(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸着剤が、スチレンジビニルベンゼン共重合体、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼンの共重合体、2,6−ジフェニル−9−フェニルオキサイドの重合体、メタアクリル酸とジオールの重縮合ポリマーおよび修飾シリカゲルから選択される1以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の動植物原料からの香料組成物の製造方法。
前記吸着剤収容部に収容された吸着剤部分の前記ガスの通気方向の長さが1000mm以下である、請求項13〜19のいずれか一項に記載の動植物原料からの香気回収装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[動植物原料からの香料組成物の製造方法]
本発明の動植物原料からの香料組成物の製造方法(本発明の製造方法とも言う)は、動植物原料を細分化して、小片を含む動植物原料粗細分化物を得る工程を含み、
動植物原料の細分化時に発生する香気化合物および小片を含むガスから小片を除去する工程と、
小片が除去されたガスを吸着剤に通気して、香気化合物を吸着剤に吸着させる吸着工程と、
吸着剤から香気化合物を回収して、香気化合物を含む香料組成物を調製する回収工程と、
を含み、
吸着剤は、香気化合物吸着装置内部の吸着剤収容部に収容され、この吸着剤収容部は、上記ガスの通気方向の両端に網状蓋を有することを特徴とする(
図3参照、図中の矢印はガス通気方向を表す)。
網状蓋の詳細については後述する。
上記の構成により、一般的な細分化装置を、大きな追加設備投資や当該装置への負荷なく利用して、動植物原料の細分化時に発生する香気を感じさせる、動植物原料からの香料組成物を製造できる。
動植物原料を所望のサイズに細分化すると、所望のサイズに細分化された細分化物のほかに、動植物原料由来の所望のサイズを満たさない細分化物または薄片およびその他夾雑物由来の細分化物または薄片のうちいずれか1種以上(本明細書では総じて「小片」と称する)が生じ、この小片は軽いため飛散する。動植物原料の工業的細分化においては、この小片の少なくとも一部は飛散して細分化装置で発生する気流の排気流に混じる。この排気流は、適宜小片を除去した後、装置外にそのまま排出していた。
ここで、本発明は、特許文献2〜6とは異なり香気化合物の捕集に溶剤(液体)ではなく、香気化合物吸着装置に収容された吸着剤を用いる。仮に小片を含む排気流をそのまま吸着剤に通気すると、小片によって、網状蓋の目詰りや、吸着剤の細孔や吸着剤粒子間の微小空隙の目詰まりが発生してしまい排気流が流れにくくなり、細分化装置の排気システム(本発明においては後述する気流発生装置による排気)に負荷(圧力)がかかると考えられる。これに対し、本発明の製造方法では、排気流から小片を除去した後に、吸着剤にその排気流を通気させて香気化合物を吸着させるという方法を採用することで、網状蓋および吸着剤の目詰まりや装置への負荷の懸念なく、排気流に含まれる香気化合物を吸着させることができる。また、この目詰まり防止によって、香気化合物の吸着を効率よく行うことができる。
また、一般的な粉砕装置の排気システムの性能によっては、排気流の流路内に吸着剤収容部を設けて吸着剤を収容すると、排気流に対する吸着剤の抵抗によって装置に許容範囲を超える負荷(本明細書では、単に負荷とも記載する)がかかる場合もあり得る。そのため、本発明では、吸着剤による抵抗を抑えるような手段を採用することができる。例えば、吸着剤収容部に収容された吸着剤が占める部分(以下、本明細書では吸着剤部分、または収容された吸着剤部分と称する)の排気流の通気方向(ガス通気方向とも称する)の長さを抑えることや、排気流の流路から分岐する、吸着剤を収容した流路を設けて、排気流の一部から香気化合物を回収すること、などが例示できる。また、収容された吸着剤の可動性を高める(いわゆる「流動層カラム」を利用するなど)ことで吸着剤の抵抗を抑えてもよい。また、送風装置や吸引ポンプを更に設けて、吸着剤の抵抗を超えて吸着剤に通気を行ってもよい。
以下、本発明の製造方法の好ましい態様について説明する。
【0015】
<動植物原料粗細分化物を得る工程>
本発明の製造方法は、動植物原料を細分化して、小片を含む動植物原料粗細分化物を得る工程を含む。
動植物原料を細分化して動植物原料粗細分化物を得る工程を他の工程よりも前に行うことが好ましい。
本明細書において「細分化する」とは、粉砕する、破砕する、挽く、擂る、削る、など任意の方式によって、動植物原料を所望のサイズを有するより小さい断片にすることを意味する。この細分化工程において、動植物原料または夾雑物由来の、所望のサイズを満たさない小片が生じることが一般的である。
動植物原料を細分化する方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、回転ミル、振動ミルなどの粉砕装置、削り機、擂り機など、目的に合わせ、動植物原料を細分化できる任意の装置を用いることができる。
動植物原料の細分化速度としては、例えば、1〜500kg/hとすることができるが、動植物原料の種類によって任意に設定でき、特に限定されない。
動植物原料の細分化サイズは特に限定されず、動植物原料に応じて任意に設定できる。例えば、0.08〜3mm程度とすることができる。
細分化工程に供する動植物原料は、入手時そのままの大きさのものでもよいし、あらかじめ所望のサイズより大きいサイズに細分化したものでもよい。
【0016】
(動植物原料)
本発明の製造方法に用いられる動植物原料としては、飲食品、香粧品、保健衛生品、医薬品など任意の物品の製造に用いられ、細分化可能なものであれば特に制限はない。
動植物原料は、その細分化物がそのまま喫食できるものであっても、飲食品、香粧品、保健衛生用品、医薬品などの任意の物品の製造に使用されるものであってもよい。好ましい例として、焙煎された動植物原料が挙げられる。
具体的には、ナッツ類(ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、くるみなど)、茶類(焙じ茶、抹茶など)、乾物類(煮干しなどの動物原料の乾物や、干し椎茸などの植物原料の乾物)、魚節類(各種の鰹節)、雑節(宗田節、鯖節、鮪節、ウルメ節、イワシ節、サンマ節など)、そば麦、香辛料類(コショウ、タイム、トウガラシ、シナモン、ターメリックなど)、ゴマ、ダイズ、青のり、ハーブ類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
(動植物原料粗細分化物)
動植物原料粗細分化物は、上記小片と、所望のサイズに細分化された動植物原料細分化物と、を含むことが好ましい。
小片は、動植物原料の細分化時に動植物原料から発生する香気化合物を含むガスから除去されることが好ましい。具体的には、後に詳述する第1の流路をガスとともに通過し、小片除去装置にて前記ガスから除去されることが好ましい。
【0018】
(動植物原料の細分化時に発生する香気化合物)
動植物原料の細分化時に動植物原料から発生する香気化合物は、1または複数の化合物である。
【0019】
<小片の予備除去工程>
本発明の製造方法では、動植物原料粗細分化物に含まれる小片を除去する工程を、小片をガスから除去する工程よりも前に行うことが好ましい。小片は一部除去されればよいが、実質的に全て除去されてもよい。
動植物原料粗細分化物に含まれる小片を除去する工程は、振動ふるいや風力分級機などの分級装置のような公知の小片除去装置などを用いて行うことができ、振動ふるいを用いた分級装置であることが好ましい。例えば、任意の目開きを有するふるいを用いて、その目開きより小さい小片を除去することができる。
【0020】
<小片の除去工程>
本発明の製造方法は、動植物原料の細分化時に動植物原料から発生する香気化合物、ならびに小片を含むガスから、小片を除去する工程を含む。小片は一部除去されず残存してもよいが、小片は実質的に全て除去されることが好ましい。
小片を除去する工程としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
本発明の製造方法では、小片を除去する工程を後述する小片除去装置で行うことが好ましい。
小片除去装置の詳細については、本発明の香気回収装置の説明に示す。
【0021】
<吸着工程>
本発明の製造方法は、小片が除去されたガスを吸着剤に通気して、ガスに含まれる香気化合物を吸着剤に吸着させる吸着工程を含む。ここで吸着剤は、香気化合物吸着装置内に設けられた吸着剤収容部に収容され、この吸着剤収容部は、ガス通気方向の両端に網状蓋を有する。
吸着剤量は、吸着剤収容部に収容可能な量であれば限定されない。使用する吸着剤の体積(嵩容積)は、吸着剤収容部の体積と同じでも、それ未満でもよい。換言すれば、吸着剤は、吸着剤収容部に充填(粗充填または密充填)されていてもよいし、吸着剤を収容した吸着剤収容部に空間が存在していてもよい。
ガスの通気方向は、香気回収装置の設置面(香気回収装置を地面に設置する場合は接地面)に対して任意の角度をとってよく、例えば平行でも垂直でもよい。また、香気回収装置の設置面に接近する方向でも遠ざかる方向でもよい。換言すれば、吸着剤のガスの通気方向が、重力方向に対して、略反対方向でも、略同一方向でも、直角をなしていても、その他の角度をなしていてもよい。なお、吸着剤に重力方向と略反対方向にガスを流入および通気させる場合、使用する吸着剤の体積(嵩容積)を吸着剤収容部の体積より小さくして、香気化合物吸着装置をいわゆる流動層カラムとすることができ、通気するガスの流れに対する吸着剤の抵抗を抑えることができる。
本発明の製造方法では、気流発生装置を用いて気流を発生させて、小片が除去されたガスを吸着剤に通気することが好ましい。また、流速調整装置を気流発生装置と併用して、ガスの流速および圧力を高めてもよい。この併用によって、ガスの流れに対する吸着剤の抵抗を超えてガスの通気を行うことができる。
気流発生装置および流速調整装置の詳細については、本発明の香気回収装置の説明に示す。
【0022】
本発明の製造方法では、小片が除去されたガスの流路から分岐するように、吸着剤が配置された導入路を設けることで、導入路に小片が除去されたガスの一部のみを流入および通過させ、そのガスを吸着剤に通気して香気化合物を回収することが好ましい。
導入路の詳細については、本発明の香気回収装置の説明に示す。
【0023】
(吸着剤)
吸着剤としては、特に限定されない。吸着剤としては、合成吸着剤、または活性炭などのその他の吸着剤を用いることができる。合成吸着剤を用いることが、脱着が容易である観点から好ましい。
吸着剤としては、スチレンジビニルベンゼン共重合体、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼン共重合体、2,6−ジフェニル−9−フェニルオキサイドの重合体、メタアクリル酸とジオールの重縮合ポリマーおよび修飾シリカゲルから選択される1以上であることが好ましい。修飾シリカゲルとは、シリカゲル表面のシラノール基の反応性を利用して、これに例えば、アルコール類、アミン類、シラン類などを化学結合させた化学結合型シリカゲルのことを言う。中でも、スチレンジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
吸着剤は、多孔性重合樹脂であることが好ましい。吸着剤の表面積が、例えば、約300m
2/g以上であることが好ましく、約500m
2/g以上であることがより好ましい。吸着剤の細孔分布が約10Å〜約500Åであることが好ましい。
吸着剤の形状は特に制限はないが、粒子状であることが好ましい。吸着剤が粒子状である場合の平均粒子直径は特に制限はなく、0.1〜20mm、または0.1〜1mmの範囲内が例示できるが、これらに限定されない。
上記の条件に該当する多孔性重合樹脂としては、例えば、HP樹脂(三菱ケミカル(株)製)、スチレンジビニルベンゼン共重合体であるSP樹脂(三菱ケミカル(株)製)、XAD−4(ローム・ハス社製)などがあり、市場で容易に入手することができる。また、メタアクリル酸エステル系樹脂も、例えば、XAD−7およびXAD−8(ローム・ハース社製)などの商品として入手することができる。
SP樹脂としては、セパビーズSP−70、SP−207を好ましく用いることができる。
【0024】
小片が除去されたガスを吸着剤に通気して香気化合物を吸着剤に吸着させる処理手段としては、バッチ方式あるいはカラム方式のいずれも採用できる。作業性の点からカラム方式を好ましく採用することができる。カラム方式で吸着させる方法としては、例えば、上記の吸着剤を充填したカラムにガスを導入することにより、香気化合物を吸着させることができる。吸着剤へのガスの流入および通気方向は、重力方向に対して任意の方向とすることができ、重力方向に対して、略同一方向、略反対方向などが例示できるが、これらに限定されない。
または、吸着剤の粒径および量を調製して吸着剤収容部に空間ができるようにして、更に、重力方向と略反対方向にガスの流入および通気を行って、流動層カラムとしてもよい。
【0025】
吸着剤は、割れを抑制するために、純水を吸収させた後、完全に乾燥させる前に香気化合物吸着装置に収容することが好ましい。
【0026】
小片が除去されたガスを吸着剤に通気する際の通気量としては特に制限はなく、例えば、吸着剤の0.1倍〜1000倍の通気量であることが好ましい。
【0027】
吸着剤に流入するガスの流速(通気ガスの速度)は、吸着剤量、吸着剤部分のガスの通気方向の長さ、後述する気流発生装置や流速調整装置の性能によって適宜設定してよく、特に制限はない。例えば、吸着剤に流入するガスの流速(通気速度)は、0.1〜10.0L/minであることが好ましく、0.5〜7.0L/minであることがより好ましく、1.0〜5.0L/minであることが特に好ましい。
なお、細分化および吸着剤へのガス通気時間は、小片が除去されたガスを吸着剤に通気する際の通気量や、吸着剤に流入するガスの流速から、好ましい範囲を設定できる。
【0028】
本発明の製造方法では、吸着剤に流入するガスの流速(線速度)は、吸着剤量、吸着剤部分のガスの通気方向の長さ、後述する第2の流路の内径、気流発生装置や流速調整装置の性能によって適宜設定してよく、特に制限はない。例えば、1.0〜35.0m/sの範囲内であることが好ましく、2.0〜20.0m/sの範囲内であることがより好ましく、3.0〜10.0m/sの範囲内であることが特に好ましい。
【0029】
<ガスの線速度を調整する工程>
本発明の製造方法は、吸着剤に流入するガスの線速度を調整する工程を含むことが、香気化合物吸着装置に多量の吸着剤を収容(例えば充填)した場合にも、吸着剤の抵抗を超えて吸着をできる観点、および後述する気流発生装置への負担を抑制できる観点から好ましい。
本発明の製造方法では、吸着剤に流入するガスの線速度の調整を、任意の公知の気流発生装置、例えば吸引ポンプまたは送風装置を用いて行うことができる。
例えば、吸着剤に流入するガスの線速度は、第2の流路に流れるガスの線速度に対して任意の比率でよく、上限を100%として、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上であってよい。具体的には、0.05〜35m/s、0.08〜20m/s、1.0〜10m/s、1.0〜5m/s、1.0〜2m/sの範囲を例示することができるが、これらに限定されない。
例えば、後述する気流発生装置の性能に合わせて、第2の流路に流れるガスの線速度に対する吸着剤に流入するガスの線速度の比率を調整することが好ましい。このような調整によって、気流発生装置への負担を抑制することができる。
【0030】
<回収工程>
本発明の製造方法は、吸着剤から香気化合物を回収して、香気化合物を含む香料組成物を調製する回収工程を含む。
本発明の製造方法では、回収工程で有機溶媒を用いて吸着剤から香気化合物を脱着して回収することが好ましい。
有機溶媒を用いて吸着剤から香気化合物を脱着する前に、吸着剤を水洗してもよい。
有機溶媒としては、アルコール類、油脂類を挙げることができる。
【0031】
回収工程に用いるアルコール類は、特に制限はなく、エタノールまたはプロピレングリコールであることが好ましく、プロピレングリコールであることが安全性の観点(引火しづらい)からより好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもないが、プロピレングリコールやエタノールなどのアルコール類は回収した香気化合物の一部をアセタール化(PGアセタール化、ジエチルアセタール化など)でき、その結果として、香気化合物の香りの発現性を強くすることも期待できる。異なるアルコール類を使用した2種以上の香料組成物の混合物を、本発明の香料組成物として使用してもよい。例えば、プロピレングリコールを用いて得た香料組成物とエタノールを用いて得た香料組成物とを任意の比率(プロピレングリコールを用いて得た香料組成物1質量部に対し、エタノールを用いて得た香料組成物が0.1〜10、0.2〜5、0.5〜3、0.8〜2の範囲内、または質量比として、プロピレングリコールを用いて得た香料組成物とエタノールを用いて得た香料組成物との比が約1:1、2:1、3:2、2:3など)で混合して用いてよい。
50〜100質量%のアルコール水溶液を用いてよく、エタノールであれば、エタノール濃度50〜95質量%の含水エタノールを用いることが、PGであれば100%PGを用いることが好ましい。
カラムを用いる場合、アルコール類を通液する流速としては、SV=0.1〜20の流速とすることが好ましい。
アルコール類の量としては特に制限はなく、吸着剤の1倍〜100倍の通液量であることが好ましく、3倍〜40倍の通液量であることがより好ましく、5倍〜20倍の通液量であることが特に好ましい。
吸着剤に吸着されている香気化合物をアルコール類で溶出させることにより水溶性の香料組成物(香気濃縮物)とすることができる。
【0032】
脱着に用いる油脂類としては特に限定されないが、例えば、大豆油、米油、ゴマ油、ピーナッツ油、コーン油、菜種油、ヤシ油、パーム油などの植物油脂類及びそれらの硬化油;牛脂、豚脂、魚油などの動物油脂類及びそれらの硬化油;中鎖脂肪酸トリグリセライド(以下、MCTと称することがある)などを挙げることができ、得られる香料組成物の安定性の点でMCTを好ましく例示することができる。かかるMCTとしては、例えば、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド及びこれらの任意の混合物の如き炭素原子数6〜12の中鎖脂肪酸のトリグリセリドを挙げることができる。殊に、カプリル酸トリグリセリド及びカプリン酸トリグリセリド及びこれらの任意の混合物を好ましく挙げることができる。これらのMCT混合物は市場で安価に且つ容易に入手することができる。異なる油脂類を使用した2種以上の香料組成物の混合物を、本発明の香料組成物として使用してもよい。
【0033】
油脂類の使用量は、原料の種類、ガス中の香気成分濃度などにより異なる。脱着は、静置下に行うことができ、脱着温度、脱着時間は適宜に選択でき、例えば、10〜80℃の温度範囲にて5分間〜2時間の範囲内を例示することができる。脱着後、得られた脱着液を静置し、一般に用いられている分離方法、例えば、デカンテーション、遠心分離により油層部と、水層部を分離することができる。水層部に更に油脂類を添加して抽出することにより、効率よく香気成分を回収することができる。得られた油層部は、例えば、無水硫酸ナトリウムなどの脱水剤にて脱水して、例えば、濾紙による濾過等の清澄濾過手段により油溶性の香料組成物とすることができる。
【0034】
<吸着剤の再利用および洗浄>
吸着剤について有機溶媒による脱着前および脱着後の通液の圧力を比較して、圧力が同等(例えば2倍以下)であれば、目詰まりは発生していないか無視できるレベルであり、洗浄をせずに再利用可能であると判断できる。香気回収装置を管理する方法が、吸着剤について有機溶媒による脱着前および脱着後の通液の圧力を比較して、圧力が同等であることを確認する工程を含んでいてもよい。具体的には、脱着前および脱着後に、それぞれ超純水への置換を行ってから超純水をSV=10程度にて流した際の圧力を測定した後、脱着前の圧力に対する脱着後の圧力を算出することが好ましい。
一方、本発明の製造方法は、吸着剤の洗浄工程を含んでいてもよい。すなわち、香気回収装置を管理する方法が、吸着剤の洗浄工程を含んでいてもよい。本発明の製造方法では、小片は吸着剤にほとんど吸着されないが、ガスに含まれるその他の成分(特に重合可能な成分)が吸着剤に吸着されることがある。吸着剤の洗浄方法は当業者には公知であり、順次極性を変えた数種類の溶剤を通液させればよく、溶剤の種類に特に制限はないが、例えば吸着剤にPGなどのアルコール類を通液して脱着した後に、酢酸エチル、ヘキサンの順で通液して洗浄し、再生の際には、酢酸エチルおよび水の順で通液させればよい。
吸着剤は、必要に応じて香気化合物を回収後に洗浄を行いつつ、吸着および回収を5回以上繰り返すまで再利用することが好ましく、10回繰り返すまで再利用することがより好ましい。
【0035】
[香料組成物]
本発明の香料組成物の製造方法で製造された香料組成物は、動植物原料の細分化時に発生する香気化合物を含み、動植物原料の細分化時に発生する香気を感じさせるものである。
動植物原料の細分化時に発生する香気としては、具体的には、動植物原料を細分化、例えば、粉砕しているときの香り、破砕しているときの香り、挽いているときの香り、擂っているときの香り、削っているときの香りであることが好ましい。
【0036】
[本発明の製造方法によって製造された香料組成物の用途]
本発明の香料組成物の製造方法で製造された香料組成物を、飲食品、香粧品、保健衛生品、医薬品などの各種類の基材に添加して、賦香品を得ることができる。
【0037】
飲食品は、本発明の香料組成物の製造方法で製造された香料組成物を、飲食品の全質量に対して0.01〜10質量%添加したものであることが好ましく、0.05〜7質量%添加したものであることがより好ましい。
【0038】
飲食品は、容器詰飲食品であることが好ましい。また、本発明の製造方法で製造された香料組成物は、トップ(低分子量などによって揮発性の高い成分)の香りが強い。加えて、ミドル以降(揮発性の比較的低い成分)の香りも付与できる。従って、本発明の製造方法で製造された香料組成物を含む容器詰飲食品は、容器を開ける際に動植物原料の細分化時に発生する香気を強く感じさせることができるとともに、飲食品の風味を全体として強化することができる。
容器詰食品または飲料としては、アイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓;ビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、チョコレート、クリーム内包菓子、ゼリー、ガム、キャンディ、キャラメルなどの菓子類;パン、鰹節などの出し汁、ドレッシング、スプレッド、ジャムなどの調味料、香味油、冷凍食品、健康食品(例えば、機能性表示食品、栄養補助食品、特定保健用食品など)などを例示することができる。
容器詰飲料とは、飲用するのに適当な濃度とし、容器に充填して得られる飲料(容器に充填する前または後に殺菌を行うことが一般的である)を意味する。
容器詰飲料は、ペットボトル、缶または紙容器に充填された容器詰飲料であることが好ましい。容器詰飲料には、麦茶飲料、穀物茶飲料、玄米茶飲料、茶類と焙煎した穀物類を混合したいわゆる混合茶類飲料(ブレンド茶飲料)などの茶系飲料、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料などの茶系飲料;コーヒー飲料;ビール、発泡酒、いわゆる第三のビール、ノンアルコールビール風味飲料などのビール風味飲料などが包含される。
【0039】
飲食品は、加熱殺菌されたものであってよい。容器詰飲料等の製造では、レトルト殺菌(121℃、10分程度の加熱殺菌)やUHT殺菌(135℃、1分程度の加熱殺菌)をされる。しかしながら、通常のトップの香りは加熱で失われやすい。本発明の香料組成物の製造方法で製造された香料組成物は、トップの香りが強いため、加熱されてもトップの香りが失われにくく、加熱殺菌された飲食品に好ましく用いられる。また従って、喫食前に加熱を必要とする飲食品においても、好ましく用いられる。
【0040】
[動植物原料からの香気回収装置]
本発明の動植物原料からの香気回収装置(本発明の香気回収装置とも言う)は、動植物原料の細分化装置と、
細分化装置と連通し、動植物原料の細分化時に動植物原料から発生する香気化合物および小片を含むガスが通過可能な第1の流路と、
第1の流路と連通し、小片を除去する小片除去装置と、
小片除去装置と連通し、小片が除去されたガスが通過可能な第2の流路と、
第2の流路と連通した香気化合物吸着装置と、
細分化装置から香気化合物吸着装置まで連続した気流を発生させる気流発生装置と、
を備え、香気化合物吸着装置は、吸着剤が収容された吸着剤収容部を有し、吸着剤収容部は、前記ガスの通気方向の両端に網状蓋を有する。
以下、本発明の香気回収装置の好ましい態様について説明する。
【0041】
<香気回収装置の全体の構成>
香気回収装置の全体の構成を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の香気回収装置の一例を示した概略図である。
図2は、本発明の香気回収装置の他の一例を示した概略図である。
図1の香気回収装置の一例は、細分化装置11、第1の流路1、気流発生装置13、小片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kを備える。香気化合物吸着装置Kは、網状蓋Ka1およびKa2を有する吸着剤収容部Kbを有する(
図3)。さらに、
図1の香気回収装置の一例は、導入路3および線速度調整装置4を備えるが、これらは必須の構成ではない。
なお、
図1の香気回収装置のうち、細分化装置11、第1の流路1、気流発生装置13、小片除去装置14、第2の流路2を有する細分化装置は一般的に使用されており(例えば、米国特許1649781(1927年)などを参照)、本発明は、このような構成の一般的な細分化装置に香気化合物吸着装置Kを設け、動植物原料の細分化時に動植物原料から発生する香気化合物を回収できるようにしたものである。
図1の香気回収装置では、細分化装置11によって動植物原料が細分化されて動植物原料粗細分化物が製造されている最中に、気流発生装置13で発生させた気流によって、細分化装置11から、動植物原料から発生した香気化合物21ならびに動植物原料粗細分化物に含まれる小片22を含むガスが、第1の流路1へと移動する。香気化合物21および小片22を含むガスは、気流に乗って第1の流路1から小片除去装置14に移動される。小片除去装置14において、小片が除去されたガス(香気化合物21を含む)は第2の流路2へと、小片22は小片除去装置14で除去されて装置外へと、それぞれ移動される。気流発生装置13で発生させた気流(および、必要に応じて線速度調整装置4で発生させた気流)によって、第2の流路2から、小片が除去されたガス(香気化合物21を含む)の一部が導入路3へと流入し、導入路3に配置された香気化合物吸着装置Kに収容された吸着剤に流入して、ガスの吸着剤への通気が行われ、当該吸着剤に香気化合物21が吸着される。香気化合物21が吸着され、吸着剤を通過したガスは、導入路の出口3Bから再び第2の流路2に移動され、導入路3に流入せずに第2の流路2を通過した小片が除去されたガスと合流し、排出ガス24として装置外へと放出される。
なお、本発明は上述の通り導入路3は必須の構成ではないので、導入路3を設けず、第2の流路を流れるガス(香気化合物21を含み、小片が除去されている)の一部ではなく全部を香気化合物吸着装置Kへの流入および通気に使用してもよい。その場合、香気化合物吸着装置Kは第2の流路内に配置されてよい。
【0042】
図2の香気回収装置の他の一例は、細分化装置11、小片予備除去装置12、第1の流路1、気流発生装置13、小片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kを備える。さらに、
図2の香気回収装置の一例は、導入路3および線速度調整装置4を備えるが、これらは必須の構成ではない。
図2の香気回収装置では、細分化装置11によって動植物原料が細分化されて製造された動植物原料粗細分化物が、図示しない搬送機構によって小片予備除去装置12に移動する。小片予備除去装置12では、動植物原料粗細分化物から小片22の少なくとも一部を除去して、図示しない廃棄部に除去された小片22を収容して装置外に排出する。一方で、気流発生装置13で発生させた気流によって、香気化合物21および小片予備除去装置12で除去されなかった小片22を含むガスは第1の流路1へと移動される。第1の流路1以降の香気化合物21および小片22の流れは、
図1と同様である。
以下、香気回収装置が備えることが好ましい各装置について、それぞれの好ましい態様を説明する。
【0043】
<細分化装置>
本発明の香気回収装置は、動植物原料の細分化装置を備える。
細分化装置としては特に制限はない。例えば、ローラーミル、擂り機、削り機などを用いることができる。
細分化装置11内で細分化によって発生するガスは、気流発生装置によって発生する気流によって吸着剤まで運ばれるため発散しづらく、必ずしも細分化装置は密閉されていなくてもよい。しかし香気化合物をより効率よく回収する観点からは、細分化装置11は第1の流路1に連通し、その他の部分は密閉された状態で細分化を行ってもよい。
【0044】
<小片予備除去装置>
本発明の香気回収装置は、細分化装置と第1の流路の間に、小片予備除去装置をさらに備えることが好ましい。
小片予備除去装置は、細分化装置と連通し、動植物原料の細分化によって得られる動植物原料粗細分化物から小片の少なくとも一部を除去することが好ましい。なお、小片が除去された動植物原料精製細分化物(すなわち所望のサイズに細分化された動植物原料の細分化物)は、飲食品またはその製造に用いることができる。
小片の一部または大半が除去され、装置外に排出されてもよい。小片予備除去装置から第1の流路に移動する小片の量が少ないほど、下流の小片除去装置の負荷を減らすことができる。
小片予備除去装置としては、公知の装置を用いることができ、振動ふるいや風力分級機などの分級装置を用いることが好ましい。
【0045】
<第1の流路>
本発明の香気回収装置は、細分化装置と連通し、動植物原料の細分化時に動植物原料から発生する香気化合物および小片を含むガスが通過可能な第1の流路を備える。
第1の流路は、細分化装置と直接連通していてもよく、小片予備除去装置を介して細分化装置と連通していてもよい。
第1の流路の直径(内径)は特に限定されないが、30mm以上であることがより多くのガスを通過させる観点から好ましく、50mm以上であることがより好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。
小片予備除去装置12は、第1の流路1に連結させるための吸揚口を備えていてもよい。
【0046】
<小片除去装置>
本発明の香気回収装置は、第1の流路と連通し、小片を除去する小片除去装置を備える。
小片除去装置としては、公知の装置を用いることができ、サイクロン式の分離装置(紛体分離装置)を用いることが好ましい。
【0047】
<第2の流路>
本発明の香気回収装置は、小片除去装置と連通し、小片が除去されたガスが通過可能な第2の流路を備える。
本発明の香気回収装置は、第2の流路の直径(内径)は特に限定されないが、30mm以上であることがより多くのガスを通過させる観点から好ましく、50mm以上であることがより好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。第2の流路は、後述の香気化合物吸着装置に流入するガスの方向が所望のものとなるように、任意に配置できる。
【0048】
<香気化合物吸着装置>
本発明の香気回収装置は、第2の流路と連通した香気化合物吸着装置を備える。
香気化合物吸着装置は、その内部に吸着剤が収容された吸着剤収容部を有し、吸着剤収容部は、ガスの通気方向の両端に網状蓋を有する。この網状蓋によって、吸着剤収容部に収容された吸着剤が香気化合物吸着装置外に漏出することを防止し、かつガスを吸着剤に通気することができる。
網状蓋は任意の厚さを有するシート状であり、その大きさは特に限定されず、香気化合物吸着装置からの吸着剤の漏出を防ぐことができる範囲で任意に選択できる。ガスの通過しやすさの観点から、吸着剤収容部のガスの通気方向の断面積以上の面積を有することが好ましい。
網状蓋は、その全体が網状でも、一部が網状でもよい。ガスの通過しやすさの観点から、香気化合物吸着装置または吸着剤収容部の断面に相当する部分が網状であることが好ましい。
網状蓋の目開きは、使用する吸着剤が通過しない範囲で任意に選択できる。10μm〜20mmの範囲内を例示できるが、これに限定されない。
本発明では、香気化合物吸着装置は、吸着剤収容部に収容された吸着剤が占める部分、すなわち吸着剤部分を含むことが好ましい。
本発明では、吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)は特に限定されないが、吸着剤の抵抗を低くする観点から、1000mm以下であることが好ましく、700mm以下であることがより好ましく、500mm以下であることが更に好ましく、400mm以下であることが更に好ましく、300mm以下であることが更に好ましく、200mm以下であることが特に好ましい。例えば、吸着剤部分の長さは、10mm〜800mm、20mm〜400mm、40mm〜200mm、または50mm〜100mmの範囲内であってよい。
吸着剤部分の、ガスの通気方向とは垂直の面の長軸または直径(以下、総じて断面直径と称する)は特に限定されないが、吸着剤の量および吸着剤部分の長さにあわせて制御することが好ましい。吸着剤部分の断面直径は、ガスの通気しやすさの観点から、10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることが更に好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。
吸着剤量を増やしたい場合、吸着剤部分の断面直径を大きくして吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)を抑えるのが、通気するガスの流れに対する吸着剤による抵抗を抑える観点から好ましい。
吸着剤量は、吸着剤収容部内に収容可能な量であれば限定されない。使用する吸着剤の嵩容積は、吸着剤収容部の体積と同じでも、それ未満でもよい。換言すれば、吸着剤は、吸着剤収容部内に充填(粗充填または密充填)されていてもよいし、吸着剤を収容した吸着剤収容部に空間が存在してもよい。
香気化合物吸着装置の配置については、
図1、2では、香気化合物吸着装置が香気回収装置の設置面と平行(接地面と平行、すなわち水平)になるように設けられているが、当該設置面と垂直でも、その他の角度をなして設けられたものであってもよい。また、ガスの流入および通気方向が香気回収装置の設置面に接近する方向となるように設計しても、設置面から離れる方向となるように設計してもよい。換言すれば、香気化合物吸着装置および吸着剤へのガスの流入および通気方向が、重力方向に対して略反対方向でも、略同一方向でも、直角をなしていても、その他の角度をなしていてもよい。
なお、香気化合物吸着装置を流動層カラムとする場合、使用する吸着剤の嵩容積を吸着剤収容部の体積未満とし、かつ吸着剤に重力方向と略反対方向にガスを流入および通気させればよい。流動層カラムを使用すれば、通気させるガスの流れに対する吸着剤の抵抗を抑えることができる。
【0049】
香気化合物吸着装置は、吸着剤収容部としてバスケットを備えたものであってもよい。バスケットとしては、側面部に空孔を有するノーマルタイプのバスケットと、側面部に空孔を有さないサイドウォールタイプのバスケットが知られている。側面部に空孔を有さないサイドウォールタイプのバスケットを用いることが、小片が除去されたガスが側面から逃げることなく、通気するガスの吸着剤通過距離を長くできる観点から好ましい。
【0050】
<気流発生装置>
本発明の香気回収装置は、細分化装置から香気化合物吸着装置まで連続した気流を発生させる気流発生装置を備える。この気流発生装置13によって、細分化装置11、(小片予備除去装置12、)第1の流路1、小片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kに連続した気流を発生可能である。
気流発生装置は、送風装置であっても、吸引装置であってもよい。吸引装置の例としては、吸揚ブロワーが挙げられる。
【0051】
<導入路>
香気回収装置は、小片が除去されたガスの流路(第2の流路)に、該流路から分岐し、かつ香気化合物吸着装置と連通する導入路3を備えることが、導入路および吸着剤に小片が除去されたガスの一部のみを通気して香気化合物を回収して、吸着剤による抵抗を抑える観点から好ましい。このように香気化合物吸着装置は、導入路を介して第2の流路と連通していてもよい。
導入路の直径(内径)は特に限定されないが、内径が5mm以上であることがより多くのガスを通過させる観点から好ましく、15mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることが更に好ましく、70mm以上であることが更に好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、150mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。
なお、導入路3は、第2の流路と一体的に成形されたものでも、第2の流路に着脱可能に接続されるものでもよく、導入路3の少なくとも一部が第2の流路2に粘着テープやねじ等の任意の固定手段で固定されてもよい。
導入路3の入口3Aは、第2の流路2のいかなる位置から分岐していてもよい。例えば、
図1では第2の流路2の水平(紙面の左右方向)に伸びている位置に設けてあるが、気流発生装置13から鉛直上方向(紙面の上方向)に延びている第2の流路2に設けてもよい。
導入路3の出口3Bは、香気化合物を吸着した後のガスを第2の流路2に戻せるように、第2の流路2に接続させることが好ましい。
また、導入路3の入口3Aおよび出口3Bは、いかなる角度で第2の流路2と接続していてもよく、導入路3は直線状でも、曲線状でも、1以上の箇所で折れ曲がっていてもよい。
また、導入路3の材質は限定されず、例えば、金属製または樹脂製であってよい。
【0052】
<線速度調整装置>
本発明の香気回収装置は、小片が除去されたガスの線速度を調整する線速度調整装置4をさらに備えることが好ましい。
線速度調整装置は、送風装置であっても、吸引装置であってもよい。それぞれ、ブロワー、吸引ポンプを例として挙げることができる。
本発明の香気回収装置における線速度調整装置の位置は特に限定されず、香気化合物吸着装置に対し、通気させるガスの流れの上流でも下流でもよく、使用する装置によって任意に決定してよい。例えば送風装置であれば上流、吸引装置であれば下流とすればよい。
線速度調整装置4として用いられる吸引装置としては、気流発生装置13よりもポンプ性能が高い吸引装置を用いることが効率的に香気化合物を回収する観点から好ましい。
線速度調整装置4は、導入路3に配置することが好ましい。線速度調整装置4は、導入路の入口3Aに配置しても、導入路の出口3Bに配置してもよい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0054】
[実施例1]
細分化装置の排気流を利用する本発明においては、吸着剤を用いることで香気化合物吸着装置の入口に圧力がかかり、そのことで本発明の香気回収装置に採用する気流発生装置に負荷がかかるかどうかを確認することが好ましい。
そこで実施例1として、本発明の香気回収装置Aが備える香気化合物吸着装置Kの吸着剤部分の適切な断面直径および長さを変更して各香気化合物吸着装置Kに空気を通気して、適切な範囲の有無を確認した。各香気化合物吸着装置は、網状蓋Ka1およびKa2、ならびに吸着剤収容部Kbを有する(
図3)。
【0055】
香気化合物吸着装置Kの内部に収容する吸着剤として、SP−207(スチレンジビニルベンゼン共重合体系合成吸着剤、三菱ケミカル(株)製)を用いた。吸着剤を収容(粗充填)する吸着剤収容部として、側面部に空孔を有さない、円筒状のサイドウォールタイプのバスケットを用いた。
【0056】
次に、香気化合物吸着装置Kに収容した吸着剤が占める吸着剤部分の断面直径および長さを下記表1のようにした香気化合物吸着装置を用意し、それぞれについて、香気化合物吸着装置Kの端部に設けた吸引ポンプを動作させて、香気化合物吸着装置Kに収容した吸着剤に通気を行った。そして、各香気化合物吸着装置の入口の圧力および出口の風量を測定した。本実施例では、吸着剤部分の断面直径は、上述のバスケットの、空気の通気方向の断面直径(内径)と同一である。また、香気化合物吸着装置Kは、地面に対して略垂直に配置し、吸着剤の空気の通気方向は重力方向と略同一とした。
次いで、一般的なブロワー(気流発生装置)の性能曲線(風量−静圧特性曲線ともいう)(
図4)の範囲から逸脱しているか否かを計算した。この曲線は、ブロワーのモーター出力を1.5〜10kWとしたときの、ブロワーによって発生する気流の圧力と風量との関係をプロットした曲線である。
図4に示す性能曲線範囲から逸脱していない場合は、このブロワーにとっては、上記モーター出力の範囲において、ブロワーの性能が吸着剤の抵抗を上回っており、ブロワーによって発生する気流が吸着剤を通過できることを示唆する。一方で、当該曲線の太線より左側に逸脱していた場合は、高い圧力によっても出口風量が満足に得られない、すなわち吸着剤の抵抗がブロワーの性能を上回っており、ブロワーに負荷がかかることを示唆する。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0057】
【表1】
【0058】
上記表1より、ガス流に対する吸着剤による抵抗のため、吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)が一定以下であることが好ましいことが確認された。
香気化合物の回収にあたっては、本発明の香気回収装置に採用する気流発生装置の性能に応じて、吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)を最適化する工程を含むのが好ましいことが確認された。また、吸着剤量を増やしたい場合、吸着剤部分の長さを増加させるのではなく、吸着剤部分の断面直径を大きくして吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)を抑えるのが好ましいことも確認された。
また、この試験結果から明らかであるが、ある長さを有する吸着剤部分を採用した場合に使用予定の気流発生装置の性能曲線内から左側に逸脱したならば、香気化合物吸着装置Kの近傍に、ブロワー(送風装置)や吸引ポンプなどの線速度調整装置4を更に配置して気流を発生させ、気流発生装置13によって発生させた気流の圧力を補助的に高めることで、吸着剤に十分にガスを通気することができる。
加えて、吸着剤による抵抗を抑制する手段、例えば香気化合物吸着装置を流動層カラムなどの吸着剤が可動の吸着装置とすること、気流発生装置13によって発生させた気流の一部を分岐させて、分岐した気流を吸着剤に通気させること、などによっても、線速度調整装置4がなくとも通常のブロワーのみによって吸着剤に十分に通気可能になることも、明らかである。
以上のように、本発明においては、利用する一般的な細分化装置の気流発生装置に合わせて、吸着剤部分のガスの通気方向の長さ、気流分岐の有無、吸着剤の可動性などを適宜調整することで、より一般的な細分化装置への負担を抑制することができる。
【0059】
[実施例2]
焙煎ゴマ細分化時の香気化合物の回収、香料組成物の官能評価、および香気回収装置の負担の検討を行った。
【0060】
(1)香気回収
まず、本実施例で使用する香気回収装置Aの概要を示す。
本発明の香気回収装置Aは、
図1に示した構成である。具体的には、本発明の香気回収装置Aは、細分化装置11、第1の流路1、気流発生装置13、小片除去装置14、第2の流路2、香気化合物吸着装置Kを備える。なお、
図1では、香気化合物吸着装置Kが香気回収装置Aの設置面と平行(接地面と平行、すなわち水平)になるように記載されているが、香気化合物吸着装置Kは当該設置面に対して略垂直に配置し、吸着剤部分のガスの通気方向は重力方向と略同一とした。
香気回収装置Aは、細分化装置11としてローラーミルを備える。細分化装置11は小片予備除去装置12に連通し、その他の部分は密閉された状態で細分化を行うことができる。
第1の流路1は、細分化装置11に連通する。気流発生装置13は、第1の流路1および第2の流路2に連通する。
香気回収装置Aは、気流発生装置13として吸揚ブロワーを備える。この吸揚ブロワーによって、細分化装置11、第1の流路1、小片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kに連続した気流を発生可能である。また、線速度調整装置4として吸引ポンプを香気化合物吸着装置Kの当該気流の下流に備え、気流発生装置13とともに気流を発生させる。
香気回収装置Aは、小片除去装置14としてサイクロン式の分離装置を備える。
第1の流路1および第2の流路2の内径は200mmとした。
香気回収装置Aは、内径200mmの第2の流路2から分岐する導入路3に、香気化合物吸着装置Kを備える。導入路3には、導入路の入口3A以前において第2の流路に流れていたガスの半量が流入するように設計した。香気化合物吸着装置Kには、導入路3に流入したガスの全量が流入する。
【0061】
また、比較例1として、香気化合物吸着装置Kの代わりに、細分化装置11の上部から分岐する香気化合物吸着装置k1を備える以外は香気回収装置Aと同様である香気回収装置a1を用意した。香気化合物吸着装置k1は、細分化装置11の上部から分岐して吸着剤に気流を導入する導入路と、吸着剤から出てきた気流を排出する排出路とを有するものとした。細分化装置11の上部から分岐する導入路に流れるガス量は、香気回収装置Aの導入路3に流れるガスと同量となるように設計した。
【0062】
更に、比較例2として、香気化合物吸着装置Kの代わりに、第1の流路1の途中から分岐する香気化合物吸着装置k2を備える以外は香気回収装置Aと同様である香気回収装置a2を用意した。香気化合物吸着装置k2は、内径200mmの第1の流路1から分岐して吸着剤に気流を導入する導入路と、吸着剤から出てきた気流を排出する排出路とを有するものとした。導入路に流れるガス量は、その入口以前に第1の流路1に流れるガスの半量(つまり香気回収装置Aの導入路3に流れるガス量と同じ)が流れるように設計した。
【0063】
香気化合物吸着装置K、香気化合物吸着装置k1、および香気化合物吸着装置k2は全て、同種類で同量の吸着剤を充填した。
そして、本発明の香気回収装置A、比較例1の香気回収装置a1、および比較例2の香気回収装置a2を用いて、焙煎ゴマ細分化時の香気化合物を回収した。
【0064】
具体的には、以下の方法で香気化合物の回収を行った。
気流発生装置13によって気流を発生させた状態で、ローラーミル(細分化装置11)で焙煎ゴマを100kg/hにて約1mmの粉砕サイズになるように粉砕して、小片を含む焙煎ゴマ豆粗細分化物(動植物原料粗細分化物23)を得た。焙煎ゴマ粗細分化物(動植物原料粗細分化物23)に含まれる小片22の少なくとも一部を、焙煎ゴマを粉砕中の細分化装置11内のガス(香気化合物21を含むガス)とともに、上記気流によって、細分化装置11から連通する第1の流路1を通過させた。
この小片22は、小片除去装置14によって焙煎ゴマの細分化時に焙煎ゴマから発生する香気化合物21ならびに小片22を含むガスから除去した。
ガスから除去された小片22は、小片除去装置14と連通した廃棄部(図示せず)に収容して廃棄した。
一方で、小片22を除去されたガスを、小片除去装置14と連通する第2の流路2を通過させた。第2の流路を通過するガスの線速度は4.1m/sであった。導入路3には、上述のように第2の流路2に流れるガスの半量が流入した。
焙煎ゴマの粉砕を行っている最中に、導入路3に流入したガスを、香気化合物吸着装置(K、k1、またはk2)の吸着剤収容部Kbにそれぞれ収容(粗充填)された吸着剤に通気して、ガスに含まれる香気化合物21を吸着させた。
【0065】
各香気化合物吸着装置の吸着剤および通気は、共通して以下の条件とした。なお、吸着剤収容部として、側面部に空孔を有さない、円筒状のサイドウォールタイプのバスケットを用いた。また、吸着剤は、割れを抑制するために、純水を吸収させた後、完全に乾燥させる前に香気化合物吸着装置に充填した。
香気化合物の吸着剤:SP−207(スチレンジビニルベンゼン共重合体系合成吸着剤、三菱ケミカル(株)製)
吸着剤部分の断面直径:100mm
吸着剤への流入ガスの線速度:2.0m/s
吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向の長さ):8.0cm
吸着剤の使用量:2500ml
ガスの種類:空気
粉砕および吸着剤部分へのガス通気時間:5時間
本実施例では、吸着剤部分の断面直径は、上述のバスケットの、ガスの通気方向の断面直径(内径)と同一である。
【0066】
各香気回収装置を用いた5時間の通気後、各香気化合物吸着装置の吸着剤にプロピレングリコール(PG)25kgをSV=10にて通液して、香気化合物21を吸着剤から脱着させた。SV(Space velocity:空間速度)は、1時間当たりに樹脂の容積の何倍量を通液するかを表す単位である。このようにして、香気化合物吸着装置K、k1、およびk2で捕集した香気化合物をそれぞれ含む焙煎ゴマフレーバー(PG溶液とした香料組成物)を得た。これらの香料組成物をそれぞれ、本発明品1、比較品1および比較品2として得た。
ここでは、粉砕(細分化)に供した500kg(毎時100kgで5時間粉砕)の焙煎ゴマから発生した香気化合物を含有するガスの半量を吸着剤に通気させた(上述の通り、第2の流路2に流れるガスの半量を導入路3および吸着剤に流すよう設計した)ので、吸着剤に焙煎ゴマ250kg分の香気化合物を含むガスを吸着させたこととなり、その香気化合物をPGにて脱着して25kgのPG溶液(香料組成物)を得て、香気化合物を発生させた焙煎ゴマの重量に対し香料組成物の重量が10%となるようにして、本発明品1、比較品1および2を調製した。
一方で、焙煎ゴマ粗細分化物の香気化合物を水蒸気蒸留によって回収し、比較品1を調製した。具体的には、粉砕した焙煎ゴマ2000gを3Lカラムに収容し、大気圧下にてカラム下部より水蒸気を送り込み2時間かけて水蒸気蒸留を行い、カラム上部より得られ香気化合物を含む水蒸気を冷却管にて凝縮させ、香気化合物を含有する水溶液2000gを得た。次いで、吸着剤(SP−207)50mlに得られた水溶液を通液後、PG200gを吸着剤に通液して吸着した香気化合物を脱着して、200gのPG溶液を水蒸気蒸留フレーバーとして得た。この水蒸気蒸留フレーバーを比較品3とした。ここでも本発明品1、比較品1および2と同様に、本発明品1、比較品1および2と同じように10質量%となるようにして、香気の直接比較ができるようにした。
【0067】
(2)香気回収装置の負担
香気化合物の回収後、香気化合物を脱着した後の吸着剤が再利用可能かどうかを確認した。
再利用可能性の確認は、香気化合物吸着装置(k1、k2およびK)に収容された吸着剤(以下、それぞれ吸着剤q1、吸着剤q2、および吸着剤Qとする)について、PGによる脱着前および脱着後の通液の圧力を比較することで確認した。具体的には、脱着前および脱着後に、それぞれ超純水への置換を行ってから超純水をSV=10にて流した際の圧力を測定した後、脱着前の圧力に対する脱着後の圧力を算出した。
その結果、吸着剤q1および吸着剤q2は圧力がそれぞれ10倍および5倍であり、目詰まりが発生していたと認められた。このような場合、吸着剤は数回の洗浄または廃棄が必要となる。一方で、吸着剤Qでは圧力の差は同等であり、目詰まりは発生しておらず、数回の洗浄も廃棄も不要であることが確認された。
以上から、本発明の香気回収装置によって、吸着剤の再生の手間もコストも軽減されることが確認された。また、比較例の装置では、焙煎ゴマの粉砕時に焙煎ゴマから発生する香気を回収することが、工業的には不適であることが確認された。
(3)香料組成物の官能評価
本発明品1、比較品1〜3の香料組成物を、それぞれ下記表2に記載の量で市販のゴマ油に添加して、賦香ゴマ油を調製した。そして、市販のゴマ油(非添加品)と比較した各賦香ゴマ油の香味について、よく訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。パネラー10名の平均的な官能評価結果を下記表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
上記表2に示すように、本発明品1の香料組成物は、焙煎ゴマを擦っている時のフレッシュな香ばしさを強く感じさせ、かつ持続性を有する優れたフレーバーであった。
さらに本発明品1の香料組成物は、水蒸気蒸留で得たフレーバーなど他のフレーバーと併用して、トップの香りを増強して香味バランス、持続性、香りの強さなどを向上できることが確認された。これは、(2)で確認したように吸着剤が小片による目詰まりを起こしており、そのため香気化合物の吸着効率が悪く香気の特徴および香りの強さに違いが出たと思われる。
【0070】
[実施例3]
ピーナッツ細分化時に発生する香気化合物の回収と官能評価を行った。
粉砕サイズを2mmとした以外は実施例2と同様にして、ピーナッツ本体、ピーナッツの皮、その他異物由来の小片22をガスから除去しつつ、それぞれ香気化合物吸着装置k1(細分化装置11の上部に配置)、香気化合物吸着装置k2(第1の流路1に配置)、および香気化合物吸着装置K(第2の流路2に配置)から香気化合物を回収した。
実施例2と同様の方法で香気化合物を含むピーナッツフレーバー(PG溶液とした香料組成物)を得て、それぞれ比較品4、比較品5、および本発明品2(香気化合物吸着装置Kから回収した香気化合物を含む)とした。
また、実施例2と同様にして、ピーナッツの水蒸気蒸留フレーバーを調製し、比較品6とした。
次いで、下記表3の処方に従い、本発明品2、比較品4〜6のいずれかを含むピーナッツ風味キャラメルを常法にて調製した。
【0071】
【表3】
【0072】
得られた各ピーナッツ風味キャラメルの香味について、よく訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。10人の平均的な評価を下記表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
上記表4に示すように、本発明品2の香料組成物は、ピーナッツの擂っているときの香りのような、フレッシュでリッチな香ばしさに富んでいる、優れたフレーバーであった。
本発明品2の香料組成物は、トップの香気化合物が多く含まれるので、キャラメルのように製造過程に加熱工程を含む飲食品でも、トップの香りを失うことなく良好な香味を付与可能であった。
【0075】
[実施例4]
鰹節細分化時に発生する香気化合物の回収と官能評価を行った。
実施例3と同様にして、鰹節粉砕時に生じる小片をガスから除去しつつ、それぞれ香気化合物吸着装置k1(細分化装置11の上部に配置)、香気化合物吸着装置k2(第1の流路1に配置)、および香気化合物吸着装置K(第2の流路2に配置)から香気化合物を回収した。
実施例2と同様の方法で香気化合物を含む鰹節フレーバー(PG溶液とした香料組成物)を得て、それぞれ比較品7、比較品8、および本発明品3(香気化合物吸着装置Kから回収した香気化合物を含む)とした。
また、実施例2と同様にして、鰹節の水蒸気蒸留フレーバーを調製し、比較品9とした。
次いで、市販の顆粒かつおだし1gを約65℃の湯150gに溶かしてだし汁を調製し、比較品7、8、9、または本発明品3の濃度が0.1質量%となるよう添加した賦香だし汁を調製した。
鰹節フレーバー非添加のだし汁と比較した、それぞれの賦香だし汁の香味について、よく訓練されたパネラー15名による官能評価を行った。15名の平均的な評価を下記表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
上記表5に示すように、本発明品3の香料組成物は、比較品とは異なり、鰹節を削った際に感じられる風味を付与でき、トップの香りが強く、かつ持続性があることが確認された。
【0078】
[実施例5]
焙煎カカオ豆細分化時に発生する香気化合物の回収と官能評価を行った。
焙煎カカオ豆の粉砕時の香気化合物を以下の方法で回収した。なお、焙煎カカオ豆には、ハスクと呼ばれる薄皮が付着している。
実施例5では、実施例2〜4で使用した香気回収装置Aの代わりに、細分化装置11と連通した小片予備除去装置12を更に備える香気回収装置B(
図2参照)を用いた。小片予備除去装置12として、ふるい(目開き1.7mm)を備える振動分級装置を用い、第1の流路1は、小片予備除去装置12および気流発生装置13に連通する。
また、比較例1と同様にして、香気化合物吸着装置Kの代わりに、細分化装置11の上部から分岐する香気化合物吸着装置k1を備える以外は香気回収装置Bと同様である、比較例3の香気回収装置b1を用意した。
比較例2と同様にして、香気化合物吸着装置Kの代わりに、第1の流路1の途中から分岐する香気化合物吸着装置k2を備える以外は香気回収装置Bと同様である、比較例4の香気回収装置b2を用意した。
各香気回収装置(B、b1またはb2)を用いて、小片予備除去装置12において、小片22の一部を除去した。また、小片予備除去装置12で除去されなかった小片22(主にハスクに由来する小片を含む)を、焙煎カカオ豆を粉砕中の細分化装置11内のガス(香気化合物21を含むガス)とともに、上記気流によって、小片予備除去装置12から連通する第1の流路1を通過させた。なお、焙煎カカオ豆粗細分化物(動植物原料粗細分化物23)からの小片22の除去によって、所望のサイズに細分化された焙煎カカオ豆精製細分化物が得られるが、これは図示しない収容部に収容し、香気回収装置B外に出してカカオ風味製品などの製造に使用するまで保管することができる。
これ以降は実施例3と同様にして、焙煎カカオ豆、ハスク、およびその他異物由来の小片をガスから除去しつつ、それぞれ香気化合物吸着装置k1(細分化装置11の上部に配置)、香気化合物吸着装置k2(第1の流路1に配置)、および香気化合物吸着装置K(第2の流路2に配置)から香気化合物を回収した。
実施例2と同様の方法で香気化合物を含むカカオ豆フレーバー(PG溶液とした香料組成物)を得て、それぞれ比較品10、比較品11および本発明品4(香気化合物吸着装置Kから回収した香気化合物を含む)とした。
また、実施例2と同様にして、焙煎カカオ豆の水蒸気蒸留フレーバーを調製し、比較品12とした。
次いで、市販の粉末ココア飲料15gを冷水および熱水100gで溶解して、これらに比較品10、11、12、本発明品4のそれぞれを濃度が0.1質量%となるように添加した。
これらのココア飲料の香味について、15名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行った。官能評価は、トップの香りの強さおよび香ばしさに関する5段階評価(最低点1、最高点5)によって行った。
15名の平均的な評価の結果を下記表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
上記表6に示すように、本発明品4の香料組成物を添加したココア飲料は、比較品10〜12の香料組成物を添加したココア飲料に比べて、添加対象の温度に関わらずトップの香りが強く、かつ香ばしさが良好であった。
【0081】
[実施例6]
本発明の香料組成物は、実施例1〜5に示したように、トップの香りを顕著に増強させるとともに、香味の持続性を向上させるものであるが、さらに、その効果と脱着液(すなわち香料組成物の溶剤)の種類との関係を確認する試験を行った。
焙煎カカオ豆細分化時に発生する香気化合物の回収を、実施例5に記載の方法と、脱着にPGを用いたことに代えてエタノールを用いたこと以外は同様にして、香気化合物を含むカカオ豆フレーバー(エタノール溶液とした香料組成物)を得て、本発明品5とした。
次いで、市販の粉末ココア飲料15gを冷水および熱水100gで溶解して、対照品のココア飲料を得た。実施例5で得た本発明品4(PG溶液とした香料組成物)、本発明品5、本発明品4および5の1:1(質量比)混合物、および実施例5で得た比較品12(水蒸気蒸留フレーバー)のそれぞれを濃度が0.1質量%となるように添加した。
これらのココア飲料の香味について、15名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行った。官能評価は、対照品である市販の粉末ココア飲料と比べた、嗜好性、トップの香味、ミドル以降の香味について、以下の基準に従ってスコア付けを行った。15名の平均的な結果を表7に示す。
【0082】
(官能評価スコア)
(1)嗜好性について
5:対照品より顕著に好ましい
3:対照品よりやや好ましい
1:対照品と同等に好ましい
0:ココアとは異なる違和感のある風味があり対照品より好ましくない
(2)トップの風味について
5:対照品より顕著に増強され甘く香ばしい香りが強く感じられる
3:対照品よりやや増強され甘く香ばしい香りが感じられる
1:対照品と同等の強度である
0:対照品より弱い、またはココア風味とは異なる違和感がある
(3)ミドルの風味について
5:対照品より顕著に増強されボリューム感と余韻が強く感じられる
3:対照品よりやや増強されボリューム感と余韻が感じられる
1:対照品と同等の強度である
0:対照品より弱い、またはココア風味とは異なる違和感がある
【0083】
【表7】
【0084】
表7に示すように、対照品と比べて、本発明品4および5を添加したココア飲料は、比較品12を添加したココア飲料よりも嗜好性が顕著に高く、トップもミドル以降も香味が十分に増強されており、トップの香味の強さおよび香味の持続性に優れていることが確認された。さらには、特に本発明品4および5の等量混合物を添加したココア飲料は、トップ、ミドル以降ともに香味が非常に優れることが確認された。