【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、ダイアモンドライクカーボン又はDLCタイプの非晶質炭素に基づくハードコーティングを備える領域で対向する部品に対する摩擦係数を低減するために、カルーセルで運ばれるカムの全てがカムノーズをカルーセルの外側方向に向けてカルーセルの回転軸から全く同じ距離にある、カムとカルーセルとの間の固定構成に従って、このカルーセルの半径に沿うカム長さを整列させるようにカルーセル上にカムが配置される態様に従って、内燃機関を備える車両のためのカムシャフトのカムを処理する方法を提案する。このカルーセル及びカムは、これらのカムの清浄を確保するために真空下に置かれたエンクロージャ内に配置され、このカルーセルは、ダイアモンドライクカーボン又はDLCタイプの非晶質炭素に基づくハードコーティングをカルーセルの外側方向に向けられたカムのセクションの小部分に選択的に堆積するために、コーティング供給源に対してその軸周りに回転し、カムはカムシャフト上に組み付ける前にカルーセルから取り外される。
【0013】
従来、真空下での堆積は、特に物理的堆積(PVD:物理気相成長)又は化学的堆積(PACVD:プラズマ支援化学気相成長)である。
【0014】
本発明は、無限遠にある軸周りの回転は並進運動となるので、カムがその長さを互いに平行に、コーティング供給源に対する相対的な進行経路に対して垂直に配向される態様で配置される場合に一般化されると理解される。
【0015】
さらに、本発明は、コーティング供給源が、カムと水平方向で対向する(逆もまた同様)代わりに、カムの上方(又は下方)にあり、例えば水平方向軸周りで回転する場合、あるいはコーティング供給源の下方又は上方でカムが並進運動する場合、あるいはカムが何らかの方向に傾斜して供給源と対向する場合に一般化される。このような構成は、従来技術の構成ではほとんど現実的でなかった。
【0016】
従って、極めて一般的に、本発明は、ダイアモンドライクカーボン又はDLCタイプの非晶質炭素に基づくハードコーティングを備えた領域で対向部品に対する摩擦係数を低減するために、内燃機関を備える車両のためのカムシャフトのカムを処理する方法を提案するが、これらのカムは円形領域とノーズを形成する伸長部とを備えるセクションを有し、同時にノーズから円形領域へ測定される最大寸法で規定される長さを有し、カムは支持体上に配置され、支持体はカムの清浄を確保するために真空下に置かれるチャンバに導かれ、支持体はダイアモンドライクカーボン又はDLCタイプの非晶質炭素に基づくハードコーティング材料の供給源に対して相対的な進行経路を辿る相対運動状態に置かれ、これらのカムはカムシャフト上に組み付けられる前に支持体から取り外され、カムは固定構成に従って支持体上に配置され、固定構成及びこの進行経路は、コーティング供給源に向けられたカムセクションの小部分上に選択的にコーティングを堆積するために、これらのカムが連続的にコーティング供給源の向かい側に実質的に同じ向きでかつコーティング供給源に対して実質的に同じ距離で導かれるように規定されることを特徴とする。
【0017】
進行経路は、その相対運動の間、供給源の前を進行中に支持体において任意に選択された点によって描かれる線として規定することができる。従って、選択された点に応じて複数の進行軌道を規定することが可能であるが、これらの様々な軌道は平行なので、任意に選択された点を特定することなく、当該進行経路に対してカムの向きを規定することが可能であると理解される。
【0018】
以下、支持体は、通常は水平な平坦プレートから又は1又は2以上の平行なプレートの組立体から形成される場合、トレイを意味するが、垂直であってもよい。当該トレイ又は組立体が回転する場合、支持体は用語「カルーセル」を用いて表すことができる。
【0019】
対象のコーティングは、約1ミクロンの厚さ(数ミクロンを超えない)を有し、所謂薄膜に対応していることが本明細書に暗示されている。従って、当該コーティングを堆積する方法は薄膜形成法ということになる。
【0020】
カムのセクションは実際には狭い領域を意味し、このカムの平行面で画定されるということに留意すべきである。本発明は、これらの平行面にコーティング材料が堆積しないように防止措置を講じる必要がない。ノーズはカムセクションの最も先細部を表し、実際にはこのようなカムが通常有する開口部から最も遠く、従ってカムの長さは、ノーズとこのセクションに含まれる円形領域との間で測定される。
【0021】
本発明は、結局のところ、カムセクションの一部だけがDLC等の保護コーティングを備える必要があるという事実を利用し、これによって、所与の処理条件に対して所与の容積内で処理可能なカム数の増加と組み合わせて、当該コーティングを形成する条件のかなりの簡略化が可能となる。
【0022】
実際、本発明は、MoDTC含有のオイル等のオイルの存在下であっても対向する部品のコーティングの劣化を回避するために、実際にはカムのまさにノーズを、あるいはノーズの一部のみをコーティングすれば十分であるということ利用する。具体的には、カムの回転軸に対して最小限度の距離にあるカムの部分(一般にヒールと呼ばれる)をコーティングすることが不必要であることが分かっている。運転中、MoDTC含有オイルの存在下でこの部分が対向部品とたまに接触したとしても、実際にこの接触は、非コーティング領域の表面にあるトライボ膜の存在がDLCの劣化反応を促進するのに十分な圧力では生じない。
【0023】
ところで、カムの回転軸から最小限の距離にあるこの領域は、実際には軸の周りで約180°の角度に亘って広がると考えられ、これは、最小限の距離にあるこの領域の外側でカムをコーティングするために、保護コーティングを形成するために従来から使用されているカルーセル上でのカムの回転をもたらす必要はないということを意味する。しかしながら、本発明は、摩擦領域を越えたコーティング材料の堆積を回避するために特定の手段を用いる必要がないことを理解されたい。材料が、対向部品に対する摩擦領域を越えて堆積することもあり得る。
【0024】
実際には、通常、コーティング材料の供給源から構成要素上にコーティングを形成するために、この構成要素はカルーセル上に配置され、カルーセル自体は、真空堆積装置内で供給源に対向する外周を提示するように設計された回転トレイ上に取り付けられる。この回転トレイ上に、複数のカルーセルが取り付けられ、トレイの軸に平行なそれぞれの軸の周りの回転が制御され、それらの回転に遊星的特徴を与える。さらに、各カルーセルに取り付けられた各構成要素は、外周の各領域を供給源に提示するために、カルーセル上で回転することができる。3つの回転運動(カルーセルに対する構成要素の回転、トレイに対するカルーセルの回転、及び装置内でのトレイの回転)の組合せが存在することを意味する。これらの回転は、従来のように垂直軸の周りで行われる。
【0025】
本発明によれば、カムのセクション全体を供給源に曝す必要はないので、構成要素の軸周りの回転をもたらすこと(当業者が行うような)はもはや必要ではなく、制御される回転の数を低減することができる。これが第1の簡略化であり、コスト削減を生み出す。
【0026】
さらに、支持体に対して構成部品を回転させる必要がないので、処理される構成要素を所定の支持体上に3重回転の場合よりも非常に高い密度で配置することが可能になる。このことから、処理過程の間により多くの数の構成要素を処理することが可能となり、これがコスト削減に対する別の理由である。
【0027】
最後に、構成要素のセクションの一部のみがコーティングされるのでコーティング材料の量が低減し、コスト削減に対する別の理由となる。
【0028】
しかしながら、実際問題として、カムセクション表面の一部にあるコーティングが、カムシャフト上へのカムの組み付け時に劣化を受けることなく、運転時に十分な付着性を有することに疑問があるかもしれない。しかしながら、これは何らかの重要な影響を与えないことが分かっている(もちろん、コーティングが通常の注意をもって堆積される限り)。
【0029】
本発明によるカムの処理は、垂直軸周りの回転運動が選択された場合に、カルーセルの構造が第3の回転の除去により簡略化されることを除き、コーティング設備に有意な変更を必要としないことを強調しておく。
【0030】
対照的に、本発明により、主要な運動が並進運動とすることができ、もはや回転運動(特定できる軸周りの)ではなく、その場合、進行経路は直線であり、カムは互いに平行にその長さが整列され、同時にこの進行経路から全く同じ距離にあるように支持体上に配置される。さらに一般的には、経路は直線部分と円形部分の組み合わせとすることができる。
【0031】
さらに、本発明によれば、供給源は、カムに対して水平方向である必要はない。従って、カムは、供給源の上方又は下方を水平方向に、又は供給源の前を別の方向に進行することもできる。
【0032】
独国特許第10 2009 053 046号等の文献に関して、この文献はカムの一部にのみDLCコーティングを形成することを記載するが、カムのノーズを又はその小部分のみを選択的にコーティングすることが記載又は提案されていない点で、本発明は相違することに留意された。この文献では、コーティングされる部分を摺動領域、つまりカムの全セクションに限定可能であることがこの文献で理解される。実際には、構成要素をマンドレル上に配置して、その後に炉内に置き、コーティングがこれらのカムの摺動面又は外部表面上にだけ形成されるように各構成要素を隣接して配置することによってコーティングが得られると説明される。この文献には、最大限でもカムのノーズ上に、又はその小部分にのみにコーティングを形成することが記載及び提案されていない。いずれにしても、この文献は、そのような結果を得る方法を記載及び提案していない。
【0033】
同様に、欧州特許第2 682 230号等の文献に関して、この文献はカムが単に表面の一部の領域に非晶質炭素のコーティングを有することができることを記載するが、この文献はこのようなコーティングをノーズ又はこのノーズの小部分だけに限定することを記載及び提案していない点で本発明とは相違する。実際には、この文献は潤滑剤を閉じ込めることができるようにカムの表面に微細構造を形成することに関連し、このように改変されたコーティング自体がカムの領域に限定できると言及するのは、何ら具体的な情報のない一般化に過ぎない。この文献は、カムの単一領域(ノーズの全部又は一部)をコーティングすることを記載及び提案しておらず、このような結果を得るための正確な情報を一切含んでいない。
【0034】
好ましくは、カムは中央開口部を備えており、カムは、回転運動の場合、カルーセルの軸と平行に位置決めされかつこの軸から全く同じ距離に配置されたロッドに開口部を通すことによってカルーセル上に配置され、これらのロッドは、この軸の周りに規則的な角度分布を有し、ロッドに係合するカムは、最も近いロッドに係合するカムと少なくともほぼ接触する。より一般的には、ロッドがコーティング供給源の向かい側に導かれた場合にコーティング供給源の放出方向に対して垂直に配向されるように、ロッドは互いに平行に進行経路から全く同じ距離に配置され、一方では、ロッドに係合するカムは、最も近いロッドに係合するカムと少なくともほぼ接触するようにカルーセルに沿って規則的に分散配置される。実際には、これらのカム間の隙間が直径の20%を超えないか又は10%も超えない場合、カムは、隣接ロッドに係合するカムと少なくともほぼ接触すると見なすことができる。これにより、トレイ又はカルーセル等の支持体上にカムを正確かつ高密度に位置決めできることが理解される。
【0035】
好ましくは、マスクは、カルーセル上に配置され、全てはカルーセルの軸に対して全く同じ距離に配置され、その距離はロッドがこの軸に対して設置される距離以下であり、カムのセクションが隣接カムと向かい合うカムの領域を堆積供給源又は複数供給源に対して遮蔽するために、これらのロッドと周方向に互い違いになっている。より一般的には、マスクは、供給源に対するロッドの相対運動の間にロッドのセットにより規定される表面に対して全く同じ距離に配置され、一方では、その位置決めにマスクが役立つロッド及びカムが供給源の向かい側に到達した場合に供給源方向にあるこれらのロッドの前面にあるようにこれらのロッドと互い違いになっており、カムのセクションが隣接カムと向かい合うカムの領域を供給源に対して遮蔽するようにする。このようなマスクの存在により、コーティング領域を正確に画定することが可能となることに留意されたい。これらのロッドに取り付けられたカムが隣接カムと周方向に接触しない場合(換言すると、カムはこの場合、ほぼ接触しているに過ぎない)、マスクは単にロッドの運動中にロッドにより規定される表面に設置することができる。
【0036】
好ましくは、マスクは、ロッドの運動中にロッドにより規定される表面に対して周方向に又は平行に、ロッドに係合したカムの表面から隣接ロッドに係合したカムの表面へ延びる大きさを有し、クリアランスを与えるか又は持ち込む。この詳細は、各カムのコーティング領域を画定する精度を最適化するのに役立つ。
【0037】
好ましくは、回転カルーセルにより形成された支持体の場合、マスクの回転軸への距離は、この回転軸に対するロッド軸の距離の100%と150%の間の値を有する。これは、カムが対向部品を明確に支持する領域を含むのに十分に大きいが、容易に得られるように十分に小さいノーズ表面の小部分を画定する。有利には、マスクの軸への距離は、ロッドの軸へ距離の110%から130%までの値を有する。
【0038】
好ましくは、炭素系のコーティングは、20から50%の水素、より好ましくは20から30%の水素を含む混合物を用いて堆積される。実際には、DLCコーティングは水素を含有するのが有利であり、形成されたコーティングが低い粗さを有するという利点を提供する。実際には、水素なしの炭素堆積は実際にアーク技術により得られ、結果として堆積の終わりにかなりの粗さを呈することがあり、場合によっては、それらをコーティング後に研磨作業を行う必要があり、経済的に有利とはなり得ない。実際には、非水素化非晶質炭素の層は、摩耗損傷の下で良好な耐久性を示す。しかしながら、水素化非晶質炭素の層a−C:Hは、摩耗損傷下での耐久性は少し劣るが厚さにはほとんど制限がない。
【0039】
好ましくは、炭素系コーティングを堆積する前に、金属基材上にDLCコーティングの付着性をもたらす、副層がタングステン・カーバイド又はナイトライド、クロム・カーバイド又はナイトライド、或いはタングステンとクロム・カーバイド及び/又はナイトライドの混合物、或いは当業者に公知のいずれか他の層又は層の組合せから形成される。これは実際に行われる場合が多く、その理由は、DLC層は本質的に多くの基材に対して付着性が低いことが知られており、この場合はプライマーの存在が必要であるからである。
【0040】
有利には、DLCコーティング施工の前又は後に、表面マイクロテクスチャがカムノーズ表面の全部又は一部に形成される。これは、特に全体としてカム及び対向部品の弾性流体力学的状態、つまり連続運転中の正常な挙動に達するのに必要とされる時間の低減を可能にすることによって、潤滑の最適化を可能とする。
【0041】
本発明はまた、前述の方法により得られるカム、つまり、そのセクションの一部のみが非晶質炭素DLCに基づくコーティングを備えるカムに関連する。
【0042】
類推すると、本発明は、前述の方法によって得られたカムを含むシャフト、つまり、最大でもカムノーズを意味するそのセクションの一部のみが非晶質炭素(ダイアモンドライクカーボン)に基づくコーティングを備えるカムを含むカムシャフトを網羅する。本発明が十分に有効なのはこの構成においてである。
【0043】
好ましくは、カムのセクションは、これらのカムの円形領域の端部に対して或る距離までコーティングを備えるだけであり、その距離はこれらのカムのこの円形領域の半径の少なくとも20%又は30%もの値を有する。これは、有意な厚さまで、本当に有用なカムセクションの領域上にコーティングが存在するだけであることを確実にするのに寄与する。
【0044】
有利には、これらのカムは、コーティングを備えるセクション領域の全部又は一部にマイクロテクスチャ加工が施される。
【0045】
類推すると、本発明は、前述タイプのカムシャフトと、これらのカムとそれぞれ相互作用する複数のタペット(又はフィンガフォロワ)とを備える原動機組立体を網羅する。これらのタペット(又はフィンガフォロワ)の各々は、炭素系(ダイアモンドライクカーボン)コーティングを備える接触面を有する。このカムを前述の方法で処理したカムシャフトが有効になるのは運転時であることが理解される。
【0046】
別の態様によれば、本発明は、前述のタイプのカムシャフトを、これらのカムとそれぞれ相互作用する複数のタペット(又はフィンガフォロワ)と共に使用する方法であって、これらのタペット(又はフィンガフォロワ)の各々は、炭素系(ダイアモンドライクカーボン)コーティングを備える接触面を有し、硫黄及びモリブデンに基づく摩擦低減添加物、特にMoDTC化合物を含有するオイルの存在下で使用する方法を提案する。これは、本発明がカム上コーティングの完全欠如という欠点を克服する条件の表現を意味する。
【0047】
別の態様によれば、本発明は前述の方法を実施するコーティング処理設備を提案し、コーティング材料の真空堆積のための供給源と、この供給源に対向して外周を提示するように回転軸周りに回転可能なカルーセルとを備え、このカルーセルは、その軸と平行な複数のロッドを備え、これらのロッドはこのカルーセルに対して固定され、軸周りに規則的にこの軸から全く同じ距離に分配され、同時に所定の形式のカムがこれらのロッドに係合することを可能にする角度間隔を有し、同時にカムノーズをカルーセルの外部に向けて半径方向に配向される。これは、前述の方法を実施する手段の観点から本発明を表現することを意味する。
【0048】
一般に、この設備は、コーティング材料の真空堆積のための供給源と、この供給源の前面を相対的な進行経路を辿って移動させることのできる支持体と、を備えるものとして規定することができ、この支持体はこのトレイに対して固定された互いに平行な複数のロッドを備え、一方でそのロッドは、ロッドがその向かい側に導かれた場合にコーティング材料の供給源の放出方向と垂直に配向されるように規則正しく進行経路から全く同じ距離に分散配置され、所定の形式のカムがこれらのロッドに係合することを可能にする間隔を有し、一方でそのカムは、進行経路に対して全く同じ構成に従って配向され、同時にカムがこの供給源の向かい側に到達する場合に供給源に向けて配向されるノーズを有する。
【0049】
本発明の目的、特徴及び利点は、単に非限定的な例示を目的とする添付図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになるであろう。