特許第6975103号(P6975103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6975103
(24)【登録日】2021年11月9日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】改修建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20211118BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   E06B1/56 A
   E06B5/16
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-123765(P2018-123765)
(22)【出願日】2018年6月28日
(65)【公開番号】特開2020-2662(P2020-2662A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】佐野 龍大
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−035547(JP,A)
【文献】 特開2018−080467(JP,A)
【文献】 特開2016−211301(JP,A)
【文献】 特開2017−198047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/56
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体開口部に残存する既設下枠に装着される新設下枠と、新設下枠の室内側を覆う内部カバーを備え、
新設下枠は、室内側壁部と、室内側壁部から室内側に延設される室内側上壁部を有しており、
内部カバーは、新設下枠の室内側上壁部の上面を覆う天板部を有し、天板部の室外側端部に形成された係合部が新設下枠の室内側上壁部の上方位置で室内側壁部に係合されているとともに、新設下枠の室内側の躯体開口部に固定されており、
新設下枠は、室内側壁の室内側面に、加熱により新設下枠と躯体開口部の間の間隙に向かって膨張する加熱膨張材が配置されている改修建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に残存する既設枠の内周に配置される改修建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に残存する既設枠の内周に配置される改修建具が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−285757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された改修建具は、新設した下枠の室内側部を内部額縁によって覆うことで室内側の見栄えを良くしている。
上記特許文献1に記載された建具においては、新設した下枠のレールの位置が既存の下枠の高さ位置よりも高い位置となっているので、新設下枠のレールが突出することを防止する点から、新設した下枠の室内側部分や新設した下枠の室内側部分を覆う内部額縁に高さを持たせる必要がある。
そのため、既設下枠と新設下枠の室内側部分や内部額縁との間に間隙が形成されてしまい、火災時に、該間隙を通って炎や煙が侵入するなどして、延焼が生じる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、改修建具の強度を向上するとともに、改修下枠の室内側部に生じる間隙からの延焼を抑制し、防火性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、躯体開口部に残存する既設下枠に装着される新設下枠と、新設下枠の室内側を覆う内部カバーを備え、新設下枠は、室内側壁部と、室内側壁部から室内側に延設される室内側上壁部を有しており、内部カバーは、新設下枠の室内側上壁部の上面を覆う天板部を有し、天板部の室外側端部に形成された係合部が新設下枠の室内側上壁部の上方位置で室内側壁部に係合されているとともに、新設下枠の室内側の躯体開口部に固定されており、新設下枠は、室内側壁の室内側面に、加熱により新設下枠と躯体開口部の間の間隙に向かって膨張する加熱膨張材が配置されている改修建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防火建具の構成により、改修建具の強度を向上することができ、防火性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る改修建具の竪断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る改修建具の横断面図である。
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る改修建具の下枠部分の竪断面図であり、(b)は、その一部拡大図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る改修建具の竪断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る改修建具の横断面図である。
図6】(a)は、本発明の他の実施形態に係る改修建具の下枠部分の竪断面図であり、(b)は、その一部拡大図である。
図7】本発明の実施形態に係る改修建具の上枠と竪枠との連結部分のシールを説明するための斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る改修建具の下枠と竪枠との連結部分のシールを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
−第1の実施形態―
本発明の第1の実施形態の改修建具として、図1ないし3に示すように、既設の引違い建具の既設枠1の内周に、新設枠2を装着してなる改修建具を用いて説明する。
【0010】
(全体の構成)
本実施形態の改修建具は、図1図2に示すように、既設上枠11,既設下枠12,既設竪枠13,13からなる既設枠1を除去せずに、既設枠1の内周に新設上枠21,新設下枠22,新設竪枠23,23からなる新設枠2が配置されている。
なお、本実施形態の改修建具は、左右の竪枠部分についてその主たる構成がほとんど同様であるので、竪枠部分についての説明を右竪枠を用いて行う。
【0011】
既設枠1を構成する既設上枠11,既設下枠12,既設竪枠13のそれぞれには上取付補助材31、下取付補助材32及び竪取付補助材33が固定されており、新設枠2は各取付補助材を介して既設枠1に装着されている。
なお、既設枠1は、その全ての部分が除去されずに残存させた状態で取付補助材及び新設枠を装着しても良いが、例えば図1に示す既設下枠12の室外側下レールが切除されているように、必要に応じて新設枠2を配置するに際して邪魔となる部位が除去されていてもよい。
【0012】
(上枠部分の構成)
既設上枠11に固定される上取付補助材31は、見込寸法が既設上枠11の見込寸法とほぼ同程度の寸法を有し新設上枠21の長手方向に延びる長尺部材からなる。上取付補助材31は、新設上枠21を装着する際の基準となる見込壁部31aと、見込壁部31aの室内外両端付近より外周方向に延設される室内側固定部31b及び室外側固定部31cを有している。
【0013】
そして、見込壁部31aが水平となるように見込壁部31aの外周側面を既設上枠11の室内側壁部11a、室外側壁部11bの下端に当接させた状態で、室内側固定部31b及び室外側固定部31cが既設上枠11の室内側壁部11aの室外側と室外側壁部11bの室内側との間に挿入され、室内側固定部31bが室内側壁部11aにビス等の固定手段bにより固定され、室外側固定部31cが室外側壁部11bにビス等の固定手段bにより固定されている。
【0014】
新設上枠21は、既設上枠11よりも見込寸法が大きく形成されており、見込み方向室内側上面に加熱により膨張する加熱膨張材fが配置されるとともに、見込み方向の略中央付近において、スペーサー61を介してビス等の固定手段bにより上取付補助材31の見込壁部31aに固定されている。新設上枠21の室内側下面には、後述する内部カバー71を取り付けるための挿入部21aを有している。
【0015】
新設上枠21は、室外側外周に気密材sを有しており、上取付補助材31を介して既設上枠11に固定された新設上枠21の気密材sが既設上枠11の室外側内周に当接して、既設上枠11と新設上枠21との室外側における気密を行っている。
【0016】
また、新設上枠21の室内側から既設上枠11の室内側を覆うように、防水シート81が設けられるとともに、防水シート81を覆うようにアルミニウム合金等の金属製の内部カバー71が配置されている。
【0017】
金属製の内部カバー71は、防水シート81を覆うカバー部71aと、新設上枠21の挿入部21aに挿入される脚部71bと、カバー部71aの上端に連続する固定部71cとを有している。
そして、内部カバー71は、脚部71bが新設上枠21の挿入部21aに上下動自在に挿入された状態で、固定部71cがビス等の固定手段bにより躯体開口部に固定されて配置されている。
【0018】
(下枠部分の構成)
既設下枠12に固定される下取付補助材32は、室内側取付補助材321と室外側取付補助材322の二つの部材からなる。
室内側取付補助材321は、アルミニウム合金等の金属材料からなり、新設下枠22の室内側の荷重を支持する支持部321aと、支持部321aの室内側に連続する取付壁321bと、を有し、取付壁321bが既設下枠12の室内側の壁面にビス等の固定手段bにより固定されている。また、室内側取付補助材321の支持部321aは、既設下枠12の室内側下レールに固定された荷重支持部材323にスペーサー62を介して支持されている。
【0019】
室外側取付補助材322は、新設下枠22の室外側の荷重を支持する支持部322a及び新設下枠22の室外側端部の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部322bを有し、支持部322aがスペーサー63を介して既設下枠12に載置された状態で既設下枠12の前壁部にビス等の固定手段bにより固定されている。
【0020】
新設下枠22は、既設下枠12よりも見込寸法が大きく形成されており、見込み方向の室内側が室内側取付補助材321の支持部321aに支持され、ビス等の固定手段bにより室内側取付補助材321の支持部321aに固定されている。
また、新設下枠22は、室外側下端に室内側に屈曲して延びる浮き上がり防止片22gを有しており、新設下枠22を既設下枠12に装着した状態で浮き上がり防止片22gが室外側取付補助材322の浮き上がり防止部322bの下方に位置している。そして、必要に応じて、新設下枠22の室外側が室外側取付補助材322の浮き上がり防止部322bに対して、ビス止め固定されている。
【0021】
新設下枠22の室内側から既設下枠12の室内側を覆うように防水シート82が設けられており、防水シート82を覆うようにアルミニウム合金等の金属製の内部カバー72が配置されている。
【0022】
(竪枠部分の構成)
既設竪枠13に固定される竪取付補助材33は、見込寸法が既設竪枠13の見込寸法とほぼ同程度の見込寸法を有し新設竪枠23の長手方向に延びる長尺部材からなる。竪取付補助材33は、新設竪枠23を装着する際の基準となる見込壁部33aと、見込壁部33aの室内外両端付近より外周方向に延設される室内側固定部33b及び室外側固定部33cを有している。
【0023】
そして、竪取付補助材33は、室内側固定部33b及び室外側固定部33cが既設竪枠13の室内側壁部13aの室外側と室外側壁部13bの室内側との間に挿入されることで、見込壁部33aが内周に向く垂直面となるように配置され、室内側固定部33bが室内側壁部13aにビス等の固定手段bにより固定され、室外側固定部33cが室外側壁部13bにビス等の固定手段bにより固定されている。
【0024】
新設竪枠23は、既設竪枠13よりも見込寸法が大きく形成されており、見込み方向室内側外周面に加熱により膨張する加熱膨張材fが配置されるとともに、見込み方向の略中央付近において、スペーサー64を介してビス等の固定手段bにより竪取付補助材33の見込壁部33aに固定されている。新設竪枠23の室内側内周面には、後述する内部カバー73を取り付けるための挿入部23aを有している。
【0025】
新設竪枠23は、室外側外周に気密材sを有しており、竪取付補助材33を介して既設竪枠13に固定された新設竪枠23の気密材sが既設竪枠13の室外側内周に当接して、既設竪枠13と新設竪枠23との室外側における気密を行っている。
また、新設竪枠23の室内側及び既設竪枠13の室内側を覆うように防水シート83が設けられており、防水シート83を覆うようにアルミニウム合金等の金属製の内部カバー73が配置され、ビス等の固定手段bによって躯体開口部に固定されている。
【0026】
金属製の内部カバー73は、防水シート83を覆うカバー部73aと、新設竪枠23の挿入部23aに内周方向から挿入される脚部73bと、カバー部73aの外周側端に連続する固定部73cとを有している。そして、内部カバー73は、脚部73bを新設竪枠23の挿入部23aに左右移動自在に挿入した状態で、固定部73cがビス等の固定手段bにより躯体開口部に固定されて配置されている。
【0027】
ここで、新設枠2および既設枠1の室内側を覆うように配置される防水シートについて、図7,8を参考にして説明する。
図7に示すように、既設上枠11の室内側壁部11aと新設上枠21の室内側との間には、隙間d1(スペーサー61が配置されている。)が存在するが、該隙間d1を覆うように、防水シート81が設けられている。
【0028】
また、既設竪枠13の室内側壁部13aと新設竪枠23の室内側との間には、隙間d3(スペーサー63が配置されている。)が存在するが、該隙間d3を覆うように、防水シート83が設けられている。
そして、枠の上コーナー部において、上枠に配置された防水シート81と、竪枠に配置された防水シート83を連続させるように、防水シート84及び防水シート85が設けられている。
【0029】
一方、図8に示すように、既設下枠12の室内側壁部12aと新設下枠22の室内側との間には、隙間d2が存在するが、該隙間d2を覆うように、防水シート82が設けられている。
【0030】
また、既設竪枠13の室内側壁部13aと新設竪枠23の室内側との間には、隙間d3(スペーサー63が配置されている。)が存在するが、該隙間d3を覆うように、防水シート83が設けられている。
そして、枠の下コーナー部において、下枠に配置された防水シート82と、竪枠に配置された防水シート83を連続させるように、防水シート86が設けられている。
【0031】
(第1の実施形態の下枠室内側部分の構成)
以上のように、本実施形態の改修建具は、新設下枠22の室内側が室内側取付補助材321を介して既設下枠12に支持されているが、既設下枠12に対して新設下枠22の室内側レールを高い位置に配置していることから、火災時等に内、外障子が室外側に反るように変形した際に、新設下枠22が室外側に転んでしまい、内、外障子が外れてしまう危険性があった。
【0032】
また、新設下枠22の室内側レールを高い位置に設定することにより、室内側レールに高さを合わせて形成された新設下枠22の室内側部分を覆う内部カバー72の高さ寸法も高く設定されることとなり、新設下枠22及び内部カバー72の下面に隙間d2が生じることとなった。そのため、内部カバー72の室内側端部が火災時の熱等により溶融することで、火災の比較的早い段階で建具の室内外が連通してしまう可能性があった。
【0033】
以下、本発明の一実施形態の改修建具における、火災時の変形による新設下枠22の転びを防止すると共に、新設下枠22の室内側部分における室内外の連通を抑制するための構成について、さらに詳細に説明する。
【0034】
既設下枠12に取り付けられる新設下枠22は、図3(a)に示すように、室内側見込壁を構成する室内側底壁部22aと、室外側見込壁を構成する室外側底壁部22bと、室内側底壁部22aの室内側から立ち上がる室内側壁部22cと、室内側壁部22cの上端よりもやや下方位置の室内側面から室内側に延設される室内側上壁部22dと、室内側底壁部22aと室外側底壁部22bとを連続する立壁部22eと、室外側底壁部22bの室外側端から下方に向かって延設される前壁部22fと、前壁部22fの下端から室内側に屈曲して延設される浮き上がり防止片22gと、室内側底壁部22aの室外側上面に立設される室内下レール22hと、室外側底壁部22bの上面に立設される室外下レール22iと、室内側底壁部22aの室外側に延設される気密材保持片22jを有している。
【0035】
また、新設下枠22は、図3(b)に示すように、室内側壁部22cの室内側上壁部22dよりも上方部位に内部カバー72の室外側を係合する被係合部22kが形成されており、室内側上壁部22dの上面には、後述する内部カバー72の天板部72aを支持するリブが長手方向に沿って形成されている。
【0036】
さらに、新設下枠22は、図3(a),(b)に示すように、室内側壁部22cの室内側面であって被係合部22kよりも下方位置と、室内側壁部22cの室外側面と、立壁部22eの室外側面に加熱膨張材fを保持する膨張材ホルダー22m,22n,22sが形成されており、各膨張材ホルダー22m,22n,22sに加熱により膨張する加熱膨張材fが配置されている。
【0037】
そして、新設下枠22は、室内側底壁部22aの下面の内外2か所に形成された脚部を室内側取付補助材321の支持部321aに載置した状態で、ビス等の固定手段bにより室内側取付補助材321に固定することで、既設下枠12に取付けられている。なお、このとき室外側底壁部22bを室外側取付補助材322に載置するようにしてもよい。
【0038】
既設下枠12に取付けられた新設下枠22の上端、例えば室内下レール22hもしくは室内側壁部22cの上端は、既設下枠12もしくは躯体開口部の上端よりも所定寸法高く設定されている。
そして、新設下枠22の室内側壁部22cから室内側に延設される室内側上壁部22dと躯体開口部の上端との間には隙間d2が形成され、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、間隙を塞ぐように防水シート82が配置されている。
【0039】
新設下枠22の室内側を覆う内部カバー72は、室内側上壁部22d及び躯体開口部の上面を覆う天板部72aと、天板部72aの室内側に連続する室内壁部72bを有する長尺部材からなり、天板部72aの室外側端部に下方に突出する係合凸部72cが形成されている。
また、天板部72aの室内側下面には、長手方向に沿って複数のリブ状の脚部72d,72dが形成されている。
【0040】
そして、内部カバー72は、室外側に形成された係合凸部72cを新設下枠22の被係合部22kに係合すると共に、室内側に形成された複数のリブ状の脚部72d,72dを躯体開口部に載置した状態で、ビス等の固定手段bにより、既設下枠12に固定されている。
新設下枠22及び躯体開口部に固定された内部カバー72の天板部72aの上面は、新設下枠22の室内側壁部22cの上端とほぼ同じ高さであり、室内側壁部22cの室内側おいて、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて配置された防水シート82、すなわち室内側上壁部22dと躯体開口部との隙間d2を覆うように配置されている。
【0041】
以上の第1の実施形態においては、新設下枠22の室内側を覆う内部カバー72が、躯体開口部にビス止め固定されているとともに、新設下枠22の室内側壁部22cの上方位置に係合しているので、火災時のおける建具の変形による新設下枠22の倒れを抑制することができ、強度の向上を図ることができる。
【0042】
また、内部カバー72により、比較的高い位置にある室内側上壁部22dの上面と躯体開口部の上面を覆うことで、高さ位置の異なる新設下枠22と躯体開口部との間に生じる隙間d2を塞ぐとともに、新設下枠22の室内側壁部22cの室内側面であって被係合部22kの下方位置に加熱膨張材fを配置しているので、既設下枠12の形状に関係なく、火災時には加熱膨張材fが室内方向に向かって膨張し、新設下枠22,内部カバー72と、躯体開口部との間の隙間に充満するので、内部カバー72が溶融することによる室内外の連通を抑制することができる。
【0043】
−第2の実施形態―
次に、本発明の第2の実施形態の改修建具について、図4ないし6を参考にして説明する。なお、第2の実施形態の改修建具は、内部カバーが樹脂材料により形成されている点で、第1の実施形態の改修建具と異なっている。以下の説明においては、主に、第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0044】
(上枠部分の構成)
本実施形態の改修建具においては、図4に示すように、新設上枠21の室内側から既設上枠11の室内側を覆うように、防水シート81が設けられるとともに、防水シート81の室内側には、断面略L字状の金属製の上補強部材91が配置されている。
そして、上取付補助材31の室内側固定部31bは、室内側壁部11a及び上補強部材91に対してビス等の固定手段bにより固定されている。
【0045】
樹脂製の内部カバー71は、防水シート81及び上補強部材91を覆うカバー部71aと、新設上枠21の挿入部21aに挿入される脚部71bと、カバー部71aの上端に連続する固定部71cとを有しており、脚部71bを新設上枠21の挿入部21aに上下動自在に挿入した状態で、固定部71cがビス等の固定手段bにより躯体開口部に固定されて配置されている。
【0046】
(竪枠部分の構成)
本実施形態の改修建具においては、図5に示すように、新設竪枠23の室内側から既設竪枠13の室内側を覆うように、防水シート83が設けられており、防水シート83の室内側には、断面略L字状の金属製の曲げ部材からなる竪補強部材93が配置されている。
そして、竪取付補助材33の室内側固定部33bは、既設竪枠13の室内側壁部13a及び竪補強部材93に対してビス等の固定手段bにより固定されている。
【0047】
樹脂製の内部カバー73は、防水シート83及び竪補強部材93を覆うカバー部73aと、新設竪枠23の挿入部23aに内周方向から挿入される脚部73bと、カバー部73aの外周側端に連続する固定部73cとを有しており、脚部73bを新設竪枠23の挿入部23aに左右移動自在に挿入した状態で、固定部73cがビス等の固定手段bにより躯体開口部に固定されて配置されている。
【0048】
なお、竪補強部材93は、例えば図5(b)に示すように、アルミ形材によって形成されてもよい。
【0049】
(下枠部分の構成)
本実施形態の改修建具においては、図6(a)に示すように、新設下枠22の室内側壁部22cから室内側に延設される室内側上壁部22dと躯体開口部の上端との間には隙間d2が形成され、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、間隙を塞ぐように防水シート82が配置されていると共に、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、金属製の下補強部材92が配置されている。
なお、新設下枠22の室内側壁部22cの室内側面に膨張材ホルダー22mが形成され、加熱膨張材fが配置されていることは、第1の実施形態と同様である。
【0050】
下補強部材92は、図6(b)に示すように、新設下枠22の室内側上壁部22dと躯体開口部の上端との間の隙間d2に位置する閉塞部92aと、閉塞部92aの上端から室外側に延設されて新設下枠22の室内側上壁部22dに載置される上壁部92bと、躯体開口部に固定される固定部92cと、固定部92cの上方部位に形成される内部カバー係合部92dとを有している。
そして、上壁部92bを新設下枠22の室内側上壁部22dの室内側上面に載置させた状態で固定部92cが躯体開口部にネジ等の固定手段bにより固定されている。
【0051】
新設下枠22の室内側を覆う内部カバー72は、室内側上壁部22d及び躯体開口部の上面を覆う天板部72aと、天板部72aの室内側に連続する室内壁部72bと、天板部72aの室内側下面に形成された係合部72eを有する長尺部材からなり、天板部72aの室外側端部に下方に突出する係合凸部72cが形成されている。
【0052】
そして、内部カバー72は、室外側に形成された係合凸部72cを新設下枠22の被係合部22kに係合すると共に、室内側下面に形成された係合部72eを下補強部材92の内部カバー係合部92dに係合することで、新設下枠22及び躯体開口部に固定されている。
新設下枠22及び躯体開口部に固定された内部カバー72の天板部72aの上面は、新設下枠22の室内側壁部22cの上端とほぼ同じ高さであり、室内側壁部22cの室内側おいて、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部との隙間を覆うように配置されている。
【0053】
以上の第2の実施形態によれば、火災時に、新設下枠22の室内側壁部22cの室内側面に形成された膨張材ホルダー22mに配置された加熱膨張材fが室内方向に向かって膨張し、新設下枠22と下補強部材92とによって形成された空間に充満し、新設下枠22と躯体開口部との間の隙間を塞ぐので、改修建具の下枠部分における室内外の連通を抑制することができる。
【0054】
なお、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
例えば、改修される既設枠及び新設建具は、引違い建具に限定されるものではなく、開き建具やすべり出し建具等、建具の種類は何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
12 :既設下枠
22 :新設下枠
22c :室内側壁部
22d :室内側上壁部
22k :被係合部
22m :膨張材ホルダー
72 :内部カバー
72a :天板部
72c :係合凸部
72d :脚部
f :加熱膨張材

図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8