(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
製品の複数の部品にそれぞれ対応して配置され、前記複数の部品の基準位置が前記複数の部品の組立目標位置にそれぞれ位置するよう前記複数の部品を協働して組み立てるように構成された複数のロボットと、
目標位置生成器と、
計測システムと、を備え、
前記目標位置生成器が前記複数の部品の設計情報に基づく基準位置を有し、且つ、前記複数のロボットが、それぞれに対応する部品の前記設計情報に基づく基準位置を有しており、
前記目標位置生成器が、前記複数の部品の設計情報に基づく計測目標位置をそれぞれに対応する前記複数のロボットに送るとともに計測指令を前記計測システムに送り、
前記複数のロボットが、それぞれに対応する前記計測目標位置を受け取ると、それぞれに対応する部品を保持し、且つ保持した部品を、当該部品の前記設計情報に基づく基準位置が前記計測目標位置に位置するように搬送し、
前記計測システムが、前記計測指令を受け取ると、前記複数のロボットにそれぞれ保持された前記複数の部品の基準位置を計測し、この計測された基準位置を前記目標位置生成器に送り、
前記目標位置生成器が、前記複数の部品について、前記設計情報に基づく基準位置に対する前記計測された基準位置のずれに基づいて前記複数の部品の設計情報に基づく組立目標位置を補正することによって補正組立目標位置を生成し、当該補正組立目標位置を前記複数のロボットにそれぞれ送り、
且つ、前記複数のロボットが、それぞれ、前記補正組立目標位置を受け取ると、保持した複数の部品の前記設計情報に基づく基準位置が前記補正組立目標位置にそれぞれ位置するよう前記複数の部品を協働して組み立てるよう構成されている、複数のロボットを用いた製品製造システム。
前記目標位置生成器は、前記複数の部品がそれぞれ前記設計情報と同一の寸法を有し、且つ、所定の姿勢で前記複数のロボットにそれぞれ保持された場合の前記設計情報に基づく基準位置と前記計測された基準位置とを比較することによって、前記設計情報に基づく基準位置に対する前記計測された基準位置のずれを演算し、前記複数の部品の設計情報に基づく組立目標位置を、それぞれ、前記ずれを相殺するように補正することにより前記補正組立目標位置を生成するよう構成されている、請求項1に記載の複数のロボットを用いた製品製造システム。
複数の前記製品を製造する場合に、1つの製品を製造する毎に、前記目標位置生成器が前記計測目標位置を前記複数のロボットに送るとともに計測指令を前記計測システムに送る動作、前記複数のロボットが保持した部品を搬送する動作、前記計測システムが基準位置を計測して前記目標位置生成器に送る動作、前記目標位置生成器が前記補正組立目標位置を生成して前記複数のロボットに送る動作、及び前記複数のロボットが前記複数の部品を協働して組み立てる動作を、繰り返すよう構成されている、請求項1又は2に記載の複数のロボットを用いた製品製造システム。
前記計測システムは、3次元カメラを備え、前記3次元カメラが前記計測指令を受け取ると、前記複数のロボットにそれぞれ保持された前記複数の部品の前記基準位置が含まれた画像を撮像し、前記目標位置生成器が、前記3次元カメラによって撮像された画像を画像処理することによって、前記設計情報に基づく基準位置に対する前記計測された基準位置のずれを取得するよう構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複数のロボットを用いた製品製造システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る複数のロボットを用いた製品製造システムは、製品の複数の部品にそれぞれ対応して配置され、前記複数の部品の基準位置が前記複数の部品の組立目標位置にそれぞれ位置するよう前記複数の部品を協働して組み立てるように構成された複数のロボットと、目標位置生成器と、計測システムと、を備え、前記目標位置生成器が前記複数の部品の設計情報に基づく基準位置を有し、且つ、前記複数のロボットが、それぞれに対応する部品の前記設計情報に基づく基準位置を有しており、前記目標位置生成器が、前記複数の部品の設計情報に基づく計測目標位置をそれぞれに対応する前記複数のロボットに送るとともに計測指令を前記計測システムに送り、前記複数のロボットが、それぞれに対応する前記計測目標位置を受け取ると、それぞれに対応する部品を保持し、且つ保持した部品を、当該部品の前記設計情報に基づく基準位置が前記計測目標位置に位置するように搬送し、前記計測システムが、前記計測指令を受け取ると、前記複数のロボットにそれぞれ保持された前記複数の部品の基準位置を計測し、この計測された基準位置を前記目標位置生成器に送り、前記目標位置生成器が、前記複数の部品について、前記設計情報に基づく基準位置に対する前記計測された基準位置のずれに基づいて前記複数の部品の設計情報に基づく組立目標位置を補正することによって補正組立目標位置を生成し、当該補正組立目標位置を前記複数のロボットにそれぞれ送り、且つ、前記複数のロボットが、それぞれ、前記補正組立目標位置を受け取ると、保持した複数の部品の前記設計情報に基づく基準位置が前記補正組立目標位置にそれぞれ位置するよう前記複数の部品を協働して組み立てるよう構成されている。ここで、「前記複数のロボットが、それぞれに対応する部品の前記設計情報に基づく基準位置を有しており」は、複数のロボットが、予めそれぞれに対応する部品の設計情報に基づく基準位置を有している場合と、複数のロボットが、それぞれに対応する部品を保持する前に目標位置生成器からそれぞれに対応する部品の設計情報に基づく基準位置を受け取る場合とを含む。「それぞれに対応する部品の前記設計情報に基づく基準位置を受け取る場合」は、計測目標位置と一緒に受け取る場合と、計測目標位置と別個に受け取る場合とを含む。「部品を組み立てる」には、部品を所定位置に搬送することの他に、部品同士を締結、溶接等の一体化手段によって一体化することを含む。
【0011】
この構成によれば、ロボットに保持された部品の基準位置の計測に基づいて、設計情報に基づく組立目標位置を補正した補正後組立目標位置を生成するので、ティーチングが不要である。また、目標位置生成器が、一括して、計測されたデータに基づいて設計情報に基づく組立目標位置を補正して補正組立目標位置を生成するので、複数のロボットが個々に当該処理を行う場合に較べて、効率良く補正組立目標位置を生成することができる。さらに、特段の効果として、目標位置生成器が、複数の部品が、それぞれ、設計情報と同一の寸法(公差ゼロ)を有し、且つ、所定の姿勢で複数のロボットにそれぞれ保持された場合の設計情報に基づく基準位置と計測された基準位置とを比較し、両者間のずれを演算し、複数の部品の設計情報に基づく組立目標位置を、それぞれ、この両者間のずれを相殺するように補正することにより、複数の部品の仕上がり寸法誤差及び保持誤差を相殺することができる。
【0012】
前記目標位置生成器は、前記複数の部品がそれぞれ前記設計情報と同一の寸法を有し、且つ、所定の姿勢で前記複数のロボットにそれぞれ保持された場合の前記設計情報に基づく基準位置と前記計測された基準位置とを比較することによって、前記設計情報に基づく基準位置に対する前記計測された基準位置のずれを演算し、前記複数の部品の設計情報に基づく組立目標位置を、それぞれ、前記ずれを相殺するように補正することにより前記補正組立目標位置を生成するよう構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、複数の部品の仕上がり寸法誤差及び保持誤差を相殺することができるので、精度良く複数の部品を組み立てることができる。
【0014】
複数の前記製品を製造する場合に、1つの製品を製造する毎に、前記目標位置生成器が前記計測目標位置を前記複数のロボットに送るとともに計測指令を前記計測システムに送る動作、前記複数のロボットが保持した部品を搬送する動作、前記計測システムが基準位置を計測して前記目標位置生成器に送る動作、前記目標位置生成器が前記補正組立目標位置を生成して前記複数のロボットに送る動作、及び前記複数のロボットが前記複数の部品を協働して組み立てる動作を、繰り返すよう構成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、従来技術のように、1つの製品を製造する毎に、製品情報に基づいて加工内容を決定する必要がないので、効率良く製品を製造することができる。
【0016】
前記計測システムは、3次元カメラを備え、前記3次元カメラが前記計測指令を受け取ると、前記複数のロボットにそれぞれ保持された前記複数の部品の前記基準位置が含まれた画像を撮像し、前記目標位置生成器が、前記3次元カメラによって撮像された画像を画像処理することによって、前記設計情報に基づく基準位置に対する前記計測された基準位置のずれを取得するよう構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、簡単なハードウェア構成で正確に部品の基準位置を計測することができる。
【0019】
この構成によれば、好適に自動車を製造することができる。
【0020】
以下、具体的に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付してその重複する説明を省略する。また、これらの図は、本発明を説明するための図であるので、説明に不要な要素が省略され又は必要に応じて誇張される場合があるので、寸法が正確でない場合又は複数の図が互いに一致しない場合がある。
【0021】
(実施形態)
[構成]
図1は、本発明の実施形態に係る複数のロボットを用いた製品製造システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態の複数のロボットを用いた製品製造システム(以下、単に製品製造システムと呼ぶ場合がある)100は、目標位置生成器1と、複数(ここでは2台)の第1及び第2ロボット2、3と、計測システムとしてのカメラ4と、を備える。
【0023】
「製品」は、複数の部品を組み立てて製造されるものであればよい。ここでは、自動車が例示される。「製品製造システム」は、複数のロボットが協働して複数の部品を組み立てることによって製品を製造する製品製造システムであればよい。ここでは、複数のロボットが協働して複数の部品を組み立てることによって自動車を製造する製品製造システムが例示される。「複数のロボットが協働して複数の部品を組み立てる」こととして、ここでは、2台のロボットの内の一方のロボットが、ドアを、車体のボルト孔にドアのボルト挿通孔が重なるように保持し、他方のロボットがドアのボルト挿通孔を挿通してボルトを車体のボルト孔に螺止する作業(工程)が例示される。
【0024】
「計測システム」は、第1及び第2ロボット2、3に保持された部品の基準位置を計測できるものであればよい。ここでは、上述のようにカメラ4が例示される。
【0025】
目標位置生成器1は、計測目標位置及び補正組立目標位置を生成する。また、目標位置生成器1は、複数の部品の設計情報に基づく基準位置を有している。目標位置生成器1は、データを入力する入力部(図示せず)と、データを処理する処理部(図示せず)と、データを記憶する記憶部(図示せず)と、データを出力する出力部(図示せず)とを備える。目標位置生成器1は、例えば、パーソナルコンピュータで構成される。目標位置生成器1は、後述するように、第1及び第2ロボット2、3のロボット制御器21、31に計測目標位置を送り、且つ計測指令をカメラ4に送る。そして、カメラ4から、第1及び第2ロボット2、3がそれぞれ保持する部品の基準位置の撮像画像を受け取ると、これを画像処理して、第1及び第2ロボット2、3がそれぞれ保持する部品の補正組立目標位置を生成し、これを第1及び第2ロボット2、3のロボット制御器21、31に送る。
【0026】
第1及び第2ロボット2、3は、部品を組み立てることが可能なものであればよい。第1及び第2ロボット2、3として例えば、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット、パラレルリンクロボット、直交ロボット等が挙げられる。ここでは、第1及び第2ロボット2、3は、6軸の垂直多関節ロボットである。
【0027】
第1及び第2ロボット2、3は、それぞれ、ロボットアーム22、32と、ロボットアーム22、32の動作をそれぞれフィードバック制御するロボット制御器21、31とを備える。ロボットアーム22、32の具体的構成は後述する。ロボット制御器21、31は、演算部(図示せず)と記憶部(図示せず)とを備えていて、記憶部に所定の動作プログラムが格納されており、その所定の動作プログラムを演算部が読み出して実行することにより、所定の動作を行う。ロボット制御器21、33は、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FGPA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等によって構成される。ここでは、第1及び第2ロボット2、3は、それぞれ、所定の部品を保持し、その保持した部品の基準位置が組立目標位置に位置するようにそれぞれの所定の部品を協働して組み立てる。具体的には、所定の動作プログラムは、目標位置生成器1から、目標位置を受け取ると、所定の部品を、当該部品の基準位置が目標位置に位置し且つ当該部品が適宜な姿勢を取るように搬送するよう構成されている。
【0028】
かくして、第1及び第2ロボット2、3のロボット制御器21、31は、それぞれ、目標位置生成器1から計測目標位置を受け取ると、ロボットアーム22、32が部品を保持し、カメラ4が保持した部品の基準位置を撮像可能な姿勢を取るようロボットアーム22、23を制御する。そして、それぞれ、目標位置生成器1から、補正組立目標位置を受け取ると、ロボットアーム22、23が、保持した部品の設計情報に基づく基準位置が補正組立目標位置に位置し且つ適宜な姿勢を取るように所定の部品を組み立てるようロボットアーム22、23を制御する。その後、第1及び第2ロボット2、3のロボット制御器21、31は、それぞれ、所定の部品の組み立てが完了したことを目標位置生成器1に通知する。
【0029】
なお、第1及び第2ロボット2、3のロボット制御器21、31は、それぞれ、所定の部品の設計情報に基づく基準位置を予め有しているか、又は、目標位置生成器1からそれぞれ、所定の部品の設計情報に基づく基準位置を受け取る。この場合、計測目標位置と一緒に受け取る場合と、計測目標位置と別個に受け取る場合とがある。ここでは、所定の部品の設計情報に基づく基準位置を計測目標位置と一緒に受け取る場合が例示される。
【0030】
カメラ4は、例えば、3次元カメラで構成される。カメラ4は、目標位置生成器1からの計測指令に従って、第1及び第2ロボット2、3が保持する部品の基準位置を撮像し、撮像した撮像画像(画像データ)を目標位置生成器1に送る。3次元カメラは、周知であるので、その説明を省略する。3次元カメラは、3次元カメラから被写体までの距離を取得することができる。従って、3次元カメラの撮像画像から、3次元カメラの3次元座標系における被写体の位置(座標)を取得することができる。
【0031】
図2Aは、
図1の複数のロボットを用いた製品製造システムの一例のハードウェアの構成を示す模式図であって、ロボットが部品を保持した状態を示す図である。
図2Bは、
図1の複数のロボットを用いた製品製造システムの一例のハードウェアの構成を示す模式図であって、カメラがロボットに保持された部品の基準位置を撮像している状態を示す図である。
図2Cは、
図1の複数のロボットを用いた製品製造システムの一例のハードウェアの構成を示す模式図であって、ロボットが、保持した部品の基準位置が目標位置に位置するよう部品を組み立てている状態を示す図である。
【0032】
図2A乃至
図2Cを参照すると、ここでは、製品製造システム100は製品として自動車5を製造する。なお、
図2A乃至
図2Cでは、目標位置生成器1及びロボット制御器21、31が省略されている。製品製造システム100においては、自動車5の製造ラインが設けられており、組み立て工程毎に車体架台9が設けられている。製造ラインは、これらの図において、左上から右下に向かって車体が複数の工程を経由しながら順次送られるように構成されている。以下では、便宜上、この製造ラインの上流の方向及び下流の方向を、それぞれ、後方向及び前方向と呼び、この製造ラインの右の方向及び左の方向を、それぞれ、右方向及び左方向と呼ぶ。
図2A乃至
図2Cには、車体架台9に固定された車体51に右後ドア(以下、単にドアと呼ぶ場合がある)52がボルト10によって締結される工程が示されている。すなわち、車体51、ドア52、及びボルト10が組み立てられる工程が示されている。そして、ドア52及びボルト10にそれぞれ対応して第1ロボット2のロボットアーム22及び第2ロボット3のロボットアーム32が配置されている。
【0033】
この工程では、車体架台9の右側の車体架台9から離れた位置に、ドア52が載置されるドア載置装置6が配置されている。ドア載置装置6には、ドア52が適宜供給される。ドア載置装置6の左側には、ドア引出装置7が配置されている。ドア引出装置7は、
図2Bに示されるように、枠体からなる保持部を備え、この保持部が右方向に移動して、ドア載置装置6に載置されたドア52を載せ、その後左方向に移動することにより、ドア52をドア載置装置6から引き出す。
【0034】
ドア引出装置7の左側には、第1ロボット2のロボットアーム22が配置されている。ロボットアーム22は、6軸の垂直多関節ロボットである。ロボットアーム22の先端には、エンドエフェクタとして、ドア保持装置201が装着されている。ドア保持装置201は、ドア52を保持できるものであればよい。ここでは、ドア保持装置201は、ドア52を吸着する吸着部を備えた枠体で構成されている。ドア保持装置201の動作は、ロボット制御器21によって制御される。
【0035】
ロボットアーム22の前側で且つ斜め左側には、ロボットアーム22と間隔を空けて、ロボットアーム32が配置されている。ロボットアーム32は、車体架台9の直ぐ傍に配置されている。ロボットアーム32は、6軸の垂直多関節ロボットである。
図2A及び
図2Bを参照すると、ロボットアーム32の先端には、2台のナットランナ301a、301bと第2カメラ301cとが設けられたエンドエフェクタ301が装着されている。エンドエフェクタ301は、ロボットアーム32の先端のねじり回転可能な第6関節にメカニカルインターフェースを介して接続されている。エンドエフェクタ301は、基枠を有しており、この基枠に2台のナットランナ301a、301bが、これらのナットランナ301a、301bにおけるボルトの回転軸が、ロボットアーム32の第6関節のねじり回転の回転軸に垂直な方向を向くように設けられている。ナットランナ301a、301bの動作はロボット制御器31によって制御される。
【0036】
ロボットアーム32の右側であってロボットアーム22の前側には、ボルト載置台8が配置されている。ボルト載置台8には、多数の所定のボルト10が、ロボットアーム32のナットランナ301a、301bが当該ボルト10を取り出して保持することが可能なように配置されている。
【0037】
ロボットアーム22及びロボットアーム32の後方に、カメラ4が配置されている。
【0038】
[動作]
次に、以上のように構成された製品製造システム100の動作を説明する。
【0039】
<基準位置及び目標位置>
最初に、「基準位置」及び「目標位置」を説明する。「基準位置」は、部品の所定の部位を代表する位置であり、部品上の任意の位置に設定される。「目標位置」は、第1及び第2ロボット2、3がそれぞれ、所定の部品を搬送すべき位置である。本実施形態では、「目標位置」として、上述のように、「計測目標位置」及び「組立目標位置」が例示されている。ここでは、「組立目標位置」について説明する。
【0040】
図4は、各部品の基準位置及び組立目標位置を示す概念図であって、(a)は、車体のボルト孔に設定された組立目標位置を示す断面図であり、(b)はドアのボルト挿通孔の基準位置を示す断面図であり、(c)は、ボルトの基準位置を示す模式図である。
図5は、各部品が組み立てられた状態における各部品の基準位置及び組立目標位置を概念的に示す断面図である。
図5は、後で
図6を用いて説明する基準座標系における状態を示している。また、車体51は、所定の位置に上下に並ぶ2つのボルト孔51b−1、51b−2を有している(
図6参照)。2つのボルト孔51b−1、51b−2は互いに同じ構造を有している。ドア52は、所定の位置に上下に並ぶ2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2を有している(
図6参照)。2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2は互いに同じ構造を有している。
図4及び
図5には、上側のボルト孔51b−1及び上側のボルト挿通孔52a−1のみが示されている。下側のボルト孔51b−2及び下側のボルト挿通孔52a−2は、上側のボルト孔51b−1及び上側のボルト挿通孔52a−1と同様であるので、以下では、上側のボルト孔51b−1及び上側のボルト挿通孔52a−1についてのみ説明する。
【0041】
図4(a)を参照すると、ここでは、車体51の本体を構成する板状のフレームにナットサート(ブラインドナット又はポップナット)51a−1が設けられ、このナットサート51a−1のネジ孔が車体51のボルト孔51b−1を構成している。そして、この車体51のボルト孔51b−1について、ドア52の組立目標位置Pt1−1と、ボルト10の組立目標位置Pt2−1とが設定されている。これら2つの組立目標位置Pt1−1及びPt2−1は、ボルト孔51b−1の中心軸53−1上に位置している。組立目標位置Pt1−1は、ドア52が車体51に締結されたときにドア52の基準位置が位置すると想定される位置に設定される。組立目標位置Pt2−1は、ボルト10が車体51に螺止されたときにボルト10の基準位置が位置すると想定される位置に設定される。
【0042】
図4(b)を参照すると、ドア52のボルト挿通孔52a−1について、ドア52の基準位置Pr1−1が設定されている。この基準位置Pr1−1は、例えば、ボルト挿通孔52a−1の中心軸54−1上であってボルト挿通孔52a−1の全長の1/2の位置に位置している。
【0043】
図4(c)を参照すると、ボルト10に基準位置Pr2−1が設定されている。この基準位置Pr2−1は、例えば、ボルト10の中心軸11上であってボルト10の先端に位置している。
【0044】
図5を参照すると、車体51にドア52がボルト10によって締結された状態(換言すると、車体51、ドア52、及びボルト10が組み立てられた状態)では、ドア52の基準位置Pr1−1が車体51のボルト孔51b−1に対して設定された組立目標位置Pt1−1に位置し、ボルト10の基準位置Pr2−1が車体51のボルト孔51b−1に対して設定された組立目標位置Pt2−1に位置している。
【0045】
下側のボルト孔51b−2及び下側のボルト挿通孔52a−2は、上側のボルト孔51b−1及び上側のボルト挿通孔52a−1と同様であるので、ドア52の2つのボルト挿通孔の基準位置Pr1−1、Pr1−2が、それぞれ、組立目標位置Pt1−1、Pt1−2に位置するように第1ロボット2(正確にはロボットアーム22)の動作を制御し、且つ、2つのボルト10の基準位置Pr2−1、Pr2−2が、それぞれ、組立目標位置Pt2−1、Pt2−2に位置するように、第2ロボット3(正確にはロボットアーム32)の動作を制御することによって、車体51、ドア52、及びボルト10を適切に組み立てることができる。
【0046】
但し、
図4及び
図5は、「基準位置」及び「組立目標位置」の概念を説明する図であり、実際には、車体51、ドア52、及びボルト10の公差、ロボットアーム22がドア52を保持した場合のドア52の姿勢の誤差、ロボットアーム23がボルト10を保持した場合のボルト10の姿勢の誤差によって、基準位置(Pr1−1、Pr1−2)、(Pr2−1、Pr2−2)は、それぞれ、組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)に必ずしも一致せず、実際には所定の許容範囲内に位置する。
【0047】
なお、基準位置(Pr1−1、Pr1−2)、(Pr2−1、Pr2−2)及び組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)は、ドア52、ボルト10、及び車体51について、任意の位置に設定できる。
【0048】
<座標変換>
次に、「座標変換」を説明する。
図6は、基準座標系と各ロボットの座標系との関係を示す模式図である。
【0049】
図1及び
図6を参照すると、目標位置生成器1は、基準座標系C0を有している。基準座標系C0の原点P0は、実空間の任意の点に設定される。第1ロボット2のロボット制御器21は、第1ロボット座標系C1を有している。第1ロボット座標系C1の原点P1は、ロボットアーム22の任意の点に設定される。第2ロボット3のロボット制御器31は、第2ロボット座標系C2を有している。第2ロボット座標系C2の原点P2は、ロボットアーム32の任意の点に設定される。基準座標系C0における第1ロボット座標系の原点P1、第2ロボット座標系C2の原点P2、及びカメラ4の座標系の原点(撮像面)の位置座標は既知である。
図6において、点線は、目標位置生成器1の基準座標系における位置ベクトル(位置座標)を示す。また、実線は、カメラ4が取得する被写体までの距離を示す。
【0050】
第1ロボット2(実際にはロボット制御器21)は、第1ロボット座標系C1における計測目標位置(参照符号無し)及び組立目標位置Pt1−1、Pt1−2と、ドア52の基準位置Pr1−1、Pr1−2とを認識しており、ドア52の基準位置Pr1−1、Pr1−2が、それぞれ、計測目標位置及び組立目標位置Pt1−1、Pt1−2に位置するように、ドア52を搬送する。
【0051】
第2ロボット3(実際にはロボット制御器31)は、第2ロボット座標系C2における計測目標位置(参照符号無し)及び組立目標位置Pt2−1、Pt2−2と、2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2とを認識しており、2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2が、それぞれ、計測目標位置及び組立目標位置Pt2−1、Pt2−2に位置するように、2つのボルト10、10を搬送し、車体51に螺止する。
【0052】
カメラ4は、第1の被写体であるドア52の2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2の基準位置Pr1−1、Pr1−2までの距離を取得することが可能な画像を撮像する。また、第2の被写体である2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2までの距離を取得することが可能な画像を撮像する。
【0053】
目標位置生成器1は、カメラ4が撮像した画像から、ドア52の2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2の基準位置Pr1−1、Pr1−2と2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2のカメラ4の撮像面を原点とする座標系における位置座標を演算する。そして、基準座標系C0におけるカメラ4の座標系の原点の座標を用いて座標変換を行い、計測目標位置におけるドア52の2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2の基準位置Pr1−1、Pr1−2と2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2の実際の位置座標を取得する。そして、これらの位置座標を、それぞれ、設計情報に基づく、ドア52の2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2の基準位置Pr1−1、Pr1−2及び2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2の位置座標と比較することによって、補正組立目標位置を生成する。
【0054】
そして、これらの補正組立目標位置を、それぞれ、基準座標系C0における第1及び第2ロボット座標系の原点P1、P2の位置座標を用いて座標変換を行い、この座標変換された補正組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を、それぞれ、第1及び第ロボット2、3(実際にはロボット制御器21、31)に送る。
【0055】
第1ロボット2(実際にはロボット制御器21)は、第1ロボット座標系C1において、ドア52の基準位置Pr1−1、Pr1−2が、それぞれ、補正組立目標位置Pt1−1、Pt1−2に位置するように、ドア52を搬送する。
【0056】
第2ロボット3(実際にはロボット制御器31)は、第2ロボット座標系C2において、2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2が、それぞれ、補正組立目標位置Pt2−1、Pt2−2に位置するように、2つのボルト10、10を搬送し、車体51に螺止する。
【0057】
<製品製造システムの動作>
次に製品製造システム100の動作を説明する。
図3は、
図1の目標位置生成器の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、説明を簡略化するために、ロボット制御器21及びロボット制御器の32の制御の説明を省略し、ロボット制御器21及びロボット制御器の32によりそれぞれ制御されたロボットアーム22及びロボットアーム32の動作を記述する。
【0058】
図3を参照すると、まず、目標位置生成器1が、第1ロボット2のロボット制御器21及び第2ロボット3のロボット制御器31に、それぞれ、計測目標位置を送り、且つ計測指令を計測システムであるカメラ4及びドア引出装置7に送る(ステップS1)。その後、その計測結果を受け取るよう待機する(ステップS2でNO)。
【0059】
この間に、計測指令に従って、ドア引出装置7がドア載置装置6からドア52を引き出す。そして、計測目標位置を受け取ったロボットアーム22がドア保持装置201にドア52を保持し、ドア52の基準位置(Pr1−1、Pr1−2)が計測目標位置に位置するように、保持したドア52を搬送する。また、ロボットアーム322がナットランナ301a、301bに2つのボルト10、10をそれぞれ保持し、保持した2つのボルトの基準位置Pr2−1、Pr2−2が、それぞれ、計測目標位置に位置するように、保持した2つのボルト10,10を搬送する(
図2A及び
図2B参照)。この際、ロボットアーム22及びロボットアーム32は、それぞれ、保持したドア52の基準位置Pr1−1、Pr1−2及び2つのボルト10の基準位置Pr2−1、Pr2−2が、カメラ4によって撮像可能な姿勢を取る。カメラ4は、まず、ロボットアーム22に保持されたドア52を撮像し、その撮像画像(撮像データ)を目標位置生成器1に送る。ついで、ロボットアーム32に保持された2つのボルト10、10を撮像し、その撮像画像(撮像データ)を目標位置生成器1に送る。
【0060】
目標位置生成器1は、カメラ4から計測結果である撮像画像(撮像データ)を受け取る(ステップS2でYES)と、補正組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を生成する。具体的には、目標位置生成器1は、ロボットアーム22が保持するドア52の基準位置Pr1−1、Pr1−2の撮像画像を受け取ると、これを画像処理して、ドア52の設計情報に基づく基準位置Pr1−1、Pr1−2に対する計測された基準位置Pr1−1、Pr1−2のずれを演算して取得する。また、ロボットアーム23が保持する2つのボルト10、10の基準位置Pr2−1、Pr2−2の撮像画像を受け取ると、これを画像処理して、2つのボルト10,10の設計情報に基づく基準位置Pr2−1、Pr2−2に対する計測された基準位置Pr2−1、Pr2−2のずれを演算して取得する。
【0061】
目標位置生成器1は、ドア52及びボルト10が、それぞれ、設計情報と同一の寸法(公差ゼロ)を有し、且つ、所定の姿勢でロボットアーム22及びロボットアーム32に保持された場合の設計情報に基づく基準位置と計測された基準位置とを比較し、両者間のずれを演算する。そして、ドア52及びボルト10の設計情報に基づく組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を、それぞれ、この両者間のずれを相殺するように補正し、それによって、補正組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を生成する。そして、この補正組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を、それぞれ、第1及び第2ロボット2、3のロボット制御器21、31に送る(ステップS3)。そして、部品組み立て作業の完了を待機する(ステップS4でNO)。
【0062】
この間に、ロボットアーム22が、保持したドア52を半開状態で車体51に、車体51の2つのボルト孔51b−1、51b−2にドア52の2つのボルト挿通孔52a−1、52a−2がそれぞれ重なるように保持し、ロボットアーム23が保持した2つのボルト10、10を、それぞれ、ドア52のボルト挿通孔52a−1、52a−2を介して、車体51の2つのボルト孔51b−1、51b−2に螺止する。これにより、ドア52が車体51にボルト10、10によって締結(取付)される。この際に、第1ロボット2では、ドア52の設計情報に基づく基準位置Pr1−1、Pr1−2がそれぞれ補正組立目標位置Pt1−1、Pt1−2に位置するようにロボットアーム22の動作が制御され、且つ第2ロボット3では、ボルト10、10の設計情報に基づく基準位置Pr2−1、Pr2−2がそれぞれ補正組立目標位置Pt2−1、Pt2−2に位置するようにロボットアーム32の動作が制御される。
【0063】
そして、ロボット制御器21及びロボット制御器31は、それぞれ、ドア52及びボルト10の組立作業(部品組立作業)が完了したことを目標位置生成器1に通知する。
【0064】
目標位置生成器1は、部品組立作業の完了を受け取る(ステップS4でYES)と、ステップS1から4までの制御を終了する。
【0065】
なお、目標位置生成器1は、ステップS1からS4までの制御を、1つの車体51が車体架台9に配置される毎に繰り返す。
【0066】
[作用効果]
以上に説明したように、本実施形態によれば、第1及び第2ロボット2、3に保持された部品52、10の基準位置の計測に基づいて、設計情報に基づく組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)が補正されるので、ティーチングが不要である。また、目標位置生成器1が、一括して、計測されたデータに基づいて設計情報に基づく組立目標位置Pt1−1、Pt−2を補正して補正組立目標位置Pt1−1、Pt1−2を生成するので、第1及び第2ロボット2、3が個々に当該処理を行う場合に較べて、効率良く補正組立目標位置Pt1−1、Pt−2を生成することができる。
【0067】
そして、特段の作用効果として、目標位置生成器1が、ドア52及びボルト10、10が、それぞれ、設計情報と同一の寸法(公差ゼロ)を有し、且つ、所定の姿勢でロボットアーム22及びロボットアーム32にそれぞれ保持された場合の設計情報に基づく基準位置(Pr1−1、Pr1−2)、(Pr2−1、Pr2−2)と計測された基準位置(Pr1−1、Pr1−2)、(Pr2−1、Pr2−2)とを比較し、両者間のずれを演算し、ドア52及びボルト10、10の設計情報に基づく組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を、それぞれ、この両者間のずれを相殺するように補正して補正組立目標位置(Pt1−1、Pt1−2)、(Pt2−1、Pt2−2)を生成するので、ドア52及びボルト10、10の仕上がり寸法誤差及び保持誤差が相殺される。
【0068】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。