(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0020】
(防振装置の構成)
本発明に係る防振装置1は、
図1及び
図2に示すように、例えば自動車のリアサスペンション等に用いられる防振ブッシュであり、上下方向に入力される振動に対する特性と、車両前後方向に入力される振動に対する特性とが異なる。
【0021】
防振装置1は、円筒状の金属製の内筒20(第1部材)と、その外周囲に離間して内筒20と同軸に配設された円筒状の金属製の外筒21(第2部材)と、両者20,21の間に熱硬化性接着剤を介して配設されて両者20,21の間を連結する第1ゴム弾性体22,22と、内筒20と外筒21との間に熱硬化性接着剤を介して配設されて両者20,21の間を連結する第2ゴム弾性体23,23とを備えている。
【0022】
内筒20は、その内部に挿通されるボルト等によって車体側の部材に締結される一方、外筒21は、トレーリングアームに形成された圧入孔に圧入される。内筒20は、その軸方向の各端部がそれぞれ外筒21の軸方向の各端部よりも軸方向外側に突出している。第1ゴム弾性体22及び第2ゴム弾性体23は、筒周方向に均等に隙間24
(第2隙間)をあけて、非接触状態で交互に2つずつ配設されている。具体的には、第1ゴム弾性体22は、上下方向に内筒20を挟んで対向して配置されている。第2ゴム弾性体23は、車両前後方向に内筒20を挟んで対向して配置されている。
【0023】
第1ゴム弾性体22は、天然ゴムを原材料とした単一材からなり、低動倍のばね特性を有している。第1ゴム弾性体22の筒軸方向各端面には、その各端面から筒軸方向外側に突出する略直方体形状の突起22aが一体に形成されている。この突起22aは、第1ゴム弾性体22を後述する組立治具3に位置決めするためのものである。第1ゴム弾性体22は略直方体形状で、その筒軸方向の長さと突起22a,22aの筒軸方向の長さとを合わせた長さは、外筒21の軸方向の長さと略同じである。また、第1ゴム弾性体22の筒周方向の長さは、内筒20の外周の長さの4分の1よりも小さい。
【0024】
第1ゴム弾性体22の内側面22cは、内筒20の外周面に沿う円弧状であって内筒20の外周面と当接している。一方、第1ゴム弾性体22の外側面22dは、外筒21の内周面に沿う円弧状であって外筒21の内周面と当接している。第1ゴム弾性体22の外側面22dには、筒軸方向に溝22bが設けられている。この溝22dは、組み立てられた防振装置1に要求される低動倍のばね特性を満たすために設けられている。
【0025】
第2ゴム弾性体23は、天然ゴムにSBR(スチレンブタジエンゴム)等の合成ゴムを混ぜた複合材からなり、高減衰のばね特性を有している。つまり、第2ゴム弾性体23は、第1ゴム弾性体22と性質が異なる。第2ゴム弾性体23は、第1ゴム弾性体22と略同じ形状・大きさであり、第1ゴム弾性体22の溝22bがないものである。
【0026】
第2ゴム弾性体23の内側面23cは、内筒20の外周面と当接している一方、第2ゴム弾性体23の外側面23dは、外筒21の内周面と当接している。第1ゴム弾性体22と同様に、第2ゴム弾性体23の筒軸方向各端面には、第2ゴム弾性体23を組立治具3に位置決めするための略直方体形状の突起23aが形成されている。
【0027】
ところで、例えば、リアサスペンションにおいて、上下方向には、ロードノイズやタイヤのストロークの妨げにならないように動的なばね特性を小さくしたい一方、車両前後方向には、この方向の減衰性能を補うために振動及び衝撃を吸収する減衰力を高くしたいという要求がある。
【0028】
ここで、上記の構成によれば、上下方向の振動に対して機能する第1ゴム弾性体22に低動倍のばね特性を有するゴム弾性体を用いることで動的なばね特性を小さくする一方、車両前後方向の振動に対して機能する第2ゴム弾性体23に高減衰のばね特性を有するゴム弾性体を用いることで振動及び衝撃を吸収する減衰力を高くすることができ、上記要求を満たす防振装置1を実現することができる。
【0029】
(組立治具の構成)
以下、上記の如く防振装置1を製造するための組立治具3について説明する。
【0030】
組立治具3は、外筒21を縮径させて、内筒20、外筒21及び各ゴム弾性体22,23を組み立てるためのものである。
【0031】
組立治具3は、
図3に示すように、金属製の内側治具31と、この内側治具31の上側に配置される金属製の外側治具32とを備えている。
【0032】
内側治具31は、内筒20及び各ゴム弾性体22,23を位置決めするためのものである。内側治具31は、略円柱形状で、その上端部にはフランジ部31dが形成されている。内側治具31の上端面には、内筒20を収容するための円状の凹部31aが形成されている。この凹部31aの開口径は、内筒20の外径より少し大きく、その深さは、内筒20の軸方向一端部における外筒21から突出した部分の軸方向の長さと略同じである。
【0033】
内側治具31のフランジ部31dの上端面には、各ゴム弾性体22,23の突起22a,23aを案内するための位置決めガイド31cが形成されている。この位置決めガイド31cは、
図4に示すように、内側治具31の周方向に均等に間隔をあけて4つ形成されている。
【0034】
内側治具31の周方向に相隣接する位置決めガイド31c,31cの間には、各ゴム弾性体22,23の突起22a,22a,23a,23aを収容するための溝31bが形成されている。
【0035】
溝31bは、内側治具31の周方向に均等に間隔をあけて4つ設けられている。溝31bの深さは、各ゴム弾性体22,23の突起22a,23aの高さよりも小さい。溝31bの筒径方向の長さは、突起22a,23aの筒径方向の長さよりも大きい。
【0036】
外側治具32は、外筒21を位置決めするためのものである。外側治具32は、
図5に示すように、略扇形状の8つの治具片32bを備え、これらが放射状に配置されている。そして、外側治具32は、8つの治具片32bを組み合わせることによって、全体として略円筒形状をなしている。すなわち、外側治具32は、外側治具32の軸線を含む平面によって8つの治具片32bに等分割されている。
【0037】
外側治具32は、外側治具32の周方向に相隣接する治具片32b,32bの間にそれぞれ隙間が形成された開放状態と、その隙間が閉じて外側治具32が円筒状となった閉鎖状態(
図5の状態)とに変更可能になっている。
【0038】
各治具片32bは、外筒21の外周面の曲率に対応する内周曲面32cを有し、各治具片32bを互いに組み合わせることで、各内周曲面32cにより断面円形の収容部33が形成されている。この収容部33は、
図3に示すように、内側治具31が同軸に挿入される下側収容部33aと、当該下側収容部33aと段差部33bを介して連なり、外筒21を収容するための上側収容部33cとから構成されている。上側収容部33cの内径は、下側収容部33aの内径よりも大きい。上記閉鎖状態における上側収容部33cの内径は、縮径前の外筒21の外径よりも小さい。また、上記閉鎖状態における下側収容部33aの内径は、内側治具31のフランジ部31dの外径よりも大きい。外側治具32の上側収容部33cの高さは、外筒21の軸方向の長さよりも大きい。
【0039】
段差部33bには、外筒21の外周面と上側収容部33cの内周面が当接するように外筒21が載置される。外側治具32の内側には、段差部33bの上面33dと内側治具31のフランジ部31dの上面31eとが同一平面になるように内側治具31が配置される。
【0040】
(防振ブッシュの製造方法)
以下、上記の如く構成された組立治具3を用いた防振装置1の製造方法について説明する。
【0041】
まず、各ゴム弾性体22,23用の金型(図示せず)を用いて各ゴム弾性体22,23を別個に加硫成形する(成形工程)。
【0042】
次に、各ゴム弾性体22,23の内側面22c,23c及び外側面22d,23dの全面(内筒20及び外筒21と各ゴム弾性体22,23との接着面)に熱硬化性接着剤を塗布する(塗布工程)。
【0043】
このように、接着剤を各ゴム弾性体22,23の内側面22c,23c及び外側面22d,23dの全面に塗布することにより、後述する組立工程において、外筒21の縮径に伴って各ゴム弾性体22,23が変形した際に、各ゴム弾性体22,23と内筒20及び外筒21との間に未接着部分が生じにくくなる。
【0044】
次に、
図3に示すように、組立治具3の内側治具31及び外側治具32を準備し、
図6に示すように、上記開放状態における外側治具32の上側収容部33cに外筒21を収容した後、内側治具31の凹部31aに内筒20を収容する。その後、各ゴム弾性体22,23の突起22a,23aが内側治具31の溝31bに収容されるように各ゴム弾性体22,23を内側治具31に配置する。このとき、筒周方向に相隣接するゴム弾性体22,23の間には、隙間24ができる。また、各ゴム弾性体22,23の内側面22c,23cと内筒20の外周面とが当接する一方、各ゴム弾性体22,23の外側面22d,23dと外筒21の内周面との間に微小の隙間25
(第1隙間)ができる。つまり、各ゴム弾性体22,23と外筒21との間に隙間25を設けた状態で、内筒20、外筒21及び各ゴム弾性体22,23が組立治具3に配置される(配置工程)。
【0045】
ここで、各ゴム弾性体22,23の外側面22d,23dに比べて面積が大きい内側面22c,23cを内筒20の外周面に当接させるので、各ゴム弾性体22,23を安定して支持することができる。
【0046】
次に、外側治具32を外側治具変位装置(図示せず)により径方向内方に押圧すると(
図6の矢印を参照)、外側治具32の治具片32b,32bの間の各隙間が埋まり、外側治具32が開放状態から閉鎖状態になる。これに伴って外筒21が外側治具32により縮径され、
図7に示すように、外筒21と各ゴム弾性体22,23との間の隙間25が埋まり、各ゴム弾性体22,23が予圧縮される。このように、組立治具3において隙間25を埋めるように外筒21が変形して、内筒20と外筒21との間に各ゴム弾性体22,23が保持されるように組み立てられる(組立工程)。この組立工程において、筒周方向に相隣接するゴム弾性体22,23の非接触状態は維持される。その後、外側治具32を開放状態にし、組み立てられた防振装置1を組立治具3から取り出す。
【0047】
次に、組み立てられた防振装置1を硬化炉(図示せず)に投入し、防振装置1の各ゴム弾性体22,23に塗布した熱硬化性接着剤を硬化させる(硬化工程)。その後、防振装置1を硬化炉から取り出す。
【0048】
以上のようにして、防振装置1が製造される。
【0049】
(効果)
以上より、本実施形態によれば、配置工程では、第1ゴム弾性体22の外側面22dと外筒21の内周面との間に微少の隙間25を設けた状態で、内筒20、外筒21及び各ゴム弾性体22,23を組立治具3に配置し、組立工程では、組立治具3において隙間25を埋めるように外筒21を縮径させて、内筒20と外筒21との間に各ゴム弾性体22,23を保持するように内筒20、外筒21及び各ゴム弾性体22,23を組み立てるので、内筒20と外筒21との間に各ゴム弾性体22,23を連結する際に、各ゴム弾性体22,23に生じる歪みを小さくすることができ、各ゴム弾性体22,23の残留歪みを抑えることができる。
【0050】
ところで、性質の異なる第1ゴム弾性体22及び第2ゴム弾性体23を有する防振装置1を製造する際、多色成形機を用いる方法があるが、性質の異なる各ゴム弾性体22,23の成形条件は成形時間等が異なるため、この方法では製造できる防振装置1の性能が制限されてしまう。また、金型の抜き方向にも制約があるため、この点でも成形条件に制約が生じてしまう。
【0051】
ここで、本実施形態によれば、各ゴム弾性体22,23を最適な成形条件で別個に成形することができるので、多色成形機では製造できない性質の異なるゴム弾性体22,23を備える防振装置1を製造することができる。さらに、各ゴム弾性体22,23の材料や形状等の設計自由度も向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、配置工程以後の全工程において、筒周方向に相隣接するゴム弾性体22,23の非接触状態を維持するので、ゴム弾性体22,23同士の接触による歪みが生じず、より各ゴム弾性体22,23の残留歪みを抑えることができる。
【0053】
(従来の防振装置との比較)
本実施形態の製造方法によって製造された防振装置1と、多色成形機によって製造された従来の防振装置(以下、多色式防振装置という)及びゴム弾性体を圧入することによって製造された従来の防振装置(以下、圧入式防振装置という)とを比較し、その結果を
図8に示す。
【0054】
圧入式防振装置では、内筒と外筒との間にゴム弾性体を圧入するため、ゴム弾性体のゴム歪率が高くなってしまう(
図8では△で示す)。これに対して、防振装置1では、配置工程で隙間25を設けた後に組立工程を行うため、ゴム弾性体22,23のゴム歪率を抑えることができるので、圧入式防振装置に比べ有利である(
図8では○で示す)。
【0055】
圧入式防振装置では、ゴム弾性体は圧入によって予圧縮されるため、ゴム弾性体の予圧縮率の調整範囲が狭くなってしまう(
図8では△で示す)。これに対して、防振装置1では、各ゴム弾性体22,23と外筒21との間の隙間25の大きさを異ならせることにより、各ゴム弾性体22,23にかかる予圧縮率をそれぞれ調整することができるので、他の方法に比べ有利である(
図8では◎で示す)。
【0056】
多色式防振装置では、複数のゴム弾性体を同時に成形するため、各ゴム弾性体の成形条件に制約があり、ゴム材の組み合わせの自由度は低い(
図8では×で示す)。これに対して、防振装置1では、成形工程で各ゴム弾性体22,23を別個に成形するため、各ゴム弾性体22,23の成形条件に制約がなく、ゴム材の組み合わせの自由度は高い(
図8では◎で示す)。
【0057】
多色式防振装置では、内筒と外筒との間に直接ゴム弾性体を成形するため、各ゴム弾性体の金型の抜き方向に制約があり、ゴム弾性体の形状自由度は低い(
図8では△で示す)。これに対して、防振装置1では、上記成形工程で各ゴム弾性体22,23を別個に成形するため、各ゴム弾性体22,23の成形条件に制約がなく、ゴム弾性体22,23の形状自由度は高い(
図8では○で示す)。
【0058】
以上のように、防振装置1は多色式及び圧入式防振装置に比べ、予圧縮率、ゴム材の組み合わせ、形状自由度の点で制約がないため、設計自由度が高く、また、ゴム歪率を抑えることができるので、防振性能がより向上する。
【0059】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態では、ゴム弾性体22,23を4つ設けたが、これに限られず、1つ、2つ、3つ又は5つ以上設けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、第1ゴム弾性体22及び第2ゴム弾性体23を筒周方向に均等に隙間24を空けて交互に配設したが、各隙間24の大きさを異ならせてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第1ゴム弾性体22を、天然ゴムを原材料とした単一材で構成したが、これに限られず、天然ゴムに合成ゴムを混ぜた複合材で構成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、第1ゴム弾性体22及び第2ゴム弾性体23を、天然ゴムを主原料とした単一材又は複合材で構成したが、これに限られず、ウレタン、熱可塑性エラストマー等を主原料としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、第1ゴム弾性体22及び第2ゴム弾性体23の性質を異ならせたが、同じにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、各ゴム弾性体22,23の内側面22c,23c及び外側面22d,23dに接着剤を塗布したが、これに代えて又はこれに加えて、内筒20の外周面及び外筒21の内周面における各ゴム弾性体22,23に対応する部分に塗布してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、成形工程後に塗布工程を行ったが、これに限られず、例えば、接着剤を内筒20及び外筒21のみに塗布する場合、塗布工程後に成形工程を行ってもよく、両工程を略同時に行ってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、各ゴム弾性体22,23と外筒21との間に隙間25を設けたが、これに代えて又はこれに加えて、各ゴム弾性体22,23と内筒20との間に隙間を設けてもよい。このように、各ゴム弾性体22,23と内筒20との間に隙間を設けた場合、その隙間を埋めるように内筒20を変形させてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第1ゴム弾性体22に係る隙間25の大きさと第2ゴム弾性体23に係る隙間25の大きさとを同じにしたが、それらの大きさを異ならせてもよい。例えば、第1ゴム弾性体22に係る隙間25を第2ゴム弾性体23に係る隙間25よりも大きくしてもよい。
【0068】
ところで、例えば、低動倍のばね特性を有する第1ゴム弾性体22は歪みを嫌う一方、高減衰のばね特性を有する第2ゴム弾性体23はある程度歪みを許容する。この両ゴム弾性体22,23を防振装置1に用いる場合、従来のゴム弾性体22,23を圧入する製造方法であれば、各ゴム弾性体22,23にほぼ均等に歪みが与えられてしまうため、特に低動倍のばね特性を有する第1ゴム弾性体22においては、その付与される歪みにより、低動倍のばね特性が低下する。
【0069】
ここで、上記のように、第1ゴム弾性体22に係る隙間25を第2ゴム弾性体23に係る隙間25よりも大きくすると、低動倍のばね特性を有する第1ゴム弾性体22には過度な歪みが付与されることがない。
【0070】
また、上記実施形態では、隙間25を埋めるように外筒21を縮径させたが、これに限られず、例えば、本発明に係る第1部材及び第2部材の形状構造によっては、第1部材とゴム弾性体との間及び第2部材とゴム弾性体との間の少なくとも一方に設けた隙間を埋めるように第1部材及び第2部材の少なくとも一方を移動させてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、本発明に係る防振装置1の製造方法をリアサスペンションに用いられる防振ブッシュに採用したが、これに限られず、例えば、エンジンマウントやダイナミックダンパー等に採用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、本発明に係る第1部材及び第2部材をそれぞれ円筒状の内筒20及び外筒21としたが、第1部材及び第2部材をそれぞれ多角筒状の内筒及び外筒としてもよく、また、第1部材を円柱状や多角柱状の部材としてもよい。