(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一光走査手段と前記第二光走査手段は単一の回転多面鏡を共用する走査手段であるか、または、それぞれ個別の回転多面鏡を使用する走査手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記整合手段は、前記第一色についての前記走査領域における前記複数の分割領域の境界となる境界位置を基準とし、当該境界位置に対して、前記第二色についての前記走査領域における前記複数の分割領域の境界となる境界位置を整合させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
前記整合手段は、前記第一像担持体の前記走査領域における像高中心に対する前記第一光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量と前記第二像担持体の前記走査領域における像高中心に対する前記第二光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量との差分に応じて前記第一色についての前記境界位置と前記第二色についての前記境界位置とを整合させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
前記整合手段は、前記第一色についての前記走査領域における前記複数の分割領域の境界となる境界位置と、前記第二色についての前記走査領域における前記複数の分割領域の境界となる境界位置との平均位置を基準とし、前記第一色についての境界位置と前記第二色についての境界位置とを整合させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
前記整合手段は、前記第一像担持体の前記走査領域における像高中心に対する前記第一光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量と前記第二像担持体の前記走査領域における像高中心に対する前記第二光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量との平均値を取得し、前記平均値と前記第一色についての前記像高のずれ量との差分に応じて前記第一色についての前記境界位置を修正し、前記平均値と前記第二色についての前記像高のずれ量との差分に応じて前記第二色についての前記境界位置を修正することで、前記第一色についての境界位置と前記第二色についての前記境界位置とを整合させることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
前記補正手段は、前記第一光走査手段についてのfθ特性を各分割領域ごとに線形近似することで得られる傾きに応じた補正量で前記第一光走査手段に供給される前記画像クロックを補正し、前記第二光走査手段についてのfθ特性を各分割領域ごとに線形近似することで得られる傾きに応じた補正量で前記第二光走査手段に供給される前記画像クロックを補正することを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記生成手段は、前記第一像担持体の被走査面上にドットを形成するように前記第一光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成するとともに、前記第二像担持体の被走査面上にドットを形成するように前記第二光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成するように構成されていることを特徴とする請求項2ないし8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記補正手段は、主走査方向の走査領域を構成する複数の分割領域のそれぞれについてドットの倍率が一致するように決定された補正量にしたがって各分割領域における画素ごとに前記画像クロックの周期または周波数を補正するように構成されていることを特徴とする請求項2ないし9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記第一色はイエロー、マゼンタ、シアンまたはブラックであり、前記第二色はイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのうち前記第一色とは異なる色であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
(概要)
主走査方向の画像の倍率を補正するために光の走査領域は主走査方向に沿って複数の分割領域(サブ領域)に分割されている。これは一つの主走査線が複数の区間からなることを意味する。隣接した二つのサブ領域は境界位置を境界として分割されている。境界位置は分割位置と呼ばれてもよい。各サブ領域のサイズは基本的に同じサイズであるが、異なるサイズであってもよい。ここでサブ領域のサイズとはサブ領域の長さであり、サブ領域に含まれるドット(画素)の数である。サブ領域の数や境界位置の数は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)間で共通である。つまり、イエローについてのあるサブ領域に対応するサブ領域が他の色についても存在する。同様に、イエローについてのある境界位置に対応する境界位置が他の色についても存在する。各色について主走査方向の倍率はサブ領域ごとに補正される。走査装置は画像クロックに基づいて光を走査する。画像クロックの一周期は基本的に一画素に相当する。したがって、画像クロックの周期または周波数を主走査位置(像高)ごとに整合すれば各主走査位置における画素(ドット)の幅が均一になる。上述したように、各色で光走査装置が設けられているため、fθ特性は各色で異なる。つまり、サブ領域の数と境界位置の数とが色ごとに一致していても、各色の境界位置は一致しない。この境界位置のずれが色ずれをもたらす。そこで、本実施例は、各色についての対応する境界位置を整合させることで、色ずれを削減する。これにより、画像クロックの周波数を単調増加または単調減少させるように補正する場合に補正誤差が発生しても、色ずれを低減することが可能となる。
【0009】
(画像形成装置の構成)
図1(A)は画像形成装置を示す。画像形成装置100は、たとえば、印刷装置、プリンター、複写機、複合機、ファクシミリとして製品化される。
図1(B)は画像形成部の詳細を示す。画像形成装置100は四つの画像形成部103Y、103M、103C、103Kを備えている。各色に共通する事項が説明されるときは参照符号に付与されているYMCKの文字は省略される。四つの画像形成部103Y、103M、103C、103Kは異なる色のトナー画像をシートPに形成する。シートPは、記録材、記録媒体、用紙、シート、転写材、転写紙と呼ばれてもよい。トナー画像は中間転写体を介してシートPに二次転写されてもよい。画像形成部103は、感光体ドラム130と、感光体ドラム130の表面を一様に帯電させる一次帯電器131と、感光体ドラム130の表面に形成された静電潜像をトナーで現像する現像器132と、トナー画像をシートPに転写する転写器133とを有している。画像形成部103は、感光体ドラム130に残存しているトナーを生成するクリーナ134も備えている。
【0010】
光走査装置107Y、107M、107C、107Kはそれぞれ制御部110から出力される制御信号に基づき、感光体ドラム上で光を主走査方向に走査し、静電潜像を形成する。なお、画像形成装置100は感光体ドラムを回転させることで副走査を実現している。本実施例では主走査方向の倍率補正が着目されている。光走査装置107Y、107M、107C、107Kは露光装置と呼ばれてもよい。
【0011】
給紙部102は、給紙カセットに積載されたシートPを搬送路へ給紙する。転写ベルト105はシートPを画像形成部103へ搬送する無端状の搬送ベルトである。画像形成部103はトナー画像をシートPに転写する。定着装置104はトナー画像を転写されたシートPに対して熱と圧力を加え、トナー画像をシートP上に定着させる。画像形成装置100はシートPを機外に排出する。画像センサ106は、転写ベルト105上に形成されたトナーパターンを読み取り、基準色に対して各色の主走査位置ずれ量、副走査位置ずれ量、主走査倍率ずれ量、および各色の主走査倍率を1/8ドット単位で検知する。画像センサ106は、たとえば、発光素子と受光素子とを有している。
【0012】
(光走査装置の構成)
図2は光走査装置107の斜視図である。半導体レーザ201はイメージスキャナやホストコンピュータなどから入力された画像データから生成された濃度データに応じたレーザ光を出力する光源である。ポリゴンミラー202は回転多面鏡である。ポリゴンミラー202は回転しながらレーザ光を反射し、感光体ドラム130の表面を主走査方向に沿ってレーザ光で走査する。なお、ポリゴンミラー202と感光体ドラム130との間には結像レンズ205と反射ミラー204が設けられている。結像レンズ205は感光体ドラム130の表面にレーザ光を結像させる光学部品である。反射ミラー204は結像レンズ205を通過してきたレーザ光を偏向する光学部品である。一般には、ポリゴンミラー202と感光体ドラム130との間には、感光体ドラム130の表面上を走査するレーザ光の移動速度を等速度に変換するfθレンズが設けられる。本実施例では画像クロックの周波数を可変させることでfθ特性を実現するため、fθレンズは省略されてもよい。あるいは、主走査方向の一部の領域にfθ補正機能を有するレンズであって、その他の領域はfθ補正機能を有さないレンズが採用されてもよい。スキャナモータ203はポリゴンミラー202を回転させる駆動源である。同期センサ206は、主走査方向における画像の書き出し位置の基準となる同期信号207を生成するセンサである。同期センサ206はレーザ光を照射されると同期信号207を発生する。制御部110は、同期信号207を基にスキャナモータ203を回転させるモータ駆動信号208を制御する。また、制御部110は、半導体レーザ201の点灯タイミングを決定するレーザ駆動信号209を制御する。スキャナ記憶部220は、光走査装置107に関する情報が記憶されており、制御部110と通信を行う。なお、本実施形態においては一例として光走査装置107が各色に設けられている構成が説明されるが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、イエローとマゼンタの2色で共通のポリゴンミラーが使用され、シアンとブラックの2色で共通のポリゴンミラーが使用されてもよい。つまり、2つのポリゴンミラーを備える光走査装置が採用されてもよい。あるいは、単一のポリゴンミラーを備える二つの光走査装置が採用されてもよい。一つのポリゴンミラーを使用する2色の組合せは各色の画像形成部の配置に応じて決定される。たとえば、隣接した配置される2つの画像形成部が一つのポリゴンミラーを共有する。また、例えば4色で共通の1つのポリゴンミラーを用いる光走査装置が採用されてもよい。
【0013】
(結像レンズ205の機能と走査特性の説明)
図3は感光体ドラム130上の像高と部分倍率との関係を示すグラフである。結像レンズ205は、感光体ドラム130上でのレーザ光の結像機能を有しているが、fθ補正機能を有していないレンズである。そのため、結像レンズ205を通過する光束は、感光体ドラム130上で等速性を持たない。
図3が示すように、中央像高から端部像高に向かうにつれて徐々にレーザ光の走査速度が速くなり、部分倍率が大きくなる。結像レンズ205は、fθ補正機能を有していないため、走査速度は像高に応じて変化してしまうものの、結像レンズ205をポリゴンミラー202の近傍に配置することが可能となる。つまり、結像レンズ205の小型化と光走査装置107の小型化が実現される。
【0014】
(制御部110の機能ブロック図)
図4(A)は光走査装置107の制御を行う制御部110の機能を示している。制御部110は、CPU401、レーザコントローラ402、信号生成部403などを有する。レーザコントローラ402は、CPU401からの制御信号と信号生成部403からのVDO信号407に基づいて、レーザ駆動信号209を出力して半導体レーザ201の点灯タイミングを決定する。VDO信号407は画像データに対応した画像濃度を実現するために生成される信号である。レーザコントローラ402は、主走査方向における画像の書き出し基準となる同期信号207に基づいて信号生成部403へBDO信号408を出力する。信号生成部403は、CPU401からのTOP信号409とBDO信号408に基づいて、VDO信号407の出力開始タイミングを制御する。TOP信号409は副走査方向における画像の書き出し基準となる信号であり、シートPが搬送路における所定位置に到着すると出力される。信号生成部403はクロック生成部404と記憶部405などから構成される。記憶部405は、各色の画像書き出し位置情報やサブ領域ごとの画像クロックに適用される補正データを記憶している。クロック生成部404は、補正データに基づいて、画像クロックの周波数を画素ごとに補正し、VDO信号407としてレーザコントローラ402へ出力する。CPU401は通信信号421を通じてスキャナ記憶部220から各種情報を取得する。CPU401は通信信号422を通じて記憶部405に保持されている補正データを書き換える。
【0015】
図4(B)はCPU401が実現する機能などを示している。なお、これらの機能のすべてまたは一部はASICやFPGAなどのハードウエアによって実現されてもよい。ASICは特定用途集積回路の略称である。FPGAはフィールドプログラマブルゲートアレイの略称である。
【0016】
整合部450は第一色についての走査領域における複数のサブ領域の境界となる境界位置に対して第二色についての走査領域における複数のサブ領域の境界となる境界位置を整合させるユニットである。第一色は基準色となる色であり、たとえば、ブラックである。第二色は基準色と異なる色であり、イエロー、マゼンタまたはシアンである。なお、ここでは一例としてブラックを基準色としているが、基準色はイエローでもマゼンタでもシアンでもよい。差分演算部451は第一色についてのfθ特性の極値の位置のずれ量ΔPkと第二色についてのfθ特性の極値の位置のずれ量ΔPjとの差分ΔPkjを演算する。なお、ずれ量ΔPkとずれ量ΔPjはそれぞれ走査領域の中央像高(像高中心)に対するずれ量である。kはブラックを示し、jはy、m、cのいずれかの色を示す。境界修正部452は第二色についてのサブ領域の境界位置xを差分ΔPkjで修正する。xは境界位置(以下、境界と称す)を示すa〜hのいずれかである。傾き演算部453は境界を修正されたfθ特性を示す近似式f(x)について各サブ領域ごとに線形近似を実行し、傾きαjn'を演算し、記憶部405に格納する。nはサブ領域の位置を示す変数であり、たとえば1ないし7の自然数である。クロック生成部404の周波数補正部441は傾きαjn'にしたがって、発振器442が生成する画像クロックの周波数を画素ごとに補正する。なお、クロック生成部404は画像データから生成された濃度データに画像クロックを乗算してVDO信号407を生成する。
【0017】
平均部454は実施例2で導入されるオプションであり、四色のfθ特性の極値の位置のずれ量ΔPjを加算し、その和を4で除算することで、平均値ΔPaveを演算する。更新部470は、基準色に対する各色の色ずれを補正するため、画像書き出し位置を更新する。また、実施例3で導入されるオプションであるfθ特性を示す近似式f(x)を更新する機能を有する。パターン生成部471は光走査装置107および画像形成部103を制御し、シートPを搬送する転写ベルト105上に、基準色に対する各色の主走査方向および副走査方向の色ずれ量を測定するためのトナーパターンを生成する。また、主走査方向における倍率を測定するためのトナーパターンを生成する。測定部472は画像センサ106を用いて、転写ベルト105上に転写されたトナーパターンを検知し、検知結果に基づいて、各色の主走査位置ずれ量、副走査位置ずれ量、主走査倍率ずれ量、および主走査倍率を測定する。主走査倍率は主走査方向におけるいくつかのポイントで測定される。特性決定部473は、測定部472による検知結果(測定結果)に応じて、画像クロックの出力開始時刻を更新する。または、画像クロックの周期または周波数を補正するために使用されるfθ特性を示す近似式f(x)を更新する。制御部110に含まれる各色の主走査位置ずれ量、副走査位置ずれ量、主走査倍率ずれ量、および主走査倍率測定に関するこれらの機能については以下でより詳細に説明される。
【0018】
(各色の画像位置ずれ量の測定および補正方法)
図14は各色の画像位置ずれ量の測定方法について説明する図である。
図14(A)において画像センサ106は正反射型のセンサである。主走査方向の左端側に画像センサ106aが配置されている。右端側には画像センサ106cが配置されている。2つの画像センサ106に共通する事項が説明されるときは、参照符号の末尾のa、cの文字は省略される。画像センサ106は、転写ベルト105に転写されたトナーパターン300をそれぞれ検知する。トナーパターン300は、画像センサ106aにより検知される7つのパターン群50fa〜50fgと、画像センサ106cにより検知される7つのパターン群50ra〜50rgを有している。つまり、7つのパターン群50fa〜50fgは、画像センサ106aの検知位置を通過するように形成される。7つのパターン群50ra〜50rgは画像センサ106cの検知位置を通過するように形成される。
図14(B)はパターン群50fa〜50fgに含まれている複数の斜線パターンを示す。
図14(C)はパターン群50ra〜50rgに含まれている複数の斜線パターンを示す。基準色はブラックである。副走査方向において二本の基準色の斜線パターンが各測定色の斜線パターンを挟むように複数の斜線パターンが配置されている。画像位置ずれ量の測定が実行されると、画像検知センサ160aは、形成されたトナーパターン300の各パターン群における斜線パターンの検知時刻tf1〜tf14を検知する。画像検知センサ160cは、形成されたトナーパターン300の各パターン群における斜線パターンの検知時刻tr1〜tr14を検知する。これらの検知結果より、基準色に対する各色の主走査方向の位置ずれ量、副走査方向位の置ずれ量を算出する方法や各位置のずれ量に応じて画像クロックの開始時刻を変更する方法に関しては、当技術分野においてよく知られている。そのため、その詳細な説明は省略される。この画像位置ずれ量の測定で得られる基準色に対する各色の位置ずれ量において、主走査方向の位置ずれ量はΔPsj[jはy、m、c、kのいずれか]、副走査方向の位置ずれ量はΔPfjとする。各色の画像位置ずれ量の測定は、予め工場出荷時に実行される。各色の位置ずれ量は、それぞれ1/8ドット単位で記憶部405に記憶される。
【0019】
(主走査領域ごとに補正した画像クロックと補正残差)
図5(A)は、主走査方向の一ラインにおける像高と画像クロックの周波数比率との関係を示したグラフである。
図5(A)においての点線は、部分倍率が発生しない理想的な周波数比率を示している。実線は本実施例における周波数比率である。なお、中央像高は0mmである。また、中央像高に適用される画像クロックの周波数が基準(100%)として採用されている。
図5(A)が示すように、主走査領域は7つのサブ領域に分割されている。7つのサブ領域の境界位置は境界a〜境界hである。各サブ領域において適用される画像クロックの周波数は、各境界に対応する像高で理想倍率が得られるように、単調増加または単調減少するように補正される(以下、線形補正という)。各サブ領域において画像クロックの周波数を単調増加または単調減少させる補正関数の傾きがαj1〜αj7[jはy、m、c、kのいずれかの色を示す]である。
【0020】
走査領域 : 傾き
境界a〜b間: αj1
境界b〜c間: αj2
境界c〜d間: αj3
境界d〜e間: αj4
境界e〜f間: αj5
境界f〜g間: αj6
境界g〜h間: αj7
感光体ドラム130上でのレーザ光のスポットの移動速度(走査速度)に対応して画像クロックの周波数が補正されるため、電気的にfθ補正が実現される。つまり、走査速度が増加する領域ではそれに応じて画像クロックの周波数も増加される。画像クロックの周波数が増加すると、画像クロックの周期が減少し、一画素あたりの露光時間も減少する。つまり、感光体ドラム130上での各画素(ドット)の倍率が一定に維持されるようになる。なお、狭義には画素とは画像データにおける最小単位である。ドットとは一画素分の画像データにより露光されて形成された画像である。このように画素とドットとは原則として一対一で対応している。ここでは各境界に対応する像高がドット端部位置と仮定されているが、ドット中央位置であってもよい。
【0021】
図5(B)は、境界b〜境界cによって区画されたサブ領域におけるドット長(主走査方向に沿ったドットの長さ)を示している。理想的には感光体ドラム130上に形成される各ドットの長さは一定(1ドットあたり42.3um(600dpi))となる。一方、画像クロックの周波数を線形補正することで、境界b〜c間でのドット数や合計の長さは理想的な値になるものの、ドットごとに伸びや縮みが発生する。これは線形補正に伴って発生する補正残差が原因である。本来のfθ特性を示す関数は高次の関数となるが、計算量や記憶容量を削減するために、線形の近似関数が使用されている。そのため、残差が発生する。
【0022】
図5(C)は、
図5(B)に示した理想的なドットの位置に対する、画像クロックの周波数が線形補正されたときのドットの位置ずれ量を示している。位置ずれ量は、走査方向に対して順方向側がプラス、逆方向がマイナスとして表現されている。
図5(C)が示すように、画像クロックの周波数を線形補正すると、サブ領域内では、正弦波のようにずれ量が変化する位置ずれが発生する。
【0023】
(工場出荷時に格納されるスキャナ情報)
以下では光走査装置107が工場出荷されるときに取得されて格納されるスキャナ情報が説明される。
図6は各像高における光走査装置107のfθ特性を示す。画像クロックは補正されていない。
図6においてΔPj[jはy、m、c、kのいずれかの色を示す]は、感光体ドラム130における像高中央となる設計値とfθ特性の極値の位置との差分(ずれ量)を示す。
【0024】
工場において、半導体レーザ201は一定の周波数の画像クロックを供給されて発光し、レーザ光が感光体ドラム130上を走査する。各像高での走査速度を測定することによって光走査装置107のfθ特性が取得される。取得されたfθ特性からΔPjが取得される。fθ特性は、像高をxとしたn次関数で近似される。式(1)は、n次関数の一例である13次関数fj(x)である。jはy、m、c、kのいずれかの色を示している。
【0027】
次に、中央像高からΔPjだけずらした位置を中心として、各サブ領域についての傾きαj1〜αj7が算出される。工場において決定されたΔPj、近似式fj(x)、傾きαj1〜αj7がスキャナ情報として光走査装置107のスキャナ記憶部220に格納される。スキャナ情報は光走査装置107ごとに固有の値であるため、光走査装置107のスキャナ記憶部220に格納されている。
【0028】
(fθ特性の傾きαj1〜αj7の算出方法)
傾きαj1〜αj7を代表して、境界a〜b間の傾きαj1が一例として説明される。前述したように、境界aおよび境界bに対応する像高にて形成される画像の位置が理想位置となるように周波数が補正(単調増加または単調減少)される。傾き演算部453は次式により傾きαj1を決定する。
【0030】
ここでF0は境界bにおける画像クロックの周波数である。Dabは境界a〜b間の距離に相当するドットの数である。βは隣接境界の蓄積補正誤差である。TabはDabドット目の三角数であり、次式により求められる。
【0032】
すでに説明した(1)式から、境界a〜bにおける像高に対応した各画素についての理想的な画像クロックの周波数が算出される。各画素についての理想的な周波数の総和とβの和から、F0とDabの積を差し引き、Dabドット目の三角数で割って得られる商が一画素あたりの傾きαj1となる。
【0033】
(境界位置の整合)
図7(A)ないし
図7(C)を用いて本実施例の特徴部分である境界位置の整合処理が説明される。ここでは、説明を簡明にするために、ブラックとシアンといった二色間の色ずれが一例として採用される。
図7(A)は、光走査装置107Kに格納されている傾きαk1〜αk7に従って線形補正された画像クロックの周波数を用いて形成された画像の主走査方向における位置誤差(位置ずれ量)を示している。
図7(B)は光走査装置107Cに格納されている傾きαc1〜αc7に従って線形補正された画像クロックの周波数を用いて形成された画像の主走査方向における位置誤差を示している。
図7(C)はブラックの画像に対するシアンの画像の相対的な位置ずれ量を示している。ここでは、ブラックが基準色として選択されている。光走査装置107Cと光走査装置107Kとでは像高に対するfθ特性の極値の位置が異なっている。そのため、主走査方向の位置ずれ特性も異なる。
図7(C)が示すように各像高においてブラックに対するシアンの相対的な色ずれが発生する。また、光走査装置107Cと光走査装置107Kを画像形成装置100に組み付ける際の組み付けずれが発生し、全体的な画像のずれも発生する。これらの色ずれを低減するため、本実施例では、光走査装置107Cに対して境界位置の整合が適用される。差分演算部451は基準色のfθ特性の極値をもたらす像高と、他の色のfθ特性の極値をもたらす像高とのずれ量ΔPkjを決定する。たとえば、KとCとの間におけるfθ特性の極値をもたらす像高のずれ量ΔPkcは、次式から求められる。
【0034】
ΔPkc = ΔPc − ΔPk + ΔPsC・・・(4)
このとき、ΔPsCは、画像センサ160を用いて得られるKに対するCの画像全体の平均的な主走査方向のずれ量である。ずれ量ΔPkcは、1/8ドット単位で算出される。傾き演算部453は、算出されたΔPkcと(2)式を基に、傾きαc1〜αc7を演算する。ブラックに対応する傾きαk1〜αk7は光走査装置107Kのスキャナ記憶部220にされている。一方、シアンに対応する傾きαc1'〜αc7'は、境界a〜hからΔPkcだけ平行移動した位置を新たな境界a'〜h'として、(2)式から算出される。シアンについての各境界における像高で画像の位置が理想位置となるように傾きαc1'〜αc7'が算出される。
【0035】
サブ領域 : 傾き
境界(a−ΔPkc)〜(b−ΔPkc)間: αc1'
境界(b−ΔPkc)〜(c−ΔPkc)間: αc2'
境界(c−ΔPkc)〜(d−ΔPkc)間: αc3'
境界(d−ΔPkc)〜(e−ΔPkc)間: αc4'
境界(e−ΔPkc)〜(f−ΔPkc)間: αc5'
境界(f−ΔPkc)〜(g−ΔPkc)間: αc6'
境界(g−ΔPkc)〜(h−ΔPkc)間: αc7'
図8(A)はブラック画像の主走査方向における位置誤差を示している。
図8(B)は算出された傾きαc1'〜αc7'に従って画像クロックの周波数を補正して形成されたシアンの画像の主走査方向における位置誤差を示している。
図8(C)はブラック画像に対するシアン画像の相対的な位置誤差を示している。
図8(C)が示すように、境界位置を整合することで、各サブ領域内での位置誤差が概ね削減されている。
【0036】
CPU401はイエローやマゼンタについても同様の境界位置の整合を実行する。これにより、新しい傾きαy1'〜αy7'、αm1'〜αm7'が取得される。CPU401はこれらの傾きデータを記憶部405に書き込む。これにより、基準色であるブラックに対する他の各色の色ずれが低減される。
【0037】
整合した結果、色ずれがゼロになることは理想的である。しかし、本実施例では色ずれは1/8ドット以下に収まれば十分であるものとする。なお、1/8ドット以下とは一例であり、これに限られるものではない。各画像形成装置において求められる画質を達成することができれば、色ずれの許容量は適宜設定することが可能である。
【0038】
(フローチャート)
図9はCPU401が実行する境界位置の整合処理を示している。画像形成装置100の電源がONにされると、CPU401は以下の処理を実行する。
【0039】
S100でCPU401(整合部450)は各光走査装置107のスキャナ記憶部220から光走査装置107に関する情報(スキャナ情報)を読み出す。光走査装置107に関する情報には、工場出荷時に格納されたΔPjや傾きαj1〜αj7が含まれている。また、S101でCPU401(整合部450)は、記憶部405からブラックに対する主走査方向の位置ずれ量ΔPsjを読み出す。S102でCPU401(差分演算部451)は基準色に対する残りの他の色のそれぞれについて、fθ特性における極値の像高のずれ量ΔPjの差分ΔPkjを演算する。たとえば、ブラックが基準色であれば、差分ΔPkc、差分ΔPkm、差分ΔPkyが求められる。
【0040】
S103でCPU401(判定部)は演算により求められたΔPkjと、既に記憶部405に記憶されているΔPkjとが同じかどうかを判定する。本来であれば両者は一致する。しかし、画像形成装置100が工場から出荷された後にいずれかの光走査装置107が交換されると、ΔPjが変更されるため、ΔPkjも変化する。そのため、S103が設けられている。ΔPkjが変更されていなければ、前回求められた傾きαj1〜αj7は有効である。したがって、CPU401は境界位置の整合処理を終了する。一方で、ΔPkjが変更されていれば、傾きαj1〜αj7を再度演算すべく、CPU401はS104に進む。
【0041】
S104でCPU401(境界修正部452)はS102で求められたΔPkjを用いて各色の境界a'〜h'を決定する。S105でCPU401は決定された各色の境界a'〜h'とスキャナ記憶部220から取得したfj(x)などから傾きαj1'〜αj7'を決定する。S105でCPU401(傾き演算部453)はS105にて決定した傾きαj1'〜αj7'を記憶部405に格納する。これにより、CPU401は、画像形成が指示されると傾きαj1'〜αj7'を記憶部405から読み出して、画像クロックの周波数を像高に応じて補正しながら画像を形成する。
【0042】
本実施例はサブ領域の数を7個に仮定しているが、本発明はこれに限るものではない。サブ領域の数は2つ以上あればよい。また、本実施例ではfθ特性の近似式f(x)がスキャナ記憶部220に格納されているが、本発明はこれに限るものではない。スキャナ記憶部220には近似式f(x)の各項の係数のみが記憶されており、CPU401がこれらの係数を読み出して必要な演算を実行してもよい。
【0043】
以上説明したように本実施例によれば、画像クロックの周波数を線形補正することで補正残差が発生しても、基準色の境界位置に他色の境界位置を整合させることで、色ずれが低減される。
【0044】
[実施例2]
(概要)
実施例1では、基準色の境界位置に他色の境界位置を整合させることで色ずれが削減されている。しかし、境界位置の移動量が大きくなると、色ずれは低減されるものの、部分倍率が大きくなることがある。そこで、実施例2では、他の色だけでなく基準色の境界位置も変更することで、各色の境界位置の移動量が低減される。これにより、境界位置の変更に伴う補正残差の変動が低減される。実施例2において実施例1と同様の箇所には同一の参照符号が付与され、その説明が省略される。
【0045】
(境界位置の整合)
上述したように光走査装置107のスキャナ記憶部220にはfθ特性の極値の位置のずれ量ΔPj[jはy、m、c、kのいずれか]が記憶されている。上述したように、像高に対するfθ特性の極値の位置は各色で異なっているため、主走査方向の位置ずれ特性も異なる。これらの位置ずれ特性の違いによって色ずれが発生するため、各色の境界位置の補正が必要となる。実施例2では、CPU401は各色のスキャナ記憶部220に格納されているΔPjを読み出し、式(5)ないし式(9)を用いて四色すべてについて境界位置を補正する。とりわけ、CPU401は各色の境界位置の移動量が全体として最小限となるように境界位置の移動量ΔPy'、ΔPm'、ΔPc'、ΔPk'を決定する。
ΔPave = (ΔPy+ΔPm+ΔPc+ΔPk)÷4 ・・・式(5)
ΔPy' =ΔPave−ΔPy ・・・式(6)
ΔPm' =ΔPave−ΔPm ・・・式(7)
ΔPc' =ΔPave−ΔPc ・・・式(8)
ΔPk' =ΔPave−ΔPk ・・・式(9)
ここでΔPaveはスキャナ記憶部220から読み出されたΔPy、ΔPm、ΔPc、ΔPkの平均値であり、平均部454によって演算される。このように、CPU401(差分演算部451)は、各色のずれ量ΔPy、ΔPm、ΔPc、ΔPkと平均値ΔPaveを用いて、境界位置の移動量ΔPy'、ΔPm'、ΔPc'、ΔPk'を決定する。境界修正部452において境界位置の補正量として使用されるΔPy、ΔPm、ΔPc、ΔPkがΔPy'、ΔPm'、ΔPc'、ΔPk'に修正される。
【0046】
CPU401(傾き演算部453)はΔPy'、ΔPm'、ΔPc'、ΔPk'と各色に対応した式(2)を基に傾きαj1'〜αj7'を算出する。実施例2における傾きαj1'〜αj7'の算出方法は実施例1と同じものである。たとえば、シアンについては、境界a〜hがΔPc'だけ移動し、新たな境界a'〜h'が求められる。新たな境界a'〜h'について式(2)が適用され、傾きαc1'〜αc7'が決定される。
【0047】
サブ領域 : 傾き
境界(a−ΔPc')〜(b−ΔPc')間: αc1'
境界(b−ΔPc')〜(c−ΔPc')間: αc2'
境界(c−ΔPc')〜(d−ΔPc')間: αc3'
境界(d−ΔPc')〜(e−ΔPc')間: αc4'
境界(e−ΔPc')〜(f−ΔPc')間: αc5'
境界(f−ΔPc')〜(g−ΔPc')間: αc6'
CPU401は、シアンの傾きαc1'〜αc7'と同様の処理をイエロー、マゼンタ、ブラックにも適用し、それぞれの傾きαy1'〜αy7'、αm1'〜αm7'、 αk1'〜αk7'を決定する。これらの傾きデータをCPU401が記憶部405に書き込むことで、境界位置の移動量を最小限となり、基準色に対して他の各色の色ずれがさらに低減されうる。
【0048】
(フローチャート)
図10は実施例2におけるCPU401が実行する境界位置の整合処理を示すフローチャートである。画像形成装置100の電源がONされると、CPU401は以下の処理を実行する。
【0049】
S200でCPU401(整合部450)は各色のスキャナ記憶部220からスキャナ情報を読み出す。また、S201でCPU401(整合部450)は、記憶部405からブラックに対する主走査方向の位置ずれ量ΔPsjを読み出す。S202でCPU401(平均部454)は読み出した位置ずれ量ΔPjを用いて平均値ΔPaveを決定する。さらに、CPU401(差分演算部451)は平均値ΔPaveを基に位置ずれ量ΔPjを修正し、ΔPj'を決定する。S203でCPU401はS202で取得したΔPj'と、既に記憶部405に記憶されているΔPj'とが同じかどうかを判定する。両者が一致していれば、記憶部405には各色の境界a'〜h'や傾きαj1'〜αj7'が格納されているため、CPU401は整合処理を終了する。いずれかの光走査装置107が交換されている場合には、不一致が発生するため、CPU401はS204に進む。
【0050】
S204でCPU401(境界修正部452)はスキャナ記憶部220から読み出した各色の境界a〜hを、S202で取得したΔPj'を用いて修正して各色の境界a'〜h'を決定する。S205でCPU401(傾き演算部453)は新たな境界a'〜h'とスキャナ記憶部220から取得したfj(x)などから傾きαj1'〜αj7'を決定する。S206でCPU401(傾き演算部453)は、ΔPj'と傾きαj1'〜αj7'を記憶部405に格納して更新する。
【0051】
以上説明したように実施例2によれば、全色の境界位置の移動量が最小限となるように基準色および他色の境界位置が整合され、基準色の境界位置に他色の境界位置が整合する。これにより、色ずれが低減される。
【0052】
[実施例3]
(概要)
実施例1、2では工場出荷時に格納されたfθ特性の近似式f(x)などが画像クロックの周波数の補正や境界位置の整合に使用されていた。実施例3では、画像形成装置100が倍率のずれ量を検知して近似式f(x)を更新する。
【0053】
(倍率測定方法)
図11は倍率測定方法を説明する図である。実施例1の構成に加えて、主走査方向の中央には画像センサ106bが配置されている。3つの画像センサ106に共通する事項が説明されるときは、参照符号の末尾のa、b、cの文字は省略される。画像センサ106は、転写ベルト105に転写されたトナーパターン301をそれぞれ検知する。
【0054】
図12はトナーパターン301の位置と画像センサ106の出力信号との関係を示している。画像センサ106は、転写ベルト105上のトナーを検知するとLowレベルの電圧の出力信号を出力し、それ以外は、Highレベルの電圧の出力信号を出力する。トナーパターン301は二つの直線を有しており、これらの直線の端部が結合されている。画像センサ106が一方の直線を検知すると1回目のLowレベルの電圧を出力し、他方の直線を検知すると2回目のLowレベルの電圧を出力する。CPU401は、1回目のLowレベルへの立下りタイミングと2回目のLowレベルへの立下りタイミングとの間の時間差t1、t2、t3を測定する。時間差t1、t2、t3は主走査方向における画像の位置ずれ量を示している。位置ずれがない場合の時間差をt1とすると、左方向に位置ずれが発生した場合に検知される時間差t2は、t2<t1となる。一方、右方向に位置ずれが発生した場合に検知される時間差t3は、t3>t1となる。CPU401は画像センサ106により検知された位置ずれから主走査方向の倍率を検知する。位置ずれ量を倍率に変換する方法は当技術分野においてよく知られているため、その詳細な説明は省略される。CPU401は各色の倍率の測定結果から各色の式(1)に示した係数a
13〜a
0を補正する。これにより、各光走査装置107のfθ特性を示す近似式f(x)が更新される。
【0055】
(フローチャート)
図13はCPU401が実行する実施例3におけるによる境界位置の整合方法示すフローチャートである。画像形成装置100の電源がONされると、CPU401は上述したS100〜S103を実行する。S103でCPU401が、S102で決定されたΔPkjと記憶部405に保持されているΔPkjとが一致していないと判定すると、S301に進む。
【0056】
S301でCPU401(更新部470)は主走査倍率を測定する。たとえば、CPU401(パターン生成部471)はトナーパターン301を生成するための画像データを信号生成部403に供給し、信号生成部403にVDO信号407を出力させる。レーザコントローラ402はVDO信号407に応じて各色の光走査装置107を駆動し、トナーパターン301の静電潜像を形成させる。トナーパターン301はYMCKのそれぞれについて作成される。静電潜像は上述した電子写真プロセスにしたがってトナー画像に現像され、転写ベルト105上に転写される。CPU401(測定部472)は画像センサ106を用い、転写ベルト105上に形成されたトナーパターン301を検知し、検知結果に基づき主走査倍率を算出する。S302でCPU401(特性決定部473)は主走査倍率の測定結果に基づき各色の近似式fj(x)を更新する。たとえば、特性決定部473は測定された主走査倍率とスキャナ記憶部220に記憶されている近似式fj(x)とを用いて新たな近似式fj'(x)を作成してもよい。これにより、新たな近似式fj'(x)を表す係数a
13〜a
0が決定される。次にCPU401は上述したS104を実行し、さらにS303に進む。S303でCPU401はS104で決定された各色についての境界a'〜h'と新たに作成された近似式fj'(x)とから、傾きαj1'〜αj7'を決定する。S303は使用される近似式が異なる点を除けばS105と同じ処理である。その後、CPU401はS106を実行する。本実施例によれば、補正に使用される近似式f(x)が更新されるため、より正確に色ずれが補正されるようになる。
【0057】
<まとめ>
図1を用いて説明したように画像形成部103K〜103Yにそれぞれ設けられた感光体ドラム130は複数の像担持体の一例である。とりわけ、画像形成部103Kの感光体ドラム130は第一色(ブラック)のトナー画像を担持する第一像担持体の一例である。画像形成部103C〜103Yの感光体ドラム130は第二色(シアン・マゼンタ・イエロー)のトナー画像を担持する第二像担持体の一例である。たとえば、画像形成部103Cの感光体ドラム130はシアンのトナー画像を担持する第二像担持体の一例である。画像形成部103Mの感光体ドラム130はマゼンタのトナー画像を担持する第三像担持体の一例である。画像形成部103Yの感光体ドラム130はイエローのトナー画像を担持する第四像担持体の一例である。光走査装置107K〜107Yは複数の像担持体に対して個別に設けられ、光源からの光を偏向して各像担持体の被走査面上を走査する複数の光走査手段の一例である。半導体レーザ201は光源の一例である。とりわけ、光走査装置107Kは第一光源を有し、第一光源からの光を偏向して第一像担持体の被走査面上を走査する第一光走査手段の一例である。光走査装置107C〜107Yは第二光源を有し、第二光源からの光を偏向して第二像担持体の被走査面上を走査する第二光走査手段の一例である。たとえば、光走査装置107Cは第二光源を有し、第二光源からの光を偏向して第二像担持体の被走査面上を走査する第二光走査手段の一例である。光走査装置107Mは第三光源を有し、第三光源からの光を偏向して第三像担持体の被走査面上を走査する第三走査手段の一例である。光走査装置107Yは第四光源を有し、第四光源からの光を偏向して第四像担持体の被走査面上を走査する第四走査手段の一例である。クロック生成部404は各像担持体の被走査面上にドットを形成するように各光走査手段の光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成する生成手段の一例である。とりわけ、クロック生成部404は第一像担持体の被走査面上にドットを形成するように第一光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成する。クロック生成部404は第二像担持体の被走査面上にドットを形成するように第二光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成する。また、クロック生成部404は第三像担持体の被走査面上にドットを形成するように第三光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成する。クロック生成部404は第四像担持体の被走査面上にドットを形成するように第四光源の点灯タイミングを制御する画像クロックを生成する。周波数補正部441は、主走査方向の走査領域を構成する複数の分割領域のそれぞれについて決定された補正量にしたがって各分割領域における画素ごとに画像クロックの周期または周波数を補正する補正手段の一例である。整合部450は、複数の色のうち基準色についての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置に対して、複数の色のうち基準色とは異なる色についての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置を整合させる整合手段の一例である。とりわけ、整合部450は、第一色についての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置に対して第二色についての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置を整合させる。たとえば、整合部450は、ブラックについての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置に対してイエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれについての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置を整合させる。これにより、各サブ領域における複数の色間での補正残差の差が小さくなり、色ずれが削減される。
【0058】
なお、第一光走査手段と第二光走査手段は単一の回転多面鏡(ポリゴンミラーなど)を共用する走査手段であってもよいし、それぞれ個別の回転多面鏡を使用する走査手段であってもよい。前者の場合、2つの色に対応する2つのレーザ光を同時に偏向する単一のポリゴンミラーが採用されてもよいし、4つの色に対応する4つのレーザ光を同時に偏向する単一のポリゴンミラーが採用されてもよい。ポリゴンミラーを共用化することで、第一光走査手段と第二光走査手段を単一の光学箱に収容することが可能となる。この場合、見かけ上は一つの走査装置に見えるが、内部ではトナーの色の数に一致した数の光源が設けられており、それぞれ走査光学系が存在する。
【0059】
実施例1で説明されたように、整合部450は、第一色についての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置を基準とし、当該境界位置に対して、第二色についての走査領域における複数の分割領域の境界となる境界位置を整合させてもよい。たとえば、整合部450は、第一色についてのfθ特性の極値の像高のずれ量ΔPkと第二色についてのfθ特性の極値の像高のずれ量ΔPjとの差分ΔPkjに応じて第一色についての境界位置と第二色についての境界位置とを整合させてもよい。第一色についてのずれ量ΔPkは第一像担持体の走査領域における像高中心に対する第一光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量である。第二色についてのfθ特性の極値の像高のずれ量ΔPjは第二像担持体の走査領域における像高中心に対する第二光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量である。
【0060】
実施例2で説明されたように、整合部450は、第一色についてのサブ領域の境界位置と、第二色についてのサブ領域の境界位置との平均位置を基準とし、第一色についての境界位置と第二色についての境界位置とを整合させてもよい。上述したようにサブ領域は走査領域を構成する複数の分割領域のことである。たとえば、整合部450は第一像担持体の走査領域における像高中心に対する第一光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量ΔPkと第二像担持体の走査領域における像高中心に対する第二光走査手段についてのfθ特性の極値の像高のずれ量ΔPjとの平均値ΔPaveを取得する。整合部450は、平均値ΔPaveと第一色についてのずれ量ΔPkとの差分に応じて第一色についての境界位置を修正する。また、整合部450は、平均値ΔPaveと第二色についてのずれ量ΔPjとの差分に応じて第二色についての境界位置を修正する。これにより、第一色についての境界位置と第二色についての境界位置とが整合されてもよい。たとえば、YMCKのそれぞれについてfθ特性の極値の像高のずれ量の平均値に対してYMCKの各fθ特性が移動する。つまり、実施例2では実施例1と比較してYMCKの各移動量が小さくなることが期待され、色ずれ量もより削減されよう。
【0061】
傾き演算部453や周波数補正部441は、第一光走査手段についてのfθ特性を各分割領域ごとに線形近似することで得られる傾きに応じた補正量で第一光走査手段に供給される画像クロックを補正する。また、傾き演算部453や周波数補正部441は、第二光走査手段についてのfθ特性を各分割領域ごとに線形近似することで得られる傾きに応じた補正量で第二光走査手段に供給される画像クロックを補正する。このような線形近似を実行すると演算量が削減され、演算能力の低いプロセッサを採用でき、製造コストを低減できる。しかし、線形近似によって補正残差が発生するため、補正残差にともなる色ずれが発生しうる。本実施例であれば、各色のサブ領域に関する境界位置が整合されるため、色ずれが削減される。
【0062】
実施例3で説明されたように、更新部470がfθ特性を示す近似式f(x)を更新してもよい。転写ベルト105は第一像担持体および第二像担持体から、主走査方向における倍率を測定するためのトナーパターンを転写される無端状ベルトの一例である。転写ベルト105はシートPを搬送する搬送ベルトであってもよいし、中間転写ベルトであってもよい。画像センサ106は無端状ベルトに転写されたトナーパターンを検知する検知手段の一例である。更新部470は検知手段による検知結果に応じて、画像クロックの周期または周波数を補正するために使用されるfθ特性を示す近似式f(x)を更新する更新手段の一例である。このようにfθ特性を示す近似式f(x)を更新する更新部470を採用することで、画像形成装置100が工場から出荷された後に発生するfθ特性の変化にも適応可能となる。