特許第6974935号(P6974935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974935
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】金属ナノプレートの非水系分散液
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20211118BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20211118BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20211118BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20211118BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20211118BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D1/00
   C09D7/61
   B82Y20/00
   B82Y40/00
【請求項の数】15
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-205995(P2016-205995)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-119827(P2017-119827A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-251381(P2015-251381)
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年4月20日〜22日 MEDTEC Japan 2016における公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】松山 卓央
(72)【発明者】
【氏名】上村 一真
(72)【発明者】
【氏名】溝口 大剛
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−001844(JP,A)
【文献】 特開2009−127085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤及び有機溶媒を含む金属ナノプレートの非水系分散液であって、
前記分散剤の酸価が、90以下であり、記分散剤の塩基価が、5〜100であり、前記分散剤の酸価の塩基価に対する比率が、酸価/塩基価=2.0以下であり、かつ前記分散剤の重量平均分子量Mwが、10,000以上であり、
少なくとも1つの硫黄原子を含有する複素環化合物を含まない、非水系分散液。
【請求項2】
前記金属が、金又は銀である、請求項1に記載の非水系分散液。
【請求項3】
前記有機溶媒の溶解度パラメータ(SP値)が、8〜12である、請求項1又は2に記載の非水系分散液。
【請求項4】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素、ケトン、エステル及びエーテルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系分散液。
【請求項5】
金属ナノプレートの非水系分散液調製用の、分散剤及び金属ナノプレートを含む固体組成物であって、
前記分散剤の酸価が、90以下であり、記分散剤の塩基価が、5〜100であり、前記分散剤の酸価の塩基価に対する比率が、酸価/塩基価=2.0以下であり、かつ前記分散剤の重量平均分子量Mwが、10,000以上であり、
少なくとも1つの硫黄原子を含有する複素環化合物を含まない、固体組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系分散液と、バインダーとを含む、金属ナノプレートの非水系塗料。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系分散液又は請求項に記載の非水系塗料から成膜された、金属ナノプレートの塗膜。
【請求項8】
光制御する部材、電気的特性を利用する部材又はセンサー関連部材に使用するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系分散液。
【請求項9】
光制御する部材、電気的特性を利用する部材又はセンサー関連部材に使用するための、請求項に記載の非水系塗料。
【請求項10】
光制御する部材、電気的特性を利用する部材又はセンサー関連部材に使用するための、請求項に記載の塗膜。
【請求項11】
請求項1〜及びのいずれか一項に記載の非水系分散液、請求項5に記載の固体組成物、請求項若しくはに記載の非水系塗料、又は、請求項若しくは10に記載の塗膜に使用される金属ナノプレートの最大吸収波長を調節する方法であって、
前記金属ナノプレートの粒子径を増大させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を長波長側にシフトさせる工程、又は、前記金属ナノプレートの粒子径を減少させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記粒子径増大工程又は減少工程が、粒子径が約10nm〜約30nmの金属ナノプレートを調製して、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を約420nm〜約530nmに調節する工程、粒子径が約30nm〜約50nmの金属ナノプレートを調製して、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を約470nm〜約640nmに調節する工程、又は、粒子径が約50nm〜約200nmの金属ナノプレートを調製して、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を約520nm〜約1350nmに調節する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分散剤及び有機溶媒を含む金属ナノプレートの非水系分散液の最大吸収波長を調節する方法であって、
前記非水系分散液中の有機溶媒(第1の有機溶媒)の少なくとも一部を第2の有機溶媒に置換する工程、又は、前記非水系分散液中の有機溶媒(第1の有機溶媒)に第2の有機溶媒を添加する工程を含み、
前記置換工程又は添加工程が、前記第2の有機溶媒として前記第1の有機溶媒よりも屈折率の高い液体を採用して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、分散媒として前記第1の有機溶媒のみを含む非水系分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、前記第2の有機溶媒として前記第1の有機溶媒よりも屈折率の低い液体を採用して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、分散媒として前記第1の有機溶媒のみを含む非水系分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含み、
前記分散剤の酸価が、90以下であり、かつ前記分散剤の塩基価が、5〜100である、方法。
【請求項14】
第1の分散媒を含む金属ナノプレートの分散液の最大吸収波長を調節する方法であって、
前記第1の分散媒の少なくとも一部を第2の分散媒に置換する工程、又は、前記第1の分散媒に第2の分散媒を添加する工程を含み、
前記置換工程又は添加工程が、前記第2の分散媒として前記第1の分散媒よりも屈折率の高い液体を採用して、前記分散液の最大吸収波長を、分散媒として第1の分散媒のみを含む分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、前記第2の分散媒として前記第1の分散媒よりも屈折率の低い液体を採用して、前記分散液の最大吸収波長を、分散媒として第1の分散媒のみを含む分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1〜及びのいずれか一項に記載の非水系分散液を調製する方法であって、
前記金属ナノプレートを、水よりも屈折率の高い有機溶媒に分散して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、前記金属ナノプレートの水分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、水よりも屈折率の低い有機溶媒に分散して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、前記金属ナノプレートの水分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の特性を有する分散剤及び有機溶媒を含む金属ナノプレートの非水系分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学部材や光学センサーなどの分野で、光吸収の波長選択性を有するフィルムが求められており、そのようなフィルムを作製するためのコーティング材の開発が行われている。光吸収の波長選択性を有する材料としては、各用途に対応するため、光吸収の波長域を容易に制御できる材料、すなわち可視領域の波長帯では特定波長を選択的に吸収する調色設計や、複数の波長を組み合わせたマルチカラー設計に適用可能な材料が好まれている。このような材料は、可視領域から近赤外領域の波長帯を利用する人体センサー、近赤外線センサー、セキュリティセンサーなどに使用される光学センサー、光学デバイス、光通信システムなどへの適用が期待されている。また、高級感が求められるプラスチックやガラスなどの基材上への加飾技術の分野においては、鮮やかな吸収を示す色材や金属調の反射が得られる材料としての適用が期待されている。
金ナノプレートや銀ナノプレートなどの金属ナノプレートは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により光を吸収することが知られており、その大きさや形状を制御することにより、光吸収の波長域を制御できることが知られている。例えば、銀ナノプレートは、水系中で調製され、その水懸濁液は、その銀ナノプレートの吸収波長に応じた色を示す(特許文献1、非特許文献1〜3)。銀ナノプレートは安定性が低く、特に酸化によって形状が変化すると、意図していた色の変化を引き起こし得るので、安定な銀ナノプレートの水懸濁液を調製する方法が研究されている(特許文献1)。また、金や銀のコロイド微粒子、すなわちプレート状ではない球形の微粒子は、水系中に分散して、インクの色材として用いられることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願第PCT/JP2015/065658号
【特許文献2】特開2003−292836号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Science (2001), Vol. 294, pp. 1901-1903
【非特許文献2】Chemistry - A European Journal (2010), Vol. 16, No. 42, pp. 12559-12563
【非特許文献3】Langmuir (2002), Vol. 18, pp. 8692-8699
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水系のコーティング材は乾燥性などの問題からフィルムへの塗装には適さず、非水系のコーティング材を用いる必要がある。しかしながら、金ナノプレートや銀ナノプレートなどの金属ナノプレートは非水系中では安定に分散した状態で調製することができない。例えば、銀ナノプレートの非水系分散液を調製するためには、銀ナノプレートを水懸濁液として調製後、水を有機溶媒に置換しなければならないが、銀ナノプレートの非水系分散液は貯蔵安定性が低く、粒子が凝集しやすい傾向があった。銀ナノプレートをエタノール中に単純に分散させることは知られてはいたものの(非特許文献3)、その場合の銀ナノプレートの安定性にも疑問が残る。したがって、本発明は、安定性の良好な金属ナノプレートの非水系分散液を提供することを目的としている。
また、本発明は、金属ナノプレート又はその分散液の最大吸収波長を調節する方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の特性を有する分散剤を使用すれば、安定性の良好な金属ナノプレートの非水系分散液を調製できること、及び、金属ナノプレート又は分散媒の特性が最大吸収波長と相関関係にあることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示す金属ナノプレートの非水系分散液及びそれを調製するための固体組成物、金属ナノプレートの非水系塗料及びそれから成膜された塗膜、並びに、金属ナノプレート又はその分散液の最大吸収波長を調節する方法を提供するものである。
〔1〕分散剤及び有機溶媒を含む金属ナノプレートの非水系分散液であって、
前記分散剤の酸価が、90以下であり、かつ前記分散剤の塩基価が、5〜100であることを特徴とする、非水系分散液。
〔2〕前記金属が、金又は銀である、前記〔1〕に記載の非水系分散液。
〔3〕前記分散剤の酸価の塩基価に対する比率が、酸価/塩基価=2.0以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の非水系分散液。
〔4〕前記分散剤の重量平均分子量Mwが、10,000以上である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の非水系分散液。
〔5〕前記有機溶媒の溶解度パラメータ(SP値)が、8〜12である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の非水系分散液。
〔6〕前記有機溶媒が、芳香族炭化水素、ケトン、エステル及びエーテルからなる群から選択される1種以上を含む、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の非水系分散液。
〔7〕金属ナノプレートの非水系分散液調製用の、分散剤及び金属ナノプレートを含む固体組成物であって、
前記分散剤の酸価が、90以下であり、かつ前記分散剤の塩基価が、5〜100であることを特徴とする、固体組成物。
〔8〕前記分散剤の酸価の塩基価に対する比率が、酸価/塩基価=2.0以下である、前記〔7〕に記載の固体組成物。
〔9〕前記分散剤の重量平均分子量Mwが、10,000以上である、前記〔7〕又は〔8〕に記載の固体組成物。
〔10〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の非水系分散液と、バインダーとを含む、金属ナノプレートの非水系塗料。
〔11〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の非水系分散液又は前記〔10〕に記載の非水系塗料から成膜された、金属ナノプレートの塗膜。
〔12〕光制御する部材、電気的特性を利用する部材又はセンサー関連部材に使用するための、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の非水系分散液。
〔13〕光制御する部材、電気的特性を利用する部材又はセンサー関連部材に使用するための、前記〔10〕に記載の非水系塗料。
〔14〕光制御する部材、電気的特性を利用する部材又はセンサー関連部材に使用するための、前記〔11〕に記載の塗膜。
〔15〕前記〔1〕〜〔6〕及び〔12〕のいずれか一項に記載の非水系分散液、前記〔7〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の固体組成物、前記〔10〕若しくは〔13〕に記載の非水系塗料、又は、前記〔11〕若しくは〔14〕に記載の塗膜に使用される金属ナノプレートの最大吸収波長を調節する方法であって、
前記金属ナノプレートの粒子径を増大させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を長波長側にシフトさせる工程、又は、前記金属ナノプレートの粒子径を減少させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
〔16〕非水系分散液中の金属ナノプレートの最大吸収波長を調節する方法であって、
前記金属ナノプレートの粒子径を増大させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を長波長側にシフトさせる工程、又は、前記金属ナノプレートの粒子径を減少させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
〔17〕前記粒子径増大工程又は減少工程が、粒子径が約10nm〜約30nmの金属ナノプレートを調製して、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を約420nm〜約530nmに調節する工程、粒子径が約30nm〜約50nmの金属ナノプレートを調製して、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を約470nm〜約640nmに調節する工程、又は、粒子径が約50nm〜約200nmの金属ナノプレートを調製して、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を約520nm〜約1350nmに調節する工程を含む、前記〔15〕又は〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記〔1〕〜〔6〕及び〔12〕のいずれか一項に記載の非水系分散液の最大吸収波長を調節する方法であって、
前記非水系分散液中の有機溶媒(第1の有機溶媒)の少なくとも一部を第2の有機溶媒に置換する工程、又は、前記非水系分散液中の有機溶媒(第1の有機溶媒)に第2の有機溶媒を添加する工程を含み、
前記置換工程又は添加工程が、前記第2の有機溶媒として前記第1の有機溶媒よりも屈折率の高い液体を採用して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、分散媒として前記第1の有機溶媒のみを含む非水系分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、前記第2の有機溶媒として前記第1の有機溶媒よりも屈折率の低い液体を採用して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、分散媒として前記第1の有機溶媒のみを含む非水系分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
〔19〕第1の分散媒を含む金属ナノプレートの分散液の最大吸収波長を調節する方法であって、
前記第1の分散媒の少なくとも一部を第2の分散媒に置換する工程、又は、前記第1の分散媒に第2の分散媒を添加する工程を含み、
前記置換工程又は添加工程が、前記第2の分散媒として前記第1の分散媒よりも屈折率の高い液体を採用して、前記分散液の最大吸収波長を、分散媒として第1の分散媒のみを含む分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、前記第2の分散媒として前記第1の分散媒よりも屈折率の低い液体を採用して、前記分散液の最大吸収波長を、分散媒として第1の分散媒のみを含む分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
〔20〕前記〔1〕〜〔6〕及び〔12〕のいずれか一項に記載の非水系分散液を調製する方法であって、
前記金属ナノプレートを、水よりも屈折率の高い有機溶媒に分散して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、前記金属ナノプレートの水分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、水よりも屈折率の低い有機溶媒に分散して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、前記金属ナノプレートの水分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むことを特徴とする、方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従えば、安定性が良好な金属ナノプレートの非水系分散液を調製することができる。そして、その非水系分散液を用いることにより、金属ナノプレートの非水系塗料を調製することが可能となり、さらにそれを成膜して塗膜を調製することが可能となる。また、本発明に従えば、金属ナノプレート又はその分散液の最大吸収波長を容易に調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】銀ナノプレートの水分散液A(A)、トルエン分散液E(E)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Z(Z)の光学特性並びに塗膜Z’(Z’)の透過率を示す。
図2】銀ナノプレートの水分散液B(B)、トルエン分散液F(F)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AC(AC)の光学特性並びに塗膜AC’(AC’)の透過率を示す。
図3】銀ナノプレートの水分散液C(C)、トルエン分散液G(G)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AF(AF)の光学特性並びに塗膜AF’(AF’)の透過率を示す。
図4】銀ナノプレートの水分散液D(D)、トルエン分散液H(H)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AI(AI)の光学特性を示す。
図5】銀ナノプレートの非水系分散液の最大吸収波長と半値幅との関係を示す。
図6】銀ナノプレートの水分散液A(A)、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Z(Z)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AM−1(AM−1)の光学特性を示す。
図7】銀ナノプレートの粒子径と最大吸収波長との関係を示す。
図8】アセトン(AT)、メチルエチルケトン(MK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジアセトンアルコール(DA)、シクロヘキサノン(CH)、又はトルエン(TL)を分散媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液の光学特性を示す。
図9】分散媒の屈折率と非水系分散液の最大吸収波長との関係を示す。
図10】異なる粒子径の銀ナノプレートを使用した塗膜AN’(AN’)、塗膜AO’(AO’)、又は塗膜AP’(AP’)の透過率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液は、分散剤及び有機溶媒を含んでおり、前記分散剤の酸価が、90以下であり、かつ前記分散剤の塩基価が、5〜100であることを特徴としている。
【0010】
本明細書に記載の「金属ナノプレート」とは、金属から製造されたプレート状のナノ粒子のことをいう。前記金属ナノプレートの主面の最大長さとなる粒子径(円形の場合は直径に相当し、三角形の場合は最大辺の長さに相当する)は、通常10〜1000nmであり、10〜150nmが好ましい。金属ナノプレートの厚さは、プラズモン吸収することができるものであれば特に制限されず、一般的には40nm以下であり、好ましくは5〜20nmである。
前記金属ナノプレートの材料となる金属は、ナノプレートにした際にLSPRにより光を吸収することができるものであれば特に制限されず、例えば、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、又はスズ(Sn)であってもよく、好ましくは金又は銀である。
前記金属ナノプレートのアスペクト比(粒子径/厚み)は、通常1.5以上であり、可視光領域にLSPRの吸収波長が発現して多色設計が可能な1.5〜10が好ましい。例えば、近赤外光での検出に用いる銀ナノプレートの場合には、LSPRが800〜2000nmで発現するようなアスペクト比(例えば、アスペクト比11で900nm付近にLSPRが発現)のものを用いればよい。
前記金属ナノプレートの形状は、プラズモン吸収することができるものであれば特に制限されず、意図する色に応じた形状を採用することができる。例えば、前記金属ナノプレートは、三角形状、五角形状、及び六角形状などの多角形状、又は、角がカーブ状となった円形状などの形状であってもよい。本発明では、単一種類(単一形状)の金属ナノプレートを用いてもよく、形状の異なる複数種類の金属ナノプレートの混合物を用いてもよい。
【0011】
前記金属ナノプレートの大きさ(主面の最大長さ;粒子径)、アスペクト比、及び形状は、意図する色又は最大吸収波長に応じて適宜設定することができる。金属ナノプレートの最大吸収波長は、430〜2000nmの範囲で調整してもよく、好ましくは430〜1500nm、特に好ましくは430〜1000nmの範囲で調整してもよい。金属ナノプレートの大きさ及び形状と色との関係は、特表2011−508072号公報などに記載されている。例えば、銀ナノプレートを三角形状および六角形状(主面の最大長さ:20nm、厚さ:5.1nm)とすると、マゼンタ(最大吸収波長:538nm)を呈することができる。銀ナノプレートに代えて金ナノプレートを採用すると、同形状であっても、金ナノプレートはより長波長側に最大吸収波長を有する。また、金属ナノプレートの最大吸収波長は、金属ナノプレート形成後の他の金属による被覆、懸濁液のpHの調整、及び/又は、被験物質に対する特異的結合物質の担持後に安定する。
色を定量的に表す体系である表色系の一つであるマンセル・カラー・システムのマンセル値(以下、単にマンセル値ともいう)が5Y 8.5/14で、CIE1931xy色度図の座標(以下、単に色度座標ともいう)がx:0.4498、y:0.4811であるイエロー(イエロー系色、400〜500nm付近にLSPRを発現する金属ナノプレート)、マンセル値が5RP 5/14で、色度座標がx:0.4142、y:0.2428であるマゼンタ(マゼンタ系色、500〜600nm付近にLSPRを発現する金属ナノプレート)、マンセル値が7.5B 6/10で、色度座標がx:0.1934、y:0.2374であるシアン(シアン系色、600〜750nm付近にLSPRを発現する金属ナノプレート)など、金属ナノプレートのアスペクト比を調整することで任意のLSPRの吸収波長を選択できる。また、イエロー系色、マゼンタ系色、シアン系色を発現するアスペクト比の異なる3種以上の金属ナノプレートを三原色として、減法混合による多色設計を行うこともできる。
前記金属ナノプレートとしては市販品を用いてもよく、公知の製造方法や後述の実施例に記載の方法に従って製造したものを用いてもよい。通常は、金属ナノプレートは水懸濁液中に調製される。
【0012】
前記金属ナノプレートの表面は、そのナノプレートを構成する金属とは異なる他の金属によって被覆してもよく、例えば、銀ナノプレートの場合には、金、白金、パラジウム又はシリカなどによって被覆してもよい。このような他の金属で前記金属ナノプレートの表面を被覆することで、その耐酸化性を向上することができる。被覆の厚さは、前記金属ナノプレートの発色性能に影響を与えない限り特に制限されないが、厚みの平均が、好ましくは1.0nm以下、より好ましくは0.7nm以下である。被覆の厚さが1.0nm以下であると、金属ナノプレートのプラズモン吸収を維持しつつ、金属ナノプレートの酸化を抑制することができる。被覆の厚さの下限は、金属ナノプレート表面の被覆という目的を達成できるものであれば特に制限されないが、厚みの平均が、好ましくは0.1nm以上又は0.3nmである。なお、例えば、銀ナノプレートを金で被覆する場合、その金の厚みの平均は、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM)を用いて測定された銀ナノプレート表面の金の厚みより算出すれば良い。例えば、HAADF−STEM像より、任意の粒子10個における任意の部位10点、すなわち合計100点について金の厚みを測定して、そのデータの内、上下10%を除いた80点の平均値を金の厚みの平均とすればよい。
被覆方法は、金属ナノプレート表面の被覆という目的を達成できるものであれば特に制限されず、公知の被覆方法を用いることができる。
【0013】
前記金属ナノプレートを被覆する場合、金属ナノプレートの表面すべてが被覆材料で被覆されていてもよく、その表面の一部が被覆されているものであってもよい。金属ナノプレートの表面の全て又は一部が被覆材料で被覆されたことは、電子顕微鏡による観察及び物理化学的性質の測定など、通常用いられる種々の方法によって確認することができる。例えば、銀ナノプレートの表面の全て又は一部が被覆材料で被覆されると、酸又はナトリウム若しくは塩化物イオンに対する安定性が上昇し、酸化に対して安定なものとなる。そうすると、被覆処理後に、酸性溶液(例えば、2%過酸化水素水)又は緩衝液(例えば、10mMのリン酸緩衝生理食塩水(二価イオンあり又はなし))中という銀ナノプレートにとって過酷な条件下で銀ナノプレートの懸濁液の光学特性(最大吸収波長)を測定しても、その光学特性が水中で測定したときと比較して僅かしか変化しない場合には、その銀ナノプレートは被覆材料で被覆されていると判断できる。また、金属ナノプレートが被覆材料で被覆されていることは、金属ナノプレートの懸濁液中の元素を分析することによっても確認できる。
【0014】
本明細書に記載の「分散剤」とは、水相中に分散している金属ナノプレートを有機相中に移行させ、その有機相中で金属ナノプレートを均一に分散させるための成分のことをいう。分散剤は、酸価と塩基価によって特徴付けられる。「酸価」とは、試料1g中に存在する酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数(単位:mg KOH/g)のことをいい、JIS K2501:2003で定められた方法によって測定することができる。「塩基価」(「アミン価」とも呼ばれることがある)とは、試料1g中に含まれている塩基性成分を中和するのに要する塩酸又は過塩素酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム数(単位:mg KOH/g)のことをいい、JIS K2501:2003で定められた方法によって測定することができる。本発明の金属ナノプレートの非水系分散液に使用される分散剤の酸価は90以下(0も含む)であり、かつ塩基価は5〜100である。前記酸価の好ましい範囲は、0〜70であり、さらに好ましくは0〜50である。そして、前記塩基価の好ましい範囲は、5〜70であり、さらに好ましくは5〜40である。酸価が90以下で塩基価が5以上の分散剤を使用すると、金属ナノプレートが、水相から有機相へと容易に移行し、金属ナノプレートの非水系分散液を効率よく調製することができる。塩基価が100以下の分散剤を使用すると、金属ナノプレートの凝集、粒子成長又は過度の還元が起きにくくなり、金属光沢を生じず、金属ナノプレート特有の光学特性を維持することができる。また、前記酸価の前記塩基価に対する比率は、例えば、酸価/塩基価=2.0以下であってもよく、好ましくは1.1以下、さらに好ましくは0.9以下である。
上記特性を有する分散剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「DisperBYK」、味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパー」、日本ルーブリゾール株式会社製の「ソルスパーズ」、又は、共栄社化学株式会社製の「フローレン」などの中から、本発明が規定する酸価及び塩基価(アミン価)を満たすものを採用してもよく、具体的には、DisperBYK108、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK164、DisperBYK185、DisperBYK2001、DisperBYK2008、DisperBYK2013、DisperBYK2022、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2150、DisperBYK9076、DisperBYK9077、ソルスパーズ11200、ソルスパーズ13240、ソルスパーズ13940、ソルスパーズ20000、ソルスパーズ24000SC、ソルスパーズ24000GR、ソルスパーズ32000、ソルスパーズ33000、ソルスパーズ34750、ソルスパーズ35100、ソルスパーズ37500、ソルスパーズ39000、フローレンDOPA−15BHFS、フローレンDOPA−17HF、フローレンDOPA−35、フローレンDOPA−35、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824又はアジスパーPB881などを採用することができる。これらは、金属ナノプレートへの吸着性の高い元素である窒素原子(例えばアミノ基)を主鎖中に有し、かつ非水溶媒に対して親和性のある側鎖を有する化合物であり得る。なお、分散剤の酸価及び塩基価(アミン価)は、メーカー作成のデータシートなどによって公開されている。
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液に使用される分散剤の重量平均分子量Mwは、例えば、10,000以上であってもよく、好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000〜100,000である。このような分散剤を使用すると、Mwが10,000未満の分散剤を使用したときと比較して、金属ナノプレートの非水溶媒への分散性が向上し、酸化などによる色調変化が生じにくくなるので、金属ナノプレート特有の光学特性をより安定に維持することができる。また、分子量が10,000以上で、かつ室温において固体の分散剤を使用すると、金属ナノプレートを含む固体組成物が得やすくなる。一方で、分子量が100,000以下の分散剤は有機溶媒中への溶解度が高く、分散剤として有利に使用できる。なお、分散剤の分子量は、その測定のために通常用いられる質量分析計(例えば、高速GPC装置HLC−8320GPC、東ソー株式会社)によって測定してもよい。
【0015】
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液に含まれる有機溶媒は、金属ナノプレートを分散させる分散媒として利用されるものである。前記有機溶媒としては、前記分散剤の存在下で前記金属ナノプレートを分散させることができるものであれば、通常の有機溶媒を特に制限なく採用することができる。前記有機溶媒は、例えば、炭化水素、ケトン、エステル及びエーテルからなる群から選択される1種以上を含んでもよく、好ましくは、トルエン(SP値8.9)、キシレン(SP値8.8)、酢酸エチル(SP値9.1)、酢酸ブチル(SP値8.5)、アセトン(SP値9.9)、メチルエチルケトン(SP値9.3)、メチルイソブチルケトン(SP値8.4)、ジアセトンアルコール(SP値9.2)、シクロヘキサノン(SP値9.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値10.1)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値8.7)からなる群から選択される1種以上を含む。
前記有機溶媒の溶解度パラメータ(SP値)(単位:(cal/cm31/2)は、例えば、蒸発潜熱から求めた場合には8〜12であってもよく、好ましくは9〜11である。ここで、溶解度パラメータとは、ヒルデブラントによって導入された正則溶液論により定義された値であり、溶剤や有機化合物の溶解性や相溶性の指標として用いられるものである。前記溶解度パラメータは、化学物質の構造や物理特性から公知の方法で求めることができる。SP値が12以下の有機溶媒を使用すると、水相から有機相への移行が容易になる。また、SP値が8〜12の範囲の有機溶媒を使用すると、金属ナノプレートの分散安定性が向上する。
【0016】
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液は、前記有機溶媒を主たる分散媒として利用した分散液である。製造工程などに由来する微量の水の混入、例えば、1質量%以下の水の混入は許容されるが、前記非水系分散液は実質的に水を含むものではない。
【0017】
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液、塗料又は塗膜は、それらに含まれている金属ナノプレートに基づく特異的な光学特性(例えば最大吸収波長、反射、偏光など)及び電気的特性(例えば導電性など)を有するため、光制御する部材又は電気的特性を利用する部材などに適用できる。光制御する部材として、例えば、着色材、光輝材、化粧材、反射材、偏光材及び近赤外線吸収剤を挙げることができる。着色材としては、可視領域の波長帯で目的の波長を吸収するアスペクト比に調製した金属ナノプレートを溶剤や樹脂などの媒体に分散して利用できる。この場合、媒体中の金属ナノプレートの距離が近接するとプラズモンカップリングと呼ばれる吸収波長の変化(長波長側へブロードな吸収に変化)が確認されるため、粒子半径以上の距離で孤立分散した形態が望ましい。また、アスペクト比の異なる複数の金属ナノプレートを混合することで広い色再現域で設計が可能となる。さらに、金属ナノプレートは、その形状調整により、可視領域から近赤外領域、更にはミリ波領域の波長帯において、選択的に吸収、透過または反射するように調整できるため、光学センサー、光学デバイス、光通信システムの分野で、人体センサー、近赤外線センサー、セキュリティセンサー、環境認識センサー(例えば、ミリ波レーダー、レーザレーダー、画像センサー、超音波センサーなど)、マジックミラーなどに使用できる。また、金属ナノプレートを配合した偽造防止インクは、セキュリティ材料として利用できる。また、プラスチックやガラスなどの基材上への加飾技術の分野において、透過光を利用する色材(構造色)や金属調の反射材として適用できる。例えば、貴金属である銀は反射率が高く、形状がプレート状の銀ナノプレートは粒子間距離を密に基材上へ配置することでバルク銀様の白色銀光沢が得られる。また、金や銀などの金属は導電性が高く、電気・電子部品、実装部品に使用される配線材料、電極材料、及び電磁波シールド材や、電気部品の発生熱を放出する目的で放熱材料として利用できる。特に、形状がプレート状の金属ナノプレートは粒子同士の接触面積が大きいため、導電性、熱伝導を高める効果が得られる。金属ナノプレート粒子のエッジ部分には電場増強効果が得られるため、ラマン増強剤又は増感剤として用いることができる。また、金属ナノプレートは電子振動により光を熱に変換することが可能であり、アスペクト比に依存する特定の波長の光を熱に変換する光熱変換材料として利用できる。基板上に金属ナノプレートを配置した場合、その配列パターンを識別することにより記録材料やセキュリティ材料として利用できる。さらに、光学部材や光学センサーの機能性や信頼性を高める目的で、吸収、透過、反射、偏光、導電、放熱、光増強機能、光熱変換機能といった光制御機能、電気的特性、センシング機能、形状特性を組み合わせてもよく、例えば複数の情報を有して偽造されにくいセキュリティ材料に用いることもできる。
【0018】
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液は、公知の方法で調製した金属ナノプレートの水分散液を、前記分散剤を含む前記有機溶媒に公知の方法で置換することで調製することができる。例えば、前記金属ナノプレートの水分散液に前記分散剤を含む前記有機溶媒を添加し、振とう混合すると、金属ナノプレートは水分散液中から有機溶媒中に移行する。そして、この有機溶媒を抽出すれば、金属ナノプレートの非水系分散液を調製することができる。調製された金属ナノプレートの非水系分散液を遠心分離すると、金属ナノプレート及び分散剤が沈降するので、この沈降物を別の有機溶媒に再分散させることで、追加の置換を行ってもよい。この沈降物には、前記金属ナノプレートに付着し、一緒に沈降している分散剤も含まれているので、置換後の金属ナノプレートの非水系分散液も、本発明の金属ナノプレートの非水系分散液に該当し、置換前の金属ナノプレートの非水系分散液と同等の分光スペクトルを示す。
【0019】
別の態様では、本発明は、前記金属ナノプレートの非水系分散液調製用の固体組成物に関しており、これは分散剤及び金属ナノプレートを含んでいる。本発明の固体組成物は、例えば、一度調製した本発明の金属ナノプレートの非水系分散液を除去し、乾燥させることで調製してもよい。本発明の固体組成物に、有機溶媒を添加して、金属ナノプレートを再分散させれば、本発明の金属ナノプレートの非水系分散液を再度調製することができる。再分散して調製した金属ナノプレートの非水系分散液は、前記固体組成物の調製前の非水系分散液と同等の分光スペクトルを示す。
【0020】
また別の態様では、本発明は、金属ナノプレートの非水系塗料に関しており、これは前記金属ナノプレートの非水系分散液及びバインダーを含んでいる。本明細書に記載の「バインダー」とは、金属ナノプレートと共に塗膜を形成する主成分であり、金属ナノプレートの性能を低下させない各種樹脂が特に制限無く使用できる。前記バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂や、ラジカル重合性のオリゴマーやモノマー、更にはアルコキシシランやそれを重縮合して得られる無機樹脂が挙げられる。
中でも、活性エネルギー線硬化型の非水系塗料は、短時間で成膜できる特徴を有するため、より好ましい。活性エネルギー線硬化型の非水系塗料においては、ラジカル重合性のモノマーやオリゴマーをバインダーとして配合することにより調製することができるし、カチオン重合性のモノマーやオリゴマーを配合して調製することもできる。
ラジカル重合性のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、公知の単官能(メタ)アクリレート、2官能以上の多官能(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマーなどを挙げることができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、デシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、EO(エチレンオキシド)変性2−エチルヘキシルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、及びエトキシ−ジエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
2官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO(プロピレンオキシド)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びEO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。また、前記ラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを硬化させるために、通常の光重合開始剤を特に制限なく使用することができる。例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、又は2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどを、前記ラジカル重合性のモノマーやオリゴマーの硬化のために使用してもよい。
前記カチオン重合性のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チオビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、及び環状チオエーテル化合物などが挙げられる。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、金属ナノプレートの塗膜に関しており、これは前記金属ナノプレートの非水系分散液又は非水系塗料から成膜される。前記非水系分散液又は非水系塗料から成膜された塗膜は、金属ナノプレートを含んでいるので、その最大吸収波長に基づいて様々な色を呈するように設計することができる。(なお、「成膜された」という用語は、単に状態を示すことにより塗膜の構成を特定しているにすぎず、塗膜の製造方法を特定しているわけではない。)
金属ナノプレートの塗膜の形成方法は特に限定されず、従来から公知の方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコーター法、リバースロールコーター法、キスコーター法、ブレードコーター法、スライドコーター法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、フローコーター法、スピンコーター法、凸版印刷法、凹版印刷(グラビア印刷など)、インクジェット法、ディスペンサ(液体定量吐出装置)等を用いることができる。
【0022】
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液、非水系塗料、及び塗膜の分光スペクトルは、公知の方法で吸光度又は消光度を測定して評価することができる。吸光度は、平行光線が物体中を透過するときの該物体の光吸収の強さをいうが(狭義の吸光度)、実測にあたっては、該物体の表面での反射又は散乱などによる光の損失も考慮する必要がある(広義の吸光度)。光の吸収、反射及び散乱などのあらゆる要因による光の損失の強度を意味する広義の吸光度を、本明細書では特に消光度という。消光度又は吸光度は、これらの測定のために通常用いられる紫外可視分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PC、株式会社島津製作所)などによって測定してもよい。また、本発明の金属ナノプレートの塗膜の場合には、光学特性は、光の透過率によって評価してもよい。前記塗膜は、金属ナノプレート特性に応じた最大吸収波長を有し、その最大吸収波長において最小の透過率を示す。
【0023】
本発明の金属ナノプレートの非水系分散液、非水系塗料、及び塗膜は、安定性が良好であり、例えば、これらの調製過程若しくは調製後の保存中において、金属ナノプレートの良好な分散状態を維持する、金属ナノプレートの凝集又は変形を生じない、又は、金属ナノプレートの光学特性若しくは最大吸収波長のピークの鋭さを維持するというような、優れた特性を有している。最大吸収波長のピークの鋭さは、そのピークの半値幅によって評価してもよい。本明細書に記載の「半値幅」とは、最大吸収波長の両側において、最大吸収波長の吸光度又は消光度の値の半分の値を示す2点の波長間の差(nm)のことをいう。一般に、金属ナノプレートの最大吸収波長のピークの半値幅は、波長が長くなるほど大きくなるので、「鋭い」といえる半値幅の範囲は、最大吸収波長に応じて変化する。例えば、銀ナノプレートの非水系分散液、非水系塗料、又は塗膜の半値幅の値が、次式:
半値幅[nm]=最大吸収波長[nm]×0.50−157±40
で表される値の範囲内に含まれる場合(要すれば図5を参照)に、その最大吸収波長のピークが「鋭い」と判断してもよい。
【0024】
別の態様では、本発明は、非水系分散液中の金属ナノプレートの最大吸収波長を調節する方法に関しており、この方法は、金属ナノプレートの粒子径とその最大吸収波長とが正の相関関係にあるという発見に基づいている。すなわち、本発明の金属ナノプレートの最大吸収波長を調節する方法は、前記金属ナノプレートの粒子径を増大させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を長波長側にシフトさせる工程、又は、前記金属ナノプレートの粒子径を減少させて、前記金属ナノプレートの最大吸収波長を短波長側にシフトさせる工程を含むものである。
【0025】
金属ナノプレートの最大吸収波長は、金属ナノプレートの粒子径だけでなく、そのアスペクト比及び形状、並びに、前記金属ナノプレートの分散媒の特性にも依存しているものではあるが、粒子径のみに注目した場合、最大吸収波長が約420nm〜約530nmの金属ナノプレートを調製するには、約10nm〜約30nmの粒子径が好ましく、最大吸収波長が約470nm〜約640nmの金属ナノプレートを調製するには、約30nm〜約50nmの粒子径が好ましく、最大吸収波長が約520nm〜約1350nmの金属ナノプレートを調製するには、約50nm〜約200nmの粒子径が好ましい。
【0026】
また別の態様では、本発明は、第1の分散媒を含む金属ナノプレートの分散液の最大吸収波長を調節する方法に関しており、この方法は、金属ナノプレートの分散液を構成する分散媒の屈折率と前記分散液の最大吸収波長とが正の相関関係にあるという発見に基づいている。すなわち、本発明の第1の分散媒を含む金属ナノプレートの分散液の最大吸収波長を調節する方法は、前記第1の分散媒の少なくとも一部を第2の分散媒に置換する工程、又は、前記第1の分散媒に第2の分散媒を添加する工程を含むものであり、前記置換工程又は添加工程が、前記第2の分散媒として前記第1の分散媒よりも屈折率の高い液体を採用して、前記分散液の最大吸収波長を、分散媒として第1の分散媒のみを含む分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、前記第2の分散媒として前記第1の分散媒よりも屈折率の低い液体を採用して、前記分散液の最大吸収波長を、分散媒として第1の分散媒のみを含む分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むものである。金属ナノプレートの分散媒として使用できる溶液の屈折率は公知であり、例えば、トリフルオロエタノールの屈折率は1.29、メチルアルコールの屈折率は1.33、水の屈折率は1.33、アセトンの屈折率は1.36、メチルエチルケトンの屈折率は1.38、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの屈折率は1.40、ジアセトンアルコールの屈折率は1.42、シクロヘキサノンの屈折率は1.45、そしてトルエンの屈折率は1.50である。
【0027】
前記第1の分散媒を含む金属ナノプレートの分散液が、第1の有機溶媒を含む金属ナノプレートの非水系分散液であった場合には、本発明の金属ナノプレートの非水系分散液の最大吸収波長を調節する方法は、前記第1の有機溶媒の少なくとも一部を第2の有機溶媒に置換する工程、又は、前記第1の有機溶媒に第2の有機溶媒を添加する工程を含むものであり、前記置換工程又は添加工程が、前記第2の有機溶媒として前記第1の有機溶媒よりも屈折率の高い液体を採用して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、分散媒として前記第1の有機溶媒のみを含む非水系分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトさせる工程、又は、前記第2の有機溶媒として前記第1の有機溶媒よりも屈折率の低い液体を採用して、前記非水系分散液の最大吸収波長を、分散媒として前記第1の有機溶媒のみを含む非水系分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトさせる工程を含むものである。
【0028】
また、金属ナノプレートの水分散液から非水系分散液を調製する際には、前記金属ナノプレートの分散液の分散媒を水から有機溶媒に置換しているので、金属ナノプレートの分散液の最大吸収波長を変更しているとも言える。すなわち、前記金属ナノプレートを、水よりも屈折率の高い有機溶媒に分散した場合には、前記非水系分散液の最大吸収波長は、前記金属ナノプレートの水分散液の最大吸収波長よりも長波長側にシフトし、水よりも屈折率の低い有機溶媒に分散した場合には、前記非水系分散液の最大吸収波長は、前記金属ナノプレートの水分散液の最大吸収波長よりも短波長側にシフトする。
【0029】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
1.銀ナノプレートの非水系分散液の作製
1−1.銀ナノプレート水分散液(母液)の作製
1−1−1.銀ナノプレートの種粒子の作製
2.5mMのクエン酸三ナトリウム水溶液20mLに、0.5g/Lの分子量70,000ポリスチレンスルホン酸水溶液1mLと、10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液1.2mLとを添加し、次いで、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中に60分間静置し、銀ナノプレートの種粒子の水分散液を作製した。
【0031】
1−1−2.銀ナノプレート水分散液Aの作製
蒸留水200mlに、10mMのアスコルビン酸水溶液4.5mLを添加し、上述の銀ナノプレートの種粒子の水分散液12mlを添加した。得られた溶液に、0.5mMの硝酸銀水溶液120mLを30mL/minで攪拌しながら添加した。硝酸銀水溶液の添加が終了した4分後に攪拌を停止し、25mMのクエン酸三ナトリウム水溶液20mlを添加し、得られた溶液を大気雰囲気下のインキュベーター(30℃)中に100時間静置し、銀ナノプレート水分散液Aを作製した。作製した分散液を超純水で5倍容に希釈した水分散液の光学特性を図1及び後述の表1に示す。最大吸収を示す波長は454nm(消光度0.8、半値幅56nm)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。水分散液A中の銀ナノプレートをSEMにより観察したところ、銀ナノプレートの平均粒子径は18nmであり、平均厚さは8nmでアスペクト比は2.2であった。SEM観察写真の解析には株式会社日立製作所製の走査電子顕微鏡SU−70を用いた。
【0032】
1−1−3.銀ナノプレート水分散液Bの作製
上記銀ナノプレートの種粒子の水分散液の添加量を12mlから4mlに変更した以外は、銀ナノプレート水分散液Aと同様にして、銀ナノプレート水分散液Bを作製した。作製した分散液を超純水で5倍容に希釈した水分散液の光学特性を図2及び後述の表2に示す。最大吸収を示す波長は482nm(消光度0.8、半値幅72nm)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。水分散液B中の銀ナノプレートをSEMにより観察したところ、銀ナノプレートの平均粒子径は31nmであり、平均厚さは8nmでアスペクト比は3.8であった。SEM観察写真の解析には株式会社日立製作所製の走査電子顕微鏡SU−70を用いた。
【0033】
1−1−4.銀ナノプレート水分散液Cの作製
上記銀ナノプレートの種粒子の水分散液の添加量を12mlから2mlに変更した以外は、銀ナノプレート水分散液Aの作製と同様にして、銀ナノプレート水分散液Cを作製した。作製した分散液を超純水で5倍容に希釈した水分散液の光学特性を図3及び後述の表3に示す。最大吸収を示す波長は568nm(消光度0.8、半値幅114nm)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。水分散液C中の銀ナノプレートをSEMにより観察したところ、銀ナノプレートの平均粒子径は50nmであり、平均厚さは10nmでアスペクト比は5.0であった。SEM観察写真の解析には株式会社日立製作所製の走査電子顕微鏡SU−70を用いた。
【0034】
1−1−5.銀ナノプレート水分散液Dの作製
2mMのクエン酸三ナトリウム水溶液50mlに10mMの硝酸銀水溶液6.0mLと24mMの硝酸銅水溶液2.5mLと40mMのジメチルアミンボラン水溶液2.5mlを添加し、10分間撹拌した後、この液を遮光条件化、30℃にて48時間静置させる事により、銀粒子の水分散液を得た。得られた銀粒子には平均粒子径が90nm、平均厚さが15nmのプレート状の銀粒子が含まれていた。また副生成粒子として球状銀粒子や多面体銀粒子のような様々な形状の銀粒子が含まれていた。得られた水分散液を遠心処理する事で、副生成粒子を除去した。作製した分散液を超純水で5倍容に希釈した水分散液の光学特性を図4に示す。最大吸収を示す波長は800nm(消光度0.8、半値幅248nm)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0035】
1−2 銀ナノプレートのトルエン分散液の作製
1−2−1. 銀ナノプレートのトルエン分散液E(実施例1)の作製
12.5gのアジスパーPB824(酸価:17、塩基価:21)を500mLのトルエンに溶解し、更に銀ナノプレート水分散液Aを500mL添加した。撹拌後、銀ナノプレートを水中からトルエン中に移行させた。その後、トルエン層を抽出することにより、銀ナノプレートのトルエン分散液Eを作製した。作製したトルエン分散液Eをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を図1及び後述の表1に示す。最大吸収を示す波長は484nm(消光度0.9、半値幅64nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0036】
1−2−2. 銀ナノプレートのトルエン分散液F(実施例2)の作製
上記銀ナノプレート水分散液Aを銀ナノプレート水分散液Bに変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Fを作製した。作製したトルエン分散液Fをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を図2及び後述の表2に示す。最大吸収を示す波長は518nm(消光度0.8、半値幅92nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0037】
1−2−3. 銀ナノプレートのトルエン分散液G(実施例3)の作製
上記銀ナノプレート水分散液Aを銀ナノプレート水分散液Cに変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Gを作製した。作製したトルエン分散液Gをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を図3及び後述の表3に示す。最大吸収を示す波長は624nm(消光度0.8、半値幅136nm)であり、分散液の色調は青色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0038】
1−2−4. 銀ナノプレートのトルエン分散液H(実施例4)の作製
上記銀ナノプレート水分散液Aを銀ナノプレート水分散液Dに変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Hを作製した。作製したトルエン分散液Hをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を図4に示す。最大吸収を示す波長は876nm(消光度0.8、半値幅286nm)であり、分散液の色調は水色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0039】
1−2−5. 銀ナノプレートのトルエン分散液I(実施例5)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ39000(酸価:17、塩基価:30)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Iを作製した。作製したトルエン分散液Iをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は470nm(消光度0.9、半値幅66nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0040】
1−2−6. 銀ナノプレートのトルエン分散液J(実施例6)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK9077(酸価:0、塩基価:48)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Jを作製した。作製したトルエン分散液Jをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は450nm(消光度0.9、半値幅78nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0041】
1−2−7. 銀ナノプレートのトルエン分散液K(実施例7)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK2050(酸価:0、塩基価:30)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Kを作製した。作製したトルエン分散液Kをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は472nm(消光度0.9、半値幅110nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0042】
1−2−8. 銀ナノプレートのトルエン分散液L(実施例8)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ13240(酸価:0、塩基価:91)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Lを作製した。作製したトルエン分散液Lをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は468nm(消光度0.8、半値幅110nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0043】
1−2−9. 銀ナノプレートのトルエン分散液M(実施例9)の作製
2.55gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ13940(酸価:0、塩基価:91)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Mを作製した。作製したトルエン分散液Mをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は467nm(消光度0.8、半値幅111nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0044】
1−2−10. 銀ナノプレートのトルエン分散液N(実施例10)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK145(酸価:76、塩基価:71)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Nを作製した。作製したトルエン分散液Nをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は466nm(消光度0.8、半値幅62nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0045】
1−2−11. 銀ナノプレートのトルエン分散液O(実施例11)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのアジスパーPB881(酸価:17、塩基価:17)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Oを作製した。作製したトルエン分散液Oをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は480nm(消光度0.8、半値幅73nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0046】
1−2−12. 銀ナノプレートのトルエン分散液P(実施例12)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ24000GR(酸価:25、塩基価:42)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Pを作製した。作製したトルエン分散液Pをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は450nm(消光度0.8、半値幅70nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0047】
1−2−13. 銀ナノプレートのトルエン分散液Q(実施例13)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ24000SC(酸価:25、塩基価:42)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Qを作製した。作製したトルエン分散液Qをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は448nm(消光度0.8、半値幅68nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0048】
1−2−14. 銀ナノプレートのトルエン分散液R(実施例14)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ32000(酸価:16、塩基価:31)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Rを作製した。作製したトルエン分散液Rをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は470nm(消光度0.8、半値幅96nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0049】
1−2−15. 銀ナノプレートのトルエン分散液S(実施例15)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK9077(酸価:0、塩基価:48)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Fと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Sを作製した。作製したトルエン分散液Sをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は494nm(消光度0.8、半値幅102nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0050】
1−2−16. 銀ナノプレートのトルエン分散液T(実施例16)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ24000SC(酸価:25、塩基価:42)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Fと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Tを作製した。作製したトルエン分散液Tをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は490nm(消光度0.8、半値幅100nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0051】
1−2−17. 銀ナノプレートのトルエン分散液U(実施例17)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK9077(酸価:0、塩基価:48)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Gと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Uを作製した。作製したトルエン分散液Uをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は590nm(消光度0.8、半値幅145nm)であり、分散液の色調は青色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0052】
1−2−18. 銀ナノプレートのトルエン分散液V(実施例18)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのソルスパーズ24000SC(酸価:25、塩基価:42)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Gと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Vを作製した。作製したトルエン分散液Vをトルエンで5倍容に希釈したトルエン分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は596nm(消光度0.8、半値幅147nm)であり、分散液の色調は青色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0053】
1−2−19. 銀ナノプレートのトルエン分散液W(比較例1)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのアジスパーPA111(酸価:35、塩基価:0)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Wの作製を試みた。しかし、トルエンに銀ナノプレートが移行しておらず、銀ナノプレートのトルエン分散液Wを作製することはできなかった。
【0054】
1−2−20. 銀ナノプレートのトルエン分散液X(比較例2)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK180(酸価:94、塩基価:94)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Xの作製を試みた。しかし、トルエンに銀ナノプレートが移行しておらず、銀ナノプレートのトルエン分散液Xを作製することはできなかった。また、銀ナノプレートの粒子成長による金属光沢が認められ、水からトルエンへの移行の際に銀ナノプレートの粒子径が変化していると推測される。
【0055】
1−2−21. 銀ナノプレートのトルエン分散液Y(比較例3)の作製
12.5gのアジスパーPB824を12.5gのDisperBYK109(酸価:0、塩基価:140)に変更した以外は、銀ナノプレートのトルエン分散液Eと同様の方法で、銀ナノプレートのトルエン分散液Yを作製した。しかし、得られた銀ナノプレートのトルエン分散液Yでは、銀ナノプレートの粒子成長による金属光沢が認められ、水からトルエンへの移行の際に銀ナノプレートの粒子径が変化していると推測される。
【0056】
1−3 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の作製
1−3−1 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Z(実施例19)の作製
35gのトルエン分散液Eを遠心処理し、銀ナノプレート及び分散剤を沈降させた。得られた沈降物を35mLのプロピレングリコールモノメチルエーテルに再分散させて銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を図1及び後述の表1に示す。最大吸収を示す波長は474nm(消光度0.8、半値幅62nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0057】
1−3−2 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AA(実施例20)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Jに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AAを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AAをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は440nm(消光度0.8、半値幅66nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0058】
1−3−3 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AB(実施例21)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Qに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液ABを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液ABをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は438nm(消光度0.8、半値幅56nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0059】
1−3−4 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AC(実施例22)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Fに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液ACを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液ACをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を図2及び後述の表2に示す。最大吸収を示す波長は506nm(消光度0.8、半値幅86nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0060】
1−3−5 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AD(実施例23)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Sに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液ADを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液ADをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は492nm(消光度0.8、半値幅81nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0061】
1−3−6 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AE(実施例24)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Tに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AEを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AEをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は498nm(消光度0.8、半値幅79nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0062】
1−3−7 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AF(実施例25)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Gに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AFを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AFをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を図3及び後述の表3に示す。最大吸収を示す波長は600nm(消光度0.8、半値幅126nm)であり、分散液の色調は青色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0063】
1−3−8 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AG(実施例26)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Uに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AGを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AGをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は586nm(消光度0.8、半値幅115nm)であり、分散液の色調は青色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0064】
1−3−7 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AH(実施例27)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Vに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AHを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AHをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は592nm(消光度0.8、半値幅117nm)であり、分散液の色調は青色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0065】
1−3−8 銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AI(実施例28)の作製
上記トルエン分散液Eをトルエン分散液Hに変更した以外は、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液Zと同様の方法で、銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AIを作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AIをプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を図4に示す。最大吸収を示す波長は846nm(消光度0.8、半値幅264nm)であり、分散液の色調は水色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0066】
2.銀ナノプレートの非水系分散液作製用の固体組成物の作製
2−1 銀ナノプレートの非水系分散液作製用の固体組成物AJ(実施例29)の作製
12.5gのソルスパーズ24000SC(酸価:25、塩基価:42)を500mLのトルエンに溶解し、更に銀ナノプレート水分散液Aを500mL添加した。撹拌後、銀ナノプレートを水中からトルエン中に移行させた。その後、トルエン層を抽出することにより、銀ナノプレートのトルエン分散液を作製した。
作製したトルエン分散液(ソルスパーズ24000SC)35gを遠心処理し、銀ナノプレート及び分散剤を沈降させた。更に得られた沈降物に対して、トルエンを除去することにより、固体組成物AJを得た。
得られた固体組成物AJを35mLのプロピレングリコールモノメチルエーテルに再分散させて銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AJ−1(実施例29−1)を作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AJ−1をプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は438nm(消光度0.8、半値幅78nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0067】
2−2 銀ナノプレートの非水系分散液作製用の固体組成物AK(実施例30)の作製
12.5gのDisperBYK2050(酸価:0、塩基価:30)を500mLのトルエンに溶解し、更に銀ナノプレート水分散液Bを500mL添加した。撹拌後、銀ナノプレートを水中からトルエン中に移行させた。その後、トルエン層を抽出することにより、銀ナノプレートのトルエン分散液を作製した。
作製したトルエン分散液35gを遠心処理し、銀ナノプレート及び分散剤を沈降させた。更に得られた沈降物に対して、トルエンを除去することにより、固体組成物AKを得た。
得られた固体組成物AKを35mLのプロピレングリコールモノメチルエーテルに再分散させて銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AK−1(実施例30−1)を作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AK−1をプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は554nm(消光度0.8、半値幅114nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0068】
2−3 銀ナノプレートの非水系分散液作製用の固体組成物AL(実施例31)の作製
12.5gのDisperBYK2022(酸価:0、塩基価:61)を500mLのトルエンに溶解し、更に銀ナノプレート水分散液Bを500mL添加し、1分間振とうさせた。撹拌後、銀ナノプレートを水中からトルエン中に移行させた。その後、トルエン層を抽出することにより、銀ナノプレートのトルエン分散液を作製した。
作製したトルエン分散液35gを遠心処理し、銀ナノプレート及び分散剤を沈降させた。更に得られた沈降物に対して、トルエンを除去することにより、固体組成物ALを得た。
得られた固体組成物ALを35mLのプロピレングリコールモノメチルエーテルに再分散させて銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AL−1(実施例31−1)を作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AL−1をプロピレングリコールモノメチルエーテルで5倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は558nm(消光度0.8、半値幅114nm)であり、分散液の色調は赤色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0069】
2−4 銀ナノプレートの非水系分散液作製用の固体組成物AM(実施例32)の作製
35gのトルエン分散液Eを遠心処理し、銀ナノプレート及び分散剤を沈降させた。更に得られた銀ナノプレートに対して、トルエンを除去することにより、固体組成物AMを得た。
得られた固体組成物AMを1mLのプロピレングリコールモノメチルエーテルに分散させて銀ナノプレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AM−1(実施例32−1)を作製した。作製したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液AM−1をプロピレングリコールモノメチルエーテルで700倍容に希釈したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液の光学特性を測定した結果、最大吸収を示す波長は472nm(消光度0.8、半値幅72nm)であり、分散液の色調は黄色だった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
【0070】
3.銀ナノプレートの非水系塗料の作製
3−1 銀ナノプレートの非水系塗料(プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)の作製
3−1−1 銀ナノプレートの非水系塗料(分散液Z含有)(実施例33)の作製
分散液Zを20質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET−30 日本化薬社製)を100質量部、そして光重合開始剤(DAROCUR1173、BASF社製)を3質量部混合し、銀ナノプレートの非水系塗料(分散液Z含有)を作製した。
3−1−2 銀ナノプレートの非水系塗料(分散液AC含有)(実施例34)の作製
分散液Zを分散液ACに変更した以外は、非水系塗料(分散液Z含有)と同様の方法により、銀ナノプレートの非水系塗料(分散液AC含有)を作製した。
3−1−3 銀ナノプレートの非水系塗料(分散液AF含有)(実施例35)の作製
分散液Zを分散液AFに変更した以外は、非水系塗料(分散液Z含有)と同様の方法により、銀ナノプレートの非水系塗料(分散液AF含有)を作製した。
【0071】
4.銀ナノプレート塗膜の作製
銀ナノプレートの非水系塗料(分散液Z含有)、非水系塗料(分散液AC含有)、又は非水系塗料(分散液AF含有)をそれぞれ、バーコーターを用いて、ガラス板に塗装し、有機溶媒を蒸発させた後、空気下で高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の光を照射して、膜厚60μmの硬化膜(塗膜Z’(実施例33’)、塗膜AC’(実施例34’)、又は塗膜AF’(実施例35’))を作製した。その後、硬化膜を表面に有するガラス板の光学特性スペクトルを測定した。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。塗膜Z’(分散液Z含有非水系塗料由来)、塗膜AC’(分散液AC含有非水系塗料由来)、及び塗膜AF’(分散液AF含有非水系塗料由来)を有するガラス板の光学特性スペクトルの測定結果を、それぞれ図1図3及び後述の表1〜3に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
5.銀ナノプレートの非水系分散液のさらなる実施例
長波長側(800nm〜900nmの領域)に最大吸収波長を有する銀ナノプレートの水系分散液を常法により作製し、実施例1の作製方法に準じて、アジスパーPB822(酸価:14、塩基価:17)又はアジスパーPB821(酸価:17、塩基価:9)を分散剤として使用し、トルエンを有機溶媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液(実施例36及び37)を作製した。そして、これらトルエンを有機溶媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液から、実施例19の作製方法に準じて、アジスパーPB822又はアジスパーPB821を分散剤として使用し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを有機溶媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液(実施例38及び39)も作製した。
【0076】
6.評価
実施例1〜28、実施例29−1〜32−1及び実施例36〜39、並びに比較例1〜3の非水系分散液に使用した分散剤及び分散媒の種類、並びに、非水系分散液の調製の成否を以下の表4にまとめた。また、非水系分散液を調製できた場合には、その極大吸収波長及び半値幅も記載した。
【0077】
【表4】
【0078】
上述の実施例の結果から理解できるように、酸価が90以下であり、かつ塩基価が5〜100である分散剤を使用した場合、安定した分散状態を有する水分散液と比較してほぼ同等の分光特性を有する非水系分散液を作製することができた。また、最大吸収波長と半値幅との関係を図5に示す。実施例に由来するプロットは、次式:
半値幅[nm]=最大吸収波長[nm]×0.50−157
で近似することができた(図5中の実線)。また、各プロットは、概ね、次式:
半値幅[nm]=最大吸収波長[nm]×0.50−157±40
の範囲内に収まった(図5中の破線)。これらの半値幅の値は、対応する水分散液と比較して同程度であり、最大吸収波長のピークの鋭い非水系分散液を作製することができた。このことから、上記特性を有する分散剤を使用すれば、銀ナノプレートの光学特性を変化させずに、水分散液から非水系分散液に転換させることができることがわかった。
一方で、比較例1のように、塩基価が5未満の分散剤を用いた場合には、有機溶媒に銀ナノプレートが移行せず、銀ナノプレートの非水系分散液を作製することができなかった。そして、比較例2のように、酸価が90より大きい分散剤を用いた場合、及び、比較例3のように塩基価が100より大きい分散剤を用いた場合には、銀ナノプレートの粒子成長による金属光沢が認められた。これは、水からトルエンへの移行の際に銀ナノプレートが凝集して嵩高くなったためであり、銀ナノプレートの粒子径も変化していると推測される。
【0079】
さらに、実施例29−1〜32−1の結果から理解できるように、粉末化した銀ナノプレートの固形組成物を再度有機溶媒に分散させた場合にも、安定した分散状態を有する水分散液と比較してほぼ同等の分光特性を有する非水系分散液を作製することができることがわかった。半値幅の値も、対応する水分散液と比較して同程度であり、最大吸収波長のピークの鋭い非水系分散液を作製することができた。これらのことから、前述の特性を有する分散剤を使用すれば、再分散性にも優れた銀ナノプレートの非水系分散液調製用の固体組成物を製造できることがわかった。
加えて、製造方法が及ぼす銀ナノプレートの非水系分散液への影響を比較するために、水分散液、遠心分離によって分散媒を置換した実施例19の分散液Z、及び、固体組成物の生成を介して分散媒を置換した実施例32−1の分散液AM−1の光学特性を図6に示す。この図より、実施例19の分散液Zと実施例32−1の分散液AM−1とは、ほぼ同等の分光特性を有していることが理解できるので、どのような方法で銀ナノプレートの非水系分散液を作製する場合であっても、酸価が90以下であり、かつ塩基価が5〜100である分散剤を使用すれば、安定な非水系分散液を作製することができることがわかった。
以上より、酸価が90以下であり、かつ塩基価が5〜100である分散剤は、銀ナノプレートなどの金属ナノプレートの安定な非水系分散液の製造に有用である。
【0080】
7.銀ナノプレートの非水系分散液のまた別の実施例
長波長側(900nm〜1200nmの領域)に最大吸収波長を有する銀ナノプレートの水系分散液を常法により作製した。最大吸収波長が956nmの銀ナノプレートの粒子径は120nmであり、最大吸収波長が1026nmの銀ナノプレートの粒子径は150nmであり、最大吸収波長が1140nmの銀ナノプレートの粒子径は180nmだった。これらの水系分散液から、実施例1及び19の作製方法(トルエン分散液からの溶媒置換法)に準じて、アジスパーPB824を分散剤として使用し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを有機溶媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液(実施例40〜42)を作製した。
【0081】
また、505nmに最大吸収波長を有する銀ナノプレートの水系分散液を常法により作製し、実施例1及び19の作製方法(トルエン分散液からの溶媒置換法)に準じて、アジスパーPB824を分散剤として使用し、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、又はトルエンを有機溶媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液(実施例43〜49)を作製した。(なお、実施例49のトルエン分散液は、実施例1の作製方法に準じて作製したトルエン分散液を、実施例19の作製方法に準じて溶媒置換する際に、再度トルエンを分散媒として採用して作製したものである。)
【0082】
実施例40〜49の非水系分散液に使用した分散剤及び分散媒の種類、非水系分散液の調製の成否、並びに、その極大吸収波長及び半値幅を以下の表5にまとめた。
【表5】
【0083】
実施例40〜42のように長波長側に最大吸収波長を有する銀ナノプレートの粒子径は比較的大きいものであったが、そのような銀ナノプレートであっても、本発明に従えば、安定性が良好な非水系分散液を作製することができた。また、実施例43〜49のように異なる分散媒を使用した場合であっても、本発明に従えば、安定性が良好な非水系分散液を作製することができた。なお、実施例40〜49の半値幅も上述した式(最大吸収波長[nm]×0.50−157±40)の範囲内に収まるものであるので、これらの半値幅は対応する水分散液と比較して同程度であり、最大吸収波長のピークの鋭い非水系分散液を作製することができたといえる。これらのことから、酸価が90以下であり、かつ塩基価が5〜100である分散剤を使用すれば、銀ナノプレートの粒子径や分散媒の種類に関わらず、水分散液中の銀ナノプレートの光学特性を変化させずに非水系分散液を作製することができることが確認できた。
【0084】
8.銀ナノプレートの粒子径とその最大吸収波長との関係
上記実施例の非水系分散液について、その中に含まれている銀ナノプレートの粒子径とその最大吸収波長との関係を、図7及び表6に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
図7及び表6から明らかなように、銀ナノプレートの粒子径とその最大吸収波長との間には正の相関関係があった。特に図7では、銀ナノプレートの粒子径及びその最大吸収波長のプロットについて線形近似することができた。これらのことから、銀ナノプレートの粒子径を調節することで、前記銀ナノプレートの最大吸収波長を所望の領域に調節できることがわかった。具体的には、銀ナノプレートの粒子径を増大させて、前記銀ナノプレートの最大吸収波長を長波長側にシフトさせたり、銀ナノプレートの粒子径を減少させて、前記銀ナノプレートの最大吸収波長を短波長側にシフトさせたりすることができることがわかった。
【0087】
9.分散媒の屈折率と銀ナノプレートの分散液の最大吸収波長との関係
実施例43〜49の非水系分散液では、同じ銀ナノプレートを含んでいるにもかかわらず、分散媒が異なるだけで最大吸収波長が少しずつ異なっている(図8)。分散媒のどの特性が最大吸収波長の変化と対応しているのか調査した結果、図9及び表7に示すように、分散媒の屈折率と銀ナノプレートの分散液の最大吸収波長との間には正の相関関係があることがわかった。
【0088】
【表7】
【0089】
特に図9では、分散媒の屈折率及び銀ナノプレートの非水系分散液の最大吸収波長のプロットについて線形近似することができた。これらのことから、適切な屈折率を有する分散媒を選択することで、銀ナノプレートの非水系分散液の最大吸収波長を所望の領域に調節できることがわかった。具体的には、屈折率の高い分散媒を使用して、銀ナノプレートの非水系分散媒の最大吸収波長を長波長側にシフトさせたり、屈折率の低い分散媒を使用して、銀ナノプレートの非水系分散媒の最大吸収波長を短波長側にシフトさせたりすることができることがわかった。
【0090】
10.銀ナノプレートの非水系塗料及び塗膜のまた別の実施例
粒子径が17nm、40nm、又は65nmである銀ナノプレートの水系分散液を常法により作製し、実施例1及び19の作製方法(トルエン分散液からの溶媒置換法)に準じて、アジスパーPB824を分散剤として使用し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを有機溶媒として使用した銀ナノプレートの非水系分散液(AN、AO、及びAP)を作製した。次に、上記非水系分散液のいずれかを20質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET−30 日本化薬社製)を10質量部、そして光重合開始剤(DAROCUR1173、BASF社製)を0.3質量部混合し、銀ナノプレートの非水系塗料(分散液AN、AO、又はAP含有)を作製した(実施例50〜52)。
【0091】
銀ナノプレートの非水系塗料(分散液AN含有)、非水系塗料(分散液AO含有)、又は非水系塗料(分散液AP含有)をそれぞれ、スピンコーターを用いて、ガラス板に塗装し、有機溶媒を蒸発させた後、空気下で高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の光を照射して、膜厚6μmの硬化膜(塗膜AN’(実施例50’)、塗膜AO’(実施例51’)、又は塗膜AP’(実施例52’))を作製した。その後、硬化膜を表面に有するガラス板の光学特性スペクトルを測定した。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。塗膜AN’(実施例50’)、塗膜AO’(実施例51’)、又は塗膜AP’(実施例52’)を有するガラス板の光学特性スペクトルの測定結果を、図10及び表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
以上の実施例から理解できるように、本発明に従えば、酸価が90以下であり、かつ塩基価が5〜100である分散剤を使用すれば、銀ナノプレートなどの金属ナノプレートのの粒子径や分散媒の種類に関わらず、水分散液中の金属ナノプレートの光学特性を変化させずに非水系分散液を作製することができるので、様々な最大吸収波長を有する金属ナノプレートの非水系塗料及び塗膜を作製することができる。また、本発明に従えば、銀ナノプレートなどの金属ナノプレートの粒子径を調節することで、その最大吸収波長を容易に調節することができるので、多様なバリエーションの色調を示す金属ナノプレートの非水系塗料及び塗膜を提供することができる。さらに、本発明に従えば、金属ナノプレートの分散媒として異なる屈折率の分散媒を採用することで、金属ナノプレートの分散液の最大吸収波長を容易に調節することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10