(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974948
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】放射線撮像装置および放射線撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/32 20060101AFI20211118BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20211118BHJP
H04N 5/374 20110101ALI20211118BHJP
【FI】
H04N5/32 050
A61B6/00 300S
A61B6/00 320Z
A61B6/00 333
A61B6/00 350S
H04N5/374
【請求項の数】28
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-23474(P2017-23474)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-129766(P2018-129766A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 貴司
(72)【発明者】
【氏名】照井 晃介
(72)【発明者】
【氏名】佃 明
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 聡太
【審査官】
大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−090960(JP,A)
【文献】
特開2002−051265(JP,A)
【文献】
特開2013−219751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
H04N 5/30−5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する画素アレイを含む撮像部と、前記撮像部からの信号を処理する信号処理部とを備える放射線撮像装置であって、
前記複数の画素の各々は、放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記変換素子をリセットするリセット部と、を含み、
前記信号処理部は、第1期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じた第1画像と、前記第1期間の開始後に開始し前記第1期間の終了前に終了する第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じた第2画像と、の差分を演算することによって第3画像を生成し、前記第2画像および前記第3画像に基づいて放射線画像を生成し、
前記複数の画素の各々において、前記第1期間においては、前記変換素子が前記リセット部によってリセットされない、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記第2画像と前記第3画像との差分に基づいて放射線画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々は、前記変換素子が変換した電気信号に応じて信号が非破壊で読み出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記複数の画素の各々は、前記変換素子が変換した電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路を含み、前記サンプルホールド回路がサンプルホールドした電気信号に応じて信号が非破壊で読み出されることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記複数の画素から非破壊で読み出された第1信号と、前記第2期間の開始から前記第1期間の終了までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記複数の画素から非破壊で読み出された第2信号と、前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記複数の画素から非破壊で読み出された第3信号とを出力し、
前記信号処理部は、前記第1信号、前記第2信号および前記第3信号に基づいて前記第2画像および前記第3画像を得る、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記撮像部は、前記画素アレイから信号を読み出す読出回路を含み、
前記読出回路は、
前記第1期間の開始から前記第2期間の開始までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号と、前記第1期間の開始から前記第2期間の終了までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号とに基づいて前記第1信号を生成し、
前記第1期間の開始から前記第2期間の開始までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号と、前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号とに基づいて前記第2信号を生成し、
前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号に基づいて前記第3信号を生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記複数の画素から非破壊で読み出された第1信号と、前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記複数の画素から非破壊で読み出された第3信号とを出力し、
前記信号処理部は、前記第1信号および前記第3信号に基づいて前記第2画像および前記第3画像を得る、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記撮像部は、前記画素アレイから信号を読み出す読出回路を含み、
前記読出回路は、
前記第1期間の開始から前記第2期間の開始までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号と、前記第1期間の開始から前記第2期間の終了までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号とに基づいて前記第1信号を生成し、
前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じて前記画素アレイから出力される信号に基づいて前記第3信号を生成し、
ことを特徴とする請求項7に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記放射線撮像装置に対する放射線の照射の開始を示す同期信号に基づいて前記第2期間が決定される、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記サンプルホールド回路が前記放射線撮像装置に対する放射線の照射の開始を示す同期信号に基づいて制御される、
ことを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記撮像部は、放射線が照射されたことを検出して前記同期信号を生成する、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記撮像部は、前記同期信号を受信する、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
放射線源を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
複数の画素を有する放射線撮像装置を使って放射線画像を得る放射線撮像方法であって、
前記複数の画素の各々は、放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記変換素子をリセットするリセット部と、を含み、
前記放射線撮像方法は、第1期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じた第1画像と、前記第1期間の開始後に開始し前記第1期間の終了前に終了する第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じた第2画像と、の差分を演算することによって第3画像を生成し、前記第2画像および前記第3画像に基づいて放射線画像を生成し、
前記複数の画素の各々において、前記第1期間においては、前記変換素子が前記リセット部によってリセットされない、
ことを特徴とする放射線撮像方法。
【請求項15】
複数の行および複数の列を構成するように配列された複数の画素を有する画素アレイを含む撮像部と、前記撮像部からの信号を処理する信号処理部と、を備え、被検体に照射する放射線のエネルギーを異ならせて複数回にわたって該被検体を撮像して得た複数の画像を処理することによって新たな画像を得るエネルギーサブトラクション法によって放射線画像を得るための放射線撮像装置であって、
前記複数の画素の各々は、放射線に応じた電荷を蓄積する電荷蓄積部を有する変換素子と、前記電荷蓄積部とともに電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部として機能するゲートを有するソースフォロア回路と、前記ソースフォロア回路を介して前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記電圧に応じた電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、前記電荷電圧変換部の電位をリセットするリセット部と、第1主電極、第2主電極および制御電極を有する1つ以上のトランジスタと、前記電荷電圧変換部に容量値を付加するための容量と、を含み、前記第1主電極は前記電荷蓄積部に接続され、前記第2主電極は前記容量に接続され、
前記信号処理部は、前記リセット部による前記電荷電圧変換部の電位のリセットの後に開始される第1期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じて前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して出力された電気信号に応じた第1画像と、前記第1期間の開始後に開始し前記第1期間の終了前に終了する第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じて前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して出力された電気信号に応じた第2画像と、の差分を演算することによって第3画像を生成し、前記第2画像および前記第3画像に基づいて放射線画像を生成し、
前記複数の画素の各々において、前記第1期間においては、前記電荷電圧変換部の電位が前記リセット部によってリセットされず且つ前記1つ以上のトランジスタの前記制御電極に与えられる電圧が活性化されない、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項16】
前記信号処理部は、前記第2画像と前記第3画像との差分に基づいて放射線画像を生成する、
ことを特徴とする請求項15に記載の放射線撮像装置。
【請求項17】
前記複数の画素の各々は、前記変換素子で発生した電荷に応じて前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して出力された電気信号に応じて信号が非破壊で読み出されることを特徴とする請求項15又は16に記載の放射線撮像装置。
【請求項18】
前記サンプルホールド回路がサンプルホールドした電気信号に応じて信号が非破壊で読み出されることを特徴とする請求項17に記載の放射線撮像装置。
【請求項19】
前記撮像部は、前記第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記複数の画素から非破壊で読み出された第1信号と、前記第2期間の開始から前記第1期間の終了までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記複数の画素から非破壊で読み出された第2信号と、前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記複数の画素から非破壊で読み出された第3信号と、を出力し、
前記信号処理部は、前記第1信号、前記第2信号および前記第3信号に基づいて前記第2画像および前記第3画像を得る、
ことを特徴とする請求項17又は18に記載の放射線撮像装置。
【請求項20】
前記撮像部は、前記画素アレイから信号を読み出す読出回路を含み、
前記読出回路は、
前記第1期間の開始から前記第2期間の開始までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号と、前記第1期間の開始から前記第2期間の終了までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号とに基づいて前記第1信号を生成し、
前記第1期間の開始から前記第2期間の開始までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号と、前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号とに基づいて前記第2信号を生成し、
前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号に基づいて前記第3信号を生成する、
ことを特徴とする請求項19に記載の放射線撮像装置。
【請求項21】
前記撮像部は、前記第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記複数の画素から非破壊で読み出された第1信号と、前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記複数の画素から非破壊で読み出された第3信号とを出力し、
前記信号処理部は、前記第1信号および前記第3信号に基づいて前記第2画像および前記第3画像を得る、
ことを特徴とする請求項17又は18に記載の放射線撮像装置。
【請求項22】
前記撮像部は、前記画素アレイから信号を読み出す読出回路を含み、
前記読出回路は、
前記第1期間の開始から前記第2期間の開始までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号と、前記第1期間の開始から前記第2期間の終了までの期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号とに基づいて前記第1信号を生成し、
前記第1期間の全体において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じた電気信号を前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して前記画素アレイから出力される信号に基づいて前記第3信号を生成する、ことを特徴とする請求項21に記載の放射線撮像装置。
【請求項23】
前記放射線撮像装置に対する放射線の照射の開始を示す同期信号に基づいて前記第2期間が決定される、
ことを特徴とする請求項16乃至22のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項24】
前記サンプルホールド回路が前記放射線撮像装置に対する放射線の照射の開始を示す同期信号に基づいて制御される、
ことを特徴とする請求項16に記載の放射線撮像装置。
【請求項25】
前記撮像部は、放射線が照射されたことを検出して前記同期信号を生成する、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の放射線撮像装置。
【請求項26】
前記撮像部は、前記同期信号を受信する、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の放射線撮像装置。
【請求項27】
放射線源を更に備える、
ことを特徴とする請求項16乃至26のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項28】
複数の行および複数の列を構成するように配列された複数の画素を有し、被検体に照射する放射線のエネルギーを異ならせて複数回にわたって該被検体を撮像して得た複数の画像を処理することによって新たな画像を得るエネルギーサブトラクション法によって放射線画像を得るための放射線撮像装置を使って前記放射線画像を得る放射線撮像方法であって、
前記複数の画素の各々は、放射線に応じた電荷を蓄積する電荷蓄積部を有する変換素子と、前記電荷蓄積部とともに電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部として機能するゲートを有するソースフォロア回路と、前記ソースフォロア回路を介して前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記電圧に応じた電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、前記電荷電圧変換部の電位をリセットするリセット部と、第1主電極、第2主電極および制御電極を有する1つ以上のトランジスタと、前記電荷電圧変換部に容量値を付加するための容量と、を含み、前記第1主電極は前記電荷蓄積部に接続され、前記第2主電極は前記容量に接続され、
前記放射線撮像方法は、前記リセット部による前記電荷電圧変換部の電位のリセットの後に開始される第1期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じて前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して出力された電気信号に応じた第1画像と、前記第1期間の開始後に開始し前記第1期間の終了前に終了する第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子で発生した電荷に応じて前記電荷電圧変換部の電位を変化させずに前記サンプルホールド回路を経由して出力され電気信号に応じた第2画像と、の差分を演算することによって第3画像を生成し、前記第2画像および前記第3画像に基づいて放射線画像を生成し、
前記複数の画素の各々において、前記第1期間においては、前記電荷電圧変換部の電位が前記リセット部によってリセットされず且つ前記1つ以上のトランジスタの前記制御電極に与えられる電圧が活性化されない、
ことを特徴とする放射線撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置および放射線撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮像装置を応用した撮影方法としてエネルギーサブトラクション法がある。エネルギーサブトラクション法は、被検体に照射する放射線のエネルギーを異ならせて複数回にわたって撮像して得た複数の画像を処理することによって新たな画像(例えば、骨画像および軟部組織画像)を得る方法である。複数の放射線画像を撮像する時間間隔は、例えば、静止画撮像用の放射線撮像装置では数秒以上、通常の動画用の放射線撮像装置では100ミリ秒程度であり、高速の動画用の放射線撮像装置でも10ミリ秒程度である。この時間間隔において被検体が動くと、その動きによるアーチファクトが生じてしまう。したがって、心臓などのように動きが速い被検体の放射線画像をエネルギーサブトラクション法によって得ることは困難であった。
【0003】
特許文献1には、デュアルエネルギー撮影を行うシステムが記載されている。このシステムでは、撮影の際にX線源の管電圧が第1kV値にされた後に第2kV値に変更される。そして、管電圧が第1kV値であるときに第1副画像に対応する第1信号が積分され、積分された信号がサンプル・ホールドノードに転送された後に、積分がリセットされる。その後、管電圧が第2kV値であるときに第2副画像に対応する第2信号が積分される。これにより、積分された第1信号の読み出しと第2信号の積分が並行して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−504221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法では、積分された第1信号の読み出しと第2信号の積分とが並行して行われるので、エネルギーサブトラクション法のための2つの画像を撮像する時間間隔を短縮することができる。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、2つの放射線画像(第1副画像、第2副画像)を得るために、第1副画像に対応する第1信号の積分および転送の後にリセット動作が存在する。被検体の動きの影響を抑えるために放射線の照射時間を1ミリ秒程度まで短くした場合、仮にリセット動作を0.1ミリ秒で完了することができるとしても、放射線の照射時間のうちの1割の時間において放射線が無駄に被検体に照射されることになる。
【0006】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、撮像に寄与しない放射線の照射を減らしつつ、より短時間で放射線画像を得るために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、複数の画素を有する画素アレイを含む撮像部と、前記撮像部からの信号を処理する信号処理部とを備える放射線撮像装置に係り、前記複数の画素の各々は、放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記変換素子をリセットするリセット部と、を含み、前記信号処理部は、第1期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じた第1画像と、前記第1期間の開始後に開始し前記第1期間の終了前に終了する第2期間において前記複数の画素の各々の前記変換素子が変換した電気信号に応じた第2画像と
、の差分を演算することによって第3画像を生成し、前記第2画像および前記第3画像に基づいて放射線画像を生成し、前記複数の画素の各々において、前記第1期間においては、前記変換素子が前記リセット部によってリセットされない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像に寄与しない放射線の照射を減らしつつ、より短時間で放射線画像を得るために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の放射線撮像装置の構成を示す図。
【
図4】拡張モード1における放射線撮像装置の動作例を示す図。
【
図5】放射線画像のフレーム間のばらつきを説明する図。
【
図6】放射線画像のフレーム間のばらつきの低減効果を説明する図。
【
図7】拡張モード2における放射線撮像装置の動作例を示す図。
【
図8】拡張モード3における放射線撮像装置の動作例を示す図。
【
図9】放射線画像のフレーム間のばらつきの低減効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
【0011】
図1には、本発明の一実施形態の放射線撮像装置1の構成が示されている。放射線撮像装置1は、複数の画素を有する画素アレイ110を含む撮像部100と、撮像部100からの信号を処理する信号処理部352とを備えうる。撮像部100は、例えば、パネル形状を有しうる。信号処理部352は、
図1に例示されるように、制御装置350の一部として構成されてもよいし、撮像部100と同一筺体に収められてもよいし、撮像部100および制御装置350とは異なる筺体に収められてもよい。放射線撮像装置1は、エネルギーサブトラクション法によって放射線画像を得るための装置である。エネルギーサブトラクション法は、被検体に照射する放射線のエネルギーを異ならせて複数回にわたって撮像して得た複数の画像を処理することによって新たな放射線画像(例えば、骨画像および軟部組織画像)を得る方法である。放射線という用語は、例えば、X線の他、α線、β線、γ線、粒子線、宇宙線を含みうる。
【0012】
放射線撮像装置1は、放射線を発生する放射線源400、放射線源400を制御する曝射制御装置300、および、曝射制御装置300(放射線源400)および撮像部100を制御する制御装置350を備えうる。制御装置350は、前述のように、撮像部100から供給される信号を処理する信号処理部352を含みうる。制御装置350の機能の全部または一部は、撮像部100に組み込まれうる。あるいは、撮像部100の機能の一部は、制御装置350に組み込まれうる。制御装置350は、コンピュータ(プロセッサ)と、該コンピュータに提供するプログラムを格納したメモリとによって構成されうる。信号処理部352は、該プログラムの一部によって構成されうる。あるいは、信号処理部352は、コンピュータ(プロセッサ)と、該コンピュータに提供するプログラムを格納したメモリとによって構成されうる。制御装置350の全部または一部は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または、プログラマブルロジックアレイ(PLA)によって構成されてもよい。制御装置350および信号処理部352は、その動作を記述したファイルに基づいて論理合成ツールによって設計され製造されてもよい。
【0013】
曝射制御装置300は、例えば、曝射スイッチを有し、曝射スイッチがオンされることに応じて放射線源400に放射線を放射させるとともに、放射線が放射されるタイミングを示す情報を制御装置350に通知しうる。あるいは、曝射制御装置300は、制御装置350からの指令に応じて放射線源400に放射線を放射させる。
【0014】
放射線源400からの放射線の連続的な放射期間においてエネルギー(波長)が変化する放射線を放射しうる。このような放射線を用いて、互いに異なる2つのエネルギーのそれぞれにおける放射線画像を得て、これらの放射線画像をエネルギーサブトラクション法によって処理することによって1つの新たな放射線画像を得ることができる。
【0015】
あるいは、放射線源400は、放射線のエネルギー(波長)を変更する機能を有してもよい。放射線源400は、例えば、管電圧(放射線源400の陰極と陽極との間に印加する電圧)を変更することによって放射線のエネルギーを変更する機能を有しうる。
【0016】
撮像部100の画素アレイ110を構成する複数の画素の各々は、放射線を電気信号(例えば、電荷)に変換する変換部と、該変換部をリセットするリセット部とを含む。各画素は、放射線を直接に電気信号に変換するように構成されてもよいし、放射線を可視光等の光に変換した後に該光を電気信号に変換するように構成されてもよい。後者においては、放射線を光に変換するためのシンチレータが利用されうる。シンチレータは、画素アレイ110を構成する複数の画素によって共有されうる。
【0017】
図2には、撮像部100の構成例が示されている。前述のように、撮像部100は、複数の画素112を有する画素アレイ110および画素アレイ110の複数の画素112から信号を読み出すための読出回路RCを含む。複数の画素112は、複数の行および複数の列を構成するように配列されうる。読出回路RCは、行選択回路120、タイミングジェネレータ(制御部またはステートマシンとも呼ばれうる)130、バッファ回路140、列選択回路150、増幅部160およびAD変換器170を含みうる。
【0018】
行選択回路120は、画素アレイ110の行を選択する。行選択回路120は、行制御信号122を駆動することによって行を選択するように構成されうる。バッファ回路140は、画素アレイ110の複数の行のうち行選択回路120によって選択された行の画素112から信号をバッファリングする。バッファ回路140は、画素アレイ110の複数の列信号伝送路114に出力される複数列分の信号をバッファリングする。各列の列信号伝送路114は、列信号線対を構成する第1信号線および第2列信号線を含む。第1列信号線には、画素112のノイズレベル(後述の通常モード時)、または、画素112で検出された放射線に応じた放射線信号(後述の拡張モード時)が出力されうる。第2列信号線322には、画素112で検出された放射線に応じた放射線信号が出力されうる。バッファ回路140は、増幅回路を含みうる。
【0019】
列選択回路150は、バッファ回路140によってバッファリングされた1行分の信号対を所定の順に選択する。増幅部160は、列選択回路150によって選択された信号対を増幅する増。ここで、増幅部160は、信号対(2つの信号)の差分を増幅する差動増幅器として構成されうる。AD変換器170は、増幅部160から出力される信号OUTをAD変換してデジタル信号DOUT(放射線画像信号)を出力するAD変換器170を備えうる。
【0020】
図3には、1つの画素112の構成例が示されている。画素112は、例えば、変換素子210、リセットスイッチ220(リセット部)、増幅回路230、感度変更部240、クランプ回路260、サンプルホールド回路(保持部)270、280、出力回路310を含む。画素112は、撮像方式に関するモードとして、通常モードおよび拡張モードを有しうる。拡張モードは、エネルギーサブトラクション法によって放射線画像を得るためのモードである。
【0021】
変換素子210は、放射線を電気信号に変換する。変換素子210は、例えば、複数の画素で共有されうるシンチレータと、光電変換素子とで構成されうる。変換素子210は、変換された電気信号(電荷)、即ち放射線に応じた電気信号を蓄積する電荷蓄積部を有し、電荷蓄積部は、増幅回路230の入力端子に接続されている。
【0022】
増幅回路230は、MOSトランジスタ235、236、電流源237を含みうる。MOSトランジスタ235は、MOSトランジスタ236を介して電流源237に接続されている。MOSトランジスタ235および電流源237によってソースフォロア回路が構成される。MOSトランジスタ236は、イネーブル信号ENが活性化されることによってオンして、MOSトランジスタ235および電流源237によって構成されるソースフォロア回路を動作状態にするイネーブルスイッチである。
【0023】
変換素子210の電荷蓄積部およびMOSトランジスタ235のゲートは、電荷蓄積部に蓄積された電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部CVCとして機能する。即ち、電荷電圧変換部CVCには、電荷蓄積部に蓄積された電荷Qと電荷電圧変換部が有する容量値Cとによって定まる電圧V(=Q/C)が現れる。電荷電圧変換部CVCは、リセットスイッチ220を介してリセット電位Vresに接続されている。リセット信号PRESが活性化されるとリセットスイッチ203がオンして、電荷電圧変換部の電位がリセット電位Vresにリセットされる。リセットスイッチ220は、変換素子210の電荷蓄積部に接続された第1主電極(ドレイン)と、リセット電位Vresが与えられる第2主電極(ソース)と、制御電極(ゲート)とを有するトランジスタを含みうる。該トランジスタは、該制御電極にオン電圧が与えられることによって該第1主電極と該第2主電極とを導通させて変換素子210の電荷蓄積部をリセットする。
【0024】
クランプ回路260は、リセットされた電荷電圧変換部CVCの電位に応じて増幅回路230から出力されるリセットノイズレベルをクランプ容量261によってクランプする。クランプ回路260は、変換素子210で変換された電荷(電気信号)に応じて増幅回路230から出力される信号(放射線信号)からリセットノイズレベルをキャンセルするための回路である。リセットノイズベルは、電荷電圧変換部CVCのリセット時のkTCノイズを含む。クランプ動作は、クランプ信号PCLを活性化することによってMOSトランジスタ262をオンさせた後に、クランプ信号PCLを非活性化することによってMOSトランジスタ262をオフさせることによってなされる。
【0025】
クランプ容量261の出力側は、MOSトランジスタ263のゲートに接続されている。MOSトランジスタ263のソースは、MOSトランジスタ264を介して電流源265に接続されている。MOSトランジスタ263と電流源265とによってソースフォロア回路が構成されている。MOSトランジスタ264は、そのゲートに供給されるイネーブル信号EN0が活性化されることによってオンして、MOSトランジスタ263と電流源265とによって構成されるソースフォロア回路を動作状態にするイネーブルスイッチである。
【0026】
出力回路310は、MOSトランジスタ311、313、315、行選択スイッチ312、314を含む。MOSトランジスタ311、313、315は、それぞれ、列信号線321、322に接続された不図示の電流源とともにソースフォロア回路を構成する。
【0027】
変換素子210で発生した電荷に応じてクランプ回路260から出力される信号である放射線信号は、サンプルホールド回路280によってサンプルホールド(保持)されうる。サンプルホールド回路280は、スイッチ281および容量282を有しうる。スイッチ281は、サンプルホールド信号TSが活性化されることによってオンする。クランプ回路260から出力される放射線信号は、サンプルホールド信号TSが活性化されることによって、スイッチ281を介して容量282に書き込まれる。
【0028】
通常モードでは、リセットスイッチ220によって電荷電圧変換部CVCの電位がリセットされ、MOSトランジスタ262がオンした状態では、クランプ回路260からは、クランプ回路260のノイズレベル(オフセット成分)が出力される。クランプ回路260のノイズレベルは、サンプルホールド回路270によってサンプルホールド(保持)されうる。サンプルホールド回路270は、スイッチ271および容量272を有しうる。スイッチ271は、サンプルホールド信号TNが活性化されることによってオンする。クランプ回路260から出力されるノイズレベルは、サンプルホールド信号TNが活性化されることによって、スイッチ271を介して容量272に書き込まれる。また、拡張モードでは、サンプルホールド回路270は、変換素子210で発生した電荷に応じてクランプ回路260から出力される信号である放射線信号を保持するために使用されうる。
【0029】
行選択信号VSTが活性化されると、サンプルホールド回路270、280に保持されている信号に応じた信号が列信号伝送路114を構成する第1列信号線321、第2列信号線322に出力される。具体的には、サンプルホールド回路270によって保持されている信号(ノイズレベルまたは放射線信号)に応じた信号NがMOSトランジスタ311および行選択スイッチ312を介して列信号線321に出力される。また、サンプルホールド回路280によって保持されている信号に応じた信号SがMOSトランジスタ313および行選択スイッチ314を介して列信号線322に出力される。
【0030】
画素112は、複数の画素112の信号を加算するための加算スイッチ301、302を含んでもよい。加算モード時は、加算モード信号ADDN、ADDSが活性化される。加算モード信号ADDNの活性化により複数の画素112の容量272同士が接続され、信号(ノイズレベルまたは放射線信号)が平均化される。加算モード信号ADDSの活性化により複数の画素112の容量282同士が接続され、放射線信号が平均化される。
【0031】
画素112は、感度変更部240を含みうる。感度変更部240は、スイッチ241、242、容量243、244、MOSトランジスタ245、246を含みうる。第1変更信号WIDEが活性化されると、スイッチ241がオンして、電荷電圧変換部CVCの容量値に第1付加容量243の容量値が付加される。これによって、画素112の感度が低下する。更に第2変更信号WIDE2も活性化されると、スイッチ242もオンして、電荷電圧変換部CVCの容量値に第2付加容量244の容量値が付加される。これによって画素112の感度が更に低下する。画素112の感度を低下させる機能を追加することによって、ダイナミックレンジを広げることができる。第1変更信号WIDEが活性化される場合には、イネーブル信号ENWが活性化されてもよい。この場合、MOSトランジスタ246がソースフォロア動作をする。なお、感度変更部240のスイッチ241がオンしたとき、電荷再分配によって変換素子210の電荷蓄積部の電位が変化しうる。これにより、信号の一部が破壊されうる。
【0032】
上記のリセット信号Pres、イネーブル信号EN、クランプ信号PCL、イネーブル信号EN0、サンプルホールド信号TN、TS、行選択信号VSTは、行選択回路120によって制御される制御信号であり、
図2の行制御信号122に対応する。
【0033】
図3に示されたような構成の画素112では、サンプルホールドの際に変換素子210の電荷蓄積部等で信号の破壊が起こらない。即ち、
図3に示されたような構成の画素112では、放射線信号を非破壊で読み出すことができる。このような構成は、以下で説明するエネルギーサブトラクション法を適用した放射線撮像に有利である。
【0034】
以下、エネルギーサブトラクション法によって放射線画像を得る拡張モードについて説明する。拡張モードは、以下の3つのサブモード(拡張モード1、2、3)を含みうる。
【0035】
図4には、拡張モード1における放射線撮像装置1の動作が示されている。
図4において、横軸は時間である。「放射線エネルギー」は、放射線源400から放射され撮像部100に照射される放射線のエネルギーである。「PRES」は、リセット信号RPESである。「TS」は、サンプルホールド信号TSである。「DOUT」は、AD変換器170の出力である。放射線源400からの放射線の放射および撮像部100の動作の同期は、制御装置350によって制御されうる。撮像部100における動作制御は、タイミングジェネレータ130によってなされる。リセット信号PRESが活性化される期間にクランプ信号PCLも所定期間にわたって活性化されて、クランプ回路260にノイズレベルがクランプされる。
【0036】
図4に例示されるように、放射線源400から放射される放射線800のエネルギー(波長)は、放射線の放射期間において変化する。これは、放射線源400の管電圧の立ち上がり、および、立ち下がりが鈍っていることに起因しうる。そこで、放射線800が、立ち上がり期間における放射線801、安定期間における放射線802、および、立ち下がり期間における放射線803からなるものとして考える。放射線801のエネルギーE1、放射線802のエネルギーE2、放射線803のエネルギーE3は、互いに異なりうる。これを利用してエネルギーサブトラクションン法による放射線画像を得ることができる。
【0037】
この実施形態では、放射線800が照射される期間(第1期間TT)において、画素112の変換素子210がリセットされない(リセット信号Presが活性化されない)。よって、放射線800が照射される期間(第1期間TT)では、入射した放射線に対する電気信号(電荷)が変換素子210に蓄積され続ける。放射線800が照射される期間(第1期間TT)において、画素112の変換素子210がリセットされないことは、撮像に寄与しない放射線の照射を減らしつつ、より短時間でエネルギーサブトラクション法のための放射線画像を得るために有利である。
【0038】
放射線800の放射(撮像部100への照射)前に、リセット信号PRESが所定期間にわたって活性化され、これによって変換素子210がリセットされる。この際に、クランプ信号PCLも所定期間にわたって活性化されて、クランプ回路260にリセットレベル(ノイズレベル)がクランプされる。
【0039】
リセット信号PRESが所定期間にわたって活性化された後に、曝射制御装置300から放射線源400に対する曝射指令によって放射線源400から放射線が放射される。この動作は、一例において、次のようになされうる。まず、曝射制御装置300の曝射スイッチがオンされ、そのことが曝射制御装置300から制御装置350に通知され、これに応答して制御装置350から撮像部100に対して、撮像のための一連の動作(以下、撮像シーケンス)を開始するように指令が出される。撮像部100は、この指令に応答して撮像シーケンスの先頭の動作としてリセット信号PRESを所定期間にわたって活性化させる。次いで、制御装置350は、撮像部100が撮像シーケンスを開始したことを受けて、曝射制御装置300を介して放射線源400に対して、放射線の放射を開始するように指令を出す。これに応答して放射線源400が放射線の放射を開始する。
【0040】
リセット信号PRESが所定期間にわたって活性化されてから所定期間が経過した後に、サンプルホールド信号TNが所定期間にわたって活性化される。これによって、エネルギーE1の放射線801の照射を受けて画素アレイ110の画素112の変換素子210が発生した電気信号に応じた信号(E1)がサンプルホールド回路270によってサンプルホールドされる。
【0041】
サンプルホールド信号TNが所定期間にわたって活性されてから所定期間が経過した後に、サンプルホールド信号TSが所定期間にわたって活性される。これによって、エネルギーE1の放射線801およびエネルギーE2の放射線802の照射を受けて画素アレイ110の画素112の変換素子210が発生した電気信号に応じた信号(E1+E2)がサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされる。
【0042】
次いで、サンプルホールド回路270でサンプルホールドされた信号(E1)とサンプルホールド回路280でサンプルホールドされた信号(E1+E2)との差分に相当する信号が第1信号805として読出回路RCから出力される。なお、
図4において、”N”は、サンプルホールド回路270によってサンプルホールドされ、第1列信号線321に出力される信号を示し、”S”は、サンプルホールド回路280によってサンプルホールドされ、第2列信号線322に出力される信号を示す。
【0043】
次いで、サンプルホールド信号TSが所定期間にわたって活性されてから所定期間が経過した後(エネルギーE3の放射線803の照射(放射線800の照射)が終了した後)に、サンプルホールド信号TSが所定期間にわたって再び活性される。これによって、エネルギーE1、E2、E3の放射線801、802、803の照射を受けて画素アレイ110の画素112の変換素子210が発生した電気信号に応じた信号(E1+E2+E3)がサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされる。
【0044】
次いで、サンプルホールド回路270によってサンプルホールドされた信号(E1)とサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされた信号(E1+E2+E3)との差分に相当する信号が第2信号806として読出回路RCから出力される。
【0045】
次いで、リセット信号PRESが所定期間にわたって活性化され、更に、サンプルホールド信号TNが所定期間にわたって活性される。これによって、サンプルホールド回路270によってリセットレベル(0)がサンプルホールドされる。次いで、サンプルホールド回路270によってサンプルホールドされた信号(0)とサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされた信号(E1+E2+E3)との差分に相当する信号が第3信号807として読出回路RCから出力される。
【0046】
以上のような動作を複数回にわたって繰り返すことによって、複数フレームの放射線画像(即ち、動画)を得ることができる。
【0047】
信号処理部352は、以上のようにして、第1信号805(E2)、第2信号806(E2+E3)、第3信号807(E1+E2+E3)を得ることができる。信号処理部352は、第1信号805、第2信号806、第3信号807に基づいて、エネルギーE1の放射線801の照射量e1、エネルギーE2の放射線802の照射量e2、エネルギーE3の放射線803の照射量e3を得ることができる。具体的には、信号処理部352は、第1信号805(E2)と第2信号(E2+E3)との差分((E2+E3)−E2)を演算することによって、エネルギーE3の放射線803の照射量e3を得ることができる。また、信号処理部352は、第2信号806(E2+E3)と第3信号(E1+E2+E3)との差分((E1+E2+E3)−(E2+E3))を演算することによって、エネルギーE1の放射線801の照射量e1を得ることができる。また、第1信号805(E2)は、エネルギーE2の放射線802の照射量e2を示している。
【0048】
したがって、信号処理部352は、エネルギーE1の放射線801の照射量e1、エネルギーE2の放射線802の照射量e2、エネルギーE3の放射線803の照射量e3に基づいて、エネルギーサブトラクション法によって放射線画像を得ることができる。
【0049】
以下、信号処理部352で実行されうるエネルギーサブトラクション法による放射線画像の生成について説明する。
図5(a)には、
図4に示される動作を複数回(複数フレームにわたって実施した場合に放射線撮像装置1において得られたエネルギーE1、E2、E3に基づいて推定された放射線源400の管電圧の推定値(「推定管電圧」)の時間変化が示されている。エネルギーE1、E2、E3に対応する推定値は、E1、E2、E3として示されている。
図5(b)には、
図5(a)には、
図4に示される動作を複数回(複数フレームにわたって実施した場合に放射線撮像装置1において得られたエネルギーE1、E2、E3に基づいて推定された放射線の線量の推定値(「推定線量」)の時間変化が示されている。エネルギーE1、E2、E3に対応する推定値は、E1、E2、E3として示されている。
図5(a)、(b)から、フレーム間において、管電圧および放射線の線量が大きく変化しうることが分かる。
【0050】
この原因としては、曝射制御装置300から放射線源400に対する曝射指令の送信から放射線源400による放射線の放射の開始までの時間がばらつくことが考えられる。このばらつきによって、放射線800の照射が開始されてからサンプルホールド回路270がサンプルホールドを完了するまでの期間T1(
図4参照)がばらつきうる。また、放射線800の照射が開始されてからサンプルホールド回路280がサンプルホールドを完了するまでの期間(T1+T2)(
図4参照)もばらつきうる。結果として、第1信号805(E2)および第2信号806(E2+E3)の値がフレーム間でばらつくことになる。
【0051】
ここで、期間T1がばらついたとしても、それに応じて期間T2の開始時刻がずれるだけであって、期間T2の長さ自体はずれない。よって、期間T1がばらついたとしても、放射線撮像装置1によって検出されるエネルギーE2の放射線802の照射量e2の誤差は小さい。また、期間T1が長くなった場合は期間T3が短くなり、期間T1が短くなった場合は期間T3が長くなる。よって、期間T1がばらついたとしても、放射線撮像装置1によって検出されるエネルギーE1、E3の放射線802の照射量e1、e3の和の誤差は小さい。
【0052】
このことは、
図6(a)、(b)からも裏付けられる。
図6(a)には、エネルギーE2、および、エネルギーE1+E3に対応する管電圧の推定値が示されている。
図6(b)には、エネルギーE2、および、エネルギーE1+E3に対応する放射線の線量の推定値が示されている。
図6(a)、(b)から、エネルギーE2、および、エネルギーE1+E3については、放射線画像のフレーム間におけるばらつきが小さくなることが分かる。
【0053】
以上より、照射量e2の画像(第2画像)、および、照射量e1+e3の画像(第3画像)は、それぞれ、ばらつきが小さい画像であると言える。そこで、照射量e2の画像(第2画像)、および、照射量e1+e3の画像(第3画像)に基づいてエネルギーサブトラクション法によって新たな放射線画像を生成することが好ましい。ここで、照射量e1+e3の画像(第3画像)は、照射量e1+e2+e3の画像(第1画像=第3信号807)と照射量e2の画像(第2画像=第1信号805)との差分を演算することによって得ることができる。照射量e1+e2+e3の画像(第1画像=第3信号807)は、放射線800が照射される期間である第1期間TT(の全体)において複数の画素112の各々の変換素子210が発生した電気信号に応じた画像である。照射量e2の画像(第2画像=第1信号805)は、第1期間TTの開始後に開始し第1期間TTの終了前に終了する第2期間T2において複数の画素112の各々の変換素子210が発生した電気信号に応じた画像である。
【0054】
エネルギーサブトラクション法としては、種々の方法から選択される方法を採用することができる。例えば、第1エネルギーの放射線画像と第2エネルギーの放射線画像との差分を演算することによって骨画像と軟部組織画像とを得ることができる。また、第1エネルギーの放射線画像と第2エネルギーの放射線画像に基づいて非線形連立方程式を解くことによって骨画像と軟部組織画像とを生成してもよい。また、第1エネルギーの放射線画像と第2エネルギーの放射線画像とに基づいて造影剤画像と軟部組織画像とを得ることもできる。また、第1エネルギーの放射線画像と第2エネルギーの放射線画像とに基づいて電子密度画像と実効原子番号画像とを得ることもできる。
【0055】
上記の例では、放射線源400の管電圧の立ち上がり、立ち下がりが鈍っていることを利用して互いにエネルギーが異なる複数の画像を得て、該複数の画像に基づいて新たな放射線画像を形成する。互いにエネルギーが異なる複数の画像は、放射線源400の管電圧の波形を意図的に調整することによってもなされうる。あるいは、エネルギー帯域(波長帯域)が広い放射線を放射線源400から放射させ、複数のフィルタの切り替えによって放射線のエネルギーを変更してもよい。
【0056】
図7には、拡張モード2における放射線撮像装置1の動作が示されている。拡張モード1では、第2信号806(E2+E3)が読出回路RCから出力される。しかし、信号処理部352が第2信号806(E2+E3)を必要としない場合、第2信号806(E2+E3)を読出回路RCが出力しない方がフレームレートの向上等のために有利である。そこで、拡張モード2では、読出回路RCは、第1信号805(E2)および807(E1+E2+E3)を出力するが、第3信号第2信号806(E2+E3)をしない。
【0057】
以下、拡張モード2における放射線撮像装置1の動作を説明する。リセット信号PRESが所定期間にわたって活性化されてから所定期間が経過した後に、サンプルホールド信号TNが所定期間にわたって活性される。これによって、エネルギーE1の放射線801の照射を受けて画素アレイ110の画素112の変換素子210が発生した電気信号に応じた信号(E1)がサンプルホールド回路270によってサンプルホールドされる。
【0058】
サンプルホールド信号TNが所定期間にわたって活性されてから所定期間が経過した後に、サンプルホールド信号TSが所定期間にわたって活性される。これによって、エネルギーE1の放射線801およびエネルギーE2の放射線802の照射を受けて画素アレイ110の画素112の変換素子210が発生した電気信号に応じた信号(E1+E2)がサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされる。
【0059】
次いで、サンプルホールド回路270によってサンプルホールドされた信号(E1)とサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされた信号(E1+E2)との差分に相当する信号が第1信号805として読出回路RCから出力される。
【0060】
次いで、サンプルホールド信号TSが所定期間にわたって活性されてから所定期間が経過した後(エネルギーE3の放射線803の照射(放射線800の照射)が終了した後)に、サンプルホールド信号TSが所定期間にわたって再び活性される。これによって、エネルギーE1、E2、E3の放射線801、802、803の照射を受けて画素アレイ110の画素112の変換素子210が発生した電気信号に応じた信号(E1+E2+E3)がサンプルホールド回路280によってサンプルホールドされる。
【0061】
次いで、リセット信号PRESが所定期間にわたって活性化され、更に、サンプルホールド信号TNが所定期間にわたって活性される。これによって、サンプルホールド回路270によってリセットレベル(0)がサンプルホールドされる。次いで、サンプルホールド回路270でサンプルホールドされた信号(リセットレベル=0)とサンプルホールド回路280でサンプルホールドされた信号(E1+E2+E3)との差分に相当する信号が第3信号807として読出回路RCから出力される。
【0062】
以上のような動作を複数回にわたって繰り返すことによって、複数フレームの放射線画像(即ち、動画)を得ることができる。
【0063】
図8には、拡張モード3における放射線撮像装置1の動作が示されている。拡張モード3では、放射線撮像装置1に対する放射線の照射の開始を示す同期信号DETに基づいて第2期間T2が決定される。より具体的には、拡張モード3では、タイミングジェネレータ130は、同期信号DETに応答して、行選択回路120がサンプルホールド信号TN、TSを活性化するタイミングを制御し、これによって第2期間T2が決定される。
【0064】
図9(a)には、エネルギーE2、および、エネルギーE1+E3に対応する管電圧の推定値が示されている。
図9(b)には、エネルギーE2、および、エネルギーE1+E3に対応する放射線の線量の推定値が示されている。
図9(a)、(b)から、同期信号DETに基づいてサンプルホールドを制御することによって、エネルギーE2、および、エネルギーE1+E3について、放射線画像のフレーム間におけるばらつきが小さくなることが分かる。
【0065】
同期信号DETは、種々の方法によって生成されうる。例えば、放射線源400に管電流を測定する測定器を設けて、管電流が閾値を上回った場合に放射線の照射の開始を示す同期信号DETを活性化することができる。この場合、撮像部100は、同期信号DETを受信する。あるいは、撮像部100は、1又は複数の変換素子210から読出回路RCによって周期的に信号を読み出して、その信号に基づいて同期信号DETを生成することができる。あるいは、撮像部100に放射線の照射を検知するセンサを設けて、該センサの出力の出力に基づいて同期信号DETが生成されてもよい。
【0066】
拡張モード3では、曝射制御装置300から放射線源400に対する曝射指令の送信から放射線源400による放射線の放射の開始までの時間のばらつきに対して鈍感になり、より正確に放射線画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1:放射線撮像装置、100:撮像部、110:画素アレイ、350:制御装置、352:信号処理部、300:曝射制御装置、400:放射線源、RC:読出回路、112:画素