特許第6974961号(P6974961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974961
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】トルクリミッタおよび駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20211118BHJP
   F16H 35/10 20060101ALI20211118BHJP
   F16D 43/21 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   F16D7/02 A
   F16H35/10 H
   F16D43/21
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-101017(P2017-101017)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-194157(P2018-194157A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】舟杉 征真
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 滋
(72)【発明者】
【氏名】小池 信二
(72)【発明者】
【氏名】赤間 有祐
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−095322(JP,A)
【文献】 特開昭52−053331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02
F16H 35/10
F16D 43/21
A47K 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって回転する第1回転体と、
前記第1回転体に係止された第1摩擦体と、
前記第1摩擦体に重ねて配置され、前記第1摩擦体との間の摩擦力によって前記第1摩擦体の回転に伴って回転する第2摩擦体と、
前記第2摩擦体に係止された第2回転体と、
前記第1摩擦体および前記第2摩擦体を、前記第1摩擦体と前記第2摩擦体の積層方向に付勢する少なくとも1つの皿ばねと、
前記皿ばねを圧縮し、前記第1回転体と隣接して取り付けられた固定部材と、を備え、
前記第1回転体は、その回転軸の方向に形成された有底の孔と、前記孔が形成された前記第1回転体の内周面の開口側に形成された第1ねじ部とを有し、
前記固定部材は、当該固定部材の外周面と前記第1回転体の外周面とが面一であり、前記第1回転体の前記第1ねじ部に対応する第2ねじ部と、前記固定部材の回転軸を通って形成された貫通孔とを有し、前記第2回転体が前記貫通孔に挿通して当該固定部材と接触されることのない状態で前記皿ばねを前記第1回転体に固定する
ことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項2】
請求項に記載のトルクリミッタにおいて、
前記第1回転体と前記第2回転体とは、同一の回転軸を有し、
前記第1摩擦体と前記第2摩擦体とは、前記回転軸の前記第1回転体と前記第2回転体との間に積層され、
前記皿ばねは、前記第1回転体と同軸に、前記第1回転体と接触して配置され、
前記固定部材は、前記皿ばねを前記第1回転体に押し付けて固定する
ことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項3】
請求項に記載のトルクリミッタにおいて、
記第1摩擦体および前記第2摩擦体は、環状であって、前記第1回転体の前記孔に、前記第1回転体の回転軸と同軸に配置され、
前記皿ばねは、前記第1回転体の前記孔において、前記第1回転体の回転軸と同軸に、前記第1摩擦体および前記第2摩擦体の少なくとも一方と接触して配置され、
記固定部材は、前記皿ばね、前記第1摩擦体、および前記第2摩擦体を前記第1回転体の前記孔の底面に押し付けた状態で、前記第2ねじ部と前記第1回転体の前記第1ねじ部とが螺合されて、前記第1回転体に固定され、
前記第2回転体は、前記固定部材の前記貫通孔と、環状の前記第1摩擦体および前記第2摩擦体の中空部とに挿通され、前記固定部材に接触していない
ことを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載のトルクリミッタと、
前記第1回転体を回転駆動する駆動部と、
前記第2回転体の回転を駆動対象に伝達する伝達部と、
を備える駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタ、および当該トルクリミッタを用いた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定以上のトルクが加えられた場合に、トルクの伝達を遮断等により抑制する、いわゆるトルクリミッタに関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ラチェット機構によりトルクリミッタの機能を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−149013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、トルクリミッタを搭載する装置全体の小型化の要求に伴い、その装置に適用される部品としてのトルクリミッタの小型化も要求されている。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、より小型のトルクリミッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の代表的な実施の形態に係るトルクリミッタは、駆動源によって回転する第1回転体と、前記第1回転体に係止された第1摩擦体と、前記第1摩擦体に重ねて配置され、前記第1摩擦体との間の摩擦力によって前記第1摩擦体の回転に伴って回転する第2摩擦体と、前記第2摩擦体に係止された第2回転体と、前記第1摩擦体および前記第2摩擦体を、前記第1摩擦体と前記第2摩擦体の積層方向に付勢する少なくとも1つの皿ばねと、前記皿ばねを圧縮する固定部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、より小型のトルクリミッタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るトルクリミッタを備えた駆動装置を配置した装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係るトルクリミッタを備えた駆動装置の斜視図である。
図3】実施の形態1に係るトルクリミッタの斜視図である。
図4】実施の形態1に係るトルクリミッタの断面図である。
図5】実施の形態1に係るトルクリミッタの分解断面図である。
図6】実施の形態1に係るトルクリミッタにおける第2ギア部、第1摩擦体、第2摩擦体、および第3ギア部の平面的な位置関係を示す図である。
図7】実施の形態2に係るトルクリミッタを備えた駆動装置の斜視図である。
図8】実施の形態2に係るトルクリミッタの断面図である。
図9】実施の形態2に係るトルクリミッタの分解断面図である。
図10】実施の形態2に係るトルクリミッタにおけるケース、第1摩擦体、第2摩擦体、およびシャフトの平面的な位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0010】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るトルクリミッタ(30,40)は、駆動源(10)によって回転する第1回転体(32,41)と、第1回転体に係止された第1摩擦体(33、43)と、第1摩擦体に重ねて配置され、第1摩擦体との間の摩擦力によって第1摩擦体の回転に伴って回転する第2摩擦体(34、44)と、第2摩擦体に係止された第2回転体(35,42)と、第1摩擦体および第2摩擦体を、第1摩擦体と第2摩擦体の積層方向に付勢する少なくとも1つの皿ばね(37、45)と、皿ばねに圧縮力を加える固定部材(39,46)とを有することを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記トルクリミッタにおいて、前記固定部材は、前記第2回転体に接触することなく、前記皿ばねを前記第1回転体に固定してもよい。
【0012】
〔3〕上記トルクリミッタ(30)において、前記第1回転体(32)と前記第2回転体(35)とは、同一の回転軸(31)を有し、前記第1摩擦体(33)と前記第2摩擦体(34)とは、前記回転軸の前記第1回転体と前記第2回転体との間に積層され、前記皿ばねは、前記第1回転体と同軸に、前記第1回転体と接触して配置され、前記固定部材は、前記皿ばねを前記第1回転体に押し付けて固定してもよい。
【0013】
〔4〕上記トルクリミッタ(40)において、前記第1回転体(41)は、その回転軸の方向に形成された有底の孔(410)と、前記孔が形成された前記第1回転体の内周面(410a)の開口側に形成された第1ねじ部(412)を有し、前記第1摩擦体(43)および前記第2摩擦体(44)は、環状であって、前記第1回転体の前記孔に、前記第1回転体の回転軸と同軸に配置され、前記皿ばね(45)は、前記第1回転体の前記孔において、前記第1回転体の回転軸と同軸に、前記第1摩擦体および前記第2摩擦体の少なくとも一方と接触して配置され、前記固定部材(46)は、前記第1回転体の第1ねじ部に対応する第2ねじ部(460)と、前記固定部材の回転軸を通って形成された貫通孔(461)とを有し、前記固定部材は、前記皿ばね、前記第1摩擦体、および前記第2摩擦体を前記第1回転体の前記孔の底面(410b)に押し付けた状態で、前記第2ねじ部と前記第1回転体の前記第1ねじ部とが螺合されて、前記第1回転体に固定され、前記第2回転体は、前記固定部材の前記貫通孔と、環状の前記第1摩擦体および前記第2摩擦体の中空部とに挿通され、前記固定部材に接触していなくてもよい。
【0014】
〔5〕本発明の代表的な実施の形態に係る駆動装置(1,1A)は、上述したトルクリミッタ(30,40)と、前記第1回転体を回転駆動する駆動部(10,11,13)と、前記第2回転体の回転を駆動対象(5)に伝達する伝達部(20,12)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態1に係るトルクリミッタを備えた駆動装置を配置した装置の斜視図である。
【0017】
本実施の形態に係る駆動装置1は、可動部5を備えた機器2において、機器本体4のヒンジ部3内に配設され、可動部5を開閉駆動するものである。機器2としては、便座や便座の蓋を可動部5とする電動便座便蓋開閉機能付き便器や、ディスプレイを可動部5とするラップトップパソコン、蓋を可動部5とするゴミ箱等の容器を例示することができる。
【0018】
図2は、実施の形態1に係るトルクリミッタを備えた駆動装置の斜視図である。
具体的に、駆動装置1は、モータ10と、第1ギア部20と、トルクリミッタ30と、を備える。
【0019】
モータ10は、機器2における可動部5の開閉動作の駆動源・動力源として機能する。モータ10には、図示しないリード線を介して駆動信号が供給され、その駆動信号によって、モータ10の出力回転軸10aが回転する。モータ10の出力回転軸10aの先端部には、ギア11が装着されている。ここで、モータ10としては、例えば、ステッピングモータ、DCモータ、およびDCブラシレスモータ等を用いることができる。
【0020】
モータ10およびギア11は、トルクリミッタ30の後述する第2ギア部32を駆動する駆動部として機能する。
【0021】
第1ギア部20は、モータ10が発生した回転力を可動部5の回動軸(開閉駆動軸)に、図示されていないギア列等を介して伝達する機能部である。第1ギア部20は、トルクリミッタ30を介してモータ10から伝達されたトルクを駆動対象の可動部5に伝達する。第1ギア部20は、大径ギア21と、大径ギア21に同軸に固定された小径ギア22と、を有する。小径ギア22は、可動部5の回動軸(開閉駆動軸)に連結されたギアに直接又はギア列を介して連結されている。大径ギア21はトルクリミッタ30の後述する第3ギア351と噛合している。大径ギア21および小径ギア22は、例えば樹脂等から構成されている。
【0022】
第1ギア部20は、後述するトルクリミッタ30の第3ギア部35の回転を駆動対象としての可動部5に伝達する伝達部として機能する。
【0023】
トルクリミッタ30は、伝達するトルクを制限する安全装置であって、モータ10が発生した回転力を第1ギア部20に伝達する一方、外力により所定の方向の一方向に所定の閾値(以下、「スリップトルク値」とも称する。)以上のトルクが加えられた場合に、第1ギア部20とモータ10との間で伝達されるトルクを制限する。
【0024】
以下、トルクリミッタ30の構成について、図3図6を用いて説明する。
図3〜6に示すように、トルクリミッタ30は、シャフト31と、第1回転体としての第2ギア部32と、第1摩擦体33と、第2摩擦体34と、第2回転体としての第3ギア部35と、スライドワッシャ36と、皿ばね37と、ワッシャ38と、ナット39とを含む。
【0025】
シャフト31は、金属等から形成され、トルクリミッタ30の回転中心となる。図4に示すように、シャフト31は、ヘッド部311と、ヘッド部311の外径よりも小さい外径を有する円柱部312と、円柱部312の外径よりも小さい外径を有し、後述するナット39と螺合するねじが形成されたねじ部313と、ねじ部313の外径よりも小さい外径を有する細径部314と、から構成されている。
【0026】
第2ギア部32は、シャフト31に固定され、モータ10によりギア11を介して駆動される回転体である。第2ギア部32は、樹脂等から形成され、図4に示すように、円筒部322と、仕切部321とを有する。円筒部322と仕切部321とは、例えば一体に形成されている。なお、第2ギア部32はシャフト31の回転方向に対し固定され、シャフト31の軸方向には移動可能となっている。
【0027】
円筒部322の外周面には第2ギア324が形成されている。第2ギア324は、モータ10の出力回転軸10aに装着されているギア11と噛合している。なお、第2ギア324は、図示しないギア列を介してギア11と連結していてもよい。
【0028】
また、図6に示すように、円筒部322の内周面には、後述する第1摩擦体33の外周部に形成された突起部33aと係合する切欠部(被係合部)325が、例えば120°回転対称に形成されている。各切欠部325は、仕切部321の一方の主面321a側の内周面322aに形成されている。切欠部325および突起部33aは、例えば、矩形状に形成されている。
【0029】
仕切部321は、外円筒部322のほぼ中央部に配置されている。仕切部321の中央部には、円筒状の内円筒部323が仕切部321と一体に立設されている。また、仕切部321の円心部には、内円筒部323の穴と連通し、シャフト31の円柱部312が挿通される円形の貫通孔326が形成されている。
【0030】
図4に示すように、第2ギア部32の内側の空間は、仕切部321によって2つに分けられている。すなわち、第2ギア部32の内側の空間は、外円筒部322の内周面322aと仕切部321の一方の主面321aとによって形成される空間(以下、「収容部SP1」と称する。)と、外円筒部322の内周面322bと仕切部321の他方の主面321bとによって形成される空間(以下、「収容部SP2」と称する。)に分けられている。
【0031】
第1摩擦体33は、金属板(例えば、SUS304)や樹脂板等から形成され、図6に示すように、円環形状を有する。第1摩擦体33の外径は、第2ギア部32の外円筒部322の内径より若干小さい。また、第1摩擦体33の内径は、後述する第3ギア部35に形成された立設部353の外径よりも若干大きく形成されている。更に、第1摩擦体33の外周縁には、第2ギア部32の外円筒部322に形成された3つの切欠部325に係合する突起部(係合部)33aが形成されている。
【0032】
第2摩擦体34は、金属板(例えば、ベリリウム銅)や樹脂板等から形成され、図6に示すように、円環形状を有する。なお、摩擦体のエッジ部にバリが有るなど、摩擦体同士の接触面積が不十分となることを避けるため、第1摩擦体33と第2摩擦体34を積層した際にそれぞれのエッジ部が重ならないように、第1摩擦体33および第2摩擦体34の内径および外径の寸法を設計してもよい。
【0033】
第2摩擦体34の内周縁には、後述する第3ギア部35に形成された立設部353間の間隙354と係合する凸部(係合部)34aが、例えば120°回転対称に形成されている。
【0034】
図4及び図5に示すように、第1摩擦体33と第2摩擦体34とは、第2ギア部32の収容部SP1に交互に積層されて収容されている。このとき、第1摩擦体33の突起部33aは、第2ギア部32の外円筒部322に形成された切欠部325に挿入されている。
【0035】
なお、本実施の形態では、図4等に示すように、第1摩擦体33および第2摩擦体34を10枚ずつ積層した場合を例示しているが、積層する第1摩擦体33および第2摩擦体34の枚数は、特に制限されない。
【0036】
第3ギア部35は、シャフト31に回転可能に支持されている回転体である。第3ギア部35の一部は、第2ギア部32の収容部SP1側に配置されている。第3ギア部35は、第3ギア351と、円盤部352と、立設部353とを含む。例えば、第3ギア351と、円盤部352と、立設部353とは、樹脂等で一体に形成されている。
【0037】
第3ギア351は、第2ギア部32よりも小径に形成され、円盤部352の中心に立設されている。第3ギア351の外周面にはギアが形成され、そのギアは、第1ギア部20の大径ギア21と噛合されている。
【0038】
円盤部352は、その外周が、第2ギア部32の外円筒部322の内径よりも小さく形成されており、第2ギア部32の収容部SP1に収容されている第1摩擦体33および第2摩擦体34を押さえる蓋としての役割を有する。
【0039】
また、第3ギア351と円盤部352の回転中心には、シャフト31の円柱部312の外径よりも径が大きい貫通孔355が形成されている。すなわち、第3ギア351および円盤部352の内周面とシャフト31の円柱部312との間には、隙間(クリアランス)が形成されている。
【0040】
立設部353は、円盤部352の第3ギア351が形成されている面と反対側の面に、回転軸方向に延在して設けられている。図4図6に示すように、立設部353は、例えば、120°回転対称に形成されており、全体としてほぼ円筒形状を有する。
【0041】
図6に示すように、複数の立設部353によって形成される平面視略円形状の円筒部353aの外径は、第1摩擦体33及び第2摩擦体34の内径より小さい。また、円筒部353aの内径は、シャフト31の円柱部312の外径より大きく形成されている。すなわち、第3ギア部35の立設部353の内周面とシャフト31の円柱部312との間には、隙間(クリアランス)が形成されている。
【0042】
更に、立設部353間の3つの間隙(被係合部)354には、第2摩擦体34の3つの凸部34aが係合している。これにより、第3ギア351と第2摩擦体34とは一体に回転する。
【0043】
スライドワッシャ36は、例えば樹脂から形成されている。図3及び図4に示すように、スライドワッシャ36は、その中空部にシャフト31の円柱部312が挿通されて、第3ギア351の軸方向の端面と接触するように配置されている。具体的には、スライドワッシャ36は、シャフト31のヘッド部311と円柱部312との間の段差部に配置され、第3ギア351の軸方向の端面とシャフト31のヘッド部311とによって挟持されている。
【0044】
皿ばね37は、第1摩擦体33および第2摩擦体34を、第1摩擦体33と第2摩擦体34の積層方向においてヘッド部311側へ付勢する部品である。図4及び図5に示すように、皿ばね37は、第2ギア部32の収容部SP2に配置されている。例えば、皿ばね37は、第2ギア部32の収容部SP2において、皿ばね37の中空部にシャフト31が挿入されて、仕切部321の主面321bに接触して配置されている。なお、本実施の形態では、収容部SP2に3枚の皿ばね37を積層して配置する場合を例示しているが、皿ばね37は少なくとも1枚あればよく、皿ばね37の枚数は特に制限されない。
【0045】
ワッシャ38は、例えば金属から形成されている。図3及び図4に示すように、ワッシャ38は、その中空部にシャフト31のねじ部313が挿入され、皿ばね37を挟んで、第2ギア部32の仕切部321の主面321bと対面配置されている。
【0046】
ナット39は、皿ばね37に圧縮力を加える固定部材である。図3および図4に示すように、ナット39は、シャフト31の細径部314が、第2ギア部32の仕切部321の貫通孔326およびワッシャ38の中空部から突出した状態において、シャフト31のねじ部313に螺合し、ワッシャ38を介して皿ばね37を第2ギア部32に押し付けて固定する。これにより、皿ばね37に圧縮力を付与する。このとき、皿ばね37、第2ギア部32、第1摩擦体33、および第2摩擦体34を介してシャフト31のヘッド部311側に押し付けられた第3ギア部35は、ヘッド部311と円柱部312との間の段差部においてスライドワッシャ36を介して押し止められる。
【0047】
ナット39の締め付けの度合いを調整することにより、皿ばね37が第2ギア部32を介して第1摩擦体33及び第2摩擦体34を第3ギア部35へ押圧する力を調整することが可能となる。
【0048】
次に、上記構成を有するトルクリミッタ30の組立方法を、図5を参照して説明する。
【0049】
先ず、第1摩擦体33と第2摩擦体34とを交互に10枚ずつ位置合わせして第2ギア部32の仕切部321の主面321a上に積層し、第2ギア部32の収容部SP1に収容する。このとき、第1摩擦体33の突起部33aを第2ギア部32の外円筒部322に形成された切欠部325に係合させる。また、必要に応じてグリスを充填する。なお、安定した摩擦力を得るために、グリス以外に第1摩擦体33と第2摩擦体34の間に樹脂シート等を挟んでもよい。
【0050】
次に、第3ギア部35を第2ギア部32の収容部SP1に配置する。このとき、第3ギア部35の3つの立設部353の間隙354に第2摩擦体34の3つの凸部34aをそれぞれ係合させる。
【0051】
次に、シャフト31が第3ギア部35の貫通孔355に挿通した状態で、シャフト31の円柱部312を第2ギア部322の仕切部321の貫通孔326に挿通する。
【0052】
次に、3枚の皿ばね37とワッシャ38とを、この順で細径部314側からシャフト31に挿通させ、ナット39をシャフト31のねじ部313に螺合することにより、皿ばね37およびワッシャ38を第2ギア部32の収容部SP2に収容する。このとき、ナット39の締め付け度合いを調整することにより、皿ばね37が第2ギア部32を介して第1摩擦体33と第2摩擦体34に与える押圧力を調整する。
【0053】
以上の組立方法により、実施の形態1に係るトルクリミッタ30を実現することができる。
【0054】
次に、実施の形態1に係るトルクリミッタ30を搭載した駆動装置1の動作を説明する。
トルクリミッタ30を搭載した駆動装置1は、以下に示す状態で図1に示す機器2に組み込まれる。すなわち、機器2のヒンジ部3内において、トルクリミッタ30の第2ギア324をモータ10の出力回転軸10aに嵌装されているギア11に噛み合わせる。また、トルクリミッタ30の第3ギア351と連結されている第1ギア部20の小径ギア22を、駆動対象である可動部5の回転軸に連結された図示されないギアに、直接または間接に連結する。この状態において、駆動装置1が機器2に組み込まれる。
【0055】
ここで、駆動対象としての可動部5を開く場合、すなわち可動部5を図1の参照符号Aで示される方向に駆動する場合について説明する。
この場合、図示されないコントローラは、モータ10に駆動信号を供給し、モータ10を一方の方向に回転させる。モータ10の回転により、モータ10の出力回転軸10aに嵌装されているギア11が回転し、ギア11に噛合している第2ギア324が回転する。
【0056】
第2ギア324の回転に伴って、第2ギア部32の切欠部325と係合する突起部33aを有する第1摩擦体33が回転する。第1摩擦体33の回転力は、第1摩擦体33と第2摩擦体34との静止摩擦力により、第2摩擦体34に伝達され、第2摩擦体34が回転する。第2摩擦体34の回転により、第2摩擦体34と係合している第3ギア部35の立設部353が回転し、立設部353の回転により、立設部353と一体に形成されている第3ギア351も回転する。第3ギア351の回転により、第3ギア351と噛合している第1ギア部20の大径ギア21が回転し、大径ギア21の回転に伴って、大径ギア21と一体に形成されている小径ギア22が回転する。小径ギア22の回転が、可動部5の回動軸に伝達され、可動部5が開く。
【0057】
一方、駆動対象としての可動部5を閉める場合、すなわち可動部5を図1の参照符号Bで示される方向に駆動する場合には、上記コントローラは、モータ10を逆方向に回転させる。これにより、上述とは逆方向の回転力が可動部5の回動軸に伝達され、可動部5が閉じる。
【0058】
次に、機器2の使用者が可動部5を閉じたり、開いたりする手動操作を行って、可動部5に過負荷を加えた場合について説明する。
この場合、可動部5の回動軸の回動に伴って、第1ギア部20が回転し、第1ギア部20と噛合している第3ギア351が回転する。さらに、第3ギア351と一体に形成されている立設部353が回転し、立設部353と係合している第2摩擦体34が回転する。
【0059】
このとき、可動部5に加えられた過負荷がリミットトルクを越える場合、すなわち可動部5に加えられた過負荷が第1摩擦体33と第2摩擦体34との間の最大静止摩擦力を上回っている場合、第1摩擦体33に対して第2摩擦体34はスリップし、第3ギア部35の回転が第1摩擦体33以降の第2ギア部32及びモータ10に伝達されない。
【0060】
このように、可動部5に加わった過負荷が第1摩擦体33と第2摩擦体34との間の最大静止摩擦力を上回った場合には、第3ギア部35の回転が第2ギア部32に伝達されないので、モータ10、ギア11、および第2ギア部32を保護することが可能となる。
【0061】
また、何らかの原因により、モータ10側からリミットトルクを越える過負荷が第2ギア部32に伝達された場合であっても、第2摩擦体34に対して第1摩擦体33がスリップするため、過負荷が第3ギア部35に伝わらず、第3ギア部35および第1ギア部20等を保護することが可能となる。
【0062】
以上、実施の形態1に係るトルクリミッタ30によれば、第1摩擦体33と第2摩擦体34との摩擦力により、モータ10が発生するトルクを第1ギア部20に伝達することができる一方で、外部から過大な過負荷がかかった場合に、第1摩擦体33と第2摩擦体34とがスリップすることにより、モータ10に加わる外部からのトルクの伝達を抑制することが可能となる。
【0063】
また、トルクリミッタ30によれば、第1摩擦体33および第2摩擦体34を付勢する手段として皿ばね37を用いているので、コイルばね等のその他の付勢手段を用いる場合に比べて薄型化でき、トルクリミッタの小型化が可能となる。
【0064】
また、トルクリミッタ30によれば、固定部材としてのナット39は、第2回転体としての第3ギア部35に接触することなく、皿ばね37を第1回転体としての第2ギア部32に固定しているので、トルクリミッタのスリップトルク値の変動を抑えることが可能となる。以下、この点について詳細に説明する。
【0065】
上述したように、トルクリミッタ30のスリップトルク値、すなわち第1摩擦体33と第2摩擦体34との間の最大静止摩擦力は、ナット39の締め付け度合いによって調整される。したがって、何らかの原因でナット39の締め付け度合いが変化した場合、トルクリミッタ30のスリップトルク値が変化することも考えられる。
【0066】
例えば、仮に、ナット39の締め付け位置を第3ギア部35側とし、ナット39と第3ギア部35を接触させてナット39を固定した状態において、第3ギア部35側に外力が加わり、第2摩擦体34が第1摩擦体33に対してスリップした場合を考える。この場合、第1摩擦体33に連結される第2ギア324およびモータ10の出力回転軸10aに連結されるギア11にはトルクが伝達されないが、第3ギア部35には外力からのトルクが伝達され、第3ギア部35が回転する。このとき、第3ギア部35の回転に伴い、第3ギア部35に接触しているナット39の位置ずれが発生し、ナット39の締め付け度合いが変化する。
【0067】
これに対し、実施の形態1に係るトルクリミッタ30によれば、第2摩擦体34が第1摩擦体33に対してスリップしたときに回転する第3ギア部35に対して相対的に回転しない位置、すなわち、第3ギア部35と接触しない位置においてナット39を固定することにより、皿ばね37に圧縮力を加えている。
これによれば、第2摩擦体34が第1摩擦体33に対してスリップしたときの第3ギア部35の回転力がナット39に伝わり難いので、ナット39の位置ずれに起因するスリップトルク値の変動を抑制し、スリップトルク値の安定性を向上させることが可能となる。
【0068】
特に、実施の形態1に係るトルクリミッタ30では、第2ギア部32と第3ギア部35とを同一の回転軸となるように配置し、第1摩擦体33と第2摩擦体34とを、上記回転軸上の第2ギア部32と第3ギア部35との間に積層するとともに、ナット39によって、第2ギア部32と同軸に配置した皿ばね37を第2ギア部32に押し付けて固定することにより、第3ギア部35から物理的に離れた位置において、ナット39を締め付けることができる。これにより、スリップトルク値の変動をより効果的に抑制することができるので、スリップトルク値の安定性を更に向上させることが可能となる。
【0069】
《実施の形態2》
図7は、実施の形態2に係るトルクリミッタを備えた駆動装置の斜視図である。
同図に示される駆動装置1Aは、実施の形態1に係る駆動装置1と同様に、図1に示した可動部5を備えた機器2のヒンジ部3に収容することにより、可動部5を開閉駆動する。
図7に示すように、駆動装置1Aは、モータ10と、減速機13と、トルクリミッタ40と、カップリング12とを備える。
【0070】
減速機13は、モータ10が発生した回転力を減速して、可動部5の回動軸(開閉駆動軸)に伝達する部品である。減速機13は、トルクリミッタ40およびカップリング12を介してモータ10から伝達されたトルクを駆動対象の可動部5に伝達する。減速機13は、例えば遊星歯車を含む歯車機構から構成されている。
【0071】
モータ10および減速機13は、トルクリミッタ40の後述するケース41を駆動する駆動部として機能する。
【0072】
トルクリミッタ40は、減速機13から入力されたモータ10の回転力をカップリング12を介して可動部5に伝達する一方、スリップトルク値以上のトルクが加えられた場合に、可動部5とモータ10との間で伝達されるトルクを制限する。
【0073】
カップリング12は、トルクリミッタ40の後述するシャフト42と可動部5の回動軸(開閉駆動軸)とを連結する機能部であり、シャフト42の回転力を可動部5の回動軸に伝達する。カップリング12は、後述するトルクリミッタ40のシャフト42の回転を駆動対象としての可動部5に伝達する伝達部として機能する。
【0074】
以下、トルクリミッタ40の構成について、図8図10を用いて説明する。
トルクリミッタ40は、図8〜10に示すように、第1回転体としてのケース41と、第1摩擦体43と、第2摩擦体44と、皿ばね45と、固定部材46と、第2回転体としてのシャフト42と、ベアリング47とを含む。
【0075】
ケース41は、樹脂や金属等から形成されており、第1摩擦体43、第2摩擦体44、および皿ばね45を収容する容器であるとともに、減速機13の出力軸13aと連結されることにより、出力軸13aを介して入力されたモータ10の回転力を受けて回転する回転体である。
【0076】
ケース41は、その回転軸の方向に形成された有底の孔410が形成された円筒形状を有する。ケース41の孔410が形成された内周面410aの開口側には、ねじが切られた第1ねじ部412が形成されている。
【0077】
また、図10に示すように、ケース41の内周面410aには、後述する第1摩擦体43の外周部に形成された突起部43aと係合する切欠部(被係合部)413が、例えば、90°回転対称に形成されている。切欠部413および突起部43aは、例えば、円弧状に形成されている。
【0078】
また、ケース41の孔410が形成されている端面と反対側の端面には、孔414が形成されている。図8に示すように、孔414には、減速機13の出力軸13aが嵌挿され、ビス等の固定具48によってケース41に固定されている。
【0079】
ケース41の孔410によって形成される空間(以下、「収容部SP3」と称する。)には、第1摩擦体43、第2摩擦体44、および皿ばね45が収容される。
【0080】
第1摩擦体43は、金属板(例えば、SUS304)や樹脂板等から形成され、図10に示すように、円環形状を有する。第1摩擦体43の外径は、ケース41の孔410の内径より若干小さい。また、第1摩擦体43の内径は、後述するシャフト42の固定部422の外径よりも大きく形成されている。更に、第1摩擦体43の外周縁には、ケース41の内周面410aに形成された3つの切欠部413に係合する突起部(係合部)43aが形成されている。
【0081】
第2摩擦体44は、金属板(例えば、ベリリウム銅)や樹脂板等から形成され、図10に示すように、円板状に形成され、中央にシャフト42の断面が多角形状(例えば六角形状)の固定部422が挿入される多角形状(例えば六角形状)の開口44aが形成されている。
【0082】
図8及び図9に示すように、第1摩擦体43と第2摩擦体44とは、ケース41の収容部SP3における孔410の底面410bに交互に積層されて収容されている。このとき、第1摩擦体43の突起部43aは、ケース41の内周面410aに形成された切欠部413に挿入されている。
【0083】
なお、本実施の形態では、図9等に示すように、7枚の第1摩擦体43と、6枚の第2摩擦体44とを積層した場合を例示しているが、第1摩擦体43および第2摩擦体44の枚数は、特に制限されない。
【0084】
皿ばね45は、ケース41の収容部SP3において、ケース41の回転軸と同軸に、第1摩擦体43および第2摩擦体44の少なくとも一方と接触して配置されている。具体的には、図8および図9に示すように、第1摩擦体43および第2摩擦体44の積層体の底面410bと接触していない側に、少なくとも1枚の皿ばね45が積層されている。
【0085】
なお、本実施の形態では、図9等に示すように、3枚の皿ばね45を積層した場合を例示しているが、皿ばね45の枚数は、特に制限されない。
【0086】
シャフト42は、カップリング12の回動軸(孔120)に連結される断面がD字状に形成されたD字部424と、円柱部423と、第2摩擦体44の開口44aが固定される断面が多角形状(例えば六角形状)の固定部422と、先端部421とを有する。
【0087】
シャフト42は、皿ばね45、第1摩擦体43、および第2摩擦体44を貫通した状態でケース41の孔410に挿通され、ケース41の孔410の底面410b側に配置されたベアリング(例えばボールベアリング)47によって軸支される。シャフト42のD字部424は、カップリング12の一端に形成された孔120に嵌挿され、ビス等の固定具48によってカップリング12に固定されている。
【0088】
固定部材46は、皿ばね45に圧縮力を加える機能部である。固定部材46は、例えばケース41と同一の材料から構成されており、ケース41の第1ねじ部412に対応する第2ねじ部460と、固定部材46の回転軸を通って形成された貫通孔461とを有する。
【0089】
固定部材46は、皿ばね45、第1摩擦体43、および第2摩擦体44をケース41の孔410の底面410bに押し付けた状態で、第2ねじ部460とケース41の第1ねじ部412とが螺合されて、ケース41に固定されている。
【0090】
固定部材46の貫通孔461には、シャフト42が挿通され、貫通孔461内に配置されたベアリング47によって、シャフト42の円柱部423が軸支されている。
このとき、固定部材46の貫通孔461とシャフト42(例えば、円柱部423)との間には、隙間(クリアランス)が形成されている。すなわち、固定部材46とシャフト42とは、接触していない。
【0091】
次に、上記構成を有するトルクリミッタ40の組立方法を、図9を参照して説明する。
【0092】
先ず、ケース41の孔410の底面410b側に配置されたベアリング47に、シャフト42の先端部421を嵌挿する。
【0093】
次に、7枚の第1摩擦体43と6枚の第2摩擦体44とを交互に位置合わせしてケース41の孔410の底面410bに積層し、ケース41の収容部SP3に収容する。このとき、第1摩擦体43の突起部43aをケース41の内周面410aに形成された切欠部413に係合させるとともに、第2摩擦体44の開口44aをシャフト42の固定部422に嵌合させる。また、必要に応じてグリスを充填する。なお、安定した摩擦力を得るために、グリス以外に第1摩擦体43と第2摩擦体44の間に樹脂シート等を挟んでもよい。
【0094】
次に、5枚の皿ばね45を、D字部424側からシャフト42に挿通させて、第1摩擦体43および第2摩擦体44から成る積層体上に積層させる。
【0095】
次に、固定部材46の貫通孔461にシャフト42を挿通させるとともに、固定部材46の貫通孔461に配置したベアリング47にシャフト42の円柱部423を嵌挿させた状態で、固定部材46の第2ねじ部460をケース41の内周面410aに形成された第1ねじ部412に螺合する。これにより、皿ばね45に固定部材46から圧縮力が加わる。このとき、固定部材46の締め付け度合いを調整することにより、皿ばね45が第1摩擦体43と第2摩擦体44に与える押圧力を調整する。
【0096】
以上の組立方法により、実施の形態2に係るトルクリミッタ40を実現することができる。
【0097】
次に、実施の形態2に係るトルクリミッタ40を搭載した駆動装置1Aの動作を説明する。
トルクリミッタ40を搭載した駆動装置1Aは、以下に示す状態で図1に示す機器2に組み込まれる。すなわち、機器2のヒンジ部3内において、トルクリミッタ40のケース41の孔414に、モータ10の出力軸からの回転力を受けて回転する減速機13の出力軸13aを嵌挿させて固定する。また、トルクリミッタ40の固定部材46から突出したシャフト42のD字部424をカップリング12の一端に形成された孔120に嵌挿させて固定するとともに、カップリング12の他端に形成された図示されない孔に、可動部5の回動軸を嵌挿させて固定する。この状態において、駆動装置1Aが機器2に組み込まれる。
【0098】
ここで、駆動対象としての可動部5を開く場合、すなわち可動部5を図1の参照符号Aで示される方向に駆動する場合について説明する。
この場合、図示されないコントローラは、モータ10に駆動信号を供給し、モータ10を一方の方向に回転させる。モータ10の回転により、モータ10の出力回転軸に嵌装されている減速機13の出力軸13aが回転し、出力軸13aが嵌挿されているケース41が回転する。
【0099】
ケース41の回転に伴って、ケース41の内周面410aに形成された切欠部413と係合する突起部43aを有する第1摩擦体43が回転する。第1摩擦体43の回転力は、第1摩擦体43と第2摩擦体44との静止摩擦力により、第2摩擦体44に伝達され、第2摩擦体44が回転する。第2摩擦体44の回転により、第2摩擦体44と固定部422において嵌合しているシャフト42が回転する。シャフト42の回転により、シャフト42のD字部424と嵌合しているカップリング12が回転する。そして、カップリング12の回転が可動部5の回動軸に伝達され、可動部5が開く。
【0100】
一方、駆動対象としての可動部5を閉める場合、すなわち可動部5を図1の参照符号Bで示される方向に駆動する場合には、上記コントローラは、モータ10を逆方向に回転させる。これにより、上述とは逆方向の回転力が可動部5の回動軸に伝達され、可動部5が閉じる。
【0101】
次に、機器2の使用者が可動部5を閉じたり、開いたりする手動操作を行って、可動部5に過負荷を加えた場合について説明する。
この場合、可動部5の回動軸の回動に伴って、カップリング12が回転し、カップリング12の孔120に嵌合しているシャフト42が回転する。これにより、シャフト42の固定部422に嵌合している第2摩擦体44が回転する。
【0102】
このとき、可動部5に加えられた過負荷がリミットトルクを越える場合、すなわち可動部5に加えられた過負荷が第1摩擦体43と第2摩擦体44との間の最大静止摩擦力を上回っている場合、第1摩擦体43に対して第2摩擦体44がスリップし、シャフト42の回転が第1摩擦体43以降のケース41及びモータ10に伝達されない。
このように、可動部5に加わった過負荷が第1摩擦体43と第2摩擦体44との間の最大静止摩擦力を上回った場合には、モータ10およびケース41を保護することが可能となる。
【0103】
また、何らかの原因により、モータ10側からリミットトルクを越える過負荷がケース41に伝達された場合には、第2摩擦体44に対して第1摩擦体43がスリップするため、過負荷がシャフト42に伝わらず、シャフト42およびカップリング12等を保護することが可能となる。
【0104】
以上、実施の形態2に係るトルクリミッタ40によれば、実施の形態1に係るトルクリミッタ30と同様に、第1摩擦体43と第2摩擦体44の摩擦により、モータ10が発生するトルクをカップリング12に伝達することができる一方で、外部から過大な過負荷がかかった場合に、モータ10に加わるトルクを抑えることが可能となる。
【0105】
また、トルクリミッタ40によれば、実施の形態1に係るトルクリミッタ30と同様に、第1摩擦体43と第2摩擦体44を付勢する付勢手段として皿ばね45を用いているので、より小型のトルクリミッタを実現することが可能となる。
【0106】
特に、実施の形態2に係るトルクリミッタ40では、皿ばね45、第1摩擦体43、および第2摩擦体44をケース41の孔410の底面410bに押し付けた状態で、固定部材46の第2ねじ部460とケース41の内周面410aに形成された第1ねじ部412とを螺合することにより、固定部材46をケース41に固定している。これによれば、第1摩擦体43、および第2摩擦体44をケース41の孔410の底面410bに押さえ付けるための蓋と、その蓋を固定するためのナット等の固定具とを別々に用意する必要がないので、部品点数を減らすことができ、より小型のトルクリミッタを実現することが可能となる。
【0107】
また、トルクリミッタ40によれば、トルクリミッタのスリップトルク値を調整する手段としての固定部材46と第2回転体としてのシャフト42との間にクリアランスが形成されているので、固定部材46とシャフト42とが接触することなく、皿ばね45を第1回転体としてのケース41に固定することができる。これにより、実施の形態1に係るトルクリミッタ30と同様に、トルクリミッタのスリップトルク値の変動を抑えることが可能となり、スリップトルク値の安定性を向上させることが可能となる。
【0108】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0109】
例えば、実施の形態1では、皿ばね37を収容部SP2に配置する場合を例示したが、これに限られない。例えば、皿ばね37を収容部SP1に配置し、第1摩擦体33および第2摩擦体34と共に積層させてもよい。これによれば、上述した実施の形態1に係るトルクリミッタ30と同様に、第1摩擦体33および第2摩擦体34に押圧力を加えることが可能となる。
【0110】
また、実施の形態2では、皿ばね45を固定部材46側に配置する場合を例示したが、これに限られない。例えば、皿ばね45を、ケース41の孔410の底面410bと第1摩擦体43および第2摩擦体44との間に配置してもよいし、第1摩擦体43および第2摩擦体44から成る積層体の両側にそれぞれ配置してもよい。これによれば、上述した実施の形態2に係るトルクリミッタ40と同様に、第1摩擦体43および第2摩擦体44に押圧力を加えることが可能となる。
【0111】
また、実施の形態1では、第2ギア部32の切欠部325および第1摩擦体33の突起部33aが矩形状に形成される場合を、実施の形態2では、ケース41の内周面410aに形成された切欠部413および第1摩擦体43の突起部43aが円弧状に形成される場合をそれぞれ例示したが、これに限定されるものではない。第1摩擦体33を第2ギア部32に、第1摩擦体43をケース41に、それぞれ係合させることができるのであれば、種々の形状を採用することが可能である。
この点については、実施の形態1における第3ギア部35の立設部353間の間隙354および第2摩擦体34の凸部34aの形状と、実施の形態2におけるシャフト42の固定部422および第2摩擦体44の開口44aの形状についても同様のことが言える。
【符号の説明】
【0112】
1,1A…駆動装置、2…機器、3…ヒンジ部、4…機器本体、5…可動部、10…モータ、10a…モータの出力回転軸、11…ギア、12…カップリング、13…減速機、13a…減速機の出力軸、20…第1ギア部、21…大径ギア、22…小径ギア、30,40…トルクリミッタ、31…シャフト、32…第2ギア部、33…第1摩擦体、34…第2摩擦体、33a…突起部、34a…凸部、35…第3ギア部、36…スライドワッシャ、37,45…皿ばね、38…ワッシャ、39…ナット、41…ケース、42…シャフト、43…第1摩擦体、44…第2摩擦体、44a…開口、46…固定部材、47…ベアリング、48…ビス、311…ヘッド部、312…円柱部、313…ねじ部、314…細径部、321…仕切部、321a,321b…仕切部321の主面、322…外円筒部、322a,322b…円筒部の内周面、323…内円筒部、325…切欠部、326…貫通孔、351…第3ギア、352…円盤部、353…立設部、354…間隙、355…貫通孔、410,414…孔、410a…ケース41の内周面、410b…底面、412…第1ねじ部、413…切欠部、421…先端部、422…固定部、423…円柱部、424…D字部、460…第2ねじ部、461…貫通孔、SP1,SP2,SP3…収容部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10