特許第6974988号(P6974988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974988
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】植物収量向上剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 61/00 20060101AFI20211118BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20211118BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20211118BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20211118BHJP
【FI】
   A01N61/00 A
   A01P21/00
   A01G7/06 A
   A01G31/00 601A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-170097(P2017-170097)
(22)【出願日】2017年9月5日
(65)【公開番号】特開2019-43908(P2019-43908A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年6月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名: 第10回ダイズ研究会 開催日: 平成29年3月11日(開催期間:平成29年3月10日、11日) 開催場所:つくば国際会議場(茨城県つくば市竹園二丁目20番地3)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】望月 裕美
(72)【発明者】
【氏名】田ノ上 明宏
(72)【発明者】
【氏名】石原 康宏
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−190331(JP,A)
【文献】 特開2017−190448(JP,A)
【文献】 特開平05−000874(JP,A)
【文献】 特開2000−139221(JP,A)
【文献】 特開昭49−099844(JP,A)
【文献】 特開2015−006998(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を有効成分とする植物収量向上剤。
【請求項2】
前記リグニン分解物のアルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が15質量%以上である、請求項1記載の植物収量向上剤。
【請求項3】
アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を含有する植物収量向上剤組成物。
【請求項4】
前記リグニン分解物のアルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が15質量%以上である、請求項3記載の植物収量向上剤組成物。
【請求項5】
アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を植物に適用する、農作物の増収をはかるための、植物の育成方法。
【請求項6】
前記リグニン分解物と水とを含有する処理液を植物に接触させる、請求項5に記載の植物の育成方法。
【請求項7】
前記処理液中の前記リグニン分解物の含有量が1ppm以上5,000ppm以下である、請求項6に記載の植物の育成方法。
【請求項8】
前記処理液を、養液栽培の培養液として用いて、前記リグニン分解物を植物に接触させる、請求項6又は7に記載の植物の育成方法。
【請求項9】
前記処理液を、葉面散布して前記リグニン分解物を植物に接触させる、請求項6又は7に記載の植物の育成方法。
【請求項10】
前記処理液が、請求項1もしくは2記載の植物収量向上剤又は請求項3もしくは4に記載の植物収量向上剤組成物と水とを混合して得られた処理液である、請求項〜9の何れか1項に記載の植物の育成方法。
【請求項11】
前記リグニン分解物を、植物を栽培する土壌に添加する、請求項5に記載の植物の育成方法。
【請求項12】
前記リグニン分解物を、植物を栽培する土壌100質量部あたり、0.0001質量部以上10質量部以下添加する、請求項11に記載の植物の育成方法。
【請求項13】
前記リグニン分解物を、植物を栽培する土壌10aあたり、0.2kg以上20,000kg以下添加する、請求項11又は12に記載の植物の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物収量向上剤、植物収量向上剤組成物、及び植物の育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物が生長するには種々の栄養要素が必要であるが、そのいくつかの要素が不足すると植物の生育に支障を来すことが知られている。例えば、肥料三大要素として窒素は蛋白質の成分元素であり、リンは核酸やリン脂質の構成元素だけでなくエネルギー代謝や物質の合成・分解反応にも重要な役割を果たしており、また、カリウムは物質代謝や物質移動の生理作用がある。これら主要成分の不足により全般的に植物の生育は貧弱になる。カルシウムは、植物体及び細胞を構成する重要な成分であり、また代謝系のバランスを維持する為にも重要な働きをしているため、カルシウムが欠乏すると生理障害をおこす。その他にもMg、Fe、S、B、Mn、Cu、Zn、Mo、Cl、Si、Na等、植物には種々の栄養素が必要である。
【0003】
これら窒素、リン、カリウム等の栄養成分は元肥や追肥の形で施肥されたり、液体肥料を希釈して土壌灌注したり葉面散布で与えられたりしている。これらの肥料は、植物の生長に必要な不可欠のものであるが、ある程度の濃度以上に与えても、植物の生長性及び収量の向上には貢献できない。
【0004】
しかし、農作物の生長を促進し、単位面積当たりの収穫量を増やして増収をはかることは農業生産上重要な課題であり、そのために必要な種々の植物生長調節剤が開発利用されている。ジベレリンやオーキシン等に代表される植物生長調節剤は、発芽、発根、伸長、花成り、着果等生育、形態形成反応の調節のために用いられているが、これらの物質の作用は多面的かつ複雑であり、用途が限定されている。
【0005】
従来、農作物の生長促進につながると考えられる技術が種々提案されている。
特許文献1には、部分的に腐植化された天然有機物によって特徴付けられる有機物質の農学的に許容される複合混合物を含むリグニン等の成分と接触した粒状形態物を含む肥料組成物が記載されている。
【0006】
特許文献2には、植物におけるストレス応答を改善する方法であって、種子もしくは植物の一部またはそれらの部位を、部分的に腐植化された天然有機物を特徴とする溶存有機物の農業上許容可能な複合混合物を含む組成物と接触させるステップを含む方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、植物において少なくとも1つの生物学的作用をもたらす方法であって、(i)所定量の全有機炭素を有し、植物において少なくとも1つの生物学的作用を確実にもたらすことができる農学的有効量の複合高分子ポリヒドロキシ酸と、(ii)(a)農学的非有効量の1種又は複数種の遷移金属陽イオンの農学的に許容可能なイオン源、及び/又は、(b)植物有害量のアルカリ(土類)金属陽イオンの少なくとも1種の塩のうちの1種又は複数種との水性混合物を用意するステップを含み、前記水性混合物が、植物、種子、又はその植生場所との接触に適している方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、リグニン質炭類のアルカリ処理により抽出される腐植物質または該腐植物質含有のリグニン質炭類と、植物性油粕類の発酵処理または加水分解処理により抽出される抽出物あるいは発酵処理または加水分解処理した植物性油粕とからなる植物生育促進剤が記載されている。
【0009】
特許文献5には、草炭・泥炭・亜炭等の低腐植化度の炭類を約5〜約10%のアルカリ溶液に浸漬処理し、これに酸を加え処理した後、中和することを特徴とする懸濁液用土壌改良剤の製造法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2013−505892号公報
【特許文献2】特表2013−505964号公報
【特許文献3】特表2015−509001号公報
【特許文献4】特開平5−874号公報
【特許文献5】特公昭45−3171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
作物増収を目的に土壌中に多量の肥料が施肥された結果、土壌中の種々の要素が過剰になって肥料の吸収のバランスが悪くなる、植物の生長停滞等が発生して目的の増収を達成できなくなる、糖度(Brix.値)等の品質が上がらなくなる等の問題が生じる。また、根にも養分吸収の限界があるため、必要肥料元素の水溶液又は水性懸濁液を散布して直接葉面や果実から吸収させる試みもあるが、単なる必要元素の水溶液を葉面散布しても吸収効率という面からは問題があり、過剰の肥料成分を散布することが、逆に植物に対しストレスを与え薬害が生ずる結果となる。
【0012】
このような状況から、植物に薬害等をもたらさず、農作物等の植物に対して優れた収量向上を示す植物収量向上剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を有効成分とする植物収量向上剤に関する。
【0014】
また、本発明は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を含有する植物収量向上剤組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を植物に適用する、植物の育成方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物に薬害等をもたらさず、農作物等の植物に対して優れた収量向上を示す植物収量向上剤、植物収量向上剤組成物及び植物の育成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<植物収量向上剤>
本発明の植物収量向上剤は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物(以下、本発明のリグニン分解物という場合もある)を有効成分とする。本発明は、本発明のリグニン分解物からなる植物収量向上剤を包含する。
【0018】
本発明のリグニン分解物のアルデヒド収率は、5質量%以上である。このアルデヒド収率は、植物の収量を向上させる観点から、好ましくは9質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは26質量%以下である。
【0019】
本発明では、リグニン分解物のアルカリニトロベンゼン酸化法は、例えば、「リグニン化学研究法」(ユニ出版株式会社発行、1994年7月10日)に記載のアルカリニトロベンゼン酸化法を参照できる。
本発明では、具体的には、以下の条件で測定したアルデヒド収率を、リグニン分解物のアルデヒド収率として採用する。
【0020】
〔リグニン分解物のアルデヒド収率の測定方法〕
測定対象のリグニン分解物50〜200mg、2M水酸化ナトリウム水溶液6〜10mL、ニトロベンゼン0.4mLを20mLのバイアルに入れ、900rpmで撹拌しながら170℃で2.5時間加熱する。加熱終了後冷却し、5〜15mLのジエチルエーテルで3回抽出し、ニトロベンゼン還元物と余分なニトロベンゼンを除去する。残った水層側に濃塩酸を加えてpH3〜1に調整し、更に5〜15mLのジエチルエーテルで3回抽出する。このジエチルエーテル抽出液を減圧下で留去し、酸化混合物を得る。この酸化混合物をジクロロメタン20mLでメスアップする。そのうち2mLをミリポアHVHP膜(日本ミリポア株式会社製、孔径0.45μm)でろ過し、ガスクロマトグラフィ(GC)に供する。
ガスクロマトグラフィは、AgilentJ&WGCカラム DB−5(アジレント・テクノロジー株式会社製)を装着したGC装置(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いる。ガスクロマトグラフィの条件は、試料量は1.0μL、ヘリウム流速は10mL/分、抽入口温度200℃、スプリット比10:1とする。温度条件は、60℃で1分間保持した後、60〜250℃まで5℃/分で昇温し、250℃で10分保持する。定量は、バニリン、シリンガアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒドの3つのアルデヒドを試薬として用い、含有量に対するピーク面積で検量線を作成し、リグニン分解物中の前記3つのアルデヒド収量をそれぞれ求める。次式でアルデヒド収率(%)を算出する。
アルデヒド収率(%)=(3つのアルデヒド量を合算したアルデヒド収量/リグニン分解物質量)×100
【0021】
また、本発明のリグニン分解物は、重量平均分子量が300以上100,000以下である。この重量平均分子量は、植物の収量を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,500以上、より更に好ましくは5,000以上、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、更に好ましくは26,000以下、より更に好ましくは20,000以下、より更に好ましくは15,000以下である。
【0022】
本発明において、リグニン分解物の重量平均分子量は、以下の条件で測定されたものである。
〔リグニン分解物の重量平均分子量の測定方法〕
リグニン分解物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記操作及び条件で測定する。
〔GPC操作〕
リグニン分解物を含有する試料溶液(1mg/mL)を100μL注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。
〔GPC条件〕
機種:HLC−8120GPC(東ソー株式会社)
検出器:RI検出器
分離カラム:TSK−GEL α−M 2本(東ソー株式会社)
ガードカラム:TSKgel guardcolumn α(東ソー株式会社)
カラム温度:40℃
溶離液:60mmol/LのHPOと50mmol/LのLiBrを添加したN,N−ジメチルホムアミド溶液
溶離液流量:1mL/min
標準試料:単分散ポリスチレン混合溶液〔東ソー株式会社製のA−500(分子量5.0×10)、F−10(分子量9.64×10)、F−850(分子量8.42×10)、Pressure Chemical社製(分子量4.0×10、3.0×10、9.29×10
【0023】
また、本発明のリグニン分解物は、水に対する接触角(以下、水接触角ともいう)が15°以上である。この水接触角は、植物の収量を向上させる観点から、好ましくは17.5°以上、より好ましくは20°以上、更に好ましくは26°以上、より更に好ましくは30°以上、そして、好ましくは100°以下、より好ましくは80°以下、更に好ましくは60°以下、より更に好ましくは45°以下、より更に好ましくは40°以下である。
【0024】
本発明において、リグニン分解物の水接触角は、以下の条件で測定されたものである。〔リグニン分解物の水接触角の測定方法〕
測定対象のリグニン分解物が粉体で得られる場合は、その0.1〜0.3gを採取し、密度が1.3〜1.7g/cmになるように圧力をかけて、平面を有する圧縮物、例えば、円柱、立方体、直方体のような形状を有する圧縮物としたものをサンプルとする。なお、測定対象のリグニン分解物の粒子が大きい場合や形状が不揃いの場合などは、粉砕して粒径や形状を調整した粉体とし、これを前記と同様に圧縮物としてサンプルとしてもよい。また、圧縮によりリグニン分解物の粉体が細粒化されてもよい。
サンプル、例えばリグニン分解物の圧縮物を、その平面が水平となるように設置し、前記平面に、20℃の純水を粒径5μmで滴下し、1秒後の接触角を測定する。接触角は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の固体表面に対する角度を求め、これを2倍することで求める(θ/2法)。測定は1つのサンプルにつき3回行い、その平均値として得た値を水接触角として採用する。
【0025】
本発明のリグニン分解物は、植物系バイオマスから得られる天然のリグニンを分解して得られるものである。
天然のリグニンの主要結合はβ−O−4結合であり、巨大高分子を形成している。リグニンは、植物系バイオマスから抽出される過程でβ−O−4結合の分解と、様々な縮合反応が進行し、リグニン中の結合の組成が変化する。アルカリニトロベンゼン酸化はリグニン中のβ−O−4結合を分解し、生成するアルデヒドモノマーからβ−O−4結合の量を定量する手法である。つまり、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率は、リグニン変性の程度を示し、その値が高ければ高いほど変性の程度が低いことを示す。リグニンは低変性であるほど、脂肪族OH基やフェノール性OH基の含有量が高く、反応性が高い。本発明では、低変性リグニンを用いることで、植物収量が向上できると推測される。
【0026】
本発明のリグニン分解物は、例えば、後述する本発明の植物収量向上剤の製造方法により製造することができる。
【0027】
本発明のリグニン分解物の形態は、好ましくは固体、より好ましくは粉体である。粉体のリグニン分解物は、平均粒子径が0.1μm以上10mm以下であってよい。
【0028】
本発明の植物収量向上剤の形態は、固体、液体、いずれでもよく、固体が好ましい。固体は粉体が好ましい。粉体の植物収量向上剤は、平均粒子径が0.1μm以上10mm以下であってよい。
【0029】
本発明の対象とする植物は、好ましくは農作物として利用される植物である。従って、本発明の植物収量向上剤は、農作物用収量向上剤であることが好ましい。本発明の植物収量向上剤を適用できる植物としては、ウリ科、ナス科、トウガラシ科、バラ科、アオイ科、マメ科、イネ科、アブラナ科、ネギ科、ヒガンバナ科、キク科、ヒユ科、セリ科、ショウガ科、シソ科、サトイモ科、ヒルガオ科、ヤマノイモ科、ハス科等が挙げられる。具体的には、果菜類では、キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、トマト、ナス、ピーマン、イチゴ、オクラ、サヤインゲン、ソラマメ、エンドウ、エダマメ、トウモロコシ等が挙げられる。葉菜類では、ハクサイ、ツケナ類、チンゲンサイ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ、タマネギ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、アスパラガス、レタス、サラダナ、セルリー、ホウレンソウ、シュンギク、パセリ、ミツバ、セリ、ウド、ミョウガ、フキ、シソ等が挙げられる。根菜類としては、ダイコン、カブ、ゴボウ、ニンジン、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、ヤマイモ、ショウガ、レンコン等が挙げられる。その他に、稲、麦類、花卉類等にも使用が可能であり、大規模で栽培される傾向にあるダイズ、エダマメ等の豆類等の穀物がより好ましい。
【0030】
<植物収量向上剤組成物>
本発明の植物収量向上剤組成物は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物、すなわち本発明のリグニン分解物を含有する。本発明の植物収量向上剤組成物が含有するリグニン分解物の好ましい態様は、本発明の植物収量向上剤と同じである。本発明の植物収量向上剤組成物を適用できる植物は、本発明の植物収量向上剤と同じである。また、本発明の植物収量向上剤組成物は、農作物用収量向上剤組成物であることが好ましい。
【0031】
本発明の植物収量向上剤組成物は、本発明のリグニン分解物を、植物に対する処理時の形態への調製の容易さの観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0032】
本発明の植物収量向上剤組成物は、本発明のリグニン分解物以外の成分を含有することができる。
【0033】
本発明の植物収量向上剤組成物は、作用部位へのリグニン分解物の付着及び浸透量増加の観点から、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が好ましい。
【0034】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルポリグリコシドなどが挙げられる。
【0035】
陰イオン界面活性剤としては、モノ−及びジ−アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルファ−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、モノ−及びジ−アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルリン酸塩、脂肪酸塩、直鎖及び分岐アルキルポリオキシアルキレンエーテル酢酸又はその塩、脂肪酸N−メチルタウリンなどが挙げられる。塩としては、Na、K、Ca、Mg、Zn等の金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、脂肪族アミン塩などが挙げられる。
【0036】
陽イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、ポリオキシプロピレンアルキルアミン塩、ポリオキシエチレンタローアミン塩、ポリオキシエチレンオレイルアミン塩、ジアルキルアミン塩誘導体などが挙げられる。ジアルキルアミン誘導体としては、ジアルキルモノメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、ジアルキルモノメチルベンザルコニウムクロライド、ジアルキルモノメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートなどが挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸系、アルキルアミドプロピルベタイン系、イミダゾリン系、アルキルヒドロキシスルホベタイン系、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルジエタノールアミンオキサイド、アルキルアミドプロピルアミンオキサイド等のアミンオキサイド系が挙げられる。
【0038】
本発明の植物収量向上剤組成物が界面活性剤を含有する場合、本発明のリグニン分解物100質量部に対し、界面活性剤を好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、そして、好ましくは1,900質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは400質量部以下含有する。
【0039】
本発明の植物収量向上剤組成物は、作用部位へのリグニン分解物の付着量増加の観点から、水溶性ポリマーを含有することができる。ここで、水溶性ポリマーについての「水溶性」とは、20℃の水100gに1g以上溶解することをいう。
水溶性ポリマーとしては、天然、半合成及び合成ポリマーが何れも使用でき、その中でも多糖類系水溶性ポリマーが好ましい。多糖類系水溶性ポリマーの具体例としては、グアーガム、キサンタンガム、でんぷん、セルロース、タラガム、ローストビーンガム、カラギーナン、及びこれらの誘導体が挙げられる。グアーガム誘導体としては、例えば、ヒドロキシプロピルグアーガム、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーガム、カチオン化グアーガム等が挙げられる。キサンタンガム誘導体としては、例えば、ヒドロキシプロピルキサンタンガム等が挙げられる。でんぷん誘導体としては、例えば、カルボキシメチル化でんぷん、ヒドロキシアルキル化でんぷん、ヒドロキシプロピル架橋でんぷん、クラフト化でんぷん、酢酸でんぷん等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。多糖類系水溶性ポリマーとしては、ヒドキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。
本発明の植物収量向上剤組成物が水溶性ポリマーを含有する場合、本発明のリグニン分解物100質量部に対し、水溶性ポリマーを好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、そして、好ましくは1,900質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは300質量部以下含有する。
【0040】
これらの他にも、例えば、本発明の植物収量向上剤組成物中に肥料成分などを含有することができる。具体的には、ハイポニカ(協和株式会社)やハイポネックスなどの商品名で入手可能な肥料成分を、本発明のリグニン分解物100質量部に対し、1質量部以上1,900質量部以下含有することができる。
【0041】
本発明の植物収量向上剤組成物の形態は、液体、フロアブル、ペースト、水和剤、粒剤、粉剤、錠剤等、何れでも良い。
【0042】
<植物の育成方法>
本発明の植物の育成方法では、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物、すなわち本発明のリグニン分解物を植物に適用する。本発明の植物の育成方法に用いるリグニン分解物の好ましい態様は、本発明の植物収量向上剤と同じである。本発明の植物の育成方法を適用できる植物は、本発明の植物収量向上剤と同じである。また、本発明の植物の育成方法は、農作物の育成方法又は農作物の栽培方法であることが好ましい。
【0043】
本発明のリグニン分解物を植物に適用する方法には、色々な手段を使うことができる。例えば、本発明のリグニン分解物を含有する粉剤や粒剤を、一般的な肥料と同様に施肥する方法が挙げられる。また、本発明のリグニン分解物を含有する処理液を、葉面、茎、果実等に、直接散布する方法が挙げられる。また、本発明のリグニン分解物又はこれを含有する処理液を、土壌中に注入する方法が挙げられる。また、本発明のリグニン分解物を含有する処理液を培養液として、養液栽培、例えば水耕栽培やロックウールを用いた栽培で用いる方法が挙げられる。
【0044】
本発明のリグニン分解物の適用時期、適用回数は、特に制限されない。本発明のリグニン分解物は、播種前の土壌等へ添加して適用してもよい。本発明のリグニン分解物は、播種、植え付け等の栽培開始から、収穫等の栽培終了までの何れかの期間で、植物の生長の度合いに応じて適宜適用してもよい。
【0045】
本発明の植物の育成方法では、本発明のリグニン分解物と水とを含有する処理液を植物に接触させる工程を有することが好ましい。
本発明の植物の育成方法では、本発明のリグニン分解物と水とを含有する処理液を、植物の地下部又は地上部に接触させることができる。
前記処理液は、植物収量向上剤組成物で述べたリグニン分解物以外の成分、例えば、界面活性剤、水溶性ポリマー、肥料成分などを含有することができる。
【0046】
本発明の植物の育成方法では、本発明のリグニン分解物と水とを含有する処理液を、葉面散布して本発明のリグニン分解物を植物に接触させる、例えば一時的、又は長期に接触させる工程を有することができる。また、水やりの際の水と混合して、根に接触させても良い。
【0047】
葉面散布する際、前記処理液中の本発明のリグニン分解物の含有量は、リグニン分解物として好ましくは1ppm以上、より好ましくは8ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、更により好ましくは40ppm以上、そして、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、更により好ましくは300ppm以下である。
【0048】
本発明の植物の育成方法では、本発明のリグニン分解物と水とを含有する処理液を、養液栽培の培養液として植物の地下部に接触させる、例えば一時的、又は長期に接触させる工程を有することができる。
【0049】
前記培養液中の本発明のリグニン分解物の含有量は、リグニン分解物として好ましくは1ppm以上、より好ましくは4ppm以上、更に好ましくは8ppm以上、より更に好ましくは20ppm以上、そして、好ましくは3,000ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、より更に好ましくは80ppm以下である。
【0050】
前記処理液を植物に適用する場合、前記処理液の適用時期、適用回数は、特に制限されない。前記処理液は、播種前の土壌等へ添加して適用してもよい。前記処理液は、播種、植え付け等の栽培開始から、収穫等の栽培終了までの何れかの期間で、植物の生長の度合いに応じて適宜適用してもよい。
【0051】
本発明の植物の育成方法では、植物に対し、前記処理液を、好ましくは霧状又は泡状にして、直接散布することができる。本発明のリグニン分解物の効果を有効に発揮させるには、前記処理液を植物の地上部、具体的には、葉面、茎、果実などに散布する方法が好ましい。散布する時期としては、子葉展開期、初生葉展開期、本葉展開期、花芽分化期、着花期、開花盛期、着莢期、結実期、子実及び果実肥大期から選ばれる1つ以上の時期が好ましい。
【0052】
前記処理液の散布手段としては、噴霧器、噴霧器を擁したセスナやラジコンヘリ等の航空機、トラクター、センターピボットシステム等いずれの手段も用いることができる。
【0053】
前記処理液を植物に散布する場合、例えば、葉面に散布する場合、該処理液中の本発明のリグニン分解物の含有量が前記範囲にあれば、その散布量は、好ましくは0.3L/10a以上、より好ましくは1L/10a以上、更に好ましくは3L/10a以上、より更に好ましくは5L/10a以上、より更に好ましくは20L/10a以上、より更に好ましくは30L/10a以上、より更に好ましくは40L/10a以上、より更に好ましくは50L/10a以上、そして、好ましくは1,000L/10a以下、より好ましくは500L/10a以下、更に好ましくは300L/10a以下、より更に好ましくは100L/10a以下である。散布量が前記範囲であれば、センターピボットシステムなどの高水量条件で散布した場合でも優れた生育促進効果が得られる。
【0054】
また、本発明の植物の育成方法では、本発明のリグニン分解物を、植物を栽培する土壌に添加して植物に適用することができる。土壌に添加する時期としては、播種前が好ましい。
【0055】
本発明では、土壌への本発明のリグニン分解物の添加は、土壌に該リグニン分解物を混合する、土壌に該リグニン分解物を散布する、などの方法で行うことができる。
本発明では、固体の本発明のリグニン分解物を土壌と混合する、又は固体の本発明のリグニン分解物と水等の溶媒とを混合した液状物、例えば前記の処理液、を土壌と混合することが好ましい。本発明では、固体の本発明のリグニン分解物を土壌と混合することがより好ましい。本発明のリグニン分解物を固体で使用する場合は粉体が好ましい。
圃場において本発明のリグニン分解物を土壌に添加する具体的な方法としては、耕運機などに散布機を併用し、本発明のリグニン分解物、本発明の植物収量向上剤又は本発明の植物収量向上剤組成物を散布しながら耕す方法が挙げられる。
このように、本発明の植物の育成方法では、本発明のリグニン分解物を、好ましくは播種前に、植物を栽培する土壌に供給して植物に適用することができる。
【0056】
本発明では、土壌100質量部あたり、本発明のリグニン分解物を、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下添加する。
【0057】
本発明の植物の育成方法で本発明のリグニン分解物を、例えば散布により、土壌に添加する場合、土壌10aあたり、前記リグニン分解物を好ましくは0.2kg以上、より好ましくは2kg以上、更に好ましくは20kg以上、そして、好ましくは20,000kg以下、より好ましくは5,000kg以下、更に好ましくは2,000kg以下添加する。本発明のリグニン分解物を散布する場合も、土壌100質量部あたりの添加量が前記範囲となっていてもよい。
【0058】
<植物収量向上剤の製造方法>
本発明のリグニン分解物は、植物系バイオマスの分解により得ることができる。
本発明の植物収量向上剤を製造する方法として、下記工程1、及び工程2を有する植物収量向上剤の製造方法が挙げられる。この製造方法は、本発明の農作物用収量向上剤の製造方法であってよい。
工程1:植物系バイオマス、該植物系バイオマスの固形分100質量部に対し8質量部以上70質量部以下の塩基性化合物、及び前記植物系バイオマスの固形分100質量部に対し10質量部以上10,000質量部以下の水を混合し、H−ファクターが25,000以下の条件で処理して反応物を得る工程
工程2:工程1で得られた反応物から、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を抽出する工程
【0059】
本発明によれば、植物収量向上剤、好ましくは農作物用収量向上剤として使用できる本発明のリグニン分解物を、効率よく製造できる、植物収量向上剤の製造方法、好ましくは農作物用収量向上剤の製造方法が提供される。
【0060】
工程1は、植物系バイオマスを、該植物系バイオマスの固形分100質量部に対し、8質量部以上70質量部以下の塩基性化合物、及び10質量部以上10,000質量部以下の水により、H−ファクターが25,000以下の範囲で加熱処理する工程である。
【0061】
工程1では、植物系バイオマスが用いられる。
植物系バイオマスとしては、草本系バイオマス、木質系バイオマスが挙げられる。これらの中でも、好ましくは草本系バイオマスである。
【0062】
草本系バイオマスとは、草地に生育する樹木以外の植物原料、或いは非木質の植物部位を意味する。具体的には、イネ科、アオイ科、マメ科の植物原料、ヤシ科の植物の非木質原料が挙げられる。
イネ科の植物原料としては、例えばサトウキビバガス、ソルガムバガス等のバガス、スイッチグラス、エレファントグラス、コーンストーバー、コーンコブ、イナワラ、ムギワラ、オオムギ、ススキ、芝、ジョンソングラス、エリアンサス、ネピアグラスが挙げられる。アオイ科の植物原料としては、例えばケナフ、ワタが挙げられる。マメ科の植物原料としては、例えばアルファルファが挙げられる。ヤシ科の植物の非木質原料としては、例えばパームヤシ空果房が挙げられる。
これらの中でも、生産性及び取扱い性の観点から、好ましくはイネ科の植物原料であり、より好ましくはサトウキビバガス、コーンコブ、又はイナワラであり、更に好ましくはサトウキビバガスである。
【0063】
木質系バイオマスとしては、カラマツやヌクスギなどの針葉樹、アブラヤシ、ヒノキなどの広葉樹から得られる木材チップなどの各種木材;これら木材から製造されるウッドパルプなどが挙げられる。
これらの植物系バイオマスは、1種単独でも、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
植物系バイオマスは、粉砕処理せずに用いることもできるが、処理効率の観点から、好ましくは、粉砕処理をする。
用いられる粉砕機に特に制限はなく、例えば、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。
これらの中では、植物系バイオマスの粉砕効率、及び生産性の観点から、好ましくは、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミル、より好ましくは、容器駆動式媒体ミル、更に好ましくは、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミル、更に好ましくは、振動ロッドミルである。
【0065】
粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
粉砕に用いる装置及び/又は媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
【0066】
植物系バイオマスの粉砕効率の観点から、用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッド又はボールであることが好ましい。
媒体がロッドの場合には、ロッドの外径は、効率的な粉砕の観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは40mm以下である。
媒体がボールの場合は、ボールの外径としては、効率的な粉砕の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。
【0067】
媒体の充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、効率的な粉砕の観点から、好ましくは10容量%以上、より好ましくは30容量%以上、更に好ましくは50容量%以上であり、そして、好ましくは95容量%以下、より好ましくは90容量%以下、更に好ましくは70容量%以下である。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容器の容積に対する媒体の体積をいう。
粉砕の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、植物系バイオマスの微細化の観点から、通常1分以上、好ましくは3分以上であり、そして、植物系バイオマスの微細化の観点及び経済性の観点から、通常12時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは12分以下である。
【0068】
また、植物系バイオマスの粉砕効率向上、及び生産効率向上(生産時間の短縮)の観点から、植物系バイオマスを、塩基性化合物の存在下で粉砕処理することが好ましい。当該処理後、好ましくは酸により中和する。
粉砕処理に用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウムなどのアルカリ土類金属硫化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化四級アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、酵素糖化率向上の観点から、好ましくは、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物であり、より好ましくは、アルカリ金属水酸化物、更に好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
粉砕処理で用いられる塩基性化合物の量は、植物系バイオマス中のホロセルロースをすべてセルロースとして仮定した場合に、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」と称する場合がある。)1モルあたり、好ましくは0.01倍モル以上、より好ましくは0.05倍モル以上、更に好ましくは0.1倍モル以上であり、そして、塩基性化合物の中和及び/又は洗浄容易性の観点、及び塩基性化合物のコストの観点から、好ましくは10倍モル以下、より好ましくは8倍モル以下、更に好ましくは5倍モル以下、更に好ましくは1.5倍モル以下である。
【0070】
粉砕処理時の水分量は、植物系バイオマスの乾燥質量に対して好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
粉砕処理時の水分量は、植物系バイオマスの乾燥質量に対する水分量を意味し、乾燥処理などにより植物系バイオマス、塩基性化合物に含まれる水分量を低減することや、粉砕処理時に水を添加して水分量を上げることなどにより、適宜調整することができる。
【0071】
粉砕処理後に得られる植物系バイオマスの平均粒径は、リグニンの収率向上、及び糖化効率向上の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。なお、当該植物系バイオマスの平均粒径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−950」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定する。
【0072】
工程1では、塩基性化合物が用いられる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウムなどのアルカリ土類金属硫化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化四級アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点から、好ましくは、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物であり、より好ましくは、アルカリ金属水酸化物、更に好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点及び常温、常圧で取扱える等の作業性の観点から、好ましくは水酸化ナトリウムである。
工程1の塩基性化合物の量は、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点から、植物系バイオマスの固形分100質量部に対し、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下であり、そして、好ましくは8質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。
【0073】
工程1の水の量は、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点、均一な撹拌混合等の作業性の観点、ならびに設備過大や加熱コスト等の経済性の観点から、植物系バイオマスの固形分100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは250質量部以上、更に好ましくは350質量部以上、更に好ましくは450質量部以上、更に好ましくは550質量部以上、更に好ましくは650質量部以上、更に好ましくは750質量部以上であり、そして、好ましくは8,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは3,500質量部以下、更に好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは1,500質量部以下である。
【0074】
工程1の処理では、H−ファクター(以下、HFともいう)が、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点、経済性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上、更に好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、そして25,000以下、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下、更に好ましくは1,500以下、更に好ましくは1,200以下、更に好ましくは1,000以下、更に好ましくは400以下、更に好ましくは300以下、更に好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0075】
HFは、パルプの蒸解工程における制御指標として、従来から使用されているもので、温度と時間の効果を一つの変数としたものである。
工程1の処理は温度が高いと反応が促進されるとともに時間も同時に関係するため、100℃の脱リグニン反応速度を1として、他の温度における相対速度をArrheniusの式より求め、その温度における時間との積であるHFによって算出される。
本発明においては、HFはバイオマスの塩基性化合物を用いた処理で反応系に与えられた熱の総量を表す指標であり、下記式(1)により表される。HFはバイオマスと、塩基性溶液(塩基性化合物及び水を含む水溶液)とが接触している時間tを積分することで算出する。
【0076】
【数1】
【0077】
例えば、HFとして3以上を満たすために、加熱処理を70℃で行った場合は、150時間程度の処理時間が必要となり、加熱処理を85℃で行った場合は、20時間程度の処理時間が必要となり、加熱処理を100℃で行った場合は、4.5時間程度の処理時間が必要となる。
工程1の処理の温度及び時間は、本発明のリグニン分解物の回収率、及びサイクルタイムの短縮、経済性の観点から、設定されるのが好ましい。
【0078】
よって、工程1の処理の温度は、例えば、10℃以上、好ましくは20℃以上、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点、及びサイクルタイムの短縮の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、本発明のリグニン分解物の回収率及び経済性の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
工程1の処理の時間は、上記の処理の温度範囲内で維持した時間を表し、例えば、10℃以上180℃以下の温度範囲内で維持した時間、好ましくは70℃以上150℃以下の温度範囲内で維持した時間、より好ましくは80℃以上140℃以下の温度範囲内で維持した時間、更に好ましくは90℃以上130℃以下の温度範囲内で維持した時間、更に好ましくは95℃以上120℃以下の温度範囲内で維持した時間である。
工程1の処理の時間は、処理設備のスケールや昇降温速度の違いによって変化するので一概に言えないが、本発明のリグニン分解物の回収率を高める観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、そして、上限は特に限定されず、例えば1か月以下、好ましくは、1週間以下、本発明のリグニン分解物の回収率、サイクルタイムの短縮及び経済性の観点から、好ましくは50時間以下、より好ましくは28時間以下、更に好ましくは20時間以下、更に好ましくは15時間以下、更に好ましくは10時間以下、更に好ましくは8時間以下である。
【0079】
本発明のリグニン分解物は、通常、工程1の処理で得られた反応物の水相部分に存在している。従って、工程2では、この水相を分離してその中から本発明のリグニン分解物を取り出すことができる。
当該水相は、例えば、工程1の塩基性化合物を用いた処理で得られた反応物の液部を分離することで取り出すことができる。
当該水相は、前記分離に加えて、分離した前記反応物の固形部中(固体相中)に存在するリグニン分解物を水で洗浄し、水中に溶解させて抽出し、取り出すことができる。
具体的には、工程1の反応物から回収した水相及び工程1の前記反応物の固形部から回収した水相に、溶媒、好ましくは炭素数1以上3以下のアルコールから選ばれる少なくとも1種を含む溶媒を混合し、該混合物中で不純物を析出させる工程、析出した不純物を取り除く工程、及び、前記混合物から有機溶媒を取り除く工程、リグニン分解物を析出させる、例えば酸の添加によりリグニン分解物を析出させる工程、により、本発明のリグニン分解物を得ることができる。更に、得られたリグニン分解物は、透析膜等により酸又は塩基性化合物を除いてもよい。
このようにして得られたリグニン分解物は、水やその他の溶剤と共に分散された状態でも良く、また、溶媒を蒸発させて、固体としても良い。
【0080】
本発明では、工程2の後に、以下の工程3を行うこともできる。工程3により、リグニンの変性の程度や分子量を更に調整することができる。
工程3:工程2で得られたリグニン分解物を加熱する工程
工程3は、無溶媒下で行うことが好ましい。
工程3での加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上、そして、好ましくは170℃以下、より好ましくは140℃以下である。
また、工程3での加熱時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下である。
【0081】
また、本発明では、必要に応じて得られたリグニン分解物の分子量を、分画により調整することもできる。
【0082】
<本発明の態様等>
本発明は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物の、植物収量向上剤、好ましくは農作物用収量向上剤としての使用に関する。
また、本発明は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を含有する組成物の、植物収量向上剤組成物、好ましくは農作物用収量向上剤組成物としての使用に関する。
本発明は、植物収量向上剤、好ましくは農作物用収量向上剤として使用される、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物に関する。
また、本発明は、植物収量向上剤組成物、好ましくは農作物用収量向上剤組成物として使用される、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が5質量%以上であり、重量平均分子量が300以上100,000以下であり、水に対する接触角が15°以上であるリグニン分解物を含有する組成物に関する。
これらで用いるリグニン分解物は、本発明のリグニン分解物であり、その好ましい態様は、本発明の植物収量向上剤や植物収量向上剤組成物と同じである。
【実施例】
【0083】
<製造例1>
下記工程1、2aにより、植物収量向上剤となるリグニン分解物1を製造した。
(工程1)
草本系バイオマスとして、サトウキビバガスを、乾燥質量として30gガラス瓶に入れ、固形分含有量が10質量%になるように、1.6質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。ガラス瓶をオートクレーブで、95℃、6時間加熱して反応物を得た。工程1でのHFは3.5であった。
工程1で得られた反応物を、400メッシュのSUSメッシュとヌッチェを用いて減圧濾過した。残渣を、90℃のイオン交換水300mLで洗浄した。ろ液と洗浄液を集め、1.0M 塩酸でpH4にしてリグニン分解物を含む懸濁液を得た。
【0084】
(工程2a)
工程1で得られた懸濁液を、遠心分離した。
遠心分離は、日立工機株式会社製「himac CR 20G III」を用いて、10,000rpm、20分の条件で行った。
遠心分離後、上澄みを除き、イオン交換水300mLを加え、撹拌した後、再度、前記と同じ条件で遠心分離し、水洗を行った。水洗を2回行い、得られた沈殿物を凍結乾燥し、粉体状のリグニン分解物1を得た。リグニン分解物1中の有効分含有率は78質量%であった。該有効分は、クラーソン・リグニン法によって求めた。すなわち、TAPPI公式分析法T222om−83に従って、酸不溶性リグニン率と酸可溶性リグニン率の和で全体のリグニン含有率を算出した。
リグニン分解物1は、アルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が21.9質量%、重量平均分子量が8,488、水接触角が38.2°であった。
【0085】
<製造例2>
製造例1と同様に、ただし、工程2aを下記工程2bに変更し、植物収量向上剤となるリグニン分解物2を製造した。
(工程2b)
工程1で得られた懸濁液を、遠心分離した。
遠心分離は、日立工機株式会社製「himac CR 20G III」を用いて、10,000rpm、20分の条件で行った。
遠心分離後、上澄みを除き、イオン交換水300mLを加え、撹拌した後、再度、前記と同じ条件で遠心分離し、水洗を行った。水洗を2回行い、得られた沈殿物に対し1.0M水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7とした。続いて透析処理を行い、中和塩を除去し、得られた水溶液を凍結乾燥し、粉体状のリグニン分解物2を得た。透析処理にはSpectrum Laboratories Inc.社製のSpectra/Por6標準RC湿潤処理済透析チューブ(MWCO;1kD)を用いた。
リグニン分解物2はアルカリニトロベンゼン酸化によるアルデヒド収率が24.6質量%、重量平均分子量が12,700、水接触角が39.8°であった。アルデヒド収率及び水接触角は以下の方法で測定した。重量平均分子量は前記の方法で測定した。
【0086】
<リグニン分解物のアルデヒド収率の測定方法>
測定対象のリグニン分解物50mg、2M 水酸化ナトリウム水溶液7mL、ニトロベンゼン0.4mLを20mLのバイアルに入れ、900rpmで撹拌しながら170℃で2.5時間加熱した。加熱終了後冷却し、10mLのジエチルエーテルで3回抽出し、ニトロベンゼン還元物と余分なニトロベンゼンを除去した。残った水層側に濃塩酸を加えてpH1に調整し、更に10mLのジエチルエーテルで3回抽出した。このジエチルエーテル抽出液を減圧下で留去し、酸化混合物を得る。この酸化混合物をジクロロメタン20mLでメスアップした。そのうち2mLをミリポアHVHP膜(日本ミリポア株式会社製、孔径0.45μm)でろ過し、ガスクロマトグラフィ(GC)に供した。
ガスクロマトグラフィは、AgilentJ&W GCカラム DB−5(アジレント・テクノロジー株式会社製)を装着したGC装置(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。ガスクロマトグラフィの条件は、試料量は1.0μL、ヘリウム流速は10mL/分、抽入口温度200℃、スプリット比10:1とした。温度条件は、60℃で1分間保持した後、60〜250℃まで5℃/分で昇温し、250℃で10分保持した。定量は、バニリン、シリンガアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒドの3つのアルデヒドを試薬として用い、含有量に対するピーク面積で検量線を作成し、リグニン分解物中の前記3つのアルデヒド収量をそれぞれ求めた。次式でアルデヒド収率(%)を算出した。
アルデヒド収率(%)=(3つのアルデヒド量を合算したアルデヒド収量/リグニン分解物質量)×100
【0087】
<リグニン分解物の水接触角の測定方法>
筒状スペーサー(株式会社八幡ねじ製:八幡ねじスペーサー、内径10.2mm×長さ30mm)内にダボピン(和気産業株式会社製:品番DB−003)の太い方(オンダボ面)を内側なるように設置した。次に、スペーサー内に、表1に示す粉体状のリグニン分解物を0.1〜0.3g程度添加した。別のダボピン(和気産業株式会社製:品番DB−003)を、その太い方(オンダボ面)がリグニン分解物と当接するようにスペーサー内に設置した。すなわち、スペーサー内でリグニン分解物を、2つのダボピンの太い方(オンダボ面)の面で挟む形に設置した。
次に、上記ダボピンの両端を回転式ベンチバイス(トラスコ中山株式会社製:品番BV−65SN)を用いて挟み、リグニン分解物が粒状となるまで、上下のダボピンに圧力を加えた。この操作で、リグニン分解物に、密度が約1.5g/cmになるように圧力をかけてリグニン分解物を天面と底面が平らな粒状物とした。
得られたリグニン分解物の粒状物を平滑な基盤に載せ、前記粒状物の表面(天面)に20℃の純水を粒径5μmで滴下し、1秒後の接触角を測定した。接触角は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の固体表面に対する角度を求め、これを2倍することで求めた(θ/2法)。測定は1つのサンプルにつき3回行い、その平均値として得た値を水接触角として採用した。
【0088】
<実施例1>
本発明のリグニン分解物1を土壌に添加してダイズに適用した場合の、ダイズの生長促進効果について評価した。
土壌として、佐賀県の田土(沖積土)を採取したものを目開き2mmの篩に通し、粗大な粒子や石、礫を除いたものを使用した。
土壌を10L手動式ガーデンミキサーM40(清水工業)に投入し、リグニン分解物1を土壌に対して0.05質量%となるように投入した。更に土壌に対して30質量%となるように水を投入し、約5分間撹拌後、得られた混合物を土壌サンプルとした。土壌サンプルを育苗用ポリエチレン製ポット(直径18cm)に投入し、10aあたりN/P/K=6kg/6kg/6kgとなるように施肥を行い、ダイズ(品種タイカイミドリ、株式会社アサヒ農園)を播種した。播種から約1か月後にダイズ苗を取出し、地下部の乾燥質量、根粒数、根粒重を測定した。反復数は8個とし、その平均値を求めた。各平均値は、それぞれの対照の値を100とする相対値で表1に示した。なお、対照は、リグニン分解物を用いずに実施したものである(実施例2も同様)。表1の相対値が大きいことは、収穫までの生育性が良好であることを意味し、植物の収量増加が期待される。なお、表中、添加量は、土壌100質量部に対する質量部である(以下同様)。
【0089】
【表1】
【0090】
<実施例2>
本発明のリグニン分解物1を土壌に添加してダイズに適用した場合の、ダイズの収量向上効果について評価した。
実施例1で調製した土壌サンプルを育苗用ポリエチレン製ポット(直径18cm)に投入し、10aあたりN/P/K=6kg/6kg/6kgとなるように施肥を行い、ダイズ(品種タイカイミドリ、株式会社アサヒ農園)を播種した。播種後60日目と70日目に200倍希釈したハイポネックス(株式会社ハイポネックスジャパン)を100mLずつ土壌灌水し、播種から4か月後収穫し、分枝数、莢数、子実数、一粒の質量、収量を測定した。反復数は8個とし、その平均値を求めた。各平均値は、対照の値を100とする相対値で表2に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
<実施例3>
本発明のリグニン分解物2を葉面散布してダイズに適用した場合の、ダイズの収量向上効果を評価した。
ダイズ(品種フクユタカ、岩倉種苗株式会社)を用い、ダイズ圃場(和歌山県和歌山市)に10aあたりN/P/K=3.5kg/6kg/6kgとなるように施肥を行って、播種し、栽培した。その後、分枝発現開始時期(第4〜6本葉展開期)に、100L/10aの散布量となるように均一に苗の10〜15cm上方から、非イオン界面活性剤(モノオレイン酸ポリオキシソルビタン(エチレンオキシド平均付加モル数20)、レオドールTW−O120、花王株式会社製)1,000ppm及びリグニン分解物2を表3の濃度で含有する処理液(残部は水)を、散布した。次いで、開花初期時期(第6〜9本葉展開期)に、前記処理液の2回目の散布を、着莢開始時期に、前記処理液の3回目の散布を、1回目の散布と同様に行った。3回目の散布処理後、栽培を継続し、播種から約4か月後に収穫し、分枝数、莢数、子実数、一粒の質量、収量を測定した。反復数は12とし、平均値を求めた。各平均値を、対照の値を100とする相対値で表3に示した。なお、対照は、リグニン分解物及び非イオン界面活性剤を用いずに実施したものである。
【0093】
【表3】