特許第6974951号(P6974951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974951折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974951
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/20 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   E04B1/20 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-38161(P2017-38161)
(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公開番号】特開2018-145595(P2018-145595A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 行孝
(72)【発明者】
【氏名】和泉 信之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊田 繁美
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】石岡 拓
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−105921(JP,A)
【文献】 特開昭63−035932(JP,A)
【文献】 特開昭64−066328(JP,A)
【文献】 特開平08−120770(JP,A)
【文献】 特開平04−020659(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0108710(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/20
E04C 3/20
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の梁における鉄筋の配筋において、
上下主筋の二段筋位置に配筋される上部鉄筋と下部鉄筋とを中間の折曲げ部を介してそれぞれ一体にしてなる追加鉄筋を形成し、
前記追加鉄筋を前記梁の中央位置を挟んで左右両側にそれぞれ別に配筋し、
前記追加鉄筋の配筋状態が、上下対称にして配設され、且つ、前後方向に互い違いにして並設された配筋状態であり、
前記折曲げ部の折曲げ角度は、降伏ヒンジ発生位置が所定の位置に設定されるよう調整される構成であり、
前記追加鉄筋の先端部が、梁中央位置に向かって間隔を置いて対向配置されており、
前記先端部が継ぎ手部材のない直線定着されており、
前記先端部と反対側の端部に設けた定着部材が柱内の前記梁との接合部に設けられていること
を特徴とする梁の降伏ヒンジ位置の制御方法。
【請求項2】
柱間の梁における中央位置から柱・梁接合部の間で、上下主筋の二段筋位置に配筋される上部鉄筋と下部鉄筋とを中間の折曲げ部を介してそれぞれ一体にしてなる追加鉄筋が、上下対称にして配筋され、且つ、前後方向に互い違いにして並設されてなり、
前記折曲げ部の折曲げ角度は、降伏ヒンジ発生位置が所定の位置に設定されるよう調整されてなる構成であり、
前記追加鉄筋の先端部が、梁中央位置に向かって間隔を置いて対向配置されており、
前記先端部が継ぎ手部材のない直線定着されており、
前記先端部と反対側の端部に設けた定着部材が柱内の前記梁との接合部に設けられていること
を特徴とする梁の降伏ヒンジ位置の制御構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の梁部材の地震時に発生する降伏ヒンジを、柱面から離した位置に発生するよう制御し、早期にエネルギー吸収させることで、合理的な設計を行う手法が知られている。
【0003】
そこで、従来では、図4に示すように、鉄筋を主筋に対して平行に追加して、降伏ヒンジを柱との接合面から離した位置に発生するよう制御する方法が知られている。なお、降伏ヒンジの発生位置に関する先行文献として特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−69926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、降伏ヒンジ位置の制御方法では、降伏ヒンジ位置で耐力が急激に変化するので、損傷が降伏ヒンジ位置に集中しやすいことが課題である。そこで、本発明に係る折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、鉄筋コンクリート造の梁における鉄筋の配筋において、上下主筋の二段筋位置に配筋される上部鉄筋と下部鉄筋とを中間の折曲げ部を介してそれぞれ一体にしてなる追加鉄筋を形成し、前記追加鉄筋を前記梁の中央位置を挟んで左右両側にそれぞれ別に配筋し、前記追加鉄筋の配筋状態が、上下対称にして配設され、且つ、前後方向に互い違いにして並設された配筋状態であり、前記折曲げ部の折曲げ角度は、降伏ヒンジ発生位置が所定の位置に設定されるよう調整される構成であり、前記追加鉄筋の先端部が、梁中央位置に向かって間隔を置いて対向配置されており、前記先端部が継ぎ手部材のない直線定着されており、前記先端部と反対側の端部に設けた定着部材が柱内の前記梁との接合部に設けられていることである。
【0009】
本発明に係る梁の降伏ヒンジ位置の制御構造の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、柱間の梁における中央位置から柱・梁接合部の間で、上下主筋の二段筋位置に配筋される上部鉄筋と下部鉄筋とを中間の折曲げ部を介してそれぞれ一体にしてなる追加鉄筋が、上下対称にして配筋され、且つ、前後方向に互い違いにして並設されてなり、前記折曲げ部の折曲げ角度は、降伏ヒンジ発生位置が所定の位置に設定されるよう調整されてなる構成であり、前記追加鉄筋の先端部が、梁中央位置に向かって間隔を置いて対向配置されており、前記先端部が継ぎ手部材のない直線定着されており、前記先端部と反対側の端部に設けた定着部材が柱内の前記梁との接合部に設けられていることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造によれば、降伏ヒンジ発生位置近傍の部材耐力の変化を緩やかにして、地震時における損傷を分散させることができる。降伏ヒンジ発生位置は、梁主筋の折り曲げ角度の調整により、比較的自由に設定することが可能である。また、梁の剪断破壊および付着破壊の緩和にも効果を発揮すると言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-A】本発明に係る追加鉄筋1による降伏ヒンジ位置の制御方法を示す断面図(A)、その一部の拡大断面図(B)である。
図1-B】同追加鉄筋1を、上下対称にして示す正面図である。
図2】同本発明の他の実施例に係り、追加鉄筋の先端に定着部材を設けない実施例を示す断面図である。
図3】同本発明の更に他の実施例に係り、追加鉄筋の交差部にスタブが固着された実施例を示す一部拡大正面図である。
図4】従来例に係る、主筋に対して平行に配筋される従来の追加鉄筋5によるヒンジリロケーションの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る梁の降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造は、図1に示すように、折曲げ鉄筋を追加鉄筋として配筋することで、柱面から離すように、降伏発生ヒンジ位置を調整するものである。
【実施例1】
【0014】
本発明に係る梁の降伏ヒンジ位置の制御方法は、図1−A、図1−Bに示すように、鉄筋コンクリート造の梁における鉄筋の配筋において、まず、追加する鉄筋である、上下主筋の二段筋位置に配筋される上部鉄筋1aと下部鉄筋1bとを中間の曲げ部である折曲げ部1cを介してそれぞれ一体にしてなる追加鉄筋1を形成する。
【0015】
前記追加鉄筋1は、水平に配置される上部鉄筋1a、下部鉄筋1bに対して、折曲げ部1cの曲げ角度を調整し、降伏ヒンジ発生位置(図中の符号▽で示す)を設計時に決定する。この折曲げ部1cがあることで、前記降伏ヒンジ発生位置を調整するとともに、部材耐力の変化を緩やかにして、地震時における損傷を分散させることができる。
【0016】
前記折曲げ部1cにより、梁2内に生じるせん断力の一部を、追加鉄筋1で負担することが可能となる。また、追加鉄筋1の付着性能が向上して、主筋の付着力の緩和が見込める。
【0017】
図1−A(A)に示すように、前記追加鉄筋1を前記梁2の中央位置aを挟んで左右両側にそれぞれ別に配筋される。左右両側の追加鉄筋1同士は、互いに連結されていない。追加鉄筋1の端部1eにある定着部材1dは、例えば、異形筋用定着ナット(モルタル充填タイプ)等であって、コンクリート中に埋設される。
【0018】
前記追加鉄筋1の配筋状態が、梁2内に上下対称にして配設され、且つ、前後方向に互い違いにして並設された配筋状態である。このようにして、本発明に係る梁の降伏ヒンジ位置の調整構造ができる。
【0019】
このように、折曲げ部1cを有する追加鉄筋1を上記のように配筋することで、梁2の降伏ヒンジ位置(符号▽位置)を調整する、降伏ヒンジ位置の調整方法となる。
【実施例2】
【0020】
図2に示すように、本発明に係る追加鉄筋1による、梁2の降伏ヒンジ位置調整方法とその構造において、図2に示すように、前記追加鉄筋1の先端部1eが、梁中央位置aに向かって間隔を置いて対向配置されており、前記先端部1eが継ぎ手部材の無い状態にして、若しくは、定着部材1dの無い状態にして、異形鉄筋そのままで直線定着されていることである。尚、柱3内の梁2との接合部には、前記定着部材1dが設けられている。
【0021】
これにより、前記追加鉄筋1の端部1eに、定着部材1dを挿着してモルタルをその内部に充填する必要もなくなり、部材費のコスト低減、工期短縮となる。
【実施例3】
【0022】
更に、図3に示すように、上下対称に配筋された追加鉄筋1の折曲げ部1c,1cによる交差部に、鋼製のスタブ4が溶接手段により固着されている構造とするものである。これにより、折曲げ部1c,1cの交差部において、平面的な納まりの向上が見込めるものである。
【0023】
以上のようにして、本発明に係る梁の降伏ヒンジ位置の調整方法とその調整構造により、柱間の梁における中央位置から柱・梁接合部の間で、上下主筋の二段筋位置に配筋される上部鉄筋と下部鉄筋とを中間の折曲げ部を介してそれぞれ一体にしてなる追加鉄筋が、上下対称にして配筋され、且つ、前後方向に互い違いにして並設されてなることで、降伏ヒンジ位置の調整が容易になるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る折曲げ鉄筋による降伏ヒンジ位置の制御方法とその制御構造は、鉄筋コンクリート造の柱・梁の接合部に対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 追加鉄筋、 1a 上部鉄筋、
1b 下部鉄筋、 1c 折曲げ部、
1d 定着部材、 1e 端部、
2 梁、
3 柱、
4 鋼製のスタブ、
5 従来の追加鉄筋。
図1-A】
図1-B】
図2
図3
図4