(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態で説明するアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、典型的には一つのレーザ光をセンター出力光とサテライト出力光とに適宜に分離して出力する構成の溶接装置を利用することができる。センター出力光は、レーザ溶接時に、溶接対象物であるアルミ材にキーホールを形成して深い箇所まで溶け込ますことで強固に溶接することに寄与する。
【0015】
また、サテライト出力光は、レーザ溶接時に、溶接対象物であるアルミ材に形成された当該キーホールの周囲を加熱して、当該キーホールの周囲に当該キーホールよりは比較的浅く、かつ幅広(より大面積)の溶融池を形成することに寄与する。
【0016】
サテライト出力光は、センター出力光と同一のレーザ発振器から出力される同一レーザ光を光ファイバーや回折素子、または非球面レンズ等により、任意の強度比に分離して、出力するものとすることができる。例えば、光ファイバーのコア形状を同軸2重コア構造とすることで、センター出力光とサテライト出力光とを分離するものとしてもよい。このような構成は、特表2008−511148に開示されるように既に公知であることから、ここでは詳述しない。
【0017】
また、サテライト出力光は、センター出力光で形成されるキーホールの周囲に熱を加えて比較的浅く広い溶融池を形成する機能を有するため、当該機能を他の加熱素子(例えばハロゲン光による加熱や他の熱源ユニット等)で代替するものとしてもよいし、溶接対象物であるアルミ材の形状や構造を工夫して、センター出力光により獲得した熱が速やかに周囲に広がって浅く広い溶融池がキーホールの周囲に形成されるように構成してもよい。
【0018】
さらに、レーザ溶接後のアルミ材等の断面において、形成される溶接ナゲットのキーホール上部のテーパ部広がり角度が45°以下となるように、レーザ光の出力(エネルギー密度)、及びセンター出力光とサテライト出力光との出力比、及び溶接速度(またはワーク速度)を調整することが好ましい。
【0019】
このように構成することで、スパッタの発生が極めて低減されることを本発明者は見出した。具体的には、本発明者が、慎重にレーザ溶接工程を観察し、溶接実験と考察を重ねて得た知見によれば、スパッタの発生は、レーザ溶接時に形成される深くて狭いキーホール溶融池から突沸するように飛散するプルーム状の飛散物に起因するものであることが判明した。
【0020】
すなわち、レーザ溶接時のキーホールでは相当のアルミニウム蒸気(ガス)もまた発生するものであるが、当該キーホールは比較的狭い範囲で深い深度まで溶融することから、当該アルミニウム蒸気が、溶融池(典型的にはキーホール)の内部に閉塞されることにより、行き場を失ったアルミニウム蒸気が突沸するように飛散することにより発生するものである。理解の容易のために例えて表現すれば、ちょうど火山の水蒸気爆発のような様相であるものと思われる。
【0021】
キーホール内部や深部すなわち狭くて深い溶融池内で発生したアルミニウム蒸気は、溶融池表面から外部に放散されようとしても、その上面には溶融池の液体アルミニウムが覆いかぶさることとなり、液体アルミニウム等に囲まれて閉塞されてしまうものとなる。発生したアルミニウム蒸気は、液体アルミニウムを押しのけて表面から放散されようとするある一定程度の力が働くものと考えられる。
【0022】
しかし、当該キーホールの溶融池は深くて狭いので、押しのけられた液体アルミニウムが退避する水平方向のスペースが極めて限られており、このため液体アルミニウムが上方に盛り上がる等により垂直方向に退避することとならざるを得ない。しかし、垂直方向に盛り上がった液体アルミニウムはアルミニウム蒸気が放散される前に次の瞬間には、上方に押しのけられた反動で重力により当該アルミニウム蒸気に覆いかぶさるものとなり、瞬時に閉塞状態が形成される。そして、突沸するように爆発的にアルミニウム蒸気とその周囲の液体アルミニウムが飛ばされるものとなりスパッタが発生する。
【0023】
図1は、本発明者による観察結果から得た知見に基づいた、スパッタが発生する場合の従来のキーホール溶接と本発明によるスパッタが発生しない場合のキーホール溶接とを比較して説明する模式図である。
図1(a)が従来のレーザ溶接を説明し、
図1(b)が本発明によるレーザ溶接を説明している。
【0024】
図1(a)に示すように、従来、円形のレーザ溶接進行に伴い、溶融池の表面に金属蒸気が放出されるための開口孔が形成されたり閉口されたりする現象が、ほぼ交互不規則に繰り返されるものとなる。すなわち、レーザ溶接時に形成されるキーホールは、周辺の溶融金属の揺れにより、不安定に開閉を繰り返すこととなり、閉口した場合に内部の金属蒸気圧力により、突沸するように周囲の溶融金属を吹き飛ばしてスパッタを生じるものとなる。
【0025】
一方、
図1(b)に示すように、本発明によるレーザ溶接方法によれば、円形のレーザ溶接進行の間、常にキーホールは開口が安定的に維持されるものとなり、アルミニウム蒸気が溶融池の溶融金属を巻き込むことなく、スムースに放出されるものとなる。
図1では、円形形状にレーザ溶接を遂行する場合について説明しているが、溶接進行の形状は円形に限定されるものではない。
【0026】
このため、スパッタの発生を抑制するためには、キーホールで発生した相当量のアルミニウム蒸気がナゲット内部に閉塞されることなく、スムースに溶融池外部に排出されるようなガス排気構成を、レーザ溶接工程の間形成できるものとし、かつこれをレーザ溶接工程の間維持することが重要となる。
【0027】
一方、アルミニウム材にキーホールを形成してキーホール溶接を遂行するためには、比較的高エネルギー密度を要することから、レーザ光ビームを狭い範囲(例えば直径400μm程度)に集中させてアルミニウム材に照射されるものとなる。このためキーホール自体の溶融池は比較的小面積で狭く(例えば直径1mm以下)、かつ急峻なテーパ角度を有して急激に深さ方向に深くなるような溶融池(及びナゲット)が形成される。
【0028】
このような形状を呈するキーホールの溶接池は、その表面積及び幅が狭いため、上述のようにレーザ溶接の間、常に溶融アルミニウムで閉塞された状態が維持されてしまい、キーホール内で発生したアルミニウム蒸気が、溶融池表面からキーホール外部へと放出する経路が断たれてしまうこととなる。そして、閉塞されたアルミニウム蒸気は、熱による体積膨張もあって、爆発的に突沸して周囲に飛散して結果的にスパッタを発生させるものとなる。
【0029】
そこで、本実施形態によるアルミ材のレーザキーホール溶接方法では、キーホールを形成するためのセンター出力光の周囲のアルミ材を適宜加熱することで、レーザ溶接時の溶融池の表面積を広げ、溶融池の開口(溶融池直径または/および幅)を、より大きく設けるように維持しながらレーザ溶接を遂行する方法を提案する。
【0030】
これにより、溶融池の表面における溶融アルミニウムの退避場所が水平方向に広がるものとなり、キーホールに対応する溶融池表面にアルミニウム蒸気を外部に放出するための開口孔が形成され易くかつ維持され易い構成となる。そして、レーザ溶接の間、当該溶融池表面に、常に形成される開口孔からアルミニウム蒸気が常に外部にスムースに放出されるものとなり、突沸的なスパッタ発生が抑制されるものとなる。
【0031】
図2は、本発明のレーザ溶接方法を適用可能なキャパシタ部品(セル)のアルミニウム電極部位について説明する図である。
図2に示すように、二つのキャパシタの封口板1000の上面にはそれぞれ第1端子1010,1030と、第2端子1020,1040が配設されている。一方のキャパシタの封口板1000の第2端子1020と、他方のキャパシタの封口板1000の第1端子1030と、を連結用バスバー1050で連結する場合に、レーザキーホール溶接が適用される。
【0032】
なお、
図2においては、キャパシタの封口板1000を二つ直列接続する例を示しているが、所望の要求特性に対応して5〜6個並列または直列に連結しても良いし、任意の数だけ接続することが可能である。
【0033】
また、
図3(a)は連結用バスバーのレーザ痕を観察した状態を説明する平面図であり、
図3(b)は
図3(a)に示すレーザ溶接痕を破線部分で切断したA−A断面のナゲット形状を示す図である。
図3(b)において、レーザ溶接は紙面手前側から紙面裏側方向に進行しているものである。
【0034】
図3(b)に示されているように、スパッタが抑制されたレーザキーホール溶接においては、断面観察したナゲット構造において、キーホールの上方には、ワインカップ状にさらなる広がり角を有するテーパ部が形成される。これにより、
図3(b)に示すように、略鉛直下方に形成されるキーホールと、ワインカップ状にさらなる広がり角を有するテーパ部と、の境界に屈曲部を備える構造を呈する。
【0035】
図4は、レーザキーホール溶接後のアルミニウム素材の断面のナゲット形状を概念的に説明する模式図である。
図4(a)が溶接対象となる二つのアルミニウム素材8100,8200を突き合わせ配置する溶接準備状態を説明する図であり、
図4(b)が形成されるキーホール8500とその上方の溶融池の形状の関係を説明する概念図である。
【0036】
図4(a)に示すアルミニウム素材8100,8200は、いずれもいわゆるA1000系のアルミニウム素材であって、典型的にはA1050であることが好ましい。純度の高いアルミニウム素材は、本発明の作用と効果とを比較的容易かつ忠実に発現することが可能であるものと思われる。
【0037】
図4(a)に示すアルミニウム素材8100,8200の紙面上方からレーザビーム8300を照射し、レーザ溶接を遂行する状態を説明する
図4(b)では、溶接進行方向は、紙面手前から紙面裏側方向であるか、紙面裏側から紙面手前方向であるかである。キーホール8500の直径は、基本的には照射ビーム径とほぼ同等である。
【0038】
図4(b)に示す溶接ナゲット8600の形状では、深くて狭いキーホール8500の上方にワインカップ状のテーパ拡がり部8400が存在する。このようなナゲット形状を呈するようにレーザ溶接工程を遂行すると、テーパ拡がり部8400が十分に広く設けられる一定条件の下で、溶融池内の溶融アルミニウムの移動自由度が大きくなり移動抵抗も低減されるため、比較的容易にガス抜き孔が形成・維持されてスパッタが抑制されるものとなる。
【0039】
また、
図5は、本発明のスパッタ低減効果を奏するような溶接ナゲットの断面形状についてさらに詳しく説明する模式図である。溶接ナゲットの形状それ自体は、レーザ溶接時にその場観察することは困難であることから、
図5に説明するような溶接ナゲット形状となるようにレーザキーホール溶接を遂行できるよう溶接材料や溶接条件等を適宜設定・調整することにより、現実にスパッタが低減されたレーザ溶接を遂行可能となる。
【0040】
図5において、Aはナゲット底部中心から外側に延伸された直線が最初に側壁と接する第一屈曲点を示し、BはAからナゲットの側壁に接しながら外側上方に延伸された直線が側壁から離脱する第二屈曲点であり、CはAからナゲット中心線に下した垂線の足である。
【0041】
また、
図5において、Dは直線CAを外側に延長した直線上の任意の点であり、Eはナゲットの最上面の最外周の点であって溶融池の表面の外縁に対応する点である。また、FはAからナゲットの最上面に垂直に下した垂線の足であり、Gは溶接ナゲットの最上面と底部との間隔であって、溶融溶け込み深さを示す値であり、HはG/2の深さにおけるナゲットの幅を示す値である。また、IはEF間の直線距離を示すものであって、上面のナゲット幅の半分からHの半分の幅を引いた幅である。また、θは直線ABと直接CDとのなす鋭角を示すものである。そして、スパッタが抑制される効果を奏する溶接ナゲット形状の条件としては、θが45°以下であること(式1)または/及びI/Hが0.27以上であること(式2)を充足することが必要である。
【0042】
図6は、
図5に示す(式1)及び(式2)を導出するに至った根拠を示すグラフ化したデータを説明する図である。
図6(a)がスパッタ発生レベルとθとの関係性を示すグラフであり、
図6(b)がスパッタ発生レベルとI/Hとの関係性を示す図である。
図6(a)から理解できるように、θが45°以下となるようにすれば溶接時のスパッタは明らかに低減されるものとなる。また、
図6(b)から理解できるように、I/Hが0.27以上となるようにすれば溶接時のスパッタは明らかに低減されるものとなる。
【0043】
図7は、
図6に示すようなスパッタ抑制のメカニズムについて推定したスパッタ抑制機構を従来との対比により説明する図である。
図7(a)が従来技術によるスパッタ発生を説明し、
図7(b)が本発明によるスパッタ抑制を説明する図である。
図7に説明するメカニズムの是非については今後さらなる検証が待たれるものではあるが、現時点で発明者は
図7に示す機構によるものと推察しているため、ひとまずここでその機構について
図7を用いて説明するものとする。
【0044】
図7(a)に示す従来技術によるスパッタ発生では、溶融金属の対流は内部から外部に発生するが温度勾配が一定ではないため、逆流する場合も生じる。これにより、キーホールの開口部が溶融金属により閉塞される。閉塞されたキーホール内部の蒸気ガスが、閉塞している溶融金属を吹き飛ばして外部に放出される。吹き飛ばされた溶融金属がスパッタとなる。大凡上述のようなメカニズムが推測されるが、
図7(a)の模式図からも、キーホール上部は溶融金属で閉塞され易い構造となっており、開口孔を維持するため溶融金属を退避させることが困難であることが理解できる。
【0045】
また、
図7(b)に示す本発明によるスパッタの抑制方法では、キーホール周囲の表面近傍に加熱により拡幅された溶融領域が形成されるため、上部から観察した場合に溶融池の表面積が増大されるものとなる。このため、
図7(b)に図示するように開口部が大きくとれ、ガス抜きの開口孔の確保が容易となる。これにより、溶融領域の外縁部を拡幅することにより、温度勾配(内側が高く外側が低い)が安定するため、溶融金属は内部から外部へ常時対流する。加熱により高温化した溶融金属は粘度が低下するため対流し易くなる。したがって、キーホールの最上面に開口部が溶融金属に覆われることなく確保し易くなり、キーホール内のアルミニウム蒸気は常に開口孔から放出されるものとなり、スパッタが抑制される。
【0046】
本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、電子部品に対してレーザ光を照射して電子部品を構成するアルミ材要素を溶接するアルミ材のレーザキーホール溶接方法であって、レーザ光は、センター出力光と、センター出力光の周囲に形成されたサテライト出力光と、で構成されるビームプロファイルを有し、形成される溶接ナゲットの上部のテーパ部広がり角度が45°以下であることを特徴とする。
【0047】
これにより、
図6(a)に示すようにスパッタの発生を安定的に抑制して確実な電気的接続を確保しつつ、かつ、機械的にも強固な接続を得る、アルミ材のレーザキーホール溶接方法を提供できるものとなる。また、センター出力光と、センター出力光の周囲に形成されたサテライト出力光とは、同一のレーザ発振器から出力された一つのレーザ光を、同軸の二つの導波路を有する光ファイバーケーブルを用いることで分離してもよい。さらに、センター出力光の強度と、サテライト出力光の強度とは、集光レンズの調整等により強度比を調整するものとしてもよい。さらには、各光出力を各々異なる光源から取得して照射するものとしてもよい。
【0048】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、好ましくは溶接ナゲットの表面の幅の半値(ES)と溶接ナゲット全体の深さ(G)の半分(G/2)における溶接ナゲットの幅(H)の半値(H/2)との差(I)と、前記溶接ナゲットの幅(H)と、の比(I/H)が、0.27以上であることを特徴とする。
【0049】
これにより、
図6(b)に示すように、スパッタが明らかに低減されたレーザキーホール溶接を遂行することが可能となる。
図5に示すように、レーザキーホール溶接時に形成されるキーホールと溶融池とは、その後の冷却により固化されて溶接ナゲットを形成する。本件発明者の詳細な検討により、溶接ナゲットの径を含む形状とスパッタ発生との間には密接不可分な関係性を有することが判明した。得られた知見によれば、溶接ナゲットの表面の幅の半値(ES)と溶接ナゲット全体の深さ(G)の半分(G/2)における溶接ナゲットの幅(H)の半値(H/2)との差(I)が大きいほど、すなわち、溶融池表面の幅が大きいほど、スパッタは抑制されるものとなる。
【0050】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、好ましくはアルミ材が、AL成分が主体であるA1000系(典型的には99.5%純アルミのA1050)であることを特徴とする。
【0051】
レーザキーホール溶接の対象となる素材は、比較的純度の高いアルミニウム素材の電極溶接において、特に本発明のスパッタ抑制効果が顕著であることが見出されている。この原因として、アルミニウムの熱伝導性の高さ及び溶融金属の粘性の低さまたはその材料特性に依存するものである可能性も存在するが、確かな原因は現時点では判明していない。また、A1050を用いたコンデンサ電極のレーザ溶接においては、極めて良好なスパッタ抑制効果が確認されている。
【0052】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、センター出力光は直径100乃至500μmで500乃至2000W出力であり、サテライト出力光は直径200乃至800μmで1000乃至3000W出力であることを特徴とする。
【0053】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、レーザキーホール溶接の溶接速度は、1乃至10m/minであることを特徴とする。
【0054】
溶接速度が大きすぎれば、溶接に必要十分な熱エネルギーを付与できず、キーホールや溶融池の形成が十分ではなく、溶接不良やスパッタの増大を招来することとなる。一方、溶接速度が小さすぎれば、付与する熱エネルギーが大きすぎることとなり、対象物に対して必要な溶接限度を超えてダメージを与え兼ねないものとなる。このため、レーザ出力との兼ね合いではあるが、典型例としては1乃至10m/minの速度であることが最も好ましいものと考えられる。
【0055】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、サテライト出力光が、センター出力光の周囲に、センター出力光の中心に対して軸対象に形成されることを特徴とする。
【0056】
これにより、センター出力光の周囲に対して均一に熱を加えることができ、センター出力光の周囲に全体としてバランスのとれた溶融池を形成することが可能となる。センター出力光が照射される箇所にキーホールが形成されることから、キーホールの周囲にバランス良く溶融池を形成し、キーホール内でアルミニウム蒸気が発生した場合に、キーホール直上の溶融アルミニウムが回避して蒸気放出孔を容易に形成し、維持できるものとなる。ここで、
図8は、サテライト出力光等による周辺加熱のパターンバリエーションを例示する説明図である。
図8(a)に示すように、サテライト出力光がセンター出力光の周囲にリング状に配置されていてもよく、種々のバリエーションが考えられるが、
図8に示す加熱形状に限定されるものではない。
【0057】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、サテライト出力光は、センター出力光の周囲に、複数のドット形状で形成されることを特徴とする。
【0058】
典型的には、
図8(b)に示すパターンの照射光等形状であるが、これに限定されるものではなく、個々のドットの形状、大きさ、全体のドット配置パターン、個数、位置などは、被溶接アルミニウムの特性やレーザ溶接特性及び要求品質特性等に合わせて任意・最適のものとすることが可能である。このようなドットの出力パターンは、回折素子を用いて適宜調整可能である。
【0059】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、サテライト出力光が、センター出力光の周囲に、複数の矩形形状で形成されることを特徴とする。
【0060】
典型的には、
図8(c)に示すパターンの照射光等形状であるが、これに限定されるものではなく、個々の矩形の形状、大きさ、長さ、全体の配置パターン、個数及びその位置は、被溶接アルミニウムの特性等に合わせて任意・最適のものとすることが可能である。
【0061】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、サテライト出力光は、センター出力光の周囲に、放射状に形成されることを特徴とする。
【0062】
典型的には、
図8(d)に示すパターンの照射光等形状であるが、これに限定されるものではなく、個々の放射形状や大きさ、長さ、全体の配置パターン、個数及びその位置は、被溶接アルミニウムの特性等に合わせて任意・最適のものとすることが可能である。
【0063】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、センター出力光とサテライト出力光とは、非球面レンズまたは回折素子(DOE)により形成されることを特徴とする。
【0064】
直線偏光を含むレーザ光を集光または発散させるレンズと、レンズを経由したレーザ光の偏光方向を連続的に任意に変更する1/2波長板と、1/2波長板を経由したレーザ光を二つ以上に分割する複屈折素子とを備える光学系により実現してもよい。このような光学系では、典型的には複屈折素子を回転させたりその厚さを変更したりすることで、照射パターンを任意に変更することが可能である。また、偏光手段は、所望の偏光効果が発現されるように、任意に構成してもよい。
【0065】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、サテライト出力光に代えて、レーザ光を除く他の熱源によりセンター出力光の周囲のアルミ材を加熱するか、または、センター出力光により獲得した熱が迅速に周囲に拡散されるようなアルミ材の形状とすることを特徴とする。
【0066】
上述のように、レーザ溶接時にキーホール周囲に形成される溶融池の表面積がより増大されるように、その周囲を加熱することが好ましい。このような加熱の方法・手段として、レーザ光(すなわちサテライト出力光)により加熱することも可能であるし、他の光源としてハロゲンランプや赤外線ランプを用いたり、その他の任意の加熱素子を用いることも可能である。サテライト出力光を用いる場合でも、センター出力光と同一レーザ発振器からの同一出力光に限定されるものではなく、別途のレーザ発振器から得られる光を用いてもよい。さらに、センター出力光による熱が迅速にその周囲に拡散されるようなアルミニウム形状・厚さとしてもよく、それらを適宜組み合わせて併用してもよい。
【0067】
また、本実施形態のアルミ材のレーザキーホール溶接方法は、さらに好ましくは、レーザ溶接の間、溶融池の表面は、発生したアルミニウム蒸気が溶接ナゲット内に閉塞されることのないように、少なくともその一部が常に開状態であることを特徴とする。
【0068】
このような溶接方法とすることにより、発生したアルミニウムガスが速やかにかつスムースに、溶融池表面の開口孔から放出されるものとなるので、爆発的な突沸によるスパッタの発生は大きく抑制されるものとなる。その抑制メカニズムについては、本発明者による慎重な実験と観察により見出されたものであり、
図1、
図7等に説明している。
【0069】
また、本実施形態の溶接物の作成方法は、レーザキーホール溶接による溶接物の作成方法であって、溶接により形成される溶接ナゲットにおいて、キーホールに対応するナゲット直上の広がりテーパ角度(θ)が45°以下であることを特徴とする。
【0070】
これにより、キーホールの上方において溶融池が大きく広がるものとなるので、溶融アルミニウムの回避場所が大きくなって回避し易くなり、ガス抜きの開口孔が容易に形成・維持されて、スパッタが抑制される。
図6(a)に示すように、45°以下では、明確なスパッタ抑制効果が観察された。なお、レーザ溶接時に形成されるキーホール及び溶接池の形状や大きさは、その後の断面観察によりナゲット形状として確認できるので、溶接時にスパッタが十分に抑制されていたか否かは、後日ナゲット形状から判断可能である。
【0071】
また、本実施形態の溶接物の作成方法は、好ましくは溶接ナゲットの表面の幅の半値(ES)と溶接ナゲット全体の深さ(G)の半分(G/2)における溶接ナゲットの幅(H)の半値(H/2)との差(I)と、前記溶接ナゲットの幅(H)と、の比(I/H)が、0.27以上であることを特徴とする。
【0072】
これにより、キーホールの上方において溶融池が大きく広がるものとなるので、溶融アルミニウムの回避場所が大きくなって回避し易くなり、ガス抜きの開口孔が容易に形成・維持されて、スパッタが抑制される。
図6(b)に示すように、(I/H)が、0.27以上では、明確なスパッタ抑制効果が観察された。
【0073】
本発明の電子部品用レーザ溶接方法は、上述の実施形態で説明した構成やレーザ溶接方法に限定されるものではなく、当業者に自明な範囲でかつ本発明の技術思想の範囲内で適宜その構成を変更し溶接方法を変更することができる。