【表3G】
ベクターのライブラリーにおける長さL=13を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が17.7%であり、
- 長さL=14のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、101及び102で、表3Hに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Hは、長さL=14を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3H:
【表3H】
ベクターのライブラリーにおける長さL=14を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が13.1%であり、
- 長さL=15のHC-CDR3ループの場合、前記配列がカバト位置の94、95、96、97、98、99、100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、101及び102で、表3Iに定義されるアミノ酸組成と各アミノ酸の相対頻度を含み、ここで、表3Iは、長さL=15を有するHC-CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成であり、各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されており、
表3I:
【表3I】
ベクターのライブラリーにおける長さL=15を有するHC-CDR3ループの分率p(L)が6.0%である、ベクターのライブラリー。
【請求項2】
前記抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、1以上の定常領域を含む抗体、一本鎖抗体、FAB断片、重鎖のみの抗体又は可変重鎖のみのドメインから選択される抗体又はその断片である、請求項1に記載のベクターのライブラリー。
【請求項3】
前記抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、ヒト抗体生殖細胞系列の可変セグメントを含む、請求項1又は2に記載のベクターのライブラリー。
【請求項4】
前記抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、ヒト生殖細胞系列の配列を含有するヒト抗体VK1軽鎖可変領域及びヒト生殖細胞系列の配列を含有するヒト抗体VH3重鎖可変領域を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のベクターのライブラリー。
【請求項5】
VK1κ軽鎖可変領域が配列番号3及び配列番号4のヒト生殖細胞系列の配列を含有し、軽鎖CDR3領域が配列番号5の配列を含有し、VH3重鎖可変領域が配列番号1及び配列番号2のヒト生殖細胞系列の配列を含有する、請求項4に記載のベクターのライブラリー。
【請求項6】
ヒト生殖細胞系列の配列を含むVH重鎖可変領域が、配列番号6のリンカーと共に、ヒト生殖細胞系列の配列を含むヒト抗体VK1κ軽鎖可変領域に連結されることを特徴とする、請求項4に記載のベクターのライブラリー。
【請求項7】
前記ライブラリーを産生するのに使用されるベースベクターが配列番号8を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のベクターのライブラリー。
【請求項8】
標的抗原に対する選択のための請求項1〜7のいずれか一項に記載のベクターのライブラリー。
【請求項9】
前記ライブラリーが標的抗原に対する選択のためのファージ上にディスプレイされることを特徴とする、請求項8に記載のベクターのライブラリー。
【請求項10】
前記ライブラリーがHC−CDR3領域及びHC−CDR3の前の位置に限定された多様性を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のベクターのライブラリー。
【請求項11】
HC-CDR3ループの長さが9〜11であることを特徴とする、請求項1に記載のベクターのライブラリー。
【請求項12】
HC-CDR3ループの長さが11であることを特徴とする、請求項1に記載のベクターのライブラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さを変化したヒトHC−CDR3領域を含むベクターのライブラリーを提供し、このライブラリーでは、前記ライブラリーの多様性がHC−CDR3領域のみにフォーカスされており、多様性は、冗長性(redundancy)が短いHC−CDR3ループに対して減少され、より長いループ長に対するHC−CDR3領域の変異の対象範囲が増加するように最適化されている。本発明のライブラリーは、標的抗原に対する選択用のファージ上でディスプレイされる。
【背景技術】
【0002】
全ヒト抗体(Green, 2014(非特許文献1))を提供するin vivoでのディスカバリープラットホームの最近の進展にもかかわらず、組換え抗体ライブラリーは、特に、in vivoでの試みが失敗に終わるか、又は抗体の性質に起因して実施するのが不可能である困難な標的に対して、重要な相補的アプローチの代表であり続けている。組み換え抗体ライブラリーは、多くのレイアウト及びフォーマットで記述されている(Mondon et al., 2008)(非特許文献2)。ライブラリーは、6ループ領域、即ち相補性決定領域(CDRs)までの範囲内で連続的により複雑な変化を組み合わせて、通常コンビナトリアル形式で無作為に構築される。最も大きな変化は、一般に、天然の抗体に存在する最も可変で重要なCDRセグメントである、重鎖(HC)可変領域のCDR3領域(HC−CDR3)に誘導される(Togegawa, 1983(非特許文献3);Chothia et al,. 1989(非特許文献4))。
【0003】
HC−CDR領域について、組み換え抗体ライブラリーに移植されたループ長分布(ライブラリーに存在する各ループ長のパーセンテージ)は、通常、天然の抗体で観測されるもの、即ち、12の長さのHC−CDRループの周りに最大値を有する、ほぼベル型の分布を示す分布を反映する(Zemlin et al., 2003(非特許文献5))。いくつかの例外はあるが(例えば、Fellouse et al., 2007(非特許文献6);Mahon et al., 2013(非特許文献7))、組み換え抗体ライブラリーは、このベル型分布に(ほぼ)従って設計されてきた。これは、複雑さの高いライブラリー(109〜1010以上の全複雑さ)がコンビナトリアル形式で生成される場合に、重要な意義を有する。より短いHC−CDR3ループからの変異は、長いHC−CDR3ループからの変異よりも多く表れる(実際には、全ての変異が存在するか、数回存在しさえする)。これは、後者について、すべての可能な変異がほんのわずかしか存在しないからである。HC−CDR3ループ長に対して一定の長さ分布(全てのHC−CDR3長がライブラリーで等しい割合で存在する)を使用すると、より短いHC−CDR3ループに対して冗長性がさらに増加し(これらの分率(percent fraction)は天然抗体に対して観測されるベル型分布に比較して高い。)、長いHC−CDR3ループに対する可能な変異の全対象範囲がわずかに増加し、中間の長さのHC−CDR3ループに対する対象範囲が減少する。
【0004】
治療剤として既に承認されているか又は臨床開発中の抗体の全数は、着実に増加している。ChEMBLデータベース(https://www.ebi.ac.uk/chembl/(非特許文献8))の調査は、天然のヒト抗体で観測された滑らかなベル型の長さ分布と異なるが、マウス抗体のそれとも異なるHC−CDR3長10で明確な最大値を有する。従って、長さ10のHC−CDR3ループは、治療抗体の候補を単離しようと意図されたライブラリー内で特によく表れる。より短いHC−CDR3ループを有する抗体は、よく発現し、製品の開発を成功させるのに重要な特性である低い凝集の傾向を示すようである。
【0005】
HC−CDR3のみのライブラリーが種々の状況で生成される(Barbas et al., 1992(非特許文献9);Braunagel et al., 1997(非特許文献10);Pini et al., 1998(非特許文献11);Hoet et al., 2005(非特許文献12);Silacci et al., 2005(非特許文献13);Mahon et al., 2013(非特許文献7);US2006/0257937A1(特許文献1))が、多くの組み換え抗体ライブラリーは、HC−CDR3領域だけでなく、5つの他のCDR領域の1つ以上にも多様性を導入する(例えば、Knappik et al., 2000(非特許文献14);Prassler et al., 2013(非特許文献15))。種々のCDR領域に存在する多様性は、次に、全体の多様性が最も低いCDR領域で通常開始されるライブラリーのクローニングの間に、完全に無作為な形式で組み合わされる。いくらかの冗長性と重複(duplicates)が存在しうる短いHC−CDR3ループを除いて、各HC−CDR3領域の変異は、ライブラリーで1度だけ存在する特有のものと考える必要がある。結果として、各HC−CDR3ループの変異は、適合性についての任意の構造的又は機能的選択をされることなく、他のCDR領域からの完全に無作為な変異の組み合わせと「対応付けられる」ことになる。他のCDR領域が生殖細胞系列の配列によって、又は単一のコンセンサス配列(例えば軽鎖CDR3領域に対して)によって表れる状況と比較して、他(5種類のうちの1つ)のCDR領域からの変異の無作為な選択と組み合わされた特定のHC−CDR3の変異を有することには利点がない。従って、HC−CDR3のみのライブラリーは、追加の多様性を持ったライブラリーと比較して、良いか又はよりよく機能すべきである。唯一の例外は、短いHC−CDR3ループであり、この場合、冗長性(ライブラリーに1コピーを超えて変異が存在する)ために、非常に制限された数の、他のCDRsにおける変化の組み合わせが探索される。即ち、同じHC−CDR3の変異が複数回存在し、それぞれが、他のCDR領域において異なる変異の組み合わせを有するものが探索される。しかし、HC−CDR3の変異がこれらの組み合わせの10のみと組み合わされるためには、HC−CDR3領域の重複(duplication)レベルも10あたりでなければならない。短いHC−CDR3ループに対してさえ、これは、ほとんどのHC−CDR3ループ長に対して非実用的である10の因子によって、ライブラリー内のそのループ長の割合を増加することを意味する。ライブラリー、例えばLC−CDR3に存在する追加の多様性を効果的に探索するためには、例えば、数パーセントの全ライブラリーを表す特定の長さを有するHC−CDR3ループが、かなり高い2桁の分率(percent fraction)で存在する必要がある。これは、単一のHC−CDR3ループ長に対して達成することがすでに困難であることに加え、全てのHC−CDR3ループ長からの変異が他のCDR領域中の制限された数の変異をも効果的に兼ね備えたライブラリーを生成することは不可能である。1つのケース(Mahon et al., 2013(非特許文献7))では、HC−CDR3のみのライブラリーの性能が、対応するHC−CDR3ライブラリー及びLC−CDR3ライブラリーと比較された。HC−CDR3のみのライブラリーは優れた特性を示したが、著者らは、HC−CDR3のみのライブラリーに都合のよい「コンビナトリアル効果(combinatorial effect)」を完全に認めておらず、HC−CDR3ライブラリーのよりよい性能を、LC−CDR3及びHC−CDR3ライブラリーにおけるLC−CDR3とHC−CDR3の多様性の間の可能な構造的不親和性にあるとした。
【0006】
HC−CDR3の多様性の設計が天然の抗体で観測される位置ごとのアミノ酸頻度に基づく組み換え抗体ライブラリーは、所望のアミノ酸分布の適切な表現のみを可能にし、望まないCys及びストップコドンを生じる、標準の変性オリゴヌクレオチドを用いるか(例えば、Philibert et al., 2007(非特許文献16)、或いは、多様性がトリマーブロック(三量体ブロック(trimer block))をコード化するアミノ酸の混合物を通して導入されているオリゴヌクレオチドによって、生成されている(Braunagel et al., 1997(非特許文献10);Knappik et al., 2000(非特許文献14);Prassler et al, 2013(非特許文献15);Mahon et al, 2013(非特許文献7);US2006/0257937A1(特許文献1)、EP1979378B1(特許文献2))。
【0007】
しかし、これらの例の何れも、特定のHC−CDR3長に対するライブラリー内に実際に存在する異なる変異の数に関連し、ライブラリーの設計によって定義される理論的に可能な数の変異に比較された全ライブラリーの一定の割合(フラクション(fraction))を表すコンビナトリアル効果を正しく認識していない。ベル型をした「天然様」HC−CDR3ループ長分布の存在下で、コンビナトリアル効果は、短いHC−CDR3ループに対する変異の過剰表現と、長いHC−CDR3ループに対する非常に小さい対象範囲を導く。US2006/0257937A1(特許文献1)は、HC−CDR3ループ長(8、10、13、14、15、17、18、19)の制限された範囲をカバーするライブラリーの設計、並びに、HC−CDR3ループ位置でのアミノ酸組成が、19種の異なるアミノ酸の固定した当モル混合物に対応するか、或いは特定の位置に対して、即ち全てのHC−CDR3ループ長に対して無差別に、いくつかのアミノ酸の固定した混合物に制限されることのみを記載している。EP1979378B1(特許文献2)は、HC−CDR3ループ長が3つの変化した長さ範囲に分割され、各々の範囲が、定義されたアミノ酸組成(多様性因子と呼ばれる)を有するものであるライブラリーの設計を記載している。種々のHC−CDR3ループ位置に対する一定の長さ範囲内で全てのHC−CDR3ループのアミノ酸組成を表す多様性因子は、Kabat位置95〜102を含む。HC−CDR3内の各位置又は位置の範囲に対して、多様性因子はアミノ酸のサブセットに特定の頻度で割り当てられるが、残りのアミノ酸は全て(Cysを除く)、アミノ酸のサブセットのみが存在する位置101及び102の他は、固定した頻度で含まれる。従って、全てのアミノ酸(Cysを除く)が、ほぼ全てのHC−CDR3ループ位置で、及び全てのHC−CDR3ループ長に対して種々の頻度で存在するので、この設計は、莫大な数の理論的に可能な変異を生じる。中間の長さのHC−CDR3ループ(例えば、長さ9、10、11)に対してさえ、1010の全複雑さのライブラリーに存在する変異の実際の数は、設計に従ったすべての可能な変異のほんのわずかである。
【0008】
約1012の全体にわたる総複雑さまで、合成CDR3の多様性を取り込んだ組み換えヒト抗体ライブラリーが生成されており(Knappik et al., 2000(非特許文献14)、Prassler et al., 2011(非特許文献17))、実際の応用において成果(特定の標的に対する抗体の選択)が立証されており、これは、とてつもない大きさのためであるかもしれない。しかし、このようなサイズのライブラリーの生成は、かなりの努力を必要とし、経済的コストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0257937A1号明細書
【特許文献2】欧州特許第1979378B1号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Green, 2014
【非特許文献2】Mondon et al., 2008
【非特許文献3】Togegawa, 1983
【非特許文献4】Chothia et al,. 1989
【非特許文献5】Zemlin et al,. 2003
【非特許文献6】Fellouse et al., 2007
【非特許文献7】Mahon et al., 2013
【非特許文献8】https://www.ebi.ac.uk/chembl/
【非特許文献9】Barbas et al., 1992
【非特許文献10】Braunagel et al., 1997
【非特許文献11】Pini et al., 1998
【非特許文献12】Hoet et al., 2005
【非特許文献13】Silacci et al., 2005
【非特許文献14】Knappik et al., 2000
【非特許文献15】Prassler et al., 2013
【非特許文献16】Philibert et al., 2007
【非特許文献17】Prassler et al., 2011
【非特許文献18】Kabat, 1983
【非特許文献19】Chothia & Lesk, 1987
【非特許文献20】Lppolito et al., 2012
【非特許文献21】Huang et al. 1996
【非特許文献22】de Waldt et al., 1999
【非特許文献23】DeKosky et al.,2013
【非特許文献24】Glanville et al., 2010
【非特許文献25】Ewert et al., JMB 2003
【非特許文献26】McCafferty et al., 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、最適化された特性、即ち治療抗体への更なる発展に向けた良好な候補クローンを選択するための高い可能性を有し、受け入れ可能な実験的な努力と受け入れ可能な経済的コストをもたらすヒト抗体ライブラリーを設計することの必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ループ長5〜20に対する重鎖CDR3領域のカバト(Kabat)番号付けの図である。HC−CDR3領域が示されており、HC−CDR3領域の部分である残基に灰色の影をつけている。HC−CDR3領域の前及び後の、カバト位置92、93、94、及び、103、104で、それぞれ、最も頻繁に観測されるアミノ酸(CAR及びWG)が報告される。
図2】天然抗体で観測されるHC−CDR3ループ長の分布である。
図3】HC−CDR3領域を置き換えるスタッファー要素を含む一本鎖骨格(scaffold)の配列である。Pstl/Stylでの消化によりスタッファーを除去し、HC−CDR3多様性を含有するオリゴヌクレオチドの挿入を可能にする。特有の制限酵素認識部位(restriction site)は配列中にアンダーラインで示した。可変軽鎖のCDR1及びCDR3領域の位置も示さている。
図4】HC−CDR3多様性を含有するオリゴヌクレオチドの挿入後の一本鎖骨格の重鎖を示す概略図である。
図5】HC−CDR3多様性を含有するオリゴヌクレオチド内の1を超えるアミノ酸を有する位置で多様性を生じるのに使用される、コドンをコード化するトリマーブロックの表である。
図6】ファージミドベクターである、ベースベクター_VH3_VK1_V22の概略図である。
図7】ファージミドベクターである、ベースベクター_VH3_VK1_V22であって、特有の制限酵素認識部位を有するものを示す概略図である。
図8-1】承認された又は臨床用に開発された治療抗体のHC−CDR3配列及びHC−CDR3ループ長である。
図8-2】承認された又は臨床用に開発された治療抗体のHC−CDR3配列及びHC−CDR3ループ長である。
図8-3】承認された又は臨床用に開発された治療抗体のHC−CDR3配列及びHC−CDR3ループ長である。
図8-4】承認された又は臨床用に開発された治療抗体のHC−CDR3配列及びHC−CDR3ループ長である。
図8-5】承認された又は臨床用に開発された治療抗体のHC−CDR3配列及びHC−CDR3ループ長である。
図9】承認された又は臨床用に開発された治療抗体及び天然抗体におけるHC−CDR3ループ長分布の比較である。天然抗体に対するパーセント値は4〜19の長さで再正規化(トータルで100%まで)されている。
図10】承認された又は臨床用に開発された治療抗体のHC−CDR3ループ長、天然抗体、及び最適化されたライブラリー設計におけるループ長分布の比較である。天然抗体に対するパーセント値は5〜19の長さで再正規化(トータルで100%まで)されている。
図11-1】ループ長15に対するHC−CDR3多様性をコード化するオリゴヌクレオチドである。1を超えるアミノ酸が存在する位置では、個々のトリマーブロックの相対頻度を含むトリマーブロックの混合物が示される。Pstl又はStyl制限酵素認識部位を含有するオリゴヌクレオチドの部分は灰色で示されている。
図11-2】ループ長15に対するHC−CDR3多様性をコード化するオリゴヌクレオチドである。1を超えるアミノ酸が存在する位置では、個々のトリマーブロックの相対頻度を含むトリマーブロックの混合物が示される。Pstl又はStyl制限酵素認識部位を含有するオリゴヌクレオチドの部分は灰色で示されている。
図12A】ライブラリーからのBSA特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのBSAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.133)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)12の陽性クローンの特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図12B】ライブラリーからのBSA特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのBSAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.133)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)12の陽性クローンの特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図12C】ライブラリーからのBSA特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのBSAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.133)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)12の陽性クローンの特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図12D】ライブラリーからのBSA特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのBSAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.133)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)12の陽性クローンの特異性を、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図13A】ライブラリーからのオバルブミン(OVA)特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのOVAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.166)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図13B】ライブラリーからのオバルブミン(OVA)特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのOVAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.166)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図13C】ライブラリーからのオバルブミン(OVA)特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのOVAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.166)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図13D】ライブラリーからのオバルブミン(OVA)特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのOVAについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.166)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図14A】ライブラリーからのDsg1特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、商業的に利用可能なDsg1を予めコーティングしたウェル及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのDsg1を予めコーティングしたウェルについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.102)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、Dsg1及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図14B】ライブラリーからのDsg1特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、商業的に利用可能なDsg1を予めコーティングしたウェル及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのDsg1を予めコーティングしたウェルについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.102)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、Dsg1及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図14C】ライブラリーからのDsg1特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、商業的に利用可能なDsg1を予めコーティングしたウェル及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのDsg1を予めコーティングしたウェルについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.102)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、Dsg1及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図14D】ライブラリーからのDsg1特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、商業的に利用可能なDsg1を予めコーティングしたウェル及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのDsg1を予めコーティングしたウェルについてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.102)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)10の陽性クローンの特異性を、Dsg1及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図15A】ライブラリーからのFGFR4特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのFGFR−4についてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.134)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)20の陽性クローンの特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図15B】ライブラリーからのFGFR4特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのFGFR−4についてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.134)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)20の陽性クローンの特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図15C】ライブラリーからのFGFR4特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのFGFR−4についてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.134)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)20の陽性クローンの特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
図15D】ライブラリーからのFGFR4特異的M13−scFvクローンの単離。A)3ラウンドのパニングを実施し、相対的な冨化を入力/出力(INPUT/OUTPUT)比(全t.u.×105)として表した。B)ポリクローナルファージ混合物(I〜IIIラウンドの選択から溶離されたファージからなるサブライブラリー)の特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。C)IIIラウンドから単離された単クローンのFGFR−4についてのELISAアッセイ。破線は、特異性(OD=0.134)を決定するために使用される計算したカットオフを示す。D)20の陽性クローンの特異性を、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される、全ての技術用語、表記及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般に理解される意味を有すると解釈される。いくつかの場合、一般的に解釈される意味を有する用語は、明確性のために、及び/又は、素早く参照するために本明細書で定義される。従って、本明細書にこのような定義を含めることが当分野で一般に理解されている事項を越えた実質的な違いを表す、と理解されるべきではない。
【0014】
本明細書において、用語「ライブラリーの複雑さ」は、HC−CDR3ループ長から独立して、ライブラリーに存在する変異の総数をいう。
【0015】
本明細書において、用語「多様性」は、1つ以上の位置での1を超えるアミノ酸の存在をいう。
【0016】
本明細書において、用語「冗長性(redundancy)」は、定義された長さを有するHC−CDR3ループについて変異がライブラリー内に表れる平均回数をいう。
【0017】
用語「HC−CDR3のみのライブラリー」について、発明者らは、HC−CDR3領域内及びHC−CDR3領域の前のカバト位置94のみの変異を有するライブラリー、並びに、他の5つのCDR領域、即ちHC−CDR1、HC−CDR2、LC−CDR1、LC−CDR2及びLC−CDR3の変異を全く有しないライブラリーを意図する。
【0018】
本明細書で使用される用語「抗体断片」又は「機能性断片」は、Fab、F(ab‘)2、Fab’、Fv、scFv、Fc部分を含む一本鎖、ナノボディ、及び可変フレームワーク領域以外の骨格(scaffold)を有する他の抗体様構造などの、任意の抗体結合性断片を含む。用語「機能性断片」は、抗体の任意の部分であって、目的の抗原に結合する能力を保持しているものを含むが、これに限定されない。
【0019】
本明細書において、用語「生殖細胞系列」は。親から子へ受け継がれる抗体又はその機能性断片をコード化する核酸配列をいう。
【0020】
本明細書において「可変重鎖及び可変軽鎖の組み合わせ」又は「VH/VLの組み合わせ」は、1つの可変重鎖及び1つの可変軽鎖の組み合わせをいう。抗体又は機能性抗体断片は、可変軽鎖に結合した少なくとも1つの可変重鎖であって、抗原結合領域を形成するものを含む。
【0021】
本明細書において、用語「可変領域(variable domain)」、軽鎖可変領域(VL)又は重鎖可変領域(VH)は、抗原と接触し、「相補性決定領域」又は「CDRs」といわれる3つの超可変領域を含有する免疫グロブリンの領域をいう(Kabat, 1983(非特許文献18); Chothia & Lesk, 1987(非特許文献19)。
【0022】
本明細書において、HC−CDR3及びLC−CDR3は、それぞれ、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の第三の相補性決定領域をいう。
【0023】
本明細書において、用語「カバト命名法」は、カバトによって1983年に定義されたVL又はVH領域の残基の番号付けの体系をいい、図1のVH領域のCDR3領域について系統的に示されている。VH領域及びHC−CDR3ループに対する残基の番号付けは、本開示の全体を通して、カバト命名法という。
【0024】
本明細書において、用語「変異体(variant)」は、ライブラリー内のすべての他の抗体又は抗体断片のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する抗体又は抗体断片をいう。
【0025】
本明細書において,用語「最適化されたコドン」又は「コドンの最適化」は、コード化されたアミノ酸配列が同じまま残されるように変化されるが、個々のアミノ酸をコード化するコドンが特定の宿主、例えば細菌細胞中でコード化されたタンパク質の発現を最適化するように変化されている核酸配列をいう。
【0026】
本明細書で使用される用語「ライブラリー」は、ファージディスプレイ、リボソームティスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ及び哺乳動物ディスプレイのライブラリーを含むが,これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態では、ファージディスプレイライブラリーを使用する。
【0027】
使用される用語「ディスプレイベクター(display vector)」は、組み換えDNAで形質転換された、細菌性宿主細胞などの宿主細胞内で、染色体外で(extra chromosomally)、組み換えDNA分子の複製及び維持を指令する能力を有するDNA配列を含む。このようなDNA配列は当分野で周知である。
【0028】
本発明によれば、ディスプレイベクターは、例えば、fd、M13、又はfl糸状バクテリオファージの組から生じるファージベクター又はファージミドベクターでありうる。このようなベクターは、糸状バクテリオファージの表面でのタンパク質のディスプレイを促進することができる。
【0029】
本明細書において、用語「抗体関連ペプチド」は、抗体に由来する構造ドメインを含有し、共有結合できるか、ジスルフィド結合できるか又は複合体として会合できる1以上の抗体ドメインを含むことができるペプチドをいう。
【0030】
本明細書で使用される、用語「遺伝子パッケージ(genetic package)」は、複製可能な遺伝子ディスプレイパッケージであって、粒子がその表面でポリペプチドをディスプレイするものをいう。このパッケージは、バクテリオファージであって、その表面で抗原結合ドメインをディスプレイするものである。抗原結合ドメインが抗体関連ペプチドに対応する場合、このタイプのパッケージはファージ抗体と称される。
【0031】
本発明の説明
本発明は、最適化された特性を有する異なるヒト抗体HC−CDR3領域の収集物であって、多様性が、所望のライブラリーの複雑さの全体において、ライブラリー内のHC−CDR3ループ長分布の変化、及び、各HC−CDR3ループの各位置でのアミノ酸の多様性の変化を可能にする方法を通して設計されるものを提供する。
【0032】
特に、本発明は、受け入れ可能な実験的努力及び低費用で得られる、最適化された特性、即ち、HC−CDR3ループ長分布の最適化による低下したコンビナトリアル冗長性(重複変異の存在)を有するヒト抗体ライブラリーを生じる。
【0033】
上記の利点は、驚くべきことに、HC−CDR3ループ及びHC−CDR3領域の前の位置にのみ多様性を限定することによって得られ、これによって、冗長性が全てのHC−CDR3ループ長について受け入れ可能なレベル(2未満)に減少し、9〜11のHC−CDR3ループ長についての変異がライブラリー中で特によく表れるようになる。
【0034】
本発明のライブラリーは、従って、承認された治療抗体又は臨床開発中の抗体でしばしば観測されるHC−CDR3ループ長を特によく表すという利点を有する。
【0035】
実施例4に開示されるライブラリーの設計の最適化の方法を適用することで、冗長性(重複変異の存在)の所望の閾値を、各HC−CDR3ループ長に対して調節することができる。
【0036】
同時に、各HC−CDR3ループ長の対象範囲(ライブラリー中に実際に存在する特定のHC−CDR3ループ長に対するすべての可能な変異の割合)は、ライブラリー全体にわたる複雑さによって決定される制限の範囲内で、特に注目される1以上のHC−CDR3ループ長について最適化されうる。
【0037】
従って、複雑さC全体にわたるベクター又は遺伝子パッケージのライブラリーであって、抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の多様性ファミリーのメンバーをディスプレイ及び発現するか、又はこれを含むもの、及び、抗体ファミリーの多様性の少なくとも一部をディスプレイ及び発現するか、又はこれを含むものを生じることが、本発明の目的である。ここで、当該ベクター又は遺伝子パッケージは、HC−CDR3領域及びHC−CDR3領域の前の位置をコード化するDNA配列であって、以下の配列を含む。
ZX1n345
(式中、
C=1.3×1010
Zはカバト位置94に対応し、
1はカバト位置95に対応し、
nは3〜11の整数であり、
Yは、HCカバト位置の96〜98(n=3)、又はHCカバト位置の96〜99(n=4)、又はHCカバト位置の96〜100(n=5)、又はHCカバト位置の96〜100a(n=6)、又はHCカバト位置の96〜100b(n=7)、又はHCカバト位置の96〜100c(n=8)、又はHCカバト位置の96〜100d(n=9)、又はHCカバト位置の96〜100e(n=10)、又はHCカバト位置の96〜100f(n=11)に対応し、
3は、HCカバト位置の99(n=3)、又はHCカバト位置の100(n=4)、又はHCカバト位置の100a(n=5)、又はHCカバト位置の100b(n=6)、又はHCカバト位置の100c(n=7)、又はHCカバト位置の100d(n=8)、又はHCカバト位置の100e(n=9)、又はHCカバト位置の100f(n=10)、又はHCカバト位置の100g(n=11)に対応し、
4はHCカバト位置101に対応し、
5はHCカバト位置102に対応し、
各ZX1n345領域の分率(percentage fraction)p(L)(L=n+4)が表2Cに与えられる値に従って、ライブラリーに存在することで特徴づけられ、
長さL=n+4の各HC−CDR3領域に対する位置Z、X1、X2、X3、X4、X5及びYn(n=3〜11)が、表3A〜3Iに開示された相対頻度に従って定義されるアミノ酸によって占められることを特徴とする。)
【0038】
好ましい実施形態では、前記抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、ヒト由来である。
【0039】
さらなる実施形態では、前記抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は猫又は犬由来である。
【0040】
本発明のベクター又は遺伝子パッケージのライブラリーの更に好ましい実施形態では、HC−CDR3ループの長さは9〜11の範囲である。本発明の実施形態では、抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、抗体又はその断片であり、1以上の定常領域を含む抗体、一本鎖抗体、FAB断片、重鎖のみの抗体又は可変重鎖のみのドメインから選択される。
【0041】
好ましくは、前記抗体又はその断片は、一本鎖抗体である。
【0042】
更なる実施形態では、本発明に従った抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、ヒト抗体の生殖細胞系列可変セグメントを含む。
【0043】
本発明の更なる実施形態では、前記HC−CDR3のみの領域は、ヒト重鎖及び軽鎖の生殖細胞系列可変領域によって特徴づけられる定常一本鎖骨格に導入され、軽鎖CDR領域は長さ9である。
【0044】
前記配列は、天然のヒト抗体中の軽鎖CDR3の9個の位置の各々で最も頻繁に観測されるそれらのアミノ酸を表す。
【0045】
一本鎖骨格内の生殖細胞系列の可変領域の配列を使用することは、これらの配列が体細胞突然変異を含有せず、従って、免疫原性を小さくしてヒト対象での臨床試験中に、引き続いて起こるヒトの抗ヒト抗体応答を観測する可能性を減少することが期待される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、抗体関連ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、ヒト生殖細胞系列の配列を含有するヒト抗体VK1軽鎖可変領域、及びヒト生殖細胞系列の配列を含有するヒト抗体VH3重鎖可変領域を含む。
【0047】
好ましくは、前記VK1κ軽鎖可変領域は配列番号3及び配列番号4のヒト生殖細胞系列の配列を含有し、軽鎖CDR3領域は配列番号5の配列を含有し、VH3重鎖可変領域は配列番号1及び配列番号2のヒト生殖細胞系列の配列を含有する。
【0048】
本発明に従ったベクター又は遺伝子パッケージのライブラリーの更に好ましい実施形態では、ヒト生殖細胞系列の配列を含むVH3重鎖可変領域は、配列番号6のリンカーを有するヒト生殖細胞系列の配列を含むヒトVK1κ軽鎖可変領域に連結される。
【0049】
更なる実施形態によれば、本発明のライブラリーを産生するために使用されるベースベクターは、配列番号8を有する。
【0050】
更なる実施形態では、本発明に従ったベクター又は遺伝子パッケージのライブラリーは、標的抗原に対する抗体の選択に使用される。
【0051】
好ましくは、前記ライブラリーは、標的抗原に対する選択のためのファージ上にディスプレイされる。
【0052】
本発明によれば、ベクター又は遺伝子パッケージのライブラリーは、HC−CDR3領域に、及びHC−CDR3の前の位置に限定された多様性を有する。
【0053】
HC−CDR3の多様性を導入したライブラリー及び本発明の方法は、以下の実施例によってより完全に説明される。しかし、このような実施例は例示のために与えれ、制限のために与えられるものでないことに注意すべきである。
【実施例】
【0054】
実施例1 天然抗体由来の可変領域の配列及び長さの変化の分析
HC−CDR3ループ領域に対するハイ−スループット次世代配列決定データをNCBI SRAアーカイブSRR400158(Lppolito et al., 2012(非特許文献20))からダウンロードし、カバト命名法(図1)に従ってコード化されたHC−CDR3ループの長さ及びアミノ酸組成(図2)について試験した。HC−CDR3ループ長分布はループ長12で最大値を有する(図2)。天然抗体由来の7〜15のHC−CDR3ループ長に対する各ループ位置におけるアミノ酸組成は表1a〜1iに示されている。
【0055】
表1a. 天然抗体の長さ7のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0056】
【表1a】
【0057】
表1b. 天然抗体の長さ8のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0058】
【表1b】
【0059】
表1c. 天然抗体の長さ9のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰s色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0060】
【表1c】
【0061】
表1d. 天然抗体の長さ10のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0062】
【表1d】
【0063】
表1e. 天然抗体の長さ11のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0064】
【表1e】
【0065】
表1f. 天然抗体の長さ12のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0066】
【表1f】
【0067】
表1g. 天然抗体の長さ13のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0068】
【表1g】
【0069】
表1h. 天然抗体の長さ14のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0070】
【表1h】
【0071】
表1i. 天然抗体の長さ15のHC−CDR3ループについてのアミノ酸組成。各ループ位置(最上列のカバト命名法のHC−CDR3位置を灰色で示した)の下に、その位置で各アミノ酸に対して観測される頻度の率が示されている。観測された頻度が0.05%未満のアミノ酸は示されていない。
【0072】
【表1i】
【0073】
実施例2. 生殖細胞系列のVH−リンカー−VH一本鎖骨格の設計
一本鎖抗体に基づくファージ−ディスプレイ抗体ライブラリーを、広範なスペクトルのライブラリーレイアウトに対してうまく生成しており(Mondon et al., 2008(非特許文献2))、従って、このフォーマットをHC−CDR3多様性を導入する抗体フォーマットとして選択した。VH3/VK1可変領域のペアリングは、天然抗体で観測されるVH/VKの組み合わせの最も一般的なものの1つである(Huang et al. 1996(非特許文献21)、de Waldt et al., 1999(非特許文献22)、DeKosky et al.,2013(非特許文献23))。これはまた、天然の可変領域の組み換え一本鎖抗体ライブラリーにおいて高頻度で観測され(Glanville et al., 2010(非特許文献24))、良好な熱安定性を有し、効率よく発現もされる(Ewert et al., JMB 2003(非特許文献25))。生殖細胞系列の配列は、治療抗体に存在する場合に免疫原性を引き起こしうる体細胞突然変異の不存在、及び、多様なHC−CDR3領域の存在に対する固有の寛容性などの有利な特性有するので、VH3/VK1一本鎖骨格の組み立てに対して、ヒト生殖細胞系列抗体の配列を選択した。重鎖可変領域骨格のアミノ酸配列は、翻訳されたGenbank生殖細胞系列の配列M99660(配列番号1)、及び翻訳されたGenbank生殖細胞系列の配列J00256(J4断片)(配列番号2)から組み立てた。この骨格において、わずかなフランキングアミノ酸しか含まないHC−CDR3は、ライブラリーのクローニングの間に非開裂ベクターの除去を可能にする特有のEcoRV部位を含有するスタッファー断片によって表される(図3)。スタッファー断片は、その5’末端にPstl部位を、その3’末端にStyl部位を含有し、ライブラリーの生成の間の断片の除去、及びHC−CDR3の多様性をコード化するオリゴヌクレオチドのクローニングを可能にする、(図4)。Pstl(CTGCAG)及びStyl(CCWWGG)が、コドンをコード化するトリマーブロックの組み合わせがほんのわずかである(図5)ので選択され、HC−CDR3多様性コード化オリゴヌクレオチドを合成するのに使用され、Pstl及びStyl認識部位を生成する。従って、His及びGlnトリマーブロック(CAT及びCAG)が、続いて、HC−CDR3の多様性をコード化するオリゴヌクレオチドの設計から排除された。軽鎖可変領域のアミノ酸骨格配列を、翻訳されたGenbank生殖細胞系列の配列X93627(配列番号3)及びGenbank生殖細胞系列の配列の配列J00242(VK−1 J1断片)(配列番号4)から組み立てた。LC−CDR3ループの長さは、天然抗体におけるVH3/VK1重鎖/軽鎖の組み合わせで最も頻繁に観測される長さである(DeKosky et al., 2013(非特許文献23))9アミノ酸となるように選択した。LC−CDR3ループのアミノ酸配列は、VH3/VK1の組み合わせにおいて長さ9のLC−CDR3ループで最も頻繁に観測されるアミノ酸によって表される(図5)。LC−CDR3ループのアミノ酸配列において、Trpをコード化するVK−1 J1断片(TGG)由来の開始コドン(initial codon)をCTG(Leu)によって置換した。ここで、CGT(Leu)は、VH3/VK1の組み合わせを有する長さ9の天然抗体のLC−CDR3ループにおいてこの位置で最も頻繁に観測されるアミノ酸である(DeKosky et al., 2013(非特許文献23))。追加の特有の制限部位を、軽鎖LC−CDR1領域及びLC−CDR3領域の上流及び下流に導入した(図3)。次に、一本鎖骨格が、結合性GGGGSGGGGSGGGGSリンカー(配列番号6)によってVH/VL一本鎖トポロジーに組み立てられ(図3)、望まない制限部位が代替コドンを選択することによって除去され、得られた核酸配列は、E.coli(配列番号7)での発現のためにコドンを最適化された。
【0074】
実施例3. 一本鎖HC−CDR3のみのライブラリーを生成できるディスプレイベクターであるベースベクター_VH3_VK1_v22(BaseVector_VH3_VK1_v22)の設計及び生成
ライブラリー構築のためのファージディスプレイベクターは、pCANTAB5ベクター(McCafferty et al., 1994(非特許文献26))の誘導体である、pCANTAB6ベクターに基づく。pCANTAB6の配列は、McCafferty et al., 1994(非特許文献26)に略述されている修飾を導入したGenbank登録U14321から開始して再構築された。pCANTAB6のscFvクローニング部位を、スタッファーセグメントを含むVH3−リンカー−VK1一本鎖骨格によって置き換えた(図6)。望まない制限部位を除去するためのいくつかの一塩基置換の導入と、以下に列記した複製起源の配列の回復により、ベースベクター_VH3_VK1_v22(配列番号8)の配列を得た。
【0075】
ディスプレイベクターであるベースベクター_VH3_VK1_v22の組成:
位置1〜2334:以下の修飾を有するU14321由来
320 C−>T Xhol部位を除去する
617 G−>C Pvul部位を除去する
1379 T−>C 他のファージミドベクターと同一の複製起源の配列を作成する
2328 C−>G Styl部位を除去する
【0076】
位置2335〜3366:VH3−リンカー−VK1一本鎖骨格(配列番号7)
【0077】
位置3367〜3447:McCafferty et al., 1994(非特許文献26)に示される、軽鎖可変領域のC−末端をpIIIタンパク質と連結するセグメント
【0078】
位置3448〜5540:以下の修飾を含むU14321由来:
4029 G−>A BamHI部位を除去する
4788 A−>C Pvul部位を除去する
【0079】
一本鎖骨格が挿入されたベースベクター_VH3_VK1_v22の概略配置図を図6に示す。Pstl及びStylを含むスタッファー領域の除去は、HC−CDR3多様性をコード化するオリゴヌクレオチドのクローニングを可能にする。追加の特有の制限部位は、完全な一本鎖抗体、個々の可変軽鎖又は重鎖の除去、又は可変軽鎖領域内の追加の多様性の導入を可能にする(図7)。次に、ベースベクター_VH3_VK1_v22を合成し、標準的な方法(Genscript Corporation)によって組み立てた。
【0080】
実施例4. HC−CDR3ループ長分布の最適化、及び各HC−CDR3ループ内の位置ごとのアミノ酸多様性の最適化
His及びGlnを、His及びGlnトリマーブロックによってHC−CDR3ループ内のPstl及びStyl部位の生成を排除するためにHC−CDR3多様性の設計から除外した。この除外は、天然抗体のHC−CDR3配列の組成が、His及びGlnが一般に非常にわずかな頻度で観測される(表1a〜1i)ことを示しているので、受け入れ可能である。対形成していないCys残基を通した分子間ジスルフィド架橋の形成を防止するために、CysをHC−CDR3ループのどの位置においても除外した。酸化の傾向のあるMetもいずれの位置においても排除した。位置101の前の位置を除いて、Metは一般に、天然のHC−CDR3配列には非常に低い頻度で存在する(表1a〜1i)。位置101はAspとして、常に固定されたままである。
【0081】
ループ長7〜15(ループ長分布及び位置ごとのアミノ酸の可変性)に対するHC−CDR3ループの多様性の設計は、スプレッドシートアプリケーションを使用して最適化される。このアプリケーションにおいて、ライブラリー内の各HC−CDR3ループ長についての分率(percent fraction)、及び、各HC−CDR3ループ長についてのHC−CDR3位置(HC−CDR3ループの前のPos94も含む)の各々における可変性(異なるアミノ酸の数)を調節することができる。次に、アプリケーションは、各HC−CDR3ループ長、理論的に可能な変異の数、実際に存在するクローンの数(=ライブラリーの全複雑さ×特定のHC−CDR3ループ長の分率(percent fraction))、実際に存在する理論的に可能な全ての変異の割合についてのポアソン(Poisson)評価、ポアソン評価に従って存在する異なる変異の実際の数、及び冗長性(各変異が平均して存在する回数)につて計算する。
【0082】
ポアソン評価:1−e(-1*N/M)
式中、
N=複雑さCのライブラリーにおいて、長さLのHC−CDR3ループを有するクローンの数
M=各ループ位置でアミノ酸の特定の組成を有する長さLのHC−CDR3ループについての、理論的に可能な変異の数
【0083】
最初に、各HC−CDR3ループ一での異なるアミノ酸の数を、位置101及び102(それぞれ、5及び8個の異なるアミノ酸)を除いて、16(Cys、Gln、His及びMetを除く全てのアミノ酸)までに設定し、各HC−CDR3ループ長に対する初期分率(percent fraction)を7〜15までのループ長に対して天然の抗体で観測されるHC−CDR3ループ長分布にした。即ち100%に再正規化した。この構成では、より短いHC−CDR3ループが過剰に表れ、10〜15のHC−CDR3ループ長に対しては、理論的に可能な変異の1%未満がライブラリー内に存在する(表2A)。治療抗体又は臨床開発の抗体で富化される(図8〜9)長さ10のHC−CDR3ループに対しては、全ての可能な変異の極一部がライブラリー内に実際に存在する。
【0084】
表2A. 超可変位置で16個の異なるアミノ酸を、位置101で5個の異なるアミノ酸を、そして位置102で8個の異なるアミノ酸を有する天然アミノ酸と同様のHC−CDR3ループ長分布を持つ、全複雑さ1.3×1010のHC−CDR3のみのライブラリーのための設計スキーム。位置を考慮した超可変領域は、アンダーラインを付した異なるアミノ酸の数を有する。カバト位置94は変化しない。
【0085】
【表2A】
【0086】
超可変領域で16から8個に異なるアミノ酸の数を減少すると、11までのHC−CDR3ループ長をよく表すライブラリーが生成されるが、同時に、冗長性(変異が存在する回数の平均)はかなり増強される(表2B)。
【0087】
表2B. 超可変位置で8個の異なるアミノ酸を、位置101で一定のアミノ酸を、そして位置102で8個の異なるアミノ酸を有する天然アミノ酸と同様のHC−CDR3ループ長分布を持つ、全複雑さ1.3×1010のHC−CDR3のみのライブラリーのための設計スキーム。位置を考慮した超可変領域は、アンダーラインを付した異なるアミノ酸の数を有する。カバト位置94は変化しない。
【0088】
【表2B】
【0089】
HC−CDR3ループ長分布に対するパーセントの値を調節し、HC−CDR3ループ長7〜11に対して位置94で追加の可変性を導入し、より大きなHC−CDR3ループに対して超可変位置に存在する異なるアミノ酸の数を徐々に減少し、位置102及び位置101の前の位置での異なるアミノ酸の数を減少すると、有利な特性を有するライブラリーの設計が得られる(表2C)。冗長性は、短いHC−CDR3ループに対してかなり減少され、9〜11の長さのループに対する変異の対象範囲は高く、より大きなHC−CDR3ループもかなりよく表れる(表2C)。最適化されたHC−CDR3ループ長分布は、天然抗体で観測されるHC−CDR3ループ長分布及び既に承認された治療抗体又は臨床開発中の治療抗体に対するものと共に、図10に示されている。
【0090】
表2C. 最適化されたHC−CDR3ループ長分布を有し、及びカバト位置94及び各HC−CDR3ループの各位置で最適化された可変性を有する、全複雑さ1.3×1010のHC−CDR3のみのライブラリーに対する設計スキーム。位置を考慮した超可変領域は、アンダーラインを付した異なるアミノ酸の数を有する。
【0091】
【表2C】
【0092】
実施例5. 最適化されたライブラリーの設計に従ったオリゴヌクレオチドの設計
各HC−CDR3ループ長に対するアミノ酸組成を、表2Cに示される最適化されたライブラリーの設計に基づいて集めた。各位置で、及び各HC−CDR3ループ長に対して、表2Cに示されたアミノ酸の数は、表1a〜1iに従ったそのHC−CDR3ループ長及び位置に対する天然抗体で最も頻繁に観測されるアミノ酸から選択され、パーセントの値は100に再正規化された。最適化されたライブラリーの設計に従ってHC−CDR3長7〜15に対するアミノ酸組成と頻度のパーセントを表3A〜3Iに示す。例えば、HC−CDR3ループ長7に対しては、表2Cは、3つの異なるアミノ酸が位置94に存在する必要があることを示す。長さ7の天然のHC−CDR3ループで最も頻繁に観測される3つのアミノ酸は、Arg63.4%、Ser8.9%、及びThr7.3%(表1a)である。これらのアミノ酸についてパーセントの値を100%に再正規化すると、Arg79.6%、Ser11.2%、及びThr9.2%となる。
【0093】
-表3A. 長さL=7を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。全体の可変性を増加するために、HC−CDR3ループの前の位置94もHC−CDR3ループ長7に対して変化されている。
【0094】
【表3A】
【0095】
表3B. 長さL=8を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。全体の可変性を増加するために、HC−CDR3ループの前の位置94もHC−CDR3ループ長8に対して変化されている。
【0096】
【表3B】
【0097】
表3C. 長さL=9を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。全体の可変性を増加するために、HC−CDR3ループの前の位置94もHC−CDR3ループ長9に対して変化されている。
【0098】
【表3C】
【0099】
表3D. 長さL=10を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。全体の可変性を増加するために、HC−CDR3ループの前の位置94もHC−CDR3ループ長10に対して変化されている。
【0100】
【表3D】
【0101】
表3E. 長さL=11を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。全体の可変性を増加するために、HC−CDR3ループの前の位置94もHC−CDR3ループ長11に対して変化されている。
【0102】
【表3E】
【0103】
表3F. 長さL=12を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。
【0104】
【表3F】
【0105】
表3G. 長さL=13を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。
【0106】
【表3G】
【0107】
表3H. 長さL=14を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。
【0108】
【表3H】
【0109】
表3I. 長さL=15を有するHC−CDR3ループに対する最適化されたライブラリーのアミノ酸組成。各位置に対して、存在する異なるアミノ酸がそれらの相対頻度と共に示されている。
【0110】
【表3I】
【0111】
次に、各HC−CDR3ループ長に対するオリゴヌクレオチドを、表3A〜Iの値に基づいて設計した。1を超えるアミノ酸を有する位置で、図5から対応するトリマーブロックが選択され、混合物として所望の分率(percent fraction)で、設計に含まれる。完全なコドンをコード化するトリマーブロックを使用することは有利である。これは、それらが、オリゴヌクレオチドを変性する標準的な場合である望まない停止コドンの生成又は望まないアミノ酸の取り込みを起こさずに、各HC−CDR3ループの各々の位置で表3A〜Iに示されるアミノ酸組成及び頻度を生じることができるからである。オリゴヌクレオチドの定常部分(1つのみのアミノ酸が存在する位置、又はクローニングに必要な部分)が、代わりに設計され、標準のオリゴヌクレオチド合成によって合成される。15のHC−CDR3ループ長に対するオリゴヌクレオチドの設計が図11に示されている。他のHC−CDR3ループ長に対するオリゴヌクレオチドを、表3A〜Iに与えられた値を用いて等価な方法で設計した。オリゴヌクレオチドは、これらのトリマーブロック技術を用いてEllaBiotechによって合成された。
【0112】
実施例6. ベースベクター_VH3_VK1_v22に、HC−CDR3多様性を含有するオリゴヌクレオチドを挿入することによるライブラリーの多様性の生成
第1ステップでは、HC−CDR3ループ多様性をコード化する一本鎖オリゴヌクレオチドを、プライマーSty_rev_1(配列番号9)及びHerculaseII−FusionDNAポリメラーゼ(Agilent cat#600679)と、以下の条件:98℃で35秒間の変性、47℃で15秒間のアニーリング、ループ長7〜11及び12〜15をコード化するオリゴヌクレオチドに対して、それぞれ47℃及び65℃で15秒間の伸長を用いて、プライマー伸長(二本鎖オリゴヌクレオチドの生成)にかけた。得られた二本鎖オリゴヌクレオチドを、次に、プライマーPstl_for_1(配列番号10)、及びSty_rev_2(配列番号11)を用い、HerculaseII−FusionDNAポリメラーゼ(Agilent cat#600679)を用い、以下の条件:95℃で15秒間の変性、52℃で15秒間のアニーリング、72℃で15秒間の伸長を16サイクル繰り返すことによって増幅した。
【0113】
増幅後、オリゴヌクレオチドをQiaquickヌクレオチドリムーバルキット(nucleotide Removal Kit)(Qiagen Cat#28304)により精製し、Pstl/Styl制限酵素での消化にかけ、各HC−CDR3ループ長に対して,別々に、挿入物:ベクター比1:6(5×107/108クローン/μgの範囲の形質転換効率)でPstl/Styl消化したファージミドベクターに結紮した。得られた結紮物を、次に、XL1ブルー−MRF’エレクトロコンピテントセル(50μl細胞中50ngベクター)に移入し、23×23cmの2XTYアガーバイオアッセイプレート上にプレート化し、37℃で一夜(o/n)成長させた。次の日の細胞を2XTYAG/グリセロール17%中でプレートから採取し、−80℃で保存した。所望のHC−CDR3ループ長分布及び1.3×1010の全体にわたるライブラリーの複雑さを実現するため、形質転換の効率を、所望のHC−CDR3ループ長分布及び複雑さに到達するまで、クローンの採取サイクルを定期的に繰り返してチェックした。次に、全ての個々の採取サイクルからクローンを一緒にプールして最終ライブラリーを生成した。
【0114】
ファージフォーマットでライブラリーを調製するために、6mlのプールした細菌を4Lの2XTY/アンピシリン/2%グルコース中でインキュベートした。ここで、8.4×1010の細菌の全体に対して、開始のOD600=0.1は約6.5倍のライブラリーの複雑さを示す。OD600=0.5が達成されたら、細胞をMOI=10でM13K07ヘルパーファージにより重複感染させ、媒体を2XTY/アンピシリン/カナマイシンに変更し、細胞を30℃で一夜振盪しながらインキュベートした。得られた細胞培養物を遠心分離し、ファージライブラリを含有する上清を、2回のPEG沈澱ステップ(3/10の容積について20%PEG8000/NaCl2.5Mを添加)にかけ、次いで、CsCl勾配での更なる精製ステップのために1XTE中でファージを再懸濁した。次に、ファージ個体群を勾配から集め、2Lの1XTEに対して一夜透析してCsClを除去し、個体群のファージ濃度をTU、pfu、及びPP/mlによって決定し、TBE1X、グリセロール15%、NaN30.02%中に保存した。
【0115】
実施例7. ウシ血清アルブミン(BSA)への選択的結合の同定
選択の幾つかのステップにおいて、標準のブロッキングバッファーを2%ミルクで作成し、従ってこれは多量のウシアルブミンを含有するので、本発明者らは、この可溶性BSAが、選択のためのプラスチック上にコーティングされた標的組み換えBSAタンパク質と競合できると判断した。結論として、この標的に関するファージの選択に対して、1%カゼイン(ロッシュ(Roche))を含むブロッキングバッファー試薬を、標準のブロッキングバッファーに代えて使用した。加えて、コーティングに使用されたBSA溶液中に存在するNaN3に対する特異的なファージの選択を防止するために、0.02%NaN3を含有するブロッキングバッファー試薬を使用し、これによって、NaN3に潜在的に特異的なファージを溶液内に残し、洗浄除去した。
【0116】
この標的に対して、ライブラリーからの2.1×1012TU(ファージ)を、3mlの最終体積で、50μg/ml(第1ラウンド)の濃度で、イムノチューブ上にコーティングされ、それぞれ、30μg/ml及び15μg/mlにスケールダウンされた精製されたBSAと共に、以下の2種類の選択のラウンドでインキュベートした。
【0117】
入力/出力比は、特異的クローンの富化の尺度を表し、実際に、これは選択の第1ラウンドでは通常非常に高く、前のラウンドから溶出されたファージの個体群が特定のファーに対して段階的に富化される場合、引き続きのラウンドで急速に低下する。この標的に対して、入力/出力比は、パニングの第1ラウンドから第3ラウンドまでの特定のクローンの可能な富化を示唆した(図12A)。ポリクローナルファージを、BSA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。抗−BSAM13−scFvクローンが、選択の第2及び第3ラウンドで存在した(図12B)。ウェルにコーティングされた市販品として製造された抗原(BP180及びコラーゲンVII)への非特異的結合は、おそらく、製造者(MBL)によって使用されたBSAを含有するブロッキング試薬による(図12B)。選択の第3ラウンドにおける抗−BSAクローンのパーセンテージは、89のうち50(56%)であった(図12C)。分析された12の陽性クローンはすべて、BSAに特異的であった(図12D)。
【0118】
実施例8. オバルブミン(OVA)への選択的結合の同定
この標的に対して、総クローンとして9.3×1012TUからの陽性ファージの選択を、50μg/mlの濃度のOVAであって、選択の以下の2種類のラウンドにおいて、それぞれ30μg/ml及び10μg/mlにスケールダウンされたものでイムノチューブをコーティングすることにより実施した。入力/出力比は、パニングの第1ラウンドから第2及び第3ラウンドまでの特定のクローンの可能な富化を示唆した(図13A)。ポリクローナルファージを、OVA及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。抗−OVAM13−scFvクローンが、他の抗原へのいずれの非特異的結合もなく、選択のII及びIIIラウンドで存在した(図13B)。選択の第3ラウンドにおける抗−OVAクローンのパーセンテージは、94のうち81(86%)であった(図13C)。10の陽性クローンの分析は、それらの全てがOVAに特異的であることを示した(図13D)。
【0119】
実施例9. デスモグレイン1(Dsg1)への選択的結合の同定
ライブラリーの選択を、10のDag1をプレコーティングしたウェル(MBL ELISA)及びライブラリーを含有するバッファーの1600μl中9.3×1012TU(160μl/ウェル)を用いて実施した。コーティングした抗原の濃度は未知である。入力/出力比は、パニングの第1ラウンドから第3ラウンドまでの特定のクローンの可能な富化を示唆した(図14A)。ポリクローナルファージを、Dsg1をプレコーティングしたウェル及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。抗−Dsg1M13−scFvが、Des3及びDes3由来の構造物(EC−12)以外の他の抗原へのいずれの非特異的結合なく、選択の第2及び第3ラウンドで存在した(図14B)。検出された交差反応性は、Dsg1及び3の間の高い配列相同性によると思われる。選択の第3ラウンドにおける抗−Dsg1クローンのパーセンテージは、94のうち86(91%)であった(図14C)。8つの陽性クローンの分析は、それらの全てがDsg1に特異的であることを示した(図14D)。
【0120】
実施例10. 線維芽細胞成長因子受容体4(FGFR4)への選択的結合の同定
ライブラリーの選択を、10μg/mlの濃度でFGFR−4をコーティングした10のマイクロプレートウェル中、1600μlのライブラリー(160μl/ウェル)を用いて実施した。選択の3つのラウンドはすべて、同じ濃度のFGFR−4をコーティングしたウェルで実施した。FGFR−4組み換えタンパク質は、ヒトIgG1FCに融合されたキメラタンパク質であるので、選択される抗−FCファージの量を減少させるために、第1ラウンドはFCに融合された異なる組み換えタンパク質(8μg/mlのDsg3−FC)を用いて実施した。入力/出力比は、パニングの第1ラウンドから第3ラウンドまでの特定のクローンの可能な富化を示唆した(図15A)。ポリクローナルファージを、FGFR−4及び幾つかの非関連抗原についてファージELISAによって試験した。抗−FGFR−4M13−scFvクローンが、他の抗原へのいずれの非特異的結合なく、選択の第2及び第3ラウンドで存在した(図15B)。注目すべきことに、Dsg3−FCとの競合的選択は全ての抗−FCファージを除去しなかった。実際に、ポリクローナル混合物は、FGFR−4及びDsg3−FCの両方と反応した(図15B)。選択の第3ラウンドの抗−FGFR−4−FCクローンのパーセンテージは、77のうち72(94%)であった(図15C)。分析された20の陽性クローンはFGFR−4に結合し、4つがDsg3−FCにも弱く反応した(図15D)。従って、Dsg3−FCとの競合的バイオパニングは抗−FCクローンの量を減少することに成功した。
【0121】
4つの標的についての選択の結果を表4にまとめた。
【0122】
表4− 4つの異なる確認標的についてのライブラリースクリーニングの結果のまとめ。A)各標的に対して陽性として選択されたファージの数とパーセンテージ、B)結合性対特異的標的又は他の非関連組み換えタンパク質に関する特異性、及び、各標的に対して見出された異なる配列の数(以下参照)
【0123】
【表4A】
【0124】
【表4B】
【0125】
4つの標的抗原の全てについて、選択が成功し、大量のクローンを生じ、そして重要なこととして、高い特異性で標的抗原を認識するクローンを生じた。
【0126】
実施例11. 選択されたファージのHC−CDR3DNA配列の同定
表4のパネルBに報告されているように、多くのクローンが各標的に対して配列決定され、その配列は分析されて、表5に示されているように配列されている(以下を参照)。
【0127】
BSAの場合、5つのクローンが配列決定され、それらの全てが同じHC−CDR3配列を示した。その代わりに、配列決定された10のOVA陽性クローンは全て、特有のクローンであり、少なくとも4つの異なるクローンのファミリーに対応した。また、Dsg1の場合には、8つの陽性クローンが配列決定され、これらの全てが特異的であり、8つのうちの5つが特有であり、3つの異なるクローンのファミリーであった。
【0128】
最後に、10のFGFR−4特異的クローンが配列決定され、7つが同一の配列を有することが示された。3つの異なるクローンのファミリーが同定された。
【0129】
M13−scFvクローン(cl.33)の、その標的FGFR−4に対する親和性を、ファージELISAによって決定し、ナノモル範囲(8,7×10-8M)であることが見いだされた。この値は、これらのHC−CDR3のみのライブラリーで選択されたファージに対する105〜475nMの親和性を見出したPfizer(Mahon et al. J.Mol:Biol. 405, 1712, 2013(非特許文献7))によって報告された値と互角である。
【0130】
表5 選択を通して単離されたクローンのサブセットの配列分析。各標的に対して、5〜10のクローンが配列決定された。
【0131】
【表5】
【0132】
結論
得られた結果から、ライブラリーの設計は、4つの試験した標的抗原の全てに対して成功した。高い標的親和性が得られた(表4)ことに加えて、ライブラリーはまた、各標的に対して種々の異なるクローン配列のファミリーを提供する。重要なこととして、得られた結果が、11のHC−CDR3長を有するほとんどの配列を持つライブラリーの基本的設計原理をよく反映している。加えて、少数の(大抵1つのみ)の異なるアミノ酸のみを有する多くの選択されたクローンの存在により、設計で履行されたように9〜11の、最も重要なHC−CDR3長に対するすべてのHC−CDR3ループの変異について大きな対象範囲を提供することが確認される。
【0133】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]