特許第6975008号(P6975008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975008
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】突出部検出装置、切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20211118BHJP
   G01B 11/22 20060101ALI20211118BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20211118BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20211118BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20211118BHJP
   B23K 10/00 20060101ALN20211118BHJP
   B23K 7/00 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   B23K26/38 Z
   G01B11/22 Z
   G01B11/02 Z
   B23K26/08 H
   B23K26/00 M
   !B23K10/00 502B
   !B23K7/00 505E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-196084(P2017-196084)
(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公開番号】特開2019-69458(P2019-69458A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150981
【氏名又は名称】日酸TANAKA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美馬 真人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 義美
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−202659(JP,A)
【文献】 特開2015−110243(JP,A)
【文献】 実開平3−81279(JP,U)
【文献】 実開平7−26081(JP,U)
【文献】 特開2011−192697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
G01B 11/22
G01B 11/02
B23K 10/00
B23K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材と切断トーチとが前記被加工材の加工面に沿って相対移動して前記被加工材に切溝を形成する切断装置に用いられ、前記加工面から突出する突出部を検出する突出部検出装置であって、
前記被加工材に形成された前記突出部の高さを検出する突出部検出センサを備え、
前記突出部検出センサは、高さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の光軸の検出ビームによって投受光する構成とされ、前記切断トーチと前記被加工材とが相対移動する相対移動方向と交差する方向に向かって前記検出ビームを投受光するビームセンサであり、
前記ビームセンサの前記高さ方向のいずれかに位置される前記光軸の検出ビームを基準としたときに前記ビームセンサが検出した前記突出部の高さが設定量以上の高さを有する場合に、突出部検出信号を出力するように構成されていることを特徴とする突出部検出装置。
【請求項2】
前記被加工材が配置される定盤と、
前記被加工材に切溝を形成する前記切断トーチと、
を備え、
前記切断トーチと前記被加工材とが前記加工面に沿って相対移動して前記被加工材に切溝を形成する切断装置であって、
請求項1に記載の突出部検出装置を備えていることを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項 に記載の切断装置であって、
前記切断トーチがレーザビームを照射して切溝を形成するレーザトーチとされ、
前記レーザトーチが前記被加工材に切溝を形成する際に、照射された前記レーザビームが前記被加工材との間から外部に漏れるのを抑制する遮光部材を備えていることを特徴とする切断装置。
【請求項4】
前記切断トーチを搭載した切断トーチ移動台車と、
前記切断トーチ移動台車に取り付けられ、遮光カバー部と遮光スカート部とを有する前記遮光部材と、
前記突出部検出信号を出力し、前記切断装置を停止するとともに警報を出力する制御部を設けた前記突出部検出装置と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切断トーチと被加工材とが加工面に沿って相対移動する切断装置に用いられ、被加工材に形成された突出部を検出することが可能な突出部検出装置及び切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工材を切断する切断装置として、例えば、レーザトーチをはじめとする切断トーチを備えた切断装置が広く用いられている。
【0003】
従来、切断トーチを備えた切断装置によって被加工材を加工する際に、被加工材の加工面に大きな突出部(例えば、段差)があると、切断トーチと被加工材が接触する虞があることから、加工面はできる限り水平に形成されていることが望ましい。
【0004】
そして、このような切断装置では、被加工材を加工する際に、被加工材の加工面を高さセンサによって検出し、検出した加工面の高さに基づいて切断トーチを高速で下降させるイニシャルハイトを設定することによって、切断トーチが被加工材が接触して破損等するのを抑制するための切断装置に関する種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−188558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、切断装置によって被加工材を切断する際には、切溝の形成が進行するにつれて、例えば、被加工材の縁部近傍に位置される細い端材が加工面から突出し突出部が生じたり、被加工材に生じた反り返りによって被加工材の一部(例えば、縁部)が定盤から部分的に浮き上がって突出部が生じる場合がある。
このように被加工材の加工面に大きな突出部が形成されていると、切断トーチが被加工材と接触して破損する虞れがある。
【0007】
また、図6(A)に示すように、例えば、切断装置200がレーザビームを照射して被加工材Wに切溝を形成するレーザ切断装置である場合には、必要に応じて、切断トーチ移動台車110に遮光部材120を設けて、切断トーチ移動台車110に配置されたレーザトーチ111が切溝を形成する空間と人が作業をする空間(外部)とを仕切り、レーザトーチ111から照射されたレーザビームが外部に漏れるのを防止する措置がとられている。
このような遮光部材120は、下部に可撓性を有する柔軟な遮光スカート部121を設けて、加工面WSとの間に隙間が生じないようにすることが一般的である。
【0008】
しかしながら、例えば、図6(B)に示すように、被加工材Wに切溝Cを形成する際に、端材が加工面WSから盛り上がって段差(突出部)WTが生じると、遮光スカート部121が部分的に捲れあがり、遮光スカート部121と加工面WSの間に生じた隙間WBからレーザビームが漏れ出す虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、切断トーチと被加工材とが加工面に沿って相対移動する切断装置に用いられ、被加工材の加工面に部分的に形成された突出部を検出することが可能な突出部検出装置及び切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1 に記載の発明は、被加工材と切断トーチとが前記被加工材の加工面に沿って相対移動して前記被加工材に切溝を形成する切断装置に用いられ、前記加工面から突出する突出部を検出する突出部検出装置であって、前記被加工材に形成された前記突出部を検出する突出部検出センサを備え、前記突出部検出センサは、高さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の光軸の検出ビームによって投受光する構成とされ、前記トーチと前記被加工材とが相対移動する相対移動方向と交差する方向に向かって前記検出ビームを投受光するビームセンサであり、前記ビームセンサの前記高さ方向のいずれかに位置される前記光軸の検出ビームを基準としたときに前記ビームセンサが検出した前記突出部の高さが設定量以上の高さを有する場合に、突出部検出信号を出力するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る突出部検出装置によれば、被加工材に形成された突出部を検出する突出部検出センサを備え、突出部検出センサは、高さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の光軸の検出ビームによって投受光する構成とされ、トーチと被加工材とが相対移動する相対移動方向と交差する方向に向かって検出ビームを投受光するビームセンサであり、ビームセンサの前記高さ方向のいずれかに位置される前記光軸の検出ビームを基準としたときにビームセンサが検出した突出部の高さが設定量以上の高さを有する場合に、突出部検出信号を出力するように構成されているので、相対移動する範囲内において、相対移動方向と交差する方向のいずれかの位置に部分的に形成された突出部であっても検出することができる。その結果、被加工材に形成された突出部を、広範囲にわたって効率的に検出することができる。
また、ビームセンサの前記高さ方向のいずれかに位置される前記光軸の検出ビームを基準としたときに設定量以上の高さの突出部が形成されている場合に、切断装置に突出部に起因する不具合が発生するのを抑制することができる。
その結果、切断トーチや切断装置の一部を構成する部材と突出部との接触や、レーザ切断装置等に設けられた遮光部材が突出部と接触して捲れあがって発生する隙間からレーザビームが外部に漏出するのを抑制することができる。
【0012】
ここで、突出部の高さとは、加工面を基準としてもよいし、定盤の上面等、加工面と代用可能な構成を高さを判定する際の基準としてもよい。
【0013】
また、突出部の高さが設定量以上であるとは、O N -O F F によって判定する場合、突出部の高さ設定量を数値化して対比して判定する場合の双方を含むものとする。
【0014】
また、切断トーチとは、被加工材に切溝を形成するトーチをいい、レーザトーチ、プラズマトーチ、ガストーチ等を含むものとする。
【0018】
請求項に記載の発明は、被加工材が配置される定盤と、前記被加工材に切溝を形成する切断トーチと、を備え、前記切断トーチと前記被加工材とが加工面に沿って相対移動して前記被加工材に切溝を形成する切断装置であって、請求項1に記載の突出部検出装置を備えていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る切断装置によれば、突出部検出装置が設定量以上の突出部を検出して突出部検出信号を出力するので、突出部に起因して発生する不具合を効率的に抑制することができる。
その結果、例えば、切断トーチ等、切断装置の一部を構成する部材と突出部との接触や、レーザ切断装置等に設けられた遮光部材が突出部によって捲れあがることに起因して生じる隙間からレーザビームが外部に漏出するのを抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の切断装置であって、前記切断トーチがレーザビームを照射して切溝を形成するレーザトーチとされ、前記レーザトーチが前記被加工材に切溝を形成する際に、照射されたレーザビームが前記被加工材との間から外部に漏れるのを抑制する遮光部材を備えていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の切断装置であって、前記切断トーチを搭載した切断トーチ移動台車と、前記切断トーチ移動台車に取り付けられ、遮光カバー部と遮光スカート部とを有する前記遮光部材と、前記突出部検出信号を出力し、前記切断装置を停止するとともに警報を出力する制御部を設けた前記突出部検出装置と、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明に係る切断装置によれば、レーザ切断装置等に設けられた遮光部材が突出部と接触して捲れあがって発生する隙間からレーザビームが外部に漏出するのを抑制することができる。
その結果、レーザ切断装置による被加工材の切断作業において安全衛生を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成の一例を説明する斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成を説明する平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成を説明する図であり、(A)はレーザ切断装置を正面から見た概略図であり、(B)は突出部検出装置の詳細を説明する概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成を説明する側面から見た部分断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る突出部検出装置の一例を説明する概略構成図である。
図6】従来のレーザ切断装置による切溝形成の概略を説明する図であり、(A)は切溝を形成することにより段差が形成された状態を示す図であり、(B)は段差によって遮光スカート部と被加工材の間に隙間が形成された状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図5を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成の一例を説明する斜視図であり、図2はレーザ切断装置の概略構成を説明する平面図であり、図3はレーザ切断装置の概略構成を説明する図であり、図3(A)はレーザ切断装置を正面から見た概略図であり、図3(B)は突出部検出装置の詳細を説明する概念図である。また、図4は、レーザ切断装置の概略構成を説明する側面から見た部分断面図である。
【0024】
図1から図5において、符号100はレーザ切断装置(切断装置)を、符号20は切断トーチ移動台車を、符号21はレーザトーチ(切断トーチ)を、符号50は突出部検出装置を、符号51はビームセンサ(突出部検出センサ)を、符号Wは被加工材を、符号WSは加工面を、符号WTは突出部を示している。
【0025】
レーザ切断装置(切断装置)100は、図1図4に示すように、例えば、定盤10と、切断トーチ移動台車20と、レーザトーチ(切断トーチ)21と、遮光カバー(遮光部材)40と、突出部検出装置50と、制御部60とを備え、レーザトーチ21を加工面WSに沿って移動して被加工材Wに切溝を形成するように構成されている。
【0026】
定盤10は、例えば、矩形形状に形成され床面に水平に配置されていて、上部に被加工材Wを載置可能とされている。
【0027】
切断トーチ移動台車20は、例えば、レーザトーチ21と、定盤10に対して走行方向(X軸方向)に移動する走行台車22と、走行台車22上に載置され走行台車22上において横行方向(Y軸方向)に移動可能とされるとともにレーザトーチ21が搭載される横行台車23とを備えている。
そして、切断トーチ移動台車20は、レーザトーチ21をX軸方向及びY軸方向に移動可能とされている。
【0028】
レーザトーチ(切断トーチ)21は、例えば、円筒部の先端側が略円錐形に形成され先端にノズル孔(不図示)が開口された構成とされていて、アシストガスを噴射するとともにファイバーレーザ発振器(不図示)で生成されたレーザビームをノズル孔から照射して、被加工材Wに切溝を形成するようになっている。
また、レーザトーチ21は、例えば高さ方向(Z軸方向)に移動可能に構成されるとともにX軸方向及びY軸方向に沿って回動することが可能とされている。
【0029】
ファイバーレーザ発振器(不図示)は、例えば、LD(レーザダイオード)と、増幅用ファイバーとを備え、LD(レーザダイオード)が発振したレーザビームを増幅用ファイバーによって増幅して切断に使用可能なレーザビーム(例えば、1000nm波長帯)を生成するように構成されている。
そして、ファイバーレーザ発振器で生成されたレーザビームは、伝送ファイバー(不図示)を介してレーザトーチ(切断トーチ)21に伝送されるようになっている。
【0030】
遮光部材40は、例えば、金属板を加工して形成されレーザトーチ21を覆うように構成された遮光カバー部41と、遮光カバー部41の下部に配置された遮光スカート部42と、走行台車22の走行方向後方側に配置された遮光スカート部43とを備え、レーザトーチ21がレーザビームを照射して被加工材Wに切溝を形成する空間と外部とを仕切るように構成されている。
【0031】
遮光カバー部41は、図4に示すように、Y軸方向に沿って見た(側面視した)ときに、レーザトーチ21の上方から正面側(走行方向前方側)に向かって形成されるとともに外方に向かって膨出する第1壁部41Aと、第1壁部のY軸方向における両側に配置された第2壁部41Bとを備え、切断トーチ移動台車20及びレーザトーチ21の正面側及び両側部を覆う構成とされている。
【0032】
また、遮光カバー部41は、例えば、切断トーチ移動台車20の上部にヒンジ構造を介して連結されていて、レーザトーチ21の走行方向前方側を覆うように構成されている。
ヒンジ構造は、例えば、Y軸方向に沿って配置された回動軸41Cによって構成されていて、遮光カバー部41を回動軸41C周りに回動して遮光カバー部41を開閉することが可能とされている。
【0033】
遮光スカート部42は、例えば、所定幅に形成された可撓性を有する複数の難燃性シートによって構成されている。
また、遮光スカート部42は、遮光カバー部41の正面側の下部にY軸方向に沿って垂下するように取り付けられている。
【0034】
遮光スカート部43は、例えば、所定幅に形成された可撓性を有する複数の難燃性シートによって構成されている。
また、遮光スカート部43は、走行台車22の走行方向後方側の下部にY軸方向に沿って垂下するように取り付けられ、走行台車22の下方に形成されたレーザトーチ21側の空間から走行方向後方側に通じる空間を塞ぐようになっている。
【0035】
以下、図1図4及び図5を参照して、突出部検出装置の概略構成の一例について説明する。図5は突出部検出装置の一例を説明する概略構成図である。
【0036】
突出部検出装置50は、被加工材に形成された突出部WTを検出する突出部検出センサを備え、突出部検出センサが検出した突出部WTの高さが加工面WSを基準としたときに設定量以上である場合に、突出部検出信号を出力する構成とされている。
【0037】
突出部検出センサは、この実施形態において、例えば、ビームセンサ51により構成されている。
ビームセンサ(突出部検出センサ)51は、例えば、切断トーチ移動台車20の走行方向前方側に配置される第1ビームセンサ511と、切断トーチ移動台車20の走行方向後方側に配置される第2ビームセンサ512とを備えている。
【0038】
第1ビームセンサ511は、検出ビームLを投光する投光部511Aと、検出ビームLを受光する受光部511Bとを備えている。
また、第1ビームセンサ511は、遮光カバー41の左右の第2壁部41Bに取付けられ、投光部511A、受光部511Bが遮光スカート部42に沿って互いに対向して配置されている。
【0039】
また、第1ビームセンサ511は、例えば、高さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の光軸によって投受光する構成とされている。なお、第1ビームセンサ511の光軸数は任意に設定することができる。
【0040】
投光部511A、受光部511Bは、高さ調整部材(不図示)によって上下方向に調整可能とされていて、高さ調整することにより検出可能な突出部WTの高さを設定することが可能とされている。
【0041】
第2ビームセンサ512は、検出ビームLを投光する投光部512Aと、検出ビームLを受光する受光部512Bとを備えている。
また、第2ビームセンサ512は、切断トーチ移動台車20をY軸方向における両側で支持する走行台車22の脚部の内側面に取付けられて、投光部512A、受光部512Bが遮光スカート部43に沿って互いに対向して配置されている。
【0042】
また、第2ビームセンサ512は、例えば、高さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の光軸によって投受光するようになっている。なお、第2ビームセンサ512の光軸数については、第1ビームセンサ511と同じ数にするかどうかも含めて任意に設定することができる。
【0043】
投光部512A、受光部512Bは、高さ調整部材(不図示)によって上下方向に調整可能とされていて、高さ調整することにより検出可能な突出部WTの高さを設定することが可能とされている。
【0044】
第1ビームセンサ511、第2ビームセンサ512の光軸のピッチPについては、突出物WTを検出できる範囲で任意に設定することができる。その際、光軸のピッチPを被加工材Wの加工面WSの状態等や、切溝を形成することで被加工材Wの端材に生じる変形量等を考慮して設定することが好適である。
具体的には、図5に示すように、第1ビームセンサ511、第2ビームセンサ512の光軸のピッチPは、被加工材Wの板厚tより小さい間隔とすることが突出部WTの下方に空間が生じた場合でも、任意の高さにある突出部WTを検出することが可能な点で好適である。
【0045】
また、第1ビームセンサ511、第2ビームセンサ512の高さは、任意に設定することが可能である。
例えば、図5に示すように、突出部WTを検出していない初期設定段階で、下方に位置される光軸の検出ビームLA(L)が、定盤10や被加工材Wによって遮光されていて、初期設定段階で加工面WSより上方に位置される光軸LB(L)の遮光によって突出部WTを検出するように設定してもよい。
【0046】
かかる場合において、加工面WSの上方に位置されるいずれかの光軸の検出ビームLB(L)が遮光された場合に突出部WTがあると判定してもよいし、遮光された検出ビームLB(L)の数によって突出部WTがあると判定してもよく、判定手法については任意に設定することができる。
【0047】
また、第1ビームセンサ511、第2ビームセンサ512の高さを、例えば、最も下方に位置される光軸を加工面WSよりも上方に位置させて、最も下方に位置される光軸の検出ビームが突出部によって遮光された場合に突出部WTがあると判定してもよい。
また、加工面WSの上方に位置されるいずれかの光軸の検出ビームが遮光された場合に突出部WTがあると判定してもよく、遮光された検出ビームの数によって突出部WTがあると判定してもよい。
【0048】
制御部(突出部検出装置)60は、例えば、設定されたNCデータに基づいて切断トーチ移動台車20をX軸方向及びY軸方向に移動し、レーザトーチ21からアシストガスを噴射するとともにレーザビームを照射して被加工材Wに切溝を形成するように構成されている。
また、制御部60は、突出判定部(不図示)を備えている。
【0049】
突出判定部は、ビームセンサ51が出力した光軸信号を受け取って、突出部WTがあると判定した場合に、突出部検出信号を出力する。
この実施形態において、制御部60は、突出部検出信号が出力された場合に、切断装置100が停止するとともに警報を出力するように構成されている。
【0050】
一実施形態に係る突出部検出装置50によれば、ビームセンサ51によって被加工材Wに形成された加工面WSから設定量H以上の高さを有する突出部WTを検出して突出部検出信号を出力するので、切断装置に突出部WTに起因する不具合が発生するのを抑制することができる。
【0051】
その結果、レーザ切断装置100に設けられた遮光部材40の遮光スカート部42、43が突出部WTと接触して捲れあがって生じる隙間からレーザビームが外部に漏れ出すのを抑制することができる。
その結果、レーザ切断装置100の周辺における作業場の安全衛生を確保することができる。
【0052】
また、一実施形態に係るレーザ切断装置100によれば、突出部検出センサが、切断トーチ移動台車20の移動方向と直交(交差)する方向に検出ビームLを投受光するビームセンサ51とされているので、切断トーチ移動台車20がX軸方向に移動することによって、移動範囲内におけるY軸方向のいずれかの位置に部分的に形成された突出部WTであっても検出することができる。
その結果、被加工材Wに形成された突出部WTを、広範囲にわたって効率的に検出することができる。
【0053】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、レーザトーチがファイバーレーザ発振器が生成した1000nm波長帯のレーザビームを照射するレーザ切断装置100に適用する場合について説明したが、ファイバーレーザ発振器に限定されず、例えば、COレーザ発振器やYAGレーザ発振器を備えたレーザ切断装置に適用してもよい。
また、レーザ切断装置に代えて、プラズマ切断装置やガス切断装置に適用してもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、ビームセンサ(突出部検出センサ)51が、走行方向(X軸方向)と直交する方向に配置された遮光スカート部42、43に沿って検出ビームLを照射するように配置されている場合について説明したが、ビームセンサ(突出部検出センサ)51が走行方向(X軸方向)と交差する任意の方向に検出ビームLを投受光するように配置してもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、ビームセンサ(突出部検出センサ)51が、走行方向(X軸方向)に代えて横行方向(Y軸方向)と交差する方向に沿って検出ビームLを照射し、又は走行方向(X軸方向)と交差する方向及び横行方向(Y軸方向)と交差する方向の双方に沿って検出ビームLを照射する構成としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、ビームセンサ(突出部検出センサ)51が高さ調整部材を介して走行台車22に取付けられている場合について説明したが、高さ調整部材を設けるかどうかは任意に設定することができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、突出部検出装置50が、被加工材Wに切溝を形成する際に端材が持ち上がることによって生じた突出部WTを検出する場合について説明したが、突出部検出装置50によって検出する突出部WTの形態については任意に設定することが可能であり、例えば、被加工材Wの加工面WSに形成された種々の突出部(加工前から形成されている突出部等)を検出するのに適用してもよい。
また、被加工材Wに生じたそり返りに起因して被加工材Wの縁部が定盤10から離間して生じた突出部を検出するのに適用してもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、突出部検出装置50が、加工面WSを基準として突出部WTの高さを判定する場合について説明したが、例えば、定盤10の上面を加工面WSの代用特性として突出部WTを検出する際の基準として判定してもよい。このように、定盤10の上面等を加工面WSの代用特性として突出部WTを検出することにより、そり返りに起因して被加工材Wの縁部が定盤10から浮き上がって突出部等を検出するうえで好適である。
【0060】
また、上記実施形態においては、例えば、切断装置が遮光部材40を備えている場合について説明したが、遮光部材40備えるかどうかや遮光部材40の構成については任意に設定することが可能であり、遮光スカート部を備えない構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、突出部検出装置50が、走行台車22の走行方向前方側の遮光スカート部42と、後方側の遮光スカート部43のそれぞれに沿って、ビームセンサ511、512を備えている場合について説明したが、例えば、走行台車22の走行方向前方側と後方側のいずれか一方のみにビームセンサ51を配置してもよい。
また、走行台車22に代えて、切断トーチ移動台車20の他の部分に突出部検出装置50を配置してもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、遮光部材40からレーザビームが漏れ出すのを抑制する目的で突出部検出装置50を設ける場合について説明したが、例えば、レーザトーチ(切断トーチ)21や切断トーチ移動台車20を構成する部材が突出部WTと接触するのを抑制する等、他の目的で突出部検出装置50を備えてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、切断トーチ移動台車20に配置されたレーザトーチ21が定盤10に対して走行方向及び横行方向に移動するレーザ切断装置100に適用する場合について説明したが、切断トーチ移動台車20に代えて、定盤10が移動する構成としてもよい。
また、切断トーチ移動台車20が一方向(例えば、走行方向)のみに移動する切断装置に適用してもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、例えば、突出部検出センサとして、ビームセンサ51を用いる場合について説明したが、ビームセンサ51に代えて、任意の位置に配置した複数の変位検出センサ(例えば、レーザ変位センサ等)によって突出部を検出し、検出した突出部WTの高さを閾値(設定量)と比較して突出部が設定量以上であるかどうかを判定してもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、突出部検出装置50が出力した突出部検出信号によって、レーザ切断装置100を停止するとともに警報を出力する場合について説明したが、突出部検出信号をどのように使用するかは任意に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る突出部検出装置及び切断装置によれば、被加工材の加工面に部分的に形成された突出部を検出することができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
W 被加工材
WS 加工面
WT 突出部
10 定盤
20 切断トーチ移動台車
21 レーザトーチ(切断トーチ)
40 遮光部材
50 突出部検出装置
51 ビームセンサ(突出部検出センサ)
100 レーザ切断装置(切断装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6