(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974974
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】膨張コンクリート
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20211118BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20211118BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20211118BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/28
C04B22/14 B
C04B22/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-145513(P2017-145513)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-26495(P2019-26495A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
【審査官】
手島 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−174414(JP,A)
【文献】
特開2009−035429(JP,A)
【文献】
特開2009−249228(JP,A)
【文献】
特開2017−031037(JP,A)
【文献】
都築正則 ほか,石灰石骨材および収縮低減材料を使用したコンクリートのひび割れ抑制評価,大林組技術研究所報,日本,2012年,No.76,p.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/02
C04B 14/28
C04B 22/14
C04B 22/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント組成物、膨張材、石灰石骨材を含む膨張コンクリートであって、該セメント組成物はセメントクリンカー粉砕物と二水石膏および半水石膏を含有してなり、該セメント組成物中の総SO3量が2.8〜5.0質量%であり、かつ二水石膏および半水石膏の合計量に対する二水石膏の割合がSO3換算で25%以上62%以下であり、前記石灰石骨材の含有量が全骨材量に対して40質量%以上であり、前記膨張材の配合量が膨張コンクリート中10kg/m3以上20kg/m3未満であることを特徴とする膨張コンクリート。
【請求項2】
前記膨張コンクリートの材齢7日における拘束膨張率が150〜250×10−6である ことを特徴とする請求項1に記載の膨張コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張材を使用する膨張コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の耐久性を高めるために、コンクリートのひび割れを抑止する手段としてコンクリート用膨張材を使用することが有効である。近年、土木分野および建築分野において、乾燥収縮ひび割れの抑制を目的として膨張材を使用することが増加している。
収縮補償用コンクリートにするためのコンクリート用膨張材の使用量は、当初は30kg/m
3であったが、近年は使用量が20kg/m
3である低添加型コンクリート用膨張材を使用することが増加してきた。
一般的に生コン工場と呼ばれるレディーミクストコンクリート製造工場は、多種多様な配合のコンクリートを1分前後の練混ぜ時間で次々に製造し、未硬化の状態で出荷している。このとき、1回の練混ぜで製造するコンクリートは、1〜4m
3程度であることが多い。コンクリート用膨張材を使用しても所定の練混ぜの時に膨張材を添加することは作業面から大変である。また、低添加型コンクリート用膨張材を使用することが増加しているが、さらに添加量が少なくなることでコスト面においても有益となる。したがって、より少ないコンクリート用膨張材の使用量であっても、土木学会規準の収縮補償用コンクリートの拘束膨張率を満足できるコンクリートが望まれている。
【0003】
ところで、低熱ポルトランドセメントや中庸熱ポルトランドセメント等の低発熱型のセメントを用いることにより、膨張材の使用量が少ないにもかかわらず、コンクリートの拘束膨張率が高いコンクリートが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、低発熱型のセメントを用いた膨張コンクリートは、強度発現性が悪いという問題がある。また、膨張材が無添加のコンクリートに比べて、強度低下が起こり易いという問題がある。
【0004】
一方、コンクリートの収縮乾燥ひび割れを抑制する対策の一つとして、近年、骨材として石灰石を用いた粗骨材、細骨材の使用が検討されている。石灰石骨材は収縮低減に有効であり、さらに石灰系膨張材と組み合わせると、初期養生の膨張ピークからの乾燥収縮を効果的に低減できるとされており、例えば、普通ポルトランドセメントと、石灰石を主体とした骨材と、中性または高性能AE減水剤と、石灰系膨張材とを含み、水セメント比40〜50%とした低収縮コンクリートが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−217514号公報
【特許文献2】特開2006−232625号公報
【特許文献3】特開2011−6276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、膨張材の使用量が少ないにもかかわらず、土木学会規準の収縮補償用コンクリートの拘束膨張率(材齢7日のコンクリート拘束膨張率が150〜250×10
−6)を満足する膨張コンクリートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題解決のため、膨張材と石灰石骨材を使用した膨張コンクリートに関し鋭意検討した結果、使用するセメント組成物中の総SO
3量、および二水石膏と半水石膏とがコンクリートの膨張量に影響を及ぼすことを見出し、それらを制御することによって膨張材の使用量を少なくしてもコンクリートの十分な拘束膨張率を満足することができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は次の〔1〕〜〔4〕で表される膨張コンクリートである。
〔1〕セメント組成物、膨張材、石灰石骨材を含む膨張コンクリートであって、
該セメント組成物はセメントクリンカー粉砕物と石膏を含有してなり、
該セメント組成物中の総SO
3量が2.5〜5.0質量%であり、
かつ二水石膏および半水石膏の合計量に対する二水石膏の割合がSO
3換算で20%以上である膨張コンクリート。
〔2〕前記膨張材の配合量が膨張コンクリート中20kg/m
3未満であることを特徴とする請求項1記載の膨張コンクリート。
〔3〕前記膨張コンクリートの材齢7日における拘束膨張率が150〜250×10
−6であることを特徴とする請求項2に記載の膨張コンクリート。
〔4〕石灰石骨材の含有量が全骨材量に対して、40質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の膨張コンクリート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膨張材の配合量が20kg/m
3未満と従来の膨張コンクリートに比べて使用量が少ないにもかかわらず、土木学会規準の収縮補償用コンクリートの拘束膨張率(材齢7日のコンクリート拘束膨張率が150〜250×10
−6)を満足するという優れた膨張性能を発現するコンクリートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の内容について、以下に詳細に説明する。
【0010】
本発明の膨張コンクリートは、セメント組成物、膨張材、石灰石骨材を含む。
【0011】
セメント組成物としては、工業的に製造されるポルトランドセメントを使用することができる。また、ポルトランドセメントにさらに石膏を添加し、SO
3量を調整したものを使用することができる。あるいはセメントクリンカー粉砕物に石膏を添加し、SO
3量を調整したものも使用することができる。
【0012】
セメントクリンカー粉砕物は、セメントクリンカーを粉砕することで製造できる。セメントクリンカーは、石灰石、粘土、珪砂、アルミ灰、ボーキサイト、鉄など、通常のセメント原料を1200〜1500℃で焼成することによって製造される。生成する主要な鉱物相は、3CaO・SiO
2(以下、C
3Sという)、2CaO・SiO
2(以下、C
2Sという)、3CaO・Al
2O
3(以下、C
3Aという)、4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3(以下、C
4AFという)である。なお、微量の不純物が含まれてもよい。
【0013】
本発明におけるセメント組成物中の総SO
3量とは、セメント組成物中に含まれる石膏、硫酸アルカリ等に起因するSO
3量のセメント組成物に対する合計の含有量であり、総SO
3量は2.5〜5.0質量%である。総SO
3量が2.5質量%未満であるとコンクリートの拘束膨張率が150×10
−6未満になる虞があり、5.0質量%を超えるとコンクリートの拘束膨張率が250×10
−6よりも大きくなり、かつその硬化体が長期に渡って膨張し、強度低下を起こす場合がある。より好ましくは2.8〜4.5質量%であり、さらに好ましくは3.0〜4.0質量%である。
【0014】
セメント組成物中には、二水石膏、半水石膏等の石膏が含まれる。本発明においては、二水石膏および半水石膏の合計量に対する二水石膏の割合がSO
3換算で20%以上である。その割合が20%未満であるとコンクリートの拘束膨張率が150×10
−6未満になる虞がある。より好ましくは25%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0015】
本発明における膨張材としては、生石灰系およびエトリンガイト系、エトリンガイト−生石灰系のいずれも使用できる。膨張発現性の点から生石灰系膨張材がより好ましい。
【0016】
本発明における膨張コンクリートでは、膨張材の配合量をコンクリート中20kg/m
3未満と低く設定することができる。一方、下限の配合量は10kg/m
3であることが好ましい。10kg/m
3未満にするとコンクリートの拘束膨張率が150×10
−6未満になる虞がある。より好ましくは、10〜16kg/m
3であり、さらに好ましくは12〜15kg/m
3である。
【0017】
本発明における膨張コンクリートには石灰石骨材が使用される。石灰石骨材は、一部もしくは全量使用することができる。石灰石骨材の含有量は全骨材量に対して40質量%以上であることが好ましい。40質量%未満であると、コンクリートの拘束膨張率が150×10
−6未満になる虞がある。より好ましくは、45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。石灰石骨材以外に使用される骨材としてはモルタルやコンクリートに使用可能な骨材であればよく、例えば、川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、珪砂、石粉、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、再生粗骨材、スラグ粗骨材などが挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能である。
【0018】
本発明による膨張コンクリートは、本発明の効果を失わない範囲で、例えばモルタルやコンクリートに使用できる他の成分(混和剤(材))を含有するものであってもよい。このような成分として、具体的には、増粘剤、保水剤、防錆剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、空気連行剤、消泡剤、発泡剤、防水材、撥水剤、白華防止剤、凝結調整剤、硬化促進剤(材)、顔料、セメント用ポリマー、繊維などが例示される。
【0019】
本発明による膨張コンクリートは、材齢7日におけるコンクリート拘束膨張率が150〜250×10
−6を満足する。また、材齢28日においても、コンクリート拘束膨張率が150〜250×10
−6を保持し、長期に渡って安定した膨張性状を維持することができる。このため、強度発現性状にも優れる膨張コンクリートが得られる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。
【0021】
表1に示すセメントクリンカー粉砕物用いて、表2の通りにセメント組成物を調合した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
表3の材料を用い、環境温度20℃にて、コンクリートミキサを用いて練り混ぜて膨張コンクリートを製造した。表4に製造したそれぞれの膨張コンクリートの配合を示す。
【0027】
上記表4に記載した膨張コンクリートの硬化体について、各種特性を評価した。詳細を以下に説明する。
【0028】
<拘束膨張試験>
JIS A 6202「コンクリート用膨張材」のA法に準じて試験を行い、材齢7日および28日における拘束膨張率を求めた。
<圧縮強度試験>
JIS A 1132「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」に準じて供試体を作製し、24時間後に脱型後、材齢28日まで水中養生を行った。得られた各供試体の圧縮強度は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して測定した。
【0029】
上記試験で得られた結果を表5に示す。
【0030】
【表5】
【0031】
表5に示すように、本発明の膨張コンクリートに当たる配合No.1〜5のコンクリートはいずれも材齢7日の拘束膨張率が165〜210×10
−6と良好な膨張性能を発現し、収縮補償用コンクリートとして必要な拘束膨張率(150〜250×10
−6)を満足することが確認された。また、材齢28日の拘束膨張率において、過膨張が確認されず、材齢28日の圧縮強度においても膨張材無添加の配合No.6のコンクリートに対して、顕著な強度低下は確認されなかった。
【0032】
比較例に当たる配合No.7〜10のコンクリートは材齢7日の拘束膨張率が121〜141×10
−6と収縮補償用コンクリートとして必要な拘束膨張率(150〜250×10
−6)を満足することが出来なかった。
【0033】
比較例に当たる配合No.11のコンクリートは収縮補償用コンクリートとして必要な拘束膨張率(150〜250×10
−6)を満足したものの,材齢28日の拘束膨張率が過大膨張となり、その結果、材齢28日の圧縮強度が配合No.6に比べ、低下することが確認された。
【0034】
比較例に当たる配合No.12のコンクリートは材齢7日の拘束膨張率が収縮補償用コンクリートとして必要な拘束膨張率(150〜250×10
−6)を満足することができず、材齢28日の拘束膨張率が過大膨張となり、材齢28日の圧縮強度が配合No.6に比べ、低下することが確認された。