(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974986
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】電子顕微鏡観察用の包埋樹脂試料の作製方法およびそれに用いる型枠。
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20211118BHJP
G01N 1/32 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N1/32 A
G01N1/28 G
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-169305(P2017-169305)
(22)【出願日】2017年9月4日
(65)【公開番号】特開2019-45327(P2019-45327A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】作田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】礒野 晶雄
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−287941(JP,A)
【文献】
特開2013−167525(JP,A)
【文献】
特開2007−248368(JP,A)
【文献】
特開2005−043106(JP,A)
【文献】
米国特許第04353856(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
G01N 1/36
G01N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に有底の穴を形成したプレートを準備する工程と、
前記穴の開口部から穴の中に試料と樹脂の混合液を注いで固化させ、穴の中で包埋樹脂を作製する工程と、
穴の中に包埋樹脂を保持した前記プレートを切断し、包埋樹脂を保持した前記プレート断片を作製する工程と、
前記プレートの断面をイオンビーム加工装置に導入し、前記プレートの裏面方向から前記包埋樹脂にイオンビームを照射することにより、包埋樹脂の断面を研磨する工程と、
を備える電子顕微鏡観察用の包埋樹脂試料の作製方法。
【請求項2】
前記包埋樹脂の断面を研磨する工程において、前記イオンビーム加工装置に導入されたプレート断片には、前記プレートの裏面側にイオンビームの前記包埋樹脂への照射を部分的に遮る遮蔽板が配置され、イオンビームは前記遮蔽板と前記包埋樹脂にまたがって照射される請求項1記載の電子顕微鏡観察用の包埋樹脂試料の作製方法。
【請求項3】
前記プレートに切断位置を示す確認線又は切り込みを設ける工程を更に備える請求項1又は2記載の電子顕微鏡観察用の包埋樹脂試料の作製方法。
【請求項4】
前記プレートの有底の穴は、貫通孔を有するプレートの一方の面に封止体を取り付け、貫通孔の一方の開口部を封止体により塞ぐことにより形成される請求項1乃至3のいずれかに記載の電子顕微鏡観察用の包埋樹脂試料の作製方法。
【請求項5】
前記封止体は、金属素材、単結晶素材またはアモルファス素材で構成される請求項4記載の電子顕微鏡観察用の包埋樹脂試料の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察用試料をイオンビーム加工装置を用いて作製する方法に関し、特に粉体の包埋樹脂試料を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を用いて、粉体を構成する微小粒子の断面を観察することにより内部構造の解析がなされている。
微小粒子の断面を電子顕微鏡観察するための従来の方法が、特許文献1に記載されている。図 7(a)は、粉体の包埋樹脂試料を作製するために使用する型枠である。図 7(b)は、図 7(a)のLL断面を示した図である。図 7(b)に示すように、型枠の貫通孔C1に液状の樹脂と粉体との混合物を注いで、樹脂C2が固まるのを待つ。樹脂C2が固まった後、図 7(c)に示すように、粉体C3を含む樹脂C2を型枠から取り出し、点線C4で切断する。樹脂C2から切断された包埋樹脂試料C5は、図 7(d)のように、イオンビーム加工装置の試料台Dと遮蔽板Sに、挟まれて装着される。そして、遮蔽板Sから突き出た部分にイオンビームを当てられて、断面C6が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−167525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、粉体を包埋した樹脂を型枠から取り出し、観察部位を選択して切断し、イオンビーム加工装置の試料台と遮蔽板で挟む必要があり、小さな包埋樹脂試料に対して繊細な加工作業を行わねばならず、作業に熟練を要する。また、イオンビーム加工装置で包埋樹脂試料の表面を加工する際に、熱に弱い粉体の場合には、加工熱による融解や変形等のダメージが試料に発生してしまう恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明は、表面に有底の穴を形成したプレートを準備する工程と、
前記穴の開口部から穴の中に試料と樹脂の混合液を注いで固化させ、穴の中で包埋樹脂を作製する工程と、
穴の中に包埋樹脂を保持した前記プレートを切断し、包埋樹脂を保持した前記プレート断片を政策する工程と、
前記プレートの断面をイオンビーム加工装置に導入し、前記プレートの裏面方向から前記包埋樹脂にイオンビームを照射することにより、包埋樹脂の断面を研磨する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、型枠から包埋樹脂試料を取り出すことなく、加工作業および取付作業が行えるため、熟練を要することなく作業が可能となる。また、イオンビーム加工により包埋樹脂試料に発生した熱が型枠を介して放散されるため、熱によるダメージを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る穴の開いたプレートを示した図である。
【
図2】本実施形態に係るプレートの穴に樹脂と粉体の混合物を流し込んだ状態を示した図である。
【
図3】本実施形態に係るプレートの断面を示した図である。
【
図4】本実施形態に係る電子顕微鏡の観察用試料を回転研磨する模式図である。
【
図5】本実施形態に係る電子顕微鏡の観察用試料の断面をイオンビームで加工する模式図である。
【
図6】本実施形態に係るプレートの穴に樹脂と粉体の混合物を流し込んだ状態を示した図である。
【
図7】従来例に係る試料作製の手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
実施例1
(1)準備
図 1に示すように、穴2が設けられたプレート1を型枠として用意する。
【0010】
プレート1には、シリコンウエハから直方体状に切り出されたシリコン基板が用いられる。プレート1の寸法は、例えば、厚さ1mm×幅4mm×奥行き8mmであり、穴2は、直径2mm程度の貫通孔である。
【0011】
プレート1は、図 2に示すように、アルミ板3(封止体)の上に密着固定させられて、穴2の一方の開口部が塞がれる。その際に、プレート1の下面に接着剤を塗布して接着固着するのが好ましい。アルミ板3は、プレート1よりも薄い0.1mm程度の厚さである。
【0012】
(2)包埋
粉体と液状の樹脂との混合物が作成され、混合物が脱泡処理された状態でプレート1の穴2に注がれる。樹脂は、耐熱性のあるものが用いられる。樹脂が硬化するまで数時間放置することによって、粉体を樹脂に含ませた包埋樹脂4が作製される。穴2の内部で、包埋樹脂4は、アルミ板3とも穴2の内部側面とも密着して硬化している。
【0013】
(3)切断
図 2(a)に示すように、プレート1の上面Aには、穴2を分断する位置に、確認線5が、書き入れられる。確認線5に沿って切断器具を移動させることにより、包埋樹脂4を含んだプレート1とアルミ板3とを切断2分割すると、それぞれの分割片には、図 2(b)に示すように、包埋樹脂4の断面が露出している。切断器具には、バンドソーやロースピードカッターなどの金属を切断できる器具が用いられる。包埋樹脂4ごとプレート1とアルミ板3とを一体として切断しているので、包埋樹脂4とアルミ板3と密着させた状態を保つことができる。図 3に示した包埋樹脂4の断面には、粉体6が存在する。粉体6は、樹脂との密度の差により、樹脂全体が硬化したときには、プレート1の下面B側に沈殿している。以後、包埋樹脂4を含んだプレート1とアルミ板3とが、確認線5に沿って切断されたものを観察用試料7と呼ぶ。
【0014】
(4)機械研磨
図 4に示すように、観察用試料7の断面を研磨器の研磨面8に向けて、観察用試料7が研磨面8に対して垂直になるようにセットする。観察用試料7の断面が10um程度以下の凹凸になるまで研磨を行う。これは、イオンビーム加工装置による観察用試料7の断面の加工時に、観察用試料7の断面にある凹凸の影響によって生じるスジ状の加工痕を出現させないようにするためである。
【0015】
(5)イオンビームによる断面処理
機械研磨終了後、観察用試料7は、イオンビーム加工装置で断面処理される。図 5は、イオンビーム加工装置の模式図である。イオンビーム加工装置は、真空チャンバー内で観察用試料7に向けてイオンビーム11を照射して、観察用試料7の断面処理をする機能を備えている。イオンビーム11は、真空チャンバー内でイオン銃10から発生し、2から6keV程度のエネルギーを持った状態で観察用試料7に照射される。
【0016】
観察用試料7は、図 5に示すように、アルミ板3がイオン銃側に向けられて、試料ホルダ14に取り付けられ、イオン銃10から発生するイオンビーム11の光軸12に対して垂直に配置される。そして、観察用試料7の切削する部分以外をイオンビームから覆い隠すように、遮蔽板13が観察用試料7の上に載せられる。イオンビームがアルミ板3側から観察用試料7および遮蔽板13に向けて照射されると、観察用試料7の遮蔽板13から露出した部分がアルミ板3と共に切削加工され、平滑化された断面が作成される。
【0017】
イオン銃側に向けられたアルミ板3は、包埋樹脂4と密着していることによりイオンビームによる切削加工時に包埋樹脂4から発生する熱を効率よく吸収し遮蔽板13へ伝えて逃がす役割を果たし、プレート1は、切削加工時に発生する熱を試料ホルダ14に伝えて逃がす役割を果たす。このため、試料へ与える熱による融解や変形等のダメージを軽減することができる。アルミ板以外でも、一般的に熱伝導率が高く、イオンビームでの処理の際に、構成する物質の硬度の違いによってスジ状の加工痕が生じない素材を用いることが好ましく、例えば、アモルファスもしくは単結晶のシートを用いることができる。
【0018】
(6)観察
断面処理が行われた観察用試料7は、走査電子顕微鏡によって、粉体6が露出している箇所を観察される。
【0019】
本発明では、プレートごと包埋樹脂を切断した後は、切断されたプレートを手で持って機械研磨作業、イオンビーム加工装置、走査電子顕微鏡へのセット及び取り出しができるので、型枠から取り出した包埋樹脂をそのまま取り扱わねばならなかった従来に比べ、試料の取扱いが容易になり、熟練を必要とせずに試料作製を行うことができる。
【0020】
実施例2
実施例1の変形例を説明する。図 6は、本実施形態に係る穴の開いたプレート1を示した斜視図である。実施例1と同様に、プレート1には、シリコンウエハから直方体状に切り出されたシリコン基板が用いられる。
【0021】
(1)準備
図 6(b)に示すように、直径2mm程度の有底の穴15が開けられたプレート1を用意する。プレート1の穴15は、例えば、フッ化水素と硝酸との混合液をプレート1の上面Aに滴下し、表面を溶して形成されるが、機械加工により形成しても良い。
【0022】
図 6に示すように、実施例1で用いたアルミ板3(図 2参照)は除かれている。穴15の底の部分のシリコン基板は、実施例1のアルミ板3同様に、イオンビームによる切削加工時に包埋樹脂から発生する熱を吸収し、遮蔽板へ伝えて逃がす役割を果たす。
【0023】
(2)包埋
実施例1と同様に、粉体を樹脂に含ませた包埋樹脂4が作製される(図 6)。穴15の内部で、包埋樹脂4は、穴15の内部側面と密着して硬化している。
【0024】
(3)割断(切断)
図 6(a)に示すように、確認線5として、プレート1の上面Aには、穴15を分断する位置に、切り込み16が入れられる。包埋樹脂4を含んだプレート1が、液体窒素中に入れられて、切り込み16に沿って割断2分割されると、それぞれの割断片には、図 6(b)に示すように、包埋樹脂4の断面が露出している。
【0025】
実施例1と同様に、図 6(b)に示した包埋樹脂4の断面には、粉体6が存在する。粉体は、樹脂との密度の差により、樹脂全体が硬化したときには、プレート1の下面B側に沈殿している。以後、包埋樹脂4を含んだプレート1が割断されたものを観察用試料7と呼ぶ。
【0026】
(4)機械研磨
実施例1と同様に、観察用試料7の断面を機械研磨する。
【0027】
前述の(3)割断において、包埋樹脂4がうまく割れずに、包埋樹脂4が分割されたプレート1の一方の断片にくっついてしまい、プレート1の割断面から大幅にはみ出す場合がある。この場合には、機械研磨で割断面から大幅にはみ出し部分の包埋樹脂4を研磨し、その後、プレート1の割断面と包埋樹脂4とが平滑となるように、機械研磨をすればよい。
【0028】
(5)イオンビームによる断面処理
機械研磨終了後、観察用試料7は、イオンビーム加工装置で断面処理される。観察用試料7は、プレート1の下面Bがイオン銃側に向けられて、試料ホルダ14に取り付けられ、イオン銃10から発生するイオンビーム11の光軸12に対して垂直に配置される。そして、実施例1同様に、観察用試料7の切削する部分以外を遮蔽板13で覆い隠すように遮蔽板13が観察用試料7の上に載せられる。イオンビームがプレート1の下面B側から観察用試料7および遮蔽板13に向けて照射されると、観察用試料7の遮蔽板13から露出した部分がプレート1の下面Bと共に切削加工され、平滑化された断面が作製される。
【0029】
イオン銃側に向けられた下面Bは、熱伝導率の高いシリコンであり、包埋樹脂4と密着していることにより、イオンビームによる切削加工時に包埋樹脂から発生する熱を効率よく吸収し遮蔽板13へ伝えて逃がす役割を果たす。このため、試料へ与える熱による融解や変形等のダメージを軽減することができる。また、シリコン基板以外でも、一般的に熱伝導率が高く、イオンビームでの処理の際に、構成する物質の硬度の違いによってスジ状の加工痕が生じない素材を用いることが好ましく、例えば、アモルファスもしくは単結晶のプレートを用いることができる。
【0030】
(6)観察
実施例1同様に、断面処理が行われた観察用試料7は、走査電子顕微鏡によって、粉体が露出している箇所を観察される。
【符号の説明】
【0031】
プレート1、アルミ板3、包埋樹脂4、粉体6、観察用試料7、研磨面8、遮蔽板13